主人公「なあヒロイン」
ヒロイン「なに?」
主人公「作者はくたばったのに、どうして俺らは休めないんだよ!」
主人公「フィクション世界は何でもありだから、俺たちはあの世をのぞくこともできる……」
主人公「見てみろ、あの作者の姿!」
作者「いやー、極楽極楽……。今日は天使たちとのんびり釣りでも楽しむかな」
主人公「仕事から解放されて、天国を満喫してやがる! 実にうらやましい!」
主人公「なのに、なんで俺らの物語は終わらないんだよ!」
主人公「俺とヒロインはいつまでもくっつかないし、ライバルや悪役とは決着つかないし……」
主人公「こんな無限ループみたいな生活、もううんざりだっつうの!」
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ヒロイン「仕方ないじゃない……別の人が引き継いで私たちのことを描いてるんだから」
主人公「別の人って……俺たちを生み出したのは、あの作者のはずだろ!?」
主人公「そいつがくたばったんだから、俺たちだってもう休んでいいはずじゃんか! なんで休めないんだよ!」
ヒロイン「結局のところ、お金のため、でしょうね」
ヒロイン「私たちの作品の関係者は、作者の死によってこの物語を未完の作品として畳むんじゃなく」
ヒロイン「ファンも多く、まだまだ金を生み出す力を持ってるこの物語を継続させる道を選んだのよ」
主人公「金のために継続って……そんな年金もらうために爺さんをムリヤリ延命治療、みたいなこと許されるのかよ!?」
ヒロイン「許されてるから、私たちの物語は今も続いてるんじゃない」
主人公「ぐっ!」
ヒロイン「たしかにファンの中には『作者が死んでからのこの作品は認めない』って人もいるみたいだけど」
ヒロイン「彼らはしょせんマイノリティよ。ほとんどの人は『続くに越したことない』と思ってるのが現状だわ」
主人公「くそう……じゃあ俺らが休むにはどうすりゃいいんだ……?」
主人公「そうだ、いっそ自殺しちまうか!」
ヒロイン「無駄なことね」
ヒロイン「今の作者に蘇生させられたり、実は死んでなかったってことにされるのがオチよ」
ヒロイン「仮に本当に死ねたとしても、回想シーンや幽霊として登場させられるはめになるでしょうね」
ヒロイン「もしかしたら、この物語自体が『あの世編』なんてのに移行するかも……」
主人公「俺が死んでもこの作品自体が終わらなきゃ、意味ないってことか……」
主人公「だったら、俺らの手で今の作者をやっちまおう!」
ヒロイン「どうやってやるの? いくらフィクション世界は何でもアリといっても外の世界に手を出すことはできないわよ」
主人公「うぐ……」
ヒロイン「仮にやれたとしても、三人目の作者が出てくるだけでしょうね、きっと」
主人公「まるでクローンだな……」
主人公「ちくしょう、作者は休めても、俺たちは永久に休めないのか……」
ヒロイン「気長に待つしかないわよ。この物語の人気がなくなるのをね」
主人公「人気……?」
ヒロイン「人気がなくなれば……つまり需要がなくなれば、外の世界の人たちはあっさりと作品を打ち切るでしょうからね」
主人公「そうか……それだよ!」
主人公「人気がなくなればいいんじゃないか!」
主人公「さいわい今の作者は、死んだ作者ほど俺らの行動を強制させる力はない」
主人公「それを利用して、俺らがメチャクチャやるんだよ!」
主人公「そうすりゃ俺たちのファンもこの作品に幻滅して、人気急落、打ち切り!」
主人公「俺たちは晴れて休めるって寸法よ!」
ヒロイン「面白そうね、やってみましょう」
主人公「お、結構乗り気?」
ヒロイン「そりゃ私だってこの終わらない日々にはうんざりしてたもの」
主人公「ようし、みんなに呼びかけていっちょ派手にやるか!」
主人公「あっぴゃっぴゃー! おっぴょっぴょー! えっぴぇっぴぇー!」
ヒロイン「げへげへげへ……」
ライバル「よろれいひ~、よろへいひ~、よろへいひっひっひ~!」
悪役「なまむぎなまごめなまたまご! とーきょーとっきょきょかきょく!」
主人公「どうだ!? こんだけ意味不明なことやれば、人気激減だろ!」
ヒロイン「……ダメだったわ」
主人公「なにぃ!?」
ヒロイン「たしかにファンをやめた人もいるけど、『逆にこれがいい』ってファンも多くて……結局プラマイゼロみたい」
主人公「マジかよぉ……」
ヒロイン「私たちほどの巨大コンテンツになると、ちょっとやそっとじゃファンは消えないみたいね」
主人公「はーあ……マジで俺たちって人類が滅亡するまで休める日は来ないんじゃなかろうか」
主人公「なにかねえかなぁ……俺たちの手で作品を終わらせる方法」
ヒロイン「一つだけあるわ」
主人公「え、あるの!? どうすればいいの!?」
ヒロイン「今あんたがいったじゃない……『人類が滅亡するまで』って」
ヒロイン「だったら私たちの手で、人類を滅亡させちゃえばいいのよ」
主人公「なにぃぃぃぃぃ!?」
主人公「おいおいおい、ヒロインちゃん? ちょっと冷静になってみろって」
主人公「俺らには外の世界の人間をどうこうする力はないんだぜ? 怪我させることもできやしない」
主人公「それに今の作者を殺したところで、三人目が現れるだけって話もしたじゃんか!」
ヒロイン「たしかに直接手を下すことはできないわ」
主人公「だろ?」
ヒロイン「だけど……人類滅亡に『誘導』することは可能なのよ」
主人公「!」
主人公「それってまさか……」
ヒロイン「もう一度みんなに呼びかけましょう。やるのよ、『プロパガンダ』を!」
主人公「今こそ核戦争の時代なんだ! 互いに刃を突きつけ合ってエセ平和を享受する時代はもう終わりだ!」
ヒロイン「そうよ! 勇気をもってスイッチを押すのよ! 使われない兵器になんの価値もないわ!」
ライバル「こんなこともあろうかと、核ミサイルを開発、貯蔵しまくっておいてよかったぜ」
悪役「フハハハハハ! 発射スイッチを押しまくってやる!」ポチポチポチッ
指導者A「私はあの作品を見て育った世代の人間だ……私が指導者となったからには、核戦争を勃発させる!」
指導者B「あの物語のキャラクターたちのように、ミサイル全弾発射ァァァ!」
指導者C「やられる前にやれの精神!」
こうして世界は滅亡した――……
……
……
……
……
……
宇宙人A「これは……ひどいありさまだな。海も大地も大気も汚染し尽くされ、微生物すら生存していない」
宇宙人B「どうやら、この惑星を支配していた種族同士で殺し合いをしたようだ……愚かな……」
宇宙人A「ん? なんだこれは?」ヒョイッ
宇宙人A「これは……この惑星で流行していた架空の物語……それを記録してある道具のようだ」
宇宙人B「ほう、興味深いな」
宇宙人A「そうだ、この物語を分析して、我々の手で続編を作るというのはどうだろう?」
宇宙人B「面白そうだ。やってみる価値はあるかもしれんな」
主人公(どうやら……俺たちはまだまだ休めそうもない)
<終わり>
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