【アイマス・モバマスSS】です
タイトルのPは、765Pのことです
モバPは登場しません
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ここ765プロでは一般公募によるオーディションが行われていた。
選ばれるのは、次の新曲用のバックダンサー。
審査しているのはP、四条貴音、水瀬伊織である。
「どうだ、貴音、ティンとくるような応募者はいたか?」
「いえ、今のところはまだ」
「伊織はいたか?」
「さっきの舞風っていう子、なかなか踊れていたと思うわ」
「他には?」
「本当に頑張ってる子が多いわね。気合が伝わってくるようよ」
「まあ、うちの初めての一般公募オーディションだからな」
Pは貴音と伊織を順に見渡した。
「お前たちの努力の結果、規模こそ小さいままだが一流のプロダクションになることができた」
「貴方様のお力あってこそです」
「当然私たちの実力、と言いたいけれど、貴音の言うことももっともね」
「ありがとうな」
一言、形を改めて礼を言うと、Pは話を続けた。
「今のウチには、それほどの応募者を集めるだけの実力があるってことだ」
だから、とPはさらに続ける。
「応募者たちの期待を裏切らないようにしようじゃないか」
「はい」
「ええ、当然よ」
力強く頷く二人。
「じゃあ、続けようか」
次の方、どうぞ。とPが声をかけた。
きゅらきゅらきゅら
場に相応しくない異音に二人が首をかしげていると、面接会場の扉が開く。
誰も居ない。
首を傾げる二人。
しかし、貴音はふと視線を下に降ろす。
そこには……
うさ!
おや、と呟く貴音。
伊織の視点はそこでようやく、貴音と同じく開いた扉の下半分に向けられる。
「エントリーナンバー77、ウサミンロボさんだ」
うさ
そこにいたのはピンクのボディとテレビデオの頭部、そしてウサ耳を持ったロボ。
それに対するのはあくまでもビジネスライクなP。
「……ロボ?」
「伊織、ロボ殿に失礼ですよ」
「貴音の言う通りだ、最近はアイドルも発言に気を付けないと」
うさうさ
ロボが何か言っている。伊織には「うさうさ」としか聞こえない。
「いえ、ロボ殿の好意に甘えるわけには」
うさ
「わかりました、水瀬伊織に代わり、礼を申し上げます」
ポカンとした顔の伊織。
「貴音、ちょっと聞きたいんだが」
Pが静かに問う。
「はい」
「おまえ、ウサミンロボの言葉わかるのか」
「ウサミン星とは、多少の縁がありますので」
「そうか、俺はわからん」
おい、と思わず突っ込む伊織。
「あんた、わからないのにオーディション呼んだの?」
「ふっ、わかるわけないだろ」
「なんで自信満々なのよ」
「安心しろ伊織。実のところ、響のウチナーグチも割とわかってないから適当に返事してる」
「待って、今何かしれっと問題発言が」
「そもそも、肝心のCGプロだって、五人くらいしかわかってないらしいぞ」
ちなみに安部菜々、諸星きらり、赤城みりあ、ヘレン、依田芳乃、池袋晶葉である。
「神崎蘭子の言葉がわかるのは二人だけらしいが」
「響以上の大問題じゃない!! 拙いでしょ、それ」
「余所の事務所の問題だしなぁ」
「それはそうだけど」
「まあ、俺はウチナーグチをもっと理解するように頑張るよ」
「それは早いところ解決しなさい」
「とりあえず、今はオーディションを続けよう」
姿勢を正すPと伊織。貴音はすでにウサミンロボに向き直っている。
「そういえば……」
「どうした、伊織」
「この子、CGプロの安部菜々に付いているのよね」
「いや、憑いているのは白坂小梅にだ」
「うん、それ別のものよね、漢字が違うわよね。見えているわけじゃないけれど何故か確信できるわ」
「すまん、ツイてるのは鷹富士茄子だな」
「だからね」
「あと、昔、興水幸子に〝付いている?〟疑惑があったな」
「よーし、そろそろ黙ろうか」
実力行使も辞さないと決めた伊織の覚悟を見抜いたのか、Pは口を閉じた。
「この子の名前、ウサちゃんロボじゃなかった?」
少なくとも、伊織は以前にそう聞いたことがある。
うさ!
「なんと」
うさうさ
「そのような理由があったのですか」
「貴音、一人でわかってないで通訳してくれない?」
「ウサちゃんロボとは、池袋晶葉によってこの世に生を受けたときの名前」
「幼名ね」
「あれか、豊臣秀吉と木下藤吉郎みたいなものか」
「その後、安部菜々の故郷ウサミン星の超科学で改造されたのがウサミンロボだということです」
「つまり、改造されたウサミンロボと未改造のウサちゃんロボがいるのね」
「なるほど、木下藤吉郎は金目教という怪しい宗教によって改造されたのか」
「何の話よ!」
「飛騨の国から仮面の忍者呼ばなきゃ」
「誰それ、呼ばなくていいから!」
うさうさ、うささ
「この度のおーでぃしょんへの意気込み、誠によくわかりました」
貴音は一人で面接を続けている。
「ねえ、貴音。何の話をしているの?」
「この度の、ロボ殿のおーでぃしょん参加理由です」
「それは俺も聞きたいな、頼む、貴音」
「はい、ロボ殿のお話によれば……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2月14日、ヴァレンタインデーにロボはアイドルの皆からチョコをもらいました。
そのお返しがしたい、とロボは思ったのです。
しかし、事務所のお手伝いでもらったお小遣いで事務所のアイドルにお返しをするのは何か違うような気がします。
そこでロボは自分にできることを考えました。
バックダンサーです。
丁度よいことに、765プロではバックダンサーオーディションが開催されているではありませんか。
ウサミンロボは、喜び勇んでやって来たのです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ええ子や……」
「いい子じゃない、この子」
「わかった、そういうことならこちらもきちんと対応しよう。まずは君のダンスを見せてくれ」
うさ!
ロボの右手が上がり、左手は下がる。そして両腕は内側へと湾曲。
まるで、両腕でSの字を作っているようなポーズ。
そして、音楽スタート
「こ、これは」
「知ってるの?」
「これは、山○リ○ダの<狙いうち>!」
「○本○ン○? 知らない」
♪うささ、うーささ、うーさうささ
♪うささ、うーささ、うさうささ
♪うーささ、うささ、うさうささ
この世(世界)はヘレンのためにある へーイ
「今なんか混ざったわよ!?」
「見事なダンスだな」
「今、突然一人増えてたわよね!?」
「まさに世界レベルのダンスだな」
「え? どうして無視」
「まこと、感服いたしました」
「貴音まで。なに、私がおかしいの?」
「伊織、今のダンスのキレキレッぷりがわからないのか」
「いや、あの、ちょっと待って……」
「そうです、あたかも機械仕掛けのような正確な動き」
「待って。ロボット! この子たちロボットだから!」
「人間業とも思えません」
「だからロボットなの、人間じゃないのっ!」
「伊織、今はそういう話をしているんじゃない。バックダンサーの話をしているんだ」
「そうだけど、そうだけど、なに、この理不尽な感じ」
きゅらきゅらきゅら
ウサミンロボは伊織に近寄ると、掌をミトンハンドでポンポンとタッチする。
うさうさ
「……ありがと、どうして貴方に慰められているのかしらね、私……」
「伊織」
「何よ」
「あまりオーディション出場者と親しすぎるのは、審査員としてどうかと」
「誰のせいよっ!!」
「落ち着くのです、伊織。今が審査中であることに変わりはありませんよ。私心は抑えるのです」
「……そうね」
「時にロボ殿にはダンゴ製造能力があると伺ったのですが、その能力を是非ここで」
「思いっきり私心よね、欲望だだ漏れよね」
「伊織、私はロボ殿のお力を拝見したいと言うだけで決して銘菓ウサミンダンゴを食べたいなどとは」
「食べたいのね」
「ですから」
「食べたいのね」
「はい」
「素直ね」
うさー
ウサミンロボの身体が突然震え出す。
「なに、今度は何」
「これは、ウサミンダンゴ製造の儀」
「なにそれ」
「体内でウサミンダンゴを製造しているのです」
「あー、言われてみれば、全自動餅つき器みたいな動きね」
やがて出てくるダンゴを、ウサミンロボは三人に振る舞う。
P、貴音、伊織。
割合的には二割、七割、一割。
「美味いな、甘味もしつこくなくて」
「真、美味」
「うん……素直に美味しい」
ダンスの実力を如実に見せつけ、さらには銘菓ウサミンダンゴによるプロモーションも完璧にこなしたウサミンロボ。
「結果は追って報告します」
うさうさ
きゅらきゅらきゅら
その後も、オーディションは進み、そして全ての応募者の面談が終了した。
765の三人は、心地よい審査疲れを感じながら、思い思いの姿で寛いでいる。
「……流石に疲れたな」
「貴方様」
「ん?」
「ロボ殿のことですが」
「あぁ、あの子か。伊織はどう見た?」
「ダンスは見事。意外性を抜きにしても、バックダンサーとしてはホンモノね」
「そうだ。新曲のバックダンサーとしては申し分ないだろう」
「それじゃあ、合格者は……」
「エントリーナンバー17」
「え、ウサミンロボのエントリーナンバーは77」
「それはわかっている」
「どうしてロボは不合格なのよ」
「んー、勘だな。俺の、プロデューサーとしての」
「?」
ウサミンロボはアイドルが大好きです。菜々ママや池袋博士と同じくらい大好きです。
アイドルのお手伝いをすることがとても大好きです。
そんなウサミンロボは、オーディションを終えて帰るときに気づきました。
帰り道で応募者たちの姿を見たからです。
みんな、頑張っていました。
これからオーディションを受ける人、もう終わった人。
みんな、輝いています。
うさ……
ウサミンロボは気づいたのです。
ロボがアイドルを大好きだということ。
ロボがアイドルになりたいわけではないのです。ロボはアイドルを応援したいのです。お手伝いしたいのです。
うさぁ……
ロボは照れてしまいました。また、間違えてしまったのですから。
うさうさ
事務所に戻ったら、紙をもらってお手紙を書かなければなりません。
ごめんなさいの、お手紙を。
「あの子は辞退するよ」
Pは笑う。
「あの子も俺と一緒。自分がアイドルになりたいわけじゃない。アイドルの手助けをしたいだけなんだから」
「あ、新曲ですね」
「ふーむ、765も頑張ってるなぁ」
「菜々も負けてられませんね」
菜々と晶葉の見ているテレビの中では、765のアイドルが歌っています。
その後ろには、バックダンサーたちが踊っています。
そこには、あの日ウサミンロボが見かけた子たちもいるのです。
うさうさ
そしてウサミンロボは、今日もアイドルたちのお手伝いを頑張ります。
以上お粗末様でした
今はモバマスばかりで、今回765を久しぶりに多めに書きました。台詞とかおかしかったらごめんなさい
ちなみに昔書いた765の話
貴音「事務所が燃えるなど……」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1348411656
貴音「侵略者を撃て?」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349272816
貴音「高槻やよい、貴方は甘すぎます」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1349521841
伊織「私がやよいの身代わりになるって言ってるのよ!」
http://hayabusa.2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1357733932
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