幼馴染「あなたは知らない？」

男「そりゃまあ……」

幼馴染「残念」

男「……」

幼馴染「……」

男「……アイドルの学校に入るとか？」

幼馴染「それだ」

幼馴染「入った」

男「早くない？」

幼馴染「善は急げという」

男「こっちの学校はどうするの」

幼馴染「通う」

男「え。あっちは？」

幼馴染「通う」

男「無理だろ！」

幼馴染「？」

男「あ。ごめん……でもさ、制度的にはどうなの？　大丈夫なの？」

幼馴染「分からない」

男「……きっと駄目だと思うよ」

幼馴染「大丈夫。通う」

男「無理だって」

幼馴染「こっそり通う」

男「無理だって！」

幼馴染「やめてきた」

男「だろうね」

幼馴染「正確にはやめさせられた」

男「だろうねなおさら」

幼馴染「参謀、次の手は？」

男「ねえよ！」

幼馴染「……」

男「あ。な、泣かない泣かない！　ほら今調べるから……」

幼馴染「オーディション？」

男「うん」

幼馴染「オーディションとは？」

男「あ、そこからか。アイドルになるための試験だよ」

幼馴染「ふうむ」

男「とりあえずエントリーしてきたら？」

幼馴染「ようし」

男（どうせ書類選考で弾かれるだろうけど）

幼馴染「通った」

男「……マジで？」

幼馴染「次、二次審査」

男「面接か……」

幼馴染「自己PRには自信がある」

男「……へえ」

幼馴染「わたしの魅力で撃墜する」

男「……頑張ってね」

幼馴染「頑張る」

幼馴染「落ちた」

男「落ちたね」

幼馴染「男についてきてもらったのに」

男「男引っ張ってったらそりゃ落ちると思うよ」

幼馴染「わたし顔だけは無駄にいいのに」

男「それを自分で言うのってどうなんだろうなあ……」

幼馴染「欠点はちょっとズレてることだけなのに」

男「自覚あったんだね」

幼馴染「万策尽きた。……尽きたよね？」

男「うーん……」

男（まああるにはあるけど地方じゃ厳しいよなあ）

男「尽きたね」

幼馴染「尽きた……」

男「そう落ち込まない。さ、授業も終わったし帰ろう」

……


「あ、キミ、ちょっといいかな！」

幼馴染「？」

男「え？」

幼馴染「先ほどのは一体」

男「……」

幼馴染「よくわからないけどむちゃくちゃ誉めそやされた」

男「スカウトマン、かな」

幼馴染「スカートマン」

男「スカウトマン。うん、名刺は本物っぽいな」

幼馴染「どういうことだろう」

男「おめでとう」

幼馴染「？」

男「君は晴れてアイドルというわけだ」

男「こうして僕の幼馴染はアイドルになった。……なんかこう、軽々しく」

…
……
………


幼馴染「やめてきた」

男「だろうね！　あーそうだろうね！　そんな気はしてたさ！」

幼馴染「なぜ怒るの」

男「むしろなんでやめてきた！」

幼馴染「なんか違った」

男「お前は全国のアイドル志望を敵に回したアァッ！」

男「ゼーハー……」

幼馴染「でもあなたはうれしいはずと思う」

男「うれしい……？」

幼馴染「わたしが上京する日、あなたは寂しそうな顔をした」

男「……したかもだけども」

幼馴染「わたしはそれが少しうれしかった」

男「え……？」

幼馴染「そもそもわたしがアイドルになろうと思ったのも、あなたのことが以下略」

男「え……そこ略すの？」

幼馴染「そんなことより今は別の夢がある」

男「いやそれよりもさっきの略した部分を……」

幼馴染「眩い雲上に立ち全人類の心照らす――」

男「聞いてよ……」

幼馴染「わたしは神になりたい」

男「あああ……」



終わり