男「ワルプルギスの夜?」 (50)

男「ワルプルギスの夜?」

女「ええ、今夜らしいわよ」

男「ほーん……(なんだろう。初耳だな)」

女「貴方も気を付けてね」

男「大丈夫、朝の来ない夜はないさ(……よく解らないが、とりあえず知ったかぶるか)」

女「……ふふ、そうね。それじゃ、私も早く準備しなきゃ。またね」

男「ああ、また明日」

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1456892033

――――

――

男(さて、ワルプルギスの夜とは何か)

男(……言っておくが、作者は本当に知らないので、まどマギSSは期待しないように)

男(女曰く、今夜らしい……察するに、何らかの自然現象を指しているのではないかな)

男(……俗に、“ブラッドムーンの夜”と呼ばれる夜がある)

男(ブラッドムーンとは赤月蝕のことで、地球の影に月が入ることで見える天文現象だ)

男(それと同じで、“ワルプルギス”なる現象が夜に起きる、あるいは見れるのが、今夜だと)

男(……ついでに言うと、赤月蝕は古来より不吉の前兆などと恐れられてきた)

男(スピリチュアルな話だが、これなら、気を付けてね、という忠告にも合点がいく)

男(……あるいはワルプルギスは、特定の場所でしか見られないとも考えられる)

男(例えば、そう、マウント・オーガスタスの頂上かもしれない)

男(標高、1105メートル。エアーズロックの約、2.5倍。地球上で最も大きな一枚岩……当然、危険はつきもの)

男(ワルプルギスが何か解らない以上、どちらかと言えば、こちらの方が可能性は高いかもしれない)

男(……まてよ。だとしたら、あの忠告の意味が少し変わってくるぞ)

男(ワルプルギスを見るという行動に危険が伴うのだから、それを前提とした忠告はおかしい)

男(女は、貴方も、と言った……もしや、あれは女なりの愛のメッセージだったのではないかな)

男(つまり、貴方とワルプルギスの夜を過ごしたい、と)

男(……対して俺の返答はどうだ。乙女心を弄ぶ、薄っぺらな台詞)

男(女は自嘲気味に笑う。しかし諦めない。準備をすると宣言し、またね、と再会を誓う)

男(全ては、俺とワルプルギスの夜を過ごすため。それなのに俺は、何と言った。また明日、だと……)

男(そう、明日では意味がない。意味がないのだ。何故なら、ワルプルギスの夜は、今夜なのだから……)

男(女に会いに行こう。しっかりと準備を整えて。そして言おう)



男(――貴女とワルプルギスの夜を過ごしたい、と)

――――

――

店員「いらっしゃいませ」

男(コーナンは、この世の縮図。ここで買えないモノはない)

男(御守りだろうが、ロッククライミングの道具だろうが、何でもござれだ)

男(……とは言え、こちらはアマチュア。素直に、プロの意見を仰ぐとしよう)

男「すみません。ちょっと、お聞きしたいのですが……」

店員「はい、何か?」

男「今夜は、ワルプルギスの夜ですよね。それで、準備をしようかなと……」

店員「……畏まりました。こちらへ」

男「あ、はい(……通じたか。第一条件クリアだ)」

信者の方に「新スレあったの気づかなかったけど荒らしてくれたから気がつけたわ」と感謝されたので今回も宣伝します!

荒らしその1「ターキーは鶏肉の丸焼きじゃなくて七面鳥の肉なんだが・・・・」

信者(荒らしその2)「じゃあターキーは鳥じゃ無いのか?
ターキーは鳥なんだから鶏肉でいいんだよ
いちいちターキー肉って言うのか?
鳥なんだから鶏肉だろ?自分が世界共通のルールだとかでも勘違いしてんのかよ」

鶏肉(とりにく、けいにく)とは、キジ科のニワトリの食肉のこと。
Wikipedia「鶏肉」より一部抜粋

信者「 慌ててウィキペディア先生に頼る知的障害者ちゃんマジワンパターンw
んな明確な区別はねえよご苦労様。
とりあえず鏡見てから自分の書き込み声に出して読んでみな、それでも自分の言動の異常性と矛盾が分からないならママに聞いて来いよw」

>>1「 ターキー話についてはただ一言
どーーでもいいよ」
※このスレは料理上手なキャラが料理の解説をしながら作った料理を美味しくみんなで食べるssです
こんなバ可愛い信者と>>1が見れるのはこのスレだけ!
ハート「チェイス、そこの福神漬けを取ってくれ」  【仮面ライダードライブSS】
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(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1456676734/)


店員「…………」ツカツカ

男(……隙のない足運び。なかなかやるな)

店員「…………」ツカツカ

男(……それにしても、良いケツしてやがるぜ)



店員「……こちらへどうぞ」

男(……ここは、事務所?)

男(コーナンのバックルーム。それは、ディズニーランドの裏側にも匹敵する、絶対不可侵領域)

男(本来であれば、客が入ることは愚か、知ろうとすることさえ許されない魔の領域……こいつ、いったい何を――)



店員「マスター。連れて参りました」

店長「……ようやく現れたか。キュウベエ」

男(な……んだと)

店員「マスター。油断は禁物です」

店長「ふん。魔法少女であるキミがいるのだ。何も心配は――」

店員「彼が、ワルプルギスの夜は今夜だ、と」

店長「なんと! マーリンの髭!」



男(しまった……完全に油断していた。このタイミングでの新語錯綜……)

男(もうこうなると、理路整然とした思考は足枷にしかならない)

男(全てを受け入れよう。あるがまま、赴くがままに生きよう)

男(女とワルプルギスの夜を過ごす。この目的さえブレなければ、終着点は見える!)



男「くっくっく、気付くのが少々遅かったな」

店員「…………」

店長「な、なんだと!?」

男「うしろだ!(……つまらぬハッタリだが、主導権はこちらが握っている。故に、効果は絶大)」

店長「――!?」バッ

男「ヘアッ!(慌てて振り向いたが故に、不自然に歪んだ頸椎。そこに渾身のチョップ。これは耐えられない)」

店長「う……」パタリ

男(ふん、チョロいぜ。しかし――)



店員「…………」

男「……流石だな」

店員「よくも、マスターを……」ゴゴゴゴゴ

男「くっくっく」

店員「なにが、おかしいの?」

男「いつからだ?(バカが。何もかもおかしいのだ)」

店員「なにを――」

男「いつから、奴がマスターだと錯覚していた?(……しかし、法則は大分掴めてきた)」

店員「……どういう意味?」

男「こういうことだ(ここで、実は掛けていた眼鏡を外す。意味ありげにな)」

店員「そ、そんな、まさか……父さん!」



男「……久しいな。娘よ」

男(……想定外な事が起こると常に予測していれば、想定外も想定外ではなくなる)

男(誰の言葉だったかな……なるほど、言い得て妙だが、何事にも例外はつきもの)

男(女……すまない。俺は覚悟のないまま、一児の父になってしまった)

男(だが、安心して欲しい。貞操は失っていない。コウノトリという名の、運命の悪戯……)



店員「父さぁん……んふふ」

男「……娘よ。私がマスターである」

店員「はい、父さん……いえ、マスター!」

男「……で、あいつがキュウベエだ」

店長「」

店員「私……ずっと騙されていたのですね」



男(……俺は、目を潤ませて佇む魔法少女、もとい娘を、そっと抱き締めてやった)

店員「――ところで、これからどうするのですか?」

店員「ワルプルギスの夜……今夜だと仰っていましたが……」

男「そうだな。まずは、コーナンで準備を整えたい」

店員「でしたら、私が御案内します」

男「ああ、頼む(……長かった。本当に。ここまでのくだり、果たして必要だったのかな)」



店員「こちらです」

男「……ご苦労(……洞窟、か)」

店員「最奥に、選ばれた者にしか扱えない、不死鳥の尾羽根の杖があるそうです」

男「ああ……そう」

店員「灯りを……ルーモス」ポア

男(おお、杖から光が。これが魔法。マーリンの髭)



店員「…………」ツカツカ

男(……随分、暑いな。湿度が高い)

店員「…………」ツカツカ

男(……相変わらず、良いケツしてやがるぜ)

店員「…………」ピタ

男「ん? どうした?(まだ最奥には達していないが……おしっこかな)」



店員「……んふふ、ますたぁ」

男(……この表情、そして声色、完全に発情してやがる。しかし、私たちは父娘。一線は越えられない)

店員「……マスター。ごめんなさい。私、ウソを吐きました」

男(追加設定は許す。しかし、既存の設定は崩さない。これが、暗黙の内に定めたルール)

店員「ここ、コーナンではありません。洞窟です」

店員「マスターと、二人きりになりたくて……」

男「……娘」

店員「……ほむらと、御呼び下さい。マスター」

男「聞け、娘よ――」

店員「ますたぁ……おねがい」



男「……ほむら(ルールは、破られるためにあるのだ)」

――――

――

男(……あれから、色々なことがあった)

男(暑い洞窟に、熱い身体。しかし、ほむらの胸は薄かったとだけ伝えておこう……)

男(洞窟から出ると、空は赤色に染まっていた。ワルプルギスの夜の、刻限は近い)

男(何故。洞窟に入る前は、まだ午前中だったはず……とにかくもう、手段を選んではいらない)



男「ほむら」

店員「はい、マスター」

男「パソコンコーナーへ案内しろ」

店員「……? 畏まりました」

店員「…………」ツカツカ

男(……とろとろ歩きやがって。何をモジモジしているのだ)

店員「…………」ツカツカ

男(……まあ、良い。焦って失敗しては、元も子もない)



店員「……こちらです」

男「……ご苦労」

男(……グーグル先生、全知全能たる、貴方にすがることを御許し下さい)

男(勢いだけで、ここまで来ましたが、結局、何も思いつかなかったのです)

男(もはや、時間も根気も尽きました……)



男「“ワルプルギスの夜とは”と」

――――

――

男(さて、ワルプルギス夜とは何か)

男(てっきり、まどマギ発祥の言葉だと思っていたので、少々襲いたが……)

男(……結論から言うと、魔女の祭りらしい)

男(中欧や北欧を中心として、魔女たちが夜宴を開き、春の到来を祝う……)

男(祝うというくらいだから、別段問題はないように思える)

男(……だが、気になるのは、“魔女たちがサバトを開き跋扈(ばっこ)する”という一文)※Wikipedia抜粋

男(サバトとは、先にも上げた魔女の夜宴のことだ。好きにすれば良い。問題なのは、跋扈する、という言葉)

男(“跋扈”とは、悪人などがのさばり、蔓延ること。余り良い意味で使われる言葉ではない……)

男(この場合の悪人とは、魔女。のさばり蔓延るのは、人の領分……)

男(つまり、ワルプルギスの夜とは、魔女たちが人を襲い騒ぎまくる、狂喜に満ちた祭りだったのだ)

男(……女の言った、気を付けて、という忠告。これは、魔女の襲来に備えろという意味)

男(相手は魔女。丸腰では厳しい。だからこその、準備)

男(そして……)チラ



店員「……どうされました? マスター」キョトン

男「……いや、別に(……ほむらは、魔法少女)」

男(……全ての、からくりが解けた)

男(最初、ワルプルギスの夜について話し掛けた時、ほむらはこう考えた)



店員(……人間に、ワルプルギスの夜の日取りが露見した。早急に処分しなくてはならない)

店員(しかし、かつてより、魔女狩りを生業としているキュウベエの一味である可能性も高い)

店員(ここで、処分するのは早計。出来ることなら、父さんの敵、キュウベエを一網打尽にしたい)

店員(そう、私は、まだ半人前の魔法少女。ここは、マスターに判断を託そう)



男(……そして、上位魔法使いであるマスターは、一目で、俺をキュウベエだと見抜く)

男(ほむらは、幼い身で魔法を操る才女。その戦闘能力は、並の大人を凌駕する)

男(それは、育ての親でもあるマスター自身が、誰よりも知っていた)

男(……故に、生まれる油断。慢心。俺の渾身の一撃で、あっさりと沈黙する)

男(マスターは、頼りないなりに、亡き父の変わりに、ほむらを一生懸命育てたのだろう)

男(……マスターが倒され、殺意に満ちたほむらの表情を見れば、察しがつく)

男(……しかし、ここで、彼女は驚愕する。何せ、死んだはずの父が眼前に現れたのだから)

男(父と瓜二つの俺を、父と思い込み、同時に、かつてマスターが語った父の最期に疑問を覚える)

男(そして告げられる虚実。マスターこそが、諸悪の根源。キュウベエ。そう、スパイだったのだ)

男(……父の最期も、何もかもが嘘偽り。傷心するほむらを、俺は優しく抱き締めた)



男(……と、推測も多分に含まれるが、大筋は間違っていないだろう)

男(そう考えると、哀れな娘だ……)チラ

店員「……マスター?」



男(純粋……とは言い難いが、慕ってくれているほむらを敵に回すのは辛い……)

男(というか惜しい……が、女とワルプルギスの夜を過ごすという当初の目的は忘れてはいない)

男(楽しい夜にはなりそうもないが……女の背中は、俺が守る!)

――――

――

店員「ありがとうございました」

店員「……でも、インノケンティウスの鉄槌なんか買ってどうされるのですか?」

店員「せっかく、不死鳥の尾羽根の杖があるのに……」

男「……良いんだ。杖はほむらが使いなさい(そもそも選ばれた者ではないから、扱えないしな。それに……)」

男(魔女狩りと異端審問で名を馳せた、インノケンティウス8世の鉄槌。これさえあれば……)

店員「まあ、マスターの敵は全て私が排除いたしますので、構いませんが……」

男「はは、頼もしいな(……すまない。ほむら)」

男(……直に、夜が訪れる)

男(名残惜しいが、ほむらとは別れよう。甘いのかもしれないが、生き延びて欲しい)



男「ほむら」

店員「はい。マスター」

男「実は、忘れモノをしてね」

店員「忘れモノ? どこにですか?」

男「ほら、あそこだよ。昔、よく行っていた。ええと――」

店員「寮?」

男「……そう、寮に忘れたんだ」

店員「何を忘れたのですか?」

男「ほら、あれだよ。誰でも持ってる。あの、大切な――」

店員「守護霊?」

男「……そう、守護霊を忘れたんだ」

店員「マスターの守護霊は、ジャック・ラッセル・テリアでしたよね」

男「……そう、気づいたらジャックがいないんだもん。焦ったよー」

店員「もう、何故そんな大切なモノを……」

店員「というか、守護霊が離れることってあるのですね」

男「……という訳で、ほむら。取ってきておくれ」

店員「……え、でも」

男「今の私には、守護霊がいない。それがどれほど危険なことか、キミなら解るだろう?」

店員「……畏まりました」

男「……すまない。こんな、大切な夜に」

店員「いえ、マスターの為と思えば、何程のことでもありません」

店員「……では、行きます」

男「ああ、達者でな」

店員「マスター。これを……」

男「……これは」

店員「そう、母さんの形見のペンダント……私の宝物です」

店員「……マスターに貸します。必ず、必ず返して下さい」

男「……もちのロンさ」



男(……思いの他、巧くいったな)

男(寮がどこに在るのか定かではないが、ほむらは戦線離脱したと考えて良いだろう)

男(……ジャック・ラッセル・テリアって、確か犬だよな。マスクに出演していた)

男(守護霊、務まるのかな。マスクを被らなくとも、賢い犬ではあったが……)

男(いや、そもそも本当の父は死んでいるのだから、やはり、荷が重かったのかもしれない)

男(まあ、考えても詮無きことか……)



男(……よし、切り替えていこう)

男(……局面は、もう終盤戦。後は、女と合流するのみ)

男(女が準備を始めてから、随分と時が経った。今頃、来るべき闘いに備えて、瞑想をしていることだろう)

男(……女はどこに居るのか。普通に考えれば家だが……彼女は、サングラスに真っ赤なトレンチコートの似合う女)

男(家でジッとしているタイプではない。ならば――)

――――

――

女「……来て、しまったのね」

男「はぁはぁ(……マウント・オーガスタス。強敵だった)」

女「ふふ、息が荒いわよ」

男「……キミに会えて、興奮しているのさ(……真っ白なトレンチコート。珍しいな)」

女「……そう」

男(……長い、長い道程だった。今こそ、伝えよう。あの時、言えなかった言葉を)

男「……女」

女「何かしら?」



男「貴女と、ワルプルギスの夜を過ごしたい」

女「……ありがとう。嬉しいわ」

男「ふっ、キミを守るために、武器も用意したんだ。ほらこの――」

女「インノケンティウスの鉄槌……」

男「そう、流石女だな」

女「ふふ――」

男「もしかして、キュウベエとは――」



女「あっははははは!」

男(なんだ? 何を笑って……)

女「……私の真名は、まどか」

男「……え?」

女「真名は、一族にのみ伝わる、隠し名。もし、他人に伝えるとしたら、それは――」

女「その相手を、[ピーーー]時」

男(……何が起こってる。何を言っている)

男([ピーーー]? 誰をだ? 俺を!? ふざけるな!)

男(俺は女を守るためだけに、マウント・オーガスタスまで来たのだぞ。それが、何故殺される)

男(真名だと? そんなものは知らん。名などどうでも――)



女「そのペンダント。どこで手に入れたの?」

男「……ペンダント?」

女「ええ、それは、私の一族に代々受け継がれてきた家宝。貴方が、何故……」

男(一族、家宝、母の形見、ペンダント、宝物、ほむら……)

男(そうか、まさか――)



男「キミが、ほむらのマザー!」

すみません。始めてなので、ちょっとtest

[ピーーー]

んー、一応、ルールは読んだつもりだったのですが……何故だろう
因みに、『殺・す』と書きました

女「……驚いた。繋がりがあるとは思っていたけど、真名も知っているのね」

男「ほむらは、形見だと言っていた。何故――」

女「ほむらを殺して、奪ったの?」

男「違う! これは、ほむらから借りたんだ。必ず返すと、約束して……」

女「……そう。事情は解らないけど、もう良いわ」

女「――私が、返しておいてあげる。貴方を殺してね」

男「ま、待ってくれ! キミが魔女なのは解った!」

男「でも、だからって、殺し合う必要は――」



女「インノケンティウスの鉄槌……」

女「魔女狩りの王。インノケンティウス8世の意志を宿す、紅十字の鉄槌……」

女「コーナンで買ったのね。迂闊だったわ」

女「……でも、私にはこれがある」

男「それは! 不死鳥の尾羽根の杖!」

男「その杖は、ほむらに託したはず。何故、キミが……」

女「やはり、あれはほむらが手にしたのね。誰でも扱える杖じゃない」

女「この杖は、あの杖の兄弟杖よ。コーナンで買ったの」

男「そ、そうだったのか……」



女「……さあ、御託はおしまいよ。始めましょう」

男「待てって! だから、何故争う必要があるんだ!」

女「……はあ、煮え切らない男ね」

女「……マグルと魔女は、けして解り合えないの」

女「ましてや、そのマグルが……キュウベエであれば、尚更ね」

男「……キュウベエ? 俺が?」

女「キュウベエとは、魔女狩りの王の末裔に、代々受け継がれる隠し名」

女「そして、もう一つ、受け継がれるモノがある……それが、インノケンティウスの鉄槌」

男「そんな、コーナンに売ってたのに……」

女「私たちは、闘う運命なのよ」

男「俺は、どうすれば……」

女「反撃したくないのなら、それでも構わないわ」



女「――何もせず、[ピーーー]ば良い!」

女「ステューピファイ!」

男(発音しづらそうな呪文。彼女、まどかの持つ不死鳥の尾羽根の杖から放たれた、黄色い閃光……)

男(認識できたのはそれだけだった。どういう訳か、指先一つ動かせない。魔法――)



女「安心して。麻痺してるだけ」

女「……ワルプルギスの夜は始まった。もう、何もかも手遅れなの」

女「貴方も、ここで朽ちる。でも、ズルいかもしれないけど、言わせて――」



女「貴方を、愛してる」

女「返事は……ふふ、したくても出来ないでしょうね」

女「あー、すっきりしたわ。出来れば、貴方には関わって欲しくなかったけど……」

女「やっぱり、キュウベエの血は、争えないわね」



男(なるほど。あの忠告は……)

男(不器用な女だ。しかし、俺の返事は決まっている)

俺(ミートゥー。俺も愛している……)



女「じゃあ……さようなら……」

女「アバダ・ケダブラ!」

ルールもう一回読んでこいや
絶対読んでないだろ
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店員「エクスペクト・パトローナム!」

男(……襲いくる緑の閃光を、犬を型どった光影が弾く)

男(ああ、何となくだが、これは予想できた)

男(気付けは、麻痺も解けている。ジャック・ラッセル・テリア……頼もしい子)



店員「マスター!」

男「……ほむら!? どうして!」

店員「……言ったはずです。マスターの敵は全て私が排除する、と」



女「…………」

店員「……母さん、何ですね」

女「……久しぶりね。ほむら」

店員「母さん、どうして……」



男(……どうして、生きているのか。どうして、父を攻撃するのか)

男(ほむらの頭には、様々な疑問が交錯しているはずだ)

男(……はっきり言おう。俺にとって、今が最大のピンチである)

男(百歩譲って、マスターは良しとしよう。しかし、父はおかしい。抱いたのはもっとおかしい)

男(俺は、既存の設定を無視できない男……弁解の余地はない。苦しい)

男(行き場を失ったジャック・ラッセル・テリアが、所在無さげに立つ)

男(それはそうだ。守護する相手が居ないのだから……)

女「邪魔をするなら、我が子でも容赦しないわよ」

店員「……覚悟は、できております」



男(……この二人の死闘は、おそらく苛烈を極めるだろう)

男(しかし、母娘。殺り合っては喋り、殺り合っては、また喋る……)

男(どうして父さんを! などと、娘が口走るのも時間の問題。それが必然。王道)

男(俺も、覚悟を決めるしかあるまい……)

男(魔女と魔法少女。相手にとって不足なし)

男(鍵を握るのは……守護霊。ジャック・ラッセル・テリア)

男(主不在の戦場で、どう立ち回るか。おらワクワクしてきたぜ!)

女「クルーシオ!」

店員「エクスペスト・パトローナム!」



男(まどかの放つ赤い閃光と、ほむらの放つ青白い光影が交錯する)

男(光影は、一瞬、牡鹿を型どっているように見えたが、あれも守護霊なのか……)

男(交わった光が二人の杖を繋ぎ、せめぎ合う。実力は伯仲している)

男(ジャック・ラッセル・テリアは……動きなし)

男(今こそ、好機。インノケンティウスの鉄槌を握る手に、自然と力が入る)



男「ヘイ、ジャック! カモン!(……ペンダントを、振り回す。ゆっくり、しかし徐々に早く)」

男(目を輝かせるジャック・ラッセル・テリア。抗えない、犬の習性)

男「ほむら! 受け取れ!」

店員「マスター!?」

女「何を!?」

男(放物線を描き、飛んでいくペンダント。その先は、杖で結ばれた、二人の中央)

店員「……!」

女「……あれは!?」



男(……そう、あれは、一族の家宝。母娘の思い出。かけがえのない宝物)

男(母娘は、咄嗟に杖を剃らし、ペンダントへと手を伸ばす――)

男(そして、追いすがる主無き守護霊。ジャック・ラッセル・テリア)



男(三つ巴。皆の思いが交錯する。そして――)

男「ふうぅんぬっ!!!」



男(横一線。魔女狩りの王、インノケンティウス8世の意志を宿す、紅十字の鉄槌)

男(無情なる一撃。異端審問。王の裁き。手に伝わる確かな感触)

男(マウント・オーガスタス。月に照らされた空を、真っ赤なトレンチコートが舞う――)



男「終わった。何もかも……」

男(そう、俺は魔女狩りの王の末裔、キュウベエ)

男(手に持つは、王の証、インノケンティウスの鉄槌――)



男「ワルプルギスの夜は、終わったのだ」

――――

――

男「いらっしゃいませ」



男(……あの後、コーナンへと戻った俺は、インノケンティウスの鉄槌を返品した)

男(いつの日か、キュウベエの名を、受け継ぐ者が現れると信じて)

男(……そして、目を覚ました店長に許しを請い、ここで働くことにした)

男(コーナンは、何でも揃っているし、便利だから――)



男「ありがとうございました」



fin

終わりです。ありがとうございました。
まどマギ関連は敢えて避けて調べたので、
結局、ワルプルギスの夜が何かは解りませんでした。

>>38
すみません。読み直します。

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