男「俺の名は男。小学6年生だ」 (40)

俺の名は男。小学6年生だ。
普段はなんの取り柄もない普通の小学生だが今は違う。俺は今、ある一つのものを手に入れるために戦おうとする一人の戦士だ。
今日は欠席者が一人いるからな。
欠席者がいると何があるのかだって?

\ワイワイガヤガヤ/ クラスが盛り上がってやがる。

先生「余ってるプリン欲しい人~!」
\ハーイ!/ \ボクモー!/ \ワタシモー!/

こういうことだ。そう、給食のプリンが、余るっ!

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どうやってそのプリンを取り合うのか。
この学校では古くからあるものを複数の人間が取り合うとき、それらを手に入れる権利が平等に存在している場合はジャンケンでそれらを手にする者を決めると決まっている。

男「決勝まで残ってろよ」
パー太「何を言ってるんだい?プリンが僕を呼んでいるんだ。負けるわけにはいかないのさ」
彼の名はパー太。俺の友人でかなりのジャンケン実力者だ。

先生「欲しい人が多いようなので最初は先生とジャンケンして勝った人が残ることにしま〜す!じゃあみんな手を挙げて!」
先生が手を挙げるとプリンを望む者達がザッとてを挙げた。
先生「さーいしょは……・・」

始まるっ!プリンを賭けた戦いがっ!

結果…残ったのは四人!
ここからは別れてトーナメント式となる。
俺もなんとか四人の内に生き残り、パー太も当然の如くその四人の中にいた。
ここから先はただのジャンケンではない。
恐らく残った四人は全員『ジャンケン能力者』だ。

一回戦は俺とチョッ平だ。
パー太「ここまで残ったんだ。負けるなよ」
男「言われなくても勝つさ」

チョッ平「早く始めよぉ〜ぜぇ?ケケケ」
奴は『後出しのチョッ平』と呼ばれている。
後出し系のジャンケン能力者だ。もちろん『相手が見えてから自分の手を出す』という簡単な能力だが、奴の手は速すぎてジャンケン能力者以外の先生やギャラリー(他の生徒)には普通にジャンケンしてるように見えるため不正にならないという恐ろしい能力だ。
奴が『後出しのチョッ平』と呼ばれているほど能力の正体が広まっているのに未だに不正になったことがないあたり、どれだけ奴が周りには普通に見えるジャンケンをしているか察することができるだろう。
大多数の人間が普通に見えるジャンケンを不正と言うことはさすがに誰もできない。

男「いくぜ」
チョッ平「ケケケ…」
男・チョッ平「最初はグー!ジャンケン…」

チョッ平(ケケケ…お前の手は見えたぜぇ?この勝負…もぉ〜らいっ!)

男・チョッ平「ポンッ!」

俺はパー。チョッ平は…チョキッ!

チョッ平「ケケケ…残念だったなぁ?」
男「いや、俺の勝ちさ…」
チョッ平「はぁ?何言ってんだお前…」

先生「はい一回戦は男君の勝ちで〜す!」
チョッ平「・・」

チョッ平「おっ…おい!なんでだよ!」
先生「チョッ平君。悔しいのは分かるけど今回は男君の勝ちだから諦めて…ね?」

男「納得いかねぇって顔してるから教えてやるよ」ボソボソ
チョッ平「あぁ?」
男「俺の能力はジャンケンの『三すくみが逆転する空間を作る』能力さ」
男「空間外の人間には普通のジャンケンに見えている。つまり先生達には俺がチョキでお前がパーに見えていたのさ」

チョッ平「なんだよそれ!ジャンケン能力のくせに勝率が変わってねぇじゃねぇか!」
チョッ平「確かお前いつもは先生とのジャンケンの時点で負けてるよな?俺が同クラスの決勝トーナメント常連者の能力を知らないわけないからな」

男「確かにそうだ。俺はジャンケン能力者の中でも最弱かもしれない。だがこれでいいんだ。チョッ平、お前勝ち過ぎてジャンケンの本来のあるべき姿を忘れたか?」
チョッ平「?」
男「ジャンケンってのは本来運否天賦なもんだろう?」
チョッ平「!!」
チョッ平「ケケケ…今度お前とやるときは能力なんてもんなしでやってやらぁ!覚悟しとけよ!」
男「おう!」

さて、俺の一回戦は終わったが…パー太の一回戦はどうだ?対戦相手は…ぐぅ子?
ぐぅ子ってここ半年不登校で学校に来てなかった奴じゃねぇか。一体どうして今日に限って…

パー太「じゃあ始めるよぐぅ子さん」

ぐぅ子「よろしく」

パー太・ぐぅ子「最初はグー!ジャンケンッ…!」

パー太の能力は『あいこになったときにも自分の勝ちになる空間を作る』能力で、俺と同じ空間系のジャンケン能力だ。

俺の逆転の能力はあいこには全く影響がないため俺にとっても強力な能力だ。

パー太・ぐぅ子「ポンッ!」

パー太はチョキ。ぐぅ子は…グーだっ!

パー太「くっ!」

ぐぅ子「やったわ!」

パー太が負けた!?確かにパー太の能力は強力なものだがパー太の勝ちパターンが増えるだけで普通に負ける可能性もある。しかし…

パー太「…」

パー太のあの顔!普通に負けたって顔じゃない!
まるで何かに怯えているような顔だ…

男「パー太!なにがあったんだ?」

パー太「男…ごめんよ。負けてしまった。でもぐぅ子は只者ではない。」

男「どういうことだ?」

パー太「僕はパーを出そうとしたとき一瞬出してはいけない気がしてしまったんだ。あの感覚はチョッ平の後出し能力のような感覚に近い気がする」

男(チョッ平のような後出し能力なら逆転の能力でなんとかなりそうだが…くそう…今まで不登校だったからぐぅ子の能力が分からないのは痛い)

先生「最後はぐぅ子ちゃんと男君の三本勝負ね」

ぐぅ子「ふふ…よろしく!」

男「ああ」

男・ぐぅ子「最初はグー!ジャンケンッ…!」

男(ぐぅ子の能力がよく分からない…一回目は普通にジャンケンをするか…ここはパーを…)

ぐぅ子「…」ニヤ…

男「!?」

男・ぐぅ子「ポンッ!」


俺は当然パーだが、ぐぅ子は…チョキ!

先生「一本目はぐぅ子ちゃんの勝ちね!」

男「…」

ぐぅ子「ふふ…このままなら楽勝ね。どうやってあの噂の最強クラスのジャンケン能力者チョッ平を負かしたのか知らないけれど。相手がチョッ平じゃなくてよかったわ」

男(さっきのジャンケンに対する妙な自信に満ち溢れた笑み…やはり後出し系か?でも俺が出す手を考えた瞬間笑ったようにも見えた…)

男(それにチョッ平相手が辛い…?同じ後出し系相手ならただのジャンケンをするしかなくなる。それはチョッ平も同じはずだ…しかしこいつはまるで自分だけが不利みたいに…)

男「まさかお前…後出し系と似てはいるが、エスパー系能力か?」

パー太「!!僕も聞いたことがある…相手が出そうと『考えている手が分かる』能力か!?」

ぐぅ子「あらら、ばれちゃった?もぉ〜、一本勝負ならもう終わってたのにぃ〜」

男(なんて恐ろしい能力だ!しかしそれならチョッ平相手に不利なのも説明がつく。あいつは相手が出す手を見てから出すのを考えるから心を読み取ることができないんだ!)

先生「じゃあ二本目〜」

男・ぐぅ子「最初はグー!ジャンケンッ……」

男(しかし俺も簡単には負けられないぜ!くらえ!逆転の能力!)

男・ぐぅ子「ポン!」


俺はグー。ぐぅ子は…パー!

先生「男君の勝ちー!おっとこれは熱い展開になってきたよぉ〜?」


ぐぅ子「ふーん…なかなかおもしろい能力持ってるじゃない」

ぐぅ子「でも三本目はもう通用しないわ。だって私も逆を出せばいいだけだもの。勝率も上がらないし、貴方の能力って穴だらけなのね」

男「そんなのやってみなくちゃ分かんねぇだろ?」ゴゴゴゴゴ

ぐぅ子「!?」

パー太「!!」

チョッ平「!!」

ぐぅ子(なんなのあのオーラ!さっきとは全然違う!)

パー太(小1から友人だった俺でもあんな男みたことがない!)

チョッ平(おかしいと思ってたんだよなぁ…あいつの能力は普通に考えれば弱すぎる。しかしあの能力は最終形態じゃなかったんだなぁ!!ケケケ…ありゃあ伝説のもの凄い能力が見れそうだぜぇ!)

男(今までにないほどの力が溢れてくるっ!今ならできるかもしれない!ジャンケン能力の進化!第二段階!)

先生「じゃあ三本目〜!」

男・ぐぅ子「最初はグー!ジャンケンッ…!」

男・ぐぅ子(プリンを貰うのはこのっ……!)

男(俺だ!)

ぐぅ子(私よ!)

男・ぐぅ子「ポンッ!」



俺はパー!ぐぅ子は…グーッ!

ぐぅ子「私の勝ちね」

男「何言ってんだ。手をよく見ろ。俺の勝ちだぜ?」

ぐぅ子「それはこっちの台詞…って」ハッ!

男「逆転の能力の発動権は俺にしかない。もちろん解除権もな…」

ぐぅ子「一体いつの間に!手を出しきる瞬間までは空間の変化を感じていたのに!」

男「自分でも驚いてるよ。どうやら俺はとんでもない力に覚醒しちまったらしい。」

男「好きなタイミングで逆転空間を切り替えられるようになっちまったみたいなんだ。」


男「例えお互いが手を出しきった後でもな…」


ぐぅ子「!?」

ぐぅ子「なによそれ・・そんなの反則じゃない!」

パー太「確かに事実上の『負けも勝ちにできる』能力…勝率も上昇する能力へ進化している!」

先生「優勝は男君でーす!はい男君プリン」

男「ありがとうございます!」

男(…にしてもなぜぐぅ子は今日に限って登校してきたのだろう)

ぐぅ子「うぅ…グスッ」

ナンダー?ザワザワ…

ぐぅ子「プリン…欲しかったよぉ…」

男(なんで泣いてるんだよ!やめろよ!もしかしてこいつ…)

男「お前もしかして今日の給食がプリンだったから学校に来たのか?」

ぐぅ子「うん…」

ザワザワ…

「かわいそー」

「男君がムキになるから…」

「プリンあげなよ〜」

男(なんだよこの空気!ジャンケンに勝ったのは俺だぞ!?)

男(…仕方ねえな)

男「やるよ、プリン」

ぐぅ子「えっ?いいの?」

男「欲しかったんだろ?いらないなら食っちまうぞ?」

ぐぅ子「ああ〜、そ、それはダメ!ありがとう…」

イイゾ〜

カッコイイ〜

男(外野うるせーな)

ぐぅ子「あのね、私明日から学校に来ることにしたわ」

男「しばらくプリンは給食に出ないぞ?」

ぐぅ子「男君にジャンケン勝ちたいの!でもこういう場面じゃなきゃ意味ないでしょ?いつ欠席者が出るかも分かんないし」

男「なんだよそれ…ははは…」

パー太「そのときは僕もぐぅ子さんにリベンジするよ!それに、今男を止められるのは僕の能力くらいだろうしね」

ぐぅ子「のぞむところよ!私だってレベルアップしてもっと強くなるんだから!」

チョッ平「またライバルが増えちまったなぁ?」

男「でも、それはそれで俺達のジャンケンの実力にもさらなる磨きがかかるってものだろう?」

さぁこれからも!これを読んでいる君も!

ジャンケンしようぜ!いくぜ!


\最初はグー!ジャンケンポンッ!/




おわり




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