【ZOIDS】アーバイン「ゴジュラスの谷」 (83)





惑星Ziの、長きに渡る戦争は終わった。

しかし、最強兵器“ゾイド”を利用して再び、この平和の世に戦乱を招こうとする者がいる。

それに対抗するため、帝国と共和国は共同で、平和維持を目的とした特殊部隊……

「ガーディアンフォース」を設立した。






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戦争が終わるに伴い、盗賊稼業へ復帰していたアーバインだったが、

ヒルツが裏で糸を引いていたゾイドコア強奪事件の解決を機に、

相棒のコマンドウルフと共に再び、バンたちの下へ身を寄せることとなった。



事実上のガーディアンフォースの一員として活躍を続けるアーバイン。

そんなある日、彼は相棒のコマンドウルフの機嫌を損ねてしまった。

これはその時のアーバインが、自身の“過去”の出来事を思い出す話だ。









             ゴジュラスの谷








アーバイン「なぁ……勘弁してくれよコマンドウルフ」

アーバイン「ちょっとばかし、連中のゾイドを借りただけじゃねえか……」

コマンド「……」

アーバイン「……チェッ、強情な奴だ」

バン「はは、ピクリともしないなっ」

ジーク「キュオッ」



バン「……コマンドウルフ、“相変わらず”なんだな」

アーバイン「あぁ……」






俺の相棒だが……こいつは俺が一度でも、他のゾイドに乗るとたちまち機嫌を悪くしちまう。

ゾイドってのは生き物だから、確かに個性はあって然るべきだ。

そんなコイツと、俺は今までずっと一緒だったんだしな。

だが……今回は、ちと長引きそうだな。

面倒だ。






……思えば、あの時もそうだった。

それは戦争が終わって、バンと再会する前のことだ……。


……
…………
………………






アーバイン「ゴジュラスの谷だぁ?」

情報屋「あぁ……そうさ」

情報屋「共和国軍が先の戦争で“反乱軍”と呼ばれていた頃」

情報屋「戦況の打開のために、大量の野生体ゴジュラスを捕獲した場所だよ」

アーバイン「イセリナ山の中腹か……俺は聞いたことが無い」

情報屋「かつては秘匿区域として隠ぺいされていた場所だからね」

情報屋「今、そこには幼生体のゴジュラスと“変わり者”の一体しか残っていない」






アーバイン「幼生体か……」

アーバイン「じゃあ“連中”は、そいつを狙っているのか」

情報屋「つまりは、そういうことだ」

情報屋「目的は分からないが、現に連中は各地のゾイドの乱獲を続けている」

情報屋「これは、それを見かねた各地の自警団の依頼なんだよ」

アーバイン「……分かった、ありがとうよ婆さん」

アーバイン「その依頼、受けるぜ」






アーバイン「ゴジュラス……か」


形式上、盗賊に戻ったわけだが……

俺は、先の戦争で両軍に顔が広く知れてしまった。

だから、今はもっぱら賞金稼ぎとして食い扶持を繋いでいる。

この婆さんは馴染みだ。情報は信頼できるだろう。



それに、俺はゴジュラスとの縁がある男だ……

それが決め手だった。






ガシャン……ガシャン……


俺はすぐに、コマンドウルフでイセリナ山中腹のポイントへ向かった。

目的地は例のゴジュラスの谷だ。


盗賊の連中が辿り着いちまう前に、俺は谷の全貌が知りたかった。

俺は、コマンドウルフ一体で“数”を相手にすることになるだろう……。

だからこそ、それに渡り合うためには現地の地形や状態を把握しておく必要があった。






情報にあったのは、まずヘルディガンナーが3体。

捕獲したゾイドの運搬用に、1体のグスタフを用いているらしい。

更に、もう3体のゾイドを目撃したという奴がいるらしいが……

これだけが分からねえ、信憑性の低い情報だ。


……それでも、常に最悪の想定はしておくべきだ。






情報にあったポイントに到着した。

夜通しコマンドウルフを走らせ、着いたのは昼時だ。



谷を見下ろせる小高い岩山……俺はまずここを陣取った。

眼下には青々とした木々が生い茂り、先ほど走破した荒野に似つかわしくない緑色の大地が広がる。

こんな昼間から盗みを働くほど、連中も馬鹿ではないはずだ。

俺はここで、腹ごしらえに入ることにしたんだ。






コトコト……


携帯用の鍋とコンロで、簡素な芋のスープを作る。

死んだ妹に、昔よく作ってやったものだ。

それが、いい具合にとろみのついてきた頃だった……。


ガゥ…………!


突然、相棒が唸りながら、首を持ち上げる。


アーバイン「あー?」

アーバイン「どうしたコマンドウ……」

アーバイン「ッ!」






ズシンズシン……



俺は気付かなかった。

そいつらは小さいが、紛れもなくゴジュラスだった。

その奥には一体だけだが、20mは優に上回るだろう成体のゴジュラスもいる。


アーバイン「囲まれた……ッ!」


俺はすぐさま、相棒のコクピットへ飛び乗った。

野生体のゾイドは何をしてくるか分からねぇ!






アーバイン「チッ、人の飯時に来やがって……!」

アーバイン「来るなら来やがれッ!」



グォォォォォォォォン!



四足を大地に踏み込ませ、コマンドウルフが勇ましく吠えつける。

こちらをじっと見て、動かないゴジュラス達。








キュォォォォォォン……





……すると、なんてこった。

成体のゴジュラスが情けない声を出し、こちらに背を向けやがったんだ。








アーバイン「……は?」


俺は愕然とした。相棒も同じだろう。

でかい図体をした成体が地響きを上げて逃げ出すと、幼生体もそれにぞろぞろと続いた。

……助かった……のか?






そう思うとともに、俺は理解した。

ゴジュラスの捕獲区域だったこの谷において、なぜ“変わり者”の成体が残っていたのかを。



それは、奴があまりにも臆病で戦力とならなかったからだ。


……
…………
………………





やがて二つの月が昇り、夜を迎えた。

肌寒さの際立つ荒野の夜だ。



俺はコクピットを降り、岩山の表面に静かに耳をあてた。

聞こえたのは、すぐ後ろにいる相棒の駆動振動。

……そして、遠方より迫る数体のゾイドの足音だ。


アーバイン「来やがった……」






その足音の方向にあたりを付け、左目の眼帯に仕込んだ望遠レンズを絞る。

イグアナ型のゾイドが3体に、ムンベイの相棒で見慣れたダンゴ虫型が1体。

……これで間違いねぇ。



俺は行動に移すべく、再びコクピットへ上がった。

コンソールを叩かずとも、こいつ自身の意志がコンバットシステムを立ち上げてくれる。

俺はその意志を汲んでうまく扱ってやるだけだ。



アーバイン「……さぁ、行こうぜ相棒!」

グォォォォォォォォォン!






………………
…………
……


……深い森の中、木々を縫って2体のヘルディガンナーが疾走する。

1体のゴジュラスの幼生体を追い立てているようだ。

火器は使っていない。あくまで、生け捕りが目的だな。






やがてそいつが力尽き、その場に倒れ込んでしまった時だ。

射界に奴らを捉えた。すぐさま、トリガーを素早く二度引く。

相棒の背中に装備したロングレンジライフルが、音を立てて二筋の弾道を闇に残した。



ガンッ!
ゴッ!



その一つが捕獲用ネット弾を発射するランチャーを、

もう一つが奴の腰部を容易く貫き、やがて爆炎を放った。






それは一瞬のことだった。



残す1体のパニックが解けるよりもはるかに早く、俺は両手の操縦稈を思い切り捻る。

相棒は軽快なターンを描き、健在なヘルディガンナーの側面に肉薄した。

奴はライフルを慌てて放ったが、そんな取り回しの悪い得物でこいつに当たるはずがない。


アーバイン「へへっ、遅いなぁ!」


明後日の方向へ飛んで行った弾がどこかに着弾した頃だろうか。

そん時にゃ既に、コマンドウルフの電磁牙が奴の側面の動力パイプを食いちぎっていた。






後ろを振り返り見る。

そこにはスパークを起こし、動けなくなった2体のヘルディガンナーがいた。

一応、急所は外してあるが……。


グォォォォォン!


おいおい相棒、雄叫びを上げるのはまだ早いぜ。

あと、1体が残っているんだ。

そうつぶやいて、コマンドウルフの加えていたパイプを離させようとした。




……その時だった。

俺と相棒の周囲が、ドカンと音を立てて爆発を起こしやがった。







アーバイン「な……ッ!?」



またしても俺だけが気付けなかった。

ここにいる連中のゾイドは4体だけじゃねぇ……。



情報にあったもう3体のゾイド。

そこに立っていたのは、黒く塗られた帝国軍の高速大型ゾイド……



“セイバータイガー”達だった。




少しはなれます、すみません

これ需要あるんですかね(震え声)




グオオオオオオォォォォ!


連中、あんなもんまで用意してやがったのか……!

さっきのヘルディガンナーは囮だったのか!?


ズンッ!ズンッ!


1体の腹部から放たれたショックカノンをかわし、俺は相棒を走らせた。

小型ゾイドの3体が相手ならいざ知らず、コイツ1体で渡り合えるはずもない戦力差だ。

余りにも分が悪すぎる……!

そう思い、俺はひとまず形成を立て直すこととした。






咥えたパイプを線上に放り投げたが、奴らはそれを軽々と飛び越えた。

ショックカノンの射線を避け、森の木々を盾にして、

俺はコマンドウルフをジグザグに走らせる。

響き渡る足音と爆音。眠っていた鳥たちが一斉に飛び去った。


ガシャン……ガシャン……!


森の中では、小回りの利くコマンドウルフの方が速い。

……だが、連中も相当食らい付いて来るのが分かった。


アーバイン「こいつら……ただの盗賊じゃねぇ!」






一介の盗賊が、3体ものセイバータイガーを揃えられるとは到底思えない。

それに、あの腕と統率力……俺は、一つの結論を出した。

こいつら……元帝国軍人だ!

それも、プロイツェンの一派の残党……!

そんな連中が、なぜゴジュラスの捕獲に来たのかは分からない。



一つ言えること。それは、状況が最悪だということだ。






ズガァンッ!

アーバイン「ぐあぁっ!」


チクショウ、一発いいものをもらっちまったらしい!

コクピットが大きく揺れ、相棒のグォォという痛ましい声が聞こえた。






俺はすぐさま、コンソール下部の赤いスイッチを叩き押した。

すると間もなく、コマンドウルフの腰より伸びる筒状ユニットが、黒い煙を噴きだした。



虎の子の煙幕だったが、効果的だった。

3体のセイバータイガーは追って来られず、俺と相棒はなんとか岩山に逃げおおせた。




……
…………
………………





アーバイン「すまねぇ……コマンドウルフ」

グゥゥォォォ……


コマンドウルフのアバラのような左胸部の装甲が損壊し、激しくスパークを起こしている。

それを中心に、右足周りにダメージが広がっているようだ。

幸いゾイドコアは問題なかったが、これ以上は走らせられない。



悔しいが……これ以上は打つ手無しだ。







ズンッ……



アーバイン「……ゴジュラス」


地響きがした。

振り向くと、そこには昼間の“変わり者”が立っていた。







谷底での騒動から逃げ出してきたのか……?

ガキ達をほっておいて……?


ゴジュラスがこちらを、どういうつもりで見ていたのかは分からない。

俺が振り向くと、そいつは踵を返しまた逃げ出した。


情けない奴だ……

その時、俺はもうほっておこうと思った。







……だが、ひとつ言ってやらないといけないことがあるような……

……そんな気がしたんだ。



アーバイン「……待てッ!!」



俺は逃げるゴジュラスを追って、駆け出した。








アーバイン「おいゴジュラス!!テメェそれでいいのか!!」

アーバイン「ハァ、ハァ!ガ……ガキが狙われ、てんだぞ!!」


ズン……ズン……


アーバイン「それでも本当に“ゴジュラス”なの、かよ!!」

アーバイン「ハァ、ハァ……ッ!!」


ズン……ズン……








アーバイン「迫る敵をすべて叩き潰す恐竜ゾイドの王!!」

アーバイン「ハァ、ハァ……!」

アーバイン「それが、ゴジュラスなんじゃねぇのかよ!!」


ズン……ズン……




アーバイン「俺がガキの頃に憧れたゴジュラスは……」

アーバイン「お前みたいなやつじゃねぇ!!」


ズン……








アーバイン「てめぇの誇りは……!」

アーバイン「どこに行ったんだァ!!」


……ズンッ








アーバイン「ゴジュラス……」

アーバイン「俺と一緒に……戦ってくれ」

アーバイン「あんな連中に……お前らがいいようにされる姿なんて……」



アーバイン「……俺は、見たくねぇ」







荒野に流れた沈黙の時間。

野生の心を失っていた臆病者のゴジュラス。



そのバカでけぇ頭を、そいつは俺の方に降ろしたんだ。

開かれるオレンジ色のキャノピー。

光を灯した“コンバットシステム”の文字。



もう迷いはないんだな、ゴジュラス。





………………
…………
……


残党兵「へへへっ、これで全部だなぁ……」

『はい、間違いありません!』

残党兵「途中、想定外の事態は起きたが……」

残党兵「終わり良ければ全て良しだ」

残党兵「この幼生体どもをヒルツとかいう若造に渡せば……」

残党兵「俺たちは軍に戻らなくても、遊んで暮らせるだけの金が手に入る!」

『ヒヒヒッ!』

『うへへへ……!』






『うああぁぁぁあぁぁあああああ!!』



突然の耳をつんざく絶叫と共に、遠方で回収作業に勤しんでいた部下の通信が途切れた。

続いて、ギシャンという激しい音が森中に響き渡る。


残党兵「なっ!?」


残党兵のリーダーが、その音のする方を見た。




……そこには、木々よりはるかに背の高い山のようなゾイドが立っていた。






グオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォッ!!!



そこにいるどのゾイドよりも大きな咆哮。

ここの主は我だと言わんばかりの叫びに、大地は轟いた。

キャノピーに隠れた眼光が激しく光り、先ほどとはまるで違う凄まじい闘志を表す。



マニュピレーターが先ほど握り潰したヘルディガンナーを投げ捨てた時……

駆動部のキャップがギリギリと音を放ち、回転する。



それは、力強い肢体の次の動きを予感させた。






アーバイン「すげぇ……!」

アーバイン「すげぇぜゴジュラス……!」



俺は柄にもなく興奮していた。

戦争時、デスザウラーとの戦いで乗ったゴジュラスとは、気迫がまるで違う。

こいつが野生体だからか?

……それは分からない。



だが……行けるぜ!こいつなら!!






コクピット右側のスロットルレバーを思い切り前に押す。

するとゴジュラスは再び咆哮し、その巨体を前へ前へと進めた。


ズガンッ!ズガンッ!


コマンドウルフとはまるで違う走行時の重量感。

着地音で発生する振動がセイバータイガーの戦意を減衰させ、ジリジリと後ろへ下がりだす。






残党兵「お、おい、引くな!!」

残党兵「敵はゴジュラス1体だけだ!火器も何も持っていない!」

残党兵「落ち着いて、射撃で倒せ!」

『り、り了解ッ!!』



残党兵の一味は統率を取り戻し、一斉に腹部のショックカノンを放った。

幾多もの光が弧を描いて1体のゴジュラスを直撃し、爆炎を噴き上げる。






だが、金属の塊と形容される程の重装甲に包まれたゴジュラスには全く効果がなかった。


『ヒ、ヒィ……ッ!』

アーバイン「おらぁぁぁっ!!」


俺は動きの止まった1体のセイバータイガーに、ゴジュラスを肉薄させた。

至近距離のショックカノンが、キャノピー下に当たって激しく振動する。

が、こいつの勢いは止まらねぇ……!


そのままの勢いで、ハイパーバイトファングをそいつのドテッ腹に叩き込む。






ゴォォンッ!!


バキバキと音を立て、セイバータイガーのボディが一気に砕けた。


そいつが崩れ落ちる様を見た連中は、戦法を変えることにしたようだ。

今度はゴジュラスの周りを2体でガシガシと回り始めた。

円陣の中に閉じ込め、機を見て格闘戦に持ち込む魂胆と見た。






アーバイン「あーらよっとぉ!!」



230tの全身を加速させ、思い切り捻り上げる。

その勢いで放たれたクラッシャーテイルは空を切ったが、セイバータイガー1体の軌道を逸らすことに成功した。

そして、続け様に放ったクラッシャークローが、そのセイバータイガーを捕らえたんだ。


ガォン!


『うわぁぁぁ!』

「捕まえたぁ!」






重金属の激しく軋む音を放ち、爪周りのキャップが激しく回転する。

俺は火花を散らす巨大な爪を、そのまま首元にねじ込もうとした。

だが、敵も易々とそれをさせてはくれねぇ。



もう1体の敵が、コイツの背びれを思い切り駆け上るのが分かった。

それに気づいた瞬間には、既にそいつがゴジュラスの首元に大きな牙を突き立てていた。


残党兵「く、くたばれぇぇぇ!」






金属の突き破られる音と共に、コクピット内で火花が激しく散った。


アーバイン「ぐあぁッ!!」

アーバイン「ま、まだまだぁ―――ッ!!」


俺は叫んだ。

それに応えるかのように、コイツは手に持っていたセイバータイガーの首を捻じ切る。

グォォォと断末魔を上げ、ズシンとその身を横たえた。






アーバイン「あと……1体か!」



だが……こいつはだいぶガタが来てるらしい。

整備不良の野生体だ、それは仕方のないことだが……

先ほどの首への一撃がかなり効いたらしい。

眼前のコンソールが消えては映り、コクピット内が赤色アラートに染まる。






残党兵「ハァ……ハァ……」

残党兵「なかなか、手こずらせてくれるじゃねぇか……!」


アーバイン「こいつぁ……けっこうやりやがる……!」



だが、それはアイツほどじゃねぇ……。

同じセイバータイガーに乗っていた“レイヴン”は、もっと恐ろしい奴だった。






アーバイン「いくぜゴジュラス!!」

アーバイン「お前の力を……見せてやれッ!!」


グオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッ


最後の勝負に出る。

間接が激しく軋み、ゴジュラスの意識が朦朧としていることを承知の上で、

俺は全力でこいつを走らせた。



ズガンッ!ズガンッ!ズガンッ!






セイバータイガーも、こちらに向かって全力で駆ける。

速さではあちらの方が遥かに上、乗る勢いはかなりのものだろう。

だが、こいつはもう恐れはしない。

完全に取り戻したゴジュラスとしての誇り。

それをコイツが捨てることはもうしないだろう。



……なら、俺もそれに応えなきゃなぁ!!






巨大な戦闘機獣同士のぶつかり合いは、周囲の森の地形を大きく変えた。


凄まじい地響きを立てて、セイバータイガーが先に飛び上がる。

そして、激しく光る巨大な爪ストライククローが、ゴジュラスの顔面の右頬を大きく抉り取った。





その時、雌雄は決した。

セイバータイガーの腹部が、金属の飛沫をあげて霧散する。

ゴジュラスの巨大な左腕が、セイバータイガーのゾイドコアを思い切り貫いたのだ。


アーバイン「うおおおおおぉぉぉ!」

残党兵「ぐあああぁぁぁぁ!!」






やがて、セイバータイガーの目の光がフッと消える。

それに合わせるかのように、慢心創痍のゴジュラスがその場に崩れ落ちた。



その衝撃で、アーバインはコクピットから投げ出される。


アーバイン「ぐあぁッ!!」



そんなアーバインを自身のコクピットで受け止めたのは、駆け付けた彼のコマンドウルフだった。

それは夜が明け、陽の登る最中のできごとだった。


……
…………
………………


またすこし離れます

すみません




アーバイン「ゴジュラス……悪かったな」

アーバイン「お前をそんな顔にしちまって」


ゴジュラスはグォォと答える。

全身を酷く損傷していたが、ゾイドコアは無事だった。

長い時間はかかるだろうが、コイツは大丈夫だろう。






アーバイン「連中の拘束も済んじまったし……」

アーバイン「俺は、ここらでおいとまするかな」


グォォ…






アーバイン「そんじゃな」

アーバイン「お前と戦えて、結構楽しかったぜ」


グオオォォ







この谷はこれから、こいつが守っていくことになるだろう。

俺はゴジュラスに別れを告げ、歩き出した。

イセリナ山を燦々と照らすゾイドゾーンの太陽を背に、相棒の下へ。





俺とゴジュラスとのやりとりを見ていたコマンドウルフ。

拗ねて、しばらく俺を乗せてはくれなかったなぁ……。


……
…………
………………





バン「アーバイン……」

アーバイン「…………」

バン「おい、どうしたんだよアーバイン!」

アーバイン「……なんでもねーよ」

アーバイン「……まっ、たまには相棒も休ませてやるかな」

バン「?」






『バン、アーバイン、トーマさん!』

『至急、作戦室まで来て!』

アーバイン「あぁ?」

バン「フィーネからの通信か?」

『レイヴンのジェノザウラーが北東で見つかったの』

『ドクターからの指示があるわ、だから……!』

バン「レイヴン……!」

バン「分かった、すぐ行く!」

トーマ「ふっ、この……トーマシュバルツ!」

トーマ「フィーネさんの下へ、今参りまぁぁぁぁぁぁすぅぅ!!」



アーバイン「…………」







アーバイン「……ははっ、そういうことだ相棒」

アーバイン「頼むから、力を貸してくれよ」


アーバイン「……なっ?」





―――――――――fin―――――――――――




このお話はこれで以上になります。

アニメのゴジュラスもう少しがんばってくれよなー頼むよー(迫真)

ここまで読んでくださった方、楽しく書かせていただきありがとうございました。

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