提督「ル級を拷問する」 (20)

大淀「先日捕縛された空母ヲ級からの情報提供により、戦艦ル級を捕縛することに成功しました」

提督「ほう、あの情報が役に立ったか」

大淀「はい……しかし、あの情報はあの個体のみに通用する情報だったようで、その後の作戦は全て失敗しているようです」

提督「ふむ……一体でも捕獲できたのは御の字ということか……。こちらの被害はどのくらいだ?」

大淀「はい、報告によれば、運搬中に例の代物で小破に満たない火傷を負った者が1名、そして……」

提督「私の事は気にするな、続けろ」

大淀「あのあまりの惨状に、心が大破してしまった者が一名となっております」

提督「そうか……火傷を負った者には修復剤を、大破した者には孤独のグルメを使ってやれ。きっと彼女も理解してくれるはずだ……」

大淀「ではその様に」

提督「コンビニ飯も……時には良い物だ……」

大淀「……提督」

提督「なんだ?」

大淀「その……今回も提督が尋問なさるのですか?」

提督「……答えるまでもない」

大淀「……提督!」

提督「くどい!」

大淀「……はい……」

提督「……大淀。心配してくれていること、嬉しく思う。しかし、これは誰かがやらねばならんのだ……。ならばせめて、汚れるのは私一人でいい」

大淀「…………」

提督「それでは今回は、金剛に連絡を」

大淀「……はい」

提督「さて、私も準備をするか……」

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提督「ふむ……さすが明石、よい収容施設だ」キィ

ル級「…………」チャリ

提督「住み心地はいかがかね?」

ル級「悪クハナイ。ホテルノスイートニモ引ケヲ取ラナイ」

提督「ほう……それは光栄だな」

ル級「シカシ、ヒトツ気二食ワナイコトガアル」

提督「ほう……出来る限りの事はさせてもらおう」

ル級「ポーターガ、私ノ荷物ヲ返シテクレナクテナ」

提督「クックックッ……中々に楽しいお嬢さんの様だ」

ル級「冗談ノ一ツモ飛バセナイ様デハ、海二出ル資格ハナイ」

提督「それは全面的に賛同させてもらおう」

ル級「フム、気ガ合ウナ」

提督「しかし尋問には手を抜かんぞ」

ル級「チッ」

提督「ところで貴様はよく喋るのだな」

ル級「ワレワレニモ色々居ルノダ」

提督「ヲ級は寡黙だったな」

ル級「ソウカ……。今、ドウシテ居ル?」

提督「安心しろ……とは言っても信じられんだろうが、一応無事だ。少なくとも体に傷がつくような事は何もしていない」

ル級「……何ヲ言ッタ所デ私ニハ確認ノシヨウガナイ」

提督「……いずれ、会う時もあるかもしれん」

ル級「楽シミニシテオコウ」

提督「…………」

提督「それで、だ」

ル級「コトワル」

提督「早いな」

ル級「正確ニハ答エラレナイ、ダ」

提督「それは、忠誠か?安っぽい正義感か?」

ル級「クックッ……知ラヌ物ハ答エラレナイ、答エヨウガナイ」

提督「それを決めるのは貴様ではないさ……残念だ」

ル級「サテ……私ハ嘘ヲ付クカモシレンゾ」

提督「そうさせない術を、私は心得ている」

ル級「ソレハ……是非、オ手並ミ拝見トイコウカ」

金剛「失礼しマース……」がちゃり

提督「ああ、金剛……すまないな……そこに置いたら出て行ってくれ」

金剛「…………」

提督「金剛?」

金剛「イヤ、デス」

提督「金剛……これからすることは……」

金剛「イヤデース!」

提督「金剛!」

金剛「ダメデース!ダメなんデース!」

金剛「提督は優しいデス」

提督「そんなことはない。私は誰かを傷つけることしかできない、粗野な人間だ」

金剛「……そうして自分だけ傷つこうとスル……そんな人が、優しい人じゃない訳ないデース」

提督「買いかぶり過ぎだ……。現に、今から私が行おうとしている事は……残酷なことだ……」

金剛「提督は、それを望んでいますカ?」

提督「……ああ、私は望んでソレを為す。そのための私だ」

金剛「そんなに……戸惑って……悩んで居るノニ……」

提督「嘘ではない。嘘だなどと言わせない!……これが私だ」

金剛「分かりましタ」

提督「分かってくれたか……ならば早々に出て……」

金剛「私もここに居マース」

提督「駄目だ」

金剛「居マース!」

提督「駄目だ!!」

金剛「嫌デース!テコでも動かないヨー!」

提督「…………好きにしろ……」

ル級「終わったか?」

提督「……尋問の空気ではなくなってしまったな」

ル級「デハ、終ワッテクレタラアリガタイノダガ」

提督「そうもいかんさ……」

ル級「オ互イ辛イ身ダナ」

提督「フッ……深海棲艦に同情されるとはな」

ル級「デハ、私ニモ同情シテクレ」

提督「……いいだろう。そうだな茶くらい、馳走してやろう」カチャリ

金剛「私が……」

提督「見ていろ」

金剛「シカシ……」

提督「金剛。貴様は、見ているだけだ。それがここに居る条件だ」

金剛「…………ハイ」

提督「………………そら」コポポポ

ル級「…………フム。Celestial SeasoningsノWild Berry Zinger(ベリーティー)カ。手ゴロデアリナガラ良質ナハーブティーダナ……ヨイ趣味ヲシテイル」カチャ

提督「シナモンは?」

ル級「シナモン・スティックハ、私ハ使ワ……」

提督「違う……」

ル級「ハ?」

提督「遠慮するな、私が入れてやろう」ドサドサ

ル級「アーーー!!シナモン・シュガーヲ入レルナド……貴様、何ヲシテイルノカ分カッテイルノカ!」

提督「ふんっ、分からないとでも思うか?」

金剛「……ベリーティーは、そのフルーティーな香りと僅かな酸味が命デース……それにシナモン・シュガーなど入れたら……」

ル級「臭イハ シナモン二染マリ、味ハタダ甘イダケ……紅茶二対スル侮辱……貴様、殺シテヤル!」

提督「それは、やめておいた方がいい。後悔することになる」

ル級「黙レ!」バッ

金剛「させまセーン」

提督「やれやれ……ル級。貴様は私が何を持っているのか忘れたのか?」

ル級「何ヲ言ッテ……ハッ、マサカ貴様ガ持ッテイルノハ!」

提督「そう、イギリス王室御用達、ウェッジウッド製のティーポットだ。私に何かすれば、これが砕け散ることになる」

金剛「フギャー!」ブクブク

ル級「……クッ……人質ヲ取ルトハ……貴様、ソレデモ軍人カ!卑怯者メ!」

提督「何とでも言うがいい!我々人類は、手段など選んではおれんのだ。その為には鬼にもなろう!」

提督「さあ、次のティータイムだ」

ル級「オノレ……」

提督「これが何か分かるか?」

ル級「アールグレイ……定番ト言ッテモ過言デハナイホド有名ナ紅茶ダ」

提督「そうだ。ベルガモットの香りが強く、ケーキに入れることもある。その特徴的な香りは、誰もが一度嗅いだことがあるだろう」

ル級「シカシ、ソレハウェッジウッドノ物ダ。特ニ香リガ強イ。日本人ニハナオサラダ」

提督「そうだ!それを……こうする!」ゴリゴリゴリ

ル級「ナッ!石臼デ引クダト!?ソンナ事ヲスレバ……」

提督「そうだ!ただでさえ強烈な香りが、さらに抽出されやすくなる!」

ル級「侮辱ダ!紅茶ニ対スル侮辱ダッ!」

提督「この程度で……こうして粉末状にした茶葉を……今度は煮込んでやる!」

ル級「ナニィ!ソンナ事ヲシタラ、最早苦クテ飲メナクナルデハナイカ」

提督「そしてこれから茶こしを使って茶葉を取り除き、ミルクと砂糖を大量に入れ、さらに煮込む」ドバドバ

ル級「貴様ァ…!紅茶ノ香リト味ヲ楽シム為ニ、邪魔ニナルミルクナド……ハッ……コレハ……」

提督「そう、これはチャイだっ!」

ル級「シ、シカシ……チャイハアマリ質ノ高クナイ茶葉ヲ美味シク飲ム為ニ作ラレタ飲ミ方……。高級ナ茶葉デハ……」

提督「そう、そうだな!質の悪い茶葉で行うべき飲み方を、あえて高級品で行うのだよ!」

ル級「オノレェ……」

提督「さあ、飲み頃だ、飲め」

ル級「クゥ……甘イ……香リモキツイ……大体、ミルクヲ入レル事自体邪道ナノダ」ゴク…

提督「しかし……意外にも美味い。そうだろう?」

ル級「ソ、ソンナコトハ……ナイ……」

提督「んん~?ならば何故、一瞬口ごもったのだ?」

ル級「何ノコトダカ……」コク

提督「……ふっ、まあいい。貴様の体に聞けばいいことだ」

ル級「…………」ゴクン

提督「実は先ほどの茶葉でもう一杯、別の紅茶を淹れておいたのだ……さあ、飲むがいい」

ル級「……コノ……紅茶二アルマジキ脂ギッタ臭イ……マサカ……」

提督「そう、これはバター茶だ!」

ル級「キサマ……紅茶ヲ……アールグレイヲ……ナンダト思ッテイル!」

提督「一度も口にせぬ者が、何を言うか!さあ、飲め!」

ル級「……クッ……コレハ……」ゴクッ

提督「甘い、だろう」

ル級「ヌゥ」

提督「そして予想外に美味い」

ル級「…………コレハ……シカシ、コレハ……」ゴクゴク

提督「そう、本来バター茶は塩とバターを入れた、栄養補給用の飲み物だ。嗜好品というのとは少し違った。いや、違っていたというべきか。近年、砂糖が安く手に入るようになり、嗜好品として甘く味付けされたバター茶も生まれ始めたのだ!」

ル級「シカモ……塩ガ入ルコトデ、甘サガ際立ッテ……」ゴクリ

提督「ふっふっふっ……どうした?紅茶にミルクを入れるのは邪道ではなかったのか?」

ル級「……ハッ!ソウ、ソウダ!ダカラコノ紅茶ハ本来ノ在ルベキ味ヨリモ翌落チテイル!」

提督「ハッ!口ではそう言っているが、体はどうかな?」

ル級「クゥゥ……違ウ……コレハ……」ゴクリゴクリ

提督「そうだ……甘い物が続いて、そろそろ苦味が恋しいのではないか?」

ル級「ソンナコトハ……」

提督「そう言いつつ、次の杯に手が伸びているではないか……まったく、体は正直だな」

ル級「クッ……負ケルモノカ!」

提督「さあさあ。こちらは苦いぞ?どうだ?ん?」

ル級「~~~!クソッ」ガバッ

提督「はっはっはっ!さあ、飲め!」

ル級「ゴクゴクゴク……」

提督「それが貴様にとっての地獄だ!」

ル級「グハァッ……コレハ……コレハ……」

提督「どうした?ん?苦いだろう?」

ル級「キサマァ……紅茶好キニ何テ物ヲ……コンナ……コンナ……」ワナワナ

提督「そう、今貴様が喜んで飲み干した物は……」

ル級「コーヒー……ダト……」

提督「しかも最高級のルアック・コーヒーだ!」

ル級「ウゲェェェ……!」

提督「吐いたところで貴様がコーヒーを美味いと思ってしまった事実は変わらない!認めろ!コーヒーは美味かったと!甘い物の後の、苦味の強いコーヒーは、紅茶より美味いと!」

ル級「ソンナ事ハナイ!紅茶ハ最高ダ!最高ナンダ!コーヒーニナド負ケルモノカ!」

提督「クックックッ……ならばこれはどうかな?」

ル級「……コ、コレハ……!」

提督「ここは日本だ。これがないとでも思ったか?むしろコーヒーなどよりもよほど高品質な物が手に入る」

ル級「コ、コンナ……コンナ……」ブルブル

提督「どうした?飲まんのか?」

ル級「アア……アアアアア!」

提督「最高級と名高い抹茶、天授だぞ。飲まぬのなら私が……」

(参考・40g一万円)

ル級「ウアァァァァ!!」ゴクゴクゴク

提督「堕ちたか……」

ル級「脳ニ突キ抜ケル様ナコノ多幸感!茶葉ダケデアルハズナノニ、ムシロ甘味スラ感ジサセル味!ダトイウノニ確カニ苦味モ感ジラレル!ウニュゥゥゥ!」ゴクゴクゴク

提督「聞くまでもないかもしれんが、一応聞いておこう。……美味いか?」

ル級「オイヒイィィ!オカワリ!オカワリクレ!」

提督「くれ?」

ル級「クダサイ!オ願イシマス何デモシマスカラ!」

提督「ふむ……いいだろう。では、私の質問に答えてもらおうか」

ル級「ハイィィィ!デスカラ!早ク!早ク!」

提督「……金剛……金剛……金剛!」ユサユサ

金剛「……あ……提督……」

提督「気づいたか」

金剛「申し訳ありまセ~ン……私」

提督「いい、気にするな」

金剛「しかし……」

提督「では、ティータイムに呼んでくれ。それでチャラだ」

金剛「ハイ!分かりマシタ!」

提督「ふふ……ああ、ところで今日の茶葉は何にするのだ?」

金剛「そうデスネ~~……五十鈴にしまシヨウ!」

提督「……ん?五十鈴を……呼ぶのか?」

金剛「何言ってるデスカ~。五十鈴は五十鈴デース。抹茶の種類デース!」

提督「……oh……」

以上、終了です
ありがとうございました
依頼出してきます
一応、後一話ほど考えておりますので、またそちらを見かけた際はよろしくお願いいたします

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