咏「うん? あれは……嶺上ちゃん?」 (51)

久しぶりにSS書きたくなったって言うか何て言うか……


咲「……お父さんなんて大っ嫌い!」

咲「そう言って飛び出して来たのは覚えてます」

咏「で、東京まで繰り出してきた。いやいや、嶺上ちゃんって意外と打算的なんだね」

咲「確かに冷静では無かったですね」

咏「つーか東京ならお姉ちゃんの所に行ったら良かったんじゃね?」

咲「……それは」

咏(いっけねー。地雷だったか。門前払いを食らったか、そもそも行けないのか……わっかんねー)

咏「嶺上ちゃん、貸しにしといてやるよ」





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打算的の使い方おかしくね?

咲「え? そんな、悪いですよ。長野に帰ります」

咏「何時だと思ってるんだよ。夜中だぜ? 終電はとっくに過ぎてるって」

咲「後二時間程で始発なのでそれで帰りますから」

咏「その二時間程が心配って言ってるんだよ。嶺上ちゃんに何があったのかは知らんけど、泣きそうな顔したガキを無視するほど私はダサくねーぜ?」

咲「……」

咏「まっ、貸しだけど」

咲「咲です。宮永咲」

咏「そっかそっか。タクシー拾うから着いておいで。咲ちゃん」

咲「……ありがとうございます」

―――――
――――――――――

>>2うん。間違ってるね。適当に脳内変換おなしゃす

咏「一名様御案内ってか?」

咲「お邪魔します」

咏「咲ちゃん、早速で悪いけど携帯貸してくんね?」

咲「え? どうしてですか?」

咏「親御さんに連絡しねーと。咲ちゃんから掛けづらいだろ? 一応私も有名人だし、麻雀って繋がりもあるから見ず知らずってよりはマシだろ?知らんけど」

咲「すいません」

咏「いいってことよ。咲ちゃんとは少し話したかったし」

咲「私と? あと、携帯です」

咏「サンキュー。えっと、お父さんっと……」

咏「もしもし? 夜分遅く申し訳ありません。私、三尋木 咏と申します……ええ。はい、一応プロで活動させて頂いてます」

咏「娘さん。宮永 咲さんですが…………なるほど。ええ、大丈夫です……いえいえ迷惑なんてとんでもないです。この様な言い方もどうかと思いますが、一麻雀打ちとして娘さんとはゆっくりと話してみたいと思っていましたので」

咏「…………咲さんですか? 今、お風呂に行ってます…………はい。はい…………分かりました。ご安心下さい。では失礼致します」

咏「ふぅ。終わったぜ? ん? 咲ちゃん、そんな顔して何かあった?」

咲「え? いや、本当に三尋木プロなのかと」

咏「親御さんにはしっかりとした対応するぜぃ? 咲ちゃん、風呂にする? 飯にする?」

咲「それとも私? ですか?」

咏「んー。それもありだけどねぃ。シャワー浴びて来な」

咲「え? 冗談ですよ?」

咏「いいからいいから」

咲「え? ええぇえ!?」

―――――
――――――――――

咏「咲ちゃん、着替えとタオル置いとくよ」

咲「ありがとうございます」

咏「いいっていいって」

咏(朝の四時前か……少し早い朝御飯だねぇ)

咏(しっかし数奇な巡り合わせってあるもんだね)

咏(親御さんは一ヶ月程って言ってたけど学校は大丈夫なのかねぇ? 高校生の事情なんて知らんけど)

咏(少し早い母親の真似事でもすれば……ダメだ浮ついてる)

咏「あっ、明日の仕事キャンセルしないと」

―――――
―――――――――――

咲「すいません。着付けまで」

咏「気にしない気にしない。分かってて着物を出したからさ」

咲「いい性格してますね」

咏「よく言われるよ。さ、朝御飯食べよ食べよ」

咲「少し早いですけどね」

咏「そりゃしゃーないってことよ」

咲「そうですか。では、頂きます」

咏「よく噛めよー」

咲「……美味しい。朝から肉じゃがっていいですね」

咏「ねー。咲ちゃんさぁ、明日……今日の予定なんだけど買い物行くから」

咲「買い物ですか」

咏「そーそー。咲ちゃんの着替えとか生活用品とかさ」

咲「今日帰りますのでそこまでして頂かなくても……」

咏「帰れる? 相当まずったんじゃねぇの? ま、それでも帰るって言うなら私は止めないけどね」

咲「…………」

咏「咲ちゃんはまだ子供なんだからさぁ大人に甘えとけって」

咲「でも学校が……」

咏「その辺りは大丈夫でしょ。知らんけど、咲ちゃんの事だから無遅刻無欠席だったんじゃね?」

咲「ええ。まあ」

咏「なら留年の心配は無い。学校はサボれる、私は楽しい話し相手がいてくれる。ほら、咲ちゃんにとっても悪くなくね?」

咲「分かりました。ふつつか者ですがよろしくお願いします」

咏「そりゃ未来の伴侶に言いな」

―――――
――――――――――

咏「いやぁ、ごめんね。ドタキャンしちゃってさ」

えり「事情が事情ですし。代役も連れてきて頂けたので今回は許します」

咏「ありがとね」

えり「ええ。それにしても家出娘ですか」

咏「そそ。咲ちゃん咲ちゃん」

えり「咲ちゃん? 咲ちゃんってあの?」

咏「えりちゃんと私に共通する咲ちゃんと言えばその咲ちゃんで合ってるんじゃね?」

えり「宮永 咲ですか。いやいや……いやいやいやいや」

咏「意外だろう? 家出なんてする子じゃなさそうなのに」

えり「外野から見た限りはですが」

咏「話してみてもそう思うぜ? 絵に描いた様ないい子」

えり「やっぱり」

咏「ま、それはいいとして。私としても少し悩むんだよね」

えり「悩む?」

咏「咲ちゃんの事情にどれだけ足を踏み入れてもいいか。別にいくらでも泊まってくれてもいいけどよ、それじゃあ何の解決もならねーだろ?」

えり「相変わらず真面目ですね。私は宮永さんの方から言ってくると思いますけどね」

咏「どして?」

えり「分からないですか?」

咏「うん。わっかんねー」

えり「何となく、ですかね」

咏「えりちゃんも分かってねーじゃん」

えり「かも知れないですね。三尋木プロは食べないんですか?」

咏「ごめんね。家で食べるよ。えりちゃんは気にしないで食べて食べて」

えり「お優しいことで。では三尋木プロの奢りなら遠慮なく」

咏(……三尋木プロね)

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――――――――――

照「激しく燃えた夏の日の夜」
の人?

咏「いんや。お腹ペコペコ」

咲「勝手ながら用意させて頂きましたので一緒にどうですか?」

咏「いいねぇ。咲ちゃんの料理楽しみだよ」

咲「三尋木プロには及びませんけどね」

咏「……咲ちゃんさぁ」

咲「はい?」

咏「嶺上ちゃんは嫌なんだよね?」

咲「いい気はしないですね」

咏「ふうん。ま、いいけどさー」

咲「……何が言いたいんですか?」

コピペミスりました。正しいのはこちらです


咏「ただいま戻ったよ」

咲「おかえりなさい。晩御飯、食べてきました?」

咏「いんや。お腹ペコペコ」・

咲「勝手ながら用意させて頂きましたので一緒にどうですか?」・

咏「いいねぇ。咲ちゃんの料理楽しみだよ」・

咲「三尋木プロには及びませんけどね」・

咏「……咲ちゃんさぁ」・

咲「はい?」・

咏「嶺上ちゃんは嫌なんだよね?」・

咲「いい気はしないですね」・

咏「ふうん。ま、いいけどさー」・

咲「……何が言いたいんですか?」・

>>14ええ。お久しぶりです

咏「三尋木プロ。そんな硬い呼び方なんてしなくていいよ」

咲「そう言う事ですか。すいません」

咏「いいっていいって。咲ちゃんの耳に入る私は三尋木プロしか無かったと思うし」

咲「ええ。でしたら何て呼びましょう?」

咏「咏。うん。咲ちゃんは特別に咏でいいよ」

咲「恐れ多いですね」

咏「私と咲ちゃんの仲じゃん。畏まらなくたっていいって」

咲「ありがとうございます。咏さん」

咏「おー! いいね! もう一回呼んでよ」

咲「恥ずかしいです!」

咏「いいじゃんいいじゃん。ね、もう一回!」

咲「…………咏さん」

咏「よっしゃ、晩御飯にしよっか」 

咲「リアクション薄いですね」

咏「濃くして欲しかった?」

咲「そのままでお願いします」

―――――
――――――――――

咲「そう言えば」

咏「ん? どしたの?」

咲「寝る所……」

咏「あー。そっか一人暮らしだったからなぁ。もう一部屋物置きだし」

咲「ソファー借りていいですか?」

咏「は?」

咲「え?」

咏「咲ちゃん、ソファーで寝るつもり?」

咲「まぁ」

咏「馬鹿言うなよー。天下の三尋木様がソファーで寝かせたら笑われちまうぜ?」

咲「はぁ」

咏「私の寝室使えよ。ま、ベッドしかねーんだけど」

咲「いやいや申し訳ないです」

咏「いいって。気にしない気にしない」

咲「でも……」

咏「年長者を立たてくれよ」

咲「……ありがとうございます」

咏「じゃあ咲ちゃんはもうお眠の時間かな?」

咲「そうですね。すみません。お先です」

咏「うん。お休み。私はもう少し仕事してから寝るよ」

咲「お休みなさい」

―――――
――――――――――

えり「……で、今度は何の用ですか?」

咏「いやぁ咲ちゃんが可愛くてさぁ」

えり「惚気ですか?」

咏「誰が小娘に惚れるかっての。可愛い妹分ってところ」

えり「なる程ですね」

咏「顔を赤くして咏さんだぜ? すっげー可愛い」

えり「何させてるんですか。いい性格してます」

咏「咲ちゃんにも言われた」

えり「高校生に何言わせてるんですか。まぁ、麻雀の方は高校生の枠から外れてますけど」

咏「だよね。えりちゃんはさ、私と麻雀打ちたい?」

えり「何も賭けないのでしたら」

咏「何で?」

えり「プロだから……ではありませんね。多分、楽しいからだと思います」

咏「それだけ私を買ってくれてんだ。ありがとね。不思議なんだよ。咲ちゃんがさ、挑んでこない事が」

えり「インターハイであれだけ楽しそうに打っていたのにですか?」

咏「そう。ちなみに私も麻雀って言葉を数日ぶりに話した」

えり「プロとしてどうなんですか?」

咏「わっかんねー。兎に角、このまま放ったらかしってのはダメだと思うんだよね。知らんけど」

えり「避けているのか、余裕がないのか……」

咏「わかんねーけど両方じゃね?」

えり「なる程。それで三尋木プロはどうされたいと?」

咏「別に私はどうなっても構わねーよ。咲ちゃんが麻雀を辞めなければ」

えり「…………」

咏「えりちゃんだから言うけどよ、私は打ってみたい」

えり「珍しいですね」

咏「そう? これでもプロのはしくれだかんね。ま、咲ちゃんが言ってこない限り我慢するけど」

えり「言えば打ってくれそうですね」

咏「そーそー。無理やりはちょっとね」

えり「お優しいことで」

咏「この前も言ってたね」

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――――――――――

咏「あっそうだそうだ、咲ちゃん」

咲「はい?」

咏「試合でね、2日程さ家空けるんだけどお留守番頼めるかい?」

咲「勿論。大会ですか?」

咏「そそ。鍵渡しとくから出掛けるときは戸締まりだけはお願いねぃ」

咲「多分、出ないと思いますけど了解しました」

咏「出ない? 何で?」

咲「多分、迷子になります」  

咏「……ああ、そう」

――――
―――――――――

咲(暇だなぁ。本棚あるし、何か読もう)

咲(…………これは)

咲(宮永咲。嶺上開花を得意とする高校一年生。王牌の支配に長け、点数調整については目を見張るものがある。実況の際、後者については触れなくてもよいが、前者については触れさせていただこう)

咲(私の牌譜が貼り付けられている)

咲(そんな紙の束が沢山……真面目だなぁ)

咲「……こんな時間、終わったかな?」

咲(テレビテレビっと)

TV『ロン。わっかんねー、これ何点ぐらい?』

咲(オーラスで逆転。凄いなぁ)

咲(…………)

TV『それではインタビューに移ります』

TV『おーどもども。三尋木です』

TV『オーラス、素晴らしい逆転でしたね』

TV『まーねー。ありがとさん』

TV『本日はどの様なお気持ちで対局されたでしょうか?』

TV『ん? 早く家帰って美味しい御飯を食べたいなぁって』

TV『……お祝いか何かですか?』

TV『おっ! いーねーそれ! テレビ見てるだろ? 日が回る前には帰るから晩御飯気合い入れてねー』

TV『それは親御様でしょうか?』

TV『さーねー。何だっていいじゃん』

咲「……買い物行ってこよう」

―――――
―――――――――

咏「いやさ、何て言うんだろ……分かんねー」

咲「……すいませんでした」

咏「今回は調子に乗った私が悪かったと思うけど、まさか本当に迷子になるとは……」

咲「本当にすいません。まだ用事がありましたよね?」

咏「あーインタビュー? いいのいいの。そんなのより咲ちゃんの方が大切だからさ」

咲「…………」

咏「ま、予定より早く帰ってきたし一緒に料理する?」

咲「その前に一つだけいいですか?」

咏「うん? 何? 答えられる範囲でいいなら何でも答えるよ」

咲「インターハイの資料、偶々見ました」

咏「ほーん。それで?」

咲「それと咏さんの古い牌譜も」

咏「負けた試合のだろ?」

咲「ええ。勝った試合の牌譜は一つも見つかりませんでした」

咏「そりゃ私が勝った試合の牌譜はコピーしてないからねぇ。さっきから話の筋が掴めないんだけど、咲ちゃんは何が言いたい?」

咲「回りくどいのは止めます。咏さん、私と麻雀を打って下さい」

咏「何で?」

咲「何でって……」

咏「インターハイ優勝校の大将だか、個人戦準優勝だか知らねーけど理由を言わねーで一応目上に対局を迫るのはどうかと思うよ」

咲「……知ってるくせに」

咏「あん?」

咲「……私が長野を出て来た理由、知ってますよね?」

咏「そりゃあ勿論。知らねーはずないじゃん」

咲「強く……強くなりたいんです。お願いします」

咏「強くねぇ。時間がある時でも大丈夫?」

咲「はい。ありがとうございます」

咏「それじゃ約束だね。それと長野から出て来た理由は知らねー事にしとくよ」

咲「すいません」

咏「後、私に嘘を吐いたのは貸しな。さ、料理料理〜」

咲「…………」

―――――
――――――――――

咏「たこ焼き食べたい」

咲「は?」

咏「いや、だから、たこ焼き食べたい」

咲「作りましょうか?」

咏「咲ちゃんの手作りもいいんだけど、本場のたこ焼きが食べたい」

咲「大阪ですか」

咏「大阪だっけ? まぁいいや、咲ちゃん用意用意」

咲「え? 今からですか?」

咏「もちもち。車回してくるからマンションの前で待ってて」

咲「……了解しました。と言うか、咏さん免許持ってたんですね」

咏「便利だからねー」

咲「ちなみに最後に運転したのは?」

咏「三年前くらいだったかな? 覚えてねーや」

咲「やっぱり、私の手作りじゃダメですか?」

咏「ダメダメ。大丈夫だって安全運転を心がけるからさ」

咲「右左折する時に気を付けることは?」

咏「わっかんねー」

咲「免許返してきましょう。今からでも遅くないですよ」

咏「馬鹿にすんなよ。高速のシューマッハって言われた私だぜ?」

咲「……遺書を書く時間だけ下さい」

咏「大丈夫大丈夫。何とかなるって」

――――――
―――――――――――

咏「な? 何事も無かったじゃん」

咲「それだけ高い車に初心者マーク貼ってたら誰だって車間距離開けますよ」

咏「だから快適だったんだ。咲ちゃん、ナイスアイデア!」

咲「……ええ。それで、本場のたこ焼きの味はどうてすか?」

咏「いやぁ、美味いんだけどさ」

咲「やっぱりプロともなれば舌が肥えるんですか?」

咏「確かに美味いものは食べるけど、わっかんねーけど、何か違うんだよなぁ」

咲「そうですか? とっても美味しいですけど」

咏「…………」

咲「どうかされましたか? それだけ見られると少し、照れます」

咏「咲ちゃん、帰ってたこ焼き作ってくれない?」

咲「え? 大阪に来た意味は?」

咏「いいからいいから。帰りにたこ焼き器買って帰ろうぜ」

咲「何でもありですね」

―――――
―――――――――

えり「大会の中継見ましたよ」

咏「どうだった?」

えり「インタビューで意味不明な事を言うわ、インタビューの途中で帰るわ……社会人としてですね」

咏「そんなのどうでも良くね?」

えり「仮にもトッププロですよ。日本が貴女に注目してるんですよ」

咏「そんなん知らんし。周りの評価よりよっぽど大切なものがあんだよ」

えり「宮永さんですか?」

咏「もちもち。この前、咲ちゃんと大阪にたこ焼き食べに行ったんだけどよー」

えり「はぁ」

咏「何か物足りなかったんだよね」

えり「舌、肥えてますね」

咏「まあね。でさ、帰ってから咲ちゃんにたこ焼き作ってもらってさ」

えり「何の嫌がらせですか?」

咏「それがすっげー美味しくて。何のために大阪に行ったかわっかんねー」

えり「はぁ。妹分の手作りの方が美味しいと」

咏「多分、料理の腕は私の方が上だし、たこ焼きだって他の人に食べ比べて貰ったら本場に軍配が上がるだろうけどさー」

えり「宮永さんの方が美味しいと」

咏「そうそう。誰かに作ってもらう飯がこんなに美味しかったんだなって思ったよ」

えり「せめて手を出すのは高校を卒業してからにして下さいね」

咏「生憎だけどそんなフワフワした物は持ち合わせてねーよ。可愛い妹分だっての」

えり「聞く限りだとそうは聞こえませんよ」

咏「そっかそっか。にしても咲ちゃん可愛いんだよ」

えり「ええ。聞きます聞きます」

咏「大阪行く前にさ、私の運転でって言ったらさ、上目遣いで私の手作りじゃダメですか? なんて言うんだよ」

えり「確かに可愛いですね」

咏「でさーでさー」

――――――
―――――――――――

咏「帰ったよー」

咲「お疲れ様です。どうでした?」

咏「んー……ごめん、これコピーしといてくれない? 一局につき三部。疲れたから風呂入ってくるねー」

咲「はぁ……ってこれ」

咲(咏さんがラスだ……)

――――――
―――――――――――

咲「ん……まだ、夜? 喉乾いた」

咲(あれ? 明かり?)

咲「……」

咏「あーなるほどなぁ。ここでミスったのか」

咲「咏さん、夜更かしはお肌に悪いですよ」  

咏「ん? 起こしちゃった?」

咲「いえ。偶々です」

咏「そっか。じゃお休み」

咲「……毎回やってるんですか?」

咏「うん。毎回毎回。復習は大事だかんねー」

咲「復習してから復讐するんですか」

咏「間違ってねーけど面白くもねーよ」

咲「分かってて言ってます」

咏「目が覚めたんなら少し付き合ってくんね?」

咲「喜んで」

咏「最初からだけどさー」

咲「東一局のこの手ですね」

咏「そうそう。咲ちゃんなら何切る?」

咲「私ですか? 私なら――」

―――――
―――――――――

咏「うーん。暇」

咲「暇ですね。皆は学校行ってるんだろうなぁ」

咏「平日の昼だからね」

咲「何してるんですかね私達」

咏「そりゃあ何もしないをしてるんだろ」

咲「何ですかそれ」

咏「さぁ。そういや咲ちゃん」

咲「私がどうかしましたか?」

咏「私相手にプラマイゼロ出来る?」

咲「多分、無理です。試します?」

咏「平日の昼だぜ? 面子が集まらないって」

咲「そうでした。けど、どうしてその話を?」

咏「咲ちゃんのデータを初めて見た時から気にはなってた」

咲「個人戦のですか」

咏「そう。私には到底出来ない打ち方だからさ」

咲「ある意味一つの特技ですね」

咏「だね」

咲「…………咏さん」

咏「うん? 改まってどうしたの?」

咲「お父さんが帰って来いって」

咏「そっかぁ。寂しくなるなぁ。帰るの4日後にしてくれねーかな?」

咲「名残り惜しいんですか?」

咏「ま、そんなとこ」

―――――
―――――――――

えり「元気ありませんね」

咏「まぁね」

えり「宮永さんが帰ったんですか?」

咏「もう少しでね」

えり「そうですか」

咏「さて、可愛い妹分の為にも明日は大忙しだね」

えり「何かされるんですか?」

咏「ちょっと白糸台までね」

―――――
――――――――――

咲「え? 白糸台ですか?」

咏「そうそう。お呼びだってさ」

咲「お姉ちゃんが?」

咏「個人戦の雪辱を晴らしてきなよ」

咲「……何か手を回したんですか?」

咏「わっかんねー。ほら、早く用意して」

咲「お姉ちゃん、なんて言ってました?」

咏「いんや、何にも。麻雀は打ってくれるみたいだから、後は咲ちゃんしだいだね」

咲「ありがとうございます」

咏「リベンジしてしっかり話を聞いてもらいな。私に勝ったら話を聞く。だろ?」

咲「はい。個人戦では負けてしまいましたからね」

咏「でも今回は?」

咲「勝ちます。負けられません」

咏「その意気だぜ」

――――――
――――――――――――

咲「何から何までありがとうございます」

咏「いやいや。私も楽しかったよ。何かあったら遠慮なくおいで」

咲「ありがとうございます。最後に私のわがまま聞いてもらってもいいですか?」

咏「私が出来ることならね」

咲「最後に一局だけ打ってくれないですか?」

咏「一局ね。いいぜ、座りな」

咲「親はどうします?」

咏「悪いけどさ、私が親でいい?」

咲「一局ですし、全然いいですよ」

咏「よしよし」

――――――
―――――――――――

咲「本当にありがとうございました」

咏「さっきからお礼ばっかだね」

咲「そうですね。でも、咏さんには感謝しきれません」

咏「ふうん。ほら、咲ちゃんのツモだよ。カンする?」

咲「勿論です。カン」

咏「ロン」

咲「……え?」

咏「断幺九、平和、一盃口、槍槓、三色同順、ドラ2。24000」

咲「私の負け、ですね」

咏「咲ちゃん、その千点棒餞別だよ」

咲「餞別、ですか」

咏「そそ。それをどう受け止めるかは咲ちゃんの自由」

咲「……」

咏「うん?」

咲「この千点棒、いつか返しに来ます」

咏「おー! いいね! 楽しみにしてるよ」

咲「では、失礼しますね。ありがとうございました」

咏「じゃーねー。また会おうぜ」

――――――
―――――――――――

二年半後

咏「あー疲れた。あり? 鍵空いてたっけ?」

咲「おかえりなさい咏さん」

咏「……咲ちゃん、空いてた?」

咲「いえ。スペアキーです。私が留守番した日、返し忘れてました」

咏「あはは。いやぁ驚いた驚いた」

咲「咏さん」

咏「どしたの?」

咲「千点棒、返しに来ました。この意味、分かりますか?」

咏「わっかんねーな」

咲「あはは。本当は分かってるのに」

咏「咲ちゃん、本気かい?」

咲「無事スカウトも来ましたし、やっと隣を歩けます」

咏「……期待してるぜ。可愛い妹分よ」

咲「ええ。任せて下さい。咏さん」

カン

拝読ありがとうございました。
最後駆け足になって申し訳ない。

ではまた機会があれば

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