男「鶴は恩返せ」鶴「横暴だ」 (35)
駅前
男「えぇ……鶴が罠に引っ掛かってるんだけど」
鶴「助けて 助けてくれ」
男「写メしとこ」ピロリン
鶴「ヘルプ ヘルプミィィイイーー!!」
男「俺は日本人だから」
鶴「そこじゃなくない?」
男「うるさい」
鶴「はい」
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男「よっこいしょ」バキッ
鶴「罠絶対壊すマン壊してくれてありがとう」
男「恩を返して」
鶴「恩着せがましい」
男「おん」
鶴「お礼と言っちゃなんだけど、明日の夜は楽しみにしといて」
男「住所とか聞いちゃう?」
鶴「必要」
鶴『とにかく楽しみにしてて』
男「……」トコトコ
友「おう、何で下向いてんだ」ドン
男「おおっと、友かー。 おはよう」
友「おはよう」
友「~~が、○○でさー」ペラペラ
男(……今朝は変なことがあったな)ポケー
友「話を聞けよ」
男「友は付き合って何年目になるの」
友「え? えっと、5年ぐらいだな」
男「予想より長かった」
友「なんだよそれ……つーか、急にどうしたんだよ」
男「いや、別に気になっただけ」
友「へんなやつ」
?「…も…くん」タタッ
男「噂をすればなんとやらだね」
女「友くーん」
てす
友「おー、どうしたんだよ」
女「聞いて驚くなかれ タダの、暇つぶしだ!」
友「大袈裟なんだよ」ペシッ
女「回避!」シュッ
男「仲良しだね」
女「そりゃそうだよ 彼女なんだから」
友「わざわざ言わなくていい」
男「あはは」
男「……はあ」
放課後
女「ばいばーい」
友「またラインでなー」
男「じゃーなー」
男(……鶴の恩返しってなんだっけ)
男「つ、る、の、お、ん、が、え、しと」スマホスッスッ
男「糸を買おう」
男「……よし、帰宅」ニモツオク
男「糸は用意した。安眠道具もある」
男「あとは来るだけ、よしこい」
鶴「お、またー」ガチャッ
男「遅かったね」
鶴「ごめんごめん ポテチ買ったから許して」
男「気が利くね」
鶴「コンビニって便利だね。初めて活用したよ」
男「うちのマンションにあるえれべーたーはビックリしただろ」
鶴「えれべーたー?」
男「鉄製の動く四角い箱だよ あれが、目的地に導いてくれるんだ」
鶴「あれは貨物用ではないと」
男「そんなのは知ってるのかよ」
鶴「仲間が運ばれていくからね」
男「ごめん」
鶴「うん」
男「……」
鶴「……」
男「……どうやって生活してるの」
鶴「それこそコソ泥紛いのことをだな」
男「馬鹿じゃねえの」
男「それで、恩を返してくれよ」
鶴「あっ、やっぱり気になっちゃう?」
男「あっ 分からない方がいいか」
鶴「童話をなぞるねえ」
男「えーっと、なんでこんなところに鶴が?」
鶴「ノリノリだねー」
男「おっ 丁度いい寝室があるぞ? 鶴使う?」
鶴「うーん、その前に話したいことがあるんだけどね」
男「えっ なに?」
鶴「なんていうか、出来ないんだよねー」
男「ん?」
鶴「経済状況を改善とか、器用なことは出来ないっつーかね」
男「つまり、どういうことなの」
鶴「恩、返せない」
男「今夜は焼き鳥だな」
鶴「待って」
男「鶴の恩返しを期待したのに」
鶴「……」
男「何かあると期待したのに、金がないから金さえ手に入ったら……心も裕福になるはずなのに」
鶴「はぁ……、分かったよ。返せばいいんでしょ」
男「出来ないんじゃなかったのかよ」
鶴「正確にはしたくなかった。でも、もう知らないから」
男「?」
翌日。
男「……あー、寝過ぎた」ムクリ
男「10時か。学校なんてどうでもよくなるわ」
男「どっこいしょ……あれ」
男「そういえば鶴がいない」
鶴『恩、返せない』
男「あれは夢だったのか?」
鶴「ご飯できたよー」ガチャ
男「女子力高いな」
鶴「行ってらっしゃいー」フリフリ
男「この専業主婦感やばいな」フリカエシ
男「10時にもなると急ぐ気持ちもない」
携帯「……」ライン
男「おっ なんだよ、サボった奴がいるのか?」スマホポチッ
女『男くん。友と一緒にいる?』
男『いないけど、何で?』
女『分かった。学校には来るでしょ』
男『来るよ』
女『なら、なるべく急いで。伝えたいことがあるの』
男『何、どうしたんだよ』
女『友が失踪した』
男「……えっ?」
鶴『もう、知らないから』
男「……ははっ まさか、そんなわけが、ないし……な」
鶴「行ってらっしゃいー」フリフリ
男「この専業主婦感やばいな」フリカエシ
男「10時にもなると急ぐ気持ちもない」
携帯「……」ライン
男「おっ なんだよ、サボった奴がいるのか?」スマホポチッ
女『男くん。友と一緒にいる?』
男『いないけど、何で?』
女『分かった。学校には来るでしょ』
男『来るよ』
女『なら、なるべく急いで。伝えたいことがあるの』
男『何、どうしたんだよ』
女『友が失踪した』
男「……えっ?」
鶴[もう、知らないから]
男「……ははっ まさか、そんなわけが、ないし……な」
学校。
男「学校きたけど、友が失踪って?」
女「それが昨日の夜から帰ってないみたいなの。自宅にも、二人で通った喫茶店とか」
男「なんで早くに連絡をくれなかったの」
女「だ、だって、反応無かったじゃない」
男(ああっ なるほど、鶴と暴れてたから気付かなかったのか)
女「ど、どうしよう男くん。と、友が見つからなかったら……私、私!」
男「……大丈夫だから、多分見つかるよ。俺達だって探し出すから」
女「ほんと? 約束してくれる?」
男「うん」
放課後。
男「どこにもいないね」
女「こんなに歩き回っても見つからないなんて、友は本当にどうしたんだろ」
男「こら、下唇を噛むな」
女「ご、ごめんなさい。癖が出ちゃった。
友の交友関係に悪い友達とか……」
男「アイツに限ってそれはないよ。信頼して待つことが大切だ」
男(よくもまあ、俺は気休めを言えたもんだな)
男(……友、どこ行ったんだろ)
家
男「ただいまー」
鶴「おかえりなさいませ」
男「そんな気分じゃない」
鶴「何かあったの?」
男「あまり言いたくない」
鶴「またまたー、ニヤけてるくせに」
男「……」
鶴「邪魔者がいなくなって、少しだけ嬉しかったりする?」
男「うるさい」
鶴「ちゃんと気持ちにしないと伝わらないことだってあるんじゃない?」
男「分かってるよ」
翌日。
男「明日になればなんとかなるよ」
女「だといいんだけど」
翌々日。
男「両親が捜索願だしたみたい」
女「そ、そうなんだ……」
数日後。
男「どこに行ったんだろうね」
女「寂しい」
男(鶴が返した恩ってこれだと思う)
男(これを利用しない手はないんだろうけど)
女「ちゃんと食べてるかな」
男(俺は、これを見て勝てる気がしない)
男(元々、友が頑張って勝ち取った立ち位置なんだ)
男(それなのに俺は、卑怯な手を使って)
男「……ねえ」
女「なに?」
男「友が帰ってこなかったらどうするの」
女「ウーーん。それでも待つよ。気が変わるのはシワが増えてからでもいい」
男「それは何で?」
女「あの人以外、見えないからかな」
男「そうか。女、嫌いじゃなかったよ」
女「? 嬉しいよ、私も」
男「それじゃ、先に帰るから」フフッ
自宅。
男「なあ、鶴よ。話がある」
鶴「めちゃイケ見てるから待って」
男「あと何分」
鶴「右から左に人の名前が流れてる」
男「もう終わるよな。話を聞いてくれよ」
鶴「うん、いいよ。何?」
男「友を返してほしい」
鶴「ファイナルアンサー?」
男「おちょくるな」
鶴「アハハ。ごめんごめん。いいよ、返すよ」
男「そうか、それなら良かっ──」ホッ
猫「にゃー」
男(窓をすり抜けて猫が来た)
男「は?」
鶴「自分の意思で人に戻れるけど、この娘は自分が人だと知らないみたい。
猫の方が身を隠せるかなって」
男「戻れるならいいんだけど、なんで猫なんだよ」
鶴「ねこあつめ好きなんだ」
男「んだよそれ、バカにしてんのか」
鶴「そう怒らないでよ。これは仕方の無いことなんだ」
男「仕方のないこと?」
鶴「そう。私の恩返しは暗い方向に持っていってしまうんだ。
例えば、マラソン前日に『足が早くなりたいです』と願われると、同じ走者が、皆ケガをしたり。そんな悪魔のような願い」
男「それ、危なっかしいな」
鶴「そう。だから、同業者から『お前の力は悪魔だ!』って地に落とされちゃった」
男「それがあの罠?」
鶴「そうだよ。あんな簡単に壊されるなんて思わなかった」
男「なんかごめん」
鶴「良いんだよ。この世界では普通の人に見られて、それなりに楽しめたので満足」
友「なんか復活」
女「友ー!」ダキッ
友「うわっと、危ないだろ」
女「暇つぶしに付き合えー!」
友「なんだよそれ」ケラケラ
女「もう離さないから」
友「分かったから」
男「これでいいんだ」
自宅。
男「むやみに人と関わるのはやめよう。前よりも強く思った」ガチャ
鶴「おかえりー」
男「鶴はいつまでいるんだよ」
鶴「鶴はあなたの心にいます」
男「穀潰しで悪魔まがいめ」
男「鶴は恩返せ!」
女「横暴だ!」
完結
自宅。
男「むやみに人と関わるのはやめよう。前よりも強く思った」ガチャ
鶴「おかえりー」
男「鶴はいつまでいるんだよ」
鶴「鶴はあなたの心にいます」
男「穀潰しで悪魔まがいめ」
男「鶴は恩返せ!」
鶴「横暴だ!」
本当に完結
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