北条加蓮「たくさんの中のひとりでも、」 (20)
―――
加蓮「…………」ジーッ
P「もぐもぐ」
加蓮「…………」ジーッ
P「もぐもぐ……」
加蓮「…………」ジーッ
P「……もぐ、ごくん」
P「――なんだ、加蓮?」
加蓮「ん? んーん、なんでも。プロデューサー、今年もたくさんチョコもらったんだなって」
P「もぐもぐ……うん、ありがたいこった」
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加蓮「モテモテだね」ニヤニヤ
P「うーん……素直に喜んでいいのやら。ファンに見られたらなにされるか分かったもんじゃない……」
加蓮「ふふ、だから持ち帰らずに事務所でこっそり食べてるわけか」
P「持ち帰ろうにも多すぎるけどな……とにかく暇見つけて食べないと」
加蓮「お仕事に差し支えないようにしてよね。甘いものばっかりじゃ体に悪いよ?」
P「加蓮に言われたら世話ないな」モグモグ
加蓮「なにそれ。せっかく心配してあげてるのに」
P「へいへい、ありがとさん」
加蓮「もう……全然気持ちこもってないし」
P「加蓮もジャンクフードばかり食べないで、まともなもの食べなさい」
加蓮「はーいはい。耳にタコができるくらい聞いたよ、それ」
P「何度言っても聞かないからな。せっかく心配してあげてるのに」
加蓮「む、まねっこ」
P「ふふ。悪い」
加蓮「これでもちゃんと、お店行く回数は減らしてるんだよ? ……週3から週2くらいに」
P「……あまり変わってないけどまぁいいか。努力は認めよう」
加蓮「そりゃどーも。……で、それよりどうするの? この大量のチョコの山」
P「もちろん全部食べるさ。じゃないとみんなに失礼だろ?」
加蓮「はー……。マメだね、プロデューサーって」
P「マメかどうかは分からないけど。みんなそれぞれ、凝ったもの作ってくれてるんだしな」
加蓮「凝ってるのもそうだけど、誰も彼もチョコあげすぎでしょ。なによプロデューサー用のプレゼントボックスって……」
P「俺だって初めて見たよ……。ま、俺もいつも事務所にいるわけじゃないから、こういう箱はありがたいんだけど」
加蓮「箱いっぱいだね。大人気アイドルかな」
P「やめい」
加蓮「ふふ。あ、そうそう、凛や奈緒のも入ってた?」
P「ん、ああ。取り出した分にあったよ。なかなか美味かった」
加蓮「良かったねプロデューサー、嫌われてないみたいでさ。ふふっ」
P「だな。手紙も付いてて嬉しかったよ」
加蓮「ふぅん……愛の告白でもされた? ふふふ」
P「はは、バカ言え。……そういや、加蓮のはまだ見てないな。まだ箱に入ってるのかね」
加蓮「そう? ちゃんと入れといたよ。楽しみにしててね、手作りなんだから」
P「お、ほんとか? じゃあ早速探して――」ゴソゴソ
加蓮「ち、ちょっとちょっと! 本人がいる前でやめてよっ」
P「え、ダメか?」
加蓮「ダメに決まってるでしょ……もー、デリカシーないんだから」
P「ご、ごめんごめん……」
加蓮「私この後レッスンだから。そしたら探して食べて、ね?」
P「ん、了解……って無理だ。俺も打ち合わせがあって、これからすぐ出なきゃいけないんだよ」
加蓮「あれ、そうだっけ? ――あ、ほんとだ。ホワイトボードに書いてあったね」
P「そういうこと。加蓮はもう少し時間あるだろ? ちひろさんがすぐ帰ってくるはずだから、少しの間留守番頼むよ」
加蓮「うん、分かった。気をつけてね」
P「ああ。それじゃ行ってくる」
加蓮「いってらっしゃーい」
がちゃり ばたんっ
加蓮「……はぁ。行っちゃった」
加蓮「…………」ゴソ
加蓮「……どうしよ、これ」
加蓮「はぁぁぁ……。2人きりだったのに、せっかく手渡しできるチャンスだったのにぃ……」ズーン…
加蓮「なんで渡せないかなぁ……。ずるずるぐだぐだ、結局バレンタイン過ぎちゃったし……」
加蓮「はぁ……私のバカ。意気地なし……」
加蓮「…………」
加蓮「……り、凛も奈緒も……チョコ、食べてもらったんだよね……」
加蓮「プロデューサー、嬉しそうだったな……」
加蓮(私のでも……喜んでくれる、かな……?)
加蓮「…………」ウロウロ…
加蓮「…………~~~っ」ウロウロ…
加蓮「よ、よし。いい加減覚悟決めろ、北条加蓮っ」
加蓮「て、手紙……か、書く? っていうかなに書けば……うぅぅ」カァァ
加蓮「――うわ、便箋ないし……。買いに行く暇ないよね……しょーがない、プロデューサー、メモ帳借りるね……」
加蓮「はいけい……拝啓はおかしいでしょ……」ケシケシ
加蓮「んー……うー……むー……」カキカキ…
―――
――
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がちゃ
P「ただいま戻りましたー……っと、誰もいないか」
P「さて、資料を整理したらチョコの続きを――」
P「って、あれ? 机の上に置いといたっけ。見覚えないな……誰からのだ?」
ぴら……
P「ん……手紙、か? えっと――」
『――プロデューサーへ』
『私のこと、いつも大切にしてくれてありがとう。面と向かって言えないから、手紙で許してね。』
『謝るついでに。ごめんなさい…ウソ、つきました。』
『箱に入れたって言ったけど、ほんとは勇気出せなくて。今までずっと、私のかばんの中で転がってたの。』
『でも、それじゃいけないと思って。今日こそ、あなたに私のチョコをおくります。』
『気持ち、いっぱいいっぱいこめたから、食べてくれたらうれしいな。』
『うん、短いけどこんな感じってことで。あらためて、これからもよろしく。』
『いろんな夢、私に叶えさせてよね♪』
『加蓮より』
『―――――――――――――』
P「……加蓮」
P「…………あはは」
P「下敷き挟まないと、消しても下の紙に跡残るんだぞ……まったくもう」
――あなたのことが大好きです。
おわり
というお話だったのさ
乙女北条がんばる
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