北斗「Our Steady Boy」 (31)

ガチャッ

店員「いらっしゃいませ」

北斗「こんばんは。あれ?」

P「ん?」

北斗「プロデューサーさんじゃないですか」

P「おお!北斗か!久しぶりだな」

北斗「お久しぶりです。あ、相席いいですか?」

P「ああ、いいよ」

北斗「ありがとうございます」

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P「こんなところで会うなんて奇遇だな」

北斗「そうですね。お一人でファミレスなんてプロデューサーさん、なかなか度胸ありますね」

P「ほっとけ。そういう北斗だって一人じゃないか」

北斗「俺の方は後から冬馬と翔太が来ることになってるので」

P「くそっ!仲良しかよ!」

北斗「プロデューサーさんも、事務員さんとか連れてくればよかったんじゃないですか?」

P「あの人酒飲んで潰れるから嫌だ」

北斗「エンジェルちゃんにそんなに冷たいとモテませんよ」

P「うぐ……」

北斗「あ、冬馬達も一緒でいいですか?」

P「俺は構わないけど、あいつらがいいのか?」

北斗「ええ。2人ともプロデューサーさんと話したがってましたし、きっと喜びますよ」

P「そうか」

北斗「メール、しておきますね」

P「……」

ブブッ

北斗「おっ、早い……。今仕事終わったところで、こっちに向かってるそうです」

P「分かった。じゃあ何か頼んで待ってよう」

P「どうだ?新しい事務所にはもう慣れたか?」

北斗「ええ。変わり者だらけですけど、みんないい奴ですよ」

P「それならよかった」

北斗「そういえばフリーになった俺達を今の事務所に紹介してくれたのもプロデューサーさんでしたね」

P「ああ。そんなこともあったな」

北斗「本当にありがとうございました。おかげで最高の仲間と出会うことも出来たし、感謝してもしきれないくらいですよ」

P「そんな。大したことはしてないよ。……新しい、出会いか」

北斗「どうかしました?」

P「ああ。そういえばジュピターの3人の出会った頃の話って聞いたことなかったなって思ってさ」

北斗「ああ……。そういえば。よければお話しましょうか?」

P「おお、聞かせてくれ!」

北斗「では……」

北斗「全然面識なんか無かったんですけど、いきなり社長室に集められて……」

―――――――――

―――――

―――

黒井「キミ達3人にはこれからユニットとして活動してもらう」

冬馬「ユニット?」

翔太「へぇ~。面白そう!」

北斗「ユニット名とか、考えてあるんですか?」

黒井「もちろんだ。キミ達のユニット名は“ジュピター”だ!」

翔太「ジュピターだって!かっこいいね!木星……だっけ?」

北斗「そうだね。他にはローマ神話の神様だったかな……。よく知らないけど」

翔太「へぇ~!物知りなんだね。えーっと……」

北斗「ああ。俺は伊集院北斗。よろしくね」

翔太「北斗君か~!僕は御手洗翔太!よろしくね!」

北斗「よろしく。翔太って呼んでもいいかな?」

翔太「うん!じゃあ北斗君は北斗君ね」

冬馬「チッ……。早速仲良しごっこかよ」

翔太「あっ、えっと君は……」

冬馬「……」スタスタ

翔太「行っちゃった……」

翔太「なんか感じ悪いね~」

北斗「おいおい。これから仲間としてやっていくんだからそんなこと言うなよ」

翔太「あっちだってこれから仲間としてやっていく僕達に対してあんな態度なくない?」

北斗「それは……。確かに……」

翔太「うーん……。気のせいだったのかなぁ」

北斗「何?どうかした?」

翔太「うん……。この前事務所の探検してたらレッスン室ですごい人見かけたんだ。あの人に似てたからもしかしたらって思ったんだけど……」

北斗「へぇ……」

翔太「すごい真剣な顔だったんだ……」

北斗「じゃあきっと本人かもしれないな」

翔太「えっ?そうなの?」

北斗「ああ。だってまだデビューも決まってなかったのに真剣な顔して個人レッスンしてたんだろ?」

翔太「うん……」

北斗「それだけ意識高めてる奴だったら、さっきの俺達の馴れ合いみたいなのは気に食わないんじゃないかな」

翔太「そっかぁ~……。それならあの態度も納得だね。でも自己紹介とかは人として当然じゃない?」

北斗「それは俺も同感だな」

翔太「でも僕、ちょっと燃えてきたかも」

北斗「へぇ。何に?」

翔太「絶対あの人と仲良くなる!」

北斗「それは俺も同じだよ」

翔太「じゃあさ、どっちが先に仲良くなれるか勝負しない?」

北斗「2人一緒じゃダメなのかい?」

翔太「こういうのは競い合った方が面白いじゃん!」

北斗「そうかな?じゃあ俺は自分のペースでいかせてもらうよ」

翔太「あっ!何か情報が掴めたら共有しようね~!」

北斗「名前は天ヶ瀬冬馬だってさ」

翔太「えーっ!北斗君名前聞けたの!?」

北斗「ああ。一回喋ったけど、やっぱり手強そうだったよ」

翔太「いいな~!僕だって三回目が合ったもんね~!」

北斗「それ、あんまり自慢にならなくないか?」

翔太「そんなことないよ!目合わせてくれるってことは冬馬君も僕に気があるかもしれないってことでしょ!」

北斗「おいおい。まるで片想い中の女の子みたいだぞ」

翔太「えぇ!?北斗君だって~!」

北斗「俺は翔太に巻き込まれただけなんだけどな……」

翔太「2人して同じ人に片想いなんて変な感じだね~」

北斗「こんなに必死になるなんてな。しかも男相手に……。ちょっとかっこ悪い気がするな」

翔太「でも、楽しいよね!」

北斗「そうだな……。あっ、ほら。冬馬が来たよ」

翔太「ホントだ!おーーい!冬馬くーーん!」

翔太「おはよう冬馬君!」

冬馬「……チッ」

翔太「あぁ~……」

北斗「おはよう冬馬」ニコッ

冬馬「……」スタスタ

北斗「やれやれ……」

翔太「おはようも言ってくれなかった……」

北斗「微笑みも返してくれなかったよ」

翔太「今日もダメかなぁ」

北斗「いや、むしろ今日からだろ?」

翔太「えっ?あ、そっか!」

トレーナー「ワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ、シックス、セブン、ヌェィッ!」

トレーナー「よし、今日はこれで終了だ。各自ストレッチを忘れるな。以上!」

3人「ありがとうございました」

翔太「もうヘトヘト~」

北斗「初日から結構キツかったね」

冬馬「これくらいでへばってんじゃねーよ」ボソッ

翔太「……いいこと思いついた!」

翔太「ねえ、冬馬君!」

冬馬「……何だよ」

翔太「ストレッチ、手伝ってくれる?」

冬馬「何で俺が……。あっちの奴に頼めよ」

翔太「でも冬馬君の方が慣れてるっぽいし、良いストレッチの方法とかも教えてもらえないかなーって……」

冬馬「俺が教える必要ねぇだろ」

翔太「お願い!今日だけ!今日教えてくれたら明日から北斗君にやってもらうから!」

冬馬「チッ……。しょうがねぇな。今日だけだぞ」

翔太「ホント!?やったー!」

翔太「あの……冬馬君。メアド教えてもらえる?」

冬馬「何でだよ」

翔太「ほら、冬馬君っていろいろできるし!今日のレッスンだって完璧だったし、普段どんなトレーニングしてるのかなーとか聞いてみたいなーって」

冬馬「……余計なメールは送ってくるなよ」

翔太「うん!ありがとう!やったぁ~!」

冬馬「チッ……。ほらよ。まあどうせ必要なくなるけどな」

北斗「あ、ああ……。また明日……」

翔太「バイバーイ」

北斗「すごいな翔太……」

翔太「えへへー」

翔太「昨日学校で隣のクラスの子に『一緒に帰らない?』って誘われちゃった~」

北斗「へぇ、翔太はモテるんだな」

翔太「北斗君だってモテるでしょ?」

北斗「まあね☆」

ブブブッ

北斗「お、メールだ」

翔太「冬馬君から!?」

北斗「いや、知り合いのエンジェルちゃんからだ……。告白された」

翔太「やっぱりモテるんだね……」

北斗「でも今は冬馬からじゃないと惹かれないな……」

翔太「だね~」

翔太「あ~あ、もうダメだ~」

北斗「諦めるなよ」

翔太「じゃあ北斗君は何か進展あったの?」

北斗「昨日レッスン中にぶつかったくらいかな」

翔太「ほら~、僕だって昨日廊下ですれ違ったもん~」

北斗「全然ダメじゃないか」

翔太「はぁ~……」


冬馬「だったら辞めちまえばいいだろ」

翔太「冬馬君!?」

北斗「辞めろってどういうこと?」

冬馬「そのままの意味だよ。仲良しごっこがしたいだけのやる気のない奴は辞めちまえってことだ」

翔太「何それ……。僕達がどれだけ冬馬君のこと考えてきたと思ってんの!?」

冬馬「知らねぇよ!……黒井のオッサンな、お前らには期待してないみたいだぜ」

北斗「え?」

冬馬「お前らとはやってられないってオッサンに直接話してきたんだよ。そしたら俺のソロデビューを考えてくれるってよ」

翔太「そんな……」

冬馬「じゃあな……。やる気が無いならさっさと荷物まとめて辞めちまいな」

翔太「何あれ!もうあんな奴知らないよ!」

北斗「待てよ翔太、どこ行くんだよ」

翔太「黒ちゃんに冬馬君の態度が悪いってチクってくるの!」

北斗「中学校じゃないんだから……」



冬馬「おい!今何て言ったんだよ!」



北斗「冬馬の声だね……」

翔太「うん……」

黒井「お前のソロデビューの話は嘘だと言ったんだ。お前には引き続きジュピターの天ヶ瀬冬馬として活動してもらう」

冬馬「なんでだよ……。あんなレベルの低い奴らとはやってられないって言ったじゃねーか!」

黒井「フン……。レベルが低いのはお前の方だ。2人共この私が見込んで連れてきたのだ。素質は十分にある」

冬馬「素質はあるかもしれねぇけどアイツらに足引っ張られたら俺がトップになれねぇだろ!」

黒井「お前だけでトップアイドルになれるのなら最初からユニットなど組ませない!」

冬馬「何……?」

黒井「お前だけではトップアイドルにはなれんと言ったのだ。少なくとも今のままではな……」

冬馬「……畜生!」ダッ


翔太「あっ、冬馬君!」

北斗「トップアイドルか……」

翔太「どうしたの?」

北斗「いや、俺達は勘違いしてたのかもしれないな……」

翔太「勘違い?」

北斗「ああ……。翔太はどうしてアイドルになりたいって思ったんだ?」

翔太「うーん……。僕って元々人気者だったし、アイドルになればもっとチヤホヤされるかなーって思って……」

北斗「そうか。俺もエンジェルちゃん達を幸せにできればなんでもいいって思ってた」

翔太「あっ!そっか……。僕、冬馬君に振り向いてもらうことばっかり考えててすっかり忘れてたよ……。冬馬君は最初から真剣だったんだ……」

北斗「ああ……。翔太、冬馬の夢、応援してやりたくないか?」

翔太「ワンツースリーフォー、北斗君!そこ遅れてる!」

北斗「ここのステップ、少し苦手だな……」


冬馬「お前ら……」

翔太「あ!おはよう冬馬君!」

冬馬「……ああ。まだ辞めてなかったのかよ」

翔太「辞めないよ。だって僕達がいないと冬馬君トップアイドルになれないし」

冬馬「!」

北斗「ごめん……。昨日聞いちゃったんだ」

冬馬「そうかよ……。じゃあ俺を笑いに来たのか?」

翔太「ううん、笑わないよ」

北斗「冬馬……。俺達、今までアイドルになることに真剣じゃなかったんだ」

翔太「でも昨日の冬馬君を見て、こんなに真剣な人がいるんだって気付かされたんだよ!」

北斗「冬馬の夢、叶えてやりたいって思った。いや、俺達も同じ夢を一緒に叶えたいって思った」

翔太「だから冬馬君!」

北斗・翔太「ごめん!」

冬馬「お、お前ら……」

北斗「なあ冬馬、俺達と一緒にアイドルやってくれないか?」

翔太「お願い!僕達本気だから!」

冬馬「……足引っ張るなよな」

翔太「やったぁ!あ、でもそういうのは禁止ね!」

冬馬「はぁ?」

翔太「やっと仲間になれたんだから、仲良くしよう?」

冬馬「必要ねぇだろ!」

北斗「いや、ユニットの仲間同士団結しないとトップにはなれないと思うな」

翔太「黒ちゃんもそういうこと言いたかったんじゃないかな~?」



冬馬「……チッ。分かったよ!」

冬馬「俺の名前は天ヶ瀬冬馬!目標はトップアイドル、それだけだ」

翔太「よろしくね!冬馬君!」

北斗「よろしく。早速だけど飯でも食いに行こうか」

冬馬「おい!レッスンはどうすんだよ!」

北斗「あ、ごめん……」

冬馬「本当にトップ目指す気あんのかよ!」

―――

―――――

―――――――――


ガチャッ

店員「いらっしゃいませー」

翔太「えーっと、あ!北斗くーん!……と、プロデューサーさんだ!おーい!」

冬馬「おい翔太!店の中で走るんじゃねぇ!」

翔太「あはは、ごめーん」

冬馬「ったく……」

北斗「チャオ☆待ってたよ」

翔太「あ~!ポテト……もうないじゃん!」

冬馬「また頼めばいいだろ」

冬馬「それにしてもホント奇遇だな。元気だったか?」

P「ああ。そっちも元気そうでよかった」

翔太「2人で何の話してたの?」

北斗「昔の俺達の話をね。冬馬がツンツンしてた頃の」

冬馬「はぁ!?」

翔太「あぁ~!」

P「なかなか面白かった」

冬馬「765の奴らには絶対言うんじゃねーぞ!」

P「はいはい」

北斗「そういえば話してて思い出したんですけど……」

P「ん?」

北斗「黒井社長が俺達3人じゃないとトップになれないって言った意味が分からないんです……」

冬馬「ああ、そういえば……。結局裏で汚い手使ってたから団結とかじゃなかったみたいだしな……」

P「それは単純に、3人一緒にトップにしてあげたかったってことだと思う」

翔太「そうなの?」

P「俺だって765プロのみんなを一緒にトップアイドルにしたいって思ってるからな。あの人も腐ってもプロデューサーだったってことさ」

北斗「そうですね……。スッキリしました。ありがとうございます」

P「よし!今日は俺が奢るぞ!」

翔太「え!いいの!?じゃあいっぱい頼んじゃおうっと」

冬馬「食い切れる量にしておけよ」

北斗「すみません……」

P「いや、いい話を聞かせてもらったお礼だよ」

翔太「プロデューサーさん!僕達にアイドル続けさせてくれて本当にありがとね!」

P「アイドル、楽しいか?」

冬馬「もちろんだぜ!もう絶対負けねぇからな!」

P「それは楽しみだな!」



北斗「プロデューサーさん、これからもライバル同士ですけど、どうか俺達の活躍も見守っていてください!」



終わり

終わりです。

元ネタは『Kiss×sis』のED、ゆいかおりの『Our Steady Boy』です。曲の歌詞に沿って冬馬を振り向かせる為に必死な2人が書きたかっただけ。よってオチは投げっぱなしになってしまった……。

最後に北斗君、誕生日おめでとう。

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