冬馬「本当なのか?あの翔太が?」
北斗「そうらしいんだ、信じられないけど…」
冬馬「誰から聞いたんだよ?」
北斗「翔太の2番目のお姉さんからだよ」
北斗「俺がモデルやってたときからファンだったらしくて、翔太との縁があったりしたおかげで電話番号を交換したんだ」
北斗「で、話は戻すけど…翔太は部屋に引きこもってずっとネトゲばかりやっているんだ」
北斗「学校は一応行くらしいけど、徐々に不登校になってきて…」
冬馬「最近俺たちに顔出さないのもそれが原因か」
冬馬「プロデューサーはなんて?」
北斗「説得をしているけど出ようとしなくて…」
北斗「何でこんなことになったんだろうな…?」
冬馬「何かにはまりすぎると抜け出すのは困難だからな、所謂依存症って言うやつだ」
冬馬「とりあえず会いにいこう、無駄だとわかっていても状況を確認しねぇと作戦を立てようにも立てられないぜ」
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翔太「………」
カチカチ
翔太「よし…これでいい」
翔太「装備のステも最大にしてある、これなら最短でボスを倒せる」
ピコーン
翔太「ん、何だろ?一緒にボスを倒しに行きませんか?馴れ馴れしい…」
翔太「プロフィールを見てみたら低ステータスの雑魚じゃないか…近寄るなよ」
翔太「大方、僕が倒した後にアイテムを拾おうという魂胆だろうけど…」
翔太「悪いけど雑魚と馴れ合う気は今ないんだ、足手まといになるから他を当たってくれないかな」
翔太「ギルドだって入らないしパーティーも組まない、一人が一番やりやすいんだ」
翔太「さて、今日は何分で倒せるかな?」
グオオオオオオオオオオオオオ…
翔太「よし、7分56秒で倒せたぞ!最短記録だ!」
翔太「にしてもHPが1000億もあるなんて…インフレにもほどがあるよ」
翔太「なに考えているんだあの糞運営は…これじゃあ札束ゲーじゃないか」
翔太「まあ愚痴はいいや、さっさと狩場にいこう」
カチャカチャカチャカチャカチャカチャ
ピンポーン
翔太「なんだろう?勧誘かセールスかな?」
ピンポーンピンポーンピンポーン
翔太「何で誰も出ないんだろ?…ああそうだった、今日母さんたちでかけているんだった」
翔太「あいにく今僕は忙しいから他をあたってくれないかな」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
翔太「うるさいな…気が散っててレベル上げができないじゃないか!」
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン
翔太「ああもう!」
ダダダダダダ!
ガチャ!
翔太「何ですかさっきから!?近所迷惑でしょ!」
冬馬「お前は俺たちに迷惑かけているがな」
翔太「冬馬君…北斗君…何しに来たの?」
北斗「わかっているはずだろ、お前を連れ戻しにだ」
翔太「そう…」
北斗「翔太、ネトゲをやることは別にかまわない、ネトゲは悪じゃないからね」
北斗「でもだからといってやりすぎてほかに迷惑をかけちゃいけない」
北斗「翔太がネトゲにはまって、周りはどんな反応をしたかわかるかい?」
翔太「…」
北斗「翔太のお母さんは落胆、お姉さんたちは困惑、プロデューサーさんは泣いていたよ」
冬馬「俺たち二人を困らせるのは百歩譲ってまだいいが、それ以外の人を困らせちゃダメだ」
冬馬「それくらいお前が一番わかっているだろ?」
翔太「…」
冬馬「何かいいたいことあるのか?」
翔太「ごめん…、迷惑をかけて…悪気はなかったんだ」
翔太「本当は僕もやめたいと思っている、だけどやめられなくて…」
北斗「確かに…一度何かに熱中したら、そこから抜け出すのは至難の業だ」
北斗「だから俺たちがここにいるんだ、お前を助けるために」
冬馬「明日の朝、またここに来て事務所に行くぞ」
翔太「そんな!?わざわざ迎えに来てくれるなんて恥ずかしいよ!」
冬馬「今までネトゲにはまっていたお前が言うかそれ!?」
北斗「迎えに来なかったらまたはまる可能性があるからな」
北斗「悪く思わないでくれ翔太、お前がネトゲ依存症から脱却するためだ」
翔太「…わかったよ」
冬馬「よし、それじゃあ俺たち帰るから」
北斗「また明日な」
翔太「うん…、また明日」
翔太「やっと帰ったか…」
翔太「はぁ…にしても二人ともわざわざ来てくれるなんて…、二人に迷惑かけちゃったな…」
翔太「…でもそう簡単にやめられたら苦労はしないよ」
翔太「…それにしても暇だな」
翔太「あ、そうだ…、まだ途中だったから早く進めないと」
翔太「今やめたらキリが悪すぎる」
北斗「なあ冬馬、あれで翔太の依存症が治ると思うかい?」
冬馬「あれで治ったら苦労はしねぇぜ」
冬馬「依存症というのは何か一つ集中的にはまって引き起こされるものだ」
冬馬「克服するには別の何かを用意して翔太がそれに集中するように差し向ければいい」
北斗「何かって?」
冬馬「翔太が興味を持ちそうなものだ」
北斗「なるほどね、それで、興味があるものって?」
冬馬「あの年頃だからな…何が好きかは大よそ見当がつく」
真夜中
カチャカチャ
翔太「僕のお気に入りの狩り場が乗っ取られている…」
翔太「全く…今何時だと思っているんだ」
翔太「真夜中にゲームしているなんて、不健康だと思わないのかな?」
翔太「…いや、よく見たら装備やステータス、名前がおかしい…名前なんか適当な文字並べただけだ」
翔太「まさかマクロか?ふざけやがって…」
カチッ
翔太「よし、通報完了」
翔太「…やっぱりマクロか、またゴミを掃除できた」
翔太「まったく…糞みたいなことしてんじゃねぇよ」
翌朝
冬馬「翔太、迎えに来たぞ」
ガチャ
翔太「ふわぁ~、おはよう冬馬君、北斗君」
北斗「随分と眠たそうだね」
冬馬「北斗、翔太は前から眠そうな顔していただろ?」
北斗「おっと、そうだったね」
翔太「それで、今日はどこに行くの?」
冬馬「今日は俺たちと一緒に面白いことをしようと誘ったわけだ」
翔太「面白いことって?」
冬馬「ああ!」
北斗「俺たちがお前にネトゲに代わる楽しいことをやらせようと考えたんだ」
北斗「その様子だと俺たちが帰った後でもずっと熱中していたらしいな」
翔太「…うん」
北斗「正直でよろしい、まあ見当はついていたけど」
冬馬「そんなネトゲ廃人のお前のために今日はリフレッシュとして楽しいことをやらせるから」
冬馬「期待してろよな!一瞬でその暗い顔を明るくしてやるぜ!」
翔太「うん、期待してるよ」
翔太(そんなのいいから帰ってゲームがしたいよ…)
自然公園
翔太「ここって?」
冬馬「自然公園だ」
翔太「見ればわかるよ、どうしてここに連れてきたのって聞いているの」
冬馬「俺とサッカーでもしようぜ」
翔太「サッカー?なんで?」
冬馬「お前のその眠気とかを覚ますために決まってるだろ?」
翔太「面倒くさい…」
冬馬「ほら、ボールを蹴ったぞ」ポーン!
翔太「うわっ!」トン!
冬馬「ほら、パスだ!」
翔太「…はぁ……」
ポーン!
冬馬「よっと!」トン!
冬馬「それ!」ポーン!
翔太「はい」トン!
翔太「えい…」ポーン!
ポーン!
ポーン!
北斗「ん~、いい天気だ」
翔太「はぁ…はぁ…ちょっと休憩…」
冬馬「ばてるの早いな翔太、体がなまったのか?」
翔太「そんな…長い時間やったから疲れただけだよ…」
北斗「まだ20分しか経ってないぞ、翔太」
翔太「20分!?あれで!?あんなにやったのに…?」
冬馬「お前と俺とでは時間の体感速度が違うようだな、何でかわかるか?」
翔太「…?」
冬馬「お前、これを大して面白くなく普通にボールを受け流していただろ」
翔太「…うん」
冬馬「物事に熱中しすぎると時間の体感速度が速くなって来るんだ、ネトゲに嵌ったお前のようにな」
冬馬「そして今回のボールパス、早く終わらないかな~とか冷めた感じでやっていただろ」
冬馬「つまりだ、物事、ようするにネトゲに熱中しすぎたから時間が速く進んでいったように感じたんだ」
冬馬「しかもネトゲなんてただアバターに金ぶち込んで動かすだけのものだろ?」
冬馬「そんなものに熱中するだけ時間の無駄だということだ、もっと時間を有意義に使おうぜ」
バン!
ドスッ!
冬馬「いてっ!?」
翔太「アバターに金ぶち込んだだけ!?冗談言うなよ!」
翔太「あれは僕の分身といってもいいんだよ!」
翔太「あそこまで育てるのにどれだけの時間とお金をつぎ込んだと思っているの!?」
翔太「何もわからないくせに適当なこといわないで!」
冬馬「えっ…ええ!?」
翔太「冬馬君の馬鹿!」ダダダッ!
冬馬「あっ、おい翔太!?」
北斗「これは予想外だった…、まさか翔太があんなに怒るなんて…」
翔太「何だよ…冬馬君…僕がどれほど苦労したかも知らないで…」
翔太「もちろん僕だって時間の無駄ってわかるよ…、でも…」
翔太「このアバターは僕が長い時間費やしてやっとできた掛替えのないアバターなんだよ」
翔太「今更やめて捨てろなんて言われても無理だよ」
北斗「どうする?余計に悪化したぞ」
冬馬「まいったな…まさかそんなにアバターを大切にしていたなんて…」
冬馬「下手に連れ出すのはやめたほうがいいかもな」
冬馬「…どうするか」
北斗「とりあえずネット依存症の脱却方法を色々試してやってみよう」
冬馬「試してみるって、どうやって?」
北斗「今スマホで調べているけど、いろんな方法があるみたいなんだ」
冬馬「どれどれ?」
冬馬「ん~、なるほどな…」
冬馬「この中で効率いいのは、これか」
北斗「それじゃあ早速やってみるよ、今度は俺が用意するから」
冬馬「頼む」
カチカチ
翔太「…」
ピンポーン
オトドケモノデース
翔太「…」カチカチ
ガチャ
翔太母「翔太…」
翔太「勝手にあけないでよ!」
翔太母「…北斗さんから本みたいなのが届いたわよ」
翔太「本みたいなもの?」
翔太母「ええ…、しかも結構たくさん」
翔太「…そこにおいといて」
翔太「ええ、それじゃあ…」
バタン
翔太「…何だろう?」
翔太「これ、ラノベじゃないか」
翔太「ソー○アー○○○○イン、ノー○ー○ノー○○○、ア○○○ワー○○…有名なのが結構あるな」
翔太「これを僕に渡してどうするつもりなんだろ?読めと言いたいのかな?」
翔太「…手紙だ」
北斗『これと自分を照らし合わせてみろ』
北斗『そして現実を直視しろ』
翔太「照らし合わせる?現実?全部アニメで見たものだから今更これを見ても…」
翔太「………これ全部ネトゲやゲームに関することばかりだよね…まさか北斗君の言いたいことって…」
翔太「…」ペラッ
冬馬「ネット以外の趣味を見つけさせ、それに熱中させるという作戦か」
北斗「ああ、しかも俺が選んだのはゲームに依存している主人公が物語のラノベだ」
北斗「ネットや別世界の中でしか活躍できない、現実世界では非力な主人公、まるで翔太だ」
北斗「しかも翔太とラノベ主人公の違いは、現実かそうでないかだ」
北斗「ラノベを読むことで翔太は『うわっ…、なんだこいつ』と思わせ」
北斗「そして自分と照らし合わせることで、『自分はこんな無駄なことをやっていたんだ…』という失望感を味あわせる」
北斗「これが俺の作戦だ、いい考えだとは思わないか?」
冬馬「なんか色々穴がありそうだが…うまくいけばいいが…」
翔太「…」ペラッ
翔太「結構カッコいいじゃん、僕もこんな風にできたらなぁ…」
翔太「あっ…これ、ネトゲといってもMMORPGだけじゃなくて格闘ゲームとかあるんだ」
翔太「しかもこれなんてしりとりからテレビゲームまでやっているんだ」
翔太「…確かに最近MMORPGばかりやっても変な虚無感が渦巻くからね」
翔太「ためしに他のゲームもやってみよう、この主人公のようにあらゆるゲームで一位を目指してみようかな」
翔太「そして僕がこの世界で一番のゲーマーになるんだ!」
北斗「はい…、あっ、はい…そうですか」
北斗「わかりました…力になれなくてすみません」
北斗「はい、それでは」ピッ
冬馬「どうしたんだよ?」
北斗「失敗した…やめるどころかさらに他のゲームをやり始めた」
冬馬「ダメじゃねえかよ!」
北斗「俺としては迂闊だった…翔太はまだ中学二年生」
北斗「この年頃はいろいろカッコつけたり他と違うことをしたいと思っているんだった」
北斗「しかもものすごくアニメや漫画に熱中しやすい!そのせいで厨二病とかがよくでてきているんだ」
冬馬「どうするんだよ!これじゃあ前より状況がひどくなっているぞ!」
北斗「くっ…」
北斗「もう…どうしたらいいんだ…」
冬馬「おい、何途方にくれているんだよ!?」
冬馬「お前までそんな顔したら…おれだってどうしたらいいか…!」
北斗「でも他に方法はあるのか?」
冬馬「…」
「あれ?北斗たちじゃないか、どうしたんだ?」
北斗「えっ?」
冬馬「ん?」
P「どうしてそんなに暗い顔を?しかも翔太がいないぞ」
冬馬「…北斗、こうなったら最後の手段だ」
北斗「わかっている」
P「ど、どうしたんだ?」
北斗「実は…」
P「ネトゲ廃人ね…」
北斗「はい、何とかしたいのですが」
P「…まあ、俺も昔なったことはあるけどさ…この年でねぇ…」
P「はぁ…、わかった、俺に任せてみろ」
冬馬「いいのか?」
P「こんなかわいそうな顔した二人を見るとな…」
P「それに知り合いがネトゲ中毒になったらなんか恥ずかしいしな…」
P「第一、あいつが治らないと困るのはお前たちだろ?」
冬馬「まあな」
北斗「それではよろしくお願いします」
P「まかせろ」
カチカチ
翔太「クソッ!また負けた!どうなっているんだよ!」
翔太「無駄にギミック増やしすぎなんだよ!即死トラップ多ければ盛り上がると思っているのか運営は!?」
ピンポーン
翔太「ああもうなんだよこんな時に!?」
ショウター、イルカー?
翔太「その声、765プロのプロデューサーさん?」
ガチャ
P「お、でてきたか…凄い顔だな」
翔太「…何しに来たの?」
P「お前をネトゲ依存症から抜け出してやろうと思ってな」
翔太「…冬馬君たちに頼まれたの?」
P「まあな」
翔太「帰ってよ…放っといて」
P「まあそういうなって、実は俺もネトゲに嵌ったことがあるんだ」
翔太「そうなの?」
P「ああ、翔太がやっているネトゲ、なんなのか気になってな」
翔太「えっ?」
P「見せてくれないか?どれくらい強いのか知りたいんだ」
翔太「…うん」
P「なるほど、楓物語か…ほう、凄いじゃないか、レベル210だなんて結構やりこんだな」
P「これは俺も昔やったな、確かパラディンを使っていたな」
P「そういえば最近インフレが進んでいるらしいじゃないか、ボスのライフが3000億とか」
翔太「まあね、でも高い火力で相手のライフを削り取るのはとても気持ちいいものだよ」
P「そうか」
翔太「…」
P「なあ、翔太…ネットゲームって……なんのためにやるんだ?」
翔太「もちろん楽しむためだよ」
翔太「難しいゲームをことごとくクリアし、達成感を得ること、それが僕がネトゲをやる目的だよ」
P「そうか、それで今翔太はネトゲをやってて楽しいか?」
翔太「そりゃもちろん…」
P「本当にか?周りのうるさいプレイヤーとの揉め事や運営の糞みたいな対応とかで不満のほうが一杯じゃないのか?」
P「よく考えてみろ、ネトゲをやってて喜びと不満、どっちが多かった?」
翔太「!?」
P「久しぶりに会ったけど、お前…14歳とは思えないほど顔がふけているぞ」
P「とても楽しそうにゲームをしていたとは思えないな」
翔太「…」
P「それに達成感といっても、それが本当にお前が求めていた達成感なのかどうかも怪しいな」
P「どうせ誰かに結果とかを見られても…」
P「周りからすれば『ふ~ん、またこいつが上位か…』って、無関心な反応が来ると思うぜ」
P「大体いくら達成感があっても所詮はネトゲ、現実でもゲーム内でも評価なんてされないぜ」
P「まあ翔太のいう達成感が周りからの評価じゃなくて自分の中の目標をクリアという意味なら別だけどさ…」
P「それでクリアして、翔太自身に何かいいことあったか?」
翔太「…」
P「ネットゲームって……なんのためにやるんだろうな?」
P「生活を犠牲にして、体壊してまでデータが消えたらなくなっちゃうアバターを育てるのって…無意味だと思うんだ」
P「普通のゲームみたいに終わりがあるわけではない、敢えて言うなら、飽きれば終わりだ」
翔太「!?」
P「俺はだんだん飽きてきたからやめたな、これ以上続けてもなんの成果もないしな」
P「それにそんなのよりもっと楽しいことがあると思う、俺からしてみればアイドル時代のお前がとっても輝いていたぞ」
翔太「…僕は、そのアイドルをやるのが辛くなったから…ネトゲを初めたんだ」
P「辛くなった?」
翔太「毎回毎回同じことの繰り返しで…飽きてきたんだ、体も疲れるし面倒くさいし」
翔太「ネットゲームは、アイドルとは違った爽快感とか味わったりして、初めは楽しかった」
翔太「そりゃ僕も気づいていたんだよ…だんだん面白くなくなっていったの」
翔太「だけど例えつまらなくても代わりのゲームとかあって、それをやったり…」
翔太「それが飽きたらやめて前やったゲームをやって、それを繰り返したりして…」
翔太「心の中で満足感を埋めていたんだ」
P「そっか…」
翔太「でも、プロデューサーさんの一言で僕…目が覚めたよ」
翔太「いくら苦労してつぎ込んだ大事なアバターだからといって…、いつまでもあるわけじゃないからね…」
翔太「それに、この前北斗君が送ってくれたラノベ、あれに嵌り始めたんだ…」
翔太「思えばあれを読んでいる間、僕はネトゲをやらなかったな…」
P「よかったじゃないか、新しい趣味ができて」
翔太「プロデューサーさん、お願いがあるんだ」
P「何だ?」
翔太「僕のゲームのアカウント、思いっきり削除して欲しいんだ」
P「いいのか?」
翔太「うん、ここで残しておいたら、また嵌っちゃいそうだから」
翔太「僕の気が変わらないうちに早く…お願い」
翔太「自分じゃきっと躊躇するから…アカウントとパスワード、教えておくね」
P「…わかった」
カチッカチッ
ピローン
P「消したぞ」
翔太「ありがとう…後ごめんなさい」
P「礼と詫びを言う相手を間違えているぞ」
翔太「あっ、そうだったね」
P「明日、ちゃんと言っておくんだぞ」
翔太「うん、わかった」
P「それじゃあな」
翔太「さようなら…」
P「言われたとおりやったぞ」
北斗「本日はどうも翔太を助けてくれてありがとうございました」ペコッ
冬馬「礼を言うぜ」ペコリ
P「どういたしまして」
冬馬「にしても…結局、いろいろやって一番効率的なのは話し合いかよ…」
P「翔太は気づいていたんだよ、自分がやっていることは無駄だって」
P「俺はその翔太の心を一押ししただけだ」
P「まあこれで翔太がネトゲに再び嵌ることはほぼないだろうな、一度ばっさり捨てれば後でケロッとしているもんだ」
冬馬「そういうもんなのか」
P「ああ、俺もネトゲに嵌った経験があるからな」
P「だから今回スムーズに解決できたわけだ、経験者にしかわからんからな、こういうのは」
冬馬「なるほど」
P「それじゃあ、俺は帰るから」
北斗「本当にありがとうございました」
P「ああ、貴重な仲間、大切にするんだぞ」
冬馬「ああ!」
冬馬「…それじゃあ、俺たちも帰ろうか」
北斗「ああ、明日は大事な日だからな」
冬馬「大事な日?」
北斗「忘れたのか?ほら…」
冬馬「…ああ、そうだったな、準備をしないと」
翌日
ガチャ
翔太「みんな!おはよー!」
パパン!パン!
翔太「えっ?」
一同「ハッピーバースデー!」
翔太「…」ポカーン
冬馬「驚いたか翔太?まあその顔見れば驚いていることはすぐわかるか!」
北斗「今までネットゲームに嵌りすぎて今日が何の日か忘れたみたいだね☆」
山村「おめでとうございます!朝早いですがこの時間が一番驚くと思いました!」
冬馬「早速パーティーを始めようか!」
翔太「みんな…」
翔太「迷惑かけてごめんなさい!そしてありがとう!」
冬馬「当然のことだ、仲間だろ?」
北斗「それじゃあ、始めようか、バースデーパーティー」
翔太「うん!」
翔太(自分でもわかる…今僕はとってもいい笑顔なんだって)
翔太(ネトゲなんかやっているときより、遥かに楽しんでいることがよくわかるよ)
翔太(やっぱり、物事には限度があるから気をつけないとね)
翔太(やりすぎて僕たちの関係とか壊しちゃったりして、取り返しのつかないことになるかもしれないから…)
冬馬「改めて、ハッピーバースデー」
翔太「ありがとう、みんな!」
終わり
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