【艦これ】初月「長10cmを返してくれ」 (36)
提督「ん、それは……」
提督「この子のことかな」
長10「……」モグモグ
初月「そうだ」
初月「僕の入渠の最中にいなくなったんだ」
提督「あはは、なるほどね……」
提督「この子はついさっき、僕の部屋に入って来たんだ」
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初月「長10cmに……何を与えているんだ?」
提督「チョコレートだよ」
提督「どうやら、お口には合ったみたいだね」
初月「そ……それはっ」
初月「だ、だめだ長10cm、その辺にしておけ」
初月「今は戦時下なんだ!」
長10「!」ガーン
初月「すまない、長10cmは連れて帰るよ……」ヒョイ
長10「……」シュン
初月「提督、失礼した」
ガチャ
バタン
提督「戦時下……か」
だが、その次の日のお昼過ぎ。
長10cm砲はまた執務室にやってきた。
長10「」ガツガツ
提督「いい食いっぷりだなぁ」
ガチャン!
初月「あぁ、またここにいたのかっ」
長10「」ビクッ
提督「やっほー」
提督「今日はポテトチップスだよ」
初月「そうなのか、なるほど……って」
初月「そうじゃないっ」
初月「贅沢品は控えろと、あれほど……!」
提督「まぁまぁ……」
提督「なんかよく分からないけど、落ち着きなよ」
提督「この子、もっと食べたそうにしてるじゃないか」
初月「だ、だが!」
提督「それよりどうだい?君もポテチ」ガサゴソ
提督「今日は非番でしょ」
初月「……遠慮する」プイッ
初月「“あそこ”で今も」
初月「満足に食事ができていない秋月姉さん達の事を思うと……」
初月「……」
提督(なるほどね)モグモグ
提督「ん、まぁ……分かった」
提督「でも、この子にはもう少し食べさせてあげてくれないかな」
提督「この通り、頼むよ」ペコッ
長10「……」シュン
初月「……分かった」
初月「ただ、終わるまでここで待たせてもらってもいいか?」
提督「いいっすよ」モグモグ
長10「」ガツガツ
提督「お茶入れるよ……よっこら」
初月「あぁ、いいんだ提督っ」サッ
初月「それぐらい僕に入れさせてくれ……」
提督「別にいいのになぁ」
提督「じゃあ、お願いね」
初月「あぁ」
初月「提督、お茶が入っ……!」
提督「おぉーありがとーう」
初月「なんだか……机の上の菓子が増えていないか」
提督「ん、そうだね」
提督「白熊アイスがちょうど“三つ”あったから出しといたよ」
初月「しろくまっ……」
初月「……」ジー…
提督「……気になる?」
初月「……い、いやっ」ブンブン
初月「見るのは初めてだが……僕はいらない」
初月「……溶けるから戻しておいてくれ」
長10「♪」シャクシャク
提督「そういえば君とこうやってお話するのは」カパッ
提督「はじめてだったかな」シャクシャク
初月「あぁ……」
初月「僕はここに来てまだ間もないからな……」
提督「それもそうだ」モグモグ
提督「うまい」
初月「……」ジー…
提督「ここにはもう慣れた?」クルッ
初月「っ!」ビクッ
初月「あ、あぁっ、多少は、だがな……」
提督「多少かぁ」
初月「やはり、以前所属していた艦隊とは何から何まで違う……」
初月「それに、向こうには姉さん達もいた」
提督「あぁ……そうだよな」
提督「頼りになる身内がいないのはキツイなぁ」
初月「だが、僕は大丈夫だ」フフッ
初月「姉さん達がいなくても、立派にやってみせる」
長10「」モグモグ
提督「それにしてもよく胃袋に入るなぁ」
提督「ねぇ、初月」
初月「なんだ提督」
提督「……君らっていつも部屋で何食べてるの?」
初月「あぁ、決まっている」
初月「麦飯だ」
提督「うん」
初月「…………」
提督「……えっ」
提督「だけ?」
初月「あぁ、いつもはな」
初月「配給のあった時は牛缶が食べられるぞ」フフッ
提督「……そう」
長10「」ガツガツ
提督(納得だぁ……)
提督「遠慮しなくていいよほんと」
提督「炊事場のものは何でも使っていいからね」
初月「あぁ、ありがたい話だが……」
初月「僕たちは以前からそうだった」
初月「……なにも問題はない」
提督「ふぅーん……」モグモグ
初月「……っ」ゴクッ
提督(本当かなぁ)
提督(試してみよう)
提督「さっきの白熊アイス、どうしようかな」
初月「!」
提督「長たん、欲しい?」
長10「……」
長10「」チラッ
初月「……」ドキドキ
長10「……」
長10「」ブンブン
提督「そっか、いらないか」ニコッ
初月「」ホッ
初月(はっ!)
初月(なにをやっているんだ僕は……!)
初月(このままでは、姉さん達に顔向けできないぞ……)
提督「じゃあ、長たんには代わりに間宮さん特製羊羹をあげよう」
長10「♪」
初月「!!」
提督「もちろん、初月にも……」
初月「……」ゴクリ
初月「な、なぁ提督」
初月「菓子は……そろそろ控えないか?」
初月「身体に悪い、たぶん……」
提督「えーっ」
提督「僕が子どもの頃はこんくらい食べてたよ」
提督「初月ももっと食べた方がいいくらいだよっ」
初月(この男は……!)グググ
提督「まぁいいや、この子がそう言ってるから……」
提督「二人で食べちゃおっか」ニコッ
初月「うっ……」
提督「……う?」
初月「な、何でもない!」
初月「早く!さっさと二人で羊羹を食べてしまえばいいでは……」
グゥー……
初月「!」
提督「ん?」
長10「?」
初月「……」
初月「……」グスッ
提督「あっ」
初月「……ダメなんだ」
初月「……姉さん達がお腹を空かせて」
初月「死線で頑張っている……」
初月「そんな時に……」ポロ…ポロ…
初月「僕だけが……こんな……」グスッ
ポンッ
初月「!」
提督「……いいんだよ、初月」
提督「心とお腹には、いつもゆとりを持たなきゃ」
初月「ゆと……り……?」グスッ
提督「そう、ゆとり……」
提督「姉さん達を助けたかったら、助ける人が万全じゃないとね」
提督「精神だけでどうにかしようって時代は……」
提督「君たちがかつて“沈んだ”時代に、一緒に消えたんだ」
初月「……」
提督「だから……」
提督「姉さん達を幸せにする前に、君たちが幸せにならなきゃ」
提督「な?」
初月「……あぁ……」ポロ…ポロ…
初月「美味しい……」モグモグ
初月「美味しい……!」モグモグ
提督(羊羹、本当に美味そうに食うなぁ)クスッ
長10「」フフン
初月「提督……」
提督「ん」
初月「……僕、しろくま」
初月「……食べたい」ニコッ
提督「……ポテチもどーぞ」
――――――――fin―――――――――
このお話はこれで以上になります。
初月はドストライクでしたねぇ……
秋月以上にお腹いっぱい美味しいもの食べさせてあげたかったので書きました。
バレンタインものは別にまた明日書きます(便乗)
ここまで読んでくださった方いらっしゃいましたら
今回も楽しく書かせていただき、ありがとうございました。
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