武内P「新田さんと飲むことになりました」 (50)
アニメ最終回後の設定です
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武内P「……ふう」
武内P「そろそろ時間か……」ガサガサ
コンコン
武内P「どうぞ」
ちひろ「失礼します……あら? もうお帰りですか」
武内P「ええ。今日は、この後約束があるので」
ちひろ「約束……もしかして、デートですか?」キラキラ
武内P「デート……では、ないと思いますが」
ちひろ「その曖昧な返事。女の子と二人で会うのは事実のようですね」
武内P「……千川さんは、エスパー、なのでしょうか」
ちひろ「このくらい、裕子ちゃんじゃなくてもわかりますよ」
武内P「実は、新田さんと飲む約束を」
ちひろ「美波ちゃんですか。そっかー、彼女ももう成人していましたね」
武内P「はい。彼女とお酒を飲むのは初めてですが、時の流れを感じさせられます」
ちひろ「最近、美波ちゃんと会えてないんじゃないですか?」
武内P「ええ。直接会って話すのは、久しぶりになるかと」
ちひろ「優しくしてあげてくださいね。きっと彼女、寂しがっていると思うから」
武内P「寂しがる……ですか? 新田さんが……」
ちひろ「そうですよ? プロデューサーさん、そのあたりは鈍いから気づかないかもしれませんけど」
武内P「はあ……鈍い、ですか」
ちひろ「とにかく、ここで悩んでいても仕方ありません。準備ができたのなら、早く行ってあげてください♪」
武内P「は、はい」
ちひろ「さっさとここを出ないと、誰かが急用を持ってきてしまうかもしれませんし――」
コンコン ガチャ
美城専務「失礼する。君に確認しておかなければならない案件があるのだが」
今西部長「すまないね。急を要することなんだ」
武内P「……今から、ですか」
専務「今からだ」
部長「何か、まずいことでもあったかね」
武内P「………」
武内P「いえ、大丈夫です」
武内P(新田さんには悪いが、仕方ない。遅れると連絡しておかなければ)
ちひろ「あちゃー……」
美波「………」ジロジロ
美波「変じゃないわよね、この格好」
美波「ちょっと気合い入れすぎちゃったかもしれないけど……うん、大丈夫」
美波(久しぶりにプロデューサーさんと会えるんだし……このくらいは)
美波「似合ってるって言ってくれるかな……ふふっ」
Prrrrrr
美波「電話……あ、プロデューサーさんから」
美波「はい、もしもし」
美波「……はい……はい。えっ、遅れる……?」
美波「いえ、大丈夫です。私、待ってますから」
美波「お仕事、頑張ってくださいね」
ピッ
美波「………」
美波「……はぁ」ガックリ
イラッシャイマセー
美波「……個室にひとりきりは、寂しいわね」
美波「お酒飲むくらいしかやることないし」ゴクゴク
美波「プロデューサーさんも、どうして今日に限って急用だなんて」ゴクゴク
美波(あの人のことだから、私との約束を忘れていたんじゃなくて、本当に急に仕事が入ったんだと思うけど……)ゴクゴク
美波「仕方ないよね。大事な仕事なら、私との約束より優先すべきなのは当たり前だし」ゴクゴク
美波「私より……仕事をとっても……」グビグビ
美波「………」ゴクゴク
美波「………」ムカムカ
美波「こっちは張り切っておめかししたのに……ひっく」
武内P「ようやく終わった……」
武内P(1時間半……かなり遅れてしまった)
武内P(新田さんは、電話をしても出ない……)
武内P「帰ってしまっていなければいいのだが……」
イラッシャイマセー
店員「こちらのお部屋になります」
武内P「はい」
武内P(新田さんは……)
美波「あ、プロデューサーさん。やっと来てくれた」ニコニコ
武内P「申し訳ありません。遅れてしまって」
武内P「待っていてくれたのですね」
美波「当たり前じゃないですか。うふふ」
武内P(お酒を飲んで、気を紛らわせていたのか……なんにせよ、帰ってしまっていなくてよかった)
店員「ご注文はいかがいたしましょう」
武内P「では――」
武内P「………」
美波「………」ニコニコ
武内P「すみません。先ほども電話で言った通り、急な仕事が入ってしまいまして」
美波「いいんです。仕方ないですよね」
美波「私、気にしていませんから」ニコニコ
武内P「………」ホッ
武内P「そう言っていただけると、私も――」
美波「気合いを入れておめかしした挙句、急に1時間半も待たされる羽目になりましたけど、ぜーんぜん怒ってませんよ?」ニコニコ
武内P「………」
美波「私より仕事を優先されて、ひとりさみーしくお酒を飲むしかできなかったけど、全然まったく気にしていませんから……ひっく」
武内P「あの、新田さん」
美波「なんですか? 遅れてきたプロデューサーさん」
武内P「」グサッ
武内P「……怒っておられますか?」
美波「だーかーらー、怒ってないって言ってるじゃないですかー。うふふ♪」
美波「ちょーっと鞭でお仕置きとかしたいなーって思ってるだけですよ?」
武内P(かなり怒っておられる……)
武内P(それに……今気づいたが、彼女の息、相当酒臭い)
美波「今日はもう好きなだけ飲んじゃいますもんねー。ひっく」
武内P(間違いなく、いつもの新田さんではない……!)
武内P「あの、新田さん」
美波「なんですか?」プクー
武内P「酔って、おられるようですね」
美波「あらあら? プロデューサーさんは、私が怒っているのをお酒のせいにするんですか?」
武内P(怒っていると認めましたね……)
武内P「いえ、決してそういうわけでは。悪いのは、遅れてきた私ですから」
武内P「最近は、シンデレラプロジェクト2期生の皆さんにかかりきりで……新田さんをはじめとする1期生の皆さんには、なかなか会える時間を作れないでいました」
武内P「そんな中、こうしてあなたと話せる機会を持てたというのに……遅刻してしまい、本当に申し訳ありませんでした」
美波「………」
美波「顔、上げてください」
武内P「ですが」
美波「上げてください。お願いです」
武内P「……はい」
美波「私、今日の約束……とっても楽しみにしていたんです」
美波「どうしてだと思います?」
武内P「………」
美波「わからないんですか? 最近会えていないからって、こんな簡単な問題も解けないほど、私のことを忘れちゃったんですか?」
武内P「……私に、会えるから。ですか」
美波「はい、正解です♪」
美波「プロデューサーさんとお会いすること、去年は毎日のようにできていました。でも、最近は……」
美波「だから、すごく楽しみだったんです。聞いてほしいお話がたくさんあるから……プロデューサーさんのお話も、たくさん聞きたいから」
武内P「新田さん……」
ちひろ『優しくしてあげてくださいね。きっと彼女、寂しがっていると思うから』
武内P(そういえば、以前――)
奏『美波って、根っこのところは甘えたがりなのかもしれないわ』
武内P『甘えたがり、ですか』
奏『ええ。だって、いまだに両親のこと、パパママって呼んでるのよ? きっと甘えん坊なのよ』
武内P『それは、理由になるのでしょうか』
奏『さあ? でも、そっちのほうが可愛らしいと思わない?』フフッ
武内P『はあ……そう、ですか』
奏『まあ、仮にそうだったとしても……あなたやシンデレラプロジェクトのみんなには見せないでしょうね。そういう姿』
武内P『なぜですか?』
奏『だってあの子、ええかっこしいだもの。辛いことがあっても、表に出さずに溜めこむタイプでしょ』
奏『あなたの前で甘えん坊になるとしたら、お酒に酔った時くらいじゃないかしら』
奏『そうそう、知ってる? 美波って絡み酒なの。この前、私未成年なのに無理やり飲まされそうになったわ。もう大変で……』
武内P『………』
武内P(そういえば、速水さんは未成年だった……)
武内P(速水さんとそのような話をしたことがあったが)
美波「プロデューサーさん……今日は、少しだけ甘えてもいいですか?」トロン
武内P(……彼女の観察眼には恐れ入る)
美波「プロデューサーさん?」
武内P「……はい。自分が、新田さんの力になれるのであれば」
美波「………」
武内P「新田さん?」
美波「そういう言い方、好きじゃないです」プクー
武内P「言い方……」
武内P「………」ハッ
武内P「……聞かせてください、あなたのお話。私も、聞きたいです」
美波「……よろしい♪」ニコニコ
美波「最近、奏さんと共演する機会が多いんです」
美波「仕事も、なんというか……セクシー路線? が増えてきたような」
美波「アーニャちゃんには、なぜか怒られちゃうんですけどね」
武内P「アナスタシアさんにとって、新田さんは『かわいい』という印象が強いのでしょう」
美波「そうみたいですね。かわいいって思ってくれるのは、うれしいな」
武内P「彼女とは、頻繁に連絡を?」
美波「もちろん。直接会えなくても、今は携帯でいくらでも連絡がとれますから」
武内P「そうですね。便利な時代になりました」
美波「ぷっ……プロデューサーさん、おじさんみたいなこと言うんですね」
武内P「……はあ、すみません」
美波「謝らなくていいんですよ。ふふっ、おかしい」ケラケラ
美波「あはは……っ」
武内P「………」
武内P(新田さんのこのような笑い方は、初めて見たかもしれない)
武内P(彼女と出会って1年以上経つが……まだまだ、知らないことがたくさんあるようだ)
美波「……ねえ、プロデューサーさん」
武内P「なんでしょう」
美波「プロデューサーさんは、私のことどう思いますか?」
美波「セクシーですか? それともかわいいですか?」
武内P「………」
武内P「私は、どちらも新田さんの持っている魅力だと思います」
武内P「両方を持っていることが、あなたのアイドルとしての大きな武器になります」
武内P「ステージで輝くあなたは、両方を兼ね備えていて、とても素敵です」
美波「……ありがとうございます。そんな風に言ってもらえると、私もうれしいです」
美波「ちょっと解答のポイントがずれてるけど」ボソッ
武内P「なにか?」
美波「いーえ、なんでも」
美波「プロデューサーさんは、プロデューサーさんだなって」
武内P「?」
美波「ところでプロデューサーさん。今日はどんな仕事で遅れたんですか?」
武内P「美城専務と、少々話し合いをすることになりまして」
美波「むぅ、専務か……プロデューサーさん、年上の人の方が好みですか?」
武内P「……はい?」
美波「どーなんですかー」
武内P「に、新田さん。落ち着いてください。やはりお酒がまわって」
美波「酔ってませんよーだ」ヘラヘラ
武内P「……とにかく。自分は、専務と今西部長に頼まれたので、それに応じただけです」
美波「部長!? ぷ、プロデューサーさん、まさかオジサマが好み」
武内P「違います……!」
美波「本当ですか?」
武内P「本当です。信じてください」
美波「じゃあ、信じます」
美波「プロデューサーさんがそこまで言うなら……信じます」キリッ
武内P「そこまでせずとも、普通に信じてほしいことな気がします」
美波「2期生のみんな、どんな感じですか?」
武内P「皆さん、それぞれの目標に向かって頑張っています」
武内P「失敗することもありますが、前を向いて……笑顔で」
美波「そうですか……それなら、シンデレラプロジェクトも安泰ですね」
武内P「そうなるように、私も頑張らなければいけません」
美波「うふふ、私も負けていられないなあ」
武内P「新田さんを目標にしている方もいます」
美波「本当ですか? そっか、私もついに人から目標にされるようになったんだ」
武内P「はい。ですが、あなたはもっと輝ける……まだ、高みを目指せると思います」
美波「プロデューサーさん……」
美波「ちょっと、敬語外してみてもらえます?」
武内P「……はい?」
美波「なんか硬いんですよね。せっかく二人きりでのお酒の席なのに」
美波「ね、いいじゃないですかこういう時くらい。変なしゃべり方になっても笑いませんから」
武内P「し、しかし」
美波「今日は甘えさせてくれる約束でしたよね?」
武内P「………」
武内P「わ、わかったぜ」
武内P「こ、これでいい……か、ぜ?」
美波「あははははっ!」
武内P「……笑わない、という約束では」
美波「ご、ごめんなさい。ふふっ、久しぶりに聞いたら、予想以上に面白くて……ふふふっ」
武内P「酔うと笑い上戸になるのですね……」
美波「ほらほら、プロデューサーさんもどんどん飲みましょう」
武内P「いえ、自分はあまり飲みすぎるつもりは」
美波「むー! 私のお酌が嫌いだって言うんですか!」
武内P「そんなことはありませんが……」
美波「だったらいいですよね? えへへ~」
武内P(速水さんの言った通り、絡み酒だ……)
そして……
美波「むにゅ~……お酒ー、お酒ー」
武内P「もう店を出ています。今は帰り道です」
美波「……おっきい背中」
武内P「ひとりでは歩けないようでしたので、背負わせてもらっています」
美波「家までおんぶしてくれるんですかぁ?」
武内P「いえ。タクシーが拾えそうなところまでです」
美波「むー……」ギュー
武内P「……あまり強く抱きつかれると、首が締まって痛いのですが」
美波「知りません」
武内P「………」
美波「………」
武内P「あの」
美波「プロデューサーさん」
武内P「……はい」
美波「私……本当は、結構寂しがり屋なんです」
美波「だから、これからも……」
武内P「………」
武内P「わかりました」
武内P「あなたとの時間を、大切に――」
美波「……すぅ」
武内P「……眠ってしまいましたか」
武内P(妙な噂が立たないよう、千川さんあたりに送っていただくのがベストだが……さすがにこの時間だと迷惑に)
美波「プロデューサーさぁん……」ゴニョゴニョ
武内P「……寝言、か」
武内P(普段はしっかりしているが、彼女もまだ20歳の女の子――)
美波「むちゅ~~」チューッ
武内P「………」
武内P「首筋に……やられた」
翌朝
美波「……あれ」
美波「ここ、私の部屋……いつの間に」
美波「えっと、昨日は確か、プロデューサーさんと……」
美波「………」
美波「………!!」カアァ
美波「わ、私、なんてことを……曖昧にしか思い出せないけど、とんでもないことを……!」
美波「はわわ、はわわ」
美波「ど、どうしよう……プロデューサーさんにどんな顔して会えば」
美波「……あれ? 机の上に書き置きが」
『昨夜は、楽しいひと時を過ごさせていただきました。ありがとうございます。
新田さんの新たな一面を知ることができました。お酒も似合う方だとわかったので、私主導で、そういった方面の仕事も探してみようかと思います』
美波「………」
美波「いつも仕事中心なんですね、プロデューサーさん」
美波「私主導で、か……」
美波「ふふっ♪」
美波「……あ、頭痛くなってきた」
美波「今日は休みだし、ゆっくりしていようかな……」
武内P「………」カタカタ
ちひろ「あら? プロデューサーさん、室内でネックウォーマーですか。今までつけてませんでしたよね」
武内P「え、ええ。少し」
ちひろ「寒気がするのなら、早めに熱とか測ったほうが」
武内P「大丈夫です。そういうのでは、ないので……」
ちひろ「………?」
武内P(一日で消えればいいが……とにかく、今日は首を見せないようにしなければ)
おしまい
アニメ見ていると、奏はそのうち美波にとってのよき理解者になるんじゃないかなーという妄想が頭をよぎります
関係ない過去作
モバP「桐生つかさは意外と……」
言い忘れていました
読んでくださった方、ありがとうございます
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