モバP「言葉が重くなる病気?」(18)
医者「ええ、大変に残念ですが」
P「えっと、つまりどういう事でしょうか?」
医者「その名の通り、重くなります」
P「はあ」
医者「まだ症状は出ていませんが、恐らく明日には発症してしまうかと」
P「えっと、治す方法は?」
医者「一日経てば自然と治癒します、ですが本当にその間は言葉が重くなってしまいますので
おまけに自覚症状がありませんので、治るまで自分がおかしい事にも気づけません」
P「わ、分かりました……」
医者「段々と自我も薄れていきますので、思わぬ行動を取ることになるかもしれませんので。
お気を付けて」
P「と、言われてもなあ。結局、朝になっても何ともないから事務所に来ちゃったけど」
ちひろ「あ、おはようございます。健康診断に引っ掛かったって聞きましたけど大丈夫でした?」
P「……ああ、いいんだ。何も心配するな、少し奇病を患っただけの話」
(いや、何か変な病名を言われたんすけど)
ちひろ「え、あのプロデューサーさん」
P「いい、悔いはない。気にするな、最後まで笑顔でいようとは思うから」
(はは、何か笑える話なんですけど。後で話すんで)
ちひろ「プロデューサーさんもしかして……」
P「いやいい、本当にいいんだ」
(まあ、何でもなかったって話なんだけど)
凛「おはよ」
P「今日は会えたか」
(おはよ)
凛「今日は? 昨日はお休みって聞いてたけど、もしかして明日も休み?」
P「いや、少しでも長く凛の顔を見たいからな」
(凛をトップアイドルにするって約束したろ? まだまだ休んでる場合じゃないって)
凛「何? その言い方、変だよ?」
P「そうか、分かるか?」
(え、そうかな?)
凛「何かあったの?」
ちひろ「実は昨日、プロデューサーさん健康診断に引っ掛かったみたいなの」
凛「本当!? 大丈夫?」
P「原因不明の奇病を患っただけのこと、業務に支障はない」
(何か変な病気になったって言われたんだけど、全く自覚ないんだよなあ)
凛「原因不明!?」
ちひろ「……やっぱり」
P「お前達は何も気にするな、これは俺の問題だ」
(いや、何か別に害があるとかって訳じゃないから)
凛「そんなに重いの?」
P「……いや」
(大した事ないって)
凛「そっか、言ってくれないんだ」
ちひろ「凛ちゃん……」
凛「レッスン行ってくる、今日は終わるまでいてくれる?」
P「お前が望む願いは、必ず叶えてみせる」
(そのつもりだよ)
凛「……行ってくる、待っててね」
ちひろ「プロデューサーさん、休まなくて大丈夫ですか? 代われる仕事ならやりますから
P「いえ、この体の動く内にしておかないと……きっと最期に後悔すると思うんだ」
(やれる内にやっておかないと、後で痛い目に合いますから)
ちひろ「そう、ですか。私も頑張りますから、何かあったらすぐに言って下さいね」
P「ありがとう、ちひろ」
(ちひろさんあざーっす)
ありす「おはようございます」
P「ありすか、顔を見れて嬉しいよ」
(ありす、おはよ)
ありす「え、そうですか?」
P「ああ、俺の大切なアイドルだからな」
(もちろん)
ありす「俺の……へへ」
P「共に歩く準備はできてるな?」
(今日は現場まで一緒だな)
ありす「はい、行きましょう」
P「おや、秋の贈り物かな?」
(髪に葉っぱが付いてるぞ)
ありす「あ、ありがとうございます」
P「あまりに綺麗だから女神様かと思ったよ」
(小さな妖精みたいだな)
ありす「そんな、言い過ぎです」
P「俺にはもうお前しか見えない」
(いや、何か引き込まれるような感じがしてさ)
ありす「え、えへへ。それなら仕方ないですね」
P「さあ、行こう。俺とありすの約束の地へ」
(約束の時間までもうすぐだ、ほら行くぞ)
ありす「はい、どこまでも一緒です。Pさん!」
P「何故だろう、妙にありすがご機嫌だった。別に何もおかしくないよな?」
千枝「あ、Pさん。お疲れ様です」
P「これも運命かな」
(おお、偶然だな)
千枝「運命ですか?」
P「俺と千枝はここで会う運命だったんだよ」
(そ、偶然)
千枝「そうだったら……嬉しいです」
P「その衣装は俺との結婚式の為かな?」
(その手に持ってる衣装はどうしたんだ?)
千枝「けっ、結婚!?」
P「千枝は俺の理想のお嫁さんだからな」
(結婚? 千枝ならいいお嫁さんになりそうだけど)
千枝「本当ですか?」
P「俺は嘘は言わない、な?」
(本当だって)
千枝「千枝、頑張りますから」
P「千枝の事なら何でも応援するからな」
(何かよく分からないけど、まあ頑張れ)
千枝「それで相談なんですけど、どっちの衣装のほうが似合ってますか?
次のライブで着る衣装の候補なんです」
P「これを着ろ」
(うーん、俺はこっちかな)
千枝「こっちですか?」
P「俺の色に染まってくれるのなら」
(俺の好みはな)
千枝「Pさんの色……分かりましたこっちにします!」
P「俺を満足させてくれたら、いいものをあげるよ。千枝の望むものなら何でも」
(成功したら何かご褒美あげないとな)
千枝「絶対、Pさんの期待に応えますから」
P「お、おお。何か凄い気合だったけど。それにしても寒いな、何で冷房なんて付けてるんだ寒くて震えるって」
美波「あ、Pさんお疲れ様です」
P「美波か……」
(お疲れ、それにしても寒くないか?)
美波「Pさん、どうしたんですか? 震えてますよ」
P「俺を、温めてくれないか?」
(そこに上着あるから取ってくれないか?)
美波「はい?」
P「やっぱりお前は使えないな」
(あ、駄目か。アイドルをそんな風に使ったら駄目だよな)
美波「」
P「何も言う事がないか」
(あれ、何で黙っちゃったんだ?)
美波「これで……いいで……すか?」
P「止めろ、何をしているか分かっているのか?」
(おい! アイドルがそんな風に抱き付くなって!)
美波「分かってます、Pさんが最初に言ったんじゃないですか」
P「俺は温めてくれとは言ったが」
(俺は上着を取ってくれって言っただけで)
美波「まだ、足りないんですか?」
P「もういい、それがお前の限界だ」
(いやもう充分だって!)
美波「そんな事を言うんですか、でしたら」
P「お前に覚悟などある訳ない」
(どうした? そんな意を決したような顔して)
美波「こ、これで……満足ですか? 体温、感じてくれてますか?」
P「」
美波「何か言って下さい、私だけこんな事させて……狡いです」
凛「プロデューサーまだいる!? 今日は私がついて……」
美波「あ」
凛「へえ……ふうん……そう」
千枝「Pさん着てきました! どうで……しょう……かあ?」
ありす「Pさん仕事終わりました、今日はよくできましたので……」
P「これは美波の俺に対する意志だ」
(違う! これは美波が勝手に!!)
凛「意志って、そういう関係だったの?」
美波「いえ、そのPさんが震えてて」
千枝「少し寒いですもんね」
ありす「だからと言ってそれはやり過ぎです」
P「急に……誰かの温もりが欲しくなってな。求めてしまったんだ、この子に」
(俺は上着を取ってもらおうとしただけで! 美波に頼んだだけなんだよ!)
凛「それならそうと言ってよ、やっぱり無理してたんだね」
美波「無理?」
凛「病気みたいなんだ、プロデューサー」
美波「そんな! 本当なんですか!?」
P「原因不明の、奇病だそうだ」
(変な病気なんだけどな)
美波「原因不明……」
千枝「治す方法はないんですか?」
P「今日、一夜を明かせば」
(一日経てば治るそうなんだが)
凛「一夜を明かすって」
ありす「つまり」
千枝「そういう事ですね」
美波「じゃあ今日はずっとこんなに震えたままなんですか?」
P「お前たちの温もりさえあれば、問題ないさ」
(いや、これは暖を取れば済む話だから)
凛「覚悟を決めるしかないね」
千枝「Pさんを治す為です」
ありす「待って下さいって言ったのにせっかちなんですから」
美波「仕方ありません、今日はもう離しませんから」
――
―
P「あれ? 事務所に来てからの記憶があんまりないな……ってか何で裸!? 一体どうなって」
凛「すう……」
千枝「P……さん」
ありす「ふわ……もっと……」
美波「あ……起きたんですか?」
P「えっと、ここどこだ?」
美波「仮眠室ですよ」
P「……何で裸?」
美波「私の温もりが欲しいって、言われてしまいましたから」
P「いや、待て何のことだかさっぱり!」
早苗「なーに? 誰かいるのー?」
P「まずい」
早苗「……うん、返答次第では考える。何をしてるの?」
P「食べちゃった」
(待って下さい! 俺は何もしてませんって!!)
早苗「うん、分かった」
P「NOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!」
医者「うん? あの患者、まだ病気を持っているな」
看護婦「何の病気ですか?」
医者「うん、まあ強いて名づけるなら」
「言葉が軽くなる病気、かな」
終焉の扉は今開かれん!!
(終わり)
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