渋谷凛「いい加減にして、未央っ!」 (100)
設定はアニメ基準
時系列は適当
既視感のあるネタ
キャラ崩壊とキャラの違和感注意
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本田未央「えっ……」
未央「と、突然どうしたの……? しぶりん……」
島村卯月「り、凛ちゃん……」
凛「……ごめん、大声出して」
凛「でも、ちょっと未央には言いたいことがあるんだよ」
未央「い、言いたいこと……?」
凛「そう、言いたいこと」
凛「言っておかなくちゃいけないこと」
卯月「り、凛ちゃん――」
凛「卯月だってあるでしょ?」
卯月「え、あの……それは……」
未央「えっ、しまむーも……?」
卯月「わ、私はいいんです。私なら大丈夫で――」
凛「誤魔化さないでよ」
凛「やっぱり、こういうことはしっかり言葉にしておかなくちゃ、駄目だったんだよ」
卯月「で、でも……」
未央「あ、あの……」
未央「もしかして、私――知らない間に、二人に迷惑かけてた……?」
未央「だったら、謝るよ……」
未央「私、いつも調子に乗り過ぎちゃうとこがあるから……」
未央「だから……」
未央「あの……」グスッ
卯月「み、未央ちゃん……! 泣かないでください……!」
凛「そうだよ。泣かないで、ちゃんと聞いて」
卯月「り、凛ちゃんっ……!」
未央「いいんだ、しまむー……」
未央「うん、ごめん……。ちゃんと聞くから……」グスッ
凛「……未央さ、この前、私の家に来たでしょ?」
未央「う、うん……。私が頼んで、お邪魔させてもらったけど……」
未央「あ、あの……やっぱり、迷惑だった……?」
凛「そうじゃなくて……」
凛「とにかく、それでうちに来て――それでまあ、いろいろ話したり、ハナコと遊んだりしたよね」
未央「う、うん……」
未央「あっ、あの……、ちょっと騒ぎ過ぎだった……?」
凛「それも関係ないよ」
未央「う、うん……?」
凛「それで、帰る時間になってさ、表まで出てきて――」
凛「そこで未央、うちのお父さんに会ったでしょ?」
未央「えっ、うん……。会ったよ……? レジの所にいたよね……?」
凛「そこでお父さんとどんな会話したか、憶えてる?」
未央「え、普通に挨拶して……そんな大したこと話してないけど……」
凛「いいから、具体的に思い出してよ」
未央「えっ、うん……。確か――」
未央『それじゃ、お邪魔しましたー!』
凛父『ああ、未央ちゃん。もう帰るのかい?』
未央『はいっ! あんまり長居も悪いですし、私こう見えて千葉からなんで』
凛父『そうか……。それは、結構大変だね』
凛父『良かったら、駅ぐらいまででも、車を出そうか?』
未央『そんなっ! 悪いですよ!』
未央『お気持ちだけ受け取っておきます!』
凛父『遠慮しなくてもいいんだよ? これから暗くなるし……」
凛父「それに、いつも凛がお世話になってるみたいだしね』
未央『あははっ! しぶりん――凛さんには、私の方こそいつも迷惑かけてばっかりで……』
未央『だから、しっかり者の凛さんがいてくれて、本当に良かったって思ってます!』
凛父『そうかい? 父親が言うのもなんだが……、結構ぶっきらぼうじゃないかい?』
未央『いえいえ! 確かに、いつもはクールですけど――』
未央『でも、裏ではすごく仲間想いで、優しくって――私、大好きですよっ!』
凛父『そう言ってもらえると幸いだよ』
未央『えへへ……』
未央『凛さんのしっかりしたところって、もしかしたら、お父さん由来なのかもしれませんね』
凛父『私の……?』
未央『はいっ!』
未央『――カッコよくて、いざって時に頼りになる……安心してついていけるあの感じが、今のお父さんからも伝わりました!』
凛父『ははっ、照れるなぁ……』
未央『ホント、外見だけじゃなく、中身もカッコいいなんて……、凛さんはいいお父さんを持ちましたよね』ウンウン
凛父『いやいや、そこまで言われてしまうと、恥ずかしくなってくるよ』
未央『えへへ! そうやって照れるところも凛さんに似てますねっ! ちょっとカワイイですよっ!』
凛父『はははっ……』
――――――
――――
――
未央「こ、こんな……カンジ……だけど……」
凛「ふーん。私が見送る支度して、表に行くまでそんな感じだったんだね」
未央「あ、あの……もしかして――しぶりんのお父さん、怒ってた……?」
未央「いくら友達の父親だからって、馴れ馴れし過ぎたかな……」
凛「別に、怒ってなんていなかったよ。これっぽっちもね」
凛「――でもある意味、それが問題なんだよ」
未央「えっ……?」
凛「未央がそんな風に、お父さんを誉めそやした結果――どうなったと思う?」
未央「えっ、いや……ごめん、分かんない……」
凛「その結果――お父さんは最近、アイドル、本田未央のグッズを集めるようになったんだよ」
未央「えっ、あっ、うん……。うん?」
凛「――別に、大量に買い漁って、うちの家計が苦しい……なんて話じゃないよ」
凛「でも、お父さんがそうなった結果ね……」
未央「結果……どうなったの……?」
凛(今度の学校の三者面談、都合のいい日を聞かなくちゃ……)
凛『お母さん、あの――』
凛母『あなた。最近、随分と未央ちゃんにご執心のようね……?』
凛父『ご執心って……大げさだな』
凛父『いや、凛と同じユニットで、とても仲が良いみたいだからね。ちょっとでも応援してあげようと――』
凛母『ちょっとでも……?』
凛母『これで、ちょっと?』スッ
凛父『いや、ただのブロマイドじゃないか……。そうだよ、ちょっとでも応援を――』
凛母『これも?』スッ
凛父『いや、ただのストラップじゃないか……。凛のだって持ってるし――』
凛母『これも?』スッ
凛父『いや、ただのCDじゃないか……。とってもいい曲なんだぞ?』
凛母『これも? これも? これも?』スッスッスッ
凛父『いや、ただのぬいぐるみだし――それはねんどろいどだ。そっちは、もうちょっとしっかりとしたフィギュアだな……』
凛母『……これも?』
凛父『……それは、ただのイメージビデオだ。凛たち、シンデレラプロジェクトのみんなだって映ってるぞ……』
凛母『……さっき――パソコンには、こんな注文履歴があったけど?』
凛父『そ、それは……あの……』
凛父『ただの……グラビア写真集だ……。未央ちゃん以外だって載ってるし……』
未央「えーと……」
凛「それで――それでだよ……」
凛「それから、どうなったか……分かる……?」
未央「いや、あの……」
未央「ど、どうなったんでしょうか……?」
凛「…………聞きたい?」
未央「いや、あの――」
凛「聞かせてあげるよ」
凛「それから――」
凛父『ま、待ってくれ! まさか処分するとか言わないだろ!?』
凛母『そんなことしませんよ。私だって、未央ちゃんは好きだし、応援してます』
凛母『――でも、ねぇ……?』
凛母『分かりますよね……? 私が言いたいこと……』
凛父『えっ、いや……あの……』
凛母『ふーん……。未央ちゃんのグッズがこんなにいっぱい……』
凛母『じゃあ、今夜はその分、いっぱいシなくちゃね? あなた?』
凛父『いや、待て――もう若くないんだし、明日もしごと――』
アアアァァァァーーー!!
凛『…………』
凛「『今夜』どころか、ここ一週間毎日だよ……」ズーン
凛「毎晩毎晩、両親の営みを聞かされて……、私、寝不足だよ……」
凛「『娘に聞こえちゃう』ってその声が聞こえてるんだよ……」
未央「オゥ……」
未央「えっ……ていうことは、もしかして、しまむーも……?」
卯月「は、はい……」
凛「卯月も言ってあげなよ。未央が刻むべきカルマを」
卯月「あ、あの……でも……」
未央「いや、いいんだしまむー……。聞かせて」
卯月「は、はい」
卯月「未央ちゃん――この前、一緒にお出かけして、それで帰りが雨だったじゃないですか」
未央「ああ……うん。それで、しまむーのお父さんに車で送ってもらったんだよね」
卯月「はい……。私は、疲れて寝ちゃったんですけど……。その時のことって憶えてますか……?」
未央「ええと、確か――」
未央『本当にありがとうございます。わざわざ送ってもらっちゃって……』
卯月父『いやいや、気にしないで。いつも卯月と仲良くしてくれて、こっちがお礼を言いたいよ』
卯月父『ありがとね、未央ちゃん。卯月、ちょっと抜けてるとこがあるから、何かと迷惑かけているんじゃないかと心配で……』
未央『そ、そんなっ! しまむー、じゃなくて卯月さん――いつも明るくて、一緒にいるだけで元気が出ますよっ!』
卯月父『そうかそうかっ! まあ、これでも自慢の娘だからね……』
卯月父『正直、ちょっと不安だったんだ……』
卯月父『芸能界って、成功すればそりゃ華々しいが……、しかしそれは一握りだろう?』
卯月父『現に――卯月だって、ずっと養成所に居たわけだしね……』
卯月父『だから、そんな卯月がデビューとなった時は、そりゃあ嬉しかったが……』
卯月父『同時に――不安にもなったよ。この子がちゃんと、笑顔でやっていけるのかって……』
未央『……その』
未央『安易に『分かります』とか、楽観的に『大丈夫』なんて、私の口からは言えませんけど……』
未央『でも――今、しまむーの周りにいる人たちは、みんなとっても温かくて優しくて……』
未央『プロデューサーも、一生懸命、私たちのために頑張ってますし……』
未央『それにしまむー自身だって、そんな温かくて優しい――安心できる場所の一因で……一員なんですっ!』
未央『だから、その……』
未央『あはは……。ごめんなさい、訳分かんなくて……』
卯月父『いや――ありがとう』
卯月父『養成所で――、一人になっても笑顔で頑張っていたこの子に、今は一緒に笑ってくれる仲間ができたんだね……』
卯月父『未央ちゃん。娘と、これからも仲良くしてやってくれ』
未央『もちろんっ! 私、しまむーに会えて良かったって思ってますから!』
卯月『むにゃ……みおちゃん……それはりんちゃんのかんだがわだよ……ぴにゃ……』
未央『ふふ……しまむー、どんな寝言なの』
卯月父『ふむ……。しかし、『しまむー』か……』
未央『あっ、なんかごめんなさい』
卯月父『いやいや、可愛らしいというか……なんだか、ちょっと気の抜ける感じが、実にこの子っぽいよ』
未央『えー? それって褒めてます?』
卯月父『はははっ! もちろん』
卯月父『――それでいくと、私は『パパむー』になるのかな?』
未央『あははっ! 可愛いっていうか、しまむーのお父さんらしいですねっ!』
卯月父『そうかい? はははっ! いやしかし、それって褒めてる?』
未央『もちろんっ!』
卯月父『はははっ!』
卯月父『ちょっと未央ちゃん、呼んでみてくれない?』
未央『えー? いいんですか?』
卯月父『ああ、頼むよ』
未央『じゃあ、パパむー!』
卯月父『うん、いいなぁ……』
卯月父『――って、娘にばれたら怒られるかな……』
未央『パパむーって、しまむーにも呼んでもらったらどうですか?』
卯月父『それは私が恥ずかしいなぁ……』
卯月父『それになんだか、未央ちゃんに呼んでもらった方が、しっくりくるというか……』
未央『なんだかパパむーさんも、しまむーと同じでちょっと天然かもですね!』
卯月父『いやいや、この子の天然は妻譲りだよ』
未央『ママむー譲り、ですか?』
卯月父『そうそうっ! あははっ!』
――――――
――――
――
未央「――と、こんな感じです……」
卯月「それでだったんですね……。ママがパパのこと『パパむー』って呼ぶようになったのは……」
未央「な、なんかゴメンね……?」
卯月「いえ、そんな……」
未央「で、でも……! 呼び方が変わっただけなら、しぶりん程の被害は――」
卯月「いえ、それは……」
未央「オゥ……」
卯月(うぅ……また平均点でした……)
卯月(ママ怒るかなぁ……。でも、今回は難しくて、みんなあんまりできなかったみたいだし……)
卯月『ママ――』
卯月母『あなた、あの――』
卯月父『んー? パパむーって呼んでって――』
卯月母『パパむー? そんな呼び方、したことないですよ?』
卯月父『あっ、いや……。未央ちゃんと間違えた……』
卯月母『…………へぇ』
卯月母『未央ちゃんには、そんな風に呼ばせていたんですね?』
卯月父『あ、いや……その……』
卯月父『ほ、ほら! 未央ちゃん、卯月のことは『しまむー』って呼ぶじゃないかっ! あれと同じでっ!』
卯月母『別に、未央ちゃんを責めてなんていませんよ』
卯月母『問題は……、今の失言を見る限り――あなたが未央ちゃんに『パパむー』って呼ばせてるってことです』
卯月父『よ、呼ばせてるわけじゃないぞ!? あれから呼んでもらう機会もな――あっ……』
卯月母『ふふふふ……』ニコ
卯月(ママたち、お話し中かな?)
卯月(でも、パパなら私の味方になってくれたり――)
卯月父『た、たのむっ! 少し休ませ――』
卯月母『どうしたんですか、パパむー? まだ正の字が二つだけですよ?』
卯月母『ほーら、パパむー? あなた、これが好きだったでしょ?』
卯月父『ははは……いやいやもうお腹いっぱいっていうか、すっからかんっていうか……』
卯月母『でも、パパむーって呼ばれれば、頑張れるんですよね? ねぇ、ほら頑張って?』
卯月母『ホラ、ホラ、ホラッ……』
卯月父『ひぃ、ひぃいいい……』
アアアァァァァーー!!
卯月『…………』
卯月「それから、私も毎晩……」
卯月「もう、迂闊にダブルピースとかできなくなりました……」
未央(やべぇ……私のせいでしまむーの笑顔が曇って……)
凛「……まぁ、そういう訳だよ」
卯月「……うぅ」
未央「いや、なんと言うか……」
未央「ゴメン、としか言えないんだけど……」
凛「最近、ハナコは寝室には近づかなくなったよ……」
未央「ハナコちゃん……」
卯月「私は今日、ママに聞かれました……」
卯月「弟と妹――」
未央「ああ……どっちがほしいってやつ……?」
卯月「何人ずつほしいかって……」
未央「こわっ!」
凛「なに、未央。ニュージェネで一人だけ兄弟持ちだからって、私たちまで、その苦労を背負わそうとしてるの……?」
未央「そんな歪んだこと考えてないよ!?」
卯月「未央ちゃん……。名前、考えてくれますか……?」
未央「やめてしまむー!!」
未央「で、でもほら! ああいうのって、その……アブナイ日にしても、当たる確率って、結構低いらしいし……」
凛「それがいくつだろうが――続ければ、確率は上がるでしょ……」
未央「そ、それは、限りがある場合だし……当たらない時は、ずっと当たらないさ……」
卯月「あっ、私……この前テストでやりました……」
凛「限りっていうか……『当たらない限り終わらない』って感じだけど」
未央「………………」
卯月「うぅ……」
凛「……なんてね」
凛「ごめん。今のは嘘」
未央「えっ……!? そ、そっかー! 良かっ――」
凛「ごみ箱から、『錠剤』の箱を見つけたから……」
卯月「あっ、私も見ました。あれって……」
未央「嘘だと言いたいのは、お父さん方だね……」
凛「全く……、未央は……」
凛「いつも思ってたけど、同性同士でやるコミュニケーションの基準を、そのまま異性にまで当てはめるのはやめなよ」
凛「『カッコいい』とか『パパむー』なんて、どの乳下げて言ってるのか、自覚してよね」
未央「乳!?」
未央「ちょっと待った待ったっ!」
未央「――大体、それなら私だって、しぶりんに言いたことあるよっ!」
凛「え……? なに?」
未央「しぶりんが、この前うちに来た時――」
未央『いやー、今日はしぶりんと有意義な一日が過ごせたなー』
凛『そう? まあ、私も未央の私生活が見れて、ちょっと楽しかったかも』
未央『いやーんっ! しぶりんのすけべー!』
凛『はいはい』
未央『じゃあ、駅まで送ってくよ』
凛『いや、悪いよ。大丈夫だから――』
ガチャ
未央弟『ただいまー』
未央『おっ、うちの愚弟が帰って来おった!』
未央弟『あれ、姉ちゃんいたの?』
未央『なんだよ、いちゃ悪いかいっ!』
未央弟『いや、別に。――って……』
凛『えっと、初めまして』
未央弟『あっ、どうも……』
未央『おやおや~? どうしたどうした弟よ』
未央『初めて見る、生しぶりんの美しさに、目も合わせられぬかぁ~?』
凛『ちょっと……未央、やめてよ。恥ずかしい……』
未央弟『しぶりんって……。えーと、あの渋谷凛……さん……?』
凛『う、うん。一応、お姉さんと一緒に、アイドルやってるんだ』
未央弟『そ、そっすか……』
未央『おーおー、照れちゃって。かわいいんだから』
未央弟『うっせ!』
未央弟『大体、アイドルとかそんなキョーミないし……』
凛『あはは……そうだよね。別にそこまで有名ってわけでもないから……』
未央弟『あっ、いや……その……』
未央弟『まぁ、一応アイドルやってる姉の、弟なんで……』
未央弟『頑張ってください……』
凛『うん。ありがとう』ニコ
未央弟『――!!』
凛「え、待ってよ。私、なんかした?」
未央「そりゃ何から何までさ……」
未央「あの後からうちの愚弟といったら……」
未央『おーい、ごはんできたってよー』ガチャ
未央弟『ちょっ! ノックしろよっ!』ガサゴソ
未央『はぁ? 今までそんなこと言ってなかったくせにー』
未央弟『言っても聞かなかったんだろっ!』
未央弟『大体、呼ぶだけなら開ける必要ないだろっ!』
未央『分かった分かった。早く来なよー』
未央『っていうか、なんでパンツとシャツだけなの? 風邪ひくよ?』
未央弟『き、筋トレ! 筋トレしてたから!』
――別の日――
未央『ただいまー』
未央弟『…………』カチカチピコピコ
未央『た・だ・い・まー!』
未央弟『なんだよ、今忙しいんだよ。何回角折っても、黒巻き角が出ないんだよ……』カチカチピコピコ
未央『おやー? 偉大な賢姉さまにそんな態度とっていいのかなぁ~?』
未央弟『はぁ?』カチカチピコピコ
未央『じゃじゃーんっ! 取り出したるは、なんとあの美少女アイドル、渋谷凛ちゃんのブロマイドー!』
未央『この私、御自らが撮影した、きちょーな一枚っ!』
未央『今なら私にご奉仕するだけで、このファン垂涎ものの一枚がもらえちゃう、大チャーンス!!』
未央弟『いや、別にファンじゃないし……』
未央『あっそ。じゃあ、これは私の宝物にしよー』ゴソゴソ
未央弟『あっ、いや……』
未央弟『まあ、あんまり姉ちゃんを無下にするのもアレだし……渋谷さんにもなんか悪いし……』
未央弟『くれるって言うなら、もらうけど……』
未央『――報酬は?』
未央弟『今日の夕飯……』
未央『――内容は?』
未央弟『奮発した、宮城県産黒毛和牛サーロイン……』
未央『――調理法は?』
未央弟『……ステーキ』
未央『――焼き方は?』
未央弟『レア……』
未央『――取り分は?』
未央弟『さ、三割……』
未央『パーフェクトだ、ブラザー』
未央『じゃあ、はいコレ』スッ
未央弟『屈辱の極みっ……!』スッ
未央『ごはんできたってー』
未央『早く食べよう――』
未央弟『……凛さん……凛さん……』
未央『…………』
未央弟『凛さん……りんさん……』
未央弟『……りん、さ――』
未央『………………』
未央『か、化学の勉強中かなー……』
未央「あの小生意気ながらも可愛いかったうちの弟が……男坂、昇り始めちゃったよ……」ズーン
未央「やってくれたよね、しぶりん……」
凛「えぇ!? 私のせいなの!?」
未央「当たり前じゃんっ!」
未央「クールで通ってるしぶりんの微笑みは、男子にとっては『あなたに夢中アイウォンチュー』って言われたのと変わらないんだよっ!」
凛「クールで通ってるのに、なにそのキャラ!?」
未央「まだ青年誌とか読んでた方がマシだったよ……ヤングどころかアダルトにジャンプだよ……」
凛「そっち系の雑誌扱いしないでっ!?」
凛「ちょっと、卯月も何か言ってあげてよ!」
卯月「ごめんなさい……」
卯月「私も、凛ちゃんに言いたいことが……」
凛「えっ……」
卯月「この前……凛ちゃんをうちに招待した時のこと、思い出してください……」
凛「ええ……。確か――」
凛『お邪魔します』
卯月『あっ、凛ちゃん! ちょっと待っててくださいねっ!』
卯月『す、すぐに部屋きれーにしてきますからっ!』ダダダダ
凛『うん、焦らなくてもいいから』
卯月父『じゃあ、行ってくるよ』
卯月母『はーい。気を付けてね』
凛『あっ、こんにちは』
卯月父『ああ、凛ちゃんこんにちは。いつも卯月と仲良くしてくれてありがとね』
凛『いえそんな……』
凛『これから、お仕事ですか?』
卯月父『ああ。これでも何かと忙しくてね』
凛『そうなんですか。大変、ですね……』
卯月父『はははっ、全くね』
卯月父『――でも、卯月も夢へ向かって一歩、歩き出したみたいだし……』
卯月父『だから、私も頑張って、あの子の笑顔を支えてあげたいんだ』
卯月父『あの子のために、家族のために頑張ってくるよ』
凛『…………』
凛『あの……』
卯月父『うん?』
凛『いってらっしゃい。頑張ってください』ニコ
卯月「――その日以来、うちで『イッてきます』がスラングになりました……」
凛「それ私のせい!?」
未央「しぶりんの『いってらっしゃい』は、『こっちにいらっしゃい』って言ってるのと変わらないんだよ……」
凛「見送りの言葉なのに!?」
卯月「私、思ってたんです……」
卯月「これから……今よりもっと、凛ちゃんと未央ちゃんと仲良くなっていきたいって……」
卯月「お泊り会とかして、二人といっぱいお話しして……大好きな二人と、もっと一緒に過ごしたいって……」
卯月「――でも」
卯月「でもそれで……二人ともっと近くになったら――また、ママがパパの新しい扉を開いちゃうんじゃないかって……」
卯月「また、迂闊に使えない言葉が増えちゃうんじゃないかって……」
卯月「私、家で何も言えなくなっちゃうんじゃないかって……」
卯月「怖いよ……」
卯月「私が、ママを止める手立てなんて、なんにも無い……」
凛「な、なんにも無いなんて言わないでよっ!」
未央「しぶりん……それ言っとけばいいってもんじゃないから……」
凛「くっ……」カチッ
♪テッテ~テッテ~テッテッテ テテ~
未央「『S(mile)ING!』のイントロ流せばいいってもんでもないから……」
凛「じゃ、じゃあ言わせてもらうけど!」
凛「私――卯月にだって、言いたいこと、あるよ!」
卯月「ええっ!? 私もですか!?」
凛「この前、うちに来た時……何があったの……?」
卯月「ええと、確か――」
凛『じゃあ、ちょっとハナコ連れてくるから。待ってて』
卯月『はいっ!』
凛父『おや、卯月ちゃん。こんにちは』
卯月『あっ、凛ちゃんのお父さん! こんにちは』ペコリ
凛父『いつもうちの娘と仲良くしてくれてありがとう。今日は、アイドルの仕事はお休みかい?』
卯月『はいっ! だから、これから凛ちゃんとハナコちゃんとお散歩しようと思って』
凛父『そうか。ハナコとも仲が良いんだね』
凛父『そういえば、凛から聞いたんだけど――卯月ちゃん、なんでも凛と知り合う前に、この店で花を買っていったんだって?』
卯月『そうなんです! あの時は、アイドルデビューが決まったお祝いにって思って……』
卯月『当然、凛ちゃんのことはまだ知らなかったんですど……。でも、すっごい綺麗で親切な店員さんだな、って思いました』
卯月『まさか、その時の人が凛ちゃんで、一緒にアイドルができるなんて……。後で知ってから、とっても嬉しくなって!』
卯月『確か――』
卯月『これ……アネモネ、です! 今もうちに飾ってあるんです』
凛父『そうか。それは、凛もきっと喜ぶよ』
凛父『なんだったら――帰る時にでも、卯月ちゃんの好きな花を包もうか?』
卯月『ええぇ!? そ、そんな悪いですよっ!』
卯月『お花って、結構高いですし……』
凛父『いやいや、卯月ちゃんたちのおかげで、凛もアイドルが楽しいみたいだからね』
凛父『私からの、ちょっとしたお礼だよ』
卯月『そ、そんな……! 凛ちゃんのお父さんみたいな、カッコいい方からお花を贈られるなんて……』
卯月『余計、照れちゃいますよ……!』
凛「その日以降、うちの寝室の前に、切り花が置かれるようになったよ」
卯月「え……ええぇ……」
凛「夜、寝る前はつぼみで――朝に見ると、開化したやつに変わってるんだ……」
卯月「あの、そんな私……! 確かにお世辞とかのつもりはなかったですけど……、でも私の言葉なんて大したことは――」
凛「大したことないなんて言わないでよっ!」
凛「それで両親が踏み出したんだよ!? よく分かんない世界にっ!」
凛「今じゃ、アネモネの花を見るたびに、お父さんが震えてるんだよ……」
卯月「あの、でも……私……わたし――」
未央「しまむー」
未央「しまむー、いっつもさ……自分は無個性だとか、みんなと比べて何も無いなんて言ってるけど……」
未央「そんなわけないよね」
卯月「み、未央ちゃん……?」
未央「……この前、うちに来た時のこと、思い出して」
卯月「えっ……。確か――」
未央『しまむーは座ってて。今、お茶淹れるから』スタスタ
卯月『は、はいっ! ありがとうございます!』
ガチャ
未央弟『ただいまー』
未央弟『って、あれ……』
卯月『あっ、初めまして! 私、未央ちゃんと一緒にアイドルをしてる――』
未央弟『島村卯月さん、ですよね。初めまして』
卯月『うわぁ! 知っていてくれてるんですねっ! ありがとうございます!』ニコ
未央弟『あ、いや……。いつも姉ちゃんから聞いてるし……』
未央弟『それに……写真、姉ちゃんから送られて来たの、見ましたから』
卯月『そうなんですか!』
卯月『あっ、でも写真って……この前、未央ちゃんが撮ったやつかな……』
未央弟『なんか、バックに噴水が映ってましたけど』
卯月『やっぱり……。うぅ……』
未央弟『……あの、なにか?』
卯月『ううん! なんでもないんですよ!』
卯月『ただ、あの写真……』
未央弟『……?』
卯月『なんだか、いつもより余計にお尻が大きく見えて、ちょっと恥ずかしいんです……。えへへ……』
未央「やってくれたね……しまむー……」
未央「そのせいで――最近はもう、昇り龍かってくらいに昇りつめてるよ……彼は……」
卯月「ええ!? あのでも、アイドルにそんなに興味は無いんですよね!?」
未央「興味があろうと無かろうと――身近で生しまむーの、そんな恥じらいを見たら……男なんて骨抜きなんだよ……」
卯月「ええぇ!?」
未央「抜かれちゃうよ……脊椎から……」
卯月「私、そんなに残虐なことしたんですか!?」
卯月「でもホラ! 弟さんは、私より凛ちゃんの方が――」
未央「彼の部屋の前から――『凛さんごめん……、これは浮気とかじゃないんだっ!』って、聞こえてきたんだ……」
未央「彼が両方使えばいいって気づくのも、時間の問題だよ……」
卯月「あわわ……///」
凛「……卯月……未央」
凛「……ごめん。こんな八つ当たりみたいなことして……」
凛「――別に二人は悪くないって、私だって分かってたのに……」
卯月「そんなっ! 私こそ――!」
卯月「私こそ……大好きな二人に、こんなこと……」
未央「しまむー、しぶりん……」
未央「私もごめん……」
未央「二人のいいところを――それを私、まるで否定するような言い方をして……」
卯月「本当に、ごめんさい……わたし……二人に……」グスッ
凛「卯月……」グスッ
未央「…………」
未央「きっとさ……私たち、ちょっと抱え込み過ぎてたんだよ」
未央「こんなこと、普通は誰にも言えないもんね……」
凛「………………」
卯月「………………」
未央「考えてみるとさ――私たち、ニュージェネレーションズって……なんだかんだ、離れることが多かったよね」
未央「私が、逃げ出したり……」
未央「しぶりんが、他の道を選んだり……」
未央「しまむーが……道を見失ったり……」
凛「未央……」
卯月「未央ちゃん……」
未央「でも、でもさ――」
未央「私が投げ出した時でも――二人は待っててくれた」
凛「私が……踏み出そうとしていた時――二人は、背中を押してくれた」
卯月「私が、道に迷った時――二人は、手を取ってくれた……」
未央「うん……そうなんだよ……」
未央「だから――」
未央「私たちさ、もっかい友達になろうよ」
凛「未央……」
卯月「未央ちゃん……!」
未央「大丈夫だよ」
未央「離れたって――私たち、友達だもん」
未央「私たちは、大丈夫」ニコ
凛「そうだね」ニコ
卯月「はいっ!」ニコ
ガチャ
武内P「おはようございます」
未央「あっ、プロデューサー!」
凛「おはよう」
卯月「おはようございますっ!」
武内P「本田さん。少し、よろしいでしょうか」
未央「ん……? なに?」
武内P「単刀直入に伺いますが――」
武内P「プロダクションのスタッフの皆さんと、何かありましたか?」
未央「えっ? いや――撮影とか、ライブの手伝いの時に話したりしたけど……」
未央「……もしかして、なんか失礼なことしちゃった……とか?」
武内P「いえ、そういう訳では、ないようなのですが……」
武内P「皆さん――しきりに、本田さんに会わせてほしいと、仰るものですから……」
未央「それって、どういう――」
ガチャ
「未央ちゃん! 俺、あの時の話、真剣に考えてみたんだっ!」
「未央ちゃん!! これ、未央ちゃんのために作ったんだ! 着てみてくれー!!」
「未央ちゃーん! もうファンでいるだけじゃ、収まらないんだー!!」
「未央ちゃん!」 「みおちゃーん!」 「本田ちゃん!」 「ちゃんみおーー!」 「揉ませてっ!」
未央「ちょ、ちょっと!? 何事!?」
武内P「み、皆さん! 落ち着いて――」
凛父「未央ちゃん! 君にぴったりの花を持ってきたんだ!」ガチャ
凛「お父さん!?」
卯月父「未央ちゃん! パパむーって呼んでくれー!!」ガチャ
卯月「パパ!?」
みおちゃーん 未央ちゃんー! ちゃんみおー! 本田ちゃーん!
みおたん! みおたそっ! ちゃんみおっぱいっ!! MIOーー! もませてー!
未央「ちょっと……あの……」
未央「みんなっ! 落ち着てーー!!」
未央「――はっ!!」
♪な~かよきこと~は うつくしいけど~
♪それで――ピッ
未央「……あ、アラーム……目覚まし……」
未央「な、なんだぁ……夢か……」ホッ
未央「だよねー……」
未央「いくら未央ちゃんが美少女だからって――そんな、男の人みんなを釘づけにしちゃうような色気とか、魅力はまだ無いよねー」
未央「そういうのは、これからもっともっとレッスンして、女を磨いてからじゃないと!」
未央「うんうんっ! 頑張って、もぉーっと、魅力的で人気者になるぞー!」
未央「おーー!!」
凛「……う……ん……みお……」スースー
卯月「みおちゃん……そこは、わたしのみるくてぃーだよぉ……」ムニャムニャ
未央「おっ……」
凛「うーん……」スッポンポン
卯月「……えへへ……」スッポンポン
チュンチュン……
未央「おお……?」
完
ギスギスしたニュージェネが書きたかった(大嘘)
ちゃんみおの涙声に感じたリビドーのまま、書き殴っただけ。
誤字脱字、キャラの口調、キャラの親族のキャラの違和感はごめんなさい。
読んでくれてありがとう。
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