【ガルパン】まほ「出てこいみほ! 決着は生身でつけるぞ!!」 (492)


・・・・・・

~全国大会決勝戦~


みほ「……撃て!!」

まほ「撃て!」


 ドォン! ダァン!


みほ「そのまま回り込んで! グロリアーナの時は失敗したけど……今なら!」

まほ「回り込んでくるのか……急速転回」

みほ「今!」

まほ「ッ、回しすぎだ、止めろ!」


みほ「しまっ――」

華「撃ちます!」カチッ


 ダァン!! ドォォォン!!

 プスプス……


SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454424215


エリカ「た、隊長……!」

沙織「ど、どうなったのー!?」

優花里「分かりません!」

麻子「とりあえずもう走れないぞ」

華「仕留めた、ハズですが……」


 パシュッ パシュッ


『大洗女子学園、黒森峰女学園、両フラッグ車走行不能!』


 \ざわっ/


杏「わお」

柚子「え、これって……」

桃「ゆ、優勝は……!?」


カチューシャ「ねぇノンナ、こういう時どっちが勝ったことになるの?」

ノンナ「そうですね、こういうときは――」


みほ「これって……」

まほ「………………ええい!!」バッ

「ちょ、隊長!?」

「どこへ!?」

まほ「出てこいみほ! 決着は生身でつけるぞ!!」

みほ「お姉ちゃん!」

まほ「そう、今更なんで戦車に頼ろうものか! 出ろ! お前も西住流なら、自分の体で戦ってみせろォォォ!!」

みほ「おうとも!!」バッ

沙織「ちょ、みぽりん!?」

優花里「西住殿……ご武運を!」


 ザッ……!


まほ「やはり、戦車の外は広い」

みほ「そうだね、これなら思う存分動ける」

まほ「最初から私達はこうなる運命だった……違うか?」

みほ「私もそう思うよ……だけど」


みほ「この勝負に」

まほ「勝つのは」

みほ・まほ「私だッッッ!!!!」ガッ


・・・・・・

 時は遡りッ!! 前回大会の決勝戦ッッッッ!!

 天候は無情ッッ! 豪雨ッッッ!!!!


みほ「全車、この道は雨で崩れやすくなっています。足下に十分注意して進軍! プラウダは近いですよ」

「「「「「了解!」」」」」

みほ「…………こんなでいいの?」

まほ『ああ。なかなか様になっていたぞ。これなら私が卒業した後も任せられる』

みほ「まだ2年も先じゃない」

まほ『世代交代をうまくやれないチームは滅ぶのみ。私は心配性なのさ』


小梅「前方、プラウダのT-34!」

まほ『数が多い、主力部隊か! フラッグ車を守れ!』

小梅「はい! あっ――」

みほ「ッ! 赤星さんの車輌が!!」

まほ『もう駄目だ、救助部隊に任せろ』

みほ「クッ!」ガタッ

「副隊長!?」「どこへ!」

みほ「仲間を助けに!!」ダッ

「副隊長ーーーー!!」


 みほ、単身濁流へッッ!! Like a メロス!!


みほ「(ああ、もう車体は沈んでしまっている……!)」


みほ「(加えてこの濁流……)」


 いくら素潜り全国大会準優勝のみほでさえ、この濁流の中潜り正確に戦車までたどり着くのは至難の業ッ!!

 しかしみほは往く!! 友のためッッ!!


みほ「うおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」ザバァッ

みほ「クロール!! クロール!! クローーーーール!!!!」


 みほ、水をかくッ!


みほ「(見つけたァッ!!)」ガシッ

みほ「(ふぎっ……! ハッチが重い……!!)」


 それもそのハズッッ! ここは水の中ッッ!! 水没した車のドアは重いッッ、ましてや鉄の塊、戦車ッッッッ!!!!


みほ「(この雨の中、救助隊が来るのに時間がかかるのは必至……ッ! なら、ここでぇぇぇっ!!)」ギギギギギギ


 バキィッ!!

 水中でそんな音が聞こえるハズは無いッ、しかしッ、そんな音が聞こえてきそうな勢いでみほはハッチを破壊したッッ!!


みほ「(やった!! あとは中の人間を……)」

小梅「ふ、副隊長!?」

みほ「プハッ、車内に水が満ちる前に早く脱出を!!」

小梅「……! はいっ!!」ブワッ


・・・・・・

~黒森峰~


みほ「………………」

まほ「………………お前が車輌を去った後、動けなくなりいい的になったフラッグ車は撃破された」

まほ「私が咄嗟に後退命令を出したが、プラウダの方が一枚上手だったようだ」

みほ「…………」

まほ「仲間を救った道徳的行為を讃える人間もいるが……10連覇を逃し、皆はお前を戦犯に仕立て上げようとしている。お母様もお怒りだろう」

みほ「お姉ちゃんは怒ってないの?」

まほ「……私は、お前の行動を否定する気は無いよ」

まほ「だが皆が皆、私と同じとはいかん」

みほ「そっか……分かった」


 それから、みほは黒森峰から姿を消したッッ!!

 転校――ッ! みほは転校したのだったッッッ!!


・・・・・・

~その後・大洗学園艦寮みほの部屋~


 ピピピ、ピピピピ、ピピピピピ

 ガシャンッッ!!


みほ「………………ムニャ」


・・・・・・

~昼・大洗女子学園~


みほ「(うううぅ……また遅刻しちゃった。壊した時計もあれで20個目……)」

みほ「(お昼休みになったし、ご飯食べに行こう)」


 ポロッ


みほ「あ、消しゴムッ」パシッ


 ポロッポロッ


みほ「シャーペンに筆箱までッ」パシッパシッ

みほ「……ふぅ、セーフ」

「ヘイ彼女~!」

みほ「ッッ!!」シュッ


 みほが振り返ると共に手に持っていたシャーペンを投げつけるッ!

 シャーペンは音を立てて壁に突き刺さったッッ!!


沙織「」ヘナヘナ

華「きゃあぁぁ!! さ、沙織さん大丈夫ですよ! 当たってません掠めただけです!!」

みほ「あ、ああっごめんなさい!」

沙織「ペンガトンデキタヨ」ポケー


・・・・・・

~食堂~


みほ「さっきはごめんなさい……私、後ろから話しかけられるとつい……」

沙織「い、いいのいいの! 急に話しかけた私もアレだったしね!」

華「でもちゃんとナンパ成功しましたしね」

みほ「お昼誘ってくれてありがとう。武部沙織さんに五十鈴華さん」

沙織「あれ、私達の名前……」

みほ「一応クラスメイトの事は覚えてるから……」テレテレ

華「まぁまぁ、どれだけ知っているんでしょうかね」フフ

みほ「一応なんでも」

沙織「え?」


華「ハムッハムッゴクッガツガツハフハフッ」

沙織「いーとーまきまきいーとーまきまき」

みほ「それにしても、なんで私をお昼に?」

沙織「いやー私達前々から西住さんと友達になりたくて! あ、みほって呼んでいい?」

みほ「いいですけど」

華「見ていてどことなく放っておけない雰囲気だったので、2人でつい」

みほ「なるほど……」


・・・・・・


みほ「」ポケー

華「ど、どうしたんですか!?」

沙織「さっき生徒会に何かの話をされた時からずっとこんな調子なんだよね……」

「西住さん大丈夫? 具合が悪いならGo to 保健室よ?」

みほ「ハイ」ポケー


 誰しもが予想しなかった黒森峰の10連覇不達成ッ、その一因となった西住みほは遠き大洗学園艦で戦車道から離れた生活を送っていたッ!

 しかし、彼女が再び戦車道の世界に戻ってくることを、また誰しもが予想していなかったのであるッッ!!


・・・・・・

~大洗学園vs聖グロリアーナ 練習試合~


ダージリン「聖グロリアーナ隊長、ダージリンですわ。そちらの隊長は?」

みほ「あ、はい」

ダージリン「ふぅん……なるほどね。あなた、西住流ね?」

みほ「ッ」

ダージリン「そんなに驚くことはないんじゃなくって? 戦車道をある程度やっている者なら、あなたから溢れ出るその氣くらいすぐに分かるわ」

ダージリン「特に西住流なら、自分で隠そうと思ってもその力が隠し切れないほど大きいと」

みほ「……なら、もう隠す必要もないですね」ブワァッ


 みほがそのプレッシャーを開放するッ! 木々は揺れ、空を飛ぶ鳥はまるで上から見えない力に押さえつけられたかのように地に落ちたッッ!!


桃「ヒッ!?」

杏「やっぱり強引にでも誘ってよかったねぇ……」ニィッ

オレンジペコ「くっ……!」フラッ

アッサム「ペコ、気を確かにモツ鍋!」

ダージリン「ふふふっ……まるで毛を逆立てる小動物ね」

ダージリン「残念だけど、練習試合とはいえウチは手を抜いたりしないから。この試合はそちらの負けで終わるわ」スタスタスタ


優花里「まずいですよ西住殿! あのダージリンの『予言』ですよ!!」

沙織「なにそれ?」

優花里「グロリアーナのダージリンさんは、言ったことがすべて現実になるんです!」

優花里「競馬場であの人が四本足の馬でさえ躓くと言えば、優勝候補の馬が転倒したり、1輌も犠牲を出さずに相手を倒すと言えばまたその通りになるんです!」

みほ「前者のは本当に予言かもしれないけど……後者のはその用兵の巧みさで有言実行しているって感じかな」

優花里「とにかく、そんな人にウチが負けるとか言われたんですよ!」

麻子「所詮は試合前のトラッシュトークだ。真に受ける必要は無い」

優花里「しかしぃ……」

みほ「秋山さんの心配はもっともだけど、今回はどうしても勝たなきゃいけない試合じゃないし。この試合を通して自分達の力や改善点を見つけていくのが目的だから」

華「そうですよ。それにこちらにも頼りになる人達がいるじゃありませんか」

沙織「バレー部とかね! あの人達さっき戦車の砲弾でバレーしてたよ!」

麻子「Ⅲ突のチームも甲冑とか刀とか持ってきてたし、ある意味頼りになるな」

優花里「そ、そうですかね……」

みほ「Ⅲ突…………あ、ちょっと急用!」


みほ「あの、ちょっといいですか?」

エルヴィン「ん? Ⅳ号の隊長殿……どうした?」

みほ「このⅢ突の旗、これではどんな物陰に隠れていても敵に気付かれます。Ⅲ突は待ち伏せがメインになるでしょうから、取ってもらえると……」

左衛門佐「ならん! これは我々4人の魂の旗! この旗が折れるとき、それは我々が死ぬとき以外他にない!!」

おりょう「ぜよ!」

みほ「でも……」

カエサル「そういうことだ。これは士気を上げるためだと思ってほしい」

みほ「…………分かりました。でももしこの旗が原因でⅢ突が撃破された場合」ガシッ


 バキィッ!!


みほ「皆さんの首をこうします」スタスタスタ

左衛門佐「ああああーーーーっ!! ろ、六文銭の旗がぁ!! 真田の魂がぁぁぁぁ!!」

エルヴィン・おりょう・カエサル「ヒエッ……」


みほ「ただいまー」

優花里「西住殿、どこへ?」

みほ「ちょっとね」

沙織「あ、そろそろ試合始まるみたいだよ!」

みほ「……」コクッ


みほ「では皆さん、作戦通りにお願いします」

河嶋『無論だ、私の作戦に不備は無い!』

典子『殺せーーーー!! 殺せーーーーーーー!!』

梓『は、はい!』

カエサル『ひゃい……』

心の中で「戦車武闘伝Gパンツァー」とか名付けてたからこれはそういう話
何番煎じだけど強い(物理)西住殿にしたかっただけだ……今日はここまで


桃『いいな腰抜け共! Ⅳ号のAチームが敵を引き付けてくるから、このキルゾーンで仕留めるのだ!』

典子『早く相手を殺させてください!!』

あけび『キャプテン、殺すのは相手が来てからですよ!』

典子『フシュー……!』

妙子『あの、キャプテンの限界が来る前に敵を引き付けてきてください!』

みほ「それでは私達は敵チームを引き付けてきます。パンツァーフォー!」


・・・・・・


みほ「チャーチル1輌、マチルダⅡ4輌を確認……」

優花里「西住殿、この試合勝てると思いますか?」

みほ「戦車の性能差もあるし皆の実戦経験とかもあるから……難しいとは思うよ。でもさっきも言ったように勝てなくてもいいから、作戦をやり遂げることに意味があるかも」

優花里「肝心の作戦に相手は乗ってきますかね……」

みほ「そこは戦術と腕かな。さ、行こっか」

優花里「はい!」

みほ「麻子さん、起きて。ほら、起きて」ガンガン

麻子「わ、分かった起きる……! 起きるからその音をやめてくれぇ……」

みほ「エンジン音が響かないように、これから言う地点まで戦車を移動させてください」

麻子「了解……」

みほ「沙織さんは連絡を密にできるように」

沙織「オッケ!」


・・・・・・


ダージリン「ペコ、おかわり」

オレンジペコ「はい、ダージリン様」

アッサム「それにしても、仕掛けてきませんねんねんころり」

ダージリン「アッサム、彼我戦力差は?」

アッサム「挨拶時に見た限り、敵とこちらでは戦車の性能的にも練度的にもこちらが有利です」

ダージリン「でしょうね。だから相手はきっと待ち伏せ作戦をしているわ。Ⅲ突もいることだし」

オレンジペコ「それも予言ですか?」

ダージリン「ええ。私の言ったことはすべて本当になる……今回もね。ついでに言うなら、そろそろ敵が何かアクションを仕掛けてくるころじゃないかしら」


 ドォォン!!


アッサム「ッ!?」

『ダージリン様、左舷より敵の狙撃です!』

ダージリン「落ち着きなさい。それは挑発よ。全車、左へ」

オレンジペコ「挑発に乗るんですか?」

ダージリン「これは練習試合なのだから、胸を貸す気持ちで臨みましょう」フフ


・・・・・・


華『外しちゃいました……』

みほ『大丈夫。おかげで敵を引き付けられるから。皆さん、5分後にそちらに向かいます! 多分敵も連れて!』

桃「了解した。お前ら、準備しろ!!」

あや「えーせっかく大三元だったのに」

あゆみ「せっかく四暗刻単騎だったのに」

優季「国士無双だったのに」

梓「あ、危なかった……中を出さなくてよかった……身ぐるみはがされてた……」


・・・・・・


みほ「来た! やっぱり不整地だとイギリス戦車は強い……!」

沙織「ちゃんと逃げ切れる!?」

麻子「そのつもりだ」

優花里「撃って来ましたよ!!」

みほ「マチルダの後ろにチャーチルもいる……なんとか全部釣れたみたい」

沙織「というかみぽりん、そんなに身を乗り出したら危ないって!」

みほ「え? でもこうしてた方が周りの状況も見られるから」

沙織「でもでも、もし敵の弾がみぽりんに当たったら……」

みほ「大丈夫だよ」

沙織「えぇ…………あ、危ない!」

みほ「……」ベシッ

みほ「ね?」

沙織「」


アッサム「え、今Ⅳ号の車長……手で砲弾を弾いたような」

ダージリン「それが西住流なら、そうもなるわね」

オレンジペコ「西住流ってなんなんですか!?」

ダージリン「日本最古にして最大の戦車道の流派よ。彼女はその後継者――の妹」

アッサム「しかし、戦車道が強いのは分かりますが本人まで強いのは……」

ダージリン「それが西住流だから」

アッサム「意味が分かりません!」

ダージリン「それより各車気を付けなさい。そろそろ開けた場所に出るわ」

ダージリン「開けた場所を見下ろすように丘……おそらくここがキルゾーンでしょうね」


・・・・・・


桃「見えたぞ! 全員砲撃準備!!」

あや・あゆみ「ゴクリ……」

左衛門佐「フッ、やってやる」

あけび「渾身のスマッシュ決めちゃうんだから!」

桃「ッ、見えたぞ撃てぇ!!」ダァン

沙織「きゃあぁぁ!? 私達に撃ってどうすんのーー!!」

華「後ろの敵車輌を狙ってください! 私達じゃありません!」

優花里「ブルーオンブルー!!」

麻子「ギャグのセンスあるぜ、オメー……」

みほ「…………」


 飛び交う罵声ッ! 飛び交う砲弾ッ! そしてみほッ!! 無言の圧力ッッ!!

 鋭い眼光が38tのカーボンを貫くッッ!!


柚子「ひっ!? な、なに!?」ゾクッ

桃「構うな撃てェ! 撃って撃って撃ちまくれーーー!!」


 ダァン!! バァァン!!


みほ「そんなバラバラに撃っても……!」

典子「殺せーーー!! 殺せーーーー!!」バシッバシッ

忍「キャプテン、バレーボールじゃ相手は殺せません!」


ダージリン「フフッ、やっぱりね。急増チームでは連携も取れていないみたい。二手に分かれて包囲するわよ」

「「「了解!」」」

「わっ!? こちらルクリリ! なんかバレーボールが飛んできました! 装甲へこみました!!」

オレンジペコ「ええっ!?」

ダージリン「……どうやら敵は西住流だけではないようね。全車攻撃開始」


みほ「皆さん落ち着いて! 皆で同じ目標を狙わないと撃破できません!」

沙織「ねぇみぽりん、なんか左右で挟まれてない!?」

みほ「まずいかも……」


ダァン! ダァァン!!


優季「撃って来た!」

桂里奈「怖いー!」

梓「怖がらないで! ちょっと、皆!」

あや「やっぱり無理ー!」ダッ

梓「ちょ、戦車から逃げちゃ駄目だってばー!!」


 逃げる1年生共ッ! 脱兎の如くッッ!! 取り残されるM3Leeには砲弾ッ、直撃ッッ!!

 バァン!! …………パシュッ


優花里「げっ、M3の人達皆戦車放棄して逃げちゃいましたよ!」

みほ「面白いチームだね、気に入った」

華「みほさん、殺すのは最後にしてやるとか言いませんよね?」


桃「クッソー腰抜け共め! 私のように勇敢に撃てんのか!」

柚子「桃ちゃん、当ててから言おうよ……」

桃「うるさい! って、あれ!?」


ガシャン


柚子「え、あっ!」

杏「ンンン~~~~、『外れ』ちゃったね履帯」

桃「ええい動ける車輌はとことん撃ち返せー!!」


典子『クッ、殺しきれない……!』

エルヴィン『隊長指示を!』

みほ「流石にこれ以上は……! B・Cチーム、私についてきてください。ここを切り抜けます!」

典子・エルヴィン『了解!』

桃『なに!? 許さんぞ!』

みほ「それじゃ市街地まで後退! こそこそ作戦を開始します!」


「ダージリン様、打ち漏らした敵に逃げられます」

ダージリン「深追い無用。あちらには市街……おそらく敵は市街地に私達をおびき寄せてゲリラ戦を行ってくるわ」

オレンジペコ「それにも乗るんですか?」

ダージリン「大丈夫よ。向こうはこちらを各個撃破したいのでしょうけど、するのはこちら側だから」


・・・・・・

~大洗市街~


みほ「じゃあ、お願いします! 地形を最大限に活かしてください!」

エルヴィン『jawohl!』

典子『任せてください、大洗は狩場です!』

沙織「みぽりん、いいの? 1輌ずつ孤立してやられちゃうんじゃ……」

みほ「集まっててもグロリアーナ相手じゃさっきの二の舞になるだけだから。それに、うまくいけば各個撃破できるし」


ダージリン「では散開して1輌ずつ潰していきましょうか」

ルクリリ「了解! では私はこちらへ!」

ダージリン「くれぐれも気を付けなさいルクリリ。駐車場には特にね」

ルクリリ「駐車場……ですか?」

ダージリン「私の予言よ」

ルクリリ「ッ、はい……!」


・・・・・・


エルヴィン「考えたなカエサル、狭い路地に車体を隠すとは」

カエサル「大洗の町に慣れていないグロリアーナは、入り組んだ小道より比較的大通りを進軍してくるだろうからな」

おりょう「流石ぜよ」

左衛門佐「…………ッ、エンジン音だ!」

カエサル「獲物がかかったか。賽は投げられた」


 待ち伏せのⅢ突ッ! そうとも知らぬグロリアーナのマチルダ2輌ッ、まるで凱旋パレードのように道の真ん中を進軍していたッッ!!


「周りに敵影は?」

「無いみたい。まぁ待ち伏せされてもどうせ分かりやすい――」


 ダァン!!

 パシュッ


「ッ、前方のマチルダがやられた!」

左衛門佐「仕留めたァッ!」グッ

おりょう「Ⅲ突の主砲舐めんなぜよ!」イエーイ

エルヴィン「こちらCチーム1輌撃破!」


カエサル「ようし後退! 入り組んだ道に入ってしまえばいい。Ⅲ突は車高が低いからな」

左衛門佐「ッ、ちょっと待った!」

カエサル「どうした門佐!」

左衛門佐「…………思ったんだけど、この旗……目立つような……」

おりょう「確かに…………なんか、塀より高いぜよ」

カエサル「………………」

エルヴィン「そういえば隊長に言われたな……この旗が原因で撃破されたら……」

カエサル「ヒェッ……」

おりょう「だけどこれは我らの魂の旗ぜよ……外すのは……」

カエサル「だ、だが命は大事だ……!」

エルヴィン「確かに……」

左衛門佐「もう私は折られたけど……」

おりょう「だめぜよ! 命よりも矜持を重んじてこそ歴女ぜよ!!」

カエサル「しかしこの戦いは、我らの矜持よりも重いものがかかっているような気がしないでもないようなあるような……!」

エルヴィン「隊長の目は本気だったぞ!」

左衛門佐「ええいなにが隊長か! 武士道は死ぬことと見つけたり!」

カエサル「犬死にだ!」


 \ワー! ギャー!!/


「…………こちらマチルダ、なにやらⅢ突は車内で言い争っている様子……」

ダージリン『やっておしまい』

「了解……」

「ウチの隊長って、変身中のヒーローに攻撃しそうだよね」

「分かる~!合体中のロボにも容赦なさそう~!」

「無駄口叩かない! じゃあやっちゃおうか」


カエサル「やはり命あっての物種ではないだろうか!」

おりょう「旗を取るくらいならいっそ腹を切ってやるぜよ!」

左衛門佐「そうだそうだ! ………………って、ちょっと待った!」

エルヴィン「どうした門佐…………ッッ!!」


 ダァン!!


・・・・・・


エルヴィン『し、Cチーム走行不能!』

沙織「ええっ、大丈夫ですか!?」

おりょう『ぜよ……』

みほ「…………原因は?」

カエサル『エッ!?』

みほ「原因は?」

左衛門佐『ち、痴情のもつれ!』

沙織「詳しく」

エルヴィン『違うだろ! 我ら敵車輌を通すまいと勇敢に――』

おりょう『嘘はいかんぜよ! 言い争ってたら隙を――』

カエサル『死にたいのかおりょう!』

みほ「原 因 は ?」

カエサル『旗のせいです……』


 みほッ、無線越しに圧力……ッッ! Cチーム全員失禁ッッ!!


・・・・・・


『Ⅲ突にやられました!』

『八九式のアンブッシュによりダメージを受けました! あとルクリリさんがバレーボールに当たり失神!』

ダージリン「なっ……!」ポロッ

ダージリン「おっと」パシッ

オレンジペコ「落としたティーカップを再び宙で持つとはお見事です」

アッサム「コードベロニカ冒頭ムービーのクレアさながらでした」

ダージリン「言ったでしょう、我が校の生徒はどんなことがあっても紅茶はこぼさいないと」

ダージリン「それにしても、おやりになるわね…………でも、ここまでよ!」


・・・・・・


優花里「後ろに3輌がピッタリくっついてきています!」

麻子「今がトップスピードだ。避けながらだし振り切れん」

みほ「くっ……じゃあ次の角を右!」

麻子「了解」グイッ

沙織「えっ、待ってみぽりん! この先は――」

麻子「ッ、工事現場だ!」


 冷たく意思を持たぬ『この先通行止め』の看板ッッ!! しかしみほ達にとってッ、それは悪意でしかないッッ!!

 みほは看板を撃つよう指示を出しッ、華も応じたッッ!!

 轟音と共に飛び散る看板ッッ!! 嗚呼無情ゥッ! そんなことをしたところでッ、状況が好転するワケもないッッッ!!


ダージリン「どうやらここまでのようね」

みほ「くっ……!!」

ダージリン「こんな格言を知っているかしら? 『英国人は――」

杏「参上~~~~!!」


 ダージリンの戯言を遮るようにッ、38tがチャーチルとマチルダⅡの前に躍り出るッッ!!


華「生徒会チーム!」

優花里「履帯直したんですね!」

沙織「忘れてた!」


桃「発しゃ――」


 ドォン!! ダダァン!!

 パシュッ


桃「…………え?」

ダージリン「あなた方が来るのは想定の範囲内だったわよ」

オレンジペコ「流石、ダージリン様の予言ですね。全車用意はできていました」

柚子「まぁどうせ桃ちゃんのことだから外してただろうけど……」

桃「せ、せめて撃たせてよぉ~!」ビエェェン


みほ「ッ、今! 敵の再装填には時間がある!!」

麻子「行くぞ」

みほ「華さん、近くに寄せるから仕留めて! 撃ったと同時に発進!」

華「はい!」ダァン


 華が撃つッ! ついでにみほがその辺にあったドライバーを投げつけるッッ!!

 砲弾はマチルダⅡの装甲を抜きッ、見事白旗ッッ!! ドライバーはチャーチルの正面装甲に深々と突き刺さったッッ!!

 しかしドライバーに装甲を貫く力は無いッッ!! ただのみほの八つ当たりであるッッ!!!!


「やられました!」

ダージリン「構わないわ。2輌で追いましょう」


・・・・・・

 逃げ回るⅣ号ッ、追うグロリアーナッ!!

 いつ終わるとも知れない後退にッ、ついにみほは業を煮やしたッッ!! 若さとは過ちであるッッ!!


みほ「……この十字路なら……!」

みほ「麻子さん、角で待ち伏せ! 華さん、敵が頭を見せたら撃っちゃってください!」


ダージリン「ん? 十字路を曲がった……」

ダージリン「これは……また待ち伏せね。迅速に追うわよ」

みほ「ッ、この音……敵の速度は速い! 華さんもう撃って!」

華「はいッ……!」ダァン!

ダージリン「やはりね」

みほ「ッ、マチルダを盾に!?」


ダージリン「フフッ、『英国人は恋愛と戦争――』」

みほ「麻子さん回り込んで!!」

麻子「どういうふうに……」

みほ「ドリフト気味!」

麻子「できるか分からんが……!」グイッ


 ギャギャギャッ!!


ダージリン「回り込んでくる? ッ、横に止めて接射してくるわ! 砲塔旋回!!」

アッサム「ダージリン様の予言ならそれしかないですわね!」

みほ「横っ腹で停止! それと同時に撃って!」

麻子・華「了解!」


 チャーチルの砲がⅣ号を捉えるッッ!! しかしそれはⅣ号の砲も同じことッッ!!

 Ⅳ号が停止した瞬間ッ、両車は発砲したッッ!! 2つの轟音がズタボロ大洗の町に響くゥッッ!!

 だがッ、勝者はただ1人ッッ!!


『大洗女子学園全車輌、行動不能! 聖グロリアーナ女学院、チャーチル、健在!』

『よって、聖グロリアーナ女学院の勝利!!』

Gガンダムとかバリバリ意識してるけど特にクロスというわけでもないでち
というわけで今日はここまで


・・・・・・


杏「いや~『負け』ちゃったネ~」

桃「無念だ……」

みほ「すみません……私がもっとうまくやれていれば」

典子「西住隊長のせいではありません!! 隊長がいたからこそ、我々バレー部も1輌撃破することができました!」

あけび「アレ、八九式の弾じゃなくてキャプテンのバレーボールによるものなんだけど……」

忍「怒涛のスマッシュでみるみるうちに装甲へこんでいったわよね……」

妙子「まさかバレーボールで白旗上がるなんてね~」

優花里「それ、戦車道的にいいんですか……?」

杏「それに関しては、戦車同連盟からしたら前代未聞すぎるから審議するとして、今回の大会ではまぁ『アリ』なんだってさ」

典子「てことは全国大会でも殺し放題ってことですね!!」

みほ「全国大会?」

杏「うん。戦車道全国高校生大会。今度出るから」

みほ「ええぇぇぇーーーっ!?」


ダージリン「西住さん」

みほ「あ、ダージリンさん。今日はありがとうございました」

ダージリン「いいえこちらこそ。今日は有意義な試合ができて良かったわ。あなたのお姉さまと戦うよりも、面白かったし……ペコ」

オレンジペコ「どうぞ」

みほ「これは……」

ダージリン「そうですわ、せっかくですし『みほさん』とお呼びしても?」

みほ「構いませんけど……」

ダージリン「ではみほさん、ひとつ予言を……」

ダージリン「近々あなたに運命的な出会いがありましてよ」

みほ「運命的な、出会い……?」

沙織「なにそれ!? みぽりんに男ができるの!?」

ダージリン「では、御機嫌よう」スタスタスタ


みほ「貰っちゃったけど……」

華「その木箱の中身はなんでしょうか?」

麻子「開けてみろ」

みほ「うん……………………これ、紅茶?」

優花里「すごいですよ! グロリアーナは好敵手と認めた相手にしか紅茶を送らないそうですよ!!」

みほ「ほえー」

沙織「ねぇねぇみぽりん、あれ」

みほ「?」


 そこには、地面に額を擦り付けッ、自らの命を請う10の首ッッ!!

 土下座ッッ!! 今彼女達は、脱げと言われれば喜んで全裸になる哀れな子羊ッッ!!


梓「西住隊長!! 戦車から逃げ出したりして、すみませんでした!!」

カエサル「旗が原因で撃破されたりして、すみませんでした!!」

「「「「「すみませんでした!!!!」」」」」


 それは、謝罪と言うよりッ、懇願ッッ!!

 ただひたすら赦しを願うッ!! 命への執着ッッ!!


みほ「皆さん…………」


 みほの胸に湧き上がる感情ッ、それはッ、慈悲ッッ!!

 試合中は両チームをどう凄惨な目に合わせるかを考えていたみほにとって、自分の今の感情は意外なものであったッ!


みほ「顔を上げてください。皆さんが分かってくれたのなら、それでいいですから」

カエサル「本当か!? 人間には215本も骨があるから1本くらいとか言って折ったりしないか!?」

みほ「折らないですよ……」


梓「あの、私達、次は頑張ります!!」

優季「すぐやられちゃうと思ってました……」

あゆみ「先輩たちかっこよかったです!」

桃「いやぁ照れるなぁ」

柚子「桃ちゃんのことじゃないと思うよ……」

杏「西住チャン。さっきも言ったように全国大会に出るから……抽選会も『頼』んだよ、隊長」

みほ「…………はい」

みほ「(抽選会…………)」


・・・・・・

~抽選会会場~


『大洗女子学園、8番!!』

 \ワーーー! キャーーー!!/


みほ「8番……初戦はサンダース大付属かぁ」

優花里「サンダースですか……手強い相手ですね」

麻子「知っているのか秋山さん」

優花里「すんごいお金持ち学校で、戦車の保有台数が全国一なんですよ!」

華「1輌分けてほしいですね……」

杏「サンダースかぁ……負けられないねェ」

桃「絶対に勝たなくては……負けたら我々は…………ッ」


みほ「(抽選も終わったし、早く席に…………ッッ!!)」バッ


 その時ッッ!! みほの全身を88mmのような視線で釘付けにする者が現れるッッ!!

 距離にして約30mッッ! ステージから離れた席に『奴』は居たッッ!!


まほ「………………」

みほ「お姉ちゃん……」

まほ「…………」

みほ「ッ!」ブォン!

まほ「…………」パシッ


 思わずッ、みほは先ほどから手に持っていた8番の抽選用プラスチックボールをッ、まほにッ、投げつけるッッ!!

 まほはクールフェイスでソレを手で受け止めッ、クラッシュッッ!! 片手の握力で粉砕したッッ!!

 2人の間の宣戦布告であるッッ!!


・・・・・・

~戦車喫茶~


麻子「…………おおぉ……うまい」

華「そうですねぇ」モグモグ

優花里「ですよねですよね!」

華「ありがとうございます。この辺にこのようなお店があるとは知りませんでした」

沙織「ゆかりんは戦車の事なら何でも知ってるね!」

みほ「…………」

優花里「どうしました西住殿?」

みほ「え? あ、ううん! なんでもないよ! ケーキ美味しいね!」

沙織「大丈夫? 調子悪そうだけど……」

みほ「あー……実は、さっきから……凄い視線を感じて……」

華「視線、ですか? 私は感じませんが……」

優花里「西住殿は大洗の隊長ですし、この辺ならちょっとした有名人ですから視線ならいくつも飛んできそうですが」

沙織「いいなー私も皆の視線を浴びたいよ~」

みほ「うーん……そういう感じじゃなくて…………鋭いのが……多分、見当はつく」

麻子「なら食べ終わったらさっさと出るか。ケーキおかわり」

華「私も」

沙織「さっさと出るんじゃないの!?」


・・・・・・


麻子「美味しかった……」ニコニコ

華「ですね」ニコニコ

優花里「それで西住殿、見当とは――」

「キエェェェェェェッ!!!!!」

みほ「ッ、優花里さん危ない!!」バキィッ

優花里「オゴッ!?」ドサッ


 店を出た瞬間ッ、謎の影がみほを襲うッッ!! 否ッ、謎ではないッッ! みほはその者を知っていたッッ!!


エリカ「ふっ、お久しぶり副隊長……いえ、『元』副隊長」

みほ「エリ…………逸見さん……!」

エリカ「今日こそッ、その命貰ったァッ!!」バッ

みほ「甘いッッ!!」


 黒森峰現副隊長、逸見エリカ――ッッ!!

 手刀でみほの首を的確に狙うッ!!


みほ「正確な狙いッ、しかしそれ故予想しやすいッッ!!」ガシッ

エリカ「な――ッ!」

みほ「ハッ!!」ドゴォッ

エリカ「ぐ、はぁっ……!」


 みほの拳がエリカの脇腹に文字通り沈むッッ!!

 たまらずッ、エリカッ、吐血ッッ!!


みほ「街中で襲撃とは相変わらずだね、まだ私を倒そうとしているの?」

エリカ「当たり前よ……黒森峰にいたころから、アンタを倒すことが私の目標だった!!」

沙織「戦車道じゃなくて、生身で倒すのが目標なんだ……」

みほ「逸見さんは前より強くなっているけれど、やはり私には及ばない」

まほ「大きな口を叩くようになったな、みほ」


 今までどこにいたのかッ、2人の戦いを見守っていたであろうまほがッ、その場に介入するッッ!


みほ「お姉ちゃん……!」

まほ「答えよみほ!!」

みほ「ッ!」


まほ「流派、西住流は!!」ドガガガガ!

みほ「王者の風よ!!」ドガガガガ!

まほ「撃てば!」

みほ「必中!」

まほ「守りは!」

みほ「硬く!」

まほ・みほ「進む姿は乱れなしッッ!!」

まほ・みほ「見よ、熊本は赤く燃えているぅぅぅぅッッ!!」


 突如始まる拳と拳のぶつかり合いッ! しかしッ! 双方が怪我を負うことは無いッッ!!


みほ「ッ、違う……! 私は、西住流など……!」

まほ「答えておいてよく言う! それにみほ……弱くなったな。修練を欠かしたか」

みほ「ッ!」


 ハラリと落ちるはみほの髪の毛数本ッ! みほマニア垂涎ッッ!!


まほ「だが予想よりは強かった……まだ戦車道をやっているとはな」

みほ「…………」

まほ「お母様にどう説明する?」

みほ「違う、私は戦車道から離れたかった……! けど、無理やり……」

まほ「たわけがッ! そうやって周りに流されるからお前は弱いのだ!!」

まほ「そんなことで西住の名を名乗れるものか!! 己を持てみほ!!」

みほ「…………!」


 突如始まる拳と拳のぶつかり合いッ! しかしッ! 双方が怪我を負うことは無いッッ!!


みほ「ッ、違う……! 私は、西住流など……!」

まほ「答えておいてよく言う。それにみほ……弱くなったな。修練を欠かしたか」

みほ「ッ!」


 ハラリと落ちるはみほの髪の毛数本ッ! みほマニア垂涎ッッ!!


まほ「だが予想よりは強かった……まだ戦車道をやっているとはな」

みほ「…………」

まほ「お母様にどう説明する?」

みほ「違う、私は戦車道から離れたかった……! けど、無理やり……」

まほ「たわけがッ! そうやって周りに流されるからお前は弱いのだ!!」

まほ「そんなことで西住の名を名乗れるものか!! 己を持てみほ!!」

みほ「…………!」


まほ「帰るぞ、エリカ」

エリカ「はい! せいぜい西住の名を汚さないことね」フッ

みほ「くっ……!」


沙織「みぽりん大丈夫!? すごい殴り合いだったけど、ケガとかは!?」

みほ「大丈夫。あれは挨拶だから」

麻子「アレが挨拶って……」

華「分かります。私も母との挨拶はあんな感じですから」

沙織「そうだったの!?」

みほ「あはは……って、あれ? 優花里さんは?」

優花里「」

沙織「なんか倒れてる!!」

麻子「そういえばさっきエリカとかいうのに襲われたときに倒れてたような……」

みほ「そんな! 絶対許さない……!」

華「(実際には西住さんが昏倒させたというのは黙っておいた方がいいのかしら……)」


沙織「ねぇ皆、帰って練習しよう! 少しでも強くならなくちゃ!!」

華「沙織さんが燃えています!」

沙織「だってあんな連中にいつまでも大きな面させられないじゃん!」

麻子「分かるぞ。私も今は目が冴えている」

みほ「じゃあ他のチームの皆も誘って、まずはサンダースに対してどうするのかを考えよう」

優花里「う~ん…………ハッ! に、西住殿あぶない!! …………って、あれ?」

みほ「あ、優花里さん!」

華「気が付いたんですね」

麻子「よかった」


優花里「なるほど、これから帰って練習ですか…………」

みほ「どうかしたの?」

優花里「私、ちょっと今日から数日学校休みますね!」

沙織「えっ!?」

優花里「ご心配なく! 絶対に皆さんの役に立つことをしてきますから!!」

みほ「それってどういう……」

優花里「というわけで、行ってきまーす!!」ダッ


麻子「有無も言わさず飛び出して行ったな」

華「どうしたんでしょうか?」

みほ「でも、ああ言ってたんだし優花里さんを信じよう。仲間なんだから」

沙織「みぽりんいいこと言った! そうだね、仲間を信じなきゃ!」

みほ「(仲間…………そう、私は西住流とは違う……仲間と一緒に戦うんだ!)」

沙織「みぽりん、行こう!」

みほ「うん! まずはサンダース、頑張ろう!」


「甘ァァァァァァァイ!!!!」ヌッ

沙織「きゃあぁぁあぁぁぁ!!?」

華「どうしました沙織さ――ひぃぃぃ!? か、影の中から! みほさんの影から人が!!」

麻子「今日は変なのによく会うな……しかもどいつもこいつもいきなり現れる」

みほ「一体……!」


 突如みほの影から現れた忍者のような格好の人間ッッ!! 声と体つきから女性であることは分かるがそれ以外は覆面により判別不可能ッッ!!


「今のままではサンダースと戦って勝つなど、夢のまた夢ェェェェ!!」

沙織「誰ですかあなた!?」

「おっと、これは失礼…………私は謎の忍者、しほ田しほ蔵!!」

華「しほ田しほ蔵!?」

麻子「一体何者なんだ……!」

>>83は単純な貼り付けミスです
今日はここまで


・・・・・・

~翌日・グラウンド~


杏「というわけで今日から特別コーチをしてくれるしほ田さんだよ」

しほ蔵「よろしく」

おりょう「我々4人は去年忍道を履修していたからか、この人の凄さがよくわかるぜよ……」

エルヴィン「ああ……なんてニンジャパワーだ……」

沙織「ニンジャパワーって!?」

杏「しほ田さんは戦車道の達人とのことだから、皆ジャンジャン質問とかしていいからね~」

典子「ハイハイ! 敵を確実に殺すにはどうすればいいですか!?」

しほ蔵「ウィークポイントを狙いましょう。例えば薬莢排出口とか」

典子「なるほど!」


カエサル「装填速度を速めたいのだが……」

沙希「……」コクッ

しほ蔵「装填自体の速さを上げるためには練習あるのみだけれど、装填するタイミングを見極めて素早く装填すれば、結果的に速くなります」

華「動いている目標に当てるには……」

あけび「それ私も知りたいです!」

左衛門佐「右に同じ!」

あや・あゆみ「私達も!」

しほ蔵「目標の方向、速度から計算してこのあたりだというところに撃てばいいでしょう。後で実際に動いている的に当てる訓練をしましょうか、いつか体が覚えるハズです」

優季「あの~彼氏に逃げられそうなんですけど」

しほ蔵「既成事実あるのみです。後で我が家に伝わる秘伝の排卵媚薬を渡します」


柚子「すごい……皆の質問に的確に!」

桃「会長、一体どこからあのような人を?」

杏「ン? あァ~まァ色々ね」


しほ蔵「ところでⅣ号の乗員……装填手は?」

華「装填手は秋山優花里さんという方で……昨日の放課後急に学校を数日休むと……事実今日は来ていません」

しほ蔵「ふぅむ……? なるほど」


みほ「…………」ジー

しほ蔵「なにか?」

みほ「いや、あの……どこかで会ったことありませんか?」

しほ蔵「ナッシング」

みほ「…………おか」

しほ蔵「西住みほぉおぉぉっ!!!! 貴様に足りんものは、覚悟ォォッ!!」

みほ「(名前もそうだけど声で分かるし、絶対お母さんだよね……お母さんなにやってるの……)」

沙織「みぽりん、練習しよっ!」

みほ「あ、うん」

みほ「(前回の大会の後、私をあれほど責めたお母さんが……何を今さら……!)」

みほ「(後で絶対に聞きださなきゃ……!)」


 しかしッ、そんなみほの思惑通りにはいかずッ! しほ田しほ蔵は練習以外の時はまるでかき消すように姿をくらませていたッッ!!


・・・・・・

~数日後~


沙織「ねぇねぇ、ゆかりんってホントどこ行ったんだろうね?」

華「私も気になっていました……まさか、病気とか?」

麻子「流石に自分の病気を察してあそこまで意気揚々と去れないだろう……」

沙織「あ、じゃあさ! 今から皆でゆかりんち行かない? なんだかんだ行ったことないし、ゆかりんが何してるのか分かるかも!」

みほ「私も行こうかな」

華「いいですね」

沙織「それじゃあレッツゴー!」


・・・・・・

~優花里宅~


沙織「おおぉ~ここがゆかりんの部屋かぁ」

華「見事に戦車まみれですね」

麻子「目覚まし時計も砲撃音だったりしてな」

みほ「でも、結局ご両親も優花里さんのこと知らなかったみたいだね」

沙織「だよねぇ。一体どこにいるんだか――」


 ガララララッ


優花里「あれっ、皆さん?」

沙織「ゆかりん!?」

麻子「何故窓から……」

優花里「親の前に出るのにこのボロボロのサンクスの制服じゃまずいと思いまして」

華「なるほど……」


みほ「それより、なんでまたここ数日いなかったの?」

優花里「はい! よくぞ聞いてくれました!! これが、私が皆さんにできる精一杯です!!」ビシッ

沙織「USB?」


 ガララララッ


しほ蔵「私にも見せてもらおう!」

沙織「ぎゃあああああ不審者ー!!」

みほ「フンッ!!」


 みほの右ッ!! しかしッ、しほ蔵難なく避けるッッ!!


優花里「しほ田殿!!」

沙織「え、ゆかりん面識あったっけ?」

優花里「はい! 実はこの前助けていただいて……」

しほ蔵「どうやら目当ての物はちゃんと持って帰れたようね」

優花里「この通り! その節はありがとうございました!」

しほ蔵「うむ。私にもそれを見せてもらおう」

優花里「了解であります! じゃあ早速再生!」


 『実録、サンダース大付属高校潜入記』

\ベーーーーーベベベベベベーーーーー/


沙織「サンダース潜入レポート?」

優花里「その通りです!」

みほ「こんなの一体どこで……」

優花里「帰りに軽く編集したんで」


優花里『私は今、サンダース大付属に来ています。まずはこの制服に着替えて…………これでどこから見てもサンダースの生徒です! 他の生徒の前を通っても怪しまれません』

『この前さ、ケイさんの胸に顔突っ込んで、ヘヘッ、こう言ったの。オォホントにでけぇなぁ! オオォホントにでけぇなぁ~って。何で2度も言うのって聞くから、言ってませんよ。

って…………へへっ、分かる?2度目はこだまよ。谷間でほらぁ……』

『HAHAHAHAHAHAHAHA!!』

優花里『どうやら噂通りかなりアメリカンな学校のようです。フレンドリーな空気ですね』


華「ブッハッ! ひーっひっひひひひ!!」

沙織「華のツボに入った!? 今の流れの何が面白かったの!?」

華「いや、だって、こだまって……ひひひははは!!」

沙織「ええぇぇえぇ……」


優花里『ここがブリーフィングルームですね。広い部屋に多くの生徒がいますね。あっ、壇上にいるのは隊長と副隊長のようですね!』

優花里『3人の内真ん中がケイという隊長……そして脇の2人があの有名なサンダースのツインタワーですね……』

優花里『狙った獲物は戦車も女も決して逃がさない『スナイパーナオミ』、そして人の心を何でも見透かすという『リーディングアリサ』……どちらも侮りがたいですよ』

アリサ『1回戦の編成とフラッグ車を発表するわよ』

優花里『ファイアフライにM4シャーマン……流石容赦ないですね……』

ケイ『何か質問のある人いるー?』

優花里『はいはーい! 小隊編成とフラッグ車のディフェンスを教えてください!』


ケイ『小隊は3輌1小隊で1個中隊! フラッグ車のディフェンスはnothingよ!』

優花里『え、それでいいんですか? 敵にはⅢ突もいるし、西住流だって……』

ケイ『西住流? 知らない情報ね』

優花里『あっ!』

ナオミ『ッ、見ない顔だが……所属と階級は?』

優花里『あ、ええとええと……第六機甲師団、オッドボール三等軍曹であります!』

アリサ『はぁ!?』

ケイ『プフッ!』

ナオミ『偽物だァーッ!! 撃てェ! 撃ち殺せ!!』

優花里『ヒイイイィィィ!! こ、これでレポートを終わります!!』


一同「…………」

優花里「この時絶体絶命になった私を助けてくださったのが、しほ田殿であります」

しほ蔵「秋山さんの動向を調べたら、単身サンダースに乗り込もうとしていたのだから驚いたわ」

みほ「それにしても、優花里さんが無事でよかったぁ……」

優花里「えっ?」

華「そうです! そんなことをするなら、せめて私達に一声あっても……」

優花里「心配、してくださっているんですか?」

麻子「仲間だからな」

沙織「そうだよ! 友達の心配をしないわけないじゃん!」

優花里「皆さん…………! あ、ありがとうございます……私、ずっと戦車だけの人生でしたから……友達なんて、初めてであります……」

優花里「西住殿、オフラインレベルの編集ではありますが、どうか私の持ち帰った情報をお使いください!!」

みほ「うん。ありがとう優花里さん」

しほ蔵「………………」


・・・・・・

~帰り道~


沙織「じゃあまた明日ねー!」

みほ「うんー!!」


みほ「ふぅ……」スタスタスタ

しほ蔵「美しい友情ね。言うなれば運命共同体」ヌッ


 再びみほの影から現れるしほ蔵ッ! みほ、もう大して驚かないッッ!


しほ蔵「互いに頼り、互いに助け合い、互いに庇い合う。1人が5人のために、5人が1人のために……だからこそ試合で生きられる」

みほ「……」ピクッ

しほ蔵「チームは姉妹、チームは家族」

みほ「嘘を言うなッ!!」


 みほの怒号ッッッッ!!!! 町内2ブロックに響き渡る咆哮ッ!!

 鳥は飛び立ちッ、野良犬が悲鳴を上げるッッ!! その先に残るは呼吸の跡と静寂のみッッ!!


しほ蔵「…………」

みほ「西住流が、そんなことを言うなッッ!!」

みほ「鉄の掟、鋼の心……仲間など気にも留めず、屍は踏みにじる! それが西住流のハズッッ!!」

みほ「なのにあの西住流家元が、あの西住しほが、姉妹? 家族? ふざけるなッッ!!」

しほ蔵「…………」

みほ「ハァッ、ハァッ……ハァッ……」

しほ蔵「何を言っている」

みほ「なに……?」

しほ蔵「私は西住流家元、西住しほではない。私は謎の忍者コーチ……しほ田しほ蔵!!」

しほ蔵「ただのコーチが、西住流どうこうというわけがなかろうて」

みほ「どう……いう……」

しほ蔵「ふっ、今日のところはさらば。また練習で会いましょう」ドロン

みほ「ッ、消えた……!」

みほ「一体どういうつもりなの…………お母さん……」


・・・・・・

~全国大会1回戦当日~


 快ッ晴ッ!! 今日の天気快晴ッ!! 今日の天気快晴ッッ!!


杏「さっすが全国大会! 無名の私達の試合なのに観客も結構居るねぇ~」

みほ「そうですね……」

杏「というわけでこの大会、隊長は西住チャンに任せたよ!」

みほ「えっ、会長が隊長じゃ……」

杏「私は戦車道初心者だし、ここは西住チャンにウチらの顔になってほしい『ワケ』だって。河嶋を副隊長にすっから頑張ってね~」


柚子「桃ちゃん、ブルッてるよ」

桃「震えもする……いよいよ始まるんだ。私達にとって、決して負けられない戦いが……ッ!」


しほ蔵「これから試合ね……皆、練度に自信は?」

典子「あります!! 短い間でしたが、練習の成果を見せるには十分かと! あとは根性です!!」

カエサル「西住隊長としほ田殿のしごきは地獄を見た気分だったが……ああ、なんとかなる気がする」

梓「私も……っ! もう脱兎さんチームじゃない!」

あゆみ「でも絶対このウサギさんチームって脱兎からきてるよね……」

あや「ゲームで言ったらこの前までレベル1だったのが一気に20くらいに上がった気分だよ!」

おりょう「でも相手は確実にレベル30以上はあるぜよ……」

左衛門佐「戦力差などいくらでも返せる! かの桶狭間や上田の戦いでも、圧倒的な戦力差をひっくり返したのだ!」

しほ蔵「その意気よ」

「「「「「おおおーーーーっ!!」」」」」


優花里「皆さん意気軒高といった感じですね」

麻子「暑苦しい……体育会系は苦手だ」

華「いいじゃありませんか。青春って気がします」


アリサ「これが大洗の戦車ぁ? ふふっ」

桃「ッ、何者だ!」

ナオミ「失礼、サンダース副隊長のナオミ」

アリサ「私はアリサ。今日はよろしくね。ぷくく」

ナオミ「これから戦う仲なんだし、お食事でもいかがかな?」

華「是非!!」

アリサ「うわっどこから現れたの!?」


ケイ「ヘイ、ジャパニーズ!」

杏「そっちも皆日本人じゃん! っと、今日はよろしくねおケイさん」

ケイ「そうね。いい勝負にしましょう! 今日はアンジーが隊長さんよね?」

杏「ううん、隊長はこっちの西住チャン」

みほ「あ、よろしくお願いします!」

ケイ「Oh、あなたがオッドボールの言っていた西住流ね!」


沙織「覚えられてるじゃん……」

優花里「こっちに気付きませんよーに!」

ケイ「…………」キョロキョロ

ケイ「あっ!」

優花里「ひっ!」

ケイ「オッドボール! 久しぶりー! この間は殺し損ねちゃったけど、またいつでも遊びに来ていいからねー!!」

優花里「二度と行きません!」

華「フレンドリーな方なんですねぇ」

沙織「態度だけだよ! 内容は酷いよ!?」


アリサ「あなたが隊長?」

みほ「はい」

アリサ「今日はよろしく……」スッ

みほ「あ、はい! よろしくお願いします」


 戦いの前のッ、握手ッッ!! 戦士たちの宣誓ッ、正々堂々勝負の宣誓ッッ!!


アリサ「………………」ニヤッ

みほ「……?」

アリサ「それじゃ、また試合でね」


・・・・・・


『両チーム配置確認。それでは、第1回戦開始!!』


エリカ「始まりましたね……隊長」

まほ「うむ」

エリカ「まったく……のこのこ大会に出てくるとは」

まほ「エリカ、それよりさっき大洗の生徒と一緒に居た忍者だが……」

エリカ「忍者……? そんなのがいたんですか?」

まほ「…………いや、なんでもない」

まほ「(奴は一体……?)」


・・・・・・


みほ「まずは森の中に隠れて相手の出方をうかがいます。ウサギさんチームは先行して偵察。フラッグ車のカメさんチームは森から離れた適当な場所でこそこそしていてください。カバさんチームはカメさんの護衛……アヒルさんチームはあんこうについてきてください」

「「「「了解!!」」」」

沙織「グロリアーナの時が嘘みたいに皆連携取れてるね」

華「練習の成果というわけでしょう」


優花里「西住殿、気を付けてください……副隊長2人は言わずもがな、隊長のケイさんはその統率力で隊長にのし上がった叩き上げです。油断したらまずいですよ」

優花里「どこに隠れていても狙ってくるナオミさんに、相手の手の内がすべてわかっているかのような参謀のアリサさん……2人も強敵で……」

沙織「もーゆかりん弱気すぎだよ! 私達だってこの前より強くなったんだから、それをぶつけなきゃ!」

麻子「ネガティブでは何も変わらんぞ」

優花里「しかし、これはもう練習試合ではなく……」

みほ「大丈夫。短い間だけど、私達が積み重ねてきたものをぶつければ、きっと勝てるよ」ニコッ

優花里「西住殿……分かりました。私も腹をくくります!!」


・・・・・・


みほ『ウサギさんチーム、敵影は?』

梓「今のところはまだ…………ッ、右にシャーマン!」

みほ『何輌!?』

梓「ええっと……」


 ダァン!!


優季「きゃぁっ!」

梓「至近弾!」

桂里奈「逃げろぉぉ!」グイッ

梓「ちょっと、待って! 3秒待って!」

桂里奈「あいー……あいー……あいー……3秒! 発進!!」

梓「相手は6輌です!!」

みほ『了解。私達もすぐ向かうから逃げ回って』

梓「了解! 桂利奈、頑張って!」

桂里奈「あいー!!」


・・・・・・


みほ「10輌中6輌……3輌1小隊でフラッグ車の護衛が無いと言っていたから、2個小隊を主力として展開……?」

みほ「なら、残りの1小隊は遊撃……だとすれば」


 ダァン!!


妙子「敵、9時の方向!!」

みほ「……こっちに来る!」

優花里「すごいです……10輌中9輌をもう攻撃に投入するなんて……流石アメリカンスタイル!」

みほ「ウサギさん、相手は北東から来ていますから、合流して南西に森を抜けます! アヒルさんチームも続いて。カメさんカバさんと合流します!」

梓『了解!』


・・・・・・


アリサ「…………こちらも了解よ」ニヤッ

アリサ「隊長、南西に2輌回してください。今なら包囲できます」

ケイ『OK! 今日もアリサは冴えてるわね~』

アリサ「いえいえ」

アリサ「ククッ、フラッグ車は森の外……外と言ってもどこかは分からないし、ここは森の中にいる3輌を撃破した方が効率的ね」

アリサ「なによりあんなアリンコ集団、一気にフラッグ車をやるよりジワジワと1輌ずつ嬲り殺しにした方が面白いわ。はっはっは!」


・・・・・・


梓「隊長! シャーマン6輌も連れてきちゃいました……!」

みほ「大丈夫。もうすぐ森を抜けられる…………ッ、前に2輌!?」

典子「回り込まれていた! こうなったらあの2匹を殺すしかないですよ隊長!! というか、殺させてください!」ハァハァ

あや「もうそれでいいから包囲抜けたいよー!」

優季「アヒルさん特攻してー!」

みほ「大丈夫落ち着いて! ただのシャーマンならなんとか抜ける! Ⅳ号のすぐ後ろに続いてください!」


 前からッ、後ろからッ! 砲撃音の雨に晒されながらみほ達はなんとか眼前のシャーマン2輌をすり抜け森を抜けたッッ!!

 ついでに典子が衝動を抑えきれずバレーボールをシャーマンへとスマッシュッッ!! クリーンヒットッッ!!

 砲身が曲がったシャーマン1輌は応急修理のために戦線離脱ッッ!!

 若干満足した典子ッ、2度目は煙幕棒をトス……ッ! 優しい、赤子をあやすようなトス……ッ! 味方の撤退を支援するバレー部渾身の献身であるッッ!!


・・・・・・


 死の森を抜けたあんこうチーム達ッ! 待機していた他チームとも合流ッ!


みほ「ファイアフライ含め、フラッグ車以外の車輌があの森に来た……肝心の相手フラッグ車の位置は分からないけど、カメさんチームの位置を知られなかったのが不幸中の幸いかな」

優花里「それにしても凄い采配でしたね……特に包囲してきたときなんか、まるで我々が次にどう行動するのか分かっているかのような……あれが『リーディングアリサ』の実力でしょうか……」

みほ「行動が分かっている……ッ!」ガバッ

優花里「どうしました西住殿……?」

みほ「………………無い……」

沙織「何が?」

みほ「こっちの無線を傍受しているのかと思って、気球を探したんだけど…………どうやら無線傍受じゃないみたい」

華「無線傍受って、戦車道的にアリなんですか?」

沙織「うーん…………ルールブックに乗ってないや……グレーゾーン?」パラパラ

みほ「じゃあ……一体どうやって……」


・・・・・・


アリサ「ククッ、悩むがいいわ西住みほ……あなたの考えることなど、手に取るように分かる」

アリサ「この私のリーディングの前には、どう隠したってあなたの考えは丸裸なんだから」


 アリサの能力ッ、それは触れた相手の心の中を知ることのできる能力であったッッ!!

 効果は、アリサが意識している分続くッッ! つまりッ、試合中アリサがみほの心の中を覗こうと思い続ける限り常に覗けるのだッッ!

今日はここまで……ッッ!


・・・・・・


杏『西住チャン、どうする?』

桃『なんとかしろ西住ィ!』

みほ「とにかく、数的不利だから正面から当たってもしょうがないし。相手は各小隊を分けて遊撃の体勢を取って来ると思うので、各個撃破で行きましょう」

エルヴィン『またゲリラ戦か』

みほ「ウチには正面切って戦える戦力は無いから……アヒルさんチーム、偵察に出てもらっていいですか?」

典子『偵察ですか?』

みほ「はい。相手のフラッグ車を捜索してください。とはいえ八九式じゃシャーマンに太刀打できないので、フラッグ車を見つけたらすぐに知らせてください」

典子『了解です! 聞いたな皆!! 動くものはすべて殺せ!!』

あけび『次こそ八九式で撃破を……!』

忍『リベロ並のフットワークで!』

妙子『シャーマンの砲撃もブロックしてみせます!』


・・・・・・

~東の林~


アリサ「ふぅん私達の偵察ねぇ」

ケイ『アリサ、動いてないわよね?』

アリサ「ええ。私の車輌はフラッグ車ですし、この林から1歩も動かないつもりですよ」

ケイ『敵、どこに行ったかしら?』

アリサ「ちょっと待ってください……」


みほ「(私達は西の丘に行こうかな。ここなら敵が見えるから包囲される前に気付けるハズ……でも北の森は死角になるから、そこを突かれるとおしまいかも……)」


アリサ「そうですね、多分敵は西の丘陵地帯に向かうのではないかと。丘の北にある森から急襲しましょう」

ケイ『OK! じゃあ全車輌行くよー!』

アリサ「ふふっ、これで大洗も終わりね」


・・・・・・

~客席~


ダージリン「あらら、完全に動きが読まれているようね」

オレンジペコ「大洗の八九式以外が西の丘に向かっていますね。それを追うようにサンダースも全軍同じ場所に……発信機でも付けているかのような反応速度ですね」

ダージリン「こんなジョークを知っている? アメリカの大統領が自慢をしたそうよ。わが国には――」

まほ「地獄のホットラインの話か」

ダージリン「あら、黒森峰の……」

まほ「グロリアーナが、何故枝の違う大洗の試合を見学する?」

ダージリン「そちらこそ。妹さんがそんなに心配ですの?」

まほ「西住流に無様な戦いは許されない。もしこの試合で情けない姿を晒すようなら、私の手でみほに引導を渡してやる。それがせめてもの姉の務めだ」


・・・・・・

~西の丘~


 ダァン! ダァァン!!


みほ「そんな、なんでここが……!」

優花里「北の森から、見ただけでも2個小隊以上のM4シャーマンが!」

カエサル『どうする隊長!? 北から奇襲だ!』

みほ「とにかくフラッグ車を守って! この場から逃げます!!」

梓「逃げるといっても……!」

柚子「敵の砲撃が激しすぎて、逃げるに逃げられないよ!」

みほ「南に下って! 丘を盾にします!」


・・・・・・

~林~


アリサ「ははははは! ザマァ見ろ! このまま踏みつぶされちゃいなさい!」

「アリサさん、そんなに大声をあげたらバレますよ」

アリサ「いいのよ、どうせ1輌しかいない偵察が私達を見つけられるわけ――」


 ガサガサッ、バッ


典子「ん?」

アリサ「ん?」

典子「…………………………」

アリサ「…………………………」

典子「………………」ニタァ

アリサ「ヒッ!?」


 長い長い間の中、口角を最大限上げるバレー部キャプテン磯部典子ッッ!!

 その笑顔を見たアリサッ、すくみ上るッ! それはまるで、サイコパスの笑顔であったのだッッ!

 リーディング能力を使わずとも分かるッ、凄まじい闘志ッッ!!


典子「死ねよやぁぁぁーーーーッ!!」バシュッ

アリサ「きゃあぁあぁぁ!」

「な、なに!? 被弾した!?」

アリサ「バレーボールよ! とにかくあの八九式を黙らせなさい!」

「い、イエスマム!」

妙子「こちらアヒルさん、敵フラッグ車を発見! 攻撃中です!」

あけび「くらえぇっ!」ダァン!

アリサ「そんな弾がこのシャーマンに効くかァ! 砲塔旋回! 連中に見舞ってやりなさい!」

典子「ッ、こっちを撃つ気だ! 戦車がやられたら相手を殺せない! 逃げるぞ!!」

忍「了解!」


アリサ「ぐっ、この! 待ちなさい!!」

「深追いは危険では?」

アリサ「あんなナメた奴ら、絶対逃がすものですか! それに八九式なら私達だけでもやれるわ!」

「でも八九式を餌にした釣りじゃ……」

アリサ「…………」


みほ「(とにかく逃げないと……このまま南へ!)」


アリサ「大洗の他の車輌は南に向かうわ。だから釣りってこともない!」

アリサ「隊長、大洗は南に逃げるつもりです!」

ケイ『了解! 皆、南に行くわよ!』

アリサ「こっちも追うわよ!」

「はい!」

アリサ「(こっちがいるのはマップ的に東の林。大洗は西の丘から南に逃げたからマップ的に南西の位置に移動するハズ……ククッ、八九式が逃げたのは西……つまりマップ的に中央方向だから、大洗がこっちに来るわけないわ)」


ダージリン「あら?」

オレンジペコ「あっ!」

エリカ「これは……」

まほ「…………どうやら、勝負は見えてきたな」


アリサ「林を抜けた! これであのジャンクを…………ッッ!!?」

ケイ『ちょっとアリサ、南に行ったけど何もないよ-!』

アリサ「そ、そんな……バカな……」

「あ、アリサさん!」

アリサ「何故ッ、大洗の全車輌がここにッッ!?」


 林から出たアリサの乗るフラッグ車を出迎えたのはッ、逃げる八九式の尻ではないッッ!

 砲塔ッ、砲塔ッ、砲塔ッッ!! Ⅳ号、Ⅲ突、M3、38tの牙がッ、シャーマンを捉えるッッ!!


みほ「撃て!!」

桃「ふはははは! 死ねェ!」

柚子「桃ちゃん、当たってない」

あゆみ「くらえぇ!!」

あや「とりゃー!」

典子「ブッコロ!!」


 ダァン! バァン!! ドオォォン!!


アリサ「きゃああぁぁぁ! に、逃げるのよ早く!!」

「林の中ですか!?」

アリサ「バカ! 後退じゃ動きが遅くて狙い撃ちでしょうが!! とにかくどこでもいいから逃げるわよ!!」

「は、はいぃ!」


 シャーマンが逃げるッ! 必死の逃亡ッッ!


アリサ「何故……奴の心はずっと読んでいたハズッ!」

みほ「(やっぱり、私の心を読んでいたんだね)」

みほ「(気付いたのは西の丘で、ご丁寧に私が心の中で危ないと思った北の森から攻撃してきた。でもそれだけじゃ私の心を読んでいるのか、地形を熟知している故かは分からない)」

みほ「(そこで私は、自分の思ったことと違う作戦を紙に書いた。それを通信手に渡してチーム全体に伝達させる……)」

みほ「(アヒルさんチームが東の林でフラッグ車を発見としたとき、私は心の中で南へ行くと考えながら、紙にはすぐさま中央の森に隠れてやり過ごす作戦を書いた)」

みほ「(私達を素通りしてサンダースの全軍はそのまま南下。そこで確信に変わった……)」

みほ「(多分今私が考えてることも読んでいるんだろうから、私は心の中でこう言います)」

みほ「(ざまぁみろ)」

アリサ「こ、んのぉぉぉぉぉ!!!!」


みほ「西住流にはね、相手に考えを読まれてもいいように、自分が考えたことと違う動きをする訓練があるの」

みほ「だから、相手がいくらこちらの考えを読んでも、自分の考えと違う動きをするから……結局相手はこちらの行動が読めなくなる」

優花里「急に何を言っているんですか?」

みほ「ふふっ、ちょっと思い出してね」


 みほ達は中央の森をそのまま抜けッ、東の林の目の前へとやってきたッッ!

 サンダースは南西で立ち往生ッッ! アリサッ、文字通り孤立無援ッッ!!

また後で


アリサ「殺すッ、殺す殺すころすぅぅぅ!!」ジタバタ

「アリサさん落ち着いて!!」

アリサ「ナメられた……ッ! あんなポッと出の蟻にィィィ……!!」

ケイ『アリサ、どうしたの!?』

アリサ「隊長! 大洗全車輌、こちらに来ています!!」

ケイ『Why!?』

アリサ「すぐに救援を! きゃあぁぁっ!!」

「し、至近弾8時の方向!」

「くそぉ主よ我に力を!」

アリサ「たすけてくらはい!!」

ケイ『分かった! とにかく逃げなさい!!』


・・・・・・


ケイ「うーん……相手は5輌だし……」

ナオミ「どうしました?」

ケイ「決めた! 私とナオミ、あともう2輌でアリサの救援に行くわよ!」

ナオミ「他は?」

ケイ「ここで待機!」

ナオミ「……は?」

ケイ「相手は5輌しかいないんだから、同じ数で行きましょう」

「そんなぁせっかく砲身直したのに……」

ケイ「じゃあついてきていいわよ! あとは、あなたね! come on!」


・・・・・・


アリサ「なによ! あいつら寄ってたかってぇぇ!」

アリサ「このシャーマンはねぇ! あんたらみたいなオンボロ戦車とは違うのよ! 信頼性と安定性に富んだアメリカの大ベストセラーよ!!」

アリサ「馬鹿でも扱えるし、馬鹿にも分かるマニュアル付きよぉ!」

「全然自慢になってませんよぉ!」

アリサ「うるさい!!」

みほ「(全車発砲)」

アリサ「ヒッ! く、来る! 回避運動ぉぉ!!」


 ジグザグに動くフラッグシャーマンッッ!! しかしッ、一向に砲撃は来ないッッ!


アリサ「…………あれ?」

みほ「(なーんちゃって)」

アリサ「ぐ、うごおおおぉぉ!!」バッ

「ちょ!?」


華「あの、フラッグ車の人……何かわめきながら逃げてますよ」

みほ「ふふっ」

典子『隊長! そろそろ殺しますか?』

みほ「いえ、もう少し敵との距離が狭まったらにしましょう。どちらにしろ、全速走行での砲撃では当たりませんし、確実に仕留めます」

カエサル『しかし、そうも言ってられないかもしれないな……』

みほ「えっ?」

梓『後方!!』


 ズガァァァァン!!


みほ「ッッ!! もう!?」


 みほ達の遥か後方約5kmッッ!! 深い緑の鉄塊4つッッ!!

 アリサを攻略したみほ達ッ、浮かれている場合ではないッ!

 彼女らの足下を掬おうと指をかけるはサンダースツインタワーのもう一柱ッ!! ナオミッッ!!


みほ「敵車輌は?」

梓『シャーマン3輌、もう1輌は……砲身が長い! ファイアフライです!!』

みほ「陣形を組みます! Ⅳ号を先頭にカメさんカバさんが中、後ろをアヒルさんウサギさんお願いします!」

「「「「了解!!」」」」

みほ「もう時間は無い……急いでフラッグ車を撃破しないと!」


ケイ『アリサ、来たわよ!』

アリサ「た、たいちょおおおぉぉ!! っしゃぁぁぁ! 100倍返しで反撃よぉ!!」

「主よ、どうか我が手と我が指に戦う力を与えたまえ……」


ケイ「ナオミ、お願い」

ナオミ「イエスマム」


みほ「皆さん、ファイアフライの有効射程距離は約3000m、現在距離は約5000mありますので大丈――」


 ズガァァァァン!!

 ドォォォン!!


典子「ぎゃああぁぁ!?」

あけび「きゃああぁぁぁっ!!」

みほ「ッ!?」


 シュパッ


忍「燃えてる燃えてる!」

妙子「消火器ー!」

みほ「そんな、馬鹿な……ッ!」


 自分の目がおかしくなったわけではないッ、隣にいる優花里も驚いているのだッ!

 間違いなくファイアフライは後方5kmの地点にいたッ! しかしッ、そのファイアフライの砲撃で八九式は散ったッッ!!


優花里「おかしいですよ!? 有効射程距離外から当ててくるなんて!!」

みほ「なんて腕なの……」


ナオミ「フッ、ワンダウンだ……」クッチャクッチャ

ケイ『ナイスショット!』

ナオミ「次…………アメリカ戦車……やるのはしのびなくもあるけど」


優季「あんなの反則~!」

梓「でも次は逃げないよ、私達!」

「「「「うん!」」」」

梓「桂利奈、頑張って!」

桂里奈「あいーーーー!!」


 ズガァァァァァン!!


桂里奈「ぎゃーーーーーーー!!」

梓「ぐ、うぅぅ……やられました、すみません!」

みほ『けがは!?』

「「「「「大丈夫!」」」」」


ナオミ「ツーダウン……そろそろ、フラッグ車を狙うかな」

ナオミ「私の視界に入ったものは、誰であろうと何であろうと……必ず射貫く」


 『スナイパー』それは単純にしてナオミという砲手を的確に表した言葉ッ!

 彼女の前には有効射程距離など関係ないッ! スコープに目標が入ればそれでジ・エンドッッ!

 その狙撃能力はファイアフライの火力も合わさり、M3や八九式程度の装甲なら1撃で仕留めることが可能であったッッ!!


ナオミ「だが流石に遠すぎるか……当てることはできても威力は減衰……1撃とはいかない」

ナオミ「もっと近づく」

「イエスマム! 前進!」


・・・・・・


沙織「敵戦車隊、かなり近づいてきてるよ!」

優花里「シャーマンも発砲してきました!」

華「駄目です、撃ってもやはり走っている間では……」


エルヴィン「もはや……」

左衛門佐「これまでか……」

おりょう「蜂の巣に されてボコボコ さようなら」

カエサル「ハイクを詠むなぁ! カイシャクしないからな!」


杏「壮絶な撃ち合いだね」

柚子「これ以上避けられるかな……」

桃「…………もうだめだぁ、おしまいだぁ……」


みほ「……ッ!」

みほ「諦めないでください!」

優花里「西住殿……!」

みほ「諦めたら、もう終わりです! 相手も走ってるんだから、そうそう砲撃も当たりません!」

みほ「私達の目の前にはフラッグ車がいます! アレを撃破すれば勝利です! 当てれば勝つんですッ!!」

みほ「なにより、私が勝ちたい!!」

「「「「「…………」」」」」


・・・・・・

~客席物陰~


しほ蔵「フッ、それよ。みほ」

しほ蔵「あなたに足りなかったもの……それは、勝ちへの意思」

しほ蔵「試合前に気付くのがベストだったけど……まぁ、及第点としましょう」


・・・・・・


エルヴィン「諦めたら、終わり……か」フッ

柚子「うん!」

華「はい!」

優花里「その通りです!」

みほ「2人とも……!」

みほ「以後この試合中弱音を吐いたら背骨を折ります」

桃「いやもう駄目だよ柚子ちゃぁん!」


みほ「…………」

桃「あっ」

みほ「覚えておいてください」

桃「いや待て西住待ってくださいお願いします今のはセーフ扱いでもいいですよねお願いします返事と慈悲をください西住さん」


沙織「じゃあもうじゃんじゃん撃っちゃおう! 恋愛と同じで下手な鉄砲も数撃ちゃ当たるっていうもんね!」

華「いえ……一発で決めます」

沙織「えっ?」

華「みほさん、あの丘の上から狙いたいのですが……いいですか?」

みほ「丘の上……稜線射撃は確かに狙いやすいけど、こちらも……」

華「…………!」

みほ「……分かりました。やってみましょう!」


・・・・・・


ケイ「ん?Ⅳ号が丘を……なるほど、上から狙う気ね。アリサ、上からくるわよ!」

アリサ『えっ!? あ、はい!』

ケイ「ナオミ!」

ナオミ『イエス、マム』


 ファイアフライが狙いを38tからⅣ号へと変えるッ! Ⅳ号も既に丘の上に着く寸前であったが、ナオミの射撃がそれを許さないッッ!

 ましてや既に有効射程距離内ッ! 当たればⅣ号の装甲も抜けるッッ!!


ナオミ「(これで……The end……)」カチッ

みほ「ッ、停車!!」

麻子「おうっ!」


 急ブレーキでドリフト気味なⅣ号ッ、ファイアフライの砲撃を間一髪で避けるッッ!!


ナオミ「なッ、私が外した……!? やる……っ!」

ナオミ「奇跡は1度……2度目は無い!」


 ナオミの言葉通りッ、奇跡は1度……ッ! 次は確実に当たるッ!!


華「まだ……登り切っていないから狙えません……!」

麻子「精一杯だ……! あと10秒待て……!」

優花里「このままではファイアフライの次弾が来ますよ!」

沙織「やられるのはやだよぉ~!」


みほ「…………フウッ………………やってみる……」ガタッ

優花里「えっ、西住殿、何故外へ?」

みほ「私がファイアフライの弾をなんとかする」

沙織「ええっ!?」


 みほ、キューポラから外へッッ! Ⅳ号車体の上で仁王立ちッッ!!


みほ「…………フゥーーーーーーーッ…………」

みほ「久しぶりだから、うまくできるか分からないけど……」


・・・・・・


まほ「ッ、あの構えは……」

オレンジペコ「ええっ!? あんな放火の中外に出るなんて正気じゃないですよ!」

ダージリン「そうでしょうね。それが西住以外なら」

エリカ「でも、サンダースの砲撃は既に大洗フラッグ車を捉えています。もう時間の問題ですね」

まほ「…………」

エリカ「Ⅳ号もファイアフライにやられておしまいでしょう」

まほ「いや……」

エリカ「隊長?」

まほ「(あの構え……西住流砲弾弾き)」


・・・・・・


 みほがファイアフライを正面に、構えるッ! 中腰になり、右足へとその全力をこめるッ! 集まるエネルギーッッ!!

 立っているⅣ号の装甲がにわかに窪むッッ!!


麻子「着いた」

華「ありがとうございます。これで狙えます……!」


 華がシャーマンに狙いを定めるッ! しかしッ、そうはさせないファイアフライッ!


ナオミ「終わりだ……ッ!」


 轟音と共に17ポンド砲から飛び出される砲弾ッッ!!


みほ「ッッ!!」バッ


 みほが跳ぶッッ!! 砲弾めがけてッッ、右足を繰り出すッッ!!

 そして、激突ッッ!! 右足と砲弾ッ!! 激突ッッッッ!!!!


みほ「ハアアァァァァーーーーッッ!!!!」


 数秒の内に勝者は決まるッ!!

 砲弾は弾かれッ、明後日の方向へッッ!! 無傷で芝生に着地するはみほッッ!!


ナオミ「な――――ッッ!?」


みほ「華さん!」

沙織「華!」

優花里「五十鈴殿!」

麻子「五十鈴さん」


華「…………発射……」カチッ


・・・・・・


『サンダース大付属高校フラッグ車、走行不能! よって……』

『大洗女子学園の勝利!!』


桃「やっ、た……?」

柚子「みたい……」

杏「…………あはは!」

杏「勝ったよ!!」


「「「「「やったぁぁぁーーーーーっ!!」」」」」


・・・・・・

~試合後~


ケイ「Hey!」

みほ「あ、えっと……」

ケイ「今日はとっても面白くて最ッ高にexcitingな試合だったわ!! 久しぶりに血が燃えちゃった!」

みほ「あの、ひとついいですか?」

ケイ「What?」

みほ「何で最後、追撃は4輌だけだったんですか?」

ケイ「ああそれね。あなた達と同じ車輌数だけ使ったの」

みほ「えっ?」

ケイ「ウチのアリサがそっちの考え読んでたでしょ。それでなおかつ全車使ったらなーんかフェアじゃないなぁって」

みほ「そうだったんですか……」

ケイ「これは戦争じゃないわ。That’s戦車道! 道を外れたら戦車が泣くものね」


アリサ「えっ!? た、隊長私の能力知ってたんですか!? 話してなかったのに……」

ケイ「当たり前でしょ! 隊長として、部下の事は把握しておかなくちゃ!」

アリサ「…………」

ケイ「アリサ、あなたのやり方はフェアとは言えないわ。でも私は、あなたが自分の持てる力をちゃんと使って私達に捧げてくれた……それを認めたいの」

ケイ「それにその能力のことを言わなかったのは……私に申し訳ないと思ってたからでしょ?」

アリサ「ッ!」

ケイ「普段からフェアプレイとかうるさいものね私。気を遣わせちゃってごめんね。そしてありがとう。私達のために頑張ってくれて」

アリサ「隊長……たいちょおぉぉぉぉぉ!!」ガシッ


・・・・・・


オレンジペコ「勝ちましたね!」

ダージリン「ええそうね。どうやらみほさんに足りなかったものが見つかったみたいだし」

オレンジペコ「え、なんですかそれ?」

ダージリン「さぁ?」


エリカ「甘っちょろい……」

まほ「勝った、か……」


・・・・・・

~夕方~


沙織「いや~勝ったね! まだ夢みたいだよ!」

優花里「今回のMVPは見事フラッグ車を仕留めた五十鈴殿ですね!」

華「そんな、私なんて……どちらかというと、皆の力で勝ったのだと思います」

みほ「そうだねっ!」


 <~♪


優花里「なんですかこの音楽」

沙織「太陽のKomachi Angelじゃん。麻子でしょ?」

麻子「ああ」ピッ

華「着うただったんですね」



麻子「はい…………はい。はい、えっ……」ポロッ


 ポトッ


沙織「ちょっと麻子、ケータイ落としたよ!」

みほ「どうしたの? 顔が真っ青だよ」

麻子「おばあが……おばあが……」

沙織「おばあがどうしたの先を言いなよ! おばあが?」

麻子「おばあが……」

沙織「落ち着いて落ち着いて落ち着いて」

麻子「おばあが…………倒れたって……」

今日は……ここまでだって……


麻子「わ、私すぐ行ってくる!」

沙織「ちょ、ここからじゃ遠いよ!」

麻子「じゃあそこの海泳いでショートカットする!」

みほ「付き合うよ!」ヌギッ

沙織「みぽりんちょっと黙ってて!」


まほ「私達の乗って来たヘリを使え」

麻子「ッ!」

みほ「お姉ちゃん……?」

まほ「一刻を争うのだろう?」

エリカ「隊長、こんな連中にヘリを貸すなど……」

まほ「これも戦車道よ」

麻子「……すまない」

沙織「私もついてく!」


エリカ「では隊長、行ってきます」

まほ「ああ」


 バラララララララ!


みほ「どういうつもりなの?」

まほ「言ったはずだ。戦車道だと」

みほ「…………ありがとう」

まほ「さっきの砲弾弾き、ブランクがあった割にはよくできていたな。だが私ならあのままファイアフライに砲弾をそのまま返していた」

みほ「何が言いたいの?」

まほ「私とお前ではまだまだ実力の差があるということだ」


優花里「あ、あの! お言葉ですが!」

まほ「……なんだ?」

優花里「西住殿は、あなたには絶対負けません!」

まほ「フッ、だといいが」

優花里「それに、前の決勝戦での西住殿の判断……あれは間違ったものではありませんでした!」

みほ「ッ」

まほ「…………私もそう思う」

優花里「えっ?」

まほ「しかしたとえ犠牲を払ってでも、前へと進み勝利を手にする……それが西住流。私は西住流後継者として、みほの行動を全面肯定するわけにはいかない」

優花里「で、でも……」

みほ「いいよ、優花里さん」

優花里「西住殿ぉ……」

みほ「私はもう、西住流とは違う道を探している。それがどんな道かはまだ分からないけど……きっと、見つけてみせる」

まほ「……そうか。なら伝えることはひとつのみ」


まほ「決勝で待っているぞ、みほ」


・・・・・・

~数日後・グラウンド~


沙織「麻子のおばあちゃん、元気になってよかったね!」

麻子「ああ。皆もこの前はおばあのお見舞いに来てくれてありがとう。うるさくてすまなかったな……」

華「いいんですよ。持って行ったお花も気に入ってくれていたみたいですし」

優花里「エネルギッシュなおばあさまでありました」

みほ「これからも練習頑張ろうね!」

麻子「ああ!」


梓「あの、しほ田さん」

しほ蔵「ん?」

梓「私達って、どういう役割ができるんでしょうか……前の試合でもあんまり何もできずに終わっちゃったし……」

しほ蔵「ふむ……それは西住隊長に聞くのがよかろう」

梓「えっ?」

しほ蔵「あくまで私はコーチ。練習を見て技術面などのアドバイスをすることはあっても、戦車道そのものについて口出しできる立場ではない」

しほ蔵「チームとは、ある意味隊長の戦車道を体現したものである。自分達の立ち位置や役割を求めるなら、隊長に聞くのが道理というもの」

梓「なるほど……分かりました! ありがとうございます!!」

しほ蔵「と、言うわけだ隊長」

みほ「えっ?」

梓「あ、隊長! お聞きしたいことが!」

みほ「あ、うん」

しほ蔵「はっはっは、頑張りなさい」

みほ「(お母さん……)」


典子「隊長、相手をうまく殺すにはどうすれば!?」

あけび「皆で話し合った結果、先輩に聞くのがいいかなって」

エルヴィン「Ⅲ突について聞きたいことが」

おりょう「カーブをうまく曲がるコツを聞きたいぜよ」

桂里奈「あ、それ私も!」

あや「隊長、戦車の話をすると男友達が引いちゃいます~」

優季「私は彼氏に逃げられましたぁ……」

柚子「書類の整理が終わらないの!」

みほ「あ、あわわわ……落ち着いて! ひとりずつ……」


優花里「あのー、メカニカルなことなら私、少しなら答えられます」

華「書類の整理くらいなら私もできるかと」

麻子「操縦の事なら任せろ」

沙織「恋愛のことならお任せ!」

みほ「皆……」

沙織「ひとりで抱え込んじゃ駄目だって! 皆で分担しよっ!」

華「私達仲間じゃありませんか」

みほ「うんっ!」


しほ蔵「勝ちへの意思の次は……いよいよ、自分の戦車道よ。みほ」

しほ蔵「もう見えてきているのではないかしら」


・・・・・・

~生徒会室~


柚子「手伝ってくれてありがとう」

華「いえ。生徒会の書類って沢山あるんですねぇ……それは戦車道の?」

柚子「はい。ついでに先にこっちを整理しようと思って」

華「分かりました」


杏「いや~ありがとね西住チャン、おかげで1回戦勝てたよ~」

みほ「いえ、私はそんな……会長達だってあんなに大きな装飾を」

杏「あああの垂れ幕とバルーン? いやぁせっかく買ったんだし豪快に祝おうと思ってね! 小山が一晩でやってくれたの」

柚子「疲れたけど楽しかったよ」

桃「とはいえ、前の試合でもギリギリだったのだ……今のままではとても2回戦準決勝へとコマを進められない……」

桃「…………」チラッ

みほ「確かに……」

桃「(ふぅ……どうやらこの前の試合のアレはセーフだったらしいな)」ガタガタ


杏「せめてもう少し戦車の『数』があればねェ……」

華「あのー、お話し中申し訳ありませんが……この学校、まだ戦車があるそうですよ?」

杏「えっ、そうなの?」

柚子「本当だ。きっとどこかにまだ発掘されてない戦車があるよ桃ちゃん!」

桃「なるほど、では捜索隊を組織しよう。あと桃ちゃん言うな!」


×杏「あああの垂れ幕とバルーン? いやぁせっかく買ったんだし豪快に祝おうと思ってね! 小山が一晩でやってくれたの」

○杏「ああ、あの垂れ幕とバルーン? いやぁせっかく勝ったんだし豪快に祝おうと思ってね! 小山が一晩でやってくれたの」


・・・・・・


麻子『バレー部がなんか長い砲身を見つけたぞ』

みほ「砲身……?」

麻子『秋山さんならこれが何か分かるかもしれないが……いかんせん私はそこまで詳しくない』

みほ「わかった。ありがとう麻子さん」ピッ

杏「お、なんか攻撃力アップな予感?」

みほ「さぁ」アハハ


優花里『西住殿、カエサル殿の卦の結果……ルノーB1bisです!』

みほ「了解…………ルノーB1bisだそうです」

華「書類にもあります。フランスの重戦車ですね」

桃「頼りになるのか?」

杏「八九式よりはなんでもマシでしょ」

柚子「装甲がそれなりに厚いようです。砲も2門あります」

杏「なるほどねェ~……じゃあそれに乗る連中は私が集めるよ」

桃「アテがあるんですか?」

杏「まァね」


沙織『こちらウサギさんwith武部! なんか学園艦のかなり下の方で凄い戦車見つけたよ!』

みほ「凄い戦車?」

沙織『暗くてよく分からないから、とりあえず自動車部に運んでもらうよ!』

みほ「分かった。じゃあ自動車部にはこっちから言っておくから地点だけ教えて」

桃「何故学園艦の底の方に戦車を……」

杏「こりゃ運び出すのも一苦労だねェ」

桃「どれも2回戦までには間に合わないか……」

杏「ま、チームもいい感じにまとまってきたしなんとかなるでしょ」

柚子「次はアンツィオですよ……あのノリと勢いで有名な」

桃「調子に乗られると手強い相手だが……勝たねば!」


・・・・・・

~大浴場~


桃「皆今日はご苦労だった! 次の試合までには間に合わないが、これで先へと進める希望が出来た!」

妙子「まさか砲身が物干し竿に使われているとは思いませんでした」アハハ

カエサル「私の占いは当たる」

あゆみ「怖かったね……学園艦の底の方」


桃「じゃあ西住、やれ」

みほ「えっ?」

桃「締めろ」

みほ「あ、はい」


 ダキッ


桃「って何故抱き着く!?」

優季「きゃー! そういう関係?」

沙織「あんこうチームは不純同性交遊禁止だよー!!」

桃「そうだ西住! いいから離れ――」


 バキ、ボキ……ベキ……ッ!


桃「ア、ア゛ア゛ア゛ァ゛ァ゛ァ゛ーーーーッ!?!!??!?!!?」

一同「ヒイイイイィィィィ!?」

沙織「み、みぽりん何してるの!?」

みほ「え、シメろって言われたから……てっきり1回戦の弱音のことを言ってるのかと……」

桃「お、折れるおれるぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!! 背骨折れ゛る゛ぅ゛ぅ゛!!」

みほ「違うんですか?」


桃「場を締めろ、って……や゛め゛え゛え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!!」

みほ「そうでしたか……」パッ

桃「ま、まさか……セーフじゃなかったなんて……」ガクッ

柚子「桃ちゃん大丈夫! 背骨折れてないよ!!」

杏「抱き着いてきたかと思ったらサバ折りだったね」


みほ「あ、締めるってそういう……」

みほ「ええっと……」

みほ「皆さん、2回戦も頑張りましょう!!」

「「「「「オオオオーーーーーーッ!!」」」」」


・・・・・・

~数日後~


沙織「いや~アンツィオは強敵だったね!」

みほ「うん。でも次はもっと強敵……」

華「プラウダ高校……昨年の優勝校ですね」

優花里「大丈夫ですよ! きっと次もうまく勝てます!」

麻子「戦車も増えるしな」

今日はここまでだしな


華「次の会場は随分北にあるんですね」

優花里「そこ、試合の日の天気は雪ですから……普段雪に慣れているプラウダにかなり有利な天候になりそうですよ」

沙織「本当に会場決めってルーレットでランダムなのー? なんかインボーの臭いがするよ!」


杏「あ、西住チャーン。ちょっといいかな?」

みほ「はい?」

杏「お昼ご飯もう食べた?」

みほ「いえ、まだですけど」

杏「じゃあさ、ちょっと付き合ってよ」

みほ「え? いいですけど……」チラッ

沙織「行ってきなよみぽりん、私達は適当にすませるから」

みほ「そう……? じゃあ、行ってくるね」


・・・・・・

~生徒会室~


柚子「さ、食べて食べて! 会長の作るあんこう鍋はとっても美味しいから!」

桃「デザートに干し芋アイスもあるぞ」

みほ「えーっと……?」

杏「そう構えないでサ、ジャンジャン食べてよ」

みほ「は、はい。いただきます」


柚子「それでね、これが私達が入学した時の写真なの」

みほ「河嶋先輩、この時オサレ眼鏡してないんですね」

柚子「それでこれがハロウィン仮装大会の時で、これが水かけ祭り、これが全裸ローション相撲…………」

杏「懐かしいねぇ……」

桃「ああ……」

柚子「楽しかったなぁ……」


みほ「あの、急に写真見せてきたかと思ったら思い出に浸るのやめてください。こっち完全に置いてけぼりですよ」

柚子「ああごめんね! えっと……何が言いたいかって言うと……」

みほ「…………」

柚子「……」

桃「…………」

みほ「?」

杏「まそんなこと今はいいジャン! デザート食べよっか!」

桃「そうですね!」

みほ「??」


杏「いや~美味しかったね」

柚子「…………西住さん、帰っちゃいましたね」

杏「そりゃ食べ終わったら帰るでしょ」

桃「言えなかったじゃないですか」

杏「これでいいんだよ、西住チャンには事実を知って委縮されるより、のびのびやってほしいからネ」

桃「(事実を知ってものびのびしそうだということは黙っておいた方がいいのか……)」


・・・・・・

~プラウダ学園艦~


ノンナ「準決勝は残念でしたね」

カチューシャ「去年カチューシャ達が勝ったところに負けるなんて、グロリアーナも落ちたものね」

ダージリン「勝負は時の運……と言うでしょう? しかし、準決勝前なのに随分余裕ですわね。練習はしないの?」

カチューシャ「燃料が勿体ないわ。相手は聞いたことの無い弱小校だし」

ダージリン「でも隊長はあの西住流よ?」

カチューシャ「ッ、そうなの!? なんで黙ってたのよノンナ!」

ノンナ「何度も言いましたよ」

ダージリン「まぁ妹の方だけれど」

ノンナ「へ? な、なぁんだビックリした」

ダージリン「(その妹の方も十分危険だけど……まぁ、黙っておきましょうか。面白そうですし)」


・・・・・・

~熊本・西住家~


しほ「………………………………」

まほ「(お母様が新聞を見ながら難しい顔を……しかもあれは大洗について書かれている記事)」

しほ「………………………………」

まほ「(おそらく西住の名を背負いながら西住流とは程遠い戦法をとっているみほに対して相当怒っているのだろう……)」

しほ「準決勝……」

まほ「見に行くのですか?」

しほ「え? あ、ええ」

まほ「(お母様がみほの試合を見に行く……まさか、勘当を言い渡すのために……?)」

しほ「(最近練習に出れていないけれどちゃんとやっているのかしら……準決勝の相手はプラウダ。強敵よ)」


・・・・・・

~試合会場~


沙織「うぅぅ寒ッ!!」

カエサル「ここにあるのは澄み切った大気と汚れなき水のみ」

エルヴィン「吐く息どころか内臓すら凍る……」

左衛門佐「酒をくれ、五臓六腑を焼く酒をくれ!」

おりょう「恨みつらみの言葉さえ固まるぜよ……!」

そど子「いや、ここ零下80℃じゃないから……」

杏「ありがとね~戦車道快諾してくれて」

そど子「ほぼ一方的に話をつけてきたくせに快諾もなにもありません!」


 杏がルノーB1bisの乗員に選んだ3人ッ、それは学内の秩序を守る風紀委員であったッ!

 練度の差はあれど猫の手も借りたい大洗ににとってこの3人とルノーの加入は大きな戦力であるッ!


そど子「やるからには勝つから、そのつもりで来たんだからね!」

麻子「うるさいのが増えたな……」

そど子「なんですって冷泉さん!」

麻子「そう怒るなそど子、短い間だが一緒に練習した仲じゃないか」

そど子「そど子って呼ばないでって言ってるでしょ!」


沙織「ねぇみぽりん、この寒さの中で大丈夫なの?」

みほ「一応全車寒冷雪上仕様にしたけど……まぁ、急な措置だから常にエンジンは温めておきたいね」

優花里「私はこのF2っぽくなった長砲身Ⅳ号の砲撃を早く見たいであります」

麻子「凍ったら折れそうだな」

華「鉄ですけどね」


梓「そういえば、しほ田さん来てないね」

あや「最近練習にも来てなかったし……風邪?」

優季「寒いもんね~」


ノンナ「Здравствуйте(こんにちは)」

沙織「えっ、ロシア語!?」

みほ「あれは、プラウダの副隊長……」

優花里「ブリザードのノンナですね」


杏「どうもどうも、生徒会長の角谷だ。そちらの隊長さんは?」

ノンナ「一緒にいますが」

杏「え?」

カチューシャ「ここよ!」


 声がするは上ッ、みほ達の頭上約3mッッ!


カチューシャ「どうも、おチビさんたち」

優花里「う、浮いてます!」

おりょう「奇怪な!?」


ノンナ「カチューシャ、降りてきてください。相手の首が痛そうです」

カチューシャ「あら失礼、あまりに小さい存在だったから気にしてなかったわ」シュタッ

桃「お前の身長も小さいじゃないか」

カチューシャ「聞こえたわよ……よくも侮辱したわね」スッ

桃「ん? って、ぎえええぇぇぇぇぇ!!?」

柚子「ああっ、桃ちゃんが宙に浮いてる!?」

カチューシャ「あははははははは!!」

桃「高いぃぃぃぃ! お、降ろせえぇぇぇ!! 降ろしてくれぇぇぇぇ!!」

カチューシャ「教えてあげる。私は物を浮かせることができるの」

左衛門佐「超能力か!?」

カチューシャ「その力は急に解くこともできるから、上の片眼鏡をあの高さから落とすこともできるわ」

桃「ひいいいいぃぃぃぃぃぃ!? 助けて柚子ちゃあああぁぁぁぁん!!」ジタバタ


柚子「あ、あの! 桃ちゃんを離してください!」

カチューシャ「上で?」

柚子「ゆっくり降ろしてあげてください!」

カチューシャ「ふふん、しょうがないわね……これで自分たちの身の程がわかったでしょ?」スッ

桃「あわわわわわわわ……」ドサッ

柚子「桃ちゃん大丈夫!?」

桃「怖かったよぉぉ」

カチューシャ「まぁそれなりに楽しめたわ。弱小校相手にも挨拶はするものね」

みほ「河嶋先輩、大丈夫ですか?」

カチューシャ「あら、あなた西住流の」

みほ「…………」

カチューシャ「去年はあなたのおかげで優勝できたわ。ありがと」

みほ「…………」

カチューシャ「じゃあね~ピロシキ~」

ノンナ「До свидания(さようなら)」


・・・・・・

~客席~


オレンジペコ「15対6……この寒さと車輌数差でどうやって勝つつもりでしょうか」

ダージリン「心配性ねペコも。それとも大洗がそんなに好き?」

オレンジペコ「そ、そういうわけでは……」

ダージリン「北風がヴァイキングを育てるのよ」

オレンジペコ「はい?」

ダージリン「ふふっ」


・・・・・・


桃「クソーーーあのクソチビめ!! 絶対目に物見せてやる……!」

みほ「気持ちは分かりますが、挑発に乗らないでください。プラウダは退いてからの包囲が得意ですから、まずは慎重に……」

カエサル「隊長殿、慎重もいいがここは思い切って突っ込むべきでは?」

みほ「えっ? でもリスクが……」

典子「大丈夫ですよ隊長! 我々には勢いがあります!!」

梓「それにあっちは私達の事ナメてますから、驚かせてやりましょう!」

桃「ああ! 連中にこの雪の味を噛みしめさせてやる! アンツィオに完全勝利した私達ならいけるぞ!」

みほ「……………………分かりました。一気に攻めましょう」

優花里「えっ、いいんですか?」

みほ「皆、アンツィオでの戦いでノリと勢いを学んだみたいだし、長引けば雪上での戦いに慣れた向こうが有利になっちゃうから……」


 プルルルルル……


みほ「あ、ごめんなさい」ピッ

ダージリン『もしもしみほさん』

みほ「ダージリンさん、どうしました?」

ダージリン『孫子はこう言ったわ。兵は拙速なるを――』

みほ「……」ピッ


みほ「皆さん、この試合も頑張りましょう!!」

「「「「「オーーーーッ!!」」」」」


・・・・・・

~試合開始~

http://www.youtube.com/watch?v=0CT7vG4rmRw


・・・・・・


沙織「戦車の中も冷えるね……暖房も無いし」

麻子「なら八九式の中に行くか?」

沙織「え、なんで?」

麻子「アレ見ろ」


典子「いいか! 準決勝ともなれば試合を見る人も多い! 観客は勿論テレビ中継も!!」

妙子「ここでバレー部が活躍すれば、全国から部員が来るってことですね!?」

典子「そのとーーーり!! そのためにもとにかく相手を殺して殺して雪を真っ赤に染め上げるぞ!!」

あけび「はい! 血が騒ぎます!!」

忍「バレー部の時代来ますね!」

典子「バレー部ファイトーーーーーーー!!!!」

「「「おおおおおおお!!!!!!!!」」」」


麻子「あったかそうだぞ」

沙織「遠慮しとく……」


華「短期決戦に決めたのは正解かもしれませんね……」

みほ「うん……」

梓『隊長、前に雪が沢山積もってて壁みたいになってます』

みほ「了解。除去するから全車ちょっと待っててください」

華「榴弾で吹っ飛ばしますか?」

みほ「多分そろそろ敵も近いだろうから、砲撃音を出すと場所を気付かれるかも」

優花里「じゃあどうしますか?」

みほ「私が行ってくる」バッ


 みほがⅣ号を飛び出しッ、走るッ! 

 目の前にそびえる雪の壁に向かってッッ! 上半身を一切動かさず下半身のみが見えないほどの速さでシュタタタタッ!!


みほ「西住流榴弾蹴りッッ!!」


 繰り出すは右足ッ! ファイアフライの砲弾を弾いたッ、あの右足ッッ!!

 その蹴りの衝撃は積もった雪の内部にまで侵入ッ、中心で収縮・増大ッ!

 結果雪に訪れる未来は爆散ッッ! まるで榴弾を撃ち込まれたのと同じように大洗の道を阻む雪の壁は爆発四散したッッ!!


みほ「これで進めます」

杏「よーし全軍進撃ー!」

みほ「…………ッ!」バッ

「ぐはぁっ!」

優花里「どうしました?」

みほ「どうやら相手に居場所は最初からバレてたみたい。急ごう」


・・・・・・


カチューシャ「うまうま」モグモグ

ノンナ「ん、どうやら偵察部隊からの報告が来たようです」

カチューシャ「なんて?」

ノンナ「今繋ぎます」

『こちら偵察部隊、敵はバケモノです! 積もった雪を蹴り一発で木端微塵に!』

『こちらの偵察もバレて1人が飛んできた雪玉にやられ意識を失っています!!』

ノンナ「落ち着いてください。敵はどこへ?」

『お、大洗全車輌は、北東方面へと進んでいます!』

ノンナ「ご苦労様です。引き続き偵察を行ってください」

『そんな! これ以上は無理――ぎゃあぁぁ!』

『わぁぁ!? ま、また雪玉が! 助け――ぐあぁぁ!!』


ブツンッ


ノンナ「偵察部隊は全滅ですね……誰か」

「はい!」

ノンナ「この座標にいる偵察部隊を起こしてきてください。開幕から1輌失うわけにはいきません」

「了解しました!」

ノンナ「おそらく西住流の……」

カチューシャ「生意気な……一気に勝負をつけるつもりね。ノンナ!」

ノンナ「はい。分かってます」

しばらく家を離れますのでもしかしたら数日間から1週間くらい更新できないかもです
今日はここまで


・・・・・・


梓『隊長、前方に敵車輌確認!』

みほ「あれはソ連戦車T-34……2輌だけ? 外郭防衛線かな」

エルヴィン『別に、アレを倒してしまってもいいんだろう?』

左衛門佐『敵車輌に告ぐー! きえろ、ぶっとばされんうちになぁ!』


 Ⅲ突、逸り砲撃ッ! 威嚇であるため着弾はずれたものの敵はたじろぐッッ!


みほ「周りに伏兵はいないみたい……全車、発砲を許可します! カバさんチームは次許可なく発砲したら優花里さんの髪をストレートにします」

カエサル『すみません』

梓『皆、撃っていいって!』

そど子『行くわよゴモヨパゾ美!』


典子「皆、この日のために練習したアレをやるぞ!」

あけび「ッ! ついにですね!」

典子「ああ! 近藤、頼むぞ!」

妙子「はいキャプテン!」


 典子がキューポラから勢いよく跳ぶッ! その跳躍ッ、八九式の約3m上ッッ!!

 後に続くは手に57mm徹甲弾を持った近藤妙子ッッ! 八九式の上に立ち腰を下げるッ!


妙子「そーれっ! キャプテーン!!」

典子「いいトスだッ!! 行くぞおおおぉぉぉぉォォッ!!」


 そうッ、彼女らはバレー部ッッ!! 手にする物がボールであろうと生首であろうとやることは変わらないッッ!!

 渾身のスマッシュッッ! 典子の手が砲弾の尻部分にクリーンヒットッッ!!

 そのまま弾はT-34へと吸い込まれていくッッ!!


優花里「バレー部すごいです! 八九式の弾でT-34を撃破なんて!」

みほ「私達も負けていられないよ。長砲身になったアドバンテージを活かすなら今!」

華「はいッ!」

麻子「当たったな」

沙織「華さっすが!」

みほ「(これで2輌撃破……出だしとしては十分だけど)」


桃「ようしこのまま進むぞ! アレが外郭なら敵はこの先にいるはずだ!」

みほ「えっ?」

梓「はい! 一気にフラッグ車を狙いましょう!!」

そど子「しかもそのフラッグ車だけど、見つけたわよ! かなり前方だけど急げば撃破できるかも!」

典子「ならフラッグ車を先に片付けた上で皆殺しだ!」

みほ「(上手く行きすぎ……? でも、フラッグ車を見つけているなら……)」

優花里「どうします西住殿?」

みほ「大丈夫だと、思いたいね……とりあえずフラッグ車を追おう」


エルヴィン「敵のフラッグ車はT-34だったな」

左衛門佐「対してウチのフラッグ車は八九式……」

カエサル「まぁ、相手のレベルを考えて八九式の砲撃は通じないから、前線に出ないよう隊長がフラッグ車にしたのだろう」

おりょう「確かに八九式の砲撃”は”通じないぜよ」


梓「フラッグ車は2輌の護衛と共に逃げています!」

沙織「なんで逃げてるの?」

優花里「こっちが全車輌で追いかけているからでありましょう?」

沙織「そっかー追うと逃げるよね男って!」

華「追ったことあるんですか?」


そど子『こちら風紀委員チーム』

麻子「カモさんチームだろ。名前くらいちゃんと言えそど子」

そど子『そど子じゃないって言ってるでしょ! もう…………フラッグ車が逃げる先に建物が点在しています。村みたいなのがあるみたい』

みほ「了解」

桃『建物ごと吹き飛ばせぇ!』

柚子『ウチにそんな火力無いよ桃ちゃん……』


・・・・・・

~村跡地~


みほ「(苦し紛れに障害物の多いところへ逃げ込んだ……? いや、もしかして……)」

あや「いけー!」

桂里奈「ブッコロー!」

カエサル「って、フラッグ車はどこへ行った?」

みほ「ッ! しま――――」


 ブワアァァァァアア!!


華「目の前にある積もった雪が舞い上がった!?」

優花里「前だけじゃありません! ここら一帯の雪がすべて上がっています!」

桃「こちらカメ視界が!」

そど子「周りが見えない!」

みほ「これじゃまるでスモーク……ッ、砲撃音!」


あゆみ「ぎゃーーーー!?」

典子「なんだ!?」

みほ「た、多分3時方向から攻撃されています! 待ち伏せ……」

桃「くそぉ往生際が悪い! とにかく敵フラッグ車を探し出して撃破しろ! ここで勝たねば……」

梓「雪が収まった……ッ! 正面に敵フラッグ車…………と、T-34が3輌!」

エルヴィン「なに!?」

カエサル「隊長、4時の方向からも敵が出てきた!」

みほ「完全に待ち伏せを喰った……! とりあえず9時の方向に転進!」

梓「はい! …………ッ、8時方向にKV-2!」

みほ「そんな……! 今来たところは……」

そど子「退路も塞がれてます! なんか砲身がすごく長いのがいます!」

みほ「IS-2! クッ……」


カチューシャ「ははははは!! まんまとよくもまぁここまで綺麗に騙されてくれたわね」

カチューシャ「あっけなさすぎるわ。でもカチューシャはそんな哀れな獲物にも容赦はしないの。一斉射よ」

ノンナ「はい。Огонь(撃て)!!」


 ダァン!! ダァァアァン!!


杏「すごい十字砲火だね。猛吹雪みたいだよ」

桃「西住ぃぃぃこのままでは全滅するうぅぅぅ!!」

みほ「どこか逃げられる場所は…………あった! 皆さん、10時方向の建物が見えますか? そこに逃げ込みます!」

カエサル「教会か……神頼みでもしてみるか!」

典子「くそう……獲物を前に背を向けるなんて……」

みほ「殿はあんこうチームが努めます。皆さん急いで!」


梓「こちらウサギチーム、教会内に入りました!」

杏「カメさんも入ったよ~」

そど子「同じく教会内に入ったわ!」

典子「サーブ決まりました!」

カエサル「カバさんもまもなく……ぐあっ!?」

おりょう「履帯がやられたぜよ!」


沙織「みぽりん、どうする?」

麻子「修理はとても待てん。Ⅳ号で押すか?」

みほ「多分私が押した方が速いから、ちょっと待ってて」


 みほッ、本日2度目の車外ッ! 足をやられたⅢ突の後部を両手で押すッッ!!

 その手は冷えたⅢ突の車体表面をものともせずッ、その足は積もった雪の上だというのにまるで整った平地を踏みしめるが如く揺るがないッ!!


みほ「Ⅳ号も続いてください!」グググググ


 動き出すⅢ突ッ、続くⅣ号ッ! 開幕十字砲火という目に遭いながらも大洗はなんとか1輌も欠かすことなく教会跡の建物へ避難することができたのだったッッ!


・・・・・・


まほ「あの舞い上がった雪……プラウダの隊長の能力でしょうね」

しほ「そうね…………」

まほ「(お母様がさらに難しい顔に……! これは、早々に調子に乗って包囲されてしまったみほへの怒りなのだろうか……)」

しほ「(やはりこうなってしまったわね……2回戦以降、あの子達は調子に乗っていたから…………みほもそれを止められなかった)」

しほ「(未熟、と一言で片付けるのなら容易いこと。しかし、みほ……あなたの戦車道を見つけるのに必要なのは、絶体絶命の窮地なのよ)」

まほ「(こ、このままでは勘当をどころか、引導を渡してしまうのでは……)」

まほ「か、帰りましょうお母様。こんな試合など見ていても仕方がありません」スクッ

しほ「待ちなさい」

まほ「ヒッ」

しほ「まだ試合は、終わっていないわ」


オレンジペコ「大洗の戦車が建物に入ってから、プラウダの砲撃が止みましたね。どうして一気に決着を付けないんでしょうか?」

ダージリン「カチューシャは楽しんでいるのよ、この状況を……搾取するのが大好きなのだから。プライドをね」


・・・・・・

~建物~


「カチューシャ隊長よりお言葉を持って来ました。『降伏せよ。今なら全員土下座で許してやる』とのことです」

みほ「面白いギャグですね」

桃「あンのクソチビぃぃ~~!!」

「時間の猶予は3時間ですので、3時間後にまた来ます。答えを聞きに」


杏「どうする?」

柚子「どうしましょうか」

桃「どうするもこうするも!!」

みほ「現在プラウダはこの建物を、残った13輌の戦車で固めていることでしょう……簡単に突破できるものではありませんね……被害状況は?」

優花里「さっきの待ち伏せで、M3の主砲が……撤退中にⅢ突の履帯と、あとⅣ号の砲塔旋回装置がやられました」

みほ「直せるものは直すとして、手痛い傷もある……」


典子「流石は去年の優勝校ということか……インターハイレベルの攻撃だった」

梓「まだやられてないにしろ、ダメージくらっちゃったし……」

あや「これじゃ勝ち目なんて……」

沙織「ま、まぁでも私達よくやったよね! 初めての大会で準決勝まで来たんだし」

麻子「傷跡は残した。もし負けても後は次の大会で上位に行けばいい」

妙子「ここまで頑張ったんだし……」

優季「そうそう、胸を借りるつもりで――」

桃「それじゃあ駄目なんだ!!」


華「か、河嶋先輩……?」

桃「なにが次の大会だ、なにが胸を借りるだ……そんなことができるか!!」

梓「でも、この初めての大会で、しかもこの戦力差でよくここまで来れたと思います。今年は駄目でも来年こそは……」

桃「何を言っているんだ! 来年などあるものか、負けたら我が校は終わりなんだぞ!!」

「「「「「――へっ……!?」」」」」


沙織「ま、またまた~負けそうだからってそうやって煽る~」

優花里「そうですよ! 確かに3年生の皆さんはこの大会で終わってしまいますが、別に学園が終わるわけじゃ」

桂里奈「冗談ですよね!?」

杏「悪いけど、冗談じゃないんだよねェ……」

「「「「「えっ!?」」」」」

杏「今明かされる衝撃の事実~って感じでベタなんだけど、大洗女子学園はこの大会で優勝できなきゃ、廃校になることが決定している」


・・・・・・

~数ヶ月前~


桃「う、嘘だ! 何かの間違いだ!!」

役員「嘘でも間違いでもありませんよ。大洗女子学園は今年を持って廃校となりました」

柚子「ちょ、ちょっと待ってください! 何故……」

役員「学園艦の運営には維持費をはじめ諸々の費用がかかりますんでね。古くからあっても、特に何もしていない普通の学園を残すほどの余裕というものが無いんですよ」

桃「な、納得できん!」

役員「今納得していただかなくても、3月までに納得していただければ結構です。それにあなた達も3年生でしょう? どの道来年には卒業なのだからいいじゃないですか」

杏「フーン」ピクッ


杏「特に何もしていない普通の学園だから潰すと?」

役員「まぁそうですね。これでもし何かしらやっていれば話は違っていたかもしれません。この学園は昔戦車道をやっていたそうですが今じゃ見る影も――」

杏「じゃあそれで」

役員「ん?」

杏「戦車道、やっちゃおっか」

桃・柚子「えっ?」

杏「まさか全国大会で優勝した学園を廃校になんかしたり、しないですよねェ~」


・・・・・・


杏「それで、全国大会で優勝できるようなら廃校はナシってことになった」

カエサル「き、聞いていないぞ!」

柚子「ごめんね皆……今まで黙っていて」

杏「昔盛んだったんならもうちょっと良い戦車あると思ってたんだけど、当時の予算の都合で良い戦車は全部売っちゃって、売れ残った戦車だけ残ってたってワケだネ」

麻子「だからこんなに弱かったのか……」

杏「それでも私達は学園を残したかったんだ。半分は生徒会として、学園艦に暮らす皆のために。もう半分は残り1年を笑って過ごしたいっていう自分のために」

桃「だが、それもここまでだと……認めるものか…………」

梓「そんな……じゃあ、私達、離れ離れ……」

典子「バレー部復活どころか、永久に……だと」

華「ここにしか咲けない花もあるというのに……」

沙織「(申し訳程度の花道やってますアピだ)」


杏「元黒森峰副隊長の西住チャンと、あの正体不明忍者が協力してくれていたから、もしかしたらって思ってたんだけど……」

優花里「こんな状況……いくら西住殿でも…………西住殿?」

桃「そういえば西住はどうし――ッッ!!」


 皆が愕然とするッッ!! この陰鬱な雰囲気の中ッ、みほはひとりッ、近くにあった机の上に地図を広げていたのだッッ!!

 貪欲ッ! 貪欲ッ! あまりにも勝利に貪欲な姿勢ッ! 見ている側も思わず前のめりになるッッ!


みほ「プラウダは包囲ドクトリン……包囲の穴は……」ブツブツ

優花里「に、西住殿……!」

桃「おい貴様、聞いていたのかッ!」

みほ「はい。負けたらアウトなんですよね」

桃「な――ッ!」

杏「ほーう」ニッ

みほ「なら、勝ちましょう」

カエサル「簡単に言うが……」

みほ「絶望的な状況にこそ光は見える……死中の活を見出すんです」

柚子「でも、大丈夫なの……?」

みほ「彼我兵力差が大きいのは今に始まったことではありませんし…………それに、私はまだ勝てると思っています」

華「西住さん……!」パァァ

沙織「みぽりんはブレないね」


みほ「どんな戦いにも、どんでん返しがあります。私には、その返しがこの戦いの中にもあるようにしか見えない」

梓「隊長、本当に……勝てるんですか?」

みほ「勝てます。だけど…………」

そど子「だけど?」

みほ「戦車道は、個の力が物を言うものではありません。参加する1人1人、1輌1輌がすべての力を出し切り一丸となって戦うものです」

みほ「これには皆さんの力が必要不可欠です。皆さん、私についてきてもらえますか?」

「「「「「…………」」」」」


エルヴィン「フッ、何を言うかと思ったら……」

忍「そんなの、決まっているじゃないですか」

おりょう「愚問ぜよ」

梓「私達は、西住隊長についていきます! 今までも、これからも!」

沙織「私達、仲間でしょ!」

麻子「それがチームというものだ」

みほ「みなさん……!」

杏「信じていいんだね、西住チャン?」

みほ「はい!」

桃「…………分かった……これからどうする、隊長」

みほ「まずは修復をしましょう。各車、エンジンは温めておいてください」

みほ「それと、状況を詳しく知るために偵察も出します。人選は――」


・・・・・・


カチューシャ「んぅ……」Zzz

ノンナ「…………」

「あの、副隊長」

ノンナ「シー……」

「あ、すんません」ヒソヒソ

ノンナ「なにか?」

「さっき敵の偵察と思われる連中を見たんですけんども……」

ノンナ「……分かりました。カチューシャが起きたら知らせておきましょう」


ノンナ「(本当は、さっきの包囲射撃で全滅させるつもりだったのですが……意外としぶとかったですね)」

ノンナ「(きっと大洗は降伏などしてこない……フフッ、カチューシャも私も、久しぶりにワクワクしている……)」

ノンナ「楽しいですね、カチューシャ」

カチューシャ「むにゃ……かえれ……ぜろ、おいてけ……」Zzz

ノンナ「吹雪いてきました……荒れそうですね。天気も、試合も」


・・・・・・

~2時間後~


みほ「優花里さんとエルヴィンさん、それに麻子さんとそど子さん達のおかげで……敵の詳しい配置も分かった……あとは、この吹雪を耐えて…………」ブツブツ

みほ「カチューシャさんの性格から包囲はおそらくどこかが……」ブツブツ

みほ「適当に敵兵を捕まえて吊るす……そうすれば相手に動揺を生んで包囲を突破できるかも……いっそ」ブツブツ

桃「西住はさっきからこんな状態だし……」チラッ


梓「寒いね……」

桂里奈「シーツ1枚じゃぁ……」

あや「食料も暖もないなんて……」

左衛門佐「あの木に見覚えがありますぅ!」

沙織「こんな時彼氏がいたら上着とかかけてくれるのかなぁ」

華「沙織さん、凍えそうな季節に愛をどーこー云うのはどうだっていいから冬のせいにして温め合いましょう」

杏「あ、見て小山。干し芋で釘が打てた」

桃「こ、これは……士気が落ちている……!」


桃「おい西住、西住!」

みほ「IS-2を奪って――…………はい?」

桃「この寒さで皆の士気が見るからに落ちている……なんとかしてくれないか」

みほ「バレー部の皆さん」

典子「はい! なんでしょうか!」

みほ「体から火とか出せますか?」

忍「流石にそれはできませんけど……」

あけび「でも、情熱なら誰にも負けません!」

みほ「じゃあバレー部の4人の周りに皆を集めて暖をとりましょう」

桃「に、西住ィお前それ本気で言っているのかぁ!?」


典子「バレー部ゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!」

妙子「復ッ」

あけび「活ッ」

忍「全ッ」

あけび「国ッ」

妙子「制ッ」

典子「覇ァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」


 ゴオオオオオオオオオ!!


ゴモヨ「あったかい……」

パゾ美「五臓六腑に染みる……」

そど子「助かったぁぁ……」

杏「干し芋はあっためるとよりおいしいもんな」

桃「ほ、本当に暖をとれるとは……」

柚子「これは大洗女子学園名物、人間キャンプファイアー!」

桃「知っているのか柚子ちゃん!?」

柚子「炎の中に複数人が鎖でつながれた状態で突っ込み共に耐えることで互いの信頼を高め合うんだよ桃ちゃん!」

桃「やっていることが目の前の現象とまるで違う! バレー部のはどちらかというと本人達が火みたいになってる!!」


みほ「これで士気も高くなるでしょう?」

沙織「でもあったかいのはいいとしても士気って言われると」

優花里「戦意高揚とは……」

みほ「………………分かった」

華「みほさん、どうするんですか?」

麻子「Ⅳ号の上に立ってラジカセなんて持ってどうした」

みほ「こんな時のために、一応持ってたんだけど使う日が来るとは………………」ピッ


 テテテテン……テテテテン…………チャーラーララー……


「「「「「ッッ!!」」」」」

優花里「こ、これは……!」

みほ「聞いてください、Winter,again」


・・・・・・


みほ『むくちなひといきはしろく……』


まほ「この歌は……! みほのカラオケの十八番……!」

しほ「(懐かしい……)」


みほ『いつかふ~た~りで~』

華『ゆき~たいね~』

優花里『ゆきがつ~も~るこ~ろに~』

沙織『うまれた~ま~ちの~あのしろさを』

麻子『あなたに~も~みせたい』

『『『『『あいたいからぁぁぁ~』』』』』


オレンジペコ「西住さんの歌に、皆が同調していく……!」

ダージリン「流石ね……ハラショーですわ」

オレンジペコ「それで、これ……なんの歌ですか?」

ダージリン「ええっ!? し、知らないの!?」


・・・・・・


「「「「「あしあと! を! のこしてぇぇぇぇぇーー!!」」」」」

みほ「センキュー函館!」

「あ、あの!」

みほ「へ?」

「プラウダの者ですが、そろそろタイムリミットです! あとここは函館ではないです」

みほ「あ、そうでした」

桃「細かい奴め」


よい子の訂正シリーズ

>>149
×磯部典子
○磯辺典子

>>229
×ノンナ「へ? な、なぁんだビックリした」
○カチューシャ「へ? な、なぁんだビックリした」

今日はここまでまた数日後に


みほ「降伏はしません」

桃「帰ってあのチビに伝えろ! 怖ければかまくらの中で震えてろとな!」

「えぇ……?」


みほ「全車、アヒルさんチームを守りながら一直線になって包囲を抜けます」

優花里「ちょうど包囲に薄いところができていますが、ここを突破ですか?」

みほ「ううん、突破するのは…………」


沙織「ええっ!? それって一番分厚いところじゃん! 死にに行くの!?」

みほ「相手は昨年の優勝校だし、なにより包囲戦が得意なプラウダが、こんなに時間があって包囲が不完全になるなんてまずありえない。本気で包囲でトドメを刺したいならもっと狭めて隙間も無いハズ」

華「でも包囲を突破するならやはり薄い部分では?」

みほ「敢えて薄くしている可能性が高いかも。多分こっちが薄い部分に突っ込んだら、また包囲分断されて殲滅される……」

麻子「だから厚いところに突っ込んで驚かせるのか」

みほ「相手がそこまで読んでいたらこちらの勝ち目は無くなるけど……もしそうでなければ、包囲を突破してなんとか勝ち目が見えてくるかもしれない」

麻子「だがその後はどうする?」

優花里「先ほどの偵察でフラッグ車は見つけられませんでしたから……」

みほ「そこは…………アドリブかな」

沙織「うぅ~こわい……」


杏「ならそれでいーよ、西住チャンの好きにしな」

カエサル「どの道このままでは蹂躙は必至。隊長に賭けよう」

梓「私達は全力でついていきます!」

典子「相手のスパイク全部避けてみせます!」

そど子「廃校はゴメンだもの。絶対勝ちましょ!」

みほ「みなさん……お願いします!」


・・・・・・


カチューシャ「ぬわんですってぇ!? あのポンコツ片眼鏡めぇ……今度見つけたら絶対しゅくせーしてやるわ!」

ノンナ「いかがなさいますか?」

カチューシャ「相手は追い詰められた鼠。こっちの布陣を知っているんだったら、どうせ包囲の一番薄いところを突破しようとするハズ。フフン、だから敢えて一部を薄くしたんだけどね」

ノンナ「カチューシャ、窮鼠猫を噛むということわざもあります。追い詰められた鼠だからこそ手強いかもしれませんよ」

カチューシャ「なによノンナ、私の作戦に不満があるの?」

ノンナ「いいえ。しかし指揮官には、常に予想もつかないことを予想することも必要です」

カチューシャ「………………ノンナがそんなに言うなんて珍しいわね」

ノンナ「勝ちたい、ですからね。カチューシャもでしょう?」

カチューシャ「……そうね……分かったわ。ならノンナ、IS-2に乗りなさい」

ノンナ「Да」


・・・・・・


みほ「じゃあ、行きますよ」

「「「「「はい!!」」」」」


杏「あ、西住チャン」

みほ「はい?」

杏「今言うのはヒキョーかもしれないけどさ、私達をここまで連れてきてくれて……ありがとね」

みほ「……それ本音ですか?」

杏「どーだろーね」

みほ「ふふっ、それでは……パンツァーフォー!」


みほ「このまま正面のT-34の集団をすり抜けます!」

優花里「あれ、T-34でも85ですよね……」

みほ「アヒルさんさえやられなければ大丈夫、今は全速力で突っ込んで! 皆で抜けるから!」


カチューシャ「出てきたわね! どうせあっちの薄いところに………………って、こっち!?」

ノンナ『予想が外れましたね』

カチューシャ「バッカじゃないの!? 一番厚いところに来るなんて……でも予想が外れることが予想通りってところかしら」

ノンナ『準備できていますよ』

カチューシャ「ならやっちゃって! フラッグ車じゃなくてもいいから、確実に撃破!」


 ダァァァァン!


みほ「ッ、全車左に逸れて!!」

沙織「きゃあぁぁ! あ、危ない……」

優花里「今の砲撃、IS-2ですよ!!」

麻子「狙われてるな」

みほ「くっ……!」

杏『西住チャーン、ちょっといい?』

みほ「会長?」

杏『カメチーム、列から離れるね』

沙織「ええっ!?」


杏「やっぱここは誰かが囮になるしかないというわけで、後は頑張ってねー」

みほ『駄目です! ここを皆で抜けないと……!』

杏「こんな状況だし、誰かがこういう役をしないといけないでしょ。ウチらはもう充分皆に色々してもらったからサ、皆は無事にここを抜けてね。それじゃ」

みほ『ちょ、会長――』

杏「2人ともよろしく頼むよ」

桃「はい!」

柚子「カッコつけすぎじゃないですか?」

杏「やっぱ芝居かかりすぎた?」

桃「よぉし今度こそ絶対当ててやる……!」

杏「河嶋、砲手代われ」

桃「え?」


カエサル『おい、カメさんどこへ行く!?』

そど子『ちょっと、戦列が乱れるじゃない!』

梓『西住隊長、カメさんチームが!』

みほ「分かってる……私達はこのまま行きます!」

沙織「いいの?」

みほ「犠牲無くして……大きな勝利は得られない…………これ、お母さんに言われたことなんだよね」

優花里「…………」

みほ「そうなのかもしれない……でも、私は……」

麻子「西住さん、ちょっとした山を登るけどいいのか」

みほ「あ、うん。山を登り切ったらあんこうとカバさんチームは脇に逸れて敵をやり過ごします。2輌で隠れてる敵フラッグ車を探すから、ウサギさんとカモさんはアヒルさんを守りながら逃げてください」


カチューシャ「抜かれた!? 後続何が何でも阻止! ノンナ、数輌連れてあの38tをやっちゃいなさい!!」

ノンナ「はい」

カチューシャ「残りの全車輌でフラッグ車を追うわよ!」

『こちらフラッグ車、私達もっすか?』

カチューシャ「アホか! あんた達は冬眠中のヒグマのようにおとなしくしてなさい!」


杏「さーて、ウチらの前にはT342輌と85にスターリンかぁ……硬そうで参っちゃうなぁ」

小山「向こうもこっちを狙ってるみたいですよ」

杏「オーケーオーケー。小山、ちょっと辛くなるけど運転よろしくね!」

小山「はい!」

杏「河嶋、装填早めでな!」

桃「はい!」


ノンナ「全車攻撃開始。相手は1輌ですから確実に仕留めましょう」


小山「会長、撃って来ました!!」

杏「うぉーこえェー! でも転輪狙えば…………っと!」ダァン!


 38tの砲弾がT34の履帯を狙うッ! 1発が見事T34の履帯に当たりッ、もう1発も85に当たるッ!

 桃の時とは違う射撃ッ! 同じ車輌とは思えないッッ!


杏「欲張って撃破とかしちゃうぅ~!? 接射ならさぁ!」

桃「装填完了!」

小山「み、密着します!」

杏「ヒューッ!」


 T34がッ、T34-85がッ! 38tの砲撃によって沈むッ!


杏「よっしゃぁこんなもんかな?」

小山「2輌撃破、1輌履帯破損! やりましたね!」

桃「お見事です!」

杏「これ以上はヤバそうだし、ちゃっちゃと逃げるよ」


 束の間ッ!! 意気揚々と味方に合流しようとする38tを狙撃したのはIS-2スターリンッッ!!

 轟音と共に38tの脇に砲弾が突き刺さり車体は1回転2回転3回転ッッ! 無情にも上がる白旗ッッ!!


杏「いっつつ……ゴメーン、2輌しか撃破できなかったうえにやられちゃった」

沙織『ケガは大丈夫ですか!?』

杏「じょぶじょぶ。じゃあ……頑張ってね」

みほ『……はいっ……!』


ノンナ「お待たせしました」

カチューシャ「遅かったわね。他の3輌は?」

ノンナ「2輌は撃破され、1輌は履帯をやられました」

カチューシャ「何やってるのよ! あんな低スペック集団に……!」

ノンナ「戦況は…………」

カチューシャ「どう?」

ノンナ「前に敵3輌……内1輌はフラッグ車です。Ⅳ号とⅢ突の姿は見えません」

カチューシャ「待ち伏せかしら……でも関係ないわ! たった2輌の待ち伏せくらいで止まる私達じゃないからね!」

ノンナ「では……私も本気でフラッグ車を狙います」

カチューシャ「撃破されたのと履帯をやられたのと、フラッグ車とカーヴェーたんを覗いた全車輌で追ってるのよ。必ず仕留めてやる!」


・・・・・・


エルヴィン「皆は今頃頑張って逃げている頃か……」

おりょう「踏ん張ってほしいぜよ」

みほ「…………優花里さん、また偵察に出てもらってもいい? 多分建物の間にフラッグ車が隠れてるんじゃないかと思うんだけど」

優花里「はいっ! お任せください!!」バッ

沙織「うわっ、飛び降りた!」

優花里「よーし、どこか高い建物の上に……」タッタッタ


・・・・・・


そど子「後ろから8台追いかけてきてる!」

あや「そんなに!?」

梓「大丈夫、ジグザグに走ればそうそう当たらないって西住隊長も言ってた!」

典子「ぐぐぐ……八九式がフラッグ車でなければ今すぐ反転して殺しに行っていたのに……」


 ダァァァァン!! ドォン! バァァン!!


そど子「たくさん撃って来た!!」

梓「桂里奈ちゃん、頑張って逃げるよ!」

桂里奈「あいーーー!!」

そど子「ゴモヨ、思い切り履帯を回して雪を巻き上げるのよ! 煙幕になるわ!」

優季「それに、こっちも煙玉持ってるしね~」

梓「各車煙幕!」


カチューシャ「目晦ましなんて生意気な! ノンナ、どう?」

ノンナ「いけます」

カチューシャ「なら、いいわよ!」グッ

ノンナ「………………」


 ノンナの眼光が遥か前方の3輌の車列を捉えるッ!

 彼女がプラウダの副隊長でありIS-2の砲手を務める理由ッ、それはひとえに彼女の能力故であるッ!

 物体を透視できるノンナの前に、障害物煙幕の類のすべては意味をなさないッ! 彼女にかかればすべてが丸裸なのだッッ!

 サンダースのナオミが精密射撃のために足場を固めるのに対しッ、ノンナは多少の精度を犠牲にして場所と天候を選ばぬスナイパーッッ!!


カチューシャ「よく見える?」

ノンナ「はい。12時の方向……一番後ろはルノーB1、続いてM3、八九式……」

カチューシャ「なら1輌ずつ蹂躙してやるわ!」

ノンナ「はい。いつでもいけます」


そど子「ゴモヨ、うまくできてる?」

ゴモヨ「うん、そど子…………ってあれ!?」

パゾ美「前に進んでない……履帯から回り?」

そど子「いや、というかこの車輌……浮いてない!?」


 カチューシャの能力によりルノーが宙へと上がるッ!

 前進も後退もできなくなったルノーはあえなくノンナの行進間狙撃の餌食となったッッ!


カチューシャ「ハァッ、ハァッ……やったわね! 次やるわよ!」

ノンナ「はい」


妙子「アレじゃコートに足をくっつけられた状態でスパイク受けるようなもんですよ!」

梓「そっか! 多分敵隊長の能力!」

優季「ああー物体を浮かせられるっていう…………って、それってヤバくない……?」

あや「あんなのどうやって対処すればいいの!?」

梓「私達の事はいいから、アヒルさん守ろっ!」

あゆみ「梓ちゃん……そうだよね、それしかないよね!」

桂里奈「やったるぞー!」


カチューシャ「ふふふ、困ってる困ってる」

『あのーこちらフラッグ車発見されちゃいましたどうしますか!? ていうか合流させてくださーい!』

カチューシャ「нет! 単独で広い雪原に出たらいい的になるじゃない! 頼れる同士の前におびき出しなさい!」

『は、はいぃ!』

ニーナ『あんの~こちらKV-2なんですけんども……撃破されちゃいましたぁ』

カチューシャ「はぁ!?」

アリーナ『すんましぇーん』

カチューシャ「ぐぬぬ……! ノンナ!」

ノンナ「はい。次、M3Leeです」

カチューシャ「くらいなさい!」


 カチューシャの能力がウサギさんチームのM3を捉えるッ!
 
 ルノーと同じくなす術もなく宙に上がるM3ッ! 車内のパニックは想像に難くないッッ!


ノンナ「これで、残り1輌……」カチッ


 ダァァァァン!!


・・・・・・


梓『ウサギチームやられました! アヒルさん、あとはよろしくお願いします!』

みほ「あと1輌…………敵のフラッグ車を見つけたのはいいけど……」

沙織「アレ絶対時間稼ぎにぐるぐる逃げ回ってるだけだよー!」

みほ「ぐるぐる……ッ、なら!」

沙織「え?」

みほ「カバさん、今から言うポイントにⅢ突を雪で隠すことってできますか?」

エルヴィン『任されよ。我ら4人いずれも忍道の履修者だ!』

左衛門佐『土遁だな!』

みほ「はい!」

みほ「あとは手ごろな建物を……!」


・・・・・・


カチューシャ「あと、1輌……ッ!」ゼェゼェ

ノンナ「カチューシャ、力の使いすぎです。少し休んでいてください」

カチューシャ「でも……っ、もう、すこ、し……!」

ノンナ「ただでさえ連発したら消耗が激しい能力なのですから、戦車を何度も持ち上げればそうなりますよ」

カチューシャ「私、だって……勝ちたい、のよ……っ!」

ノンナ「分かっています。だから、最後は私に任せてください」

カチューシャ「…………お、願い……」

ノンナ「はい」


あけび「すごい砲撃……」

典子「もう私達だけだ。河西、頼むぞ!」

忍「ええ! 逆リベロですね!」

妙子「で、でもカモさんもウサギさんも……」グスッ

典子「泣くな! 泣くのはバレー部を復活させたその日のためにとっておけ!」

妙子「は、はい……っ!」

あけび「せめて反撃できたら……」

典子「弾の代わりに殺気を相手に送ってやる……!」グググ

忍「キャプテンそれ意味あるんですか?」

典子「分からん!」


ノンナ「(久しぶりに、楽しい試合でしたよ……)」

ノンナ「(これで最後。せめて顔を見ながら…………) ッッッッ!!?」


 ノンナが見た八九式の中ッ! そこには小さい体から殺気をあますことなく溢れださせる典子の姿があったッッ!

 並みの人間なら心臓が止まるほどの夥しい殺気をノンナはモロに受けるッ!!


ノンナ「か、はっ……!」グラッ

「ふ、副隊長!?」

ノンナ「大丈夫…………ッ、そのまま、直進……」

ノンナ「(皮膚が粟立つ……呼吸が苦しい…………目が霞む……これほどの…………クッ!)」

ノンナ「勝つのは、私達です……!」カチッ


・・・・・・


優花里『相手が次の角を右に曲がればⅢ突が待ってます!』

みほ「了解。はぁっ!」


 みほッ、跳ぶッッ!


みほ「西住流榴弾蹴りッッ!!」


 Ⅳ号の近くにあった廃屋を思い切り蹴るみほッッ! 建物はその衝撃により粉々ッ!!


みほ「西住流機銃爆蹴ッッ!!」


 だがみほはまだ止まらないッ!! まるで機銃のような迅さの連続した蹴りが破片へと殺到するッッ!!


沙織「きじゅーばくしゅー……ってなにあれ……建物の破片を蹴ってフラッグ車に当ててるんだけど!?」

麻子「コロッケで同じような蹴り見たぞ」

華「(108マシンガン懐かしい……)」


「ぎゃああぁぁなんか飛んできてるうぅ!!」

「左はやばい右いけみぎ!!」


みほ「カバさんお願いしますッ!!」


 スターリンがッ、Ⅲ突がッ、ほぼ同時にその砲から弾を繰り出し、目標を狩るッッ!!

 どちらの砲弾もT-34へッ、八九式へッッッ!!


みほ・ノンナ「仕留めた――!?」


 砲撃音の後の静寂と舞い上がる雪煙の中ッ、顔を出すは八九式……ッ!

 片側を大きく損傷しながらも健在ッッ!!

 そしてッ、T-34から上がる白い旗ッッ!


『プラウダ高校フラッグ車、走行不能。よって、大洗女子学園の勝利!!』

今日はここまで
4DXはいいぞ


ノンナ「あと少し、及びませんでしたか」

「ふ、副隊長……?」

ノンナ「帰りましょう。私達の負けです」


カチューシャ「負け、た…………?」ポカーン

ノンナ「…………の、ようですね……」スタスタ

カチューシャ「……っ、っぐ……ひっぐ…………うぅぅぅっ……!」ポロポロ

ノンナ「はい、カチューシャ」スッ

カチューシャ「ッ、泣いてないわよ!」ズピー


・・・・・・


みほ「勝った……!?」

沙織「やったよみぽりん! 勝ったよー!!」

杏「西住チャーン! ありがとね!」

桃「よくやったぞぉぉぉ!!」

みほ「皆さん……」

梓「隊長のおかげです!」

みほ「……ううん、違うよ。敵のフラッグ車にトドメを刺したのはカバさんチームだし、皆もアヒルさんを守ってくれた……」

みほ「皆の勝利です!」

妙子「皆がMVPってわけですね!」

左衛門佐「全員勲功第一だ!」


カチューシャ「せっかく包囲の薄いところを作ってあげたのに……まさか一番分厚いところを突いてくるなんて」フヨフヨ

ノンナ「ふふっ」

みほ「カチューシャさん、ノンナさん」

カチューシャ「アンタ達、相当なアホね」シュタッ

みほ「あはは……でも、少しでも何かが違っていたらこっちが負けていました」

カチューシャ「いいえ。私達は死力を尽くしたけどアンタ達のフラッグ車に届かなかった。けどそっちは私達を倒した……悔しいけど、私達の負けよ」スッ

みほ「…………カチューシャさん……」スッ


 握手ッ!! 固い握手ッッ!! それはッ!!!! 友情の証ッッッッ!!!!


カチューシャ「決勝戦見に行くから。カチューシャをガッカリさせないでよ!」

みほ「っ、はいっ!!」

ノンナ「応援しています」

みほ「ありがとうございます!」


・・・・・・


まほ「勝ちましたね……」

しほ「ええ…………まほ、あなたはみほの戦い方をどう思っていて?」

まほ「えっ……?」

しほ「…………」

まほ「……そうですね……実力はあっても、まだまだ甘く西住流には遠く及びません。決勝戦では必ず叩き潰します」

しほ「そう……帰るわよ」

まほ「はい」

しほ「(…………)」


・・・・・・

~数日後・大洗学園艦~


「おっ、戦車道の隊長さんじゃないかい。何か買っていくかい? カツサービスするよー!」

「頑張りな~! 決勝応援しにいくよ~!」

「せ、先輩! が、頑張ってください!」

「西住さん、好きでした! 付き合ってください!」


みほ「な、なんか一気に人気者だね……」

沙織「そりゃ、全国大会の決勝まで進んだんだから!」

優花里「学園艦皆の期待が私達の肩にかかっていますよ!」


桃「なんとかポルシェティーガーのレストアが終了し、決勝戦には自動車部が搭乗してくれるらしい」

杏「色んなクラブの義援金で38tにヘッツァー改造キットを取り付けられるようになったし、Ⅳ号にシュルツェンを取り付けられるよ!」

柚子「そして何故か駐車場に放置してあった三式中戦車も戦力に加わるし!」

みほ「操縦は猫田さんともう2人がやってくれることになりましたし、戦力補強ができましたね」

桃「チヌに88mmだ! これなら黒森峰も……!」

みほ「……でも、黒森峰はティーガーをはじめ、パンターやキングタイガーといった強力な戦車を揃えています。おそらく決勝戦ではそれらを惜しみなく投入されるでしょう……」

桃「ぐ…………」

杏「でも、ソコは戦術と腕ってやつっしょ?」

みほ「そうですね……なんとか、してみます」


・・・・・・

~夕方・グラウンド~


桃「よーし、今日の練習はここまでだ! 皆お疲れであった!!」

杏「明日はいよいよ決勝戦だよ。皆あったまってる~?」

ねこにゃー「な、なんとか……」

ももがー「レバー重いけど頑張るナリ!」

ぴよたん「ゲームでは大活躍だっちゃ」

桃「大丈夫なのかそれで……」


杏「西住チャン、んじゃ締めて」

みほ「はい」コキャッ

桃「」ドサッ

柚子「違うよ場を締めるんだよ!」

みほ「あっ」


優花里「西住殿、前に出るであります」

みほ「うん…………」


みほ「明日対戦する黒森峰は、私が昔いた学校です」

みほ「そして私のお姉ちゃん……西住まほ選手は、私より強い……」

みほ「だから、決勝は相当な激戦になることが予想されます」

杏「まぁぶっちゃけ、皆西住チャンがなんとかしてくれると思ってるけどね」

みほ「あはは……でも、いくら私が戦車道に通じていても、ひとりでは戦車1輌動かせません。Ⅳ号だって麻子さんが動かして、沙織さんが皆と繋がって、優花里さんが装填して、華さんが撃っています」

みほ「私1人じゃ、勝てません。だから、明日は皆で勝つんです!」


柚子「勝って学園を残したい!」

典子「勝ってバレー部復活させたい!」

カエサル「勝って我らの名を世に轟かせたい!」

そど子「勝ってもっと風紀を取り締まりたい!」

梓「勝って皆の役に立ちたい!」

ねこにゃー「勝ってリアルでもランカー入り!」

ナカジマ「勝ってもっといじりたい!」

みほ「皆さん、明日は頑張りましょう!」

「「「「「おおおーーーーーーっ!!!!」」」」」


しほ蔵「どうやら、もう私の助言は必要ないようですね」スタスタスタ

梓「あ、しほ田さん」

みほ「…………」

しほ蔵「黒森峰は戦車道の絶対王者。戦いは熾烈を極めることでしょう。しかし、いかな王者にも弱点があることを、忘れないことです」

しほ蔵「それでは、私はこれで去りましょう」

杏「そうですか……今までありがとうございました」

エルヴィン「行ってしまうのか!?」

あや「まだまだ教えてほしいことあるのに……」

しほ蔵「元々は会長さんに、決勝戦まで付き合ってくれとの話でした。そして、あなた達は見事ここまで来ることができた。あとは自分達の力を出し切りなさい」

しほ蔵「決勝戦は見に行きます。それでは御免ッ!」ドロン

ナカジマ「き、消えた……!」

ねこにゃー「でもあの人のおかげで素人の僕達もなんとか操縦できるまでになったし……」

ホシノ「アリクイさんとレオポンは数日間って本当に短い間だったけど、お世話になったね」

スズキ「でも、本当に何者だったんだろうね?」


・・・・・・

~黒森峰・練習場(森林)~


まほ「よし、今日の練習はここまでだ。各車戻るぞ」

「はい」

「にしても凄い霧ですね……皆とはぐれそう」

まほ「確かに、濃霧で他の戦車が見えないな……」


 キュラキュラキュラ……


まほ「霧を抜けるな。周りに他の戦車がいないが……はぐれたか。現在位置は分かるか?」

「はい。一応この辺だと思います」

まほ「なるほど。これならすぐに――」

「ハーーーーーッハッハッハッハ!!!!」

まほ「ッ?」

「隊長、前方になんか忍者がいます!」

まほ「なんだと?」


しほ蔵「黒森峰隊長西住まほとお見受けッ、そしてぇぇぇッ!!」ダッ

まほ「なっ!」

「な、なんか走ってこっちに向かってくるぅぅ!?」

まほ「只者ではない……機銃で威嚇!」

「ええっ!? 相手は生身の人間ですが……」

まほ「戦車に敵意むき出しで真正面から向かってくる人間だ。侮るな!」

「は、はいっ!」


 バラララララララ!


しほ蔵「ふっ、ぬっ、ほっ、ぬえぇぃ!」ヒョイヒョイッ

「機銃が当たりません!」


まほ「ならば砲撃だ」

「ですが、あんな小さな的には……」

まほ「当てずともいい。追い払え」

しほ蔵「むっ、撃ってくるかッ!」

まほ「撃てッ!」


 ダァン!!


しほ蔵「はぁぁぁぁぁッッ!!」ガシィィッッ!

まほ「なに!?」


 しほ蔵ッ、高速回転し飛来する砲弾を両手で受け止めるッッ!!

 地に足を付け、大きく後退しながらも88mmの砲撃をしほ蔵は止めたのだッッ!!


「う、うそ……」

まほ「装填急げ! 2撃目ならば……!」

しほ蔵「ふっ、甘いわッ!」


 しほ蔵は砲弾を持ったままティーガーへと殺到ッ! その砲身へと砲弾を押し入れたッ!!


しほ蔵「どうだ、撃てるものなら撃ってみせぃ! 砲身の未来は見えるがなッ!!」

「隊長、砲身に弾が詰まって撃てません!」

まほ「おのれ……! ならば直接やってやろう!」バッ

しほ蔵「フッ、キューポラから出た瞬間が貴様の最期よッ!!」


 勢いよく飛び出るまほッ、交差するは両者の拳ッッ!!


まほ「貴様何者だ!」シュババババ

しほ蔵「ふっ、答えてやる必要は、皆無ッ!」シュババババ


 もはや手元が見えないほどのラッシュッ!! 大気が震えるッッ!!


しほ蔵「その程度か西住流ッ!」

まほ「くっ……ナメるな!」

しほ蔵「隙ありィィィーッ!!」ガシッ

まほ「なっ、しま――ッ!」


 まほの焦燥ッ、見抜かれるッ! 腕をつかまれッ、体勢はまさに一本背負いッッ!!

 背中をしたたか打ち付けられッ、まほの肺から空気が抜けるッッ!


まほ「カハッ……!」

しほ蔵「それで決勝戦に……西住みほに勝とうなどと、驕りが過ぎるッ!」

まほ「なん……だと……」

しほ蔵「貴様のその驕りが黒森峰を敗北へと導くのだッ! 妹だからと手を抜くつもりかッ!!」

まほ「ふざけるなッッ!!」シュッ

しほ蔵「ッ!?」


 仰向けの状態から放たれる手刀ッ! 防いだはずのしほ蔵の腕から血が飛ぶッッ!

 その隙にまほは立ち上がりッ、しほ蔵から距離をとったッッ!


しほ蔵「(今のは西住流履帯切断刀……まさか私の腕を傷つけるまでに練り上げていたとは……)」

まほ「私は、みほを侮ったことも、下に見たこともないッッ!」

しほ蔵「ほう……」

まほ「むしろ………………っ……そうさ、私は……みほを………………」ギリリ

しほ蔵「なるほど。見誤っていたことは謝ろう。決勝戦期待している」ザッ

まほ「待て、貴様は……」

しほ蔵「私はしほ田しほ蔵。縁があればいずれまた会うこともあろう」ドロン

まほ「なっ、消えた…………しほ田しほ蔵……一体何者なんだ」

今日はここまで
次からやっと決勝戦だ……今思うと長くなった……


・・・・・・

~決勝戦会場~


 \ワイワイ ガヤガヤ/


みほ「とうとうここまで来た……」

優花里「おほぉぉぉ! ここ、戦車道の聖地ですよぉ!」

華「そんなに凄いところなんですか?」


ダージリン「みほさん」

みほ「あっ、ダージリンさん」

ダージリン「素敵な出会いは見つかったかしら?」

みほ「予言の、運命的な出会いですか…………そうですね。たくさんありました」

ダージリン「あら。ならよかったわ」

みほ「戦車道の仲間達、戦ってきた人達……皆、私にとっての運命的な出会いです」


ケイ「Hey、ミホ!」

みほ「あ、ケイさん」

ケイ「決勝戦頑張ってね!」

ナオミ「練習の成果、出しなさい」

アリサ「ガッカリさせないでよね」

みほ「えっ……練習?」

華「私達です」

沙織「実はこっそり砲手や通信手としてのコツを教えてもらってたの!」

みほ「そうだったの!?」

華「はい。準決勝が終わってから、ナオミさん達からコンタクトがあって」

沙織「かなり助かっちゃった」

ケイ「昨日の敵は今日の友! ってね」

アリサ「それじゃ、私達はもう行くから」

ナオミ「Good Luck」


カチューシャ「ミホーシャ!」フヨフヨ

みほ「カチューシャさんにノンナさん!」

ノンナ「どうやら、準備は万全のようですね。勝負下着も着ているみたいですし」

沙織「えっ、なんでバレたの!!?」

カチューシャ「このカチューシャが応援するんだから絶対勝ちなさいよ! 黒森峰なんてケチョンケチョンにしちゃいなさい!」フヨフヨ

沙織「浮いてるのは当たり前なんだ……」

カチューシャ「うーん……でも疲れた……ノンナ」

ノンナ「はい」スッ

みほ「肩車……」

華「高いところに居るのは変わらないんですね」

カチューシャ「というわけで私達は行くわね。じゃあね~ピロシキ~」

ノンナ「 До свидания」スタスタ

みほ「あ、はい。また」


ダージリン「あなたは不思議な人ね」

みほ「えっ?」

ダージリン「戦った人みんなと仲良くなるんですもの」

みほ「そんな……皆さんいい人ですから。ダージリンさんも」

ダージリン「ふふっ、ありがとうございますわ。それでは私から予言を差し上げましょう」

ダージリン「どんなに強大であろうと、それが仇となる……強みは直接弱みにもつながるのよ」

みほ「どういう意味ですか……?」

ダージリン「さぁ? 私はいつもふと頭に浮かんだことを予言として言っているだけだから」

みほ「でも当たるんですよね……?」

ダージリン「ええ。今のところ100%よ。さて、そろそろお邪魔になる前に行きますわ。それではね」

みほ「はい。ありがとうございました!」


・・・・・・


亜美「両チーム整列!」

みほ「…………」

まほ「…………」

桃「…………」ガタガタ

エリカ「…………」キッ


エリカ「お久しぶり、元副隊長」

みほ「…………」

エリカ「今日こそは……あなたに勝つ」

みほ「逸見さんにそれはできないよ」

エリカ「余裕ね……私なんて相手にならないってこと?」

みほ「そう。逸見さんじゃ私の相手にならない」

エリカ「なんですって……!」

みほ「でも……もし私に向かってくるのなら、待ってるよ」

エリカ「馬鹿にして……! 見てなさい、叩き潰してあげるわ!」

まほ「その辺にしておけ。全ては試合で決着をつければいい」

桃「(空気が怖いよぉ柚子ちゃぁん……)」ガタガタ


亜美「礼ッッ!!」

「「「「「よろしくお願いしますッッ!!!!」」」」」


・・・・・・


『大洗フラッグ車Ⅳ号、黒森峰フラッグ車ティーガーⅠ。準備完了確認』

『それでは、戦車道全国高校生大会決勝戦……試合開始ッ!!』


みほ「全車、パンツァーフォー!」

沙織『(皆さん、敵は強いですが、焦らず怪我をせず冷静に落ち着いて頑張りましょう!)』

優花里「ええっ!? い、今のは!?」

エルヴィン『今脳内に直接声が来たのだが!?』

そど子『今の声って武部さんよね!?』

沙織「えへへー、実は私、アマチュア無線2級とテレパシーを習得しちゃいましたー!」

ナカジマ『マジぃ!?』

優季『先輩人間やめちゃったの~?』

沙織「いや~ホントはアリサちゃんみたいに読心を会得しようと思ったんだけど何故か受信側じゃなくて送信側になっちゃって」

みほ「凄いですね沙織さん!」

沙織「通信はバッチリサポートするからね! みぽりん!」


梓『わ、私達も練習で準決勝の時よりうまくなりましたから!』

典子『最近は殺すことよりも生かしながら痛みを与える方が楽しいことに気付きました!』

カエサル『我らも成長しているぞ』

そど子『わ、私達風紀委員だって!』

ねこにゃー『リアルでは初心者だけど頑張るにゃ!』

みほ「よかった……皆バッチリで」

沙織「うんうん。そういえば黒森峰はどこからやってくるんだろうね?」

みほ「この辺りは森林が各所にあるから、向こうもこちらをすぐには補足できないハズ。私達は予定通り例の山に……」


 その時ッ、キューポラから顔を出したみほのすぐ横5cmを何かが通り過ぎたッッ!!

 一瞬後にやって来る音と風ッ! 砲弾であるッッ!!


みほ「なっ、敵襲3時!」


 右側の森林の中ッ、木々の間から除くはティーガーッッ! パンターッッ!! ラングッッ! 他にもそうそうたる面々ッッ!!


みほ「まさか、こちらの進軍ルートを予測して森林を抜けてくるなんてッ!?」

華「すごい砲撃……っ!」

優花里「これが西住流……!」

沙織「どういう意味!?」

麻子「速い進軍と激烈な急襲だろう。それより早く逃げないと全滅するぞ」

梓『隊長どうすれば!』

みほ「とりあえず全車、全速力で逃げます! 黒森峰と正面切って戦うのは自殺行為ですから……」

桃『だが凄い砲撃で逃げられんー!!』

杏『また私ら囮やろっかー?』

みほ「今回は駄目です!」

ねこにゃー『なら僕達が』

みほ「えっ?」


ねこにゃー「この中で一番下手っぴだから……せめて役に立ちたい!」

ももがー「皆頑張るなり!」

ぴよたん「せめて1輌くらい撃破してみるっちゃ……!」

みほ『ちょっと、待――』

ねこにゃー「行きますぞ!」

ももがー・ぴよたん「k」


 1輌戦列を離れ、黒森峰へと特攻していくチヌッ! 無論集中砲火により装甲はへこんでいくも勇猛果敢ッ!!


みほ「………………全車、この隙に発進……!」

『『『『『了解!』』』』』


小梅「ジグザグにこっちに来るから当たらない……!」

まほ「落ち着いて仕留めろ。本命に逃げられる」

エリカ「ナメた真似を……チヌ風情がッ!」


 エリカの駆るティーガーⅡの凶弾によりチヌ沈むッッ! しかしッ、無駄死にではないッ! 大洗は既に退避していたのだッッ!!


まほ「まだ振り切られてはいない。追うぞ。射程内に入ったら各車発砲せよ」

エリカ「一瞬で終わらせてやるわ……!」


みほ「なんとか退けた……けど、まだ撒いてない………………各車、もくもく作戦を開始します!」

沙織『(皆、もくもくお願い!)』

典子『了解! もくもく用意ー!』

カエサル『完了!』

ナカジマ『もくもくいくよー』

みほ「あの山を登るから、カバさんとのワイヤーの用意をします」


エリカ「煙幕ですって? ちまちまとまどろっこしい……!」

まほ「各車、機銃で威嚇」

まほ「(行先は……おそらくあそこか……)」

エリカ「隊長、煙幕が向こうの丘まで……」

まほ「了解。煙幕の戦闘が敵の場所だ。各車榴弾装填、煙を払うぞ。向こうにはポルシェティーガーがいる。全力で追えば必ず追いつくハズだ」

エリカ「はい! 装填完了したわね。発射!!」ダァン!

小梅「はい。発射!」ダァン!

まほ「これで煙が晴れるな…………」

エリカ「フン、どうせそんなに登れてるわけ…………ッ、んなっ!?」

まほ「やはり、やるな……」


・・・・・・

~客席~


ダージリン「ポルシェティーガーはその火力と装甲故に機動性が犠牲になっているけど……」

ケイ「Wow! Ⅳ号とⅢ突がワイヤーでポルシェティーガーを引っ張ってるわ!」

カチューシャ「ふ、フン! あれくらいカチューシャなら浮かせて解決してたわ!」


しほ「…………」

「な、なぁあれって……」ザワザワ

「ああ。西住流の……」ザワザワ

「やっぱり娘達の戦いが気になるのかしら……」ザワザワ

しほ「(やはりみほは戦力差を奇策で覆そうとしているわね……けれどみほ、奇策だろうが鬼策だろうが、それすらを叩き潰すのが王者の戦い――西住流よ)」

しほ「(簡単に勝てるとは思わないことね)」


・・・・・・


まほ「こちらにもティーガーがいる分、追跡には時間がかかるな……」

エリカ「関係ありません! すぐに行って叩き潰しましょう!」

まほ「ああ。全車、陣形を維持したまま追うぞ。伏兵に注意――」

「きゃぁぁ!? す、すいません! 履帯破損!!」

「こ、こちらも履帯が!」

まほ「……ふっ、やるな」

小梅「9時方向にヘッツァー!」

エリカ「追い払いなさい!」


・・・・・・

~山~


みほ「全車、山表面の凹凸を利用して防御態勢を取ってください。黒森峰はすぐやってきます」

エルヴィン「山に陣取る……街亭の戦い……」

左衛門佐「縁起でもないことを言うな!」

おりょう「流石にそれとは状況がかけ離れてるから大丈夫ぜよ……」

カエサル「作戦を確認したい。ここには長く居座らず、有利な状況下で消耗戦になる前に数輌撃破して逃げる。でいいな?」

みほ「はい。数で劣る私達はゴリ押しされたら勝てませんから、すぐに逃げられるよう準備しておいてください」

そど子「と言ってる間に来たわよ!」

麻子「18輌しかいない……カメさんが足止めしたのは2輌だな」


優花里「西住殿、地形調査完了しました!」

みほ「おかえり優花里さん。どうだった?」

優花里「この山の地質的に、私達のすぐ前にあるこのポイントが一番適していますね」

みほ「なるほど……ありがとう優花里さん!」

優花里「いえ! 西住殿のお役に立てるならたとえ火の中水の中!」

沙織「ゆかりん何してたの?」

優花里「西住殿に言われて、この山の一番弱いところを調べてたんです」

華「地質に詳しいんですか?」

優花里「決してそういうわけではないんですが……私なりに何かできることはないかと思って。頑張って勉強しました!」

麻子「私も付き合ったぞ」

沙織「えっ、麻子私の勉強も見ながらゆかりんの勉強も見てたの!?」


エリカ「やっと追いついたわよ……」

まほ「エリカ、我々はここで待機。後はヤークトティーガーを前面にパンターを主力として展開する」

エリカ「はい!」


みほ「全車、敵が射程内に入ったら発砲してください! できるだけ多く引き付けなきゃ……」

ナカジマ「こちらレオポン、発射しますっと!」


 ダァン!!


カエサル「カバさん発射!」

華「撃ちます!」

梓「うぅ……」

典子「火力が……」

そど子「撃てー!」


 ダァン!! ドォォン!!


エリカ「やっと追いついたわよ……」

まほ「エリカ、我々はここで待機。後はヤークトティーガーを前面にパンターを主力として展開する」

エリカ「はい!」


みほ「全車、敵が射程内に入ったら発砲してください! できるだけ多く引き付けなきゃ……」

ナカジマ「こちらレオポン、発射しますっと!」


 ダァン!!


カエサル「カバさん発射!」

華「撃ちます!」

梓「うぅ……」

典子「火力が……」

そど子「撃てー!」


 ダァン!! ドォォン!!

 >>373 重複レスミス


 カキィンッ! カァン!


左衛門佐「なっ、弾かれたぞなんだあれ!?」

エルヴィン「ヤークトティーガー……重駆逐戦車だ。硬いぞ!」

華「ヤークトパンターや普通のパンターとかなら手ごたえを感じるのに……硬い……」

そど子「うっ、撃ち返してきた!」

優季「や、山が削れちゃうよぉ!」

みほ「皆さんもう少しだけ耐えてください! なるべく多くの敵を巻き込みたいので!」

ホシノ「でも、倒しちゃうよ……っと!!」

ツチヤ「おおーすごい! パンター撃破じゃーん!」

沙織「華もすごーい! 1輌撃破だね!」

華「はい! ナオミさんのご教授の賜物です」

梓「でも効いてない弾の方が多いし、敵の攻撃の方が強いっ!」


杏『西住チャーン、退路確保出来たよ! ポイント6α』

みほ「ありがとうございます会長! 2輌撃破したし、そろそろいいかな……」

みほ「皆さん、グシャグシャ作戦を開始します! 山を下る準備をしてください!」

沙織「みぽりん、行ってらっしゃい!」

みほ「うん!」バッ


エリカ「アレは副隊長……Ⅳ号から出て……跳んだ!?」

まほ「まさか……! いかん、全車引き返せ!」


みほ「西住流剛蹴砲撃……55mmッッ!!」


 みほの踵落としッッ!! その標的は敵戦車などではなくッ、今自分達が足場としている山ッッ!!

 優花里から教わったポイントにッ、寸分違わず叩き込むッッ!!

 揺れる山ッ、割れる地表ッッ! そしてそこから始まる小規模な土砂崩れッッ!!


「うわああぁぁぁあぁぁぁぁ!!?」

「あ、足場がぁぁぁ!!」

みほ「今です! 敵の混乱に乗じて山を降ります!」


エリカ「おのれぇぇぇ……! 姑息な真似を……!」

まほ「追える車輌から追撃するぞ」

エリカ「私が行きます!」

まほ「頼む。私は部隊をまとめてから追う」

エリカ「はい!」

エリカ「出てきなさいよ西住みほ……! 私が追ってるのよ!」


ナカジマ「こちらレオポン、ティーガーⅡが追ってきてるよー」

優花里「しかしこの地形なら重戦車の足回りなら、下手すれば履帯外れますね!」

みほ「いや………………」バッ

沙織「えっ、みぽりん!?」

みほ「皆はこの先の川まで行ってください。私もすぐに行きます」シュタッ

みほ「私は少し野暮用がありますので」


エリカ「あれは…………ッ!! 停車!」

「え、副隊長?」

エリカ「少し外に出るわ。私が戻ってくるまで1mmたりとも車輌を動かさないで」バッ

「ええっ!?」

エリカ「やっと……やっとよ……!」


 ティーガーⅡから地に降り立つエリカッ! 彼女の前にッ、既にみほは待っていたッッ!!


エリカ「随分と優しいのね。わざわざ相手をしてくれるなんて」

みほ「言ったでしょ。向かってくるなら待ってるって」

みほ「決着……付けたかったんでしょ」


 みほッ、闘気を完全開放ッッ!!!!

 エリカの頬を流れる汗すら蒸発するッッ!!


エリカ「クッ、ッハッハッハッハ!! そう、これよ!! これと――全力のアンタとやりたかった!!」

みほ「お姉ちゃんが部隊を整えてこっちに来るまでに……終わらせる……」

エリカ「ええそうね……私が、アンタを終わらせてやるわ!!」シュンッ

みほ「ッ、消えた……?」

エリカ「遅いッッ!!」

みほ「なッ、後ろ!?」


 みほの背中に一撃ッ! 見開かれるみほの双眸ッッ!!

 速度に重きを置くが故威力は無いッ、しかしッ! みほの驚愕を誘い隙を生むには十分すぎるッッ!!


 本来エリカが得意とする戦いは対一もしくは対多の超速戦闘ッッ!
 
 だがッ、エリカはみほが黒森峰に居た頃ッ、この戦い方はしなかったッッ!


みほ「逸見さんは、お姉ちゃんの戦い方を真似するばかりだと思っていたのに……!」

エリカ「ええ。確かに隊長と隊長の戦い方は憧れよ……けど、それが私の戦い方だとは言っていないッッ!」


 すべてはこの1戦の為ッッ! 逸見エリカはみほの不意を誘うその一撃の為ッッ!!

 一瞬の為に今までを偽ってきたッッ!!


エリカ「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」ズダダダダダッ

みほ「う、ぐっ、がはっ……!」

エリカ「私はアンタを倒すと心に決めていたッッ!」

みほ「いつからッ!」

エリカ「最初からッ!!」

みほ「ッ!?」

エリカ「アンタを見たその時からッ、私はッ、アンタをッ!」


 エリカの拳がッ、蹴りがッ、そのすべてがッッ! みほに入るッッ!!

 時に超速ッ、時に鈍速ッ! しかしみほはそのすべてを受けたッッ!


エリカ「倒したいッ、って!!」

みほ「――ッ!」ガシッ

エリカ「なっ……! 止め、た……」


みほ「言葉は要らないよ……この拳がすべてを語ってくれた」

エリカ「それは……どういう……」

みほ「この拳から伝わってきた……それは怒りや憎しみではなく、悲しみ……」

みほ「ごめんね……エリカさん」

エリカ「ッ、名前――」

みほ「私は黒森峰からいなくなることで、様々なことから逃げていたの……だけど、もう逃げない」

みほ「だから、私はエリカさんからも……逃げない」ギュッ

エリカ「ッ!」バッ


エリカ「嬉しいわね……そう言ってくれるなんて」

エリカ「なら、私もアンタから逃げないッ! 最大の速度で、一瞬で決めるッ!」

みほ「私も、最大の技で……決めるッ!」


 エリカがその場から消えるッ! それは常人にはもはや認識できない超速ッッ!!

 だがッ、みほは微動だにしないッッ!!


エリカ「これで終わりよ、みほッッ!!」


みほ「――――――西住流奥義……徹甲榴蹴88mm」


 エリカは倒れていた。仰向けに。

 みほは立っていた。エリカを見下ろし。

 本気を出され、奥義を使われる。それはエリカにとっての最大の祝福だった。思わず笑みがこぼれた。

 その笑みがまた、みほにとっての最大の祝福であった。


まほ「エリカ」

エリカ「…………」

まほ「敵は?」

エリカ「撒かれました……」

まほ「そうか……立てるか?」

エリカ「はい……」

まほ「見たところダメージは受けていないようだが……」

エリカ「はい。しかし…………私は負けました。完全に」

まほ「…………そうか」

エリカ「(あれだけの奥義を寸止めされた……私は確実に当てるつもりで攻撃したのに……)」

エリカ「格が、違ったのね……」フッ

TODAY HA KOKOMADE


・・・・・・

~川辺~


沙織『(みぽりんおかえり~!)』

みほ「沙織さん、普通に喋ればいいのに」

沙織『(テレパシーって楽しいから!)』

麻子「沙織なに1人でニコニコしている」

優花里「西住殿がひとりで喋ってるように見えますね」


みほ「皆さん無事ですね。カメさんチームは引き続き陽動をしててもらって……私達はこの川を渡ります」

カエサル「大丈夫なのか?」

みほ「レオポンさんが一番上流で、軽い車輌は下流の方で渡ります」

優花里「なるほど! 重い車輌で川の流れを緩めて下流側の負担を軽くするんですね!」

みほ「うん。でもズレたら流されちゃうかもしれないから、皆さん歩幅を揃えて渡りましょう」

桂里奈「頑張るぞー!」

優季「さすがラジオCD3巻でセンター飾った桂里奈ちゃん! かっこいいよ!」


ホシノ「よっ……っと、レオポン渡りますよ~」

そど子「カモチームも入るわよ」

みほ「よし、これなら……」

杏『西住チャン、黒森峰がだんだん近付いてるからお早目にー』

みほ「はい。会長、無理せず状況だけ掴んだら私達と合流することだけ考えてください」

杏『じょぶじょぶ。市街地の手前辺りで合流しよーね』


沙織『(みぽりん、全車川に入ったよ)』

みほ「じゃあ流されないように……」

優花里「西住殿……大丈夫でありますか? 川は西住殿にとって……」

みほ「今日は雨じゃないから。大丈夫だよ」ニコ

沙織「ッ、みぽりん!!」

優花里「武部殿が喋ったァァァァァァァァ!!!!」

沙織「いやいつも喋ってるからね!? って違う! それよりみぽりん、ウサギさんチームとアヒルさんチームがエンストしたって!!」

みほ「ッ!」


桂里奈「う、嘘! 動かないよおぉ!」ガシャガシャ

あや「そんな……ここまできて!?」

梓「…………」チラッ

あゆみ「……」コクッ

梓「うん……隊長、私達に構わず行ってください! このままじゃ黒森峰に追いつかれて全滅します!」


忍「これじゃもうバレーどころか……!」

あけび「ふぇぇぇ……」

妙子「キャプテン、どうします!?」

典子「諦めるな! 西住隊長はまだ諦めていないッ!」


みほ「(2輌エンスト……それに、この川の流れだと……)」

華「みほさん、この川の流れの中で止まったら……!」

カエサル「大変だ! M3が流れに……!」

そど子「若干傾いてない!?」

みほ「(私の戦車道は…………!)」


 みほの脳裏にフラッシュバックッ! それは去年の大会のことッッ!!


みほ「…………!」

沙織「みぽりん、行ってあげなよ」

みほ「えっ……?」


麻子「まだ黒森峰は来ていない。行くなら今だぞ隊長」

華「ここは私達でなんとかしますから」

優花里「西住殿は、西住殿の戦車道を貫いてください!」

みほ「皆…………ッ、ありがとう……ッ!!」バッ

優花里「えっ、西住殿!? 何故ジャケットを脱ぐのでありますか!?」

みほ「流石にジャケットは重いから……制服なら濡れても乾かせばいいし……」

優花里「あのー、ワイヤーとかロープは……」

みほ「大丈夫!」


 みほの大丈夫だという言葉ッ! かつてこれほど頼りになる言葉があっただろうかッッ!

 Ⅳ号の上に立つやいなやッ、準備運動をこなしみほッ、川へダイブッッ!!


ナカジマ「ま、まさか……」

そど子「ウサギさんを押そうっていうの!?」

みほ「その通りッッ!!」


 川を泳ぎッ、M3の後ろへとつくみほッッ!

 そしてッッ!! 両手をピッタリとつけッ、バタ足ッッ!!!! バタ足ッッッッ!!!!!!

 徐々にッ、徐々にッ! 前進するM3ッッ!!


みほ「ふぐああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!!」

典子「なるほど、そういう手もあったかッッ! 近藤ッ、佐々木ッッ! ロープの準備!!」

妙子・あけび「はいっ!」

典子「河西はエンジンに語り掛け続けろ! 3人で八九式を引っ張って来る!!」

忍「はい!!」


 タンクジャケットを脱ぎッ、八九式から飛び出すバレー部の正装たるユニフォーム姿が2人ッ! 体操着が1人ッ!

 3人が八九式の前に飛び込むッッ!!


典子「根性ーーーーーッッ!!」バシャバシャ

妙子「はぁぁぁぁぁぁッッ!!」バシャバシャ

あけび「えええぇぇぇぇぇいっっ!!」バシャバシャ


 バレーのために鍛えた両腕がッ! 水をかくッッ!! クロールッッ!! 3人で八九式を引っ張るッッ!!!!

 動くッ! 動くぞ八九式ッッ!! 今ここにバレー部はみほに匹敵したッッ!!!!


華「やっぱりみほさんは凄いですね。あとバレー部の皆さんも」

麻子「自分でなんでもできるのに、それでも私達を頼って、共に進もうとする……」

沙織「それがみぽりんの戦車道……」

優花里「だからこそ、私達はここまでくることができたんです。そしてこれからも!」

麻子「沙織、皆に指示を出せ」

沙織「うん!」

沙織『(皆さん、ウサギさんアヒルさんと歩調を合わせて、前進!!)』


 黒森峰が遥か後方に見えた頃ッ、大洗は既に川を渡り終えつつあったッッ!

 半分ほど川に浸かっていた車体が徐々に姿を現すッ!


桂里奈「えいっ、えいっ、えいーーーーーっっ!!」ガシャッ

忍「動けええぇぇぇ!!」ガシャッ


 ガコンッ、ブロロロロッ……!


桂里奈・忍「動いたッ!」

みほ「ふぅ…………」ザパッ

梓「隊長ーっ!」ダキッ

みほ「きゃっ、濡れちゃうよ?」

梓「ありがとうございます、隊長っ!」

典子「我々もなんとか復活しました!」ザパッ

みほ「よかった…………黒森峰も迫ってる。すぐに車輌に戻って進みましょう!」

梓・典子「はい!」


・・・・・・


エリカ「…………ここでも甘いのね……でも、今度こそはその甘さが命取りよ」

エリカ「(私は西住みほに勝てなかった……ならばせめて、黒森峰を勝利に導くくらい……!)」

エリカ「撃てッ!!」


 ダァン!! ダァァァン!!


エリカ「チッ、外した……」

まほ「向こう岸には既にⅢ号を1輌配置してある。攻撃はできずとも、あの場所に誘導できるはず…………7時の方向、ヘッツァーだ」

「私が!」ダァン!

杏「ひえぇー! 流石に無理かぁ撤退ー!」


・・・・・・

~橋~


ナカジマ「レオポンは最後に行くんで、皆行ってくださいー」

みほ「ありがとうございます。でも何で最後?」

ツチヤ「へっへっへ~ここが腕の見せ所ってね!」グイッ


 ギャギャギャギャッッ!! ガガガガ!! ガラガラガラ!


優花里「橋が落ちましたね」

みほ「言えば私が砕いたのに」

ナカジマ「いやーこれくらい役に立たないと」

カエサル「しかしこれで奴らよりずっと先に市街地にたどり着けるな」

みほ「はい。相手はもう迂回ルートしか残っていませんから、遭遇戦をやるための準備は整えられます」


・・・・・・

~市街地~


杏「やほー」

みほ「会長、無事でしたか」

杏「どーやらまだ神様は私達に働けっつってるみたいだからネ。それで、これからどーするの?」

みほ「今のうちに準備を整えて、やってきた黒森峰を各個撃破しつつフラッグ車を狙います」

桃「そんなにうまくいくのか?」

杏「河嶋、西住チャンはこう言うよ。そこは戦術と腕かな。ってね」

みほ「あはは……ッ、前方に敵車輌!」

沙織「Ⅲ号だよ! Hかな、Jかな」


みほ「Ⅲ号なら突破できます。後続が来る前に撃破しましょう」

左衛門佐「任されよ! Ⅲ突一番乗り!」

そど子「ああ待ちなさい! こっちだってまだ1輌も倒してないのよ!」

みほ「落ち着いて狙っていきましょう」

典子「よーし覚悟ォ!!」


 Ⅲ号が逃げる先は団地跡ッ! 入り組んだ道を大洗は追うッ!

 そしてッ、ついに追い詰めたと皆が思ったその時ッ! 巨大な影が大洗の前に立ちふさがったッッ!!


そど子「ん? なにあれ……壁?」

梓「いや、違う……!」

沙織「あれって……戦車ぁ!!?」

優花里「マウスですよ!!」


・・・・・・


ダージリン「ついに来たわね……史上最大の超重戦車……」

ケイ「大きくて強いのはいいことよね。アメリカ的じゃない」

カチューシャ「ふ、ふん! あんな図体だけの戦車! ウチのカーヴェーたんの方が頼りになるわ!」

ノンナ「KV-2の全高は3.24m、対してマウスの全高は3.67mと言われていますが」

カチューシャ「んなっ!?」ガーン

ダージリン「カチューシャじゃ背伸びしても届かないわね」

カチューシャ「誰でもそうでしょうが!!」


・・・・・・


優季「あんなのどう倒すのー!?」

柚子「ほ、砲がこっち向いてるよ桃ちゃん!」

桃「桃ちゃん言うなー!」


 ドォォォォォォン!!


優花里「う、撃った! マウスが撃った!」

杏「やーらーれーたー!」

柚子「やられてません!」

桃「近くに着弾しただけです!」

杏「どっちにしろ凄い威力だねェ」


そど子「ぁ……ぐ…………うぅ……! でっかいからって、いい気にならないでよ!! こうしてやる!!」


 仮にも重戦車であるルノーB1bisッ! 主砲と副砲の二門から繰り出される砲弾の威力は勿論高いッ!

 だがッ! それも普通の戦車相手ならのことであるッッ!!

 勇気あるカモさんチームの敢闘虚しくルノーはマウスの砲撃に散ったッッ!!


エルヴィン「流石はマウスだ……」

左衛門佐「おのれカモさんチームの仇ィィィ!!」ダァン!

おりょう「効いてないみたいぜよ!」

カエサル「ッ、急速旋回ッ! おりょう!!」


 カエサルの判断は正しかったッ! しかしッッ! 1歩先を行っていたのはマウスッッ!

 カモさんチームに続きカバさんチームもまたッ、マウスの餌食ッッ!!


エルヴィン「我らの」

カエサル「歴史に」

左衛門佐「今」

おりょう「幕が下りた」


杏「ヒューッ」

みほ「全車後退!!」

杏「……いいや、ここは前進ッ!!」

みほ「か、会長!?」

杏「イイコト思いついちゃった! どーせこんな化物倒せないんだし、ここは私のスーパースペシャルな作戦を聞いてよ!」


杏「いい? ウチらがヘッツァーで突っ込んでアイツの足を止めるから、その間に道を塞いで!」

みほ「それって……」

杏「この狭い道ならマウスは旋回できないでしょ!」


        建物
   ――――――――――――
[大洗]    [亀][マウス]      [Ⅲ号]
   ――――――――――――
        建物


杏「これを……」


        建物
   ――――――――――――
[大洗]  ●[亀][マウス]●     [Ⅲ号]
   ――――――――――――
        建物


杏「こんな風にさ、両隣の団地を崩落させて!」


みほ「でも、そんなことしたら会長達も……!」

杏「やられるわけじゃないし、『ここは任せて先に行けーっ!』ってやつだよ。ほら、敵さんは待っちゃくれないよ!」

みほ「くっ……!」


杏「小山!」

柚子「はい!!」グイッ

桃「本当にやるのか……!」

柚子「やるしかないよ柚子ちゃん!!」

杏「燃えるね」


 ヘッツァー特攻ッ!! ヘッツァー特攻ッッ!!

 マウスの鼻ッ面を潰す特攻ッッ!!


杏「うおっ、上手いことマウスを掬い上げる感じにハマった?」

桃「で、ですが会長……ボディから変な音します!!」

柚子「車内は特殊なカーボンで守られてるんじゃ……」

杏「マウス並の重さは例外かもね」

桃「西住ーーーっ!! 早くなんとかしてくれえぇぇぇーーーー!!」


みほ「ッ! 行きますッッ!!」シュンッ


 みほッ、建物の壁で全力ダッシュッッ!! まるでそこが床であるかの如くッ、垂直の壁をダッシュッッ!!


みほ「華さん、そこからⅢ号狙えますか!?」

華『やってみます』


 ドォン!!


華『敵戦車撃破です!』

麻子『なんかすごくフラフラとした運転だったな』


みほ「よしッ、なら……ここでッッ!!」

みほ「西住流榴弾蹴りッッ!!」


 たった今まで足場にしていた団地の壁を強く蹴るッ! それも1度や2度ではなくッ!!!


みほ「反対側の建物も……! ぜぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


 2つの建物の間を蹴りによって跳躍ッ!! まるでボーナスステージにハマったピンボールのように行ったり来たりのバウンドッッ!!

 みほの蹴りをまともに受けた鉄筋コンクリートが無事であるハズもなくッ!! 建物はガラガラと轟音を立て崩落ッッ!!

 積み上げられた瓦礫はマウスの退路を塞いだッッ!!


杏「いいねーぇ! こっちもだよ!!」

みほ「はいッ!」


 同じことが繰り返されるッッ!! ヘッツァーの後ろでッ! 杏の笑みの後ろでッッ!! 瓦礫が舞い降りたッッ!!


みほ「…………」シュタッ

華「おかえりなさい、みほさん」

優花里「これでマウスを封じましたね……!」

沙織「会長達も…………しかもヘッツァーに無線通じないよ……」

麻子「あんな巨体の下敷きなったんだ。無線機のひとつやふたつ壊れるだろう」

優花里「武部殿、せめてテレパシーで我々のことを伝えましょう!」

沙織「っ、うん! そうだね!!」


沙織『(会長、小山先輩、桃ちゃん先輩! 後は任せてください!!)』

杏「お、テレパシー受信。こっちは車輌自体がオシャカになっちゃったから返せないけど」

桃「まさか道が塞がった途端ヘッツァーから白旗とは思わなかったな」

柚子「まぁかなり無茶しちゃったし。マウスの人達がすぐに下がってくれて助かったね」

杏「ありがとねー!」

「うるさい! お前達のせいで出られなくなったじゃないかぁぁぁ!!」


・・・・・・


『こちらマウス! 申し訳ありません、道を塞がれ脱出不能!』

エリカ「マウスが……!?」

まほ「虎の子だったが……仕方ない。結果的に3輌撃破だしな」

まほ「まさか倒さずに封じることで退けるとは……あとは地力の勝負になるぞ。皆、気を引き締めて行け」

「「「「「はっ!!」」」」」


梓「こちらウサギチーム、黒森峰……あと3分ほどで到着します」

みほ『了解。それでは皆さん……これより最後の作戦、ズタボロ作戦を開始します!』


・・・・・・

~予告~


しほ蔵「皆さん、いよいよお別れです!」

しほ蔵「学園を廃校から守る大洗は大ピンチ!」

しほ蔵「しかも、戦車から生身で飛び出したまほが、みほに襲い掛かるではありませんか!!」

しほ蔵「果たして、大洗女子学園の運命や如何に!?」

しほ蔵「戦車武闘伝Gパンツァー最終回! 『あんこうチーム大勝利! 希望の未来へパンツァーフォー!!』」

今日はここまで
ぶっちゃけこの予告をやりたいためにこのスレを建てたくらいである


・・・・・・

~別バージョン~


しほ蔵「あぁ、最早何も言うまい」

しほ蔵「語るべき言葉ここにあらず。話すべき相手ここにおらず」

しほ蔵「戦車女子、ただ前を向き、ただ上を目指す」

しほ蔵「ただ前を向き、ただ上を目指す」


・・・・・・

~市街地住宅街~


みほ「来た……」


まほ「いたぞ。各車、市街地で障害物が多い。よく狙って撃て」

エリカ「逃げ回られると厄介です。すぐに仕留めましょう」

まほ「ああ」


みほ「皆さん、キツい作戦にはなりますが……準備はいいですね?」

ナカジマ「初参戦でここまで来られただけで御の字だよ。あとは力尽きるまで走り続けるだけってね」

典子「八九式で抜けない装甲でも、このバレーボールなら……!」

梓「私達だって……!」

みほ「おそらく敵フラッグ車は私達を狙ってきます……皆さんは各々、黒森峰を挑発して戦力を分散させてください!!」


梓「ズタボロ作戦……相手をズタボロにする作戦……」

優季「でも、あの黒森峰にそんなことできるの……?」

梓「多分、できるかどうかじゃないよ。ズタボロ作戦、それはこっちがズタボロになっても絶対やり遂げなくちゃいけない作戦だから……!」

梓「私達の立ち位置……それは、きっと!」

桂里奈「きっと?」

梓「隊長、エレファント、ウサギチームが引き受けます!!」

あや「ええぇぇぇえ!!?」

みほ「………………お願い」

梓「はい!」

桂里奈「ちょ、ちょっと目標大きすぎない?」

梓「私達は西住隊長みたいに戦術と腕が立つわけでもないし、生身で戦車に立ち向かえるわけでもない……でも、普通には普通の戦い方があると思うの!」

あや「でもエレファントって、重戦車じゃん! リスク大きすぎない!?」

沙希「リスクやマイナスならば起爆剤さ」ボソッ

あゆみ「ッ、沙希が喋った!!」

梓「しかも3番……! 勝てるってことだね、沙希!」

沙希「……」コクッ

梓「皆、私達の意地見せようよ!」

「「「「「ッ、うん!!」」」」」


ナカジマ「ウチらはとっとと例のポイントへ……」

ホシノ「作戦通り、隊長がフラッグ車を引っ張ってきてくれれば」

スズキ「出番、だね」

ツチヤ「燃えるぅ~!!」


典子「私達はあのティーガーⅡやパンターの一団を担うぞ!!」

妙子「だ、大丈夫なんですか!? 八九式であんなのと当たるなんて……」

典子「近藤、お前ならできる! あの88mm砲を受けることが!!」

妙子「はい!! やってみます!!」

典子「敵の砲撃をブロックしている間、佐々木が戦車の中からバレーボールをトス! 私がアタック!! 敵戦車は破滅ッ!!」

あけび「全力のトス、上げます!」

典子「河西、近藤1人ではすべての砲撃を1度には受けきれない……準決勝でも見せたお前の八九式フットワークを見せてくれ!!」

忍「はい! 1撃たりとも貰いません! 3人共、頑張って!!」

典子「よーーーーーーーーーし!! バレー部ファイッ!!」


・・・・・・


 こうしてズタボロ作戦ッ、捨て身の囮作戦が開始されたッッ!!

 ウサギとアヒルの役目はⅣ号に迫る戦力を分散させることッ!

 Ⅳ号の役目は敵フラッグ車――西住まほのティーガーⅠを引き寄せることッ!!

 そしてレオポンの役目はフラッグ車同士の戦いに何者も介入させないことであるッッ!!


みほ「ウサギさんとアヒルさんがこっちに戦力をかなり削ってくれた……あとは」

ナカジマ『こちらレオポン、そろそろ例のポイントに着くよ』

みほ「こちらもです」

ナカジマ『こりゃ、タイミングドンピシャかな?』

みほ「(お姉ちゃんも、私にピッタリくっついてきてくれてる……これなら!)」


エリカ「……おかしい…………隊長と私達の距離が離れすぎている……それにこの先は学校跡」

エリカ「地図によればこの学校、特殊な形状で戦車が入れるような出入り口が一つ……ッ、まさか!」

エリカ「隊長、これは罠です! すぐに速度を落として複数で追いましょう! このままでは隊長1輌だけが誘い出されます!!」

まほ『…………』

エリカ「隊長!」


みほ「見えた、学校跡! ナカジマさん!!」

ナカジマ「あいよ!!」


 出入り口が1つしかない袋小路の校舎にⅣ号が入り続けてティーガーⅠが入るッッ!!

 続こうとしたエリカ達ッ、だがッ、通路を塞ぐようにレオポンのポルシェティーガーが割って入ったッッ!!


エリカ「やはり罠だった!」

エリカ「ッ、まさか隊長は分かって……わざと1対1に……」

ナカジマ「ここから先には行かせないよ~」ダァン!

エリカ「ならば、私は見届ける……隊長と、みほの戦いを…………そのために、そこを通しなさいこの失敗兵器ッ!」ダァン!


・・・・・・


典子『こ、こちらアヒルチーム……バレー部…………バレーボールでパンターを倒すも、ティーガーⅡの装甲は抜けず……やられました』

梓『ウサギチーム、エレファントとヤークトティーガーしかやっつけられませんでしたすみません! あとはお願いします!!』

沙織「みぽりん!」

みほ「…………」コクッ


まほ「西住流に逃げるという道は無い。ここで決着をつけてやる」

みほ「望むところです」

まほ「みほ、お前のとった作戦……仲間達の犠牲の上に成り立つこの状況……お前が嫌っていた、勝利のために犠牲を厭わない西住流そのものだとは思わないか?」

みほ「確かに、そうかもしれない……けど、私は……皆の頑張りを無駄にはしないッ!」

まほ「フッ、ならば語るまいッッ!!!」


 こうしてⅣ号とティーガーⅠッ、1対1の戦いは始まったッ!! 両者実力は拮抗ッッ! 決定打に欠けるままッ、時間だけが過ぎていくッッ!!

 ナカジマからついにポルシェティーガーが弁慶よろしく力尽きたという連絡が入ったときにはッ、既に校舎には無数の流れ弾の跡が生まれていたッッ!!


ナカジマ『こちらレオポン、なんかねー黒校が無理やり乗り込んでくるみたいだよ』

みほ「(援軍が来る……もう時間が……ッ!)」

みほ「皆、次で決めます……!」

みほ「敵に撃たせて、次弾が装填される間に後ろに回り込んで接射……いきますよ」

沙織「聖グロの時にやろうとしたやつだね!」

みほ「あの時は横に止めたけど、今度はもっと回り込むから……麻子さん、行けます?」

麻子「履帯切れるぞ」

みほ「大丈夫!」

麻子「オッケー」

みほ「優花里さん、装填時間もっと速めで!」

優花里「はいっ! お任せください!!」

みほ「多分相当揺れるから装填も不安定になる……沙織さん、優花里さんを支えてください」

沙織「任せてみぽりん!」

華「行進間射撃でも構いませんが、ナオミさんも言っていました……確実に撃破したいならしっかり止めて撃て。と……少しでいいです。停止射撃の時間をください」

みほ「分かりました! …………それじゃあ、行きますよ……!!」


 そしてッッ!! 物語は冒頭へと巻き戻るッッッッ!!!!


・・・・・・

~回収車~


 脱落した大洗の生徒達は会場の大型スクリーンで試合の様子を食い入るように見つめていたッ!

 そして丁度ッ、画面には遅れてやって来たエリカのティーガーⅡと駆け付けたレオポンの面々ッ、白旗を挙げるⅣ号・ティーガーⅠの姿が映し出されるッッ!!

 無論ッ、あの2人の姿もッッ!!!!!


梓「西住隊長が、闘ってる!!」

ねこにゃー「西住さん……もう、戦車の戦いは終わったのに……」

杏「いいや、まだ勝ちとも負けとも引き分けともアナウンスされてない…………多分審判も困ってるんじゃない?」

カエサル「それにしても、一瞬でも早く走行不能になればどちらかの勝ちだったのに、まさか計測判定でコンマですら全く同じ時間に上がったとは……」

そど子「まるで運命ね……」

典子「殺し合いじゃない……生身の決闘……」

梓「…………できない…………私、ここでただ見ているなんてできない!!」ダッ

カエサル「のわっ、ウサギさんチームが走り出したぞ! 我らも続けー!」

ねこにゃー「ボク達も……!!」

そど子「私達だって!」

典子「隊長の根性、見届けにいくぞ!!」

杏「ありゃ、皆行っちゃった……それじゃ、私達も行こうかねェ」


・・・・・・


エリカ「隊長……」

みほ「はぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!! 西住流機銃爆蹴ッッ!!!!」

まほ「フッ、突きの速さ比べか……ならばッ、西住流千手観音ッッ!!」


 入り乱れるみほの蹴りとまほの拳ッッ!!


まほ「お前は相変わらず蹴りだけか! 淑女らしくないな!!」

まほ「(思えば、まだ西住流の修行を始めた頃……私が拳を鍛えているときにみほはまるで反抗するように蹴り技ばかりを覚えていったな)」

まほ「(いつも私の後をくっついてきたみほの、初めての姉離れ……嬉しいようなさみしいような気分で私も拳の技ばかり極めるようになった……)」

まほ「(そして、それは今も変わらんッ!!)」


 みほの超高速連続蹴りは常人ならば瞬きする間に蜂の巣であるがッ、まほのラッシュはそれ以上の迅さッッ!!

 次第に受けられッ、いなされッ、みほの額に汗がにじむッッ!


まほ「その程度かッ!!」ドゴォッ

みほ「ぐ、ふぅ――ッ!」


 ついにッ、みほの腹部へともはや視認不可速度の拳がめり込むッ!! 臓器が強制的に押し上げられ胃液が逆流ッッ!!


みほ「おっ……ごはっ……!」

まほ「この前からまるで強くなっていないようだな……私に当てるどころか、掠りもしないとは……」

みほ「――フッ……」


 その瞬間ッ、まほの被っていた軍帽が弾け飛ぶッッ!

 否ッ、軍帽だけではないッ! ジャケットがッ、スカートがッ、ソックスがッ! まるでカマイタチでも受けたかのように切り傷を負っていたッッ!!


みほ「私だって、ただ戦車に乗って大洗で過ごしていたわけじゃない……鍛錬を、積み直したッッ!!」バキィッ

まほ「ぐあぁぁっ!!」

エリカ「隊長!!」


みほ「そしてッ、今ッ、私は超えるッッ!! この蹴りでッッ!!」

エリカ「あれは……私に放った……!」

みほ「西住流奥義…………徹甲榴蹴アハトアハ――」

まほ「甘いな、みほッッ!!」ガシッ

みほ「なっ……!」

エリカ「振りかぶった脚とは違う、軸足を掴んで、投げた!?」

まほ「そして、空中なら避けられまいッッ! 奥義なら、私にもあるのだ!」フォオオオォ

まほ「西住流奥義、徹甲榴拳ッッ!!」


 放たれるまほの奥義ッッ! みほッ、腕でガードの体勢に入るがッ、まほは腕ごといった――ッ!!!!

 ガードの上からみほを襲う重い一撃ッ!! 吹っ飛びッ、Ⅳ号へと叩きつけられるッッ!!

 体が言うことを聞かないッ! 今は痛みに悶え声をあげることしかできないのかッッ!


みほ「がはぁぁぁッ!! う、ぐぁ……!」

まほ「私に寸止めは通用しない。もっとも、確実に当てる気で来ても、届きはしない」スタスタ

みほ「こ、れが……お姉ちゃんの88mm…………」

まほ「誰が今のをアハトアハトだと言った」

みほ「な……っ!」

まほ「今のは45mmだ」


みほ「ぐっ……!」バッ


 みほはゆっくりと歩み寄る姉に今までにない強い脅威を感じたッ!

 その証拠にッ、体は咄嗟にⅣ号からシュルツェンを引きはがし盾代わりにしようとしているッッ!!


まほ「それで盾のつもりかッ! ならば、正面から切り裂くッッ! 西住流履帯切断刀ッッ!!」


 まほの手刀が構えられたシュルツェンを十字に切り裂くッッ!!

 すかさず放つは先ほどの奥義の構えッッ!!


まほ「徹甲榴拳、75mmッッ!!」ドゴォッ


 だがッ、まほの手に伝わってきた感触はッ、肉と骨ではないッッ!!

 冷たく硬い鉄ッ、Ⅳ号であるッッ!!

 西住流奥義をモロにくらいッ、吹き飛ぶⅣ号ッッ!! 校舎の壁に埋まったッッ!!


沙織「ひぃぃぃぃ! お、降りてよかったぁ……!」

優花里「西住殿は!?」

華「シュルツェンの影を利用して避けたみたいです」

麻子「あんなの人が喰らったら消し飛ぶぞ……」

ナカジマ「うわぁ……」

ホシノ「直すのに時間かかりそうだね」


梓「西住隊長ー!!」タッタッタ

沙織「皆!」

カエサル「隊長はまだ戦っているのか!?」

華「はい……まだ、みほさんは負けていません」

左衛門佐「なっ、Ⅳ号が壁にめりこんでいるぞ!?」

桃「に、西住ぃぃー!!」


みほ「う、うぅ…………」

まほ「どうしたみほ、臆したか。この私にッ」

みほ「う……は、はははは…………あはははは!!」バッ

まほ「ッ、そうだ! もっと撃ちこめッ!!」

みほ「楽しいね、お姉ちゃんッッ!!」

まほ「そうだな、みほッッ!!」

みほ・まほ「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!」ズドドドドド

優花里「に、西住殿達が、空にッ!」


 怒涛のラッシュの応酬ッ! 2人の戦いの舞台は地上じゃ物足りねぇッッ!!

 いつしか校舎を足場にして跳びッ、その勢いを利用して空中でぶつかり合うようにッッ!!


みほ「もっとッ、もっと高くッ!!」バッ

まほ「もっと高く跳べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッ!!」バッ


 両者が高くッ! 蒼天へッッ!!


麻子「しまった、2人が見えなくなった……」

そど子「高く跳びすぎよ!!」


まほ「みほォォォォォッッ!! 貴様に勝つッッッ!!」

みほ「負けるわけにはいかないッ! お姉ちゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッッ!!」

みほ・まほ「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!!!!!」


みほ「西住流ッ、榴弾蹴りィィッッ!!!!!!」

まほ「西住流ッ、徹甲拳弾ッッ!!」


 空中では避けようがないッ! 互いにノーガードで技をめりこませるッッ!!

 ボディに入る蹴りと拳ッ!! 吐かれた血はどちらの魂かッッ!!


みほ「お姉、ちゃん……」ガクッ

まほ「み、ほ……」ガクッ


 互いに空中で気を失う2人ッ! ただ地上へと落ちるのみッッ!


 轟音と共に元居た場所へ――皆の見守る戦場へと舞い戻るッッ!! しかしッ、無防備な着地ッ! 意識も無しに受け身など取れぬッッ!!

 出来上がるクレーター2つッ、互いにまだ目覚めないッッ!!


沙織「みぽりん、気絶してない!?」

エリカ「隊長、意識が……!」

華「両者気絶…………今度こそ、引き分けですか……?」

亜美「いいえ、まだよ」

優花里「なっ、蝶野亜美一等陸尉殿!!」

麻子「審判長がここにいるということは、まだ終わってないな……」

亜美「2人は起き上がるわ。西住流は、必ず白黒つく。だって、2人は西住流の子だから」


・・・・・・


『西住隊長! これのやりかた教えてください!』

『みぽりん、お菓子食べようよ!』

『西住チャーン、今日は皆であんこうフルコースだよ!』

『みほさん、一緒にテスト勉強しましょう』

『西住殿、やっぱり戦車は素晴らしいでありますぅ~!』

『ハロウィンの仮装どうする?』 『ねぇ、クリスマスケーキ食べようよ!』 『初詣なら磯前神社かな』 『ねぇバレンタイン誰にあげるの~?』


みほ「――――ッ、ハッ!」

みほ「今のは…………夢…………これからの……」


・・・・・・


『西住のお子さん、またお姉さんが賞をとったそうよ』

『やはり、才能はまほに……』

『みほがいくら頑張っても、まほには勝てないのかしら』

『いいえ、みほには戦車道の才能があります。まるで、戦車道をやるために……』

『あ、お姉ちゃんまたアイス当たりだ! いいなぁ』

『みほの方こそ、いいなぁ』

『え、なんで?』


まほ「……………………ッ、う……」

まほ「昔の、夢…………か……」


みほ「なんか、良い夢見させてもらったなぁ……でも、あれはただの夢…………夢なの……あれを現実にする……ッ!」ムクッ

まほ「そうか……私は囚われているのか……過去に…………みほに……ならば私は解放する……私自身をッ……」ムクッ

エリカ「起き上がった……!」


みほ「だからぁッ!!」

まほ「故にッ!」

みほ「突き進むッッ!!」

まほ「切り拓くッッ!!」

亜美「(両者奥義の構え……これは、次で決まりね)」


みほ「……………………………………西住流……」

まほ「奥義……………………………………」

亜美「皆、来るわよ! 伏せて!!」


みほ「徹甲榴蹴ッッッッ!!」

まほ「徹甲榴拳ッッッッ!!」

みほ・まほ「アハトアハトォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!」


 激ッ突ッッッッ!!!!!!!!

 大気は震えッ、周りの建物が軋むッッ!! ガラスが割れるッッ!!

 激突によって出来たクレーターッ、半径10m深さ1mッッ!!

 2人の技がッッ、闘気がッッ、小さな台風となるッッ!! 風速約30mッッッッ!!


沙織「きゃああぁぁぁぁぁっ!」

典子「と、飛ばされるッッ……!」

亜美「皆、しっかり! 黒森峰の皆も気を確かに持って!」

エリカ「くっ……分かってるわよ!」

ゴモヨ「きゃあぁぁぁあ!!」

そど子「ゴモヨ!!」パシッ

麻子「そど子、捕まれ! 2人とも飛ばされるぞ!!」


みほ「ぐっ、やはり……つ、よい……!」グググッ

まほ「どうしたみほッ、その程度かッ!! お前の覚悟はッッ!!」グググッ

みほ「否…………ッ!! 私は越えるッッ、お姉ちゃんをッ、西住まほをッッ!!」

まほ「ぐぅっ……!?」

みほ「正面ッ、かッ、らぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


 打ち砕くッッ!! それのみッ!! 拳をッ、蹴りでッッ!!


まほ「な――ッ!!」

みほ「これでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ最後だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!!!」


 西住流奥義徹甲榴蹴ッ! 拳を砕いたッッ!!

 そしてッ、みほの足はッ、まほへッッ!!!!!


みほ「ああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァァァァァァァッッ!!!!」

まほ「う、ぐあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!」


 まほが飛ぶッッ! 叩きつけられるッッ!! 壁にッッ!!


まほ「が……………………はっ……」ドサッ

みほ「…………………………………………これ、で…………」ドサッ

沙織「みぽりん!!」ダッ

エリカ「隊長!!」ダッ

みほ「来ないでッ!」

まほ「来るなッ!」

桃「なっ、まだ立つのか!?」


みほ「……………………」ムクッ

まほ「……………………」ムクッ

みほ「がふっ……」ヨロヨロ

まほ「ごふっ……」ヨロヨロ


 おぼつかない足取りで両者ッ、再び距離を縮めるッッ!!

 互いの目は霞みッ、殴ることもッ、蹴ることもッ、できないッッ!

 だがッ、それでもやらねばならぬことがあるッッ!!


みほ「……」ザッ

まほ「……」ザッ

みほ・まほ「……ありがとうございましたッッ!!!!」ペコッ


 礼ッッッッ!!!!


亜美「戦車道は礼に始まり、礼に終わる…………どうやら決着がついたようね」

沙織「え、どっちが勝ったんですかアレ!?」

梓「終わったのなら、私達がすることはひとつです!」

カエサル「ああ、行こう!」

典子「隊長ー!!」

ねこにゃー「西住さーん!」

そど子「西住さんー!」


まほ「みほ……………………」

みほ「うん……」

まほ「優勝、おめでとう……」フラッ

みほ「ッ、お姉ちゃん!」ダキッ


 前のめりに倒れかけるまほを抱きとめるみほッ! もうそこに闘気は存在しないッッ!


まほ「敗北とは……いいものだ…………自分が認めたくなかったものを、沢山……認めることができる…………」

まほ「みほ……お前は、私が羨ましかったり……私に嫉妬したりしたことはあったか……?」

みほ「…………うん、たまに……」

まほ「そうか……私もだ。私もみほが羨ましかった……私よりも戦車道の才能のあるみほに……嫉妬していた……それは、拳を通じて伝わってしまったかな」

みほ「うん…………だけどそんな、なんで……私には才能なんて……」

まほ「あるさ……」フフッ

まほ「だから、お前に負けないようにと……修練を積んだ……無駄なものは削り取ってきた…………だが……それでも負けた」

まほ「完敗だな……ふふっ」

みほ「お姉ちゃん……!」


「みぽりん!」 「西住殿!」 「みほさん!」 「西住さん!」 「西住!」 「西住チャン!」 「西住隊長!」 「隊長!」 「先輩!」

みほ「みんな……」

まほ「…………それが……お前の戦車道、というわけか……」

みほ「うん…………やっと、見つけたの……私の戦車道」

まほ「そうか。めでたい…………っ、眩しいな……夕日…………だが、美しい……」

みほ「そうだね……建物、壊しちゃったから……すごくきれい……」

まほ「なにを泣いている」

みほ「だって……!」グスッ

まほ「ならば…………」


みほ・まほ「流派、西住流は!」

みほ「王者の風よ!!」

まほ「撃てば!」

みほ「必中!」

まほ「守りは!」

みほ「硬く!」

まほ・みほ「進む姿は乱れなしッッ!!」

まほ・みほ「見よ、熊本は赤く燃えているぅぅぅぅぅぅぅぅッッ!!」

まほ「――――――っ……!」ガクッ

みほ「ッ、お姉ちゃん!」

まほ「………………」

みほ「お姉ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!!!!」


亜美「…………本来、戦車道の試合において、相手フラッグ車を倒せば勝ちですが……」

しほ蔵「待たれよ」シュンッ

亜美「ッ、何奴!」

梓「しほ田さん!」

亜美「しほ田……?」

しほ蔵「ふっ……」スルスル


 バッ!!


しほ「この勝負、西住みほの勝ちであるッ!」

亜美「なっ、あなたは……!」

沙織「誰?」

みほ「お母さん……」

優花里「に、ににに西住殿のご母堂!? つまり西住流家元、西住しほ殿ッッ!!」


しほ「みほ……」

みほ「…………」

しほ「優勝おめでとう」

みほ「…………ねぇ、お母さん……聞いていい?」

しほ「ええ」

みほ「どうして……私に……私達に色々としてくれたの?」

しほ「…………」

みほ「西住流家元として、西住流に反した私は絶対に許せないはずなのに……」

しほ「ええ。家元としてならあなたの行いは到底許せるものではありません。だけど…………」

しほ「子の心配をしない親などいません」

みほ「ッ……!?」


しほ「そして場を収めるのもまた、親の務め……私はまほを病院へ連れて行きます。みほ、あなたは隊長として、最後まで務めを果たしなさい」スタスタスタ


 まほを抱きかかえ去ろうとするしほッ! それを止めるはみほの声ッ!


みほ「あ、あの……お母さん!」

しほ「…………」

みほ「ありがとう…………」

しほ「私は何もしていないわ。あなたが強くなったのは……あなた自身の力よ」


亜美「どうやら勝敗は、決まっているようね」スゥーーッ

亜美「大洗女子学園の勝利ッッ!!」


 蝶野亜美の言葉ッ、沸き立つ観客席ッ、立ち尽くす両チームッッ!!


・・・・・・


ダージリン「やったわね、みほさん」ニコ

オレンジペコ「やりました! やりましたね!」

ケイ「コングラッチュレイション!」

ナオミ「いい射撃だったわよ、華」

アリサ「当然ね!」

カチューシャ「ハラショー!」

ノンナ「Поздравляю!(おめでとうございます)」


・・・・・・


みほ「勝った…………」

桃「か、勝った!?」

柚子「そうだよ桃ちゃん!」

杏「優勝ダネ!!」

典子「やった……これでバレー部復活だ!!」

あけび「やりましたねキャプテン!!」

ねこにゃー「…………あんまり、役に立てなかったけど……」

沙織「みぽりんはそんなこと思ってないよ。アリクイさんがいたおかげで、皆のおかげで勝てたって……きっとそう思ってる」

ねこにゃー「そう、かな……」グスッ


エリカ「…………」スタスタ

みほ「あ、エリカ……さん……」

エリカ「…………ふっ、次は負けないわよ」

みほ「ッ、はいっ!!」

エリカ「おめでとう……」

みほ「……」

エリカ「あ、そうそう。小梅から伝言なんだけど」

みほ「小梅さん!?」

エリカ「『去年はありがとう。みほさんが戦車道をやめないでよかった』って」

みほ「小梅さんは?」

エリカ「今頃回収車でしょうね。後で自分で会いなさい」

みほ「うん!」

エリカ「それじゃあね」

みほ「はい! また!」


・・・・・・


『優勝、大洗女子学園!!』


 こうしてッ、戦車に懸ける熱き戦いは幕を閉じたッ!!

 勝利した大洗を迎えたのは万雷の拍手と称賛の声ッ、おめでとうッ!! おめでとうッッ!!

 あんこうがッ、カメがッ、アヒルがッ、カバがッ、ウサギがッ、カモがッ、レオポンがッ、アリクイがッ、全霊でそれを受け止めるッッ!!!!

 なびく優勝旗ッ! それはッ、みほの戦車道のッ、証明の印でもあったッッ!!!!


・・・・・・

~大洗駅~


杏「皆、これで学園無くならずに済んだワケだけど……ここは優勝の立役者様にシメてもらおうね!」

みほ「えっ、私ですか?」

柚子「うん! 西住さん、おねがい!」

桃「ざっ゛ざどじめ゛ろ゛」ズピー

みほ「え、ええっと…………じゃあ、家に帰るまでが戦車道です!」

沙織「遠足かっ!」

みほ「う、じゃあ……皆さん、パンツァーフォー!!」

「「「「「おおおおおーーーーーーーーーッッ!!!!」」」」」



 ~完~

>>458
×麻子「そど子、捕まれ! 2人とも飛ばされるぞ!!」
○麻子「そど子、掴まれ! 2人とも飛ばされるぞ!!」

これで終わりです。自分なりに男性ホルモンを燃焼させまくって書きました。少しでも楽しんでいただけたら幸いです
読んでいただきありがとうございました

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月02日 (水) 16:57:24   ID: BYh2Zrvn

へへっ、分かる?2度目はこだまよ。谷間でほらぁ…… ←プレデターww

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