橘ありす「頭を撫でるの禁止です」 大石泉「!?」 (28)

前作 渋谷凛「年越し」大石泉「と」橘ありす「初詣」佐城雪美「……?」(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1451574883
の続きですが、読まなくてもだいたい話は理解できるんじゃないかと思います
あと今回いつもよりコメディ寄りです

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1454274712

ありす「……今年の私は一味違う」

ありす「今年こそは大人になろう……そうお正月に誓ったから」

ありす「……誓ったまでは、よかったんだけど」

ありす『撮影、うまくできました』

泉『よしよし、偉いわ』ナデナデ

ありす『あうぅ』



ありす『公演のリハーサル、セリフを噛んでしまいました……』

泉『大丈夫。昨日の練習ではうまくやれたんだから、本番でできないロジックはないわ』ナデナデ

ありす『はうぅ』



泉『ありすちゃん、先週の学校のテストどうだった?』

ありす『クラスで1番でした』

泉『賢いのね。感心、感心』ナデナデ

ありす『えへへ』




ありす「思い出すと泉さんに頭を撫でられてばかり……完全に子ども扱いされている」

ありす「褒めてくれたり、励ましてくれたりするのはうれしいけれど……」

ありす「というか、なんであの人私のテストの点数まで把握しようとしてるんだろう。あれじゃ本当にお姉さんみたい……」

ありす「……やっぱり、どんどんナデナデがエスカレートしてる。このあたりではっきりと断らないと。大人になるために」



泉「おはよう、ありすちゃん」

ありす「ひゃっ!?」

泉「……どうしたの?」

ありす「い、いえ。なんでもありません」

ありす「あの……聞いてました?」

泉「聞いていたって、なにを」

ありす「いえ、聞いていないならいいんです」

泉「?」キョトン

泉「そういえば、この前算数のテストがあったらしいけど……」

ありす「ああ、あれですか。簡単だったので、100点を取れました」

泉「ちゃんと勉強もしているのね。偉い偉い」ナデナデ

ありす「あう……と、当然です。アイドル活動も大事ですけど、勉強だって大事ですから」

泉「ありすちゃんはしっかりしているわ」ナデナデ

ありす「そ、そうでしょうか……えへへ」

ありす「(……って、これじゃいつもと同じ!)」

ありす「あの」

泉「なに?」ニコニコ

ありす「……手、どけてもらえませんか」

泉「手……あ、ごめんなさい。ちょっと長い間撫ですぎちゃったかも」

ありす「いえ、時間の問題じゃなくて……今後は、一切撫でないでもらえると助かります」

泉「え……」ピク

ありす「その、えっと……とにかく、もう絶対撫でないでくださいっ。困るので!」

ありす「(下手に撫でられると気持ちが揺らいじゃうから、これくらいはっきり言わないと)」

ありす「では、私は失礼します」


ガチャ、バタン


泉「………」

泉「………」

ガチャリ


凛「おはようございます……泉? どうしたの、そんなところに突っ立って」

雪美「おはよう………?」


泉「………」


凛「微動だにしない……泉、ちょっと?」ブンブン

泉「………」ハッ

凛「よかった、気づいた」

泉「」ガクン

凛「と思ったらいきなり膝から崩れ落ちた」

泉「す、すみません……あまりのショックで、放心状態に」

凛「ショック……何があったの?」

凛「プロデューサーにチョコレート盗られた? プロデューサーに大事にとっておいたケーキを食べられた? それともプロデューサーにセクハラされた?」

泉「凛さんは普段プロデューサーのことをどう思っているんですか」

雪美「P……信用、されてない……?」

凛「ふーん。ありすに頭を撫でるなって言われたんだ」

泉「はい……」ショボーン

泉「嫌われたのかな……」

凛「いや、どうせいつもの大人になりたい病だと思うけど」

凛「だいたい、今までだって『撫でないでください』って言われるだけは言われてたじゃん」

泉「今回は『絶対に撫でないで』とはっきり拒絶されたんです」

泉「そんな風に言われてしまったら、もう撫でるわけにはいかなくなります」

凛「真面目だね……じゃあ撫でなきゃいいのに。ね?」

雪美「………」コクコク

泉「理屈で考えればそうなるんですけど……でも、褒めたいじゃないですか」

凛「ありすを?」

泉「ありすちゃんを」

泉「アイドルの忙しさにも負けず、学校のテストでいい成績をとった時とか、よく頑張ったわね、と褒めたくなりませんか」

凛「そうかな」

泉「そうですよ。なかなかできることじゃないんだから」

凛「でも、成績がいいのは泉も同じでしょ。自分だってできてるんじゃないの?」

泉「それはそうですけど……普通は、アイドルと学業の両立が難しいということは理解しているつもりですし」チラチラ

凛「なんで遠慮がちに私を見るの?」

泉「いえ、別にそんなつもりは」

凛「はいはい。どうせ私はたいして成績よくないですよ。いつも平均行ったり来たりだし」

泉「う……まあ、そのぶん私達の中では一番売れているじゃないですか」

凛「それも微々たる差だしねー」ジトー

雪美「私……テスト……できる」ブイ

泉「偉いわ」ナデナデ

雪美「照れる………」

凛「どうにも私の周りには勉強ができる子が多い……仲間が欲しい」

凛「どこかにいないかな――」


さくら「凛さん! 安心してくださぁい、わたしも成績あんまりよくないです!」ニコニコ

さくら「それでもなんとかイズミンやアコちゃんと同じ高校に通えることになったので、きっと大丈夫でぇす!」

凛「さくら……よかった。いたんだね、私の仲間」

さくら「凛さん!」

凛「さくらっ」

がしっ(握手)


雪美「友情………」

泉「お互いのためにならなさそうな団結はどうなんだろう」

泉「それに、多分凛さんとさくらの間にはワンランク学力の差があるような……」



未央「なになに、何してるのー? 友情を確かめ合ってるんなら私も仲間に入れてー」

凛「成績のいい人はあっち」

さくら「仲間にはできません♪」

未央「えぇ~!?」

翌日


P「ありす。この前の収録、スタッフの人に褒められてたぞ」

ありす「そうなんですか。まあ、自分でもうまくできたとは思っていましたけど」

P「あの女ディレクターさん、気に入った子の名前はよく覚えてくれるからな。お手柄だぞ」ナデナデ

ありす「い、いきなり撫でないでください……」

P「ごめん、つい」ナデナデ

ありす「もう……しょうがない人ですね。今回だけですよ?」



泉「………」ジーーー

ありす「それじゃあ、私は用事があるので帰ります」

P「お疲れ様。気をつけて帰るんだぞ」

ありす「はい」


ガチャ、バタン


泉「………」ジーー

P「……泉? どうしたんだ、そんな睨んできて」

泉「………スケベ」ムスッ

P「なっ!?」

スタスタスタ……


P「行ってしまった……いったいどうしたというんだ」

P「さっきまで俺がしていたことと言えば、ありすを褒めて頭を撫でて……はっ!」

P「そうか。俺がありすばかり甘やかしていると思って、泉は自分も甘えたいとやきもちを焼いたんだな!」

凛「いや、違うから」

P「そうか。さすがに自意識過剰だったか……」

凛「正直、わかってて冗談言ってるよね」

P「そうだな」

P「なるほど。泉とありすの間でそんなことが」

凛「そうなんだよ」

P「泉はありすを褒めたい。でもありすは頭を撫でられたくない」

P「妥協点としては、ありすが嫌がらない、かつ泉の姉心が満足できる形での褒め方を見つけることだな」

凛「そうだね」

凛「というわけで、そういう褒め方について案のある人」

さくら「お菓子!」

亜子「お金!」

凛「却下」

さくら「えー」

亜子「なんでですか!」

凛「お菓子はありすが子ども扱いされてると思うだろうし」

さくら「うっ」

凛「お金は論外」

亜子「論外ってなんですか! お金は裏切りません!」

凛「今そういう話してないから」ジロリ

亜子「あ、ハイ」

亜子「(さすがにいずみより眼光鋭いわ……びびってしもた)」

泉「雪美ちゃん、本当にペロと仲がいいのね」

雪美「うん………」

ペロ「にゃあ」ピョン

泉「きゃっ。ちょっと、いきなり飛びこんで来たらびっくりするわ」

ペロ「にゃーにゃー」

雪美「……ペロ、気に入ったみたい……あなたのこと」

泉「そうなの? だったらうれしいけど……ふふ、よしよし」

ペロ「にゃふー」



P「………」

P「とりあえず、解決策が出るまでは雪美をナデナデすることで泉の欲望を満たせばいいんじゃないだろうか」

泉「よ、欲望ってなによ」

P「あ、聞こえてた」

凛「でもいいんじゃない? 雪美ちゃんだっていい子なんだし、褒めるところはたくさんあるでしょ」

さくら「もしくはわたしをナデナデしてもいいよー?」

亜子「さくらは褒められる時より叱られる時のほうが多いよ?」

さくら「てへ、そうでしたぁ♪」

泉「……まったく、何を言っているんだか」

雪美「………」

雪美「私は……なでられるの……好き」

泉「えっ」

雪美「泉に……なでられるの……気持ちいい、から」

泉「雪美ちゃん……」

雪美「………だから」

雪美「だから………仮の女に、なってあげる………」

泉「ちょっと待ちなさい」

雪美「………?」


泉「誰? この子にこんな変な言葉教えたの」

泉「プロデューサー」ジロ

P「なんで真っ先に俺を疑うんだ」

P「違うぞ。俺はそんなワード教えた覚えはない」

泉「なら、いったい誰が……」


ガチャリ


卯月「雪美ちゃーん。いつものドラマ始まりますよー!」

卯月「『愛憎の果てに~二人の女で揺れる男~』の第8話!」

雪美「行く………」


泉「って、犯人はあなたでしたか……!」

卯月「犯人? いえ、二股の状況を作った元凶は主人公の知人の男の人で」

泉「ドラマのあらすじは聞いてないです」

泉「なぜそんな明らかにドロドロっぽい昼ドラを雪美ちゃんと一緒に見てるんですか」

卯月「えへへ……毎週どうなっちゃうのか、怖くてハラハラドキドキしながら続きが気になってしまって」

卯月「最初はひとりで見ていたんですけど、いつの間にか雪美ちゃんが一緒に見るようになって……」

凛「まあ、止める権利はないよね」

雪美「続き……気になる………」ウズウズ

泉「はぁ……仕方ないですね」

泉「監視の意味もこめて、私も一緒に見ます。さあ、テレビのもとへ行きましょう」スタッ


亜子「いずみのお姉ちゃんモード発動中やね」

さくら「ああなったらグイグイだね」

亜子「いっつもアタシらあれで引っ張られてるもんなー」

さくら「ねー♪」

凛「経験者は語る、だね」

泉「引っ張りまわされてるのはこっちです」

その後


泉「………」ボーー

P「あれ、泉? まだ帰ってなかったのか」

P「他のみんな、もう帰ってるぞ」

泉「知ってる」

P「どうしたんだ、ぼーっとして」

P「そんなに例の昼ドラが衝撃的だったのか」

泉「そうね、思った以上にドロドロしていて……って、そっちじゃない」

P「じゃあ、ありすのこと?」

泉「………」コクリ

P「………」

P「コーヒー、飲むか」

泉「……話、付き合ってくれるってこと?」

P「察しがいいな」

泉「……ありがとう。もらうわ」

泉「なんというか……あの子には、入れ込んじゃうの」

P「どうして」

泉「うーん。私と、なんとなく似てると思うから、かな」

P「わからなくもない」

泉「でしょ?」

泉「だから、ついつい甘やかしたくなるというか、いいことをしたら自分のことのようにうれしいというか」

泉「……はあ、やっぱり入れ込み過ぎだなぁ」


P「入れ込み過ぎね……」

泉「私としては、褒めたいと思ったら自然と手が頭に伸びていたんだけど……その手が、ありすちゃんの成長を上から押さえつけてしまっていたのかもしれないわ」

P「そんな大げさな話でもないと思うが」

P「泉、確か弟がいたよな。その子には、そうやって拒否されたことないのか」

泉「ない。あの子、まだ反抗期も来てないから」

P「そうか」

P「……まあ、俺としてはどっちの気持ちもわかる。そして両方のプロデューサーでもあるから、どっちかの肩入れはできない」

P「難しい年頃の子の、難しい問題だ」

泉「……ごめんなさい」

P「謝らなくていい。俺は難しい問題だとは言ったが、面倒だとは一言も言っていない」

P「こういうのを解決するのも、プロデューサーの仕事だ」

泉「プロデューサー……」

P「……ふむ」

P「よし。いい考えがひとつ浮かんだ」

泉「え、もう?」

P「安直な案だからな……泉は、ありすの『大人になりたい』って気持ち、わかるか?」

泉「……そうね。早く一人前になりたいと思うのは、よく理解できるわ」

P「応援したいと思うか」

泉「まあ、そうなるかな」

P「よろしい。ならば飴と鞭作戦だ」

泉「飴と、鞭?」

翌週 日曜日


泉「はい。それではこれより勉強会を始めます」

泉「先生である私の言うことをよく聞くように。厳しくいきますから」

ありす「は、はいっ」

さくら「せんせーい」

泉「なんでしょう」

さくら「どうしてわたしまで生徒にされてるんですかぁ?」

泉「ありすちゃんの横にあなたを置いていたほうが、ノリで厳しくいけそうだから」

さくら「なにそれぇ!? おまけじゃん、おまけ!」プクー

泉「まあまあ、怒らないの。高校上がる前に、ある程度は予習しておいたほうがいいのは事実だし、ね?」

さくら「それはそれだけどぉ……アコちゃんは?」

泉「あの子はひとりでもそこそこなんとかするタイプだし。学業については」

ありす「あの、そろそろ始めませんか?」

泉「ああ、ごめんなさい」

泉「さて、ありすちゃんももうすぐ中学生。学校の授業よりも少し進んだ内容を学んでいきましょう。しっかりついてくるように」

ありす「中学生……やってみせます」フンス

泉「ちゃんと授業について来られたら、あとでイチゴパフェをおごってあげます」

ありす「やった……こほんっ。ま、まあ、ご褒美は別として、頑張ります」

さくら「わたしは?」

泉「あなたは高校1年の内容の先取りです」

さくら「じゃなくて、ご褒美!」

泉「……心配しなくても、ありすちゃんと一緒に何か食べさせてあげるから」

さくら「わーい♪」

泉「まったく、どっちが年上かわからないわね……」フフ

泉「というわけで、始めます!」

ありす・さくら「はい!」

凛「なるほど。飴と鞭、ね」

P「授業を先取りして勉強をガシガシ教えていく。それによって、ありすは自分が年相応以上の結果を求められていると感じる」

P「あの子は負けん気が強いから、それはプラスに働く。『大人になること』を期待されていると思うだろうし」

P「泉も泉で、勉強に関しては厳しくいけるだろうからな。受験期にさくらにメチャクチャスパルタで叩きこんだ経験を活かせば」

凛「で、うまく勉強できたらご褒美をあげる、と」

P「厳しくした後は、存分に甘やかせばいい。ありすもそのくらいは許容できる……というか、むしろうれしいだろうしな」

凛「……プロデューサー、うまく考えたね。すごい」

P「だろ? もっと褒めていいぞ」

凛「そこで調子に乗らなきゃ完璧なのに……」

凛「あともうひとつ」

P「ん?」

凛「なんで私まで生徒にされてるの」


未央「はいはーい。未央ちゃん先生がわからないところを教えてあげるよ~」ニコニコ

卯月「私、年上ですから! 頼っていいですよ!」ニコニコ


P「………」

P「凛もついでに勉強しとけ」

凛「雑っ!」

雪美「……勉強……がんばる……」

亜子「よーし! じゃあ雪美ちゃんには亜子先生が実用的な銭の計算を」

ペロ「にゃーっ」

亜子「うわっ! な、なんだペロ、先生に逆らう気か!」

ペロ「にゃにゃ!」

亜子「……わかった、わかった! 普通の勉強教えますわ」

雪美「がんばる………」

亜子「まったく……猫なら招き猫みたいに小判大好きならええのに」

P「………」

P「うん。今日はみんなで仲良く勉強会だな!」

P「俺も頑張って、溜まった書類片付けないとな……はぁ」




泉「次! この問題、30秒以内で解いて!」

ありす「は、はいっ!」


さくら「二人とも、楽しそうだなぁ……とりあえず、よかったよかったぁ♪」



おしまい

終わりです。お付き合いいただきありがとうございます
NGとNWの絡みはもっと増えていいと思う

このシリーズは一応サザエさん時空ではないので、時間の経過が存在します
SS内でも言ってますけど、NWの3人は全員同じ高校に合格しています

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