男「まさか捨て子を拾うとは…」 (9)

これはある男の、日記
これは、ある男と少女の物語。

ある冬の寒い日
世間はクリスマス一色になりつつある
クリスマスまでは、まだ一ヶ月もあるのにだ…
周りの友人達は、女を作ったり嫁さん作ったり
日々、充実してる様子だ
完全に行き遅れた、そんな虚しさだけが俺の心を支配していた。

ふと街に出てみても、周りを見渡しても居るのはところ構わず発情してイチャイチャしてるリア充ばかり
そんな空間で、一際異彩を放つ少女がいた
少女と呼ぶにはもう背丈も伸び顔も、大人びているが俺からすれば少女だった

なのに俺よりも10は下のはずの少女が、会社に絶望して、周りに置いてかれた俺よりも
死んだ目をしてるのはどうしてなのか

思うより先に体は動いていた

その日、むさい男が住むにしては広いアパートの一室が少し狭くなった

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彼女の事はとりあえず少女Sと呼ぶことにした
少女ちゃんは、基本死んだ目をしている

「はぁ……これからどうしたもんかね」

ベランダに出てポケットからタバコを一本取り出し、煙を肺に入れる
口から出た煙は、俺の吐息なのかタバコの煙なのか、彼女の心と同じくらい冬の寒さのせいで分からなかった
俺はいつか、彼女の笑顔を取り戻せたりするのだろうか……

俺もココ最近までは、あんな目をしたのだろうか
何せ二年半、そばにいた彼女が同じ部署の先輩と浮気をしていたという事実が数週間前に発覚し俺は狂っていた。
狂っていたという表現が正しい
何もかもが、どうでも良くやってメシも喉を通らない。
せめてスポーツ飲料くらいは、と友人達から進められ差し入れをされた。
それは未だ、俺が住むには広すぎると言っていいこの家の冷蔵庫の中に鎮座している。

それでも俺は、立ち直れなかった
何度も首を吊ろうとしたし、何度も手首を切った
けど死ねなかった
いや……死にたくなかったんだ
そこからの、復帰はそう長くはなかった

期間にすれば、2週間ほど俺は心の病に侵されていただけだった。

そして今日、俺が半ば強引に連れてきた少女ちゃんは、俺が友人達から聞いていた、心を病んでいた俺の目の特徴とまんま同じだった
だからなんだろうか……
この子には、俺みたくなってほしくないと思ってしまう。

「うし!……やるか」

そういい、俺は一歩前進することを決めた

少女ちゃんが、家に来てから1週間くらいだろうか
やっとその目に生を取り戻してきた
一週間ひたすらに俺は、話しかけ続けた
最近は、ゴミに向ける視線を送られるようになってきた
大きな一歩であるが、その分俺のメンタルが死にそうだ
それと、これからは少女ちゃんを怜(れい)ちゃんと呼ぶことになった
何を隠そう本人が、そう呼べと言ってきたのだ
これはもう、月面着陸したと言ってもいいのかもしれない

怜「………」

なんて考えてるとまた、今にも殺処分されそうな豚を見る目をした怜ちゃんがこちらを見ていた

男「…どうしたんだい?怜ちゃん」

怜「………べつに」

基本会話はこれで終わる
悲しいものだ、言葉のキャッチボールがすぐに終わらせる。
だが俺は、彼女を不安にさせないために常に営業スマイルを絶やさない
俺って実は、イケメンじゃね?

……洗面台に行って顔を洗った
そこには、20代にしては老けた顔の無精髭をはやした俺がたっていた

男「お前……かなり不細工だな…」

鏡の自分に悪態をつく

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