八幡「これがシュタインズ・ゲートの選択………!」 (92)

結衣「やっはろー!」

雪乃「こんにちは由比ヶ浜さん」

八幡「……………」

結衣「ヒッキー何見てるの?」

八幡「………………」

雪乃「……はぁ。比企谷くん?」

八幡「うわっ!イヤホン外すなよ……今アニメ見てる途中でしょうが」

結衣「アニメ?」

雪乃「何のアニメかしら……?」



八幡「STEINS;GATEだよ」



亀進行
多分今日はこれで終わり

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1453109884

結衣「しゅたいんず……」

雪乃「……それは何語なのかしら?」

八幡「さぁ……ドイツ語と英語を組み合わせた造語らしいぞ」

結衣「どんな意味なの?」

八幡「『特に意味はない』」

結衣「何それ!」

八幡「人生で1度は言ってみたい台詞だよな」

雪乃「ところでそれは面白いの?」

八幡「おっ、興味があるのか雪ノ下」

雪乃「……気になっただけよ」

八幡「由比ヶ浜は無理だろうが……お前なら絶対このアニメを理解できるはずだぜ!ざっと内容を説明してやる」

結衣「なんかバカにされてる!?」

☆1レスでわかるSTEINS;GATE☆

過去にメールを送り、未来を変えることの出来る装置、電話レンジ(仮)。
それを偶然にも発明した岡部倫太郎は、電話レンジのさらなる改良のため過去へ送れるメール……『Dメール』の実験を行う過程で、自分たちを取り巻く様々な過去を改変していく。
その先に、最悪な運命が待っているとは知らずに……。



八幡「だいたいこんな感じだ」

雪乃「纏め方へったくそね」

八幡「うるせぇ!」

結衣「ほえー、なんか壮大そー」

八幡「ま、由比ヶ浜は見ても多分理解出来ないと思うわ……」

結衣「だからなんでさっきから馬鹿にするし!」

雪乃「過去にメールをって……タイムパラドックスの概念すら知らないのかしら」

八幡「基本的にジョン・タイターの理論をリスペクトしてるからな、このアニメ。なんなら作中に出しちまうまである」

雪乃「……ジョン・タイター?」

八幡「あ、知らねぇのか。まぁまず見てみろよ。設定が壮大でめっちゃ惹かれるぞ」

雪乃「……………気が向いたらね」

結衣「ちなみにヒッキーはどこまで見たの?そのアニメ」

八幡「二週目の13話だ。今観てるのは」

結衣「二週目!?どゆこと!?」

八幡「一周目とはまた違った面白さがあっていいぞ、特にこういう時間巻き戻り系のアニメはな」

雪乃「重症ね……」

八幡「それだけ面白いんだ。この作品は」

結衣「へぇー……」

雪乃「じゃあもしかしたら本当にその電話レンジ(笑)なるものが実在するなんて考えてたりするのかしら?」

八幡「そこまでじゃねぇけど……」

八幡「あったらいいな、とは思うな」

結衣「あーなんかわかるかも。森とか歩いてるとどうしてもお菓子の家探しちゃうよね!」

雪乃「………それはあなただけだと思うわ」

八幡「………何歳児だよ」

結衣「なんか辛辣!?」


八幡「別に実在したって不思議じゃねぇからな。俺は文系だからよくわからんが、理論上は可能みたいだし。ただ机上の空論なだけで」

雪乃「まぁ、夢を見るのを嘲ったりはしないわ……そうね、少し興味が出てきたかも」

八幡「本当か!?」

雪乃「そんな期待の眼差しで見つめられると困るのだけれど……」

八幡「いや、シュタゲのこと話せるの材木座以外にいないからさ。雪ノ下ともそういう話ができるなら嬉しいわ」

雪乃「そ、そう……」

結衣「あーっ、ゆきのんだけずるい!あたしも観るからね!シュタゲ!」

八幡「好きにしろよ……」

数日後


八幡「……三週目、終了」

八幡「くぁぁぁ〜〜〜っ!やっぱ最後のアレいいわぁ、『これが、シュタインズ・ゲートの選択だよ』キリッ」

八幡「人生で1度は言ってみたい台詞だな」

八幡「あれから雪ノ下はちゃんと見ただろうか………」

八幡「早く語りたいぜ……材木座とのディベートはもう飽きたんだ……」


八幡「『Dメールは実現可能か』」

八幡「雪ノ下なら、ちゃんと考えてくれそうだしな……」

八幡「材木座には鼻で笑われたからな……『現実と妄想の区別はつけたまえ!フゥーハハハハハ!!』……ったく、本日のお前が言うなスレはここですかっての」

八幡「……でも、実現したらしたで怖いものもあるな……」

八幡「事実、無闇に世界線を変動させたからオカリンたちは面倒くさい手続きをしなくちゃならなくなったんだし」


八幡「だからこそ、魅力があるんだけどな」

八幡「魅力があるから、確かめたいわけだ」




ブー ブー

八幡「……なんだ?メール?誰から…」


八幡(…………………!!)


八幡「は、なんだこれ……」


八幡(新着メール、2件)

八幡(知らないアドレス、受信時刻はほぼ同時)

八幡「こ、これは………」

八幡(似ている。シュタインズ・ゲートに出てきた、Dメールの仕組みに)


八幡(メールを開く)

八幡(どちらも、平仮名の羅列。文章は途切れていて、酷く読みにくい)

八幡(まさか………まさか本当に)


八幡「未来の俺が……送ったメール?」


八幡(悪質なスパムだったとしよう)

八幡(だがそいつはどこで俺のアドレスを知り、そしてなんのためにこれを送ってきたんだ)

八幡(それも、シュタゲになぞらえて)

八幡(こんなメールを他人が俺に送ってくる利点は皆無だ。いたずらの類にしたって、俺は家族と先生、由比ヶ浜、戸塚……こいつら以外にメアドなど教えてはいない)

八幡(そういうことに関しちゃ、信用のおけるやつらだ。あいつらが俺のアドレスを漏らしたなんてことは、ありえない)

八幡(………つまり)


八幡「ほ、本物って、こと、だ」

八幡「マジか……」

八幡(マジかマジかマジか!!)

八幡(高揚する気分をおさえつけようとするが……無理っ!こんな夢にまで見たシチュエーションで興奮しない方がおかしい)

八幡「……だけど、浮かれてばかりでもいられないな」

八幡(そう、そもそもこれは本来ならば浮かれるべき状況ではないのだ)

八幡「未来の俺がなんで過去の俺にメールを送ったか……ということだな」

八幡(俺はシュタゲを全話見ている)

八幡(仮に電話レンジに近いものを発明したとしても……過去改変の愚かさは自分でよく分かっているだろう)

八幡(なのにも関わらず、躊躇いなく俺にメールを送ってきた)

八幡「何か……とても重要なことに違いない」

八幡(直感としても、客観的判断としても、俺はその結論にたどり着いた)


八幡「……なら」

八幡(ごくり。唾を飲み込む)

八幡「この『警告』は、心して読まないとな」


八幡(分割された二つのメールを繋ぎ合わせて、読める文に直していく)

八幡(……未来を変えるため、俺は何をしなければならないのか)

八幡(その答えが……そこにはあるんだ)

『明日から異性を下の名前で呼べ』




八幡「………は?」




to be continued……


また今度

教室ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

八幡(………あれから一晩考えた)

八幡(あのDメールの意味を)

八幡(なぜあのDメールが俺に送られ、それによって何が変わるのか……)

八幡(考えた結果、答えは出ない)

八幡(やはりいたずらなのか……?)


八幡(……いや、それも昨日考えたが)

八幡(動機がない。だからいたずらなんてのは考えられない)

八幡(……だから、結局は)

八幡(やるしかないのだ)

八幡(言われた通りのことを……)



戸塚「あ、八幡!」

八幡「……!」

八幡(と、戸塚……!)

戸塚「難しい顔して……どうしたの?」

八幡「あ、あぁいや……別に大したことじゃないんだ」

戸塚「ホント?困ったことがあったらぼくに相談してね!役に立てるかは分からないけど…」

八幡「…あぁ、ありがとうな、とつ―――」

八幡(………はっ!)

八幡(危ねぇ、危うく名字呼びしてしまうところだった……)

戸塚「……は、八幡?」

八幡「えっ、あぁ……ありがとうな…」



八幡(異性は下の名前で呼ばなければならない…………か)

八幡(それは性別:戸塚である戸塚も例外ではないだろう)

八幡(……だが、今まで名字でしか呼んでこなかった人間を下の名前で呼ぶのはいささか抵抗がある……)


戸塚「……八幡、なんだかぼく、すごく釈然としない気持ちなんだけど……」ボソボソ

八幡「え、なんだって?」

戸塚「何でもない」

八幡「そうか……」

八幡(……でも、ずっと人の名前を呼ばずに生きていけるわけがない)

八幡(どこかでは、割り切らねばならないのだ)

八幡(………よし)


キンコンカンコーン

戸塚「あ、鳴っちゃった。またね、八幡!」

八幡「あぁ、またな。彩加」

戸塚「うん!」スタスタスタ




戸塚「……………!!!???//////」

八幡(……やっべぇ、めっちゃ緊張した)

八幡(心臓バクバクいってやがる。予想以上だ。なんだこの恥ずかしさ……)

八幡(キモイとか思われてねぇよな……気味悪がられたりしてねぇよな……まぁ戸塚だしないとは思うが……)




戸塚(は、は、八幡……!?どどどどうしたんだろ急に……ぼくのこと、"彩加"なんて……)

戸塚(か、顔が熱いよぉ……八幡、あれは反則だよ………)




結衣(……ヒッキー、さっきさいちゃんのこと……なんて呼んでたの……?)

教師「今日はここまでー」

八幡(……落ち着け。戸塚は可愛い。声も仕草も、女の子にしか見えない)

八幡(だが男だ)

八幡(俺の中では異性扱いだが、生物学的にはあいつは男なのだ)

八幡(恥ずかしがることなんて何も無い)

八幡(よし、この調子だ。この調子で……)


結衣「……ヒッキー?」

八幡「おおう……どうした」

八幡(ビビった)

結衣「なんでビビるし……部室行くよね?」

八幡「あ、あぁ……」

八幡(さて、ここからが難関だ)

結衣「一緒に行こ。ゆきのん待ってるし」

八幡「あぁ……」

結衣「…………」テクテク

八幡「…………」テクテク


八幡(……なんだ、珍しいな。いつもなら沈黙を消そうと俺が興味もないような話をふってきたりするのに)

八幡(まぁこっちの方が好都合だが……)

八幡(喋らなきゃ、名前を呼ぶ必要も無いしな)


結衣(……うーん、聞くべき?「さいちゃんと何話してたの」って……)

結衣(いやそれだけじゃ伝わらないか。もっとすっぱり、「さっにさいちゃんのこと下の名前で呼んでなかった?」って……)

結衣(……聞けるわけないよぉぉぉ)


八幡(……とか思ってたらなんか急に百面相を始めやがった)

八幡(ちらちらこっち見てきてるし……なんなんだ?)

八幡(何か俺に言いたいことでもあるのか?)

八幡(そういう視線を送ると、由比ヶ浜ははっと顔を赤くして振り返ってしまう)

八幡(このままじゃ埒が開かないな……)


八幡(……んーまぁしょうがない。近いうちに決着を付けにゃならんことも確かだ)

八幡(ならここで腹をくくろう)


八幡「……あー、どうしたんだ?結衣」

結衣「へっ!?いや、なんでも……って」


結衣「ふぇ??」


八幡「……んだよ」

結衣「いやだって……ふぇ?」


八幡(なぜそんな反応をされなければならないんだ………)

結衣「ひ、ヒッキー、今、わたしのこと、名前で………」

八幡「……やっぱキモイか?」

結衣「いやっ!キモイとか、そういうんじゃなくて……えと、その……」

八幡「気に入らないなら、言ってくれていいんだぞ」

結衣「気に入らないって、わけじゃ…」

八幡「一生お前の名前を呼ばないようにするから」

結衣「なんか極端!?」


結衣「いや、ほんとにヒッキー、どうしたの……?言い間違えでもあたしの名前下で呼んだことなかったじゃん!1回しか」

八幡「あーなんつーか、心境の変化っつーか」

結衣「し、心境の変化……一年以上も一緒にすごして変えられなかったものが、そんな理由であっさりと……」ワナワナ

八幡「聞こえねぇよはっきり喋れ」


結衣「……そういえばさいちゃんのこも下で呼んでたけど……」

八幡「ば、バレてたのか……」

八幡(テラ恥ずかしす)

結衣「……まさか、ゆきのんのことも?」

八幡「えっ、いや、まぁ……その予定だ」

結衣「………むぅ~~」

八幡「な、なにむくれてんだよ」

結衣「別に~?ちょっと釈然としないだけ…」

八幡(こいつのことはよくわからん……)

八幡「で、結局なんだったんだ?さっきから俺のことをちらちらちらちらと……」

結衣「ふぇっ!?いや、気のせいだった!なんでもないから……」

八幡「?そうか……ならいいんだが」

八幡(わかりやすい嘘だが……まぁ、わりとどうでもいいことなのでここは流しておく)


結衣「ていうかそんなに見てたかな……」

八幡「無意識的かよ……どんだけ俺のこと好きなんだよお前」

結衣「なぁっ!?べ、別にヒッキーのことなんてぜんっぜん好きじゃないし!!勘違いしないでよね!!」

八幡「お、おう……冗談のつもりだったが……そこまで否定されるとさすがに傷つくな……」

結衣「へっ?あっ!いや、うそうそ!本当は結構好き!かも、しれ、ない……」

八幡(弁解する由比ヶ浜の顔はみるみる赤くなっていく)

結衣「~~っ!!ヒッキー、ニヤニヤすんなし!マジキモイ!!やめて!!」ポカポカ

八幡「った!?え、俺ニヤニヤなんてしてたか……!?」

八幡(ちょっと微笑ましくはなったが!)

結衣「してた!超してた!!」

八幡「してねぇって……」

結衣「マジありえない!ヒッキーキモイ!いや、マジでキモイから……」

八幡「おい、いい加減俺泣くぞ……?」


八幡(こういう場面で「我々の業界ではご褒美です」なんて言える人間にはおそらく一生なれないだろうな……)

いろは「あっ、せんぱーい♪」

八幡「……お?」

結衣「あ、いろはちゃん……」

八幡「どうしたんだこんなところで」

いろは「いえ、暇なので今から私も奉仕部へお邪魔しようと思ってたら、先輩方を見かけたので」

八幡(そこで一色は俺と由比ヶ浜を交互に見やり)

いろは「……お邪魔でしたか?」

結衣「ふぇえっ!?いや、全然全然!むしろ助かったくらいだよ!」

八幡「他人を気遣う前に自分の仕事をしろ…」

八幡(最近ではもう奉仕部メンバーの一人みたいな感覚になっている)

八幡(奉仕部メンバー……略してホシメン004………………いや、ないな。ないわ)


いろは「この時期に生徒会の仕事なんてないんですよー」

八幡「仕事がないなんてことはないんだぞ。仕事がない状態ってのはな……仕事が見えてない状態なんだ」

いろは「うっわ……嫌なこと言いますね先輩」

八幡「よくお前に生徒会長が務まるよなぁ…」

八幡(社会というものは謎で溢れている)

八幡(さて、一色いろは。こいつはなかなかの難関である)

八幡(奉仕部や戸塚とは、腐っても1年ちょいの付き合いがある。だから名前呼びの抵抗はあまりない)

八幡(しかし……この一色いろはは)

八幡(まず俺のことを根本的にキモイと思っている)

八幡(付き合いもそれほど長いわけでもない)

八幡(さらにこいつは葉山隼人という想い人がいる)

八幡(そんな相手に対し突然馴れ馴れしく下の名前で呼ぶなんて覚悟は俺にはできない)

八幡(と、いうわけで)

八幡「んなことはいいから、さっさと行こうぜ、結衣」

結衣「う、うん……ヒッキー……」

いろは「あ、待ってくださいよー」



いろは「って、え?」

八幡「そういやあれからちゃんとシュタゲ見たか?結衣」

結衣「えっ……あ、あはは……さ、3話まで見たんだけど……難しいねあれ」

八幡「期待通りの解答をありがとう」

結衣「なっ!あたしだってあたしなりに考えたんだよ!?でも………」



いろは「ちょい!ストップストップ!」


八幡「どうした。何かあったか?」

いろは「どうしたもこうしたも……え?先輩、由比ヶ浜先輩のことをなんて呼んでました?」

八幡「結衣だけど?」

いろは「昨日までは?」

八幡「由比ヶ浜」

いろは「頭でも打ちました?」

八幡「なぜその疑問が出てくる?」

いろは「だ、だってあの先輩が……いきなり女の子を下の名前で呼ぶなんて……」

八幡「ちょっと気が変わってな」

いろは「気が触れたの間違いでは?」

八幡「そんなにおかしいか!?」

八幡(いや、まぁ、おかしいけどさ)


八幡(1度下の名前で呼んでしまえばあとは吹っ切れてどうにかなるもんだ)

八幡(それをとりあえず一色に見せつけて、俺の下の名前呼びの違和感を和らげていく!)

八幡(これが俺の作戦だ!)


いろは「ふぅん………」

いろは「じゃあ当然、わたしのこともこれから下の名前で呼ぶんですよね?」

八幡「ん……まぁ、そうだな……」

八幡(心の準備ができるのがいつになるかはわからないが)

いろは「ほうほう……」

八幡(一色の目が妖しく光る)



いろは「では試しに呼んでみてくださいよ」

八幡「」

八幡「いや、ちょっとそれは……」

八幡(俺にはまだ早い!もっとレベル上げないと……)

いろは「結衣先輩は呼べてわたしは呼べないっていうんですかぁ?」ジトー

八幡「な、なんでそんな不服そうなんだよ…」

八幡(この一色は面倒くさいモードだ……こうなったらテコでも解放してくれない)


八幡(実際今回の場合は彼女からの依頼による名前呼びだ)

八幡(つまるところ"頼まれたからやっただけ。深い意味は無い"で済む話。だから十分ハードルは低い)

八幡(はずなのだが……どういうわけか、いざ呼ぼうとなると声が出てこない……)

八幡(ええい男八幡、覚悟を決めろ!)



八幡「…………ぃ」

いろは「い?」


八幡「いろ、は……」


いろは「……………………」




八幡「……な、なんか言えよ」

いろは「えっ?あ、あぁ……ちょっと、ボーッとしてました……よく聞こえなかったんでもう一回言ってもらっていいですか?」

八幡「おいそりゃねぇだろ!」

八幡(余裕で死ぬわ!)

いろは「……冗談ですよ、冗談……」



いろは「いろは……か、えへへ、これ結構いいな……」ボソボソ

八幡「何ぶつぶつ言ってんだよ」

いろは「い~〜え?なんでもありません」

いろは「そんなことよりっ!早く部室行きましょう!雪ノ下先輩が待ってます!」

八幡「あ。おい待て…いっし―――いろは!」

いろは「~~~っ!?///」


いろは(ふ、不意打ちはダメですよ、先輩!)

まだ見てくれてる人いるのかな?

だいぶ放置しちゃったけど
今日はここまでなんて言ってみる

八幡(さて、奉仕部についたわけだが)

八幡(帰りてぇよぉ……)

八幡(戸塚のときも、由比ヶ浜のときも、一色のときも、向こうから話しかけられたゆえに、嫌でも名前呼びをしなければならない状況に追い込まれた)

八幡(だから割り切ることも比較的楽に出来たのだが……)

結衣「……ヒッキー?」

いろは「……どうしたんですか?」

八幡「あっ……悪い。入るか」

八幡(……とりあえず何も考えないようにしよう)

結衣「やっはろー!」

いろは「こんにちわ〜」

八幡「うす」

雪乃「……あら、こんにちは」

いろは「いやぁ、暑くなってきましたね〜」チラ

結衣「だねー、そろそろ半袖にしよっかな……」チラ

八幡(チラチラ見ないで……)

雪乃「……どうしたの?さっきから比企谷くんの方を見て」

いろは「えっ!?い、いや……別に」

結衣「そ、そうそう……今日も目が腐ってるなーって」

八幡「そこ。ナチュラルに人を罵倒しない」

雪乃「何もないならいいのだけれど……」

八幡(少々気まずい沈黙が流れる)

八幡(……俺にとってこの間は辛い。由比ヶ浜と一色からはなんか意味あり気な視線が送られてくるし)

八幡(こいつも早いとこ済ませときたいんだよな。由比ヶ浜や戸塚よりハードルは高いが、腐っても一年の付き合いだ。今さらこいつにどう思われようと気にはしない)

八幡(……とは言っても何の脈絡もなく名前呼びなんて出来るわけがないので)

八幡「………あーなんだ。そういえばもうすぐ定期テストがあるよな」

結衣「そうだね〜、またみんなで勉強会しようよ!」

いろは「わぁ、それいいですね!わたしも混ぜてもらっても」

八幡「いやお前学年ちげぇだろ」

いろは「ですよねー」ガックシ

八幡(さりげなく話題をふる大作戦!この会話を発展させることで自然な形で名前呼びに持っていきたいが……)

八幡(さぁ、雪ノ下は乗ってきてくれるか………?)



雪乃「……どうしたのあなたから話題を提供するなんて」

八幡(なぜかどん引かれていた)

八幡「お、俺だって話題くらい提供するさ…」

雪乃「しかも定期テストの話題だなんて……そんなもの、話すことのない時の苦肉の策として提示する話題よ?」

八幡「ぐ、ぐうぅっ!?」

八幡(フルボッコである)

八幡(この流れはまずい……!)

結衣「……………」

いろは「………………」

八幡(やめろっ!そんな目で俺を見るなっ!)

八幡(……こうなったらヤケになる。今この状況で誤魔化すことの恥ずかしさに比べればマシだろう!)


八幡「なんでもいいだろ……で、結局定期テストはどうなんだよ、雪乃」

雪乃「またそうやって誤魔化す……」


雪乃「………ん?」


八幡「誤魔化してなんかいねぇよ。俺はただ純粋に雪乃たちと定期テストの話をしたかっただけなんだ」

雪乃「ちょっと比企谷くん、待ちなさい」

雪乃「あ、あなた、今、私のことを、なんて呼んで………?」

八幡「なにか不都合でもあったか?」

雪乃「い、いえそういうわけではないのだけれど………」

八幡「ならなんで人の話の腰を折ってまで追求してくんだよ。無礼にも程があるぞ」

雪乃「いや、そういう問題ではないでしょう?」

八幡(よし………うまくペースは取り戻せたぞ)

いろは「……うっわ」

結衣「ひ、ヒッキー……」

八幡(周りの女子の目が痛いが、気にしてる余裕はない。意識しただけで死にそうになる。いやもうほんとやめてマジで)


八幡「じゃあどういう問題があるんだ?」

雪乃「えっ……」

八幡「俺がお前を下の名前で呼んでどんな弊害が生じるんだ、言ってみろ」

雪乃「あっ………」

雪乃「えっと………それは………そのう……」

八幡(頬染めて髪いじくんなキュンときちゃうだろ)

八幡「弊害がないなら、別に気にする必要もないだろ。雪ノ下だろうが雪乃だろうがお前はお前だ。何も変わらない」

雪乃「……私は、私……」

八幡「そう、雪乃は雪乃だ」

雪乃「……そうね、そう考えると、なんてことないもののように思えてきたわ」

結衣「ちょっと流されちゃダメだよゆきのん!?」

八幡「ちっ………」

いろは「うわぁ……」

雪乃「………はっ!?私は何を……」

雪乃「……呼称はいうなれば習慣よ。誰かが誰かを常にある特定の名前で呼ぶとき、そこには確かな理由が存在する。それが変わるということは、すなわちそれを変える何かがあったということ……」

雪乃「さぁ、比企谷くん、説明しなさい。どういう心境の変化かしら?」

八幡「単なる心境の変化です」

八幡(わぁいいつもの雪ノ下だぁ)

雪乃「ではなぜあなたの心境が変わったの?」

八幡「そ、それは……」

八幡(言い訳を探しかけたその口を噤む)

八幡(あれ?これ別に言い訳探す必要なくね?)

八幡(昨晩受けたメール見せて、「このメールの指示通りにしないと悪い未来を変えられない」といえば―――)

八幡(いやダメだこれただの痛いやつだ。シュタゲのことを教え、このメールの不自然さを説明したところで俺が「アニメと現実を混同している痛いやつ」というレッテルを貼られることは避けられない)

八幡(………やっぱ誤魔化すしかないかぁ)

八幡「……ちょっとな、小町にトランプで負けてな」

いろは「はぁ……」

結衣「あたしたち……罰ゲームなんだ…」

雪乃「……なかなか複雑ね……」

八幡「い、いやいや小町だってそういうつもりで言ったんじゃないと思うぞ」

八幡(俺の嘘で小町の高感度を下げるわけにはいかない…)

雪乃「わかってるわよ。あなたが私たちを名前呼びするのにどれだけの葛藤をしてたかくらいは……」

八幡「そういう事言うな……」

八幡(首つるぞ。まったく……)

結衣「……なんか、釈然としないけど、結果こうやってヒッキーに名前で呼んで貰えるようになったなら、まぁ小町ちゃんありがとう、かな……」

八幡「…………」

八幡(聞こえてますよ由比ヶ浜さん)

結衣「……ってはぁっ!?ち、違うからっ!今のはそんなんじゃなくてっ……あのっ……!」

いろは「あはは、結衣先輩ってばかーわいぃっ♪」

雪乃「由比ヶ浜さん、もう少し口に戸を立てることも覚えましょう?」

結衣「う………」

結衣(ゆきのん……目が笑ってない……)


八幡「あーまぁなんだ。そんなこんなで変なことになっちまったが……これからよろしく頼む。雪乃、結衣、いろは」

一同「「「………………っ///」」」

八幡「……黙るのやめてくださいしんでしまいます」

いろは「……ぷっ、せんぱいヘタレすきです」

八幡「なっ……これでも結構勇気出してんだぞ……」

結衣「ヒッキーだから仕方ないね」

雪乃「えぇ。まったくだわ」

八幡「お、お前らなぁ……」

八幡(なんやかんや紆余曲折したが、何とかやりきることが出来た気がする)

八幡(「終わった」)

八幡(そう思った瞬間、なんともいえない開放感が湧き出てきた)

八幡(今なら何でもできる気がした)

八幡(それこそ、電話レンジを作ることだって……)




八幡(………この時の俺は、気づいていなかったのだ)

八幡(この後、俺を襲う最悪の悲劇を)

八幡(レスキネン顔負けの、最強最悪なラスボスを……)

平塚「さて、比企谷」

八幡「はい、なんでしょう」

平塚「今のは、なんだ?」

八幡「ははは、なんのことでしょうね」

平塚「とぼけるな」

八幡「………………」



八幡(俺が職員室にいる理由はとあるレポートが原因だ)

八幡(確か、保健体育の宿題だった気がする。「あなたにとって健康とは?」……みたいな、何の中身もない問だった気がする)

八幡(だが、今こうやって平塚女史に凄まれているのは、そのレポートに対し「健康とは健康と不健康とを区別することによって起こる錯覚であり、そもそも健康なんて概念は個人の観念で共有できるものではない」なんていう意見を書いたこととは関係のない話)


八幡(……呼び出しを食らった瞬間、俺は死を覚悟した)

八幡(なぜなら、あのメールの指示……「異性は名前で呼べ」)

八幡(「異性」………これの領域は、あまりにも広すぎるのだ………)

平塚「もう一度私を呼んでみろ」

八幡「それに何の意味があるんです?」

平塚「いいから言え」

八幡「…………………」


八幡「………静先生」

平塚「………」ピッ


八幡「ちょ、なんですか今のピッって音」

平塚「気にするな。大方LINEの通知だろう」

八幡「LINEの通知音くらい俺でも知ってるんですよ!ぼっち舐めんな!」

平塚「話をそらすな」

八幡「うっ………」

八幡(目がマジだ………)

平塚「さて、なぜ私のことを急に名前で呼んだりした?……正直、君がそんなことをすることに非常に驚いている。何か深い事情でもあるのか?」

八幡「俺、もしかして本気で心配されてる……?」

八幡(昨日のあいつらといいこの行きおくれと言い……なんで周りは俺を異常視するのか。普通にスルーしてくれたの戸塚だけじゃねぇか。だから戸塚は天使なんだよな)

平塚「当然だろう。まずこれまでの自分を見返してきたまえ」

八幡「うっ……そういわれると」


八幡(……まぁ、ここはあいつらと同じ言い訳でいいか)

八幡「……妹とトランプで負けましてね、その罰ゲームとして、異性は下の名前で呼ばなければならないんですよ」


平塚「…………………」


八幡(唖然としている………)


平塚「……そ、そんなことでか?」

八幡「は?」

平塚「その程度のことで……君はそこまで変われるのか………」

八幡「変わる………?」

八幡(そんなに大した変化だろうか……)

平塚「……ごほん、まぁいい。大した事情じゃないのならむしろ安心した。ただの遊びで気を惑わされるこっちの身にもなってみろ。いい迷惑だ」

八幡「いや、名前呼びされた程度で心が揺らぐとかさすがにこじらせ過ぎでh」

平塚「減殺豪昇龍ッッッ!!!」

八幡「ひぃっ!?あ、危ないじゃないですか」

八幡(なんとか回避したものの……い、今までのどの体罰よりもすさまじい威力だった気がする……)


平塚「次は当てるぞ、"八幡"」

八幡「………っ!」ドキッ

平塚「ふふ、どうだ。意外とクるものがあるだろう?」

八幡(そう言って平塚先生はいたずらっぽくわらった)

八幡「……そ、そんないろはみたいなことしないでくださいよ……」

平塚「仕返しと指導だ。君も覚えておけ、名前呼びをされることの悦びを」

八幡「悦び、ですか……」

八幡(……確かに、名前で呼ばれて、嫌な気持ちにはならなかったな)

八幡(むしろ、なんか、あったかいような……)

平塚「名前呼びとは親愛の証だ。それは今も昔も変わらない……それだけ、呼称というものは人に影響を与えるのだよ」

八幡「……肝に銘じておきます」

平塚「……作文の件については、また後日にしよう。今日はもう帰りなさい」

八幡(………さてさて、中途半端な時間になったが、先生からも開放されたし。帰りますか……)

八幡(……ってあれは?)

八幡(雪ノ下と、一色………?)

八幡(何かこそこそと話をしているようだが…)

八幡(……まぁ、盗み聞きはよくないよな)

八幡(普通に帰るか……)

自宅ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

八幡「問題はクラスの奴らなんだよなぁ…」

八幡(帰ってすることはと言えば一人寂しく円卓会議だ)

八幡(議題は『Dメールの任務遂行における作戦』)

八幡(今の最難関は、『偶然クラスの女子から話しかけられた場合どうするか』)

八幡「………いや、待てよ」

八幡「そんな可能性1ミリもねぇな」

八幡(かくして、これにて解決)

八幡(さて、寝るか)



ブー ブー



八幡「…………?」

八幡「……メール、だと?」

八幡(送り主を確認する)

八幡(………それはこの前と同じ、俺の知らないアドレス)

八幡(Dメールを送り付けてきた本人……そのアドレスから、再びメールが届いた)

八幡(馬鹿な………?)

八幡(二通目、だと………?)

八幡(つまり……1通目のDメールについては、無事クリアということでいいのだろうか……)

八幡(そんなことよりも、二通目の内容だ)

八幡(また1通目のような、とんでもないものじゃないといいんだが………)


八幡(……このメールには俺の未来がかかっている)

八幡(それをひたすら繰り返す)

八幡(どんなにくだらない事でも、守らなければならない)

八幡(そうしないと……未来は)

八幡(それだけの覚悟を決めて、Dメールを開く)

八幡(………そこに、書かれていたのは)

『週末誰か一人をデートに誘え』



八幡「ちょっと待ってくれ」




今日は終わり

観測中の方がいらっしゃるようなので
とりあえず安価だしとく
誰を誘う?↓1

翌日・教室ーーーーーーーーーーーーーーーー

八幡(………………)

結衣「あ、おはよヒッキー」

八幡「おう、おはよう、結衣」

八幡(…………さて、どうすべきか)


八幡(二通目のDメールの内容……それは『誰か一人をデートに誘え』。一通目と比べるとかなり難易度は上がっている)

八幡(名前呼びをしてから、デートに誘う、か……これもしかして俺に彼女ができるまで続くんじゃないだろうな)

八幡(まぁ、悲劇的な未来を迎えるよりはましだ。……いずれ決着をつけねばならないことでもある)

八幡(しかしそうは言っても、いきなりあいつらの誰かをデートに誘うのは……)

八幡(……そういえば、由比ヶ浜となんかデートの約束してた気がする……いやでもな……やっぱりまだその時じゃないような……)

八幡(一色となら擬似デートっつー名目で誘えそうではあるが……)

八幡(………待てよ?)

八幡(このDメールの指示……『誰か一人をデートに誘え』)

八幡(誰か一人………)

八幡(つまり………)

八幡(男でもよくね?)

戸塚「で、八幡!話って何?」

八幡「あぁ、彩加……いや、今度の日曜日のことなんだけどな?」


八幡(前回のDメールではきちんと『異性』という条件がつけられていた)

八幡(しかし、今回はそれがない)

八幡(つまり……性別は一切関係ない!)

八幡(重要なのは、今週の日曜、俺が誰かとデートをする、これだけだ)

八幡(ならば、ここは一番断られなさそうでかつ気楽に誘える戸塚を誘うべきだ)

八幡(楽なミッションだったぜ……どうだ、未来の俺!俺は俺のやり方で悲劇を回避するぞ!)


戸塚「あ、そうそう!今週の日曜日ね、ぼく市内大会に出場するんだ!」

八幡「」

戸塚「できたら八幡も来て欲しいな……って八幡?どうしたの目がすごい速度で濁っていく!?」

八幡「」

八幡「……はっ、いやなんでもないんだ。そっか、頑張れよ彩加。応援するからさ」

戸塚「うん、ぼくがんばるね!今度こそ県大会に出るんだ……」

戸塚「……で、八幡の用事って?」

八幡「あぁ、大したことじゃないから。気にしないでくれ」

戸塚「ならいいけど………」




八幡(詰んだ)

八幡(なぜこのタイミングで大会が入るんですか。テニスの神様は俺のことが嫌いらしい)

八幡(戸塚とデート……くっ、こうなったら材木座を………)

八幡(いや無理だ。想像しただけで吐き気をもよおした……)

八幡(……んじゃ、小町に……)

八幡(いや駄目だ……高校生になってからというもの小町は毎週毎週友達とどっか出かけてるんだよなぁ……俺のせいで小町の友人関係を壊すわけにもいくまい)

八幡(………腹くくるしかないのか)

八幡(……なにか、裏技はないか……)

八幡(…………待て)

八幡(俺の灰色の脳細胞が告げているぞ……逃げ道は、まだ残されていると)

八幡(『誰か一人をデートに誘え』……)

八幡(……そうか、わかったぞ!)キュピーン

八幡(指示に書かれているのは"デートに誘え"ということ………)

八幡("デートをしろ"とは、どこにも書いてなどいない!!)

八幡(つまり!)

八幡(断られたとしても、それでミッションは達成なわけだ……!)


八幡(そうと決まれば、話は早いさ)

八幡(俺が比較的デートに誘うのに抵抗がなく、誘ったとしてもまず断ってくれるであろう、そして断られても俺がそんなにダメージを受けない相手……)

八幡(……平塚先生を、デートに誘う!)

職員室ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

平塚「さて、比企谷」

八幡「はい、なんでしょう」

平塚「今のは、なんだ?」

八幡「ははは、なんのことでしょうね」

平塚「とぼけるな」

八幡「…………」


八幡(何このデジャヴ)


平塚「……先ほど私に言ったことを復唱してみろ」

八幡「それになんの意味があるんです?」

平塚「いいから言え」

八幡「……………」


八幡「日曜俺とデートしてください静先生」

平塚「」ピッ


八幡「もう聞き逃さねぇぞ!!アンタ今俺の声録ったろ!!」

平塚「心外だな。私が君に無断でそんなことをするはずがないだろう?」

八幡「誤魔化せると思ってんの!?逆にすごいわ!ていうかマジでやめてください!それ俺の社会生命に関わるんで!」

平塚「君にそんなものがあるのか?」

八幡「教師としてあるまじき暴言!!」

平塚「まぁまぁ、そんなことはいいじゃないか。それよりもだ……比企谷、どういうつもりだ?」

八幡「う………」

八幡(野獣の眼光……!)

八幡(俺がここで『冗談でーすwwww』なんて言ったら半殺しにされてただろうな…)

平塚「……君は生徒で、私は教師だ。わざわざ『デート』なんていう言い回しを使うからには……そういうこと、になるのだろう?」

八幡「………はい」

平塚「その君と私の関係性を理解しているのならば……君のしてることが善悪どちらに与するのかは……いうまでもないな?」

八幡「承知の上です」


八幡(そう。俺と先生は教師と生徒)

八幡(決して特別な関係となっては行けない間柄だ)

八幡(先生もいっぱしの教師だ。そういった倫理観はきちんと持ち合わせているだろう)

八幡(だからこそ、俺は先生を選んだ)

八幡(教師である先生が生徒の俺の誘いを受けるわけがないし)

八幡(そういうことだから、断られたとしても大してダメージも少ない)

八幡(我ながら完璧な作戦だ)

八幡(ただ、なにか人間として大事なものを着々と失い始めているような気がするのは気のせいだろうか……)

平塚「わかった。今週の日曜だな。開けておく」

八幡「そうですか、残念です。では」

八幡「って、は?」

平塚「どうした。私は行くと言っているんだ。もっと喜べ。誘ったのはお前だろう」

八幡「いやだって、ほら、倫理上問題があるみたいなことをさっき……」

平塚「そんなことは些細なことさ。別に休みの日に生徒と出かけるくらい、バレなければどうということはない」

八幡「いや、しかしですね……」

平塚「そもそも君と私がそんな関係になることなど、ありえないしな」

八幡「いえ!そんなことは……」


平塚「……どうだ?妹さんとのトランプは、楽しかったかぁ?」

八幡「」

八幡(目が笑ってねぇぇぇぇ)


平塚「まったく……君が素でこんなことを言い出すなんてあるはずがないだろう?」

平塚「まさか気付かないとでも思ったのか?」

八幡「おっしゃる通りで……」

八幡(今考えてみればだいぶキャラじゃない)

平塚「ま、そんなわけだから。誘ったなら誘ったなりの矜持を持て」

八幡「……ですが、先生にも仕事は……」

平塚「仕事?そんなものはない」


教師「平塚先生、日曜日の市内テニス大会の件ですが………」

平塚「あ?」

教師「ひぃっ……ほ、他を当たります…」

八幡「おい……」

平塚「というわけだ。まぁそんなに気をもむな。共にラーメンを食べた仲だろう。友だちと遊びに行くくらいの感覚でいておれ」

八幡「と言われましても……」

八幡(友達なんかいたことないし……)

平塚「罰ゲームであったとしても、君にこんな行動力があったことには素直に驚いているし、賞賛に値するものだと思っている。一年の頃の君なら、たとえ罰ゲームであってもこんなことはしなかったはずだ」

八幡「はぁ………」

八幡(罰ゲームなんかより、もっと重いものがかかってるからこその行動力ではあるのだが)

平塚「君を奉仕部に入れてよかった。今つくづくそう思うよ」

八幡「先生……」

平塚「今日は帰ってデートプランをじっくりと練りなさい。日曜日、楽しみにしてるぞ」

八幡「………はい!」




平塚「………ふふふ」

奉仕部ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

八幡「うーす」ガラガラッ

雪乃「……あら、遅かったわね」

いろは「待ちくたびれましたよー」

八幡「ちょっと職員室寄っててな。って待ちくたびれたってどういうことだよ」

いろは「えっへへー、わかりませんかぁ?」

八幡「……はいはいあざといあざとい」

いろは「むーっ、ちょっとくらいのってくれてもいいのに……」

結衣「職員室で何してたの?」

八幡「授業でわからないところがあったから質問してたんだよ」

雪乃「………」

いろは「………」

結衣「………」

八幡「………え、何お前ら」

雪乃「比企谷くん……あなた、教師とコミュニケーションなんて取れたの?」

八幡「開口一番罵倒かよ!」

いろは「いやでも先輩自らが補習を受けに行くってなんかシュールすぎます!」

結衣「に、似合わないよね……」

八幡「言いたい放題か!ほっとけよ!」


八幡(俺がひとつ言い訳を重ねる度にこいつらから呆れられてる気がする)

八幡(なんでだ?自分では当たり障りのないことを言っているつもりなのに……)


雪乃「で、本当は何をしていたの?」

八幡「嘘じゃねぇよ!倫政で理解出来ないとこがあって聞いてきたんだよ!」

結衣「り、りんせー?」

いろは「結衣先輩それはちょっとやばいです」

雪乃「そう………ならいいのだけれど」

八幡「逆にここで嘘ついてどうするんだ」

結衣「確かにそうだよね……」

いろは「うーん……まぁそうですか」

結衣「そういえばヒッキーさ、今日の朝さいちゃんと何話してたの?」

八幡「はっ!?」

八幡(み、見られてたのか……)

いろは「……せんぱーい、どういうことですか?」

雪乃「はぁ……だから言ったのに」

八幡「な、なんでお前に凄まれなきゃならないんだ……あれだよ、今週の日曜、彩加が大会に出るんだ。そのことについて色々とな…」

結衣「へぇ!さいちゃんすごいね!さすが部長さん!」

雪乃「……つまり、あなたは戸塚くんからその応援に来てくれないかと頼まれた……ということでいいのかしら?」

八幡「頼まれてはねぇよ。できれば来て欲しいなって上目遣いで……」

八幡(……やべ、思い出したら行きたくなってきた。でも無念、俺の日曜は平塚先生に奪われてしまっているのだ……)

いろは「……ほうほう、では、みんなで応援行きませんか?」

結衣「おっ、いいかも!みんなでいけばさいちゃんも喜ぶよ!」

八幡「え、そ、それはだな……」

八幡(この流れはアカン)

雪乃「……どうしたの?日曜日になにか別の用事でもあるのかしら?」

八幡「あぁ実はそうなんだ。だから戸塚の応援には行けねぇんだよ……残念だけどな……ほんとうに」

いろは「………ふぅ〜〜〜ん」

八幡「な、なんだよその顔」

いろは「べっつにぃ〜?なんでもないですぅ〜」

八幡(くっそ可愛いなこいつ)

雪乃「用事があるなら仕方ないわね。その日は私も用事があるの」

いろは「あぁ、そうなんですか。じゃあ戸塚先輩には悪いですが……」

結衣「うーん、あたしだけでも行ってあげようかなぁ」

八幡「……やめといた方がいいと思うぞ」

八幡(戸塚は可愛いが男だ。男テニの応援に女子1人で行くのは……あらぬ誤解をまねきかねない)

結衣「あ……確かに、そうかも……」

八幡(こいつはアホだがこういうことには敏感だからな……気付くのも早いか)


雪乃「……ところで比企谷くん、用事って何かしら?」

八幡「お前にいう義理はねぇよ」

八幡(平塚先生とデートですなんていえるわけがないだろ)

雪乃「確かにそうね、あなたの日曜をどうしようと、あなたの勝手だったわ」

八幡「わかったら干渉すんな。俺にもプライベートな時間はあるんだよ」

雪乃「ええ、ごめんなさい」




八幡(……その日はそれで会話は終わり)

八幡(残りの日数も変わり映えしない学校生活を送り)

八幡(そして……その日はやってきた)

一旦切ります
気が向いたら寝る前にまた書きます

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年02月15日 (月) 17:40:00   ID: _zqotJin

わりと面白い。

2 :  SS好きの774さん   2016年02月15日 (月) 18:23:49   ID: 9SYpJN3V

是非続けてくれ

3 :  SS好きの774さん   2016年02月15日 (月) 21:23:58   ID: jRC5cTWX

続けてけれ

4 :  SS好きの774さん   2016年02月16日 (火) 00:58:35   ID: oZ3gWo1n

いいっす

5 :  SS好きの774さん   2016年02月16日 (火) 01:29:45   ID: WvbOP1Ne

めっちゃ期待してます!!!

6 :  SS好きの774さん   2016年02月17日 (水) 07:44:51   ID: a5DVDsCv

これ送り主ゆきのんでしょ
知らないアド→先日シュタゲを勧めた→Dメールのフリをして自分を名前呼びにさせる
やはり俺が名探偵だったか…(誰でもわかるな)

7 :  SS好きの774さん   2016年02月20日 (土) 00:43:21   ID: GmKTaVMk

八幡が痛い。
この展開アニメと同じ展開じゃんってすぐ信じちゃうって…
そりゃ材木座に鼻で笑われますわ…

そんな事言ってたら話進まないんだろうけどさ

8 :  SS好きの774さん   2016年02月21日 (日) 10:11:59   ID: eXHm5wmd

それだけシュタゲというコンテンツは人に影響を与えるものなのさ

9 :  SS好きの774さん   2017年02月18日 (土) 22:06:01   ID: 4j3DpXMS

お前を見ているぞ

10 :  SS好きの774さん   2017年02月19日 (日) 20:11:02   ID: CuLJUWax

汝に裁きを

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