女「ねぇ、私を受け止めて」(35)
男「…それは…出来ない」
女「どうして?もう貴方は私から逃げられないのに」
男「お前だけは絶対に……」
女「許せない?ねぇ、許せない?」クス
女「いいよ、許さなくて」グイッ
ジャラジャラジャラ
男「ぐっ……!!」ギギギ
女「許してもらえない方が私を思ってくれるでしょ?」
ジャラジャラジャラ
男「ぐぁぁぁっっ!!」ギギギ
女「折らないように調節してるから、安心して」グイッ
男「お前…っ!!何で…こんなこと……!!」
女「一目惚れだった」
女「貴方を見た瞬間、私は狂気に飲まれたの」
男「その話はもういいっ!!」
女「私には貴方しかいない…」ニコ
ジャラジャラジャラ
───
──
─
数日前
男「ただいまー」ガチャン
シーン
男「あれ、誰もいないのか?」スタスタ
男「おーい」ガチャン
女「お帰りなさい」ニコ
男「えっ、誰?」ビクッ
女「お帰りをお待ちしておりました」
男「いや、だから───」
ポタポタ
男「────血?」
女「ご家族はコチラに」スッ
男「……………………………………は?」
男母「─────」
男父「─────」
妹「──────」
女「首を切り裂いたから、お部屋を汚しちゃいました」
女「痛みはなかったと思います、一瞬でしたから」ニコ
男「………………」ガクガク
男(何だこれなんだこれナンダコレ)
男「はっ…はっ…くっ」ドクン
女「呼吸を整えて」スッ
男「ひっ?!」ドサ
女「さぁ、行きましょう」グイ
男「や、やめろっ!離せ!」
女「どうして?貴方はもう私のものでしょ?」
男「えっ……?」
女「貴方の所有権は私に移ったの」
女「だから、貴方を連れていく」
男(コイツやばすぎる……?!)
男(相手は女だ、力でなら負けないはず)ググッ
女「………………」キラ
男「…………っ!」ゾワ
男(ダメだ、相手は凶器を持ってる……)
女「貴方は少し眠っていて」
女「ちゃんと運んであげるから」スッ
男「なにする気───」
ドスッ
男「────ぐふぉ?!」
女「おやすみなさい」
───
──
─
ジャラジャラ
男「………………」
女「最初は手錠にしようかと思ったんだけど」
女「貴方には鎖が似合うと思って」ジャラ
男「………………」
女「よく似合ってる」ニコ
男「お前は誰なんだ…………」
女「もう知っているでしょ?」
女「貴方の大切な家族を殺した人間」
女「貴方の復讐対象」ニコ
男「何で…何で殺したんだ!!」ジャラ
女「貴方には必要ない」
男「な……に?」
男「必要ないって、どういう意味だ」
女「家族なんていらないでしょ?」
男「…………お前は」ギリッ
女「捨てたがってたじゃない」
男「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!!」
女「私は知ってるよ」
女「貴方を見ていたから」
男「何を知ってんだよ!」
女「貴方が入院してた時から」
男「──────」ドクン
男「あの場所に…いたのか?」
女「貴方は捨ててしまった」
女「あの時の時間を…だから覚えてない」
女「私のことも…」
男「俺は…俺は…!」ガクガク
女「思い出させてあげる」ニコ
───
──
─
数年前 精神科病棟
少年「ひぐっ…うぐ…!」ボロッ
幼女「ふん…」プイ
ナース「はぁ、またやったの幼女ちゃん」
幼女「知らなーい」
ナース「どうして他の子をいじめるの?」
少年「うえぇぇん!!」
幼女「うるさい」バキ
ナース「こら、幼女ちゃん!」
幼女「ウジウジしてて気持ち悪い、こんな子いてもいなくても同じでしょ」
ナース「そんなことないわ、少年くんは一人しかいないのよ」ナデナデ
少年「ひぐ…」ギュッ
幼女(ほんと気持ち悪い…)タッタッ
ナース「幼女ちゃん!まだお話は…!」
少年「うえぇぇんん!」ギュッ
ナース「あっ、行かないよ、そばにいるからねー」ナデナデ
幼女(ここに入れられてから、毎日イライラする)
幼女(私はあんな子達とは違うのに…どうしてこんなとこに…!)
幼女「面白くなーい!」タッタッ
幼女(どこからか外に出られないかな)
幼女(屋上に来たはいいけど、鍵開いてないし)チラッ
幼女「あれ…?」
キィィィ
幼女「開いてる?」スタスタ
ブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチブチ
幼女「………………」
幼男「………………」ブチブチブチ
幼女(アレ、何してるんだろ………)
幼女(カラスの羽を引きちぎってる…よね?)
ブチブチブチ グチャ
幼女「あっ……」
幼男「……………」ピタ
幼女「…………」キィィィ
幼男「…………」クルッ
幼女(この子、目が逝っちゃってる)
幼男「……………」
幼女「楽しい?」
幼女(何聞いてるんだろ…)
幼男「あは…」
幼女「?」
幼男「あはははははっ!!」
幼男「そんなこと聞いてくる奴、初めてだよ」
幼男「最高に楽しいよ、お前もやるか?」
幼女(……何この子)
幼男「ほらっ!」ポイ
幼女「きゃっ?!」サッ
幼男「へぇ、案外普通に驚くんだな」
幼女「…………」バッ
ガシッ
幼女「調子に乗らないで」ググッ
幼男「……………」
幼男「殺せよ」
幼女「本気で殺すよ?」
幼男「…………」ニコ
幼女「っ!!」ブン
バキッ ゴキッ
幼女「……………」ボロッ
幼男「ふぅ…………」パッパッ
幼女「やり返すなんて聞いてない」
幼男「言ってねぇよ」ブン
バキッ
幼女「ぐっ……鼻血でたぁ」ボタボタ
幼男「まだ終わりじゃないから」ブン
バキッ バキッ バキッ
幼男「おーい、生きてるか?」
幼女(ほんとに死にそう……)
幼男「お前、ほんとに面白いな」
幼男「普通なら逃げるだろ」
幼女「逃がしてくれるの?」
幼男「どうだろうな」ニコ
幼女「殺したい」
幼男「ご自由に」
ガチャ
ナース「見つけたっ!こんなとこにいたのね」ハァ
ナース「カラスの死体…また男くんね」
幼男「よっ、ナース」ニコ
ナース「ナースさん、でしょ?」ニコ
ナース「また、手錠外したのね……」
幼男「こんな玩具じゃなくて本物持ってこいよ」
ナース(本物なんだけどねぇ)
幼女「………………」ボロ
ナース「幼女ちゃん大丈夫?!」
ナース「幼男くん、女の子を殴ったの?」ニコ
幼男「女だろうが俺に向かってくるなら、ぶん殴る」
ナース「ふふふ、お仕置き決定ねー」
幼男「ナースのはお仕置きじゃねぇよ」
幼男「薬漬けだろ」ジッ
ナース「………………」
幼女(薬漬け……?)
ナース「幼女ちゃん、手当てしてあげるから中に入ろ?」クイッ
幼女「あの子は?」
ナース「……幼男くんも時間には戻ってきてね」
幼男「あぁ、わかってるよ」
ナース「…………」スタスタ
幼女「あっ…………」スタスタ
幼女「………………」チラッ
幼男「………………」ヒラヒラ
幼女の病室
ナース「あぁ、こんなに顔殴られて」ポンポン
幼女「痛い…!」
ナース「ちょっと我慢してね」ポンポン
幼女「あの子、なんなの?」
ナース「ちょっとヤンチャな男の子よ」ポンポン
幼女「違う」
ナース「んー?」ポンポン
幼女「あの子は他の子とは全然違う」
ナース「………………」ピタ
ナース「あの子は他の子と変わらないよ」
幼女「そんなはずない…だってあの子…」
ナース「幼女ちゃんと同じ」
幼女「えっ?」
ナース「幼男くんも幼女ちゃんも他の子も」
ナース「同じだから、ここにいるのよ?」ニコ
幼女「…私達がおかしな子だって言いたいの?」
ナース「そんなこと思ってないよ」
ナース「うん、手当てはこんな感じかな」
ナース「今夜は寒いしちゃんとお布団に入って寝てね」バサ
幼女「まだ眠くない…」
ナース「じゃあ、お姉さんが子守唄を歌ってあげようか?」ニコ
幼女「うるさいからいらない」
ナース「うぅ…お姉さん泣きそう」
幼女「ちゃんと寝るから…」モゾ
ナース「うん、良い子ね」ナデ
ナース「それじゃ、おやすみなさい」
幼女「おやすみなさい」
───
──
─
深夜
幼女「やっぱり寝れなーい」パサ
幼女「……あの子、もう寝ちゃったかな」
ギシッ
幼女「どこの病室だろ」
幼女「………………何で」
幼女「何でこんなに気になるんだろ?」
ガラガラ
幼女「見つからないようにしないと」スタスタ
幼女「上の階にいるかな……」
カツン カツン
幼女(足音…!!)サッ
ナース「………………」カツン
幼女(ナースさん、見回りかな)
幼女(ついて行ってみよう)スタ
地下
ナース「………………」カツン
幼女(病院に地下があるなんて知らなかった…)
幼女(暗くて良く見えないけど…不気味なところ)
ナース「まだ、起きてるの?」
幼女「っ?!」ビクッ
ナース「いい加減もう寝たら」
幼女(気付かれてる…?)
ナース「もう少し薬の量を足す?」
幼男「もう…効かねぇよ」
幼女(…あの子の声)
幼女(姿は見えないけど、ここにいるんだ)
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