一騎「……総士じゃ駄目か?」剣司「…………」 (38)

剣司「……」カタカタ

一騎「剣司、入るぞ?」

剣司「おう、いいぜー」カタカタ

一騎「……何やってるんだ?」

剣司「ん、海神島への移動作業も一段落ついたからな。アルヴィスから持ってきたデータで同化現象の特効薬の研究を再開してんだよ」

一騎「身体、大丈夫なのか?」

剣司「大丈夫だ、キーボード打ってる感覚があんま無くてタイプミスが増えたくらいだからな」

一騎「…あまり無理するなよ」

剣司「それをお前が言うかねぇ……」ハァ……

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剣司「で、どうしたんだよ一騎。どっか悪いとこでもあんのか?」

一騎「……いや、アイツの事について聞きたくて来たんだ」

剣司「アイツ……ああ、まぁそうだよな」

一騎「…………」

剣司「……結論から言うぞ、一騎」

剣司「マークニヒトから見つかったあの赤ん坊……こないだ検査の結果が出たんだが」ペラッ

剣司「過去のデータと照らし合わせた結果、完璧に一致した。……アイツはほとんど、皆城総士そのものだったんだ」

一騎「…………」

剣司「……驚かないんだな」

一騎「……なんとなく、そんな感じがしてたんだ」

剣司「……島のコアみたいな生命なのか、美羽ちゃんみたいなエスペラントなのか……そのいずれとも違うまったく新しい存在なのか」

剣司「ま、そのうち経過を見ていけばわかるだろ。で、誰がこの子を育てるかだが……」

一騎「俺がやる!」

剣司「言うと思ったぜ……でも大丈夫か?色々と大変なんだぞ、子育てって」

一騎「む……やってみなきゃわかんないだろ?」

剣司「……はぁ、わかったよ。他の皆にも話しとく。けど、お前ひとりじゃなく島のみんなで面倒はみるんだからな!」

一騎「ありがとう、剣司!」

剣司「おう。んじゃ、後は名前だが……一騎、なんかあるか?」

一騎「名前……名前か」

一騎「…………総士じゃ駄目か?」

剣司「……それでいいのか、一騎?」

一騎「……あいつは、『互いの祝福の彼方で会おう』って言った」

一騎「俺の祝福の先に、島に……竜宮島に帰るときは、あいつも一緒がいいんだ。……それに」

剣司「…………」

一騎「それに……届くと思うんだ。きっと……総士にも」

剣司「(……まぁ、下手に口出さないほうがいいかね)」

剣司「……そっか、ならしっかりやれよ、一騎パパ!」

一騎「ぱ……パパ!?」

剣司「あ?パパに決まってんだろ?」

一騎「う……いや、そうなるんだけど……実感が……」

剣司「ったく……ほんとに大丈夫かねぇ?ほら着いてこい、子供に顔見せにいくぞ、一騎パパ!」

一騎「あ……ちょ、ちょっと待てって……!」

―――

『…………』

美羽「……うん、美羽もわかるよ……楽しいんだね」

真矢「……またここに来てたの、美羽ちゃん?」

美羽「あ……真矢おねぇちゃん!」

真矢「……お話してたんだ」

美羽「うん!みんなここにいるから……」

真矢「…………」

『…………』

真矢「(赤ん坊……アショーカの……)」

美羽「この子はね、まだ色んな事がわからないだって。でも、美羽の話は楽しいって聞いてくれるの!」

美羽「それに、新しいお友達とも話してるんだって!」

真矢「新しいお友達……?」

美羽「うん、その子達のことはうまく話せないみたいだけど、いいの!」

美羽「……美羽はエメリーにたくさんの事を教えてもらった。たくさんたくさん、大切なことを」

美羽「だから今度は、美羽がたくさんこの子に教えてあげるの!今度は美羽が、この子の一番の友達になってあげるの!」

真矢「美羽ちゃん……」

真矢「……そっか。それじゃあ色々教えてあげよう?美羽ちゃんが感じたこと……この子に分かってもらえるように」

真矢「さて……それじゃ今日はもう帰ろう?お母さんが料理作って待ってるよ!」

美羽「うん、ちょっと待ってて……」

『…………』

美羽「……じゃあ、またね!またたくさん、お話しようね!」

『…………』

美羽「……じゃあ帰ろう、真矢おねぇちゃん」

真矢「うん……帰ろう」

―――

??『……まさかこんな事になるなんて……』

??『……ごめんね、本当はもう少しゆっくり眠らせてあげたかったけど……』

??『あなたに任せるしかないわ……』

芹「…………」

織姫『……次のコアを、希望をよろしくお願いね……芹ちゃん』

―――

芹「……ん、織姫ちゃん……」

芹「――っ!?ここは……竜宮島?」

芹「……海に沈んでる……ファフナーに乗ってるから今は大丈夫だけど……どうしよう……」

チカッ……チカッ……

芹「え……?あれは……」

スゥ……ズズン……

芹「……ブルクだ……ここは浸水してないの?」

―――

芹「…………」

芹「(あの後、流れるようにコックピットから出されて。外に出たら光に誘導されて、なぜかまだ動いてたバーンツヴェックに乗って……)」

芹「……それに、同化現象が……触ったものが同化されなくなってる」

芹「いったい何が……」

ゴゴン……

芹「…………着いた」

チカッ……チカッ……

芹「また……まるで、呼ばれてるみたい」

―――

芹「あれ……この道、もしかして……」

ウィーン……

芹「……やっぱり」

『…………』

芹「ワルキューレの、岩戸……」

芹「……そっか、私を呼んでたのは織姫ちゃんだったんだ……」

芹「……また、還っちゃったんだね」

芹「……うん、せっかく呼んでくれたんだもん。また隣で眠らして……」

ゴポッ……

芹「……え?」

ザパァ……

『…………』

芹「………………」

『……エ』

『エェーン!!エェーン!!』

芹「……え」

芹「えぇーーー!?!?!?」

芹「あ、あ、赤ちゃん!?な、何で……!?」

カノン『……参った。完全に予想外だった』

芹「え……カノン先輩!?」

カノン『まさか島のミールが生と死の循環を学ぶためにコアを赤ん坊の状態から育てようとするとは……』

翔子『でも、私たちはあまり物理的に干渉できないし……』

カノン『……というわけだ、芹』

芹「へ……?あの、状況が……?」

カノン『頼む。この子を育ててくれ』

芹「え、えぇーーー!?」

衛『大丈夫だよ、僕らもついてるし!道具とかの場所なら把握してるから!』

道生『ああ、大人もいるし、困った事があったらいつでも聞けばいい!』

暉『……ま、アルタイルを眠らせてるために力を使ってるから、あんまり出てこれないと思うけどな』

芹「え、えと……あの……」

『エェーン!!』

カノン『ええいツベコベ言うな!まずは身体を拭くぞ!タオルはこっちだ着いてこーいっ!!』

芹「は、はいーっ!!」ダッ

広登『よーし、頑張れよ芹!』

芹「な、なんか無茶苦茶だぁ……!?」

―――

ミツヒロ「…………」

ミツヒロ「……教えてくれ」

ミツヒロ「俺は……どうすればいいんだ……!!」

―――

ミツヒロ「……!」

ミツヒロ「ここは……俺は、マカベと戦って……そして……」

ミツヒロ「アイツに連れてこられて……」

ミツヒロ「ここは……宇宙、なのか?」

グレゴリ『ぐっ……!』ピキッ……

ミツヒロ「……!おい、お前……体が!?」

グレゴリ『……ベイグラントがやられて、この肉体も限界みたいだ……』

グレゴリ『ミツヒロ……僕の意思を君に託すよ……』

ミツヒロ「な……何を……」

グレゴリ『僕はまた……あの結晶で生まれ変わる……』ピキ……

グレゴリ『だから……新しいボクを育ててほしいんだ。君が受け継いだ……強い憎しみで』ピキピキ……

ミツヒロ「待て……待ってくれ――!」

グレゴリ『そして……憎しみを更に強くして……いつかアルタイルを飲み込んで……世界を憎しみで埋めてくれ―――』

グレゴリ『頼んだよ……ミツヒロ……』ピシッ……

パリーン……

ミツヒロ「う……うわぁぁぁぁぁ!!!」

―――

ミツヒロ「…………」

『…………』

ミツヒロ「……本当に、結晶の中に赤ん坊が……」

ミツヒロ「……お前は、俺の中の憎しみで育てろと言った」

ミツヒロ「……確かに、俺は憎しみでいっぱいだ……すべてを滅ぼしたくなるほどに……」

ミツヒロ「……でも、俺は取り戻してしまった……!以前の記憶を……仲間を、アイをこの手に掛けた時の事を……」

ミツヒロ「二つの心が混ざって、ぐちゃぐちゃになって……もう何をすればいいか、わからないんだ!」

ミツヒロ「ああ……アイ……ビリー……父さん……マカベ……マヤ……」

ミツヒロ「教えてくれ……俺はどうすればいい……」

ミツヒロ「俺はこれから……どうやって……」

『…………』

ミツヒロ「…………」

ミツヒロ「……今は、何をすればいいかわからないけど……」

ミツヒロ「……きっと、お前が育つまでに、答えは出るだろう……」

ミツヒロ「ああ……宇宙(ここ)は、一人で考え事をするには……」

ミツヒロ「少し、贅沢な位だ―――」

『……彼は、今日も悩んでいる。迷っている』

『僕の後ろからは、とても強くて黒い力が流れてくるけれど』

『でも……彼を通じて流れてくる、不思議な感状が僕を迷わせるんだ』

『なんで彼はあんなに悩むんだろう……僕にはわからない』

『ねぇ。君たちなら、どうするんだい―――』

『そんな時は、お話するの』

『お話を聞くと、わからないことがわかるようになるのよ』

『私は、あの子のお話を聞くのが楽しい』

『彼女は毎日教えてくれるの。私の知らないこと、私が知りたいこと』

『私と彼女は『友達』……ってもので、友達と話すと……なんていうのかな……』

『えーっと……『あったかい』……って気持ちになるの!』

『ああ、これが『心』なんだなぁ……って、ね!』

『ありがとう、ミワ!またいっぱい、お話しようね!』

『……私も、一番大切な友達に育てられてるの』

『彼女といると、とても面白いわ』

『あの子、泣いたり、笑ったり、怒ったり……』

『……ふふ、今度は悩んでるみたい。私の名前をどうするか、ですって』

『……ええ、名前は大切よ。命と一緒に、子供に授けられる、大切なもの』

『だから……教えてあげましょう。みんなが戻って来たとき、あなたがくれた、私の名前を』

『……ずっと待ってる。彼女と一緒に、ここにいるわ。だから……戻ってきてね』

『戻る……帰る……また、会う』

『僕にはまだよくわからない……けど……』

『大切なことっていう事は……わかった気がする』

『前に……誰かと約束したんだ……確か……』

「ほーら、これがお前のパパですよー!」

「からかうなよ、剣司……」

「いいから、ほれ!ちゃんと抱っこしてみろ!」

「お、おぉ……」

「よし、じゃあはじめての挨拶だ。ちゃんと名前で呼んでやれ!」

「ああ……えっと……」

『……ああ……そうだ。確か―――名前は―――』



一騎「……その……はじめまして、総士」

『…………』

剣司「お、笑った……?」



『うん、はじめまして(また会えた)、一騎―――』

―――終―――

以上です。

この話は、>>1が「一騎が総士のパパやるなら芹ちゃんが織姫(乙姫)のママやってもいいよね?」とか考えたことから始まりました……なぜグレゴリさんまで増やしたし

最近ファフナーSSが増えてとても嬉しい……ありがとう、>>1も負けません(何が)

それでは、またいつかお会いしましょう

前作もよろしければどうぞ

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