やはり俺の周りの青春ラブコメは壊れている (63)
ー 奉仕部、部室 ー
八幡「二人とも、今から大事な話がある。……聞いて欲しい」
雪乃「いきなり何かしら、大事な話というのは」
結衣「ていうか、ヒッキー、改まり過ぎだし。どんな話なの?」
八幡「実はだ……。少し言いにくいんだが、俺に恋人が出来た」
雪乃「!?」
結衣「!?」ガタッ
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結衣「な、なにそれ、どういう事だし、ヒッキー!」
雪乃「落ち着きなさい、由比ヶ浜さん。そこの男の事だから、きっと二次元の話よ。とうとう現実とゲームの区別がつかなくなってしまったのよ。だから、何も驚く事なんかないわ」ツルッ
ガチャンッ!!
結衣「ちょっと、ゆきのん、大丈夫!?」
雪乃「いけないわ。つい手が滑ってしまってカップを割ってしまったわね。今、掃除機を持ってくるわ」ガタッ
結衣「あ、なら、私は新しい紅茶のおかわりを淹れるね!」
八幡「いや、その前に雑巾を持ってこいよ。あと、掃除機は学校にないからな。ほうきとちり取りだろ」
雪乃「ちょっとした冗談に決まっているでしょう。比企谷君は空気を読むという事も出来ないのね。まったく呆れてものも喉を通らないわ」
八幡「そんなに心配なのか? 大丈夫か、おい?」
ー 片付け後 ー
八幡「それで、さっきの話の続きなんだがな」
雪乃「ああ……確かラブプラスというやつだったかしら? ゲームの中で恋人と付き合っているような体験が出来るというものにハマっているのよね?」
結衣「あ、それ私も聞いた事あるし! 本当に市役所まで結婚を申し込みにいった人もいるとか、そんなヤバイゲームなんでしょ?」
雪乃「比企谷君、あなたのそのお粗末で低レベルな脳味噌では仕方のない事かもしれないけれど、現実とゲームを混同しては駄目よ。どれだけよく出来ていようと、あなたの目の前にあるものはデータとプログロムでしかないのよ」
八幡「いや、いつから俺ラブプラスやってるって事になってんだ? 今まで一回もやった事ないぞ」
雪乃「では、脳内彼女というやつね。頭の中で恋人を作り上げてしまうという……。流石にそこまでくると、私も良い精神病院をお勧めするぐらいの事しか出来ないのだけど……」
結衣「ヒッキー、恥ずかしがる事ないよ。病気は治さないといけない事だし」
八幡「だから、お前ら人の話を聞けよ」
八幡「本当に、ゲームだとか空想の中とかじゃなく、俺に恋人が出来たんだ。で、今後の事も考えて、雪ノ下と由比ヶ浜には聞いておいて欲しくてな」
雪乃「比企谷君、先に言っておくけど、少し優しく話しかけられたぐらいでは、それは恋人と呼べないのよ。まさか、あなたがそこまで一人よがりを拗らせているとは思いもしなかったわ」
八幡「だから、やめてもらえませんか? 俺かなり真面目に話してるんだけどな」
結衣「そんな訳ないし! ヒッキーに恋人とか有り得ないし!」
八幡「……俺、どんな風に思われてんだよ」
雪乃「とにかく、あなたの虚言に付き合っているほど、私達は暇ではないの。早く嘘だったと白状する事ね」
結衣「そうだよ、ヒッキー! 嘘だよね! ていうか、嘘しか認めないし!」
八幡「いや。嘘じゃない。俺は今……戸塚と付き合ってる」
雪乃「!?」ガタッ
結衣「!?」ガチャンッ
八幡「……おい、またカップ落として割ったぞ」
コンコン
戸塚「失礼するね」ガラッ
八幡「お、来たか、戸塚」
戸塚「うん。……えっと、八幡。話はもう済んだ?」
八幡「ああ、たった今、付き合ってる事を話したところだ」
雪乃「…………」
結衣「…………」
戸塚「そう。じゃあ、丁度良かったね。あと、八幡。付き合ってるんだから、戸塚はやめてって言ったのに、また……」
八幡「おう、悪い。いつもの癖でな……。その……彩加//」
戸塚「うん//」
雪乃「…………」
結衣「……嘘だよ、こんなの」
雪乃「……戸塚君、そこの男に一体どういう脅迫をされたのかしら?」
戸塚「違うよ。本当に付き合ってるんだ。それに、僕の方から告白したんだし」
結衣「で、でも、彩ちゃん、男の子じゃん。なのに……」
戸塚「うん。でも、八幡の事が本当に好きなんだ。胸が苦しくて苦しくてどうしようもないぐらい好きなんだよ。だから、駄目元で八幡に告白したんだ。そしたら……」
八幡「俺も……戸塚、じゃなくて彩加の事が好きだったからな。だから、お互いに告白して付き合う事にした」
雪乃「……そういえば、今日はエイプリルフールだったわね、由比ヶ浜さん」
結衣「あ、そうだね! だからか!」
八幡「いや、春にはまだ早いだろ」
戸塚「やっぱり簡単には信じてくれないか……。それなら……」
戸塚「ねえ、八幡。少しだけこっちを向いて」
八幡「ん? どうした?」
戸塚「ん//」チュッ
八幡「!///」
雪乃「!!??」
結衣「!!??」
八幡「彩加、お前、そんな急に///」
戸塚「だって、こうでもしないと二人とも信じてくれないと思ったし……//」
雪乃「」クラッ
結衣「…………」ストンッ
八幡「ほら見ろ、二人とも椅子に座り込んじまっただろ……//」
戸塚「でも、これで信じてもらえたと思うし……。それとも八幡、僕とキスするの嫌だった……?」
八幡「そんな訳ないだろ。ただアレだ……流石に照れるだろ//」
戸塚「もう何回もしてるし。ね//」
八幡「……おう。そうだけどな//」
雪乃「…………」カタカタ……
結衣「…………」ガクガク……
戸塚「そういう事で、僕と八幡は本当に付き合ってるんだ//」
八幡「ああ、ただ……。やっぱり男同士だし、そこは色々とこれから問題が出てくると思うんだよ。親とか世間の風とか、そういった面倒な事でな」
雪乃「…………」(うつむき)
結衣「…………」(うつむき)
戸塚「でも、僕たちは本当に愛し合ってるし、そんな事で付き合うのをやめる気はないんだ、もちろん」
八幡「だから、二人にはこの事を伝えときたかった。これから問題が起きたらその悩み相談に乗って欲しいと思ってだな」
戸塚「僕たちだけで解決出来ない事もあるだろうしね、やっぱり色々と不安はあるから……。だから、よろしくね、雪ノ下さん、由比ヶ浜さん」ニコッ
八幡「俺からも頼む。勝手なお願いかもしれないが、これは雪ノ下と由比ヶ浜にしか頼めないんだ」
雪乃「……そう」(うつむき)
結衣「……そうなんだ」(うつむき)
戸塚「急な話だし、二人ともいきなり言われてもびっくりするよね。だから、さっきの話はともかくとして、今は僕と八幡が付き合ってるって事だけ覚えておいて欲しいんだけど……」
戸塚「八幡は僕の大事な人だから。僕は八幡のものだし、八幡は僕のものだよ」ニコッ
雪乃「…………」(うつむき)
結衣「…………」(うつむき)
戸塚「それじゃあ、僕はそろそろ行くね。これからテニス部があるから」
八幡「ああ、またな」
戸塚「うん。夜にまたLINEするよ。一杯話そうね、八幡」
八幡「おう。楽しみにしてる」
戸塚「それじゃ、雪ノ下さん、由比ヶ浜さん。……バイバイ」ニコッ
雪乃「…………」(うつむき)
結衣「…………」(うつむき)
ここまで
八幡「……そういう訳で、俺からの大事な話はこれで終わりだ」
雪乃「…………」(うつむき)
結衣「…………」(うつむき)
八幡「つうか、カップ片付けないとな。飲み終わった後だからまだ良かったけど。さっきのほうきとちり取りは……」ガタッ
雪乃「……比企谷君。それは私がやるわ」
結衣「……うん。ヒッキーはそこに座ってなよ。……私が落としたんだし」
八幡「……そうか? なら、頼んだ」
雪乃「…………」
結衣「…………」
八幡「……?」
ー 三十分後 ー
雪乃「…………」ペラッ (読書中)
結衣「…………」ポチポチ (携帯いじり中)
八幡「…………」
ー 一時間後 ー
雪乃「…………」ペラッ (読書中)
結衣「…………」ポチポチ (携帯いじり中)
八幡「…………」
八幡「……なあ」
雪乃「…………」ピタッ
結衣「…………」ピタッ
八幡「…………」
雪乃「……何かしら?」ペラッ
結衣「……どうしたの、ヒッキー?」ポチポチ
八幡「いや……。カップ、まだ片付けないのかと思ってな……」
雪乃「……ああ、そうね。片付けないとね」ペラッ
結衣「……そうだよね。このままにしとくと危ないもんね。すぐにやるから」ポチポチ
八幡「……おう」
ー 二時間後 ー
雪乃「…………」ペラッ (読書中)
結衣「…………」ポチポチ (携帯いじり中)
八幡「…………」
ー 三時間後 ー
雪乃「……そろそろ部活を終わりにしましょうか」ペラッ
結衣「……そうだね、ゆきのん」ポチポチ
八幡「カップ……まだ片付けてないぞ」
雪乃「……そういえば、そうね。……明日片付けましょう」ペラッ
結衣「……だね。もう遅いしね」ポチポチ
八幡「明日は学校休みだろ」
雪乃「……そうだったかしら?」ペラッ
結衣「……そうだったかもね」ポチポチ
八幡「……?」
八幡「とにかく……。普段、使ってない教室だからって、このままにしとくのはまずいだろ。危ないしな。やっぱり俺が片付けるから、二人は先に帰っ」
雪乃「いいえ、その必要はないわ。さ、帰りましょう」ガタッ、スタスタ
結衣「だよね。ヒッキー、帰ろ」ガタッ、スタスタ
八幡「いや、だけど……」
雪乃「私は必要ないと言ったわよ。月曜日に片付ければそれで済む話でしょう。それに私、鍵を平塚先生のところに帰しに行きたいから、早く教室から出ていってくれないかしら、比企谷君」
結衣「ヒッキー、ゆきのんが困っちゃうじゃん。早く教室から出ようよ」
八幡「……いいのか、本当に?」
雪乃「ええ。何も問題ないわよ」
結衣「ほら、早く帰ろう、ヒッキー」
八幡「……おう。なら、いいけどな……」
ー 廊下 ー
雪乃「……そういえば、比企谷君は明日の休み、どうするのかしらね?」カチャカチャ (鍵閉め中)
結衣「……ひょっとして、彩ちゃんとどっかに遊びに行ったりとか?」
八幡「まあな。……戸塚からデートしようって誘われて、映画を観に行く予定になってる」
雪乃「……あらそう。楽しそうね。あなたもついにリア充の仲間入りという事ね。前は爆発しろとかそういう皮肉めいた作文を書いていたというのに」カチャカチャ
八幡「何でそれ知ってんだよ……」
雪乃「平塚先生から聞いたわ。とてもあなたらしい残念な文章だったわね。でも、そんなあなたが今度は爆発しろと言われる側に回るという訳ね」カチャカチャ
八幡「……いや、なんつうか……答えにくいだろ、それ」
結衣「……そういえば、ヒッキー。彩ちゃんとの事って知ってるの私達だけなの?」
八幡「そうだな。ああ、あと、海老名さんも知ってるぞ。戸塚が俺に告白する前に、一番理解ありそうだったからって事で相談をしたらしいからな」
結衣「……ああ、姫菜もなんだ。て、事は優美子や隼人君も下手したら知ってるかもだし。姫菜、そういうの、言うのを我慢出来ないタイプだから」
八幡「マジかよ……」
雪乃「……でも、まだ噂にはなってないのでしょう、由比ヶ浜さん? という事はまだ知らないか、知っていても黙っているかのどちらかね」カチャカチャ
八幡「出来れば知らないでいて欲しいんだがな……。そこは海老名さんを信じたい。……にしても、まだドアの鍵かからないのか?」
雪乃「……ええ。何故か今日は上手くかかってくれなくて。鍵穴に何か詰まっているのかしらね」カチャカチャ
結衣「……一度私がやろうか、ゆきのん? 何か変な感じに引っ掛かってるかもしれないし、一旦抜いてさ」
雪乃「……そうね。それならお願いするわ。はい」スッ
結衣「……うん。どれどれっと」カチャカチャ
結衣「…………」カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ
八幡「かからないのか?」
結衣「…………」カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ
雪乃「…………」
八幡「……おい、由比ヶ浜?」
結衣「…………」カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ
雪乃「…………」
八幡「……由比ヶ浜?」
結衣「……おかしい。本当にかからないし。やっぱり鍵穴が詰まってるのかな……?」カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ
雪乃「…………」
八幡「なんなら、俺がやるぞ……?」
結衣「…………」カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ
雪乃「…………」
八幡「由比ヶ浜。由比ヶ浜、聞いてるのか?」
結衣「……え?」カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ
雪乃「…………」
八幡「……一度、俺が試してみるわ。……それで駄目なら平塚先生に事情話した方がいいだろ」
結衣「……ああ、そうだね、うん。じゃあ、ヒッキーに試してもらおうか」カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ、カチャカチャ
八幡「…………おう」
結衣「……それじゃ、はい、ヒッキー。鍵」スッ
八幡「ああ。じゃあ試し……ん? これ……」
結衣「……どうしたの、ヒッキー?」
雪乃「……何か気が付いたのかしら?」
八幡「雪ノ下、これ、別の鍵じゃないのか? 明らかに部室の鍵と違うだろ」
雪乃「……何を言ってるのかしら、この男は? その鍵は間違いなくこの部室の鍵よ」
八幡「どれだけ間違いを認めたくないんだよ……。つうか、由比ヶ浜も渡された時点で気付けよ」
結衣「……ヒッキーこそ何言ってるの? それ、部室の鍵だよね?」
八幡「な訳ねーだろ。雪ノ下、部室の鍵探して出してくれ。多分、間違えて鞄の中にでも入れたんじゃないのか?」
雪乃「……本当に何を言ってるのかしらね、この男は? だから、それが部室の鍵よ。比企谷君、あなたの目が腐っているのは知っていたけど、まさか部室の鍵を見間違えるほど腐っているとは思わなかったわ」
八幡「……わかった。なら、もういい。これは返すから、代わりに他の持ってる鍵を貸してくれ」スッ
雪乃「……ええ。それならこれで全部よ。遠慮なく使いなさい」ゴソゴソ、スッ
結衣「…………」
八幡「この中にあるじゃないかよ、部室の鍵……。ったく」カチャカチャ、ガチャリ
八幡「ほれ、鍵がかかったぞ」
雪乃「……おかしいわね。かかる訳ないのに……」
結衣「……もしかして、それ万能鍵とか?」
八幡「かもな。じゃあこの鍵返すぞ。……とにかくもう帰ろうぜ」ハァ
雪乃「……そうね」
結衣「……だね」
ここまで
ー 翌日、駅前 ー
八幡(待ちに待った戸塚との映画館デートだ)
八幡(昨日のLINEでのやり取りで、戸塚が今日はお洒落をして来るって言ってたしな。間違いなく可愛いに違いない)
八幡(いや、そもそもお洒落とかしなくても、もう戸塚ってだけで可愛い)
八幡(期待に胸が膨らんで、ついつい三十分も前に待ち合わせ場所に来てしまった。俺は遠足前の小学生かっての)
ー 大通り ー
戸塚(わかってるけど、やっぱ少し恥ずかしい//)テクテク
戸塚(八幡に喜んでもらいたくて、女の子っぽい可愛いカチューシャつけてきたけど、僕、こんな格好するの初めてだし、照れるよ//)テクテク
戸塚(しかも、こんなに早く家から出てきちゃったし。待ち合わせまで、まだ三十分近くもあるのに……//)テクテク
戸塚(僕の格好見て、八幡喜んでくれるかな……? そうだったらいいけど……でも、やっぱり照れちゃうなあ//)テクテク
戸塚(っと、信号赤だ。危ない。もうすぐで渡るとこだった)ピタッ
ドンッ!!
戸塚(え……。今、背中を押され……)
パッパー!! キキィーッ!!!
戸塚(トラッ……ク……? ぶつか……)
ドンッ!!
ズシャッ!!
グジャッ!!!
「きゃああああ!!」
「おい! 人が轢かれ……うっ! おえええ……!」
「おい、救急車!」
「いや、もう手遅れだろ……。警察に……」
「……首ぶったぎれて……頭潰れてるぞ、あれ。マジかよ……」
ー 駅前 ー
八幡(……約束の時間、二十分過ぎ。だが、戸塚は未だに来ない)
八幡(電話も……)
プープープー……
『お客様のおかけになった番号は、只今、電波の届かない場所にいるか、電源が入っておりません』
八幡(……寝坊でもしたのか、戸塚?)
八幡(昨日話したばっかりだから、約束を忘れるはずないし……。だとしたら、バスか何かに乗っててスマホの電源を切ってるとか……。ただ、最近は切らなくてもいいみたいだが……)
八幡(……とにかく待つしかないんだが、気になるな)
ー 二時間後 ー
八幡「流石にこれはもう……来ないよな」
八幡「電話してもずっと通じないし……。そろそろ俺のスマホの充電が切れちまう……。暇潰しにいじってたし、電話も何回もかけてたからな……」
八幡「……帰るしかないか。何にしろ連絡取れないとどうしようもないからな……」
八幡「……戸塚、どうしたんだよ」
『お兄ちゃん、何で小町の知らないところで事故にあってるの。びっくりしたじゃない』
八幡「……いや、まさかそれはないよな……?」
八幡「……ほんの少し連絡が取れなくなっただけだろ。それで事故とか考える方が有り得ないし。まさかそんな事……」
八幡「……とにかく、家に帰ろう。……急いで」
ー 翌日、学校 ー
先生「……皆も、もう知ってるかもしれないが」
先生「……このクラスの戸塚彩加が昨日亡くなった」
シーン……
先生「……交通事故だ。即死だったらしい。その事で、今日特別に全校集会を行う」
先生「……良い生徒だったのにな。……まだ若いのにな。……残念でならない」
シーン……
三浦「……戸塚」
葉山「…………」
戸部「……何でこんな」
海老名「…………」
結衣「…………」
ー 授業後。奉仕部、部室 ー
雪乃「……そう、比企谷君は今日休みなのね」
結衣「……うん。彩ちゃんが死んじゃったからね。そのショックでだと思う」
雪乃「……可哀想にね。きっと今頃、酷く落ち込んでると思うわ。……心配ね」
結衣「……うん。ヒッキー可哀想だし。……ホントに心配だよね」
結衣「でもさあ、彩ちゃんが死んでくれてさ……」
雪乃「ええ、丁度良かったわね……。幸運というよりも最高の結果というところかしら。お陰で色々とすっきりしたわ」
結衣「あ、だよねー……。正直、ざまあみろって感じだったし」
雪乃「由比ヶ浜さんもなのね。私もそうよ」
結衣「ゆきのんもなんだ……。やっぱりゆきのんとは気が合うね」
雪乃「きっと戸塚君には天罰が当たったのね。男の分際で比企谷君と付き合おうなどとするから」
結衣「ホントだよねー。彩ちゃんとか死んで当然の人間だったもんねー」
雪乃「聞いた話によると、首が取れて潰れていたそうよ。比企谷君の唇を無理矢理奪うからそういう事になるのね。……いい気味だわ」
結衣「そうそう。いくらヒッキーが優しいからってさー……。無理矢理キスは良くないよねー。そりゃ頭もミンチになるって」
雪乃「ええ、まったくその通りね。……事故に遭ってくれて本当に良かったわ」
結衣「だよねー。……しかも死んでくれたもんね。嬉しいよね」
雪乃「まあ、これできっと少しは浄化になったでしょうし……。これから少しずつ、比企谷君の唇と胃の中を綺麗にしていけばいいわ。……戸塚君に汚されたところを綺麗にね」
結衣「ゆきのん、それ意味わかんないし……。電波系なの?」
雪乃「私の方こそあなたの言っている意味がわからないわね……。汚されてしまったものは綺麗にしないと駄目でしょ……?」
結衣「うん。マジわかんないし。キモいよ、ゆきのん。……どうでもいいけど、ヒッキーに何かするのだけは許さないからね」
雪乃「する訳ないでしょ……。私はこれでも比企谷君を大切に思っているのよ。……一応、誤解のないように先に言っておくけど、同じ部の仲間としてね」
結衣「ならいいけど……。ゆきのん時々訳わかんない事言うからさ」
雪乃「私からしてみればあなたの方が訳わからないのだけれどね……」
ー 八幡の部屋 ー
八幡「っ……」ポロポロ……
八幡「彩加…………」ポロポロ……
八幡「彩加……っ…………」
八幡「……何で……だよ…………」ポロポロ
八幡「……何で……お前が…………」
八幡「……これなら……俺が死んだ方が……良かった…………」ポロポロ……
八幡「……俺が…………!」
ここまで
ー 数日後 ー
小町「お兄ちゃん、いつまで部屋に引きこもってるつもり……?」
小町「今日、戸塚さんのお葬式やるんだよ。お兄ちゃん出なくていいの?」
『…………』
小町「雪乃さんと結衣さんも来てるよ。二人ともお兄ちゃんがずっと学校に来ないから心配してるんだよ。今日も迎えに来てくれてるんだよ。だから、出てきてよ」
小町「お兄ちゃん……!」
『…………』
小町「戸塚さんとの最後のお別れでしょ! ちゃんとしてきなよ! それで心の整理をつけてよ!」
『…………』
小町「お兄ちゃん!!」
小町「お兄ちゃんってば!!」
『…………』
小町「」ハァ……
小町「わかった……。小町もう行くから」
小町「戸塚さんのお葬式、行ってくる」
小町「でも、これだけは言っておくよ、お兄ちゃん。お兄ちゃんがそうしてたって何も変わらないんだからね。戸塚さんが生き返ったりとかはしないんだから」
小町「…………」
ー 玄関前の廊下 ー
小町「」ハァ……
小町「」テクテク
小町「……あ」ピタッ
小町「まだいたんですか? しつこいですよ」
小町「いつまでそこにいるつもりなんですか? どうせお兄ちゃんには見えもしないし、聞こえもしないし、触る事も出来ないくせに」
小町「大体、男同士で付き合うとか、バカじゃないんですか? どうやってうちのお兄ちゃん騙したか知らないですけど」
小町「小町、そんなの認めないんで」
小町「死んでくれて助かってます。お兄ちゃんにこれ以上近付かれたらたまらなく迷惑だったんで。どうも死んでくれてありがとうございました、戸塚さん」
小町「は? 死んでるくせに何言ってるんですか? ていうか、そこどいて欲しいんですけど。通れないじゃないですか。雪乃さんと結衣さん待たせてるんですよ」
小町「大体、もう家には来て欲しくないんですけど。小町、顔も見たくないんで。吐き気がしますから。早く消えてくれませんか?」
小町「クズの分際で、お兄ちゃんに近付いて。死んだ後までお兄ちゃんに迷惑かけて。鬱陶しいんですよ。とっとと消えて下さい」
小町「…………」
小町「……やっと消えた。死んでまで小町の邪魔するとか、なんなのかなあいつ」
ガチャッ
小町「ごめんなさい、お待たせしちゃいまして」
結衣「あ、ううん。大丈夫だよ。それより小町ちゃん、ヒッキーは……?」
小町「それが、ダメで……。返事もしてくれないんですよ。本当にごみぃちゃんなんだから……」
雪乃「そう……。困ったものね。戸塚君のお葬式なら部屋から出て来てくれると思ったのだけど……」
小町「すみません、お兄ちゃんの為にわざわざ家まで来てくれたのに……。小町、力になれなくて」
結衣「あ、ううん。小町ちゃんの責任じゃないから。気にしないで」
雪乃「……仕方ないわね。もう行かないと間に合わないし……」
結衣「そうだね。三人で行こっか」
小町「そうですね」
ー 葬式後 ー
葉山「結局、比企谷は来なかったか……」
三浦「……ヒキオ、戸塚と一番仲良かったのに」
戸部「そんだけショックだったんだよね……きっと。俺もそんなに戸塚君と仲良かった訳じゃないけどさー……その気持ちはわかるわ……」
海老名「……うん」
結衣「……やっと終わったね、ゆきのん」ヒソヒソ
雪乃「……そうね。退屈で死にそうだったわ」ヒソヒソ
結衣「お葬式だけに? ゆきのんもそんな事言うんだ?」ヒソヒソ
雪乃「ち、違うわ。今のは言葉のあやよ。私はそんな低俗な駄洒落を言うはずがないでしょ」ヒソヒソ
結衣「隠さなくてもいいって、ゆきのん。それにゆきのんがダジャレ言うとか何か新鮮で可愛いし」ヒソヒソ
雪乃「だから、そうではないと言ってるでしょ」ヒソヒソ
小町(……お葬式も終わったし、これであいつもようやく消えるかな? 気が付いたら家の中にいるから、スッゴい目障りだったもんね)
ここまで
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