八幡「と、戸塚―!!」由紀「みーくんの彼氏!?」 (780)

注意
・俺ガイルとがっこうぐらし(アニメ基準)のクロス
・八幡は3年生に進級後という設定
・殺伐さ少なめ、ほのぼの

※ラブコメ度が高く、少しだけキャラ崩壊あり

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1440596716

別スレでこれも書いてます
こちらスレは、がっこうぐらしを俺ガイル風にアレンジした物です↓

八幡「やはり俺たちのがっこうぐらしは間違っている」
八幡「やはり俺たちのがっこうぐらしは間違っている」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438969642/)

【街中】

八幡「やばい…燃料が少なくなってきてる」

ブロロロロ…

八幡(パンデミックが起きてから数ヶ月…地元から随分と離れた場所まで来てしまった)

八幡(そして本当の意味でボッチになった)

八幡「……」

キィィィ

八幡(原付バイクのブレーキをかけ、ふと空を見上げる)

八幡(世の中は大変な事になってるのに、空は憎たらしいほどの晴天だ)

八幡(パンデミックが起きたあの日…俺は偶然、学校を休んで家にいた)

八幡(異常事態に気がついた時には、両親は既に手遅れだった)

八幡(だが悲しみに明け暮れてる暇などなかった。人探しの旅に出ることにした)

八幡(雪ノ下に由比ヶ浜、小町と戸塚を捜す旅に)

八幡(そして、旅を共にしたカマクラと仲間がいたが…道半ばにして力尽き)

八幡(もうこの世にいない)グスッ

八幡「……っ」

八幡「いかん、気をしっかり保たなければならん」


八幡(自分はまだ生きている)

八幡(だから諦めない。どんな結果が待ち受けていようと)

八幡(必ずアイツらを見つけだしてみせる)

八幡「……」

八幡「ん、あれは」

八幡「風船に…ハト??」

八幡(ある方角の建物から、その風船と鳩が解放され空を舞う)

八幡「……」

八幡「この近辺に…生存者がいる…」

八幡「あの建物は学校か」

八幡「……」

八幡「もしかしてアイツら…!!」グッ

八幡(原付バイクのアクセルを握る)

ブロロロロロ…

八幡(目の前にいるゾンビどもを搔き分けながら走りぬく)

~校門前~

八幡「……」

ぅぅ…ぁぁぁ…

八幡(ゾンビが大量にいやがる。在校生が殆んどだが、一般人だった者もいるな)

八幡「よし…ここはクラクションをならして」

ビィィィィ!!ビィィィィ!!

八幡「……」

ぅぅ…あ“あ”あ“…

八幡「きたきた。これで奴らをひきつけて…」

八幡「裏門から学校に侵入だ」ダダッ

【学園生活部・部室】

ビィィィィ!!ビィィィィ!!

胡桃「なんだ!?」

悠里「いま、外から音がしたわよね」

由紀「今のって、クラクションの音?」

美紀「まさか…誰かきたんじゃ!?」

胡桃・悠里「っ!!」

由紀「なんだろうね。もしかしてヤンキーさんかな…」ブルブル

胡桃「大丈夫だ!この私がいればヤンキーなんてイチコロだぜ!」ブンブン

美紀「部室でシャベルを振り回さないで下さい」

悠里「フフフ、もしかしたら転校生かもしれないわよ。ね、由紀ちゃん」ナデナデ

由紀「わぁぁ…転校生!良い人だったら良いなぁ!」パァァ

悠里「だとすると、私たちはこんなジャージ姿でお出迎えするのね」

胡桃「そうだな。今日は制服を洗濯しなきゃ良かったな」

美紀「仕方ないですよ。ちゃんと洗濯しないと臭ってしまうんですから」

由紀「えへへへ、でもジャージってなんか落ち着くよね」

由紀「みーくんの緑色のジャージも良く似合ってるよ!」ダキッ

美紀「ちょ、ちょっと抱きつかないで下さい…」

由紀「えへへへ」スリスリ

胡桃「さて…いくか」チャキッ

美紀「待って下さい」

胡桃「なんだよ美紀」

美紀「安全な人かどうかわからないじゃないですか、遠くから双眼鏡で様子を見ても」

胡桃「なるほど…どれどれ」ススッ

胡桃「うーん…」

~~~~

悠里「どう胡桃?」

胡桃「校門前にバイクが置いてある。誰も乗ってないけど、クラクションに反応して奴らが集まってきてる」

美紀「誰も…乗っていない…」

悠里「なぜわざわざ校門の前まで来て、クラクションなんて鳴らす必要があったのかしら」

胡桃「うーん…陽動か?どうする?」ヒソヒソ

悠里「そうね…もし生存者なら助けないといけないわね」ヒソヒソ

美紀「でもどんな人なのかもわからないし…慎重にいかないと」ヒソヒソ

胡桃「そこは会ってみないと分からないだろ」ヒソヒソ

悠里「そうね。多分、校舎に向かってるだろうし助けに向かいましょう」ヒソヒソ

由紀「ん?」

胡桃「どうした?」

由紀「足音が聞こえるよ。こっちに走ってくる」

全員「!!」

悠里「由紀ちゃんって、たしか結構耳が良いのよね」


胡桃「ああ。ショッピングモールで美紀を救出できたのも由紀のおかげって言っても良いしな」

美紀「だ、誰かが…こっちに来るんですね…」

タッタッタッタッ!

胡桃「っ!!聞こえたぞ足音」

「ここら一体は、バリケードで守られている…なら声を出しても大丈夫だな」

「雪ノ下!由比ヶ浜!小町!戸塚!」

全員「!!」

美紀「こ、声が…」

「……」

「この部屋…明かりがついてやがる…」

「……」

全員「……」

ガララッ

八幡「……」

学園生活部全員「………」

八幡「あ…あ…」ガクガク

胡桃「ひ、人?だよな?」

悠里「あらあら、男の子ね」

由紀「わぁぁぁ!転校生さんだ!」

美紀「え、えと…アナタは…」

八幡「」

カラァァン

胡桃「おい、何か落としたぞ…ってアンタの武器もシャベルか」

八幡「」

悠里「ここまでたった一人で大変だったでしょ?いまお茶を淹れるわね」

由紀「わーい!転校生だ!転校生さんだ!」

美紀「えっと…とりあえず中へ…」

八幡「戸塚――!!!」

学園生活部全員「え?」

八幡「戸塚…戸塚ぁぁ!!」

ダキッ

美紀「」

胡桃「っ!!?」

悠里「Wow!」

由紀「はわわわわ!?///」

八幡「戸塚…会いたかったぜ…戸塚」ギュゥゥゥ

美紀「」

由紀「はわわわわ///みーくんの彼氏!?///」

胡桃「おま、彼氏いたのかよ!」

悠里「あらあら、熱々ね」

八幡「辛い事ばっかりで人生イヤになってた。だが生きてて良かったぜ…本当に無事でよかった…」ギュゥゥ

美紀「……」プルプル

美紀「い、い…いやあああああ!!!」バッ

八幡「え」

バシッ!!

八幡「ぶべっ!?」ドサッ

美紀「ひ、人違いです!」

八幡「な、何言ってんだ戸塚。俺だ、比企谷だ」

美紀「わ、私の名前は戸塚じゃなくて…直樹美紀です!」

八幡「…………」

八幡「え?」

~~~

八幡「」

八幡「……」チラッ

美紀「……」ヒキッ

美紀「……」プイッ

八幡「」

悠里「フフフ、よほど美紀さんが愛しの人にそっくりさんだったのね」

八幡「え、あ、いや…その…」キョドッ

胡桃「は、ははは…全くおかしな奴が来たもんだな」

由紀「えへへへ、すっごい光景見ちゃったね!」

悠里「はい、お茶」

八幡「う…う、うす」キョドッ

悠里「私は3年の若狭悠里。皆からはりーさんって呼ばれてるわ」

胡桃「同じく3年の恵飛須沢胡桃だ。よろしくな」

由紀「私も3年生の丈槍由紀だよ!よろしくね!えーっと…」

八幡「……あ?え、な、な、なんでしゅか」

胡桃(ぷっ、嚙んでやんの)

由紀「お名前は?」

八幡「……総武高校3年、比企谷八幡、で、です」

由紀「えへへへ、同級生だね。ヨロシクね八幡くん!」

八幡「上の名前で呼んでくれ」

由紀「えーーやだーー」

八幡「……」

由紀「……?」

八幡「……」

胡桃「お前、意外と内気なのか?」

八幡「意外も何も、見たまんまだ」

悠里「そう?恋人にそっくりさんの美紀さんに、あんな熱いスキンシップをしてたのに?」

八幡「あ、いや、あれは…だから…そもそも戸塚は…」チラッ

美紀「……」プイッ

八幡「あ、あの…さっきはごめんなさい」ペコッ

美紀「……」ツーン

由紀「みーくん、もう許してあげなよー」

悠里「そうよ美紀さん。ワザとじゃないみたいなんだし」

美紀「男の人に抱きつかれたの初めてだったんですよ…先輩たちだっていきなり抱きつかれたら絶対、同じ気持ちになりますから」

美紀「……」プイッ

八幡「な、なあ…えーと…丈槍」ヒソヒソ

由紀「ん~?」

八幡「直樹って…その、女…なのか?」ヒソヒソ

由紀「うん、女の子だよ」

胡桃「お前何言ってんだ。アイツをどうみたら男に見えるんだ」

八幡「……」

八幡(女版戸塚とか…もうヤバイだろそれ!犯罪だ!)ドキドキ

胡桃「何、上向いてるんだよ」

八幡(考えるな何も考えるな。鼻血が出てしまう…!)

悠里「あら、そろそろ洗濯物も渇いたんじゃ無いかしら?」

胡桃「よし、取りに行くか」

悠里「由紀ちゃんと美紀さんは、八幡くんとお留守番しててくれる?」

由紀「はーい」

美紀「あ、私も行くんで」タタッ

ガララッ

胡桃「逃げるように去ってったな」

八幡「」

八幡「……」

由紀「えへへへ~太郎丸~」スリスリ

太郎丸「クゥゥン」スリスリ

由紀「あ、泣かないで!」

八幡「……?」

由紀「八幡くん!紹介するね」

八幡「比企谷と呼べ」

由紀「えっとね、隣にいるのは巡ヶ丘高校の先生で、学園生活部の顧問の佐倉慈先生だよ。みんなから、めぐねぇって呼ばれてるんだよ~」

八幡「……は?」

由紀「ほ、ほら!比企谷くんも挨拶してお願い!めぐねぇ泣いちゃうから、ね?」

八幡「何を言ってるんだいお前は」

由紀「あわわわ!めぐねぇ泣かないで!」

八幡「お前、大丈夫か?」

由紀「めぐねぇは大丈夫じゃないよ!もう!」

~~~

由紀「それじゃ、私たち制服に着替えてくるね!」

由紀「太郎丸と待っててね八幡くん」

八幡「だから上の名前で呼べと何度言ったら」

ガララッ

八幡(……)

八幡「はぁぁ…やっちまったな…」ガクッ

八幡「下手したら捕まるぞ俺。って今は警察も機能してないんだけどな」

太郎丸「わんわん!」

八幡「……」ナデナデ

八幡「はぁ…結局、アイツらじゃなかったのか…」

八幡「……」

八幡「丈槍ってやつ、随分と犬好きだったな」

八幡(あの髪色といい、性格といい、犬好きといい…どっかの誰かを思い出す)

――ヒッキー!

八幡(おっぱいは逆だけど)

八幡「アイツら無事かな…つーかここなんで電気使えるんだ」

ガララッ

由紀「おっまたせー!寂しかったかな~?」

八幡「全然」ナデナデ

太郎丸「わん!」

悠里「あらあら、太郎丸に随分懐かれてるわね」

胡桃「待たせたな」

八幡「大丈夫だ」

胡桃「とりあえずよ、色々と聞きたいことが山ほどあるだが」

八幡「ああ、俺もだ」

胡桃「よし…おい由紀!めぐねぇは今、職員室にいるよな?」

由紀「え…あれ?めぐねぇがいない…」

悠里「さっき、めぐねぇが職員室に来てって言ってたわ」

由紀「そっか。行ってくるね!」ガララッ

八幡「……なあ、あれは何なんだ?」

胡桃「実は…」

~説明中~

胡桃「っと言う訳だ。多分お前は由紀の中で『転校生』として認識されてる」

八幡「……そうか。大変だったんだなお前ら」

胡桃「お互い様だ。お前はどうやってここまで来たんだ?」

八幡「……」

八幡「一言じゃ語り尽くせ無い。基本俺はボッチだが、随分前まで、一緒に旅をしていた仲間がいた」

胡桃「どんな奴らだったんだ?」

八幡「それは…」

悠里「ちょっと待ってくれる?」

胡桃「何だよりーさん」

悠里「美紀さん、いつまでも廊下にいないで入ってきなさい」

八幡「……っ」

ガララッ

美紀「失礼します」

八幡「」

悠里「ほら、いつまでも拗ねてないで席に座りなさい」

美紀「え…比企谷先輩の隣ですか…」ヒキッ

胡桃「あーもう!別に襲ったりしねぇから大丈夫だよ!もし襲ったら私が峰打ちすっから心配すんな!」

八幡「」プルプル

胡桃「なあ。八幡はもう何もしねぇよな?……八幡?」

八幡「が…がががが、がったたがった」プルプル

胡桃「!?」

悠里「は、八幡くん…?」

八幡「と、戸塚が…戸塚が、戸塚が…」ボソボソ

八幡「女子制服に…ガーターベルトだと…」ボソボソ

胡桃「おま、なに言って」

八幡「うっ…!!」ボタボタ

悠里「きゃっ!!?」

胡桃「は、鼻血!?」

美紀「」ドンビキ

八幡「戸塚が女子制服にガーターベルト戸塚が女子制服にガーターベルト戸塚が女子制服にガーターベルト……」ボソボソボソ

八幡「うっ…うぁぁ…」ドバドバ

胡桃「わわわ!?やばいぞこの鼻血の量!?」

美紀「」

悠里「は、八幡くんしっかり!ほらティッシュ!」ググッ

八幡「ぐっ…うああぁぁ…」

胡桃「おい!正気に戻れ!」

胡桃「アチョー!!」チョップ

ガンッ!

八幡「っ!!痛っ!!」

胡桃「ちった落ち着けこのスケベ野朗!!」

八幡「はぁ…はぁ…俺は一体…」

悠里「ああもうティッシュがあっと言う間に…いま代わりのもの出すから待ってて」

八幡「なんか…クラクラする…目まいが…」

美紀「」ササッ

ガララッ

由紀「ただいまー!めぐねぇもつれて来たよ…って、みーくんどうしたの!?なんで部屋の隅にいるの!?」

美紀「もういや…」ガクガク

八幡「ぅぅ…ああ…ヤバイ…貧血だ…」ボタボタ

由紀「はわわわ!八幡くんもどうしたの!?鼻と口周りが血だらけだよ!?」

悠里「ほら八幡くん、新しいティッシュよ!」ググッ

八幡「え、て、てぃっしゅ?」ボタタタ

胡桃「まだ状況が飲み込めてないのかよ!お前、美紀に興奮して鼻血出してたんだよ!」

八幡「」

胡桃「大丈夫かお前?長旅の疲れで、頭のネジぶっ飛んでるんじゃねぇか?」

八幡「……」ボタタタ

八幡「ああ…そうかも、な。色んな事あったから疲れてるのかもな俺」ボタタタ

由紀「へー八幡くんって旅行好きなんだ!」

八幡「基本的に引き篭ってる方が好きだけどな」

八幡「……ん?」チラッ

悠里「ふう、ちょっと鼻血の量が治まってきたみたいね」ボイン

八幡「」

八幡「うっ…!!」ボタタタ

悠里「きゃっ!また血の勢いが…」ググッ

八幡(で、でかい。由比ヶ浜級…いや平塚先生級の凶器がこんな目の前に!)

八幡(落ち着け!そうだ、なにか違う事を考えよう…)

八幡(戸塚が一人…戸塚が二人…)

――八幡!僕ってガーターベルト似合うかな…?///

八幡「ぐぁぁ…っ!!」ドババ

バタッ

八幡「」チーン

悠里「きゃっ!?」

由紀「はわわわ!八幡くんが倒れちゃった!?」

胡桃「おいしっかりしろ!おい!」ユサユサ

八幡「」ボタタタ

美紀「」

悠里「貧血で倒れてしまったのね…夕食は鉄分たっぷり入ってる物を作らないと」

由紀「ど、どどど、どうしよう!?」

胡桃「とりあえず布団に寝かせるぞ…ったく、飛んだスケベ野朗が来やがったぜ。なあ美紀?」

美紀「もういや…」

美紀「そんなハレンチな人!学校から追い出してください!」

今日はここまで
もう一つのスレも近いうちに投下します

八幡「ん」パチッ

八幡「……??」

八幡(えっと、確か鼻血を出して途中から記憶が…そうか、気絶したのか。すげぇ気持ち悪いな俺)

八幡「それよりここは…更衣室か?布団が敷いてあるが」

八幡「……って事はここはあいつらの寝室。おいおい野朗をここに寝かせて良いのかよ」

ガララッ

由紀「あ、目が覚めたんだね!」

八幡「丈槍…」

由紀「もう、みーくんがいくら可愛いからって鼻血出しちゃだめだよ?」

八幡「みーくん?」

由紀「美紀だからみーくん!」

八幡(ああ、戸塚もどきか。っていうかもうアレは本人にしか見えん。性格は違うけど)

由紀「もう夕飯できてるから!ほら行こ!」グイグイ

八幡「ちょ、おい。腕を引っ張るな!」ドキッ

由紀「えへへへ。今日は豪華だよ~」

ガララッ

由紀「みんな~八幡くんが目を覚ましたよ!」

悠里「あら、タイミングが良いわね」

胡桃「やっと目が覚めたか」

悠里「今日はカレーライスとわかめスープ、ほうれん草のおひたしよ。一杯食べてね」

八幡「ど、どうも…」

八幡「……」チラッ

美紀「」ビクッ

美紀「……」プイッ

八幡「」

由紀「それじゃいただきまーす!」

八幡「はぁ…」

悠里「さあ、食べて」

八幡「あ、はい」

~~~

八幡「ごちそうさまでした」

胡桃「はぁ、食った食った」

悠里「さてお片づけしないと」

美紀「悠里先輩、手伝います」

由紀「じゃあ私も手伝っちゃおうかな~」

悠里「フフフ、おりこうさんねゆきちゃん」ナデナデ

由紀「えへへへ」

美紀「気をつけて下さいね由紀先輩」

八幡「……」

八幡「……」ガタッ

胡桃「ん?どうした」

八幡「夕飯までご馳走になって悪いな」

悠里「フフフ、長旅のお客さんはしっかりおもてなしをしないとね」

胡桃「備蓄も沢山あるしな。お前も運が良いな」

八幡「……んじゃ、俺はここらで」

胡桃・悠里「え?」

八幡「じゃあな。襲われない様に元気に暮らせよ」

ガララ

胡桃・悠里「!?」

由紀「え、え?」

美紀「……」

胡桃「おい!ちょっと待ってよ!」

八幡「……」

悠里「苦労して折角ここまできて…出て行くつもりなの!?」

八幡「捜してる奴らがいる。だからここにはいられない」

胡桃「それって美紀そっくりの戸塚って奴か?」

八幡「他にもいる。部員と妹だ。じゃあな」

悠里「え、妹?」ビクッ

胡桃「部員…」ビクッ

八幡「……」テクテク

胡桃「……っておい待て!りーさん!追いかけるぞ!」

悠里「……」

胡桃「りーさん!聞いてるのかよ!」ダダッ

悠里「あ、ご、ごめんなさい」ダダッ

~~~

胡桃「待てっておい!」

悠里「八幡君、一先ず落ち着いて話を聞いてね?」ガシッ

グググッ

八幡「!?」

八幡(な、なんだこの握力!?若狭の奴、おっとりしてそうで力強すぎだろ…体が前に動かねぇ…!)

悠里「…もう外は真っ暗よ。今晩は泊まって行きなさい」

八幡「頼む、離してくれ」

悠里「それなら泊まって行きなさい。外は危ないわ」

八幡「その危険な境遇を俺はずっと一人で生きてきたんだ。今更怖いなんて言ってられん」

胡桃「明日は我が身かも知れないだろ」

八幡「……その時は、所詮その程度の人生だったって事で諦める」

胡桃「お前…どうしてそこまでして…」

八幡「お前らには関係ない事だ」

八幡「ん?」

由紀「……」シュバッ

八幡「おい丈槍、邪魔だ」

由紀「……」

由紀「でぃーふぇんす!でぃーふぇんす!」

胡桃・悠里「!?」

八幡「は?」

由紀「でぃーふぇんす!でぃーふぇんす!」ピョコピョコ

胡桃・悠里「……」

胡桃・悠里「ディーフェンス!ディーフェンス!」シュバッ

ゆき「でぃーふぇんす!でぃーふぇんす!」ピョコピョコ

胡桃・悠里「ディーフェンス!ディーフェンス!」ピョコピョコ

八幡「」

八幡「お前らスラムダンクの読みすぎだ」

由紀「八幡君!せっかくお友達になれたのに学校やめちゃうなんてイヤだよ!」

八幡「と、友達…」ドキッ

八幡(てかこいつの脳内では俺が転校初日から退学未遂って事で認識されてるのか)

八幡「だれが友達だ」プイッ

由紀「あ、ひっどーい!」プクッ

八幡(会って初日から友達として認識されたのは初めてだ…奉仕部の奴らですら親密になるのに、それなりに時間を費やしたというのに)

由紀「ねぇ、八幡君も学園生活部に入部しよ!」

八幡「俺が学園生活部に…?」

八幡「……」

八幡「俺の居場所は学園生活部じゃなくて…」

八幡「……」

胡桃「提案がある」

八幡「ん?」

胡桃「しばらく巡ヶ丘付近を探索するんだよな?」

八幡「ああ」

胡桃「なら、巡ヶ丘高校を拠点にするってのはどうだ?」

八幡「ここを拠点に…」

悠里「それは良い考えね」

胡桃「探索は昼間。夕方になったらここに戻ってくる。ここなら衣食住の不自由ないぜ」

胡桃「どうだ?」

八幡「……だとしても、いずれはここを出る事になるが」

胡桃「それを言ったらあたし達だって、いつまでもここにいる訳じゃない」

悠里「……そうね。いつかは卒業するものね」

悠里「ただ、ここにいる間に捜している人が全員見付かれば、問題は解決するでしょ?」

八幡「……」

八幡(率直な気持ちを述べると、嬉しさ3割の戸惑い7割といった所だ)

八幡(いままで初対面で、俺をここまで歓迎してくれた奴は過去にいただろうか)

(回想)

平塚「ここのショッピングモールに生存者がいて助かったな」

材木座「うむ、実にありがたい。我は危うく飢え死にするところだったぞ!」

八幡「一食抜いただけで大げさなんだよお前は」

八幡「……」

~数日後~

モブ1「なあ…あのデブと目つき悪い奴さ…」ヒソヒソ

モブ2「ああ、なんかね…平塚さんは良い人だけど」ヒソヒソ

モブ3「出て行かないかな…食料だって無限じゃないし」ヒソヒソ


材木座「は、八幡…どうやら我とお主、あまり良い目で見られてないようだ」

八幡「ああ。本当、世知辛いな世の中だな。こっちから距離を置いてやってるのによ」

平塚「……ここは君達にとって、いずらい場所だったようだな」

八幡「……」

平塚「ここのショッピングモールを拠点として、ここらの地域を探索したが、結局彼女たちは見付からなかった」

平塚「どうする?そろそろ次の地域を探索するか?それともここで留まるか」

八幡「……いきましょう。ここにいても避難してる人に迷惑かかるし」

~~~~

八幡「俺はここに残らない方が良い」

由紀「えーー!」

胡桃「なあお前、どうしてそんなに人と距離を置きたがるんだ?美紀にはベタ付いた癖に」

八幡「前に言ったろ。俺は基本ボッチなんだ。根っからの嫌われ者体質で人から必要とされないんだよ。だから俺自身も群れる事はしない」

悠里「……今まではそうだったかもしれない。でもここは違うわ」

胡桃「それともお前には、あたし達がそんな薄情に見えるのか?」

八幡「い、いや、そういう訳では」

由紀「八幡君!学園生活部に入って、いっぱい思い出作ろうよ!」

八幡「……」

八幡「分かった。しばらくの間、ここで世話になる」

由紀「やったー!!新しい部員だ!」

胡桃「あ、でもイベントとかには参加しろよな」

八幡「イベント?ああさっき言ってた、最悪な現実を逃避するためのお楽しみ会の事か」

由紀「八幡君の中では学校生活は最悪なの!?」

八幡(まあ実際、高1までは最悪だったしな。現在だってパンデミック状態で勿論最悪だ。学校生活すら送ってないし)

悠里「そのお楽しみ会こそ、私たちの生きがいよ」

胡桃「でも八幡は日中はいないから、これからイベント行事は夕方以降だな」

由紀「えへへへ、また肝試しとかやりたいね!」

八幡(リアル肝試しなら毎日やってるがな)

【部室】

悠里「コーヒーどうぞ」

胡桃「サンキュ」

由紀「わーい!」

悠里「八幡くんもどうぞ」

八幡「あ、どうも」ドキッ

由紀「あれ、みーくんは?」

胡桃「もう寝たんじゃねぇの?」

由紀「ふーん。よーし!」ゴクゴク

由紀「げほげほ!あ、熱い~」

悠里「あらあら大変。ゆっくり飲まないとダメよ。ほらハンカチで口元ふかないと」フキフキ

由紀「あぅぅ…ごみぃ」

由紀「りーさんコーヒーありがとう!私もう寝るね、おやすみなさ~い」

ガララッ

胡桃「せっかちな奴だな」

八幡「……」ジーッ

八幡(学園生活部とやらに形だけ入ったが…だが油断はできん)

八幡(特に若狭。あの周囲に対する世話好きはハッキリ言って異常だ。俺に対して出すらあの献身ぶりだ)

八幡(だが俺は小学校から現在にいたるまで、ああいう上っ面の良い女は散々見てきた)

八幡(特に男受けよく演技する女を見破る眼は伊達じゃない)

八幡(中学時代なら間違いなく惚れてたが、俺の人間観察力を舐めるなよ)ジーッ

悠里「明日はどんな事する?」

胡桃「そうだな…」

八幡(……)

八幡(何だろう。一色の様なあざとさは感じられないし)

八幡(あの雪ノ下の姉・陽乃さんのような強化外骨格も、その中にあるドス黒さも無い)

八幡(どちらかと言うと城廻先輩に似ている…しかしどことなく雪ノ下にも似てる。毒舌と胸意外。うん、わからん。未知の生物だ)

八幡(……あれ?俺の一級鑑定はどこに?)

悠里「…?どうしたの八幡君?」

八幡「え」

胡桃「お前なにさっきからりーさんの事ガン見してんだよ。気持ち悪いぞ」

八幡「」

悠里「あらやだ。照れちゃうじゃない。フフフ」

胡桃「お前まさか、りーさんに浮気とか考えてないだろうな」

八幡「な、ななな、何を言ってやがる!俺は戸塚一筋だ!!」

八幡(恋人じゃないけど)

胡桃「それじゃ美紀に浮気はありえるのか?」

八幡「さ、ささ、さあな」

悠里「フフフ、動揺してるわよ?」

八幡(非常に悩む。究極の選択だ)

~部室前~

美紀「……」

美紀(コーヒー飲みに来たけどやっぱりやめよう…あの人いるし)

胡桃「なあ…ちょっと聞きづらい事だが良いか?」

八幡「ああ」

胡桃「一緒に旅をしていた仲間がいたって言ってたよな?その仲間ってのは…」

八幡「……」

八幡「一匹と二人だ。俺のペットと、腐れ縁…あと美人なのに結婚できない部活の顧問」

八幡「ペットと腐れ縁の奴は数ヶ月前に…それからは先生と二人だったが…1ヵ月前に力尽きた」

胡桃「じゃあそれからは一人で?」

八幡「ああ」

胡桃「……そうか」

悠里「……」

八幡「んじゃ、俺はもう寝るわ」

悠里「待って」

八幡「?」

悠里「そのまま席に座ってて」ギュッギュッ

八幡「っ!?おい、何だよいきなり…人の肩を揉み解して…」

悠里「ずっと辛かったでしょ?」ギュギュッ

悠里「大切な人を失って、こんな恐ろしい状況の中、一人で旅して…」ブルブル

八幡「…っ」ビクッ

悠里「私がアナタの立場だったら…そんな苦痛、とてもじゃないけど耐えられないわ」ガクガク

八幡(彼女の手が震えてるのが触れている肩から伝った)

八幡(手だけじゃない。声も震えていた)

八幡「止めろ。同情はいらん…でも、ありがとう」

悠里「……」ガタガタ

胡桃「りーさん…」

八幡(彼女は単に俺に同情してるだけじゃない)

八幡(怖いのだ。いつか油断したら、自分もそうなるのではと)

八幡(俺はまだ彼女達と出会って間もない。全てを知ってるわけじゃないが)

八幡(恐らく彼女の母性本能は天性の物だ。だがこの異常事態ではその母性本能も自身の精神的防衛の手段となっている)

八幡(……自身の心が壊れないように努めてるのだ)

悠里「これからは私たちが付いてるから…もう大丈夫よ…」ギュギュッ

八幡「あ、あの…もう充分に肩が解れたから、大丈夫だ」

悠里「そう?それなら寝る前にシャワーを浴びると良いわ」

八幡「シャワーまであるのかよここは!?」

由紀「ねー。みーくんどこ?」ガラッ

胡桃「あれ、寝てたんじゃ」

由紀「みーくん寝てなかったよ」

悠里「え…まさか…」

胡桃「あ」

~シャワー室~

八幡「……」ガチャッ

サァァァァ…

八幡「それにしてもここは備蓄といい、設備といい、色々揃いすぎてないか」

八幡「電気が付くという事は…まあ恐らく太陽光パネルでもあるんだろうけど」

サァァァァ…

八幡「……」

八幡「ってあれ、誰か入ってる!?」

ガチャッ

美紀「ふぅぅ…さっぱりした…」

美紀「ん?」

八幡「」

美紀「」

八幡(ば、バスタオル姿…だと…)

八幡「ぅぅ…!」ブブッ

八幡(いかん…また鼻血が…と、止まらん。そしてたまらん)ボタタタ

美紀「」

美紀「い、い…いやああああ!!!」

バシッ

八幡「ぶべ…っ!!」ドサッ

ガチャッ

胡桃「おい八幡!まだシャワー室に入るな…って遅かったか」

悠里「ご、ごめんなさい二人とも…私の不注意で」

八幡「」ボタボタ

【次の日・部室】

八幡「昨日はごめんなさい」

美紀「……」ツーン

悠里「あ、あのね美紀さん。八幡君にシャワー浴びるように促したのは私だから、その…どうか攻めてないであげて、ね?」

美紀「はぁぁ…もう。今までと違って女子だけじゃ無くなったんですから。気をつけて下さい」

悠里「ええ、気をつけるわ…」ショボン

由紀「まあまあみーくん、ほら今日のスパゲッティ美味しいよ!」

美紀「そうですね、とりあえず食べないと…」モグモグ

美紀「美味しい…」キラキラキラ

由紀「おお…」

八幡「おお…」ドキッ

美紀「……見ないで下さい。気持ち悪いです」ヒキッ

八幡「」

由紀「あぅぅ…」ショボン

胡桃「今のは多分、由紀に対して言った訳じゃないと思うぞ」

由紀「じゃあね八幡君!みんな!またお昼休みと放課後ね!」

悠里「行ってらっしゃい」

美紀「それじゃ、屋上に行きますか」

悠里「そうね」

八幡「屋上に何かあるのか?」

悠里「屋上で野菜を栽培してるのよ」

八幡「野菜を菜園できるスペースまであるのか。本当なんでも揃ってるなここは」

悠里「ええ、それに私は元々園芸部だから、野菜は前から育ててるのよ」

八幡「へー」

悠里「八幡君も良かったらどう?」

八幡「……」

八幡「いや、園芸の手伝いはまた後にする」

八幡「部員と妹と戸塚を捜さないと」

悠里「……そう。無理はしないでね」

八幡「ああ」

胡桃「……」

胡桃「……ちょっと待て」

八幡「あ?」

胡桃「一人じゃ大変だろ?」

八幡「大変なのは慣れてる。俺はずっと一人だったしな」

胡桃「んじゃ、あたしも手伝ってやるよ。人探し」

八幡「は?」

胡桃「さて、行くか」

八幡「ちょっと待て。お前は来なくて良いだろ」

悠里「胡桃…」

胡桃「そんな顔すんなよりーさん。大丈夫だ」

悠里「でもリスクが…」

胡桃「八幡と人捜しをしてれば、戦利品を手に入れることだって出来るかもしれないだろ?」

悠里「まあバリケードもあるしコッチは大丈夫だけど……」

悠里「……無理しないでね」

美紀「……」

【校門前】

胡桃「結構、闘い慣れてるな。やるじゃん」

八幡「顧問が女性とは思えない位、物凄く強かったからな。背中を見ているうちに闘うコツを掴んだ」

胡桃「そんなすげぇ人でも生き残れなかったのか…」

八幡「奴らに囲まれ、俺を庇って力尽きた」

胡桃「……すまん」

八幡「気にすんな。んで俺は原付バイクに乗るが。お前はどうする?」

胡桃「うーん、めぐねぇの車があるけど、あれは全員で出かける時の為にとって置きたいし…」

八幡「仕方ない。お前に歩調合せるから超低速で走るか…」

胡桃「なあ、この辺に動かせそうな原付バイクあるか?」

八幡「その辺に転がってると思うぞ」

胡桃「ふーん」

八幡「よし、行くか」

ブロロロロ…

今日はここまでです

千葉から横浜に原付で辿り着いたのか

>>54
一応原作は6巻までみたけど、舞台が横浜だとは知らなかったorz
このSSでは巡ヶ丘高校も千葉県だという設定でやってたので、脳内補完ヨロシクです

八幡「……」ガサッ

胡桃「なんだそれ。巡ヶ丘の地図か?」

八幡「ああ。探索し終えたらマーカーペンでチェックする」

八幡「よし。今日はここからを探索するか」

胡桃「ホームセンターか。ここはデカイし避難者もいそうだな」

【ホームセンター】

胡桃「おぉぉぉ!!シャベルが沢山ある!!」キラキラキラ

八幡「そんなに興奮する事か?」

胡桃「色んなのあるな!長いのから短い物まで」ガサガサ

ぅぅ…あ“あ”あ“…

胡桃「っ!!」ビクッ

八幡「来たな…」カチャッ

胡桃「よし、さっそくこの長いシャベルの性能を確かめてみるか!」

胡桃「おらっ!」ブンッ

ゴシャッ

八幡(まずは腹を勢いよく蹴って、壁に追い詰めて)ゲシッ

う“う”っ

八幡(腐った口元にめがけて、力を込めて一気に突く)

ゴシャァァ!

胡桃「おお、一撃で仕留めた…そんな闘い方もあるのか」

八幡「顧問の直伝はまだまだこんな物じゃない」

胡桃「やっぱお前強いな。今まで汚れ仕事はあたしがメインでやってたから、助かるよ」

八幡「まあ、汚れ仕事は昔から慣れてるんでな。色んな意味で」

胡桃「お前の顧問の先生とやらに会ってみたかったな。あたしより強いんだろ?」

八幡「力尽きるまでは本当に無敵だった」

胡桃「マジかよ。一体どんな人だったんだ」

八幡「そうだな…恵飛須沢に少し似てた」

胡桃「あたしに?」

八幡「女っぽくなくて、おやじっぽくて男勝りで強いところとか」

胡桃「女っぽくなくて悪かったな!」

八幡「でも優しくて、頼もしくて、キレイな人だった。俺に居場所を提供してくれた恩人だ」

八幡「趣味も合うし10年早く会ってたら惚れてたかもな」

胡桃「そ、そうか。キレイなのか」ドキッ

八幡(別にお前をキレイだなんて言ってないだろ。赤面するな。勘違いするだろ)

八幡(でもまあ、恵飛須沢もぱっと見は可愛らしい少女ではあるな」

胡桃「え」

八幡「あ、やべ声に出て……聞こえたか?」

胡桃「うん」

八幡「えっと、その、変な事言ってすまん」

胡桃「べ、別に気にしてないから平気だ」

八幡「……」

胡桃「でも話を聞く限りじゃその人、相当モテたんだろうな。あたしはそんなモテないし…」

八幡「ああそれがな。実は顧問は、なぜか男運が全く無い人でな。婚活の失敗ばかりしてて」

胡桃「」

八幡「どうした?」

胡桃「やっぱ似てるかもな…あたしも、その、男運がなくて」

八幡「まだ高校生だろ。そんな事を言うのは早いんじゃねぇの」

胡桃「いやそうじゃないんだ。実は…あたし…このシャベルで…」

~~~~

胡桃「…っという訳だ」

八幡「……そうか」

胡桃「もう先輩は二度と戻ってこない。付き合いは長かったけど、あの人と結ばれる事は、もう二度と無いんだ」

胡桃「……」グスッ

胡桃「お前にも会わせてやりたかったよ先輩」

八幡「そうか。だが悪いが、その先輩とやらが俺を慕うかは自信がない」

八幡(しかも話を聞く限り葉山みたいな姿を想像する。実際どんな奴なのか知らんが)

胡桃「大丈夫だ、先輩は優しくて爽やかでカッコいいからな。ボッチだったお前だって受け入れてくれる様な人なんだ!」

八幡「何故かその話を聞いてますます不安になる」

胡桃「なんでだよ!?いいか、先輩は素敵な人なんだ!だから大丈夫だ……もういないけど」グスッ

胡桃「……」

八幡「……まあ、よく今日まで持ちこたえたな」

胡桃「みんなのおかげだ。特に由紀。アイツがいなかったら気が狂ってたかもな」

八幡「丈槍か」

胡桃「由紀とはパンデミックになってから知りあったんだが」

胡桃「アイツがいるおかげで、みんなが笑顔でいられる。もっと早く出会いたかったよ」

八幡「それじゃ元は知り合いじゃなかったのか」

八幡(俺が奉仕部に入ったときの状況と少し似てるな。奇妙な出会い方というか)

胡桃「りーさんとは元から知り合いだったけど、美紀と由紀は元々関りなかった」

八幡「そうか。まあアイツはムードメーカーって感じだもんな。明るいし友達も元々多かったんだろうな」

胡桃「うーん」

八幡「どうした?」

胡桃「そう思うんだけどさ。でも由紀ほどの変わり者ならさ、本当はもっと目立っても良いハズなんだよな。例えばこう…周りに沢山人がいるとか」

八幡「違うクラスから見ても、丈槍は目立っててもおかしくない存在って事か?」

胡桃「ああ。だけどあの屋上で助けられるまでは、全然、由紀のこと知らなかったしさ」

胡桃「だから以前の由紀が、どんな生活を送ってたのか分からないんだ…しかもあんな状態だから過去の事も聞けないし」

八幡「……」

八幡「俺が捜している部員で、丈槍に似てる奴がいる」

胡桃「由紀に?」

八幡「ああ。あそこまでガキっぽくないが」

八幡「由比ヶ浜って奴で…髪の色も、犬好きな所も、優しくて明るいところもそっくりでな」

胡桃「へー!」

八幡「人気者だったしな。だから丈槍も、友達はいたんじゃねぇの?」

八幡(恵飛須沢の話を聞く限り、不安要素が無い訳じゃないが)

八幡「ただ一箇所だけ、決定的に違う部分があるが」

胡桃「決定的に?なんだそりゃ」

八幡「いつか会う機会があれば分かると思う」

胡桃「ふーん。そっか、会ってみたいな由比ヶ浜って奴」

八幡「結局、ここにもいなかったか…」

八幡「だが缶詰はかなり手に入ったな」

胡桃「ああ、大和煮もあったし。食料が増えて良かったよ」

八幡「んじゃ次は…となりの店にでも寄るか」

【バイク店】

胡桃「おお!ちょうどバイク欲しかったんだ!ラッキー!」

八幡「原付ならそこらに転がってたじゃねぇか」

胡桃「いやいや!せっかくだし新品を拝借しないと」

八幡「……俺も原付には慣れたし、そろそろ大きいのに乗り換えようかな」

胡桃「よーし!あたしはこれに乗るぞ!」

八幡「おいおい。いきなり400CCは危ないぞ」

胡桃「大丈夫だ!めぐねぇの車とゲームで運転は鍛えられてる!」

八幡「全然大丈夫じゃねぇよ」

胡桃「八幡はどれにするんだ?」

八幡「おれは…ビッグスクーターあたりでも乗ろうか」

胡桃「えーお前は原付で慣らしたんだろ?ハーレーとかにしろよ!」

八幡「俺に不釣合いなもの提示するな。それとお前は前面にガードが付いたスクーターとかにしろ」

胡桃「いーや!女は度胸だ!400CCのアメリカンバイクで行く!」

八幡「男は度胸の間違いだろ」

【ガソリンスタンド】

八幡「よし、給油オッケーだ」

胡桃「あーあ。アメリカンバイク乗りたかった」

八幡「死んだら元も子もないだろう」

胡桃「大丈夫だ!あたしの運転センスを舐めるなよ!」

八幡「どうだか…」

胡桃「今日はもう探索は終わりか?」

八幡「ああ、暗くなってきたしな」

胡桃「よし!学校まで競争だ!」ブロロロ

八幡「あ、おい待て」ブロロロ

胡桃「おお!すっげ!!」

八幡「いきなり飛ばしすぎだ!死ぬぞ!」

胡桃「おっと危ねぇ」ササッ

ギュルルルルル!!

八幡「っ!?あのスピードで瞬時に、軽やかにカーブしやがった…!」

【部室】

ブロロロロ!!!

悠里「外からなにか凄い音がするわね…」

美紀「あ、あれは先輩達!?」

由紀「わぁぁ!くるみちゃんもバイク乗ってる!」

~~~~

キキィィィィィ!!

胡桃「へへへ、いっちばーん!」

八幡「お前、すげぇぇな…」

八幡(あのスピード違反の速さで事故らないとは。いくらゾンビしかいないとはいえ、運転の才能があるのは確かの様だな)

ぅぅ…あああ…

胡桃「おっと。来たな」ササッ

八幡「まあアレだけ爆走してれば音が響くわな」

八幡「んじゃ、裏門から行くとするか…」

胡桃「突撃!!!」

八幡「おい正面からは危ねぇよ」

胡桃「お前もいるから大丈夫だろ!」

八幡「少しはリスクを回避しろ」

【部室】

胡桃「たっだいまー!」

八幡「うす」

悠里「お帰り」

美紀「随分と派手な演出で帰ってきましたね」

由紀「くるみちゃんカッコよかった!」

胡桃「へへーん!まあな。ほら戦利品」

由紀「わぁぁ!大和煮がいっぱい~!」キラキラ

悠里「八幡くん大丈夫?疲れきってるわよ」

八幡「おい若狭。あいつの暴走癖はどうにかならんのか」

悠里「ああ胡桃はね…結構無茶する所あるから」

悠里「それより、やっぱり見付からなかったの?」

八幡「ああ。まあそう簡単には見付からんわな」

【次の日・部室】

八幡「見回り終わったから、俺はそろそろ探索に向かうわ」

悠里「そう。今日も気をつけてね」

胡桃「よっしゃ、今日も頑張るか」

八幡「え、今日も来るの?」

胡桃「当たり前だろ」

八幡「……はぁぁ。精々、足手まといになるなよ」

胡桃「なにー!今日はお前の10倍はアイツら狩ってやるからな!」

八幡「狩る言うな」テクテク

胡桃「んじゃいってきまーす!」

ガラララッ

悠里「私達も菜園に向かいましょう」

美紀「……」

悠里「美紀さん?」

美紀「どうして胡桃先輩はあんな人に付いていけるんですかね。理解できません」

悠里「やっぱりまだ根にもってるの?」

美紀「抱き付かれた上に、いちいち私をみて鼻血なんて出されたら普通はイヤになります」

美紀「昨日も私のパジャマ姿みて鼻血出してたし!」

~回想・寝室にて~

八幡「う“っ!!!」ブバッ

八幡(なんだあれ…丈の長い上着しか着てないじゃねぇか…ズボンはどうしたズボンは!?もう少しでパンツ見えるぞ!!)ドババッ

八幡「うぅ…ぁぁ…血が…」ドバドバ

八幡(直樹の生足…いや戸塚の生足…あれ?逆?)

美紀「」ドンビキ

胡桃「またかよ!いい加減にしろ!」

由紀「はわわわわ!八幡くんが!た、たいへんだー!」

悠里「ティ、ティッシュ!早くティッシュを!」

~~~

美紀「あの人は最低です!」プンスカ

悠里「まあ抱きつかれたのはともかく…それだけ、美紀さんが魅力的だったって事じゃないの?」

【とある教室】

由紀「ん?」

由紀「先生、ちょっとごみん」タタッ

由紀「あーー!八幡君とくるみちゃん!授業さぼっちゃだめだよ!」ガララッ

だいじょうぶだー!これは体育の授業なんだよ!

由紀「あ、そうなんだ」

ブロロロロ!!

由紀「っ!?バイクを動かしてるーー!!」

由紀「くるみちゃん!八幡くん!いくら私でもだまされないぞー!早く教室もどりなよー!」

由紀「あ、行っちゃった…」

由紀「……」

由紀「あ、先生ごみーん」

由紀「はぁぁ」

【数日後の夜・部室】

胡桃「なあ!あたしも、そろそろハーレー乗れるんじゃないか?」

八幡「バカも休み休み言え」

由紀「胡桃ちゃんがバイクで帰ってくるとき、凄くカッコ良かったよ!」キラキラキラ

胡桃「へへへ、だろ?」

由紀「でも授業サボるのはダメだよ!」

胡桃「さ、さぼってねぇーよ!あれは授業なんだ!」

悠里「でもバイクは危ないわ…原付だって本当は教習所に行かなきゃいけないのに。まして中型や大型なんて高校生は本来乗れないし」

胡桃「これでもビッグスクーターはだいぶ慣れたんだぞ。もう良いだろう!」

八幡「確かにお前の運転センスは脱帽するが、危ないのは事実だ。あとスピード出しすぎだ」

胡桃「ゲームとは全然、面白さが違うもんだからついアドレナリンが…」

胡桃「それより明日はドコへ行くんだ?」

八幡「そうだな…駅前あたりとかを探索しようかと」

胡桃「よっしゃ!」

由紀「……」ジーッ

胡桃「ん?どうした由紀。今日の戦利品のコンビーフは上手くないのか?」

由紀「なんか最近くるみちゃん!八幡くんにベッタリしすぎ!」プンスカ

胡桃「は、はあ?」ドキッ

由紀「もっと私の相手してよね~!じゃないとみーくんに浮気しちゃうぞ~!」ギュゥゥ

美紀「先輩へんな事言わないで下さい。あ、あと暑苦しいです」

胡桃「あたしがいつお前と恋人になった!全く…」

悠里「でも確かに、いつも一緒よね」ニコッ

八幡「べ、別に恵飛須沢とはそんなんじゃねぇよ…」ドキッ

胡桃「そ、そうだ!ただ八幡を一人で探索させるのも酷だし、あたしも一応闘えるから…それに戦利品だって確保できるし!」

胡桃「とにかく変な関係とかじゃないからな!大体こんなスケベ野朗だれが…それに八幡には戸塚が…」ブツブツ

八幡「だれがスケベ野朗だ」

美紀「先輩意外いないと思いますが?」

八幡「」ゾクゾク

八幡(あれ、直樹に…じゃなくて戸塚に罵倒されるのも悪くないな、むしろ…あれおかしい、雪ノ下に罵倒された時はこんな感覚無かったのに…いや、でもあれは戸塚であって戸塚じゃない…あれ、頭がクラクラしてきた)ブツブツ

美紀「」ヒキッ

【駅前にて】

八幡「なあ、ゲームは好きなんだよな」

胡桃「ああ。前までは結構やってたよ」

八幡「んじゃ、ゲーム機とカセットを幾つか持ってくか」

胡桃「そういえば学校にゲーム機は無かったな。当たり前だけど」

八幡「これで皆でゲームもできて、丈槍からの嫉妬と不満、それと俺たちの誤解も少しは解消されるだろ」

胡桃「そうだな」

八幡「俺は液晶ディスプレイを確保してくるから、好きなカセット選んでろ」タタッ

胡桃「ああ」

八幡「この辺はもう奴らを駆除したから大丈夫だと思うが、もしもの時は無理すんなよ」

胡桃「分かってるよ。そっちも無理しないで逃げろよ」

八幡「んじゃ行ってくる」タタッ

胡桃「どれにしようかな…」ガサゴソ

胡桃「……」

胡桃(そうだ、アタシが好きだった先輩と八幡は全然タイプが違う)

胡桃(あたしは先輩意外は考えられない)

胡桃(あんな根暗で捻くれてないし、目つきも悪くないし、負のオーラもないし)

胡桃「………」

胡桃(……でもアイツ、意外と顔自体は整ってるだよなぁ)

胡桃(何だかんだ言って頼りになるし、優しいし)

胡桃(何よりこんな危険な状況なのに、妹とか部員とかを必死に捜してるし…)

胡桃(美紀そっくりの素敵な恋人がいるのも頷けるな)

胡桃(結婚したら、その人はきっと幸せだろうな)

胡桃「……」

胡桃(アイツ、将来の夢は何だろ)

胡桃(あたしは将来はお嫁さんになりたいけど…アイツは何になりたいんだろ。捻くれてるし、凄い馬鹿げた回答が返ってきそうだけど)

胡桃「……」ボーッ

八幡「おい」

胡桃「わわぁぁ!?ビックリした!」

八幡「小さいなディスプレイを手に入れたが、これで良いよな?」

胡桃「え、ああいいじゃね?」

八幡「さて、そろそろ上の階を見回るか」

胡桃「……なあ」

八幡「ん?」

胡桃「お前って何かスポーツやってたのか?」

八幡「全然」

胡桃「そのわりには運動神経良いな」

八幡「小学校の頃、一人で野球とかサッカー、テニスはやってたしな」

胡桃「一人で出来るのかよ!?」

八幡「ほら壁当てとか。あとキャッチャーフライなら一人でバッティングと守備を両方できる」

胡桃「ああ…まあ、うん」

八幡「後は妹とよく卓球やってた」

胡桃「お前、本当に妹想いなんだな」

八幡「なんてったって戸塚と妹は俺の全てだからな」

胡桃「お前シスコンかよ…」ヒキッ

八幡「違う、俺は妹を大事に思ってるだけだ」

胡桃「……」

胡桃「もし…さ」

八幡「?」

胡桃「パンデミックの問題とか、全部解決して…また学校に通えるようになったら…さ」

八幡「おう」

胡桃「お前が所属してる部活とやらに、戻るのか?」

八幡「わからん。そもそも通う学校が総武高校とは限らんしな。同じ部活を続けられるとも限らん」

胡桃「もし」

八幡「?」

胡桃「一緒の学校に通えたら…陸上やらないか」

八幡「え」

胡桃「りーさんや美紀も誘いたいが、たぶん園芸部とかの文化部に入るだろ」

胡桃「だから由紀を誘うと思うんだ。そしてお前も入れよ」

八幡「断る」

胡桃「ちょ、なんでだよ!」

八幡「面倒だ」

胡桃「お前、運動神経良いのに勿体無いぞ!」

八幡「前も言ったろ。嫌われやすい性質なんだよ。男からは軽んじられ、女からはゴキブリみたいな目で見られるに決まってる。そんな目に合うくらいなら入らん」

八幡「中学の頃に俺は、リレーのバトンを渡す時に女子からドンビキされた位だ。はははは、陸上なんてやらないほうが良い」ケラケラ

胡桃「もしそんな酷い事するやつらがいるなら!あたしが許さん!!!」

八幡「………っ」ドキッ

胡桃「あ、悪い怒鳴って」

八幡「……大丈夫だ。それより上の階に到着した訳だが」

ぅぅ…あ“あ”あ“…

胡桃「っ!!来たか…」

八幡「気を抜くなよ」

胡桃「そっちもな!」

八幡「……」

【コンビニ】

胡桃「さっきはお疲れ。それじゃ昼飯を食うか!」

八幡「あーしんどかった。さっきは数が多かったな」

胡桃「小さいとはいえ、リュックにテレビが入ってるから余計大変だろ」

八幡「ああ、重い」

胡桃「ん?これは…」

八幡「どうした」

胡桃「風船だ!」

八幡「風船?」

胡桃「ああ、八幡がうちの学校に訪れるその日、学園生活部で手紙を書いて、風船と鳩を使って外に送ったんだ」

八幡「風船に伝書鳩…あれはそういう意味だったのか」

胡桃「え、まさか見たのか!?」

八幡「ああ、なんか建物から風船と鳩が飛んできたから…あれを目印に、学校まで辿り着いた」

胡桃「そうだったのか…!やっぱ由紀の勘と発想はすげぇな…」

胡桃「風船とアルノー鳩錦二世にはよくよく感謝しろよ!」

八幡「なんだその変な名前。つーか1世いるのかよ」

胡桃「まあとにかく、風船が役になったのは事実だ」

胡桃「今回も風船を持ち帰るとするか!」ススッ

八幡「まあ俺が学校に辿り着いた様に、また何かに役立つかもな」ススッ

八幡「……」

八幡(風船に感謝する日がくるとはな)

【学校・夜の部室】

由紀「八幡くん!くるみちゃん!ゲーム機ありがとう!」キラキラキラ

胡桃「おう。へへ、早速やるぞ!」

由紀「えへへへ」

八幡「おい恵飛須沢。まだ戦利品あっただろ」

胡桃「あ、そうだ…忘れてた…」ゴソゴソ

胡桃「じゃじゃーん」ススッ

由紀「あ、風船!」

八幡「コンビニで見つけた」

由紀「わぁぁぁ」キラキラ

悠里「またいつか、風船お手紙を送りたいわね」

美紀「そうですね…いつかとは言わず、何度でも…」

美紀(圭にも届くように……)

八幡「……?」

八幡(物憂げな表情。彼女にも何か抱えてる物があるのだろうか)

美紀「……あんまりジロジロ見ないで下さい」プイッ

八幡「すまん」ゾクゾク

悠里「あらあら、鼻の下が伸びてるわよ」

胡桃「ドMか!」

由紀「ねぇねぇ、早くマリオテニスやろう!」

八幡「お、テニスが先か。良いだろう。俺のテレサには勝てまい」

胡桃「いいや、わたしのディディーには勝てないぜ!」

由紀「私のパタパタが一番だよ!」

悠里「ピーチとクッパ、どちらを使おうかしら…美紀さんは何を使う?」

美紀「……マリオです」

【寝室】

八幡「……」

八幡(ドアの前で俺は寝てるが…未だになれん。すぐ近くに女子がいるこの状況…)ドキドキ

八幡(さっきも直樹を見て鼻血を出してしまった。今日からズボンを穿く様になったが、先日の生足を思い出してしまった…う、また鼻血が…)ボタタ

由紀「良いこと思いついた!!」

八幡「いっ!」

美紀「もう…なんですか。騒々しいですよ」

悠里「どうしたの由紀ちゃん?」

由紀「とっても素敵な事!」

胡桃「はいはい、何ですか…ってあれ、デジャブ?」

八幡「……で、なんだよ。こんな夜中に」

由紀「えーっとね、それでね、んーとね」

由紀「あとは明日のお楽しみ!」

胡桃「アチョー!!」チョップ

由紀「いったーーい!」

胡桃「同じシチュエーション再現させるな!」イライラ

由紀「痛たたた…」

美紀「それで結局、どうしたんですか?」

由紀「んーとね、お楽しみ!」

胡桃「はぁぁ…わーったわよ。まあ楽しみに待ってる」

由紀「あ、やっぱり我慢できない!」

胡桃「おい!」

由紀「みんな!今度、文化祭を開こうよ!」

八幡「……文化祭?」

由紀「あと…あ、やっぱり修学旅行が先が良いかな?それともまた遠足とか?それともそれとも」

胡桃「どれにするかハッキリしろよ…」

由紀「ねぇー八幡くんは何がいい?」

八幡「知るか」

美紀「そういえば先輩達が遠足の時に、私と出会ったんですよね…」

胡桃「ああ、そうだったな」

悠里「……フフフ、楽しみね」

今日はここまで

乙乙
平塚先生はゾンビになったの?
それとも本人がそれを察知して自害したの?

>>82
平塚先生の最期は本編中に語られるのでまだ言えません
まだ書き溜めしてないので、次の投下は早くて四日、遅くて一週間後位です

遅くて一週間とか早いじゃないか(歓喜)!
1つ聞きたいんだが、八幡はみーくん見て鼻血ふいてんの?それともみーくんから戸塚を見てふいてんの?

調子のった胡桃が事故ってバイクを壊すが、幸い軽傷で済む。で、八幡とニケツでツーリングするとか想像が膨らむ。

>>89
みーくんに興奮してるのは事実だけど、感情的には後者に近いかな
普段の八幡なら女を警戒してしまうが戸塚に似過ぎている為、流石の八幡も気が緩んでしまう状態

それと一瞬ではあるけど、時々、みーくんを戸塚に見えてしまう時もある
(アニメでみーくんが教室で一瞬、由紀を圭と見間違えた様な感覚)

では投下します
この後の話は、5つ位の分岐ルートを考えてたけど、正直どれにしようか悩んだ
とりあえず続きは、一番これが良いかなって思うシナリオで書いていきます

【翌日・屋上】

悠里「あら、今日は菜園の手伝いをしてくれるの?」

八幡「いつも飯を食わしてもらってる訳だしな。たまには手伝わないと筋が通らん」

悠里「それじゃ水やりを頼むわ」

八幡「おう」

胡桃「よっしゃ、始めるか!」

美紀「……胡桃先輩、朝の見回りは終わったんですか?」

胡桃「え?まだ」

美紀「あの、朝の見回りは胡桃先輩とあの人が担当なんじゃ」ジトーッ

胡桃「しょ、しょうがねぇだろう!女一人じゃ危ないし…八幡がいてくれた方が楽なんだよ」プイッ

美紀「正論ではありますが、いままでゾンビ相手に散々、無茶ばかりしてきた人の発言とは思えませんが」

胡桃「ぅぅ…べ、別に良いだろ。心境の変化って奴だ」

胡桃「それに皆でやったほうが、作業だって早く終わるだろ?」

美紀「それはそうですが…」

胡桃「あ、あたしも水やりしてくる!」ダダッ

胡桃「おい八幡!何をチンタラやってんだよ!」シャーッ

八幡「おい。そっちはもう俺が水をまいたぞ」

胡桃「そらそら!」

八幡「ちょ、派手に撒きすぎだ。やめ、冷たっ…おい!こっちに水かかってる!」

胡桃「へへへへ!」シャーッ

悠里「フフフ。こらこら、水は丁寧に撒かないとダメよ」

ギャーギャー、ワーワー

~~~

胡桃「よし、水遣りも終わったし…そろそろ見回りいこうぜ!」ガシッ

八幡「おい、腕を引っ張るな」ドキッ

胡桃「それじゃ校内の見まわり行ってきまーす!」ダダッ

ガチャン

悠里「胡桃ったらせっかちなんだから」

美紀「……」

【昼休み・部室】

由紀「お昼ごはんいただきまーす!」

悠里「いただきます」

由紀「もぐもぐ…最近くるみちゃん、部室でお昼ごはん食べないね」

悠里「そうね。昼間は八幡くんと一緒にいるものね」

由紀「そっか~八幡くんと同じクラスなんだよね。いいなー」

由紀「みーくんがいるからいいけど!」ダキッ

美紀「ちょ、食事中に止めてください…」

由紀「えへへへ」スリスリ

美紀「もう…」

由紀「……でも。胡桃ちゃんの気持ち少し分かるかなぁ」

美紀「え?」

由紀「よーし!りーさんにも浮気しちゃう!パフパフ~」ボフッ

悠里「あらあら、甘えん坊さんね」ナデナデ

美紀「悠里先輩はあの変態先輩をどう思ってますか?」

悠里「そうね…八幡くんは捻くれてるし、エッチだし、変わってるけど。私は彼を心から尊敬してるわ」

美紀「はぁ。どうして皆、あんな人の事を…」

【夜・部室】

胡桃「それで、結局どうするんだ由紀?」

由紀「何を?」

胡桃「昨日の夜に行ってた件だよ。学園祭にするのか、修学旅行にするのか。それともまた遠足か」

由紀「あーそうだそうだ。決めないと」

由紀「八幡くんは何が良い?」

八幡「……」

八幡「学園祭に修学旅行ね。へ、あんまり良い思い出がない」

由紀「え、そうなの?」キョトン

八幡「遠足じゃないが職場見学でも良い思い出なかった」

胡桃「また始まったよ。黒歴史自慢」

八幡「……」

八幡「でも悪くは無かった。楽しい時間もあった…少なくとも高2の頃の体験は黒歴史ではない」

八幡「今振り返れば必要な経験でもあった。あの失敗も挫折も。それを乗り越える為の試練があったからこそアイツらと本物に…」

学園生活部全員「……?」

八幡「あ……独り言を言ってスマン」

胡桃「んで、どうするんだ?あたしは何でもオッケーだが」

八幡「どーでもいい」

胡桃「少しは興味持てよ…」

悠里「ここは、ゆきちゃんが選んだらどうかしら?」

由紀「……」

由紀「それじゃ文化祭!」

胡桃「文化祭か」

悠里「フフフ、そういえばまだ文化祭はやってないわね。季節的にもピッタリだし良いんじゃないかしら」

八幡(ま、妥当な線か。外出系のイベントはリスクが高すぎるし)

美紀「それで、出し物は何をするんですか」

胡桃「バンド発表とかどうだ」

八幡「俺は楽器は扱えんぞ」

由紀「カスタネットなら扱えるよ!唯ちゃんみたいに!うんたん!」

八幡「ギターも弾けたら第二の唯になれたのにな」

由紀「あぅぅ…」グサッ

悠里「楽器を覚えるのは大変だものね」

美紀「そうですね…もっと少しハードルを下げては?」

由紀「うーん」

悠里「みんなで合唱なんてどう?」

八幡「まあ無難な線じゃねーの?」

美紀「それじゃ何を歌うか決めましょう」

由紀「……」

由紀「ちょっと待ってみんな!」

全員「?」

由紀「演劇をしよう!」

八幡「え、演劇??」

由紀「うん!」

八幡「却下」

由紀「えー!?」

八幡「絶対止めた方がいい」

八幡「大体、演劇自体に良い思い出がない。昔、木の役をやってただけなのに、アクシデントが起きた時に、なぜか俺が皆から責められたりしたしな」

胡桃・悠里・美紀「……」

八幡「…?おい、なんだよ黙り込んで…俺の話に引いたのか?」

美紀「先輩には元々引いてますから」

八幡「…っ」ゾクゾクゾク

八幡「ああ、そうか」ニヘラ

美紀「」ヒキッ

胡桃「まあ八幡の昔話は置いといて……由紀が演劇やりたいんならそれが一番だって事だよ」

悠里「そうね。由紀ちゃんの考えに賛成だわ」

八幡「……」

美紀「由紀先輩の考えならきっと文化祭も大成功です。何も問題ありません」

由紀「えへへへ。照れちゃうな~」

八幡(凄まじい信頼。俺はまだ分からないが、彼女には不思議な魅力があるのだろう)

胡桃「しかし何の演劇をしようか」

由紀「スラムダンクが良いかな~」

胡桃「お、良いね!」

悠里「えー…」

美紀「いやいやいやいや!ありえません!」

八幡「お前達が丈槍を信じた結果がこれだよ」

由紀「それじゃ私が花道の役ね」

胡桃「花道はあたしだ!」

由紀「くるみちゃんはゴリでいいんじゃない?」

胡桃「お前、絶対色んな意味でアタシをバカにしてるだろ!」

八幡「おい、スラムダンクの演劇をする話はもう止めろ」

由紀「八幡くんは、不良時代のミッチーかな」

胡桃「わかる!」

八幡「何一つわからねぇよ」

由紀「あ、安西先生はどうしよう」

胡桃「鉄男も忘れちゃダメだぜ」

八幡「しかも『バスケがしたいです…』の回かよ。俺は安西先生役に土下座確定じゃねぇか」

美紀「とにかくスラムダンクから離れてください!何か別な話にしましょう!」

由紀・胡桃「えーー」

悠里「すぐには決めずに、各々で何を発表しようかじっくり考えましょう」

由紀「それじゃ、けいおん!の演劇とかどうかな」

美紀「それじゃ結局、楽器を覚えなければならないじゃないですか…まあどうせ却下ですけど」

由紀「えー!」

悠里「今日はもう遅いから寝ましょう」

由紀・胡桃・美紀「はーい」

八幡「……」

八幡(ま、一応考えてやるか)

【次の日の夕方】

胡桃「今日も見付からなかったな…お前の部員仲間と妹と戸塚」

八幡「……ああ」

胡桃「もう暗くなってきた、帰ろうぜ」

八幡「なあ恵飛須沢、図書室って安全か?」

胡桃「図書室…?あまり安全とは言い切れんな」

八幡「そうか。なら頼みがある」

胡桃「?」

【深夜・部室】

ガララッ

胡桃「ただいまー!」

八幡「うーす」

悠里「遅かったじゃない。心配したのよ?」

胡桃「あー悪い悪い。ちょっと残業をな」

悠里「残業?」

胡桃「耳を貸せ…美紀もだ」

美紀「?」

胡桃「八幡とあたしで図書室付近は制圧した」

美紀・悠里「え!?」

胡桃「ついでにバリケードも増強した」

美紀「ふ、二人でやったんですか!?」

胡桃「ああ」

悠里「良くアレを二人で排除しきったわね。しかもバリケードの増強まで」

胡桃「八幡の奴、めっちゃ強いからな。何てったって平塚流の伝承者だし」

悠里「……?なにそれ」

胡桃「平塚静。アイツの顧問の名前だよ。アタシや八幡とは比較にならんほど強いらしいぜ」

美紀「良く分かりませんが、あの人はそんなに頼もしい人なんですか…」


由紀「八幡くん、お腹減ったー。大和煮ちょーだい」グゥゥ

八幡「お前はもうとっくに食い終えてるだろうが」

由紀「食べたいよーー!お座りとお手するから頂戴!わん!」

太郎丸「わんわん!」

八幡「意味が分からん」


胡桃「ま、強くなかったら一人で旅なんてできやしないもんな」チラッ

美紀「……」

【深夜・図書室】

ガララッ

美紀「……」

美紀(ここも安全圏になったから、一人で来ても大丈夫だよね)

美紀(本当は夜の単独行動はダメだけど…みんなもう寝ちゃったし…それに本を読みたかったし)

美紀「演劇で使う台本を探さないと」

美紀「そういえば、電気付いてるけど誰かいるのかな…あれ?みんな寝てたハズなのに」

「誰だ?」

美紀「ひゃっ!!」

八幡「あ…」

美紀「」

美紀(この人の事忘れてた)ガクッ

美紀(でもここまで来て引き返すのもアレだし…)

八幡「戸塚。じゃなくて直樹か」

美紀「……」

八幡「……」ペラ…ペラ…

美紀「……?」

八幡「コレが良いかな…」ペラ…ペラ…

美紀「あの、もしかして演劇で扱う本を捜してるんですか?」

八幡「え?ああ」

美紀「……」

美紀(私も探そう)

八幡「……」ペラッ

美紀「……」ペラッ

八幡「……」ペラッ

美紀「意外と寡黙なんですね、先輩」

八幡「今頃きづいたのかよ」

美紀「それに本を読むのも意外です」

八幡「こう見えて国語は進学校にして学年3位だったんでな」

美紀「そうですか。エッチな小説でも見て国語力を上げてたんですか?」

八幡「官能小説読むほど飢えてないっつーの」

美紀「どうだが。先輩はイヤらしいし。変態にして変質者だし」

八幡「そ、そんな事ない」ゾクゾクゾク

美紀「……なんで鼻の下を伸ばしてるんですか」

八幡「べ、別に伸ばしてない」ゾクゾクゾク

八幡「……」

八幡(そういえば直樹とまともに会話したのは、これが初めてか)

八幡(直樹をみてると戸塚の姿ばかり思い出してしまうが…あの四人の中では一番、辛辣な所があるんだよな)

八幡(クールで辛辣、読書好きで…)チラッ

美紀「……」

八幡(静かな空気を好む…)ジッ

「何を見ているのかしら?」

八幡「え」

「腐った目で鼻の下をだらしなく伸ばして。不愉快だわ。通報しようかしら?変態谷くん」

八幡「雪ノ下?」

「え?」

八幡「雪ノ下…雪ノ下…」

「ど、どうしたの比企谷君?」

八幡「あ…ぁぁ…」ボロボロ

美紀「せ、先輩…?」

八幡「あ…あれ?」ビクッ

美紀「だ、大丈夫…ですか?」

八幡「あ、ああ…」

美紀「先輩?」

八幡「すまん、何でもない」

八幡(まさか戸塚だけでなく、雪ノ下とも見間違えるとは…やっぱ疲れてんな俺)

八幡「……」グスッ

美紀(さっき涙を流していた…あの性欲の塊みたいな人が、真面目な表情で)

美紀(雪ノ下…捜している人達の一人なのかな)

八幡「さっきのは忘れてくれ」

美紀「は、はい」

美紀「……」

美紀「先輩って意外と、真面目な人なんですね」

八幡「は?」

美紀「……いや、よく考えなくても真面目です。大切な人を命がけで捜してるんですから」

八幡「……」

美紀「あと、本読むの好きなんですか?」

八幡「え、ああ…なぜ分かった」

美紀「だって机の上に沢山本が置いてあるじゃないですか」

八幡「台本捜しの為だ。机の上に本が沢山あるだけで読書好きって決めるのは安直すぎないか?」

美紀「安直って…先輩に言われたくありません」

【3時間後】

八幡「……」ペラッ

美紀「……」ペラッ

八幡「よし…」パタンッ

美紀「決まりましたか?」

八幡「ああ」

美紀「本当ですか?何の作品を」

八幡「浦島太郎」

美紀「……あの話は、オチがオチだけに、高校の文化祭では盛り上がりに欠けませんか?」

八幡「だよな。うん。却下されるとは思ってた」

八幡「直樹の方は何か見付かったか?」

美紀「色々ありますが…さるかに合戦とか」

八幡「嫌われ者を皆でリンチするおめでたい話か」

美紀「どうやったらそんな発想というか考えに至るんですか…」

八幡「つーかあの話を採用したら俺が猿役なる未来まである」

美紀「先輩って結構ネガティブなんですね」

八幡「今頃気がついたのか」

美紀「だって変態なイメージしかなくて」

八幡「だ、だれが変態だ」ゾクゾクゾク

美紀「そういう態度を取る所とかですよ」

美紀「他にはありませんか?」

八幡「うーん…微妙だな…」

美紀「今日はもう遅いし寝ますか?」

八幡「……そうするかな」

八幡「……」

八幡「しかし…まさか文化祭に参加するとはな。この世紀末状態に」

美紀「本当、まさか今年も文化祭に参加できるとは思いませんでした」

八幡(思えば今年は正月から波乱だらけだったな…)

美紀「ん、あれは…」ガサガサッ

八幡(雪ノ下家の事…マラソン大会…フリーペーパー製作…バレンタイン…水族館…雪ノ下の依頼…)

八幡(……パンデミック)

美紀「コレなら盛り上がる…」

八幡(正月から今に至るまで休みなしでイヤになる。もう社畜状態じゃねぇか俺)

八幡(正月…俺と由比ヶ浜が陽乃さんに捕まって、それで雪ノ下が助けに来て…)

八幡(陽乃さんはまるで…邪知暴虐の王の如くで…)

八幡「……」

八幡「メロスだ」

美紀「メロスにしましょう」

八幡・美紀「え」

八幡・美紀「……」

美紀「同じ事を考えてたんですね」

八幡「そうみたいだな」

美紀「……なんか変態と同じ思考回路みたいで悔しいです」

八幡「俺も罵られて悔しい」ゾクゾクゾク

美紀「悔しさの欠けらも感じませんが」

コンコン

八幡・美紀「?」

由紀「あ、八幡君にみーくん。ここにいたんだ!」

八幡「どうした丈槍」

由紀「んーっとね、演劇の台本思いついてね」

由紀「劇はシンデレラをやろう!」

八幡・美紀「シンデレラ?」

由紀「そう!シンデレラ!」

美紀「なんでシンデレラを?」

由紀「うーんとね、なんとなく」

八幡「なんとなくかよ…」

美紀「そうですか…でも困りましたね。ついさっき私と先輩も台本が思いついて」

由紀「なになに?」

八幡「走れメロスだ」

由紀「走るメロン?」

美紀「走れメロスです!」

由紀「ああ、メロスね!ふーん」

由紀「じゃあ両方やろうよ!」

八幡「えー…」

美紀「その発想がありましたが…さすが由紀先輩」

八幡「おい、まじで両方やるのかよ」

美紀「良いじゃないですか。やるなら徹底的にやらないと」

由紀「そーだそーだ!」

八幡「あーメンドくせー…これから毎晩、演劇の練習かよ…」

~誰かの夢の中~

「へへへ、お前と一緒にいると楽しいよ」

「そうか。そんな事言われたの初めてだ。さてはお前、どこかの悪徳業者でハニートラップでも企んでる?俺をだませると思ったら大間違いだ。俺は被害者を知ってる。ソースは親父」

「んなわけねーだろう!」

「痛っ!叩くんじゃねぇよ!」

「ったく…せっかく二人っきりで遠い国のお城まで旅行に来たんだ。バカな事言うなよ」

「はいはい」

「夜空がキレイだな」

「ああ…」

「なあ、お前って好きな人いるのか…あれ?おーい○○!どこ行くんだよ!」

「……ここまでだ」

「え」

「俺はもう行かないと」

「行くってどこに」

「捜しに行くんだよ。アイツらを」

「は?なに意味わかんない事言ってんだよ…ちょ、おい!待てよ!」

「……じゃあな」

~~~~~

胡桃「待てよ!!!!」ガバッ

胡桃「ぜぇ…ぜぇ…ぜぇ…」

胡桃「夢…?」

悠里「なに?どうしたの?」

胡桃「あ、りーさん。ごめん…ただの夢だ」

悠里「凄い汗よ…嫌な夢でも見たのね」

胡桃「そうでもない。久しぶりに良い夢見たよ」

胡桃「前まではよく、先輩が変わり果てる夢ばかり見てたし」

悠里「でも叫んでたじゃない」

胡桃「なんか途中で展開がおかしくなってな…あれ、やっぱ悪夢なのかな」

悠里「……何か飲む?」

胡桃「いや、大丈夫だ…ん?」チラッ

悠里「どうしたの?」

胡桃「由紀と美紀がいない…それに八幡も」

悠里「……お手洗いにしては不自然よね」

胡桃「ちょっくら見まわり行ってくる…付いて来るか?」

悠里「そうね。私もいくわ」

悠里「それで、どんな夢を?」テクテク

胡桃「えーっと…誰かと旅行に行ってた」

胡桃「でも誰なのか思いだせなくて。大切な人には変わりないと思うんけど」

悠里「でしょうね。あんな大きな声出して、汗いっぱいかいて…」

悠里「先輩さんではないの?」

胡桃「あれは多分違う」

悠里「それじゃ学園生活部の誰か?」

胡桃「うーんそうなのかな…あんまり覚えてないんだ」

悠里「……あれ、図書室に電気が」

胡桃「本当だ」

ガララッ

胡桃「あ、お前達」

八幡「おう」

美紀「胡桃先輩、悠里先輩」

悠里「ここにいたのね」

由紀「あ!りーさん」ダキッ

悠里「フフフ、どうしたの?」ナデナデ

由紀「えっとね、実は」

~~~~

悠里「『走れメロス』に『シンデレラ』…良いじゃない」

胡桃「豪華二本立てか。こりゃ頑張らないとな!」

八幡「先が思いやられる」

美紀「先輩、台本を探しておいて情けない事を言うもんじゃありませんよ」

八幡「まさか2本分やるとは思わないだろ」

悠里「あら」

八幡・美紀「?」

悠里「フフフ。アナタ達、仲良くなれたのね」

美紀「べ、別にそんなんじゃありません…こんなエッチな人となんで私が…」

八幡「エッチとは人聞きが悪い」ゾクゾクゾク

美紀「そういう所がエッチなんですよ!」

由紀「えへへ、みーくん照れてる!」

美紀「照れてません!」

胡桃「はははは!」

胡桃(そうか。やっと美紀も八幡と話せる位には仲が良くなったのか)

胡桃(ずっと八幡のことを猛烈に嫌ってたから、一時はどうなるか不安もあったが…良かった良かった)

ズキンッ

胡桃「」ビクッ

悠里「どうしたの胡桃?」

胡桃「いや、なんでもない」

胡桃(なんだ今の?)

今日はここまで

【次の日・夕刻】

胡桃「たっだいまー!」

八幡「ただいま」

悠里「おかえり。待ってたわ」

美紀「今日も見つかりませんでしたか…」

八幡「……ああ」

胡桃「んで、今日は配役を決めるんだよな?」

悠里「ええ。そこにおいてある抽選箱でクジ引きを行うわ」

胡桃「クジ引きで決めるのかよ!?」

悠里「ええ、ゆきちゃんがそうしたいって言うから」

胡桃「えー…マジかよ由紀…」

由紀「どの配役になるか分からないこのスリルが良いんだよ!」

八幡「そんな下らんスリルを求めてるのはお前だけだっつーの」

由紀「にゃ、にゃにおー!」

胡桃(……シンデレラ役、やってみたかった)チラッ

八幡「…? 俺の顔に何か付いてるか?」

胡桃「い、いや!な、何でもねぇよ!気にすんな!」ドキッ

胡桃(八幡が王子役なんて絶対やりたくないだろうしな……って!何でアタシは八幡に王子役を望んでるだよ!おかしいだろ!)カァァァ

八幡(なぜ顔を赤くしてるんですかね)

由紀「それでは!ジャンケンでクジを引く順番を決めるよー!」

【抽選結果】

悠里「それではまず、シンデレラの配役から発表します」

八幡(俺は二回もジャンケンに負け、余り物を選ばされた。なんとも俺らしい結末だ)

悠里「私は継母役よ」

由紀「私は魔法使い!」

胡桃「……継母の娘役だ」

美紀「」

八幡「」

美紀「わ、私が王子様役です…」

八幡「」

由紀「わー!みーくん男装似合いそう!」

悠里「フフフ、確かに似合いそうね」

八幡「」

由紀「八幡くんは何役?」

八幡「」

美紀「八幡先輩意外はもう発表したんですし、一つしかじゃないですか」

由紀「えーっと…あ!もしかしてシンデレラ役!?」

八幡「」

悠里「プッ…八幡君が…男の子なのに…ププ…」

由紀「ぷぷぷー!八幡くんおめでとう!」

美紀「はぁぁ…よりによって八幡先輩がシンデレラとは…」

八幡「」

由紀「でも流石にチューとかは無しね?何かこう…演技がハード過ぎるし」

由紀「あ、でもみーくんがどうしてチューしたいなら止めないけど」

胡桃「」ビクッ

美紀「絶対しません!!!変な事言わないで下さい由紀先輩!!」

由紀「あわわ!ご、ごみ~ん」

胡桃「ホッ」

胡桃「……」

胡桃(何故だ。王子役を無性にやりたくなってきた…でも抽選での決め事だから交換なんて出来ないよな…)モヤモヤ

八幡「何デ俺ガ…シンデレラ…」

美紀「それでは次は、走れメロスの配役ですね」

悠里「私は邪知暴虐の王・ディオニス役ね」

胡桃「あたしは二つ配役がある…山賊役と、セリヌの弟子フィロストラトス役だ」

由紀「私はメロスの妹だよ!」

美紀「私は…メロス役です」

八幡「メロスの親友・セリヌことセリヌンティウス役だ」

由紀「みーくん凄い!二つともメインの役だよ!」

美紀「くじ運が良いのか…悪いのか…」

悠里「八幡君と美紀さんは配役に恵まれてるわね」

八幡「……シンデレラに比べれば、セリヌ役はまだマシか」

胡桃「……」

胡桃(メロス役が良かったな…)

【夜・部室にて】

八幡「なあ若狭」

悠里「何?」

八幡「お前、劇で二つとも悪役だよな。俺と交換しないか?悪役なら俺のほうが性に合う」

悠里「フフ、お気遣いどうも。でも交換はしないわ」

悠里「せっかく、ゆきちゃんがクジ引きと提案したのだから、それを無下にするのは良く無いわ」

八幡「そうか、俺はその提案とやらのせいで主演をやらされるハメになったがな」

悠里「フフ、良いじゃない。今まで演劇でこんな大役やったことないのでしょ?」

八幡「はぁぁ…」

八幡(それにしても、丈槍は本当に愛されてるな)

八幡(部長は若狭だが、丈槍の意見ひとつに全員が頭を頷く。絶対的な信頼を寄せている)

八幡(そういう所もアイツに似てるな)

「ヒッキー!」

八幡「え」

「ヒッキー!演劇がんばろうね!」

八幡「由比ヶ浜…?」

「さあ!演劇の稽古をはじめよー!」

八幡「由比ヶ浜…」ツー

由紀「ふえ?」キョトン

八幡「あ…」

由紀「って八幡くん泣いてる!? どど、どうしたの、何か悲しい事あったの?」オロオロ

八幡「……」グシッ

八幡「俺がシンデレラ役なんて間違っている」

由紀「泣くほどイヤなの!?」

美紀「八幡先輩…また…」

胡桃「由比ヶ浜…前に八幡が言ってた由紀に似てる奴か」

悠里(由紀ちゃん程じゃないけど、たまに見えざるものが見えてしまうのね)

八幡(かくして演劇の稽古が始まった)

~~~

悠里(継母役)「では私たちは舞踏会に行って来るわ。しっかりお留守番してなさい」

胡桃(義理の姉役)「ドレスが見付からなくて残念だったな!」

八幡(主演)「……」

八幡(この惨めな感覚、見覚えが…あれ、もしかしたら俺ってシンデレラ役にふさわしい?)

~~~

由紀(魔法使い)「さあ楽しんで来なさーい!びびでぃ・ばびでぃ・ぶー!」

八幡「うれしわ。なんとお礼を言っていいのかしら」
由紀「でも気をつけてね~?夢はいつか覚める物!12時には魔法が解けちゃうから!びびでぃ・ばびでぃ・ぶー!」

八幡「気をつけるわ」

美紀「はいカットです!」

胡桃「なんか八幡って女口調上手いな。気持ち悪いくらい上手い」

八幡「捜してる部長がガチお嬢様だから。たまにアイツのモノマネをやったりして一人で遊んでた。それと気持ち悪い言うな」

~~~

美紀(王子役)「この僕と踊ってくれないか?」ススッ

八幡「」

八幡「ううっ!!」ブブッ

美紀「きゃっ!」

八幡(直樹…じゃなくて戸塚が王子役…)ボトボト

八幡「ぅぅ…くっ…!」ボタボタ

悠里「カ、カット!八幡君が鼻血を出したわ!」

由紀「あわわわ!た、大変だ~!」オロオロ

悠里「ティッシュティッシュ!」ダダッ

胡桃「またかよ!いい加減にしろスケベ野朗!」

悠里「ティッシュよ、ほらしっかり」ススッ

八幡「ぐ…ぐぐ…」ボタタタ

美紀「もう!八幡先輩のスケベ!」

~~~

八幡「……残念ね。もう12時だわ。帰らないと」

八幡(ティッシュ詰め込みながらこのシーンをやるのはシュールすぎる)

美紀「ま、待ってくれ!」

胡桃(くそ…なんでこんなにモヤモヤするんだ…)

八幡「次は走れメロスの練習だな」

胡桃「よーし本番5秒前…3、2、1」

~~~

美紀(主演)「ただいま」

由紀(メロスの妹)「あ、お兄ちゃん!」

八幡(丈槍はなんというか、妹役が似合うな)

美紀「悪いが結婚式を早めるぞ」

由紀「ええー!!いきなりどうしたのお兄ちゃん!」

美紀「良いから。ほら早く夫を呼んで来い!」

「むー…お兄ちゃんのバカ!」

八幡「っ!?」

「しょうがないな…待って!小町が直接、旦那に話をつけるから…あ、今の小町的にポイント高い!」

八幡「……」ガタッ

胡桃「ん?どうしたセリヌ役…まだお前の出番じゃないぞ」

八幡「小町…小町…」フラフラ

美紀「え?」

由紀「ふぇ?」

八幡「小町…小町――!!」

ダキッ

由紀「ふぇ? ふぇぇぇ!!?///」

美紀・悠里・胡桃「」

八幡「小町…やっと会えた…」ギュゥゥ

由紀「はわわわわわ///」

八幡「ぅぅ…すまん一人にして…」ボロボロ

由紀「はわわわ///は、離して八幡くん…!///」

胡桃「おいこら」ゴンッ

八幡「痛っ!」

胡桃「人違いだ、よく見ろ」

八幡「え…」チラッ

由紀「~~~///」

八幡「」

胡桃「全く…いくら見間違いだからって度が過ぎるぞ!」

由紀「もう~八幡くんのエッチ!」

八幡(セリヌンティウス役)「メロス…」

美紀(主演)「戻ったぞ国王!さあセリヌを解放しろ!」

悠里(王役)「な、なんと…本当に戻ってきた!」

胡桃「カット!」

美紀「何か問題ありましたか?」

胡桃「アタシは陸上やってたからよくよく分かるんだ。ずっと走ってきたら息を整えるだろ」

美紀「なるほど!」

胡桃「んじゃ、もっかいさっきの場面をやり直し!」


美紀「ぜぇぜぇ…待たせたなセリヌ…」ウワメヅカイ

八幡「」ブブッ

八幡(戸塚の顔で、赤面の上目遣いとか反則だろ!!)ドババッ

美紀「きゃっ!!」

八幡「うう…くっ…!」ボタタタ

悠里「由紀ちゃんティッシュ!」

由紀「あわわわわ、へ、変態だ…じゃなくて大変だー!」

胡桃「いちいちハレンチなんだよお前は!」

美紀「いい加減にして下さい先輩!」

八幡「す、すまん…」ボタタタ

悠里「今日の稽古はここまでにしましょう」

胡桃「みんなお疲れ~」

美紀「本当、疲れました…八幡先輩が変態すぎて」

八幡「本当にすまないと思ってる」ゾクゾクゾク

美紀「罵られて鼻の下伸ばしてないで反省してください!」

由紀「もう、本当だよ!反省してよね八幡くん!」プンスカ

八幡「あ、丈槍…その、さっきはすまなかった」

由紀「うん。でもワザとじゃないんだよね?」

八幡「ああ。その…つい、お前が一瞬、捜している妹に見えてな」

由紀「あ、あのね」モジモジ

八幡「ん?」

由紀「私、実際はそんなに怒ってないというか…」

八幡「お前は優しいな」

由紀「えっとね…男の子に抱きつかれたの初めてだけど…」

由紀「その相手が…八幡くんで良かったな~って…」

八幡「え」ドキッ

由紀「他の男の子だと…なんかイヤだったし…」

由紀「~~///」モジモジ

美紀「せ、先輩…」

胡桃「」

悠里「フフフ、由紀ちゃん顔が真っ赤よ」

八幡「ご、誤解を招くような発言するんじゃねぇよ…」ドキドキ

由紀「あぅぅ…///」

胡桃(な、なんだよ…何でこんなにモヤモヤするんだ…)

短いけどここまで

この後はしばらくラブコメパートがラッシュして、その後シリアスパートなので切り良くする為短くしました

【次の日・夕刻での教室前】

八幡「今日も悪いな」

胡桃「べ、別に…これぐらい…」ドキッ

う~~ん…わかんないよ~~

八幡「ん?」チラッ

胡桃「どうした…って、由紀がめぐねぇと補習かな」

八幡(補習って、アイツ勉強とか絶対嫌いだよな。それでも妄想で『補習』を行っているという事は、その目的はめぐめぇとやらと一緒にいたいからだろう)

胡桃「……」

胡桃「そういえばお前、国語得意だったよな?」

八幡「ああ」

胡桃「たまには教えてやったらどうだ?」

八幡「めぐねえとやらがいるだろ。妄想だけど」

胡桃「良いじゃん。二人で教えてやっても」

八幡「二人って…実質アレは自習のようなもんだろ…」

あー!八幡くーん!

胡桃「ほら、呼ばれてるし行って来いよ」

八幡「……仕方ねぇな」

ガララ

わーい、八幡君も先生になったよ!教員仲間が増えて良かったねめぐねぇ!

教員になった覚えはねぇよ

胡桃「へへへ、由紀の奴うれしそうだな」

胡桃「さて戻るか」

胡桃「……」モヤモヤ

胡桃(由紀のやつ、昨日は八幡と良い雰囲気だったよな…つーか八幡もいくら見間違いしたからって由紀に抱きつかなくてもいいだろ…)モヤモヤ

胡桃「……」モヤモヤ

胡桃(だからなんでモヤモヤしてんだよ!由紀と八幡が仲良くしてるのは良いことじゃねぇか!)

八幡「いいか、ここはな…」

由紀「ふむふむ」カキカキ

由紀「どう?」

八幡「不正解」

由紀「あうぅぅ…」

八幡「問題となってる文章の前後をよく見ろ。それでも自信がでないなら毎日、本でも読め」

由紀「毎日読書とかそんな殺生な~」

由紀「疲れたーー…めぐねぇ、休憩しよ?」

八幡「俺がきて10分しか経ってないぞ」

由紀「やったー!休憩だー!」

八幡(無視かよ。つーかエアめぐねぇさん。俺の意思も聞いてください)

由紀「ほら、めぐねぇに感謝しないと」

八幡「はいはいどうもあざーっす」

由紀「……」

由紀「八幡くんってさ、よく土日にくるみちゃんと人探ししてるけどさ」

八幡(ああそうか、コイツの脳内では平日は授業を受けて、土日に探索って事になってるのか)

由紀「えと確か…妹ちゃんとみーくんそっくりさんと…同じ部活の人だっけ?」

八幡「ああ」

由紀「何の部活に入ってたの?」

八幡「奉仕部」

由紀「ほーしぶぅ?」

由紀「え、なにめぐねぇ…うん、うん」

由紀「ああ!ボランティア!」

由紀「八幡くん凄いな~ボランティアやってたんだ!」

八幡「少なくともお前…あと佐倉先生が想像してる物とだいぶ違う」

由紀「ほぇ?」

八幡「奉仕部っていうのは…」

~説明中~

由紀「ほぇぇ~なんか凄いカッコ良い部活なんだね!」

八幡「普段は何もしてないけどな」

由紀「それで何で強制的に入部させられたの?」

八幡「さっき話した顧問が、俺の書いた作文が気に入らなくて、奉仕部での活動を通して更正してこいって言われ、無理やり入部させられた」

由紀「作文がダメで入部させられたの!?八幡くんは国語得意なのに」

八幡「作文の構成と言うより内容を否定された」

由紀「どんな事を書いたの?」

八幡「高校生活を振り返ってとのテーマでだな」

~教室の前~

胡桃(確か前に八幡が言ってな…青春とは嘘とか悪とか、そんな作文を書いたって…)ススッ

胡桃「……」

胡桃(なんでアタシ、会話を盗み聞きしてんだろ…)モヤモヤ

八幡「……っという訳で、無理やり入部させられた」

由紀「物凄い作文の内容だ!?」

八幡「初めは何度も退部しようと思ってたんだけどな。ズルズルと続けてしまってな」

由紀「大切な居場所になったんだね」

八幡「……退部しようなんて考えはなくなったな」

由紀「……」

由紀「八幡くんはその…ずっと友達とか大切な人が見付けられなかったんだね」

八幡「前にも話したが、嫌われやすい性分でな。小中学校の頃には、人と関わり歩み寄る努力もしたが。どうも不器用なのか、いつも引かれり無視されたりしてな」

八幡「高校に上がる頃には人と関るのを止めた。いや諦めた…ハズだったんだがな」

八幡「皮肉にも俺は人探しをするハメになった」

八幡「ま、人から好かれやすそうなお前には無縁の話かもしれんが」

由紀「……」

由紀「そんな事ないよ」

八幡「えっ」

由紀「私もね、ずいぶん昔に…1人ぼっちだった事があったよ」

八幡「……?」

八幡(意外なことを聞いた。いや、それよりも丈槍に少しだけパンデミック以前の記憶が残ってる?)

由紀「私ってさ、ドジだし、よく変な人って思われやすくて」

八幡「まあ変わってるわな」

由紀「だから、いつも浮いてて…イジメられてた訳じゃないけど」

由紀「あ、でもね。チョーカーつけてる子は優しいんだよ。いまでも仲良しなんだ」

八幡「チョーカー?恵飛須沢とは別の奴か」

由紀「うん。見た目怖いけど優しいの」

八幡(明るくて由比ヶ浜と似てるし、友達も沢山いるとばかり思ってた…まあアイツは周囲に合わせたり溶け込むのが上手いからな)

八幡(丈槍も意外と空気は読めてるが、それ以上にマイペースで我を通すというか…)

由紀「だからね、私と八幡くんは一緒だよ」

八幡「今はボッチじゃないだろお前は」

由紀「八幡くんもボッチじゃないよ」

八幡「……」

由紀「もしさ、もっと早く私と八幡くんが出会えてたら、きっとお友達になれたよ!」

八幡「た、ただの傷の舐め合いじゃねぇか」

由紀「それでも良いと思う。だって友達は支えあう物でしょ?私ともっと早く出合ってれば、小学校も中学校も、いっぱい楽しい思い出が作れたよ!」

八幡「……っ」

八幡(丈槍は、有り得たかも知れない未来を笑顔で語っている)

八幡(夕日が彼女を眩しく照らし、その背中に背負っている羽の付いたカバンも視界に入ったせいか…彼女がまるで天使の様に見えた)

由紀「だからその、高校になってからの出会いで残念だなーって。もっともっと早く八幡くんと出会いたかったかな。そうすれば八幡くんを寂しい思いをさせずに済んだのに」

八幡「……」ドキッ

八幡「補習中もカバンを背負ってるような変人とは友達になりたくねぇよ」プイッ

由紀「にゃ、にゃにおー!」

八幡「……冗談だ。その、気持ちは嬉しかった」

由紀「う、うん///」

八幡(こういう事を考える柄じゃないが)

八幡(もし実際、丈槍が同じ学校だったらどうなっていただろうか)

八幡(アイツも平塚先生に呼ばれて奉仕部に入部したのか?)

八幡(もし入部してたら…彼女はきっと、俺やあの二人とは違う発想で問題を解決してたのだろうか)

八幡(見かけによらず勘が鋭く、心優しい彼女は、いったいどんな活躍するのか。その振る舞いを見てみたいと素直に思った)

~~~

胡桃「そんな過去があったとはな。もっと早く出会ってれば由紀を陸上部に誘ったのに…」

胡桃「……」

胡桃(……って!いつまで盗み聞きしてんだよアタシは!)

胡桃「……」チラッ

で、いつまでカバンを背負ってるんだ?

あ、そうだった!補習中は下ろさないと!

胡桃「良いな…楽しそうだな…」ボソッ

悠里「胡桃…?」

胡桃「ってうわあぁ!?なんだよ驚かすなよ!」

美紀「何をやってるんですか」

悠里「そろそろ演劇の稽古を始めるわよ」

【深夜・部室】

八幡「はぁぁ…今日も演劇の稽古疲れたな…」

ガララッ

美紀「あ、八幡先輩」

八幡「直樹…じゃなくて戸塚か」

美紀「逆です!」

八幡「あ、そうだった悪い」

美紀「もう!」

八幡「どうした」

美紀「寝る前に何か飲もうと思って…先輩は?」

八幡「寝る前に本を読もうと思って」

美紀「そうですか、ココア飲みますか?」

八幡「ああ、悪いな」

コポポポポ…

美紀「はい」

八幡「すまんな」

美紀「……」

美紀「先輩ってどんな本を読むんですか?」

八幡「色々な物を読むけど、まあラノベが多いな」

美紀「ライトノベルですか…私は一般小説しか読まないからよく分からないな…」

八幡「そうか。読みたければ貸すが」

美紀「そうですか。じゃあ折角なのでおススメの作品を…」

八幡「そうだな。お前は割りと真面目だし…ソードアート・オンラインが良いかな…」

八幡「あ、恵飛須沢に貸してたんだっけ」

美紀「胡桃先輩って本読むんですか?」

八幡「前に俺が読書好きだって話したら、いきなりムキになって『アタシも読書はじめるぜ!』とか言い出してな」

八幡「漫画は好きだと言ってたし、読めるんじゃねえの?」

美紀「そうですか…それで他にはないですか?」

八幡「……」

八幡(俺の持ってるラノベ作品って、なんでこうラッキースケベとかの要素が多いのばかりなのかね…あとで怒られそうで迂闊に薦められん)ガサゴソ

八幡(でも直樹…戸塚に罵られるのも悪くない)ニヘラ

美紀「何で鼻の下を伸ばしてるんですか…」ヒキッ

八幡「あ、そういえば…」

美紀「?」

八幡「これ。読んでくれないか」ペラッ

美紀「これは…自作の小説?」

八幡「ああ」

美紀「えっと、作者は先輩ですか?」

八幡「……」

八幡「その作品は腐れ縁の遺作だ」

美紀「遺作…そうですか」

八幡「ああ、そういう事だ」

美紀「……なんか当て字が凄いタイトルですね」

八幡「託されてな。パンデミックが終わったら、出版社に出してくれと言われたまである」

美紀「そうですか…では、読ませてもらいます」

八幡「途中で苦痛に感じたら、返して良いからな」

美紀「いえ、折角先輩のお知り合いの人からの物ですし。最後まで読ませて頂きます」

八幡「そうか。そう言って貰えるならアイツも喜ぶだろう」

美紀「……で、ところで」

八幡「ん?」

美紀「なんでさっき鼻の下伸ばしてたんですか?」

八幡「決してお前におススメできない作品が多いという訳じゃないから、安心してくれ」

美紀「……はぁぁ。わかりました。それじゃ一番マシな作品を教えてください」

八幡「なんだよ。結局読みたいのかよ」

美紀「エッチな先輩がどんな本読むのか気になります」

八幡「エッチ言うな」ゾクゾクゾク

ガララッ

胡桃「あ、やっぱここにいたのか八幡」

美紀「胡桃先輩」

胡桃「美紀もいたのか。一巻を読み終えたから、二巻も貸してくれ!」スッ

八幡「おいおい読むの早いな。ほれ」スッ

胡桃「へへへ、まあな!早くお前みたいに本とか読める奴になりたいしな!」

八幡「っという訳だ。一巻を貸してやる。遺作と並行して読んでくれ」スッ

美紀「どうも。しっかり読ませてもらいます」

~5分後~

胡桃「くかー…zzz」

八幡「部室に来て5分で寝やがった…」

美紀「最近、胡桃先輩ずっと夜更かししてましたからね」

八幡「ゆっくり読めば良いのによ。何をそんなに焦ってるんだか」

胡桃「えへへ…zzz…お前とピクニック…楽しい…zzz…」ボソッ

美紀「最近、楽しそうに寝るんですよね」

八幡「そうなのか?」

美紀「ええ、前まではよく悪い夢みてうなされてたから」

美紀「八幡先輩がこの学校に来て少し経った辺りから、胡桃先輩は寝るとご機嫌です」

八幡「…………たまたまだろ」

【次の日の夜・部室】

八幡(日中、夜に格ゲーをやろうと約束された)

八幡「アイツらはどうした?」ピコピコ

胡桃「起こしたけど眠いからやらないだってさ」ピコピコ

八幡「まあ演劇の稽古とかもあったしな。でも俺たちが一番疲れてるハズなんだが」

胡桃「へへへ、アタシ達は体力があるからな!」

八幡「……」ピコピコ

胡桃「……」チラッ

胡桃「な、なあ」

八幡「ん?」

胡桃「へ、変な事聞いて良いか?」

八幡「なんだよ」

胡桃「……」

胡桃「学園生活部で付き合うとしたら誰がいい?」

八幡「ブッ!」

胡桃「やっぱり美紀か?」

八幡「な、なんだよいきなり」

胡桃「な、なんとなく…」

八幡「そんなの考えたこともねぇよ」

胡桃「そ、そっか…じゃあ、可愛いと思う奴とかいるか?美紀意外で」

八幡「直樹は確定済みかよ…まあ確かに、直樹がメチャクチャ可愛いのは否定できんが。戸塚と瓜二つだし」

胡桃「だ、だよな…」シュン

八幡「……でも、その、なんだ」

胡桃「?」

八幡「ぜ、全員…ルックス的には良いと思う…ぞ…」カァァ

胡桃「そ、そうか?あ、あたしとかは」

八幡「……前に可愛い方に入るって言わなかったか?」プイッ

胡桃「そ、そそ、そうだったな…えへへ…」カァァ

八幡「ん?なんだこのノートは」チラッ

胡桃「それは家計簿だ」

八幡「家計簿…若狭のか」

胡桃「ああそうだ」

八幡「本当にマメな奴だよな」

胡桃「そういえばりーさんとかはどうなんだ?」

八幡「さっき全員ルックスは良いと答えたじゃねぇか」

胡桃「そうだけどさ、もしりーさんに告白なんかされたらどうなんだ」

八幡「それはまず絶対に無い。何も問題ない」

胡桃「そ、そうか…ホッ」

八幡「……」

八幡「なんて言うか、若狭みたいなのは初めてなんだよ」

胡桃「え?」

八幡「俺の趣味の一つとして人間観察があってだな」

胡桃「何だよそれ…あんま良い趣味じゃないな」ヒキッ

八幡「小中学校の頃、散々な目に合ってきたせいか…相手の挙動、言動、表情とかで大体の性格や思考が分かっちまうんだよ」

胡桃「へーすげー!」

八幡「でも若狭だけはよく分からなかった」

八幡「あそこまで完璧に近い存在も珍しい」

胡桃「ああ、確かにりーさんは真面目でキレイで優しいもんな」

八幡「俺は知り合いで天才超人を3人ほど知ってるが」

胡桃「そんなにいるのかよ!?」

八幡「そのウチの一人が俺が探している部長だ」

胡桃「ああ、前に言ってたガチお嬢様ってやつか」

八幡「だが欠点も合ってだな。運動神経は良いのに体力無くて、方向音痴で…あと超が付くほど毒舌」

胡桃「そんなに?」

八幡「ああ酷かった。ただアイツは正義感あって根は良い奴だ。今は性格も相当丸くなったしな」

八幡「んで、そいつには姉がいるんだ」

八幡「言ってしまえばその姉は、妹の総合スペック強化版だな。だが俺は苦手だ」

胡桃「えっと…具体的にどこが?」

八幡「妹はクールで一匹狼って感じだが、姉は明るくて誰からも好かれやすい。だがそれは仮面を被ってる仮の姿。本性は魔王そのものだ」

胡桃「魔王!!?何モンだよその姉は!!」

八幡「んでもう一人、同じクラスのリア充野朗。葉山って奴だ」

八幡「文武両道でイケメン、誰に対しても優しい。だが俺は嫌いだ。アイツを良く思っていないのは俺と部長くらいで、皆からの評判は絶大だ」

胡桃「へー凄いじゃん。なんで嫌いなんだ?」

八幡「さあな。強いて言うなら…上手く言えんが、上っ面だけというか、どこか歪んでて薄っぺらい」

胡桃「ふーん」

胡桃(話し聞く限りだとイメージは先輩に近いけど、でも先輩は歪んでもないし薄っぺらくもないしな)

胡桃「んで、その超人3人とやらを例に挙げて、りーさんが一体どうしたんだよ」

八幡「なんつーか…どんなに完璧そうでも大体、一癖二癖あるんだよ。普通はな」

八幡「去年の部長みたいに刺々しかったり、その姉みたいに中身が真っ黒だったり、葉山のようにどこか歪んでて薄っぺらかったり」

八幡「でも若狭にはダークな物は一切無かった」

八幡「真面目で家庭的で、優しくて穏やかで、美人でオッp…スタイルが良いと来た。男の理想を詰め込んだような完璧な存在だ」

八幡「だからイレギュラーなんだよアイツは。あんな完璧なのいないぞ普通」

胡桃「…………」

八幡「どうした黙って」

胡桃「……」ギュッ

八幡「痛ててて!!何しやがる!!ほっぺた引っ張るな!!」

胡桃「お前やっぱ、りーさんに惚れてるだろ!」

八幡「ち、ちげーよ…ただ」

八幡「あまりに高嶺の花すぎてな。端からそういう目で見て無い」

八幡「まだ雪ノ下のほうが不器用で人間らしい…でもそんなアイツに俺は憧れている」

胡桃「そ、そうか…」ズキッ

胡桃「……」

胡桃「あれ、でもお前って確か戸塚が…」

八幡「戸塚はもはや人間じゃない。あれは天使だ」

胡桃「人外扱い!?」

八幡「雪ノ下や若狭と一緒にするな。次元が全く違うんだよ」

胡桃「それじゃ美紀はどうなるんだよ!」

ガタッ!タタタッ…

八幡「?」

胡桃「いま音がした?ネズミか?」

八幡「……」

八幡(まさか…いや、それは無いよな。うん大丈夫だ。多分)

八幡「ただ…若狭にも一つだけ不安要素ある」

胡桃「不安要素?」

八幡「アイツ多分、本当は精神的に相当まいってるぞ」

胡桃「ああ…り-さん、結構溜め込むところあるからな」

八幡「何か大きなキッカケがあれば、いとも簡単に壊れるぞアイツ」

八幡「だから何かあった時は、ちゃんと支えてやれよ」

胡桃「分かってるよ…つーか、お前もりーさんをしっかり支えろよな」

八幡「俺よりお前らのほうが良いだろ。付き合いも長いし」

胡桃「付き合いの長さが問題じゃないよ。それに由紀と美紀だって付き合いは短い」

胡桃「お前だって男なんだから、りーさんのことちゃんと支えてやれよ」

胡桃「……」

胡桃(…って何やってんだよアタシは。これじゃライバルに塩を撒いてるようなもんじゃねえか)

胡桃(イヤちょっと待て!そもそもライバルって何のライバルだよ!?何をりーさんと競ってんだアタシは!!)

胡桃(~~~っ!!///)ジタバタ

八幡「なに一人でもがいてるんだお前は」

【次の日の朝・部室】

悠里「……おはよう」

由紀「りーさん大丈夫?目の下にクマがあるよ」

悠里「え?ええ…ちょっと寝不足でね」ドキドキ

胡桃「珍しいな」

美紀「大丈夫ですか?」

悠里「だ、大丈夫よ」

八幡「体調悪いなら寝てろ。朝食の準備なら俺達がやる」

悠里「っ!!!」ドキッ

ガシャーン!

全員「!?」

悠里「あ…ごめんなさい。お皿落としちゃった…」

八幡「しょうがねぇな…いまホウキとちり取りで拾うから…」

悠里「あ…」カァァァ

八幡「ん?」

悠里「あ…ぇと…私が…」ドキドキ

八幡「お前、熱でもあんじゃねぇか?」

悠里「そ、そそ、そんなこと無いわ」ドキドキ

由紀「りーさん、顔が真っ赤だよ」

美紀「横になったほうが良いですよ」

悠里「そ、そう?じゃあ横になろうかしら…」

八幡「んじゃ、送ってくわ」

悠里「へぇっ!!?///」ドキッ

胡桃「どうしたりーさん!?声が裏返ってるぞ!」

悠里「あ、えと…その…///」ドキドキ

八幡「早く行くぞ」

悠里「は、はい…」カァァァ

八幡「それじゃ、しっかり体を休めろよ」

悠里「え、ええ」ドキドキ

ガララッ

悠里「……」

――――

どんなに完璧そうでも大体、一癖二癖あるんだよ。普通はな

若狭にはダークな物は一切無かった

真面目で家庭的で、優しくて穏やかで、美人でスタイルが良いと来た。男の理想を詰め込んだような完璧な存在だ

あんな完璧なのいないぞ普通、あまりに高嶺の花すぎて……

――――

悠里「……」

悠里「盗み聞きするつもりなかったのに…あんな事、聞いちゃったら私…」

悠里「……」ドキドキ

悠里「~~~っ!!///」ジタバタ

悠里「は、恥ずかしい…」カァァァ

ガララッ

八幡「おーい、白湯持って来たぞ」

悠里「ひゃ、ひゃい!」ビクッ

【数日後の夕刻・繁華街】

八幡(今日は探索と兼ねて、演劇に使う衣装さがしに来た)

胡桃「いっぱいゲットしたな!」

八幡「ああ。だが流石にこれだけの数の衣装をリュックの中に詰め込むのは限界がある」

胡桃「数回分けて取りに来るか、それか明日はめぐねえの車で運ぶか」

八幡「後者が良い。今日は持てる分だけ持って、学校へ帰るぞ」

胡桃「そうだな。明日は久々にめぐねえカーだ!」

~帰りの道中~

胡桃「今日も学校まで競争だ!」

ブロロロロ!!

八幡「おい。スピード出しすぎるなって毎回言ってんだろ…」

胡桃「大丈夫だ!アタシの華麗なテクニックをお前も知ってんだろ!!」

キュルルル!!

胡桃「あれ」ガクッ

八幡「っ!!危ない!!下りろ!!」

胡桃「くっ…!!」ササッ

ガシャアアアアン!!
ドガァァァン!!!

胡桃「痛ててて…間一髪セーフ…」

八幡「おい!大丈夫かよ!」

胡桃「へへへ、お前が声かけてくれたおかげでな。助かった」ピース

八幡「……」

胡桃「あ、えっと…八幡?」

八幡「あれほどスピードを出しすぎるなって注意したじゃねぇーか」

胡桃「あ、ごめん…怒ってる?」

八幡「……」

八幡「お前を怒ったところで何かが変わる訳じゃないだろ」

八幡「とりあえず手当てだ。ほら腕をみせろ」

胡桃「え、ああ…良いよ。自分でやるから」

八幡「良いから見せろ」

胡桃「あ、はい」

八幡「……ヒザ当てやっておいて良かったな」

胡桃「へ、へへ…だろ?」

八幡「調子に乗るな。ほら消毒」

ピチャッピチャッ

胡桃「~~~っ!!し、しみる…!!」

八幡「もうスピード出し過ぎるなよ」

胡桃「へーい…」

八幡「よし終わった」

胡桃「怪我の手当ても慣れてんだな」

八幡「今年のマラソン大会で怪我した時、部長に世話になってな…そのやり方を目で追って学んだ」

胡桃「そ、そうか」シュンッ

胡桃「……」

胡桃「バイク、壊れちゃったな…」

八幡「仕方ない。歩いて帰るか。体がそんな状態だし…別のバイクの運転も止めた方がいい」

胡桃「……」

胡桃「な、なあ」

八幡「ん?」

胡桃「お前のバイクの後ろ…乗せてくれよ。ニケツで帰ろうぜ」

八幡「」

胡桃「あ…でも、ダメだよな」

八幡「当たり前だ。そんな恥ずかしい事できるか」

胡桃「あ、いや、そもそも…お前…彼女いるしな」

八幡「」

八幡「え?」

胡桃「え?」

八幡「何言ってんだお前、俺に恋人なんていないぞ」

胡桃「は、はぁぁぁ!?じゃあ戸塚は何なんだよ!」

八幡「天使」

胡桃「そっちじゃねぇよ!あれだけ戸塚戸塚って連呼したり、何で美紀に抱きついたりしてたんだよ!!」

八幡「いや…戸塚はその、友達で…まあ、何と言うか…」

胡桃「……じゃあ、本当に付き合ってないのか?」

八幡「当たり前だ」

胡桃「そっか。なんだ…ホッ」

胡桃(良かった…本当に良かった…まだ彼女がいなくて…)

胡桃「……」

胡桃(え、良かった?何で?いや、そもそも何でこんなに安堵してんだアタシは)

ドクン、ドクン

胡桃(あ、でも。あれだけ戸塚戸塚と連呼してるって事は、少なくとも戸塚の事が好きなんだよな。片想いって奴なんだよな)

ドクン、ドクン、ドクン

胡桃(あの捻くれてて根暗な八幡が、バカみたいに熱狂的に惚れてしまうほど…戸塚の事が好きなのか…)

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン

胡桃(な、なんだコレ…嬉しいのに苦しい…)

胡桃(八幡は誰とも付き合ってない。それを知れて嬉しい…嬉しい?)

胡桃(でも戸塚に片想い。だから苦しい…苦しい?)

ドクン、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン

胡桃(アタシは…アタシは…)

八幡「んじゃ行くぞ」

胡桃「待ってくれ」

八幡「ん?」

胡桃「やっぱ二人乗りしたい」

八幡「ちょ、おま、まだそんな事を」

胡桃「お願い」ギュッ

八幡「おい…服の裾を引っ張るな」ドキッ

胡桃「お願い」

八幡「」

胡桃「ほら…」グッ

八幡「お、おい…押すなよ…」ドキドキ

胡桃「お願い」

八幡「……」

~~~~

八幡「しっかり捕まってろよ」

胡桃「うん」

ギュゥゥ

八幡「いっ…!!」ドキッ

胡桃「はは、変な声出すなよ…」

八幡「あ、あのな…」ドキドキ

胡桃「なんだよ」

八幡「そ、そんなに背中を強く抱きしめるなよ…」

八幡「か、勘違いするだろ…」ドキドキ

胡桃「っ…」ドキドキ

胡桃「いいから黙って、早くバイクを動かせよ」

八幡「……」ススッ

ブルルッ!

八幡「じゃ、じゃあ…学校へ帰るぞ」

胡桃「うん」

ブロロロロロ…!

八幡「……」ドキドキ

八幡(何ナノコレ。罰ゲームナノ?)ドキドキ

八幡(心拍数がやばい事に)ドキドキ

胡桃「……」カァァ

胡桃(八幡の背中…温かい…)ドキドキ

胡桃(ずっとこのまま、時間が止まれば良いのに)

胡桃「……」ギュゥゥゥ

今日は以上です

>>94の案は初期段階の構想から考えてた
どのタイミングでやろうか非常に悩んだけど

話も次回から後半戦

一連のゾンビ被害による深刻な人口不足を補うために
生存者達が打って出た起死回生の奇策
そう、一夫多妻制の導入である

りーさん「私のことを完璧とも男の理想とも言ってくれたわ。私こそ彼の恋人に相応しいわ」

みーくん「それがどうかしましたか?私なんて天使と呼ばれてました。レベルが違います」

くるみ「八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡八幡ry」

ゆき「み、みんなケンカしちゃダメだよ!仲良くしようよ!」(ここで良い人さんアピールしとけば私に気持ちが傾くね★)


ほのぼの設定なければこうなってた可能性も

八幡「やはり俺たちのがっこうぐらしは間違っている」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438969642/)
こっちの方の更新はいつになるのやら

>>235
申し訳ないです

ちょっとずつ書いてはいるけど、次の展開をどう書こうか悩んでて(ぼんやりとは浮かんではいるけど)
こっちの方はもう、脳内で90%ほどシナリオ出来てるのでスラスラ書き溜め出来るんですが

あっちのスレでも報告は書いておくので、しばしお待ちを

一方その頃…

圭「美紀…無事だったんだ…」 P「アナスタシアさんのご友人ですか?」
卯月「アーニャちゃん…よかった…」 雪乃「戸塚君の彼女?」

事態は無駄に混迷を深めていた…。

投下します
>>212からの続きです

>>169でも書いたけど今回の投下分はシリアスがメインです

【帰宅後・部室】

悠里「……」ゴゴゴゴ

胡桃「」セイザ

八幡「」セイザ

八幡(なぜ俺まで)

由紀「はわわわ…り、りーさん落ち着いて…」オロオロ

美紀「ゆ、悠里先輩……」

悠里「胡桃」

胡桃「お、おう」

悠里「何か言う事は?」

胡桃「いやーヒザ当てしておいて正解だなー」ダラダラ

悠里「……」

胡桃「でもよー腕を怪我しちまってさー迂闊だったなー」

悠里「……」

胡桃「あ、でもさ!骨折とかじゃないから安心しろよ!擦りむいただけだ!八幡に手当てもしてもらったし…」

悠里「……他にいう事があるんじゃない?」ゴゴゴゴ

胡桃「はいごめんなさい。気をつけます」

悠里「スピードの出し方には気をつけなさいって言ったでしょう?」ゴゴゴゴ

胡桃「はい」ビクッ

悠里「……」ゴゴゴゴ

八幡「」

八幡(こ、怖!怒るとこんなに怖ぇぇのかよ…怒った時の雪ノ下と同じ位怖い…)

悠里「で、八幡君?」チラッ

八幡「は、はい」ビクッ

悠里「……」

悠里「……っ」カァァァ

八幡「?」

悠里「……///」モジモジ

八幡「あ、あの。なにか」

悠里「ヒェ!?」ビクッ

由紀・美紀「!?」

胡桃「おいどうした!声が裏返ってるぞ」

八幡「…?」

悠里「あ、あの…その…」ドキドキ

悠里「も、もう…いいわよ。正座させてごめんなさい。アナタは悪くないものね」

八幡「おう…?」スクッ

胡桃「ほっ…」スクッ

悠里「それで胡桃、もう治療は済んでるのよね?」

胡桃「ああ。さっきも話したが八幡に手当てされたからな」

悠里「……次に無茶したら外出禁止だからね?」ゴゴゴゴ

胡桃「ひ、ひぃ…!わかりました!」ビクッ

悠里「本当に反省しているの?」ゴゴゴゴ

胡桃「し、しし、してるって!」ビクビク

八幡「おい若狭、もうその辺にしとけ」ポンッ

悠里「ひゃっ!?」ビクッ

八幡「……?恵飛須沢には俺からも注意した。これからはバイク乗る時も厳しく注意もする。それで良いだろ?」

悠里「う、うん…分かったわ…」カァァ

悠里「……」モジモジ

胡桃「……?」

八幡(なんか最近、若狭の様子がおかしいな。あんな態度とられたら勘違いしてしまうじゃないか…)ドキドキ

八幡(は!そうか、おれは嫌われてしまったんだ。そうだそうに違いない。だからあんな挙動不審なんだ)

悠里「……八幡君」

八幡「ん?」

悠里「いつも大変ね。肩凝ってるでしょ?揉んであげる」ススッ

八幡「お、おい!」

悠里「えい、えい」ギュッ

悠里「……」ドキドキ

八幡「……」ドキドキ

八幡(そうだこれは俺に親切にさせておいて、その気にさせ、上げと落とす作戦だ…けっきょく振られちゃうのかよ)

胡桃(りーさん…?)モヤモヤ

【次の日・繁華街】

胡桃「今日は、めぐねえの車で来て正解だったな!」

八幡「これで演劇で使う衣装、資材は揃ったな」

胡桃「今日はもう暗いから帰ろうぜ」

八幡「ああ、すっくり暗くなっちまったな」

ポツ…ポツポツ…

胡桃「ん?」

サァァーーーー

胡桃「雨が降ってきた…」

八幡「……」

【部室】

胡桃「ただいまー!」

八幡「うす」

悠里「おかえり。外は雨が降ってきたわね」

胡桃「ああ…」

八幡「丈槍と直樹は?」

悠里「いま、シャワーを浴びてるわ」

八幡「そうか」

悠里「……はぁぁ」

八幡「どうした。そんな憂鬱そうにして」

胡桃「………」

悠里「………」

悠里「雨の日は…めぐねえがいなくなった日だから…ちょっとね」

八幡「……そうか」

胡桃「確かに…こんな雨の日だったっけな。めぐめえがいなくなった日は…」

八幡「……」

八幡「俺は雨の日は嫌いじゃない。だが俺も良い思い出が無い」

胡桃・悠里「……?」

八幡「俺の顧問が亡くなった日もこんな雨の日だったからな」

胡桃・悠里「え……」

八幡「……」

八幡「ちょっと寝室で横になってくるわ。夕飯の時間になったら呼んでくれ」ガララッ

胡桃・悠里「……」

【次の日・部室】

八幡「……」

ビュゥゥゥゥーー!!

悠里「今日は大荒れね…」

美紀「これって…台風ですよね」

胡桃「参ったな…風が強い上に雨なんか降られたちゃ、廊下が水浸しになっちまうじゃねぇか」

悠里「明日は皆で大掃除で。ゆきちゃん、今日はお手洗いとシャワーの時意外は廊下でないようにね」

由紀「はーい!今日は休日で助かったよ!」

八幡「……」

胡桃「八幡」

八幡「……」

胡桃「今日はもう休め」

悠里「そうよ。流石に危険だわ」

美紀「無理はよくないですよ」

由紀「今日はみんなでゲーム大会しよう!」

胡桃「よっしゃ!んじゃ何やるか?スマブラかマリカーか?」

由紀「う~ん、悩む~」

八幡「……」ガサゴソ

胡桃「お、バッグに何か良いゲームが入ってるのか?」

八幡「……」スッ

胡桃「ちょ、それ…レインコート…」

悠里「八幡君…アナタまさか…!?」

八幡「……」ススッ

美紀「この天候の中、探索するんですか!?」

由紀「八幡くんあぶないよ!」

八幡「んじゃ、いってくる」

胡桃「ちっ…わかったよ!アタシも準備するから待ってろ!」

八幡「お前は今日は残れ」

胡桃「え…」

八幡「雨の日はゾンビが集まりやすいのは知ってんだろ?ましてこんな台風だ。尚更集まりやすい」

胡桃「でも…」

八幡「ほれ」ポイッ

胡桃「っ!!」ガシッ

八幡「それがあれば『もしも』の時にも役立つ」

八幡「扱いには気をつけろ。手元に消火器を置いとくのも忘れるなよ」

ガララッ

美紀・由紀「行っちゃった…」アゼン

悠里「ねぇ胡桃。それって…」

美紀「そんな物が役に立つんですか?」

胡桃「ああ?これはな…」

【昇降口前】

ビュォォォォォーー

八幡(さて、裏口からここまで来たが…まだ昇降口前に集まってなかったな)

ぅぅぅぅ…ああああ…

八幡(だが案の定、大勢で昇降口に向かってきている。ここに到達するのも時間の問題)

八幡「……」

ぐぅぅぅ…あ“あ”あ“…

八幡(恵飛須沢にはチャッカマンとスプレーを渡してあるが、一応ここで奴らを一掃しておこう)

八幡(数にして20体はいるな)

八幡「だが一匹たりとも校内には侵入させん。先生のジッポとスプレーでな」

八幡「今日は雨だ。追い風にそうように油が入ったバケツを奴らにかけてっ…と」バシャバシャ

オォォォ…ゥゥゥゥ…

八幡「喰らえ、平塚先生直伝」

八幡「即席火炎放射」

ボォォォォォォ…!

八幡「……」シュゥゥ

グォ!ウォォォォ…!!

~~~~

八幡「……」

八幡「消火器は必要なさそうだな…全員グランドでのたうち回っているし。雨と風で勝手に火が消化されたようだ」

ゾンビ達「ヵ…ァァ…ッ…」ピクピクピク

八幡「あまり焼けてないが、動きが完全に止まるのは時間の問題だな」

八幡「……」

八幡「良かった…あのゾンビたちの中には小町たちはいなかったな…」

【住宅街】

八幡(今日は流石に原付が危なくて使えないから、徒歩でいける住宅街を中心に探索する)

八幡「おじゃまします」ガチャッ

ゥゥゥ…ァァァ…

八幡「……」

八幡「中年の夫婦か…子供達は無事だと良いな」

ゥゥゥ…ァァァ…

八幡「安らかに眠ってくれ」ブンッ

ゴス!ゴシャ!

八幡「……」

八幡「雨の日はシャベルがすべる」

八幡「中年の夫婦ゾンビ…彼らを見ると、お袋と親父の最期を思い出す」

八幡「……」

八幡「小町に何ていい訳すりゃ良いんだ…」

ガチャッ

(回想)

【パンデミック初日の深夜・家の玄関前】

八幡「ぁ…ぁぁ…」

比企谷父「」

比企谷母「」

八幡「ぁぁ…ぁぁぁ…!」ガクッ

八幡(バ、バットで…)ガクガク

八幡「何でだよ…どうしてこんな…」ボロボロ

八幡「……大体、なんなんだよ」

八幡「なんで街が燃えてるんだよ」

ゥゥゥ…ァァァ…

八幡「なぜゾンビがあちこちにいるんだよ」

八幡「アンブレラが本当にいたとかシャレになんねぇぞ…」

八幡「悪夢でも見てるのか…?」

八幡「そうだよな。一週間も熱で寝込んでたから…これも夢の中なんだよな…そうだ、そうに違いない」

平塚「残念ながら夢じゃない」

八幡「せ、先生…」

平塚「無事でよかった。早く車に乗れ」

八幡「の、乗れって…ドコに…」

平塚「早く!キミの家も燃えてるじゃないか!危ないぞ!」

ゴォォォォ…

八幡(……親父、お袋。こんな火葬の仕方で申し訳ない)

八幡「いくぞカマクラ」

カマクラ「にゃおぉぉ…」グスッ

~パンデミックから1週間後・ある公民館~

平塚「体調はどうだ」

八幡「おかげさまで、良くなりました」

平塚「そうか…しかし、キミも運が良いのか悪いのか」

平塚「パンデミック発生の1週間前に40度近くの高熱で学校を休み」

平塚「やっと治りかけた所でパンデミックが起きて、ショックで再び熱が39度台まで上がる」

平塚「近くに病院があって助かったな。医者も避難してきてるし」

八幡「全くですよ」

八幡「で、小町は避難に来ましたか?」

平塚「いや…来てない」

八幡「あの日、先生は学校にはいなかったんですか」

平塚「ああ…放課後は外に用事があって」

八幡「用事?」

平塚「その…知り合いに男の人を紹介してもらう約束をしてて」

八幡「なんで平日にそんな事してるんっすか」

平塚「し…仕方ないだろ!写真を見せてもらったらカッコよかったんだ!それに私と同じで結婚できてなくて悩んでたみたいだし…趣味も私と合うといってたし…誰かに取られたくないし…」ゴニョゴニョ

八幡「……んで。その素敵な独身男性は」

平塚「既に変わり果てていた。私の友人と共に」

八幡「……」

平塚「本当、世の中うまくいかないものだな」

八幡「……あの」

平塚「ん?」

八幡「雪ノ下と由比ヶ浜はどうなったかわかりますか?」

平塚「わからん。キミの方は連絡がついたのか?」

八幡「連絡がついてたら報告してますよ」

平塚「そうだよな…心配だ」

八幡「……」

【公民館・深夜】

八幡「よし、書き置きもした」

八幡「行くぞカマクラ」

カマクラ「んにゃ~」ムスッ

平塚「待て」ガシッ

八幡「……っ、寝てたんじゃ」

平塚「ただのフリだ。熱が引いた後のキミの思考を見破れないとでも思っていたのか?」

平塚「探すんだろ?彼女たちを」

八幡「……ついて来ないで下さい」

平塚「断る。私は教師だ」

八幡「外は危ないですから」

平塚「病み明けで2週間近く寝てたキミが単独で外出なんて、自殺行為に等しい」

八幡「来ないで下さい」

材木座「フハハハ!八幡よ!いい加減観念したらどうだ!」

八幡「いきなり現れんな」

材木座「さあ!冒険の旅へ出発だ!」

八幡「先生も材木座はここに残ってくれ」

平塚「キミが拒むのは勝手だが、私達も勝手に付いてくるぞ?」

材木座「八幡よ、水臭いではないか!いつも通り我を好きなだけ利用したらどうだ!」

八幡「利用されてた自覚あったのかよ…」

平塚「……比企谷。この公民館もいつまでも安全とは限らんぞ」

八幡「え…」

ドンドン!ドンドン!

平塚「来たか…」

ぅ“ぅ”ぅ“…あ”あ“あ”…

市民1「っ!!起きろ!!襲撃だ!!」

市民2「男は全員武器を手にしろ!」

平塚「比企谷。お前はまだ体力が戻ってない」

平塚「私の背中に隠れてなさい。いくぞ材木座!」

材木座「うむ!!」

八幡「……」

ガシャァァァン!!

【数時間後の公民館】

平塚「死屍累々…だな」

材木座「う……」

八幡「……」

平塚「遠くへ逃げ延びた者、殺された者、変わり果てた者…そして、私達のように取り残された者。色々いるが、一つ確かなのはもう公民館は避難所の機能を失っている」

平塚「私と材木座は彼女達を探すたびに出る。君と同じように…で、付いてくるか?」

八幡「……せっかくボッチの旅が出来ると思ったのに。残念だ」

八幡「だが材木座。お前は次の避難所見つけたら離脱しろ」

材木座「何ゆえ?」

八幡「お前にとって雪ノ下も由比ヶ浜も、小町も対して親しくは無いはずだ。精々戸塚と少し話すくらいだろ?だからお前がくる必要は無い」

材木座「フハハハ!八幡よ…今の世の中、絶対安全な場所など無い。この公民館が壊滅したように」

材木座「ならば我はおぬしと共に命をかけて闘おうではないか!そして、お主はいつも通り我を利用すればよい!」

八幡「……」

八幡「勝手にしろ」

~~~~

八幡(それから…数ヶ月、カマクラと先生と材木座との一匹と三人の旅が始まった)

八幡(だが現実は常に非常な物だった)

~数週間後~

八幡「カマクラ…すまん」ボロボロ

ゾンビカマクラ「グゥゥ…ジャァァ…」

八幡「最初はただの野良猫との喧嘩だと思ってた…ちゃんとお前を見張ってれば…」

ゾンビカマクラ「ジャァァァ…!!」ダダッ

八幡「おやすみ、カマクラ」ブンッ

ゴシャ!

平塚・材木座「……」

~~~

材木座「ぐふ…無茶をしすぎた…」

八幡「おい、厨二病ごっこはやめろ」

材木座「残念ながらごっこではない。現実なのだ」

ぅぅぅ…あ“あ”あ“あ”…

平塚(やばい…かなりの数が追ってきてる。早く逃げなければ)

材木座「八幡、これを」ススッ

八幡「……そのラノベの原稿はお前が出版社に直接わたせ」

材木座「それは叶わぬ願いだ。お主に託す」

八幡「材木座…」ガシッ

材木座「さて、剣豪将軍の最後の奥義をお見せしよう!」ガクガク
八幡「何が奥義だ。足が震えてんぞ…」

材木座「わ、わわ、我は最後の闘いへ向かう!」ガクガク

八幡「待て、病院にいくぞ」

材木座「そう都合よく特効薬があるはずが無い」

八幡「まだ諦めるのは早い」

材木座「いや遅い…がふっ!」

ビキビキ!ビキビキ!

八幡「っ!!」

八幡(材木座の体中に…血管が歪に浮かんでる…)

材木座「おっと!そこに都合よく、給油車があるではないか!」

平塚「おい、まさか…やめろ!乗るな!」

材木座「遅い!」ガチャッ

材木座「さあ行け!前方に見えるガソリンスタンドへ一直線じゃああ!!!」

ブロロロロロ!!!!

平塚「くっ!!この場から離れるぞ比企谷!」

八幡「材木座…」

平塚「早く!!」ダダッ

八幡「……っ」ダダッ

材木座「くらえぇぇ!!!生ける屍共がぁぁぁ!!我の熱き奥義を喰らうが良い!!」

材木座「フハハハハハハ!!フハハハハハハハハハハハ!!!」

ボォォォォォォォォン!!!

八幡・平塚「材木座――!!!」

八幡(カマクラと材木座を失ってからは、しばらくは先生と二人で旅をした)

八幡(道中、生き残る為に様々な事を教わった)

~~~

平塚「良いことを閃いた。このスプレーとチャッカマンが武器になる」カチッ

平塚「ほら…即席火炎放射器だ」ボォォォ

平塚「これをキミに授けよう。取り扱いには気をつけろ」

八幡「あざす…しかしよくそんな発想が生まれましたね」

平塚「材木座の特攻からヒントを得てな…なにか火炎系の攻撃ができないかと」

平塚「そこで、昔よくやったゲームを思い出してな」

八幡「……?」

平塚「古いゲームさ。スプレーとライターでラスボスを倒すゲームがあってだな」

八幡「そんなゲームがあったんすか」

平塚「いつかパンデミックが終わったら一緒にやるぞ」

八幡「……うす」

~~~

八幡「ちっ…囲まれた」

ぐぅぅぅ…ぉぉぉぉ…

平塚「よし比企谷!昨日作った火炎瓶を投げてみろ!」

平塚「お前の背後は私に任せろ」

八幡「うす…おらっ!」ブンッ

バリィィィン!

八幡「おお…よく燃える…」

グォォォ…!!

平塚「油断するな!すぐにシャベルを装備しろ!」

平塚「オラオラオラオラ!!」

ドス!ドガ!ゴシャ!

八幡「……」チラッ

八幡(つ、強ぇぇ…本当にただの教師かよ。特殊部隊でも行った方が良いだろ)

~~~

八幡(信じるという事が苦手な俺だが、先生は別だった)

八幡(平塚先生とならきっと生き延びられるかもしれない…そんな自信があった)

八幡(だが、現実はやはり残酷だった)

【数ヵ月後・ある繁華街にて】

平塚「くそ!囲まれた…」

八幡「シャレにならん。こんな数、初めてですよ」

平塚「ここらの地域は相当な被害が合ったんだな。ゾンビの数が異常だ」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

平塚「昨日、私の車が廃車にさえならなければ逃げ切れたというのに…」

平塚「比企谷、火炎瓶のストックは?」

八幡「……もう使い切りました」

平塚「スプレーは!?」

八幡「もう無いです」

平塚「……なるほど、ここからは白兵戦のみか」

平塚「いいか、逃げ場など無いが火事場の馬鹿力をみせてやれ」チャキッ

八幡「うす」チャキッ

平塚「行くぞ!ウオオオオオ!!!」ダダッ

八幡「……っ!!」ダダッ

ドス!ドガ!ゴシャ!バキ!

~~~

八幡「ぜぇ…ぜぇ…」

八幡(あれから何時間たったんだ。まだウジャウジャいる)

八幡(疲れて…シャベル振るのが辛い…)

平塚「はぁはぁ、いかん…このままだとスタミナ切れしてしまう…」

八幡(平塚先生までも疲弊してる…だが死ぬ訳にはいかん)

八幡「アイツらに会うまでは…!」

ドス!ドガ!ゴシャ!バキ!

八幡「…!!見えた…突破口が…」

平塚「なに!?本当か!」

八幡「後ろを任せます。俺が切り開きます」

平塚「おう!」

ドス!ドガ!

八幡「もう少し…もう少しで…」

ゴシャ!バキ!

平塚「比企谷!急ぐのは良いが周りを良く見るんだ!」チラッ

八幡「もう少し…もう少し…!」

平塚「おい!聞いてるのか……あ!!」

あぁぁ…ぅぅぅ…

平塚「比企谷危ない!!横から来てるぞ!!」

八幡「え」

平塚「くっ…間に合え!!」

ガブッ

平塚「ぐあっ…!!」

八幡「っ!!!?」

ガブ…ガブ…

平塚「ぐっ…」ググッ

平塚「いつまでも…人の腕を嚙むな!!」ブンッ

ゴン!ゴシャァァ!!

平塚「ぜぇぜぇ…」

八幡「ぁ…ぁぁ…」ガクガク

平塚「丁度、突破口ができたな」

平塚「ボサッとするな!逃げるぞ!」ガシッ

八幡「」ダダッ

それから先生に手を引っ張られたまま、大きな公園まで逃げた
そのときの俺は完全に放心状態だった

【大きな公園】

平塚「ぜぇぜぇ…この大きな木の下で休もう」

八幡「」

平塚「ほら、キミも腰を下ろせ」ススッ

八幡「」ススッ

平塚「ほら、しっかりしたまえ」ポンッ

八幡「」ビクッ

平塚「……」

八幡「……」

平塚「さて、これからどうしようか…」

八幡「……」

~~~

平塚「……」ゴソゴソ

平塚「あったあった、一升瓶」

平塚「ほら、キミの大好きなマックスコーヒーだ。飲みなさい」

平塚「ほら、乾杯」コツン

八幡「……」コツン

平塚「んんっ…」ゴク

平塚「あああ…うまい…」

八幡「……」ゴクゴク

八幡「……」

平塚「……そんな顔するな」

八幡「……」ススッ

平塚「土下座もしなくていい。勿論、謝罪もだ」

八幡「……」ペコッ

平塚「聞いてたか?土下座するなといったハズだ」

平塚「謝るのなら、最後の晩酌に付き合いなさい」

平塚「キミがあと2年ほど歳をとってたら一緒に酒を飲めたんだがな」

八幡「……」

平塚「さて、次は最後の一服といこう」カチッ

平塚「プハァァ…」

八幡「……」

平塚「……」

平塚「……」ススッ

バシャバシャ…

八幡「っ!?」

平塚「ははは、日本酒を頭から被るなんて初めてだ」

八幡「せ、先生…何を…」

平塚「比企谷、理科の実験で習っただろ?」

平塚「アルコールは燃えやすいんだ」

八幡「っ!!!!」

平塚「さらばだ、比企谷」

シュバッ

平塚「あっ…」

八幡「はぁ…はぁ…」ググッ

平塚「こら、私のジッポを返すんだ」

八幡「……」

平塚「困った教え子だ…」ススッ

平塚「ならば懐にしまっていた、この小刀で武士の如く腹を切ろうじゃないか」グッ

八幡「っ!!!」

シュバッ

平塚「……こら、返したまえ」

八幡「アンタはヤクザかよ…こんな武器、いつ手にいれたんですか」

平塚「ほんの少し前だよ」

八幡「没収させてもらいます」

平塚「本当、困った生徒だ…」

平塚「……何だキミ、泣いてるのか」

平塚「情けないツラするな。男だろ」

八幡「……」

平塚「……」

ビキビキ!!ビキビキ!!

平塚「ぐっ!!」ガクッ

八幡「」

平塚「ぜぇぜぇ…いよいよ始まったな…」

八幡(顔中に、体中に血管が浮かび上がっている…)

平塚「ぜぇぜぇ…これは…なかなか辛い…」ググッ

ビキビキ!!ビキビキ!!

平塚「がふっ!」

八幡「……!!血が…」

平塚「……私には遣り残した事が二つある。1つは…言わなくてもわかるか」

八幡「……」

八幡「結婚できなかった事と何ですか?」

平塚「キミの妹、雪ノ下と由比ヶ浜…そして比企谷、君達の卒業姿…その後の身の振る舞い、その行く末を…見届ける事が出来ない事だ」

八幡「……」

ビキビキ!!ビキビキ!!

平塚「ぐぅ…!!」

八幡「っ!!!」

八幡(先生の額から、目から血が流れている…血管が断裂し始めてる…)

平塚「ぜぇぜぇ…ぜぇぜぇ…」

平塚「比企谷…最後ノ命令だ…ヨく聞きナさイ」

平塚「3ツのうち、好きナ方を選べ」

平塚「1つ『わたしの私物を返す』、2つ『キミがわたしの始末する』、3つ『今すぐこの場から立ち去る』」

平塚「サア、選べ」

八幡「……選べません」

平塚「……」

平塚「困ッタ子ダ…」ナデナデ

八幡(血塗れになった先生は、優しく微笑みながら俺の頭を撫でる)

八幡(やがてその手の動きも不規則に、かつ力なくなっていく)

~1時間後~

平塚「」ガクッ

八幡「……」

八幡(平塚先生は完全に動きを止めて、その場で倒れる)

八幡「……」

平塚「」

平塚「」ムクッ

平塚「ぅぅぅ…」

八幡「……」

ガシッ

八幡「っ…」

ゾンビ平塚「ウアアァ…」

八幡(変わり果てた先生は、俺の肩をがっしりと掴んで、大きく口を空ける)

八幡(おれは何もできず、その場で立ち尽くしていた)

ゾンビ平塚「ぅ…ぅぅ…」ジタバタ

八幡「…?」

八幡(もがいてる…?)

ゾンビ平塚「……」バッ

八幡「肩を…離した…」

ゾンビ平塚「ふっ…!」ガシッブンッ

八幡「……!!」パシッ

八幡(シャベルを…投げつけてきた…!?)

ゾンビ平塚「ぅぅ…ぁぁぁ…」フラフラ

八幡「…そういう事ですか。わかりましたよ」

ゾンビ平塚「ぅぅ……アアアアアアア!!」ダッ

八幡「先生…いままでお世話になりました」ブンッ

ゴシャ!!バキッ!!ドガッ!!

八幡(その後、俺は先生と約5分間、死闘を繰り広げた)

八幡(ゾンビになっても途方も無く強かったが、とうとう力尽きた)

ゾンビ平塚「……」

八幡「……」

ゾンビ平塚「ヒキガヤ」

八幡「え」

平塚「ありがとう」

ゾンビ平塚「」

八幡(ほんの一瞬、目に光が戻り優しく微笑むと、そのまま伏した)

~~~~

ザクッ…ザクッ…

八幡「穴掘り終わり」

八幡「後は埋めるだけだ」ススッ

平塚「」

八幡「おやすみなさい先生」

サク、サク、サク…

………………

八幡「……」カララン

ドサッ

八幡「」

八幡(木の麓に埋め終えると、俺はシャベルをその場に落とし、力なくうつ伏せに倒れる)

ポツ…ポツ…

八幡「ぅ…ぅぅ…くっ…」

サァァァーー

八幡(雨が降ってきた)

八幡(顔面は涙と雨に塗れて、その雫は土へと垂れる)

八幡「ぅ…くっ…ぅぅ…」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

八幡(来たか…でも、もうどうでも良いや)

八幡(このまま喰われるのも良し、奴らの仲間になるのも良し)

ォォォ…ゥゥゥゥ…

八幡(もう疲れた)

八幡(千葉村で雪ノ下も言ってたもんな。ハリウッド級並みのゾンビフェイスだって)

八幡(それなら本物のゾンビになるのも悪くない)

八幡「もうどうでもいい…」

――比企谷くん

――ヒッキー!

八幡「」ピクッ

八幡(雪ノ下、由比ヶ浜)

――お兄ちゃん!

――八幡!

八幡(小町、戸塚)

八幡「……」ムクッ

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

八幡「やっぱ…まだ死ねない…」ググッ

ゴシャ!!バキッ!!ドガッ!!

ザァァーーー!

八幡「雨が強い…」

八幡「……」フラフラ

八幡「ぅぅ…くっ…」ボロボロ

ガシッ

八幡「うおっ!?」

ドサッ

八幡「痛っ……ん?これは原付バイク」

八幡「何でこんな所に転がってるんだよ」

八幡「……まあいい。車の運転なら平塚先生から教わったし」

八幡「これからは、このバイクで移動するか」ススッ

ブルン…ガタタタ…

八幡「動いた、しっかしボロボロのバイクだな。果たしてどれだけ持つか」

八幡「よし、行こう」

ブロロロロロロロ

八幡「寒っ」

八幡「……」

八幡「本当の意味でボッチになってしまった…」

八幡「……」

ザァァーーー!

八幡「ぅぅ…くっ…ぅぅ…」


後にも先に、人生でこの時ほど泣いた日は他に無かった

(回想終了・夕刻の住宅街)

八幡「……」グスッ

ビュォォォォォーー!

八幡「あの時は自分でも恥ずかしくなるくらい、泣いたっけな…まあ、誰にも見られてないから良いけど」

八幡「……」

八幡「結局、今日も見付からなかった…」

八幡「……帰るか」

ぺチッ

八幡「ん?」

八幡「なんだ…頬に何か張り付いてる…風で吹き飛ばされてきたのか」スッ

八幡「これは…まさか…」

【部室】

八幡「ただいま」

胡桃「っ!!八幡!!」タタッ

悠里「無事でよかったわ…ホッ」

胡桃「ほら…タオルだ。ビシャビシャだぜ」ススッ

八幡「悪い」ゴシゴシ

由紀「もう!心配でお昼御飯が咽に通らなかったよ!」

美紀「今日も…見付からなかったんですか…」

八幡「……」

八幡「無駄ではなかった」ゴソゴソ

八幡「これを見つけた」

美紀「赤いリボン…?」

胡桃「アタシがつけてるのとそっくりだな」

八幡「ああ、そうだ。だがこのリボンの方がやや細長い」

胡桃「そのリボンがどうしたんだ」

八幡「……」

八幡「本物か、偽物か…それは判断できんが」

八幡「部長の雪ノ下がつけてた物と似ていてな」

全員「……」

八幡「例えこんな物でも…希望を見出してしまう」

八幡「……」ツー

八幡「アイツがもしかしたら近くにいるのかもしれない……ってな」ギュッ

八幡「ぅ…くっ…ぅぅ…」ボロボロ

全員「……」

【深夜の部室にて】

ガララッ

美紀「あ、八幡先輩」

八幡「おう」

美紀「起きてたんですか」

八幡「ああ。寝る前に本を読もうと思ってな」

美紀「私もです」

八幡「そうか」

美紀「……」

八幡「……」

美紀「八幡先輩は凄いです」

八幡「何だいきなり」

美紀「いくら大切な人でも、ここまでリスクを背負って探索なんて、なかなか出来ません」

八幡「……」

美紀「私の友達も、八幡先輩とは別な理由で外に飛び出しました」

八幡「友達?」

美紀「ええ、圭と言いまして…」

~~~~

美紀「……っと言う事があって」

八幡「そうか、お前も大変だったんだな」

美紀「……本当なら、私も圭を探すべき何でしょうけど」

八幡「まあ、反対を押し切って出てった訳だしな…それにこの状況だ。だれもお前を責めやしない」

美紀「……」

八幡「……去年までの俺だったら、誰かの為に命を懸けるなんて考えもしなかったな」

美紀「え?」

八幡「だって俺ボッチだったし。たぶん俺はお前と一緒で、ショッピングモールの1室に引き篭ってた。何なら生存者の声が聞こえても無視するまである」

美紀「そこまで拒絶するんですか!?」

八幡「ああ、だって嫌われ者だったし。多分助けられてもその後は冷たくされるだけだし」

美紀「ここの皆の反応は違うじゃないですか」

八幡「お、お前らは人が良すぎるだけだ」ドキッ

八幡「……」

八幡「あ、小町を忘れてた。小町の為ならいくらでも命をかけられる過去も未来も現在もな。ああ、そうだよ。何てことだ小町を忘れるなんて。俺は兄失格だ。欝だ死にたい」

美紀「大げさすぎます!」

美紀「でもちょっと無茶しすぎじゃないですか?こんな台風の日に出かけなくても」

八幡「お前に俺の座右の銘を教えてやる…押してだめなら諦めろ、だ」

美紀「全然、座右の銘と一致してない気が…」

八幡「してるさ。俺が探索を諦める時は…」

八幡「アイツらが手遅れの場合か、俺が手遅れになるか。どっちかだ。手遅れになったらもう押せないからな」

八幡「だからそれまでは押し続ける」

美紀「……っ」

八幡「アイツらが…特別で、本物だからだ」

美紀「本物…」

美紀「……」

美紀「由紀先輩にも」

八幡「ん?」

美紀「由紀先輩にも、本物の世界を見せてあげるべきでしょうか」

八幡「俺がさっき言った『本物』とは、また解釈というか捕らえ方が違うが…まあ言わんとしてることは分かる」

美紀「由紀先輩と思い出を作るのは良いんですけど…でも、学園生活部以外でのところでは、偽物の思い出を作ってるんですよね」

八幡「そうだな…」

八幡「……」

八幡「黙ってはいたが」

美紀「?」

八幡「俺の作戦なら50%の確率で、丈槍を正常な意識に取り戻す事が出来る」

美紀「本当ですか!?」ガタッ

八幡「だがあくまで50%だ」

美紀「でも、由紀先輩の意識を正常に戻す可能性があるなら…!」

八幡「しかし俺はその作戦を実行に移す気はない」

美紀「え…どうして」

八幡「言っただろ。黙ってたって。良い作戦とは思ってないからだ」

八幡「仮に。万が一仮に、丈槍の意識が正常な物になったとしよう。俺のやり方で」

八幡「……だが、良いことは一つも残らないだろう。多分」


(回想)

由比ヶ浜は優しいな…でもよ、同情で優しくしてるなら。そんなのやめろ

同情とかそんなんじゃない…ヒッキーのバカ…

~~~

上手く言えなくて…もどかしいのだけれど…あなたのやり方、嫌いだわ

もう少し人の気持ち、考えて…!

(回想終了)


八幡「俺のやり方ってのは、時として人を不快な想いをさせてしまう」

八幡「どうでもいい奴や、嫌いな奴ならまだしも…大切に想う相手でさえもな」

美紀「……」

八幡「基本的に後悔はしない性質だが…間違えると確信していて、あえて実行に移す気も無い」

八幡「数々の失敗の中で、どうすれば間違わずに誰かを守れるのか、大切な人の心を傷つけずに済むのか、そういう事をいつしか考えるようになった」

八幡「どっちにしても捻くれ曲がったやり方と周囲から言われるけどな」

美紀「周囲…ですか。ボッチなのに?」

八幡「あ、いや、それは…その…深い意味は無い」

美紀「ふふふ、変なところにプライドがあるんですね」

八幡「……」

八幡「……お前の考えには俺は肯定する。丈槍には現実逃避せず、事実を受け止めるべきだ」

八幡「だが俺は専門家じゃないからな…今はこのまま、アイツのペースに合わせるのが一番なのかも知れんな」

美紀「そう…ですか…」

ガララッ

八幡「ん?」

由紀「な~に話してるの?」ヒョコッ

美紀「噂をすれば」

由紀「ふっふっふっ、みーくんは私が大好きで八幡君に惚気話を聞かせてたのかな~?」

美紀「違います!先輩なんて嫌いです!」

由紀「あわわわ、みーくんごみーん」ダキッ

美紀「もう!暑苦しいです…」

キャッキャッ

八幡「……」

「ゆきのん大好き!」

八幡「っ!?」

「暑苦しいわ由比ヶ浜さん…あまりべた付かないで…」

「もう照れちゃって!」

八幡「お前達……」ツーッ

由紀「ふぇ?」

美紀「え……って先輩……」

八幡「あっ…」ビクッ

由紀「あわわわ、八幡くん大丈夫!?」

八幡「あ、ああ…大丈夫…」

八幡「……今日はもう寝る」グシッ

由紀「そっか。それじゃ私も寝よっかな…みーくんは?」

美紀「もう少し、ここに残ります」

ガララッ

胡桃「おう美紀」

美紀「胡桃先輩…」

胡桃「は、八幡は?」

美紀「もう寝室に向かいましたよ」

胡桃「そっか…」シュン

胡桃「あれ、なんで鉢合わせしなかったんだろ」

美紀「お手洗いに寄ったんじゃないんですか?」

胡桃「ああ、なるほど」

美紀「ん?」

胡桃「どうした」

美紀「これは…地図ですか」

胡桃「ああ、それは八幡が使ってる巡ヶ丘の地図だ」

美紀「……ん?」

胡桃「どうした?」

美紀「地図に沢山、マーカーの線が引いてあるんですけど…」

胡桃「それは、その場所に行ってチェックした所をメモしてるんだ」

美紀「なるほど」

美紀「……」

美紀「……っ」ビクッ

胡桃「今度は何だ?」

美紀「巡ヶ丘の地図に…チェックした印、マーカーで引かれた線が多い…っという事は…」

胡桃「あっ……」ビクッ

美紀「……」

胡桃「……」ズキズキ

今日はここまで

>>1「続きを書いていきます」

俺「おぉ‥どれだけ待ったか....」ボロボロ

【次の日・雑居ビル】

八幡「……」テクテク

胡桃「おい!待てよ!」

八幡(いない。早く次の場所を)クルッ

胡桃「待てって!歩くの早すぎだぞ!」

八幡「悪い」テクテク

胡桃「だから待てって!」ガシッ

八幡「……」

胡桃「全然歩調変えてないじゃないか…ばか」

八幡「早く上の階も探索するぞ」

胡桃「あ、ああ…」

八幡「……」

八幡「なあ」

胡桃「ん?」

八幡「文化祭の件だが…あれ、やる意味あんのか?」

胡桃「演劇の事か?」

八幡「丈槍がやりたいというから付き合うがぶっちゃけ、観客なんてだれもいないじゃねぇか」

胡桃「今更そんなの言われなくても…」

八幡「丈槍を説得して、焼きそばの露店もどきでもやったほうが良いじゃねぇか?それなら『文化祭ごっこ』できるし、昼飯も食えて一石二鳥だ」

胡桃「で、でも信じてくれ。今までだって由紀が行動してきた事、提案してきた事は決して無駄じゃなかった」

八幡「……俺が言いたい事はそっちじゃない」ボソッ

胡桃「え、いま何て」

八幡「……」ガサゴソ

胡桃「それは地図…」

八幡「……」

八幡(もう時間が無い)

【その日の夕刻・学校の体育館】

胡桃「体育館にくるのは初めてか?」

八幡「ああ」

ぅぅぅ…あ“あ”あ“あ”…

八幡「奴らがうじゃうじゃいるな」

胡桃「ここらはアタシもノータッチだったしな」

八幡「スプレーは持ったな?」

胡桃「ああ。チャッカマンと消火器、念のために濡れた布団も用意した」

胡桃「外でりーさんたちも消火器とホースを用意してる。由紀には火災訓練って事で説明した」

八幡「まあ、火災訓練に限りなく近いな」

ォォォ…グゥゥゥ…

八幡「行くぞ」チャキッ

胡桃「おう!」チャキッ

シュゥゥゥ…ボォォォォ!

八幡「消毒の時間だ」

グォ!グォォォォォォォ…!

~~~~~~

八幡「よし完了だ。消火器を噴射しろ」

胡桃「消化ターイム!」

シュゥゥゥ…

美紀「ゲホゲホ…凄い事になってますね…」シュゥゥゥ

悠里「ホースも持ってきたけど、必要なさそうかしら」

八幡「まだ生き残りがいるかもしれん。防衛用に構えておけ」

八幡「俺は体育館のステージ裏とかも見てくる」

由紀「ふぇぇ…本格的な火災訓練だ!体育館大丈夫かな」シュゥゥゥ

悠里「大丈夫よ、後でしっかりお掃除するから」

【体育館制圧後・清掃】

美紀「あたり一面が粉だらけで…これはなかなか大変です」

由紀「あうぅぅ…疲れた~」

悠里「あれ、八幡くんは?」

胡桃「奴らの遺体をリヤカーに乗せてる。裏門にまとめて放棄してバリケードにするって言ってた」

悠里「遺体の山をバリケードって…まあアイツらも侵入できないだろうけど」

胡桃「八幡が言ってた。『いつかここを卒業する時が来たら、改めて火葬してやれ』ってさ」

悠里「火葬は私達がやるのね…」

~~~~~

由紀「お掃除完了…つ、疲れた…お腹減った…」

美紀「つい熱が入って深夜まで、休けい無しで掃除してしまいましたね…」

悠里「私が夕食の準備するから、みんなはシャワーでも浴びていて」

由紀・美紀・胡桃「はーい」

八幡「あー疲れたー。腕が重い…疲れたからお前ら先に入ってて良いぞ」

由紀「八幡くん!前みたいに、みーくんのシャワータイムを覗いちゃダメだよ?」

八幡「覗かねぇよ。つーかそもそもアレは不可抗力で俺に覗く意志などなかった」

美紀「本当ですか?」ジーッ

八幡「本当だ」ボタボタ

悠里「は、八幡君!?鼻血が出てるわ!ティ、ティッシュ!」フキフキ

胡桃「またかよ!本当に懲りないな!」

由紀「はわわわわ!」

八幡(しまった。ついあの時のことを思い出してしまった。だって仕方ないだろ。体が女で顔が戸塚だしよ)ボタタタ

美紀「もう!先輩のスケベ!」

胡桃「……」ジーッ

悠里「今回はそんなに酷い鼻血では無いわね…」フキフキ

八幡「す、すまん。毎回ティッシュ当番を任せてしまって」

胡桃「……」ジーッ

八幡「……ん?何だよ恵飛須沢。コッチ見て」

胡桃(男が覗くのはダメだけど…恋人同士の男女なら、一緒にお風呂とかも入るんだよな…)ドキドキドキ

胡桃「……………」ボーッ

ポタポタ…ポタポタ…

八幡「っ!?恵飛須沢、鼻血が出てるぞ!」

胡桃「は?」ボタタタ

由紀「はわわわわ!!今度は胡桃ちゃんが!!」オロオロ

美紀「!!?」

悠里「い、いけない!凄い血の量よ!」

胡桃「え、え?アタシが鼻血…?」サワッ

胡桃「…って、なんじゃこりゃぁあ!!!」

悠里「ほらティッシュを詰めるわよ!」ググッ

胡桃「うっ!」ボタタタ

美紀「詰め込んだティッシュが、一気に真っ赤に染まった…!?」

八幡「だ、大丈夫かお前?」

胡桃「お、お前だけに言われたくねぇよ!馬鹿!」

胡桃(な、なに考えてんだ!?これじゃアタシが変態みたいじゃないか!!)カァァァ

胡桃「~~~っ!!///」

【次の日の深夜・部室】

悠里「今日は演劇のイメージトレーニングをしてもらう為に、DVDを見るわ」

八幡「メロスとシンデレラのか」

悠里「ええ。まずはシンデレラの方から視聴するわ」

~~~~

八幡「あの魔女って正確には妖精だったんだな。まあ魔法が使えるしどっちでも差し支えないだろうが」

美紀「でも由紀先輩の場合、魔女って言うより妖精の方がしっくりしますね」クスッ

由紀「エヘヘヘへ」テレテレ

八幡「確かに」

八幡(どちらかというと魔女は…怖い方の魔女なら陽乃さんが似合うな。ココにはいないけど)

「ん~~?誰が怖い魔女だって~~?」

八幡「ひぃぃっ!!?」ガタッ

学園生活部全員「!?」

「酷いな~比企谷。私、傷ついちゃった…」

八幡「な、なんでココに…アンタが…」ガクガク

「そんな事より私の心の傷、どう責任を取ってくれるのかな…んん?ねぇ比企谷君…」ニヤリ

八幡「」ダラダラ

胡桃「おい!しっかりしろ!」ユサユサ

八幡「ハッ!」

悠里「凄い汗よ…大丈夫?」フキフキ

八幡「あ、悪い…ティッシュだけでなくハンカチまで」

胡桃(ぐぬぬぬ、遅れを取った…)ググッ

美紀「あ…先手、取られちゃいましたね」

胡桃「え?」クルッ

美紀「あまりに汗が凄いようだから…その、ハンカチ渡そうと思って」

八幡「お、おうスマン。気持ちだけ受け取っておく」

美紀「ええ」ペコッ

胡桃「……?」

八幡「ぜぇぜぇ…」

胡桃「んで、一体誰の幻影を見てたんだよ」

八幡「部長の姉」

胡桃「ああ…前に言ってた、魔王か」

美紀・由紀・悠里「魔王!!?」

胡桃「お、次は王子とシンデレラが踊るシーンか」

美紀「そういえばダンスの所は、演劇の稽古でもカットしてきましたね」

悠里「どんな風に踊るか分からないから、今まではカットしてたのよね」

悠里「だからこのシーンを参考に、踊ってみないかしら?」

美紀「え、今からですか!?」

胡桃「……」ズキズキ

由紀「はわわわ、みーくんと八幡君が…」

八幡「よし今日はもう寝よう。明日は病院に行って輸血パックを入手してくる」

由紀「鼻血出ること前提!?」

胡桃「病院は散々見てきたけど、輸血パックは残ってなかったろ…」

八幡「よし、やっぱ止めよう。命がいくつあっても足りん。何なら演劇自体却下まである」

胡桃「大げさすぎだ!」

美紀「……イヤ、何ですか?」

八幡「は?」

美紀「私と踊るのがイヤなら…カットしてもらっても良いですが」

八幡「……本当にいやなら、輸血パックとか命云々言わねぇよ」

美紀「そ、そうですよね」

美紀「じゃあ、練習しましょうよ。やるからには徹底的にやらないと」

八幡「お、おう。鼻血は出ないように気をつける」

美紀「ふふ、演技力よりも鼻血の心配とかおかしいです」

八幡「何もおかしくない。命がかかってるからな」

美紀「ふふふ」

胡桃(美紀…?)

悠里「それじゃダンスのシーン。始めるわよ」

美紀「ぷっ、何ですかその格好」

八幡「念のために、前もって鼻の穴にティッシュを詰め込んだ」

由紀「3、2、1、アクション!」

美紀(王子役)「どうか私と踊ってくれ!」

八幡(主演)「喜んで」

美紀(たしか自分の左手で…相手の右手を握って)ギュッ

八幡(自分の左手を相手の腰に添えて…右手は頭の高さまで上げて…)ススッ

八幡・美紀「ぅ……///」ドキドキ

胡桃「……」モヤモヤ

由紀「はわわわ///」

悠里(こ、これは…刺激的ね…///)ドキドキ

由紀「よーし!せっかくだからBGMも流そう!」カチッ

♪~♪~

美紀「あ…」

美紀(これは…圭が買ったCDの曲…)

♪~♪~

八幡「こ、こんな感じで良いのか?」ススッ

美紀「え、ええ。良い感じです」

八幡・美紀「……///」ドキドキドキ

胡桃(美紀のやつ…良いな…)モヤモヤ

※圭が買ったCDの曲

曲名「We took each other's hand」
https://www.youtube.com/watch?v=a_gUxu4g1Ak

【次の日の夜・部室にて】

八幡(探索から帰り学校に戻ると俺達は、文化祭の準備をする事に)

胡桃「ダンボールで出来たお城のハリボテ、出来上がったぞ!」

悠里「お疲れ。こっちもメロスの時に使う、村や町のハリボテは完成したわ」

美紀「演劇で使う服のアレンジも完了しました!」

由紀「BGMの選曲もバッチリだよ!みーくんが持ってきたCDに入ってる曲も使うからね!」

美紀「ええ…あの曲は圭のお気に入りですから是非」

八幡「……」

胡桃「どうした?ボーッっとして」

八幡「別に。疲れただけだ」

~演劇の稽古(シンデレラ)~

由紀(魔女役)「私は不憫なアナタに夢を叶える魔女だよ!」クルクル

八幡(主演)「夢を叶える…魔女?」

由紀「魔法の呪文、不思議な言葉!びびでばびでぶー!」

プツンッ

八幡(明かりが消えた。早くドレスに着替えねば…)ガサゴソッ

八幡(……なぜ俺がドレスを着なければならんのだ)ススッ

パッ

八幡「おい!明かりつけるの早ぇよ!まだ着替えてる最中だっつーの!」

由紀「はわわわわ///」

美紀「きゃあああ!!!」

悠里「ご、ごめんなさい!///」カァァ

胡桃「おいりーさん!しっかりしろよ!///」ドキドキ

胡桃「しっかし由紀。随分と演劇が上手くなったな」

八幡「ああ。丈槍はああいう役が似合うな」

由紀「えへへへ…でもね、本音言うとシンデレラ役も良いなって思うかな」

八幡「元はと言えばお前がクジ引きを提案したのが原因だろうが」

由紀「あ、そうだったね」テヘペロ

美紀「でも由紀先輩は普段も、あんな感じですよ」

由紀「ふぇ、そう?」

美紀「ええ、みんなを元気にしてくれる…魔法使いですから」

由紀「えへへへへ」

八幡「どっか抜けてるけどな」

由紀「にゃ、にゃにおー!」

~演劇の稽古(メロス)~

悠里(暴虐の王)「もうすぐ時間切れだな」

八幡(メロスの親友セリヌ役)「いや、まだだ。彼は必ずここへ来るだろう」ブルッ

悠里「はんっ、戯言が。もう間に合わん。お前はここで処刑され地獄へ落ちるのだ」

悠里「残念だったなセリヌよ。お前はメロスに裏切られたのだ。実に無様だ」

悠里「処刑の見学に来たこの町の諸君!わかったか?これが人間と言う生き物の本性だ…フハハハハハ!」

八幡「……」

胡桃「カット!良い感じだ!」

悠里「ふぅ…緊張したわ…」

胡桃「りーさんの演技、凄かったぜ!」

悠里「え、そう?」

八幡「ああ、迫真の演技って奴だ。あの声音…どす黒いオーラ…」

悠里「そ、そう///」ドキッ

八幡(一瞬だけ陽乃さんと見間違えた)ブルッ

【演劇終了後・部室】

八幡「……」

悠里「みんな、お疲れ様」ニコッ

美紀「今日も疲れました」

由紀「でも楽しかったよね!」

美紀「ええ」ニコッ

八幡「……」

胡桃「シャワー浴び終えたら、その後はゲーム大会しようぜ!」

由紀「良いね、やろうやろう!」

美紀「体力が有り余ってますね」

悠里「ゲームしても良いけど、夜更かしはダメよ」

胡桃「分かってるよ…ん?」

八幡「……」

胡桃「八幡、どうしたんだ」

八幡「……」

由紀「どうしたんです?そんな悲しそうな表情で」

由紀「八幡くん…?」

悠里「具合が悪いの?」

八幡「……」ガソゴソ

バンッ

美紀・由紀・悠里「それは……」

胡桃「巡ヶ丘の地図…」

八幡「……」ススッ

キュッキュッ

胡桃「あっ……」ビクッ

胡桃(マーカーペンで…線を引いた…)ズキン

八幡「……」

八幡「ココまでだ」

由紀「え、え?」

悠里「……!!」

美紀「まさか…」

八幡「ああ、もう…探索しつくした」

胡桃「」

八幡「だが見つからなかった」

由紀「え…て、転校しちゃうの?」

八幡「ああ、遠くにな」

胡桃「」

美紀「そ、そんな…せめて文化祭が終わるまで」

八幡「お前らの道楽に付き合ってる余裕は無い」

悠里「ど、道楽って…そんな言い方…」

八幡「地獄に戻らなきゃいけないんだよ。妹を戸塚を、部員を助ける為に」

悠里「……!!」

八幡「だから配役はまた考え直せ。それか違う出し物をするか」

八幡「あるいは、文化祭の企画自体無かった事にするか」

学園生活部全員「……」

八幡「夢はいつか覚める物…シンデレラに出てくる魔女もそう言ってたな」

由紀「八幡くん…」

八幡「学園生活部での活動…楽しかった。だが、もういかないとな」

八幡「俺は地獄に帰る」

胡桃「イヤだ…」プルプル

胡桃「イヤだ…イヤだイヤだイヤだ…イヤだ!!!」ポカッ

八幡「叩くな」

胡桃「イヤだ!イヤだ!」ポカポカ

八幡「……」

胡桃「イヤだ…!!」ギュゥゥ

八幡「……そんな強く服の裾を掴むな」

胡桃「う…ぅぅ…」ツーッ

胡桃「大好きだった先輩が亡くなって…ショックで…」

胡桃「由紀たちに支えられても…始末した時の事を夢でうなされて…」

胡桃「お前がいたから…立ち直れて…」

胡桃「それでお前までもいなくなったらアタシ…」

八幡「そういう発言やめろよ。勘違いするだろ」

胡桃「あ…えと…」モジモジ

八幡「……」

八幡(これだけは絶対に言いたくなかった。かけがえの無い存在だからだ)

八幡(だが止む終えん)

八幡「あーぶっちゃけるけどよぉ……」ギリギリ

八幡(言え。比企谷八幡。由比ヶ浜を泣かした時も、クソみたいな女だった相模南を泣かした時も…似たような手段は使ってきたはずだ)

八幡(もうこの手の手段は使わないと誓ったのだが…だがこいつの為だ)

八幡(怯えるな。恐怖に屈するな。情に流されるな。罪悪感に飲まれるな。甘い感情は殺せ)ズキズキ

八幡(俺は嫌われ者だ)ガクガク

八幡「それともお前は単に、先輩とやらの穴埋めを俺にしてるんだけじゃねえのか?」

胡桃「」

八幡「誰でも良かったんだろ?」ニヘラ

胡桃「……」プルプル

悠里「あなたねぇ!いい加減に…!」

胡桃「ふっざけんじゃねぇぞ!!!!」ブンッ

ドンッ

八幡「痛っ!!」

悠里「ちょ、胡桃!?」

由紀「胡桃ちゃん!!止めて」ガシッ

胡桃「離せ由紀!!」

美紀「は、八幡先輩…」

八幡(そうだ、これで良い)

胡桃「ぜぇ…ぜぇ…」プルプル

由紀「止めて…こんなの、悲しいよ…」グスッ

八幡(これで全員、俺に幻滅したはずだ)

胡桃「………………」

胡桃「お前がそこまで言うのなら!!!」

八幡「……??」

胡桃「アタシ!お前に付いてく!!」

八幡「な、何を言って…」

八幡(嘘だろ、こんなはずじゃ)

胡桃「八幡をぶん殴ったおかげで、少し冷静になれた」

悠里「何を言ってるの…?」

胡桃「ははは、アタシとした事が…そうだよ、怒る必要なんて何一つ無かった」

胡桃「ありがとなリーさん、さっきはアタシの為に怒ってくれたんだろ?」

胡桃「でもよ、怒る必要はないぞ」

悠里「……?」

胡桃「八幡は本心であんな事を言ったんじゃない」

八幡「何をいってやがる、が、ガチで本心だ」

胡桃「じゃあ何で声が振るえてんだよ」

八幡「そ、それは…殴られ…て…」ツーッ

胡桃「それに何で泣いてるんだよ」

八幡「ぁ…しまっt…」ボロボロ

美紀「……なぜ本心じゃないって言い切れるんですか?」

胡桃「八幡と探索をしてる時に、色んな事を聞いたんだ」

八幡「……」

(回想)

胡桃「どんな活動してきたんだ?聞かせてくれよ」

八幡「やだ」

胡桃「聞かせてくれよ!」ズイッ

八幡「断る」

胡桃「頼むよ!」

八幡「……はぁぁ、わーったよ。どこから話そうか」

~~~

胡桃「あったま来た。相模って奴、もし生きてたら怒鳴る。そして、お前の中学時代の同級生はブッ飛ばしてやる」ピキピキ

八幡「おい止めろ」

~~~

胡桃「嘘の告白なんかあっちゃだめだ。そりゃ切れるわ」

胡桃「でも…お前を詳しく知ってりゃ、その場で怒鳴って終わってたけどな」

八幡「その場で…ね。まあその後も簡単には行かなかったんだがな」

~~~

胡桃「へー…部員を取り戻す為に、例のぶりっ子を強引に生徒会長に…」

八幡「でもあん時はよく空回りしててだな…」

(回想終了)

胡桃「誰よりも口が堅そうなのに、アタシに奉仕部での活動を打ち明けてくれたのは…少しはアタシを信用してくれたからだろ?」

八幡「ただの気の迷いだ。普段は関係者以外には絶対に語らん」

胡桃「八幡の奉仕部での活動は常人じゃ考えられない発想ばかりだった。理解できない事ばかりだ」

胡桃「でも話を聞いていて、いくつか確かな事が分かった」

胡桃「コイツは常に人のためを思って行動してる事だ。自分じゃ自己満足って言葉で片付けてるけどな」

胡桃「だからさっきアタシに言った言葉すら、本当は本心じゃないって信じられる」

胡桃「……それに八幡を見ろよ。みっともなく泣いてるじゃん」

八幡「……」フイッ

胡桃「人一倍優しい八幡だから、ある意味、あんな暴言を吐けたんじゃねぇか」

全員「……」

胡桃「ただ八幡は頭良いからな。もしかしたら『先輩の穴埋め』と言う点…悔しいが、多少は当たってるのかもしれない」

胡桃「でも『だれでも良い』なんて思ってない。これは本当だ」

胡桃「だからお前に見せてやるよ!アタシの本気を!覚悟を!」ススッ

胡桃「お前が他所では嫌われ者だろうと…そんなものは関係ない」スッ

全員「!?」

八幡「」

八幡「おい止めろ。何故ひざまずいてる。俺に忠誠のポーズなんか決めるな」

胡桃「メロスの演劇でアタシは、盗賊役兼任でセリヌの弟子役をやってる」

胡桃「多分、嫌われ事なんてないアタシだが盗賊みたいに嫌われても構わん」

胡桃「セリヌの弟子の様に、お前に忠義を掲げても良い」

胡桃「お前の為なら!世界中の人間を敵に回しても構わない!!学園生活部の部員以外な!」

八幡「……」

胡桃「……」ツーッ

胡桃「だから…側にいさせてくれ…」ボロボロ

胡桃「皆にもお願いがある!!」クルッ

胡桃「……」ススッ

由紀「ちょ、くるみちゃん!?」

美紀「土下座なんて止めてください!」

胡桃「……」

胡桃「アタシと一緒に!!この学校を退学してくれ!!」

悠里「!!?」

胡桃「頼む!!付いてきてくれ!!」

悠里「アナタ…自分で何を言ってるのか分かって…」

胡桃「八幡!!」

八幡「……」

胡桃「由紀の事は任せろ。絶対…絶対に負担をかけさせたりやしない」

胡桃「だから…皆でこの学校を退学する」

胡桃「いつか…色んな問題が解決したら、その時にまた高校に通おう!」

胡桃「アタシの一生のお願いを、ワガママを、頼む聞いてくれ!」

美紀「胡桃先輩…」

美紀(圭は言ってた…ただ生きてればそれで良いのかって…)

美紀「胡桃先輩!私も一緒に退学を…」

悠里「いや…」ガクガク

美紀「あ…」

悠里「いや、怖い…お外は…怖い…」ガクガク

胡桃「りーさんのことも!アタシと八幡で守るから!」

悠里「怖い…怖いわ…遠足ならまだしも…当ても無く長期間の放浪なんて…耐えられない…」ボロボロ

胡桃「だから!アタシと八幡で…!」

八幡「やめろ恵飛須沢」

八幡「若狭が怯えてる。そして泣いてるじゃねぇか」

悠里「ぅぅ…怖い…」ボロボロ

八幡「お前の提案は受け入れられない」

胡桃「……そんな。いや、いやだ!」ガクガク

胡桃「いやだ…そんなの…悲しいじゃねぇか…!」ボロボロ

八幡「……お前はこの学校に残れ。いつか『卒業』するまで。学園生活部を守ってろ」

八幡「俺は俺で本来、別に守らなきゃいけない奴らがいるから」

胡桃「イヤだ…ぅぅ…どっちも選べない…」ボロボロ

胡桃「頼むみんな…アタシのワガママ、意見に賛成してくれ…」ボロボロ

胡桃「八幡と離れるのだけはイヤだ…」ボロボロ

美紀「私は…どうすれば…」

八幡「……」

由紀「みんな、悲しむ必要ないよ」

悠里・美紀「え…」

胡桃「由紀…?」

八幡「……?」

由紀「私がみんなに、夢を与えるから」

由紀「夢はいつか覚めるって…演劇の時にも私、言ったよね?」

八幡「……それがどうした」

由紀「……」ガサゴソ

由紀「これ」

八幡「それは…」

胡桃「アタシと八幡がコンビニで拾った…風船…」

美紀「由紀先輩、まさかそれを使って…」

胡桃「風船…屋上で前やった…」

悠里「由紀ちゃん…」ボロボロ

由紀「お外が地獄と、怖いとか、ちょっとみんな大げさすぎだよ!」

由紀「でも、そんなに皆が苦しむなら…」

由紀「八幡くん地獄に行っちゃうなら、胡桃ちゃんが八幡君と一緒にいたいなら、りーさんが怯えるなら、みーくんが迷うなら…」

由紀「私がみんなに!夢も!希望も与える!」

由紀「何度でも!何回でも!私はみんなの夢を叶える!」

美紀「由紀先輩…」グスッ

八幡「……」

由紀「八幡君。私がアナタの夢を叶えます」

由紀「呪文を唱えてあげる…びびでばびでぶー!」

今日はここまで
後半戦だけど次回の投下分でも、まだまだ終わりません

いまさらだが平塚先生の言ってたゲームってメタルギア2か?

馬鹿ばっかり
SSなんだから乙だけでいいじゃん

>後半戦って校外なの?

めぐねえ「え、私の活躍は…?」
太郎丸「僕のスタイリッシュアクションシーンも無しなの?」
初期感染者用治療薬「ワイ、重要アイテム。忘れ去られる」

めぐねえ「え、私の活躍は…?」
太郎丸「僕のスタイリッシュアクションシーンも無しなの?」
初期感染者用治療薬「ワイ、重要アイテム。忘れ去られる」

うわー…ここ最近で1番臭いわ

twitterはやってないけど出来たので投下します

>>415
うん

>>396(訂正)

【演劇終了後・部室】

八幡「……」

悠里「みんな、お疲れ様」ニコッ

美紀「今日も疲れました」

由紀「でも楽しかったよね!」

美紀「ええ」ニコッ

八幡「……」

胡桃「シャワー浴び終えたら、その後はゲーム大会しようぜ!」

由紀「良いね、やろうやろう!」

美紀「体力が有り余ってますね」

悠里「ゲームしても良いけど、夜更かしはダメよ」

胡桃「分かってるよ…ん?」

八幡「……」

胡桃「八幡、どうしたんだ」

八幡「……」

美紀「どうしたんです?そんな悲しそうな表情で」

由紀「八幡くん…?」

悠里「具合が悪いの?」

八幡「……」ガソゴソ

バンッ

美紀・由紀・悠里「それは……」

胡桃「巡ヶ丘の地図…」

八幡「……」ススッ

キュッキュッ

胡桃「あっ……」ビクッ

胡桃(マーカーペンで…線を引いた…)ズキン

八幡「……」

八幡「ココまでだ」

>>405からの続きです

由紀「さあみんな!また風船を飛ばそう!」

胡桃「……風船の存在、すっかり忘れてたぜ」グシッ

美紀「はい…」グシッ

悠里「ええ、その前にお手紙を書かないとね」グシッ

八幡「……丈槍の提案を受け入れる。それじゃさっそく作るか」

美紀「え、今からですか!?もう夜中ですよ」

胡桃「まあ善は急げだしな。いまから手紙を書いた方が良いな!」

八幡「……」

八幡「お前達は前回、風船を何回飛ばしたんだ?」

悠里「え?」

美紀「何回って…勿論、一回ですが」

八幡「そうか。なら今回は1日3回飛ばすぞ」

美紀「さ、3回!?」

悠里「そんなに余りは無いのだけれど…」

八幡「昼間に外に行ってゴム風船を大量に入手してくる」

胡桃「その手があったか!よし、アタシも付き合うぜ」

八幡「早朝に外に出るから寝坊すんなよ」

胡桃「ああ。それで…お前に頼みがある」

八幡「?」

胡桃「風船を入手したらハトを捕獲したいから、手伝ってくれ」

悠里「また伝書鳩やるの?」

胡桃「勿論!」

由紀「アルノー鳩錦二世の仲間が増えるね!」

由紀「う~ん」

悠里「どうしたの?」

由紀「今回は手紙じゃなくて、広告にしよう!」

悠里「広告?」

由紀「うん!文化祭を開く事を知ってもらうために!」

胡桃「なるほど」

美紀「たしかに、なんで学園祭なんかやってるのか不思議でなりませんからね」

由紀「もちろん、学園生活部からのメッセージも書いてもらうからね!」

悠里「広告だけでなく、手紙としても役立つわね」

八幡「まあメッセージを残すのは賛成なんだが…これは何だ?」

由紀「ん?それは学園生活部の全員の似顔絵!私が書いたんだ!」

八幡「……」

由紀「どうしたの?」

八幡「お前、絵ヘッタクソだな」

胡桃「わかる」

由紀「にゃ、にゃにおー!」

美紀「でも雰囲気というか、全員の特徴を捉えてますよね」

胡桃「たしかに。特に八幡のこの目つきの悪さ、やさぐれ感は伝わってるな」

悠里「ふふふ。みんなニコニコしてるのに、一人だけちょっとグレてるわね」

八幡「人相が良くなくて悪かったな」

由紀「巡ヶ丘学院高等学校・文化祭…○月×日開催…っと」カキカキ

由紀「出来た!完成~!」

胡桃「んじゃ、後は一人一人がコメントを残すだけだな」

美紀「チラシの裏面に書きましょう」

~~~~

美紀「書き終えました」

悠里「さあ、最後は八幡くんよ」

八幡「……」スッ

胡桃「言い残しが無いように、ビッチシ書けよ!」

八幡「……」カキカキ

『3日間待ってやる』by比企谷八幡

全員「!?」

胡桃「それだけで良いのかよ!?」

美紀「いくらなんでも短すぎじゃ…」

八幡「その広告に書かれてる特徴的な似顔絵で、俺が巡ヶ丘高校で暮らしてるのは充分伝わるハズだ」

悠里「ふふふ、しかし見れば見るほど、本当に浮いてるわね」

胡桃「はは、八幡以外はほのぼのしてるのにな」

八幡「アイツらならこの絵を見て、一発で俺だと理解するはずだ」

【早朝4時】

八幡「ようやく光が見えた」

由紀「ね、眠いよぉ…」

美紀「何も夜明けじゃなくても…」

八幡「眠いのは俺もだ。耐えろ」

悠里「それじゃ準備はいい?」

胡桃「いくぞ!せーの!」

由紀「待って!」

全員「?」

由紀「合図を出します。みんな私の言葉に続いてください」

八幡「おい。まさかアレを言うのか」

胡桃「まあ…言霊みたいなもんだな」

悠里「フフフ。良いんじゃない?せっかく飛ばすんだしムードは大事にしないと」

八幡「言霊…か」

由紀「それではいきまーーす」

由紀「魔法の呪文、不思議な言葉!」

由紀「びびでばびでぶー!」パッ

悠里・美紀・胡桃・八幡「ビビディバビディブー」パッ

由紀「わぁぁぁ…!」

悠里「あの時は昼間だったけれど、夜明けと共に飛ばすのも悪くないわね」

美紀「ええ」

胡桃「メッセージ、届くといいな」

八幡「ああ」

八幡(まだ夜明けで辺りは暗い。それでも太陽の光に向かって風船は飛んでいく)

八幡(世の中は絶望に満ちている。それでも太陽に向かい解き放たれたこの風船と広告に、希望を託す事にした)

八幡(タイムリミットは3日間)

【午前中・繁華街】

胡桃「だいぶ手に入れたな」

八幡「これだけ風船を入手すれば充分だろ」

胡桃「そうだな。これだけの数の風船を膨らましたら、さすがにヘリウムガスも底を尽きるかもな」

八幡「よし、あとは学校に戻ってお前の鳩確保を手伝えば良いんだな?」

胡桃「ああ。ちょっと苦労するが頼む」

八幡「おう」

胡桃「……」

胡桃「なあ」

八幡「ん?」

胡桃「タイムリミットは3日までしか待てないのか?」

八幡「風船を飛ばし続け、3日経っても来なけりゃ一定範囲内にはいないって事になるだろ」

胡桃「せめて2週間待っても良いんじゃ」

八幡「ダメだ。そんなに待っても意味なんて無い」

八幡「……それにそんなに待ってたら。学校を去るのに躊躇してしまう」

胡桃「……」

胡桃「あのさ」

八幡「ん?」

胡桃「昨日は殴ってゴメン」

八幡「……」

八幡「殴られるような発言した俺に原因がある。お前が謝る必要は無い」

胡桃「で、でもよ」

八幡「それに殴られた所は肩だ。腹パンとか顔面じゃないし問題ない」

胡桃「あ、アザとか残ってないか?」

八幡「あの程度のパンチで残るわけないだろ。いくらお前が強いからって、俺はそこまで柔じゃない」

胡桃「でも痛がってたし」

八幡「まあ痛かったのは否定できんが」

胡桃「ごめん」ウルウル

八幡「え、いやだから、な、泣くなよ」

胡桃「でも……」ボロボロ

八幡「俺はお前を心を傷つけた。お前は俺にパンチした。それでもう話は終わりだ」

八幡「……俺も悪かった。この間は言い過ぎた」

【学校に帰った後・屋上】

八幡「しかし、よくこんな方法思いついたな」クイッ

胡桃「へへへ、凄いだろ」クイッ

ハト達「ポォォォ!」

胡桃「よし、二匹ゲットだぜ」

ガチャッ

由紀「二人とも!おまたせ!」

胡桃「お、来たか!」

美紀「チラシの印刷は完了しました」

悠里「風船も沢山膨らませたわ。膨らませた風船は教室にあるから」

八幡「教室と屋上を往復するようだな」

悠里「そうね」

~~~~

由紀「それでは本日第二回目の風船飛ばしを始めまーす!」

胡桃「さあ行ってこい。アルノー鳩錦3世!4世!」

アルノー鳩錦3世・4世「ポポ、クルッポ」

由紀「魔法の呪文、不思議な言葉!」

由紀「びびでばびでぶー!」パッ

悠里・美紀・胡桃・八幡「ビビディバビディブー」パッ

アルノー鳩錦3世・4世「ポォォ~」バサバサッ

【昼間・部室】

八幡「……」ボーッ

由紀「八幡君が昼間に部室にいるって珍しいよね」

美紀「この時間帯はいつも外にいますからね」

胡桃「こんな晴天の日に部室にいるのもなんか懐かしいな…で、八幡。もう探索は良いのか?」

八幡「一通り見回ったしな。すれ違いにならんよう俺はここに留まる。風船も沢山持ってきたしな」

八幡「やれる事は全てやった。あとは風船を飛ばし続け、3日後までにアイツらが来るかどうかだ」

胡桃「3日後までに…そうか」ズキッ

由紀「ふぁぁ…眠いよ…」

美紀「そういえば寝てませんね私達」

悠里「夕方まで寝室で仮眠でもしましょう」

八幡「昼寝なんて久しぶりだな。ずっと前は当たり前の様にしてたのにな」

【夕方】

八幡(仮眠から目覚めた俺達は、アルノー鳩錦一族を増やした後、風船とアルノー達を解き放つ)

由紀「びびでばびでぶー!」パッ

悠里・美紀・胡桃・八幡「ビビディバビディブー」パッ

八幡「……」

悠里「夕日がキレイね」

美紀「そうですね」

胡桃「んで由紀、なんで演劇に使う魔女の格好してるんだ?」

由紀「えへへへ。私ね、結構気に入ってるんだこの格好」クルクル

八幡「急に踊りだしやがった。つーかさっきから何を隠し持ってる?」

由紀「ふっふっふっ。じゃじゃーん!」

八幡「それは拡声器と魔法のスティック…」

由紀「さあ!屋上から、夢と希望を届けます。スーッ…」

由紀「さらかどぅら~めちかぶら~びびでばびでぶー。歌え踊れ楽しく、びびでばびでぶー!」クルクル

由紀「すべてこの世は~嫌なことな~ど、さらり捨てて朗らか~に、びびでばびでぶー!」クルクル

由紀「さあみんなも一緒に!2番を歌おう!」

悠里「ふふふ、由紀ちゃんったら」

美紀「本当、先輩は無邪気ですね」

八幡「おいおい、マジで歌うのかよ…」

胡桃「よーし二番だな!由紀に続け!」

全員「サラカドゥラ~メチカブラ~ビビディバビディブー。さあさみんな元気に、ビビディバビディブー」

八幡(俺は喧騒な空気やノリは大っ嫌いだ)

八幡(……だがこんな賑やか青春も悪くない。コイツらとなら)

全員「すべてこの世は~嫌なことな~ど、さらり捨てて朗らか~に」

由紀「びびでばびでぶー!」クルクル

八幡(チラシ付きの風船とアルノー鳩錦一族を解き放ち、そして屋上で歌い続ける時間は、あっと言う間に過ぎて行った)

【3日目の夕方】

由紀「歌え踊れ陽気に、びびでばびでぶー!」クルクル

アルノー鳩錦12世~14世「ポォォッ」バサバサッ

胡桃「これで風船ストックもゼロ。アルノー鳩錦一族も全羽解放した」

八幡「……これで完全にやれる事は全部やり尽くした」

美紀「後は願うばかりですね…」

悠里「さあ、夕食の準備をしましょう」

八幡「……ああ」

八幡「……」

悠里「胡桃、行くわよ」

胡桃「ああ、先に行っててくれ」

美紀「私もしばらく部室に行きます」

悠里「そう、それじゃ待ってるわね」

ガチャッ

胡桃「……」

美紀「圭も…来ないかな…」

胡桃「タイムリミットまで約6時間って所かな」

胡桃「圭はまだ望みはあるかもしれんが…八幡の知り合いはどうなるんだろ…」

美紀「……こうも音沙汰がないと不安ですよね」

胡桃「なあ美紀」

美紀「はい、なんでしょう?」

胡桃「パンデミックなんて無ければ良かったなんて考えた事あるか?」

美紀「それは皆考えてるんじゃないですか?」

胡桃「だよな。うんアタシも」

胡桃「あの時、パンデミックなんて起こらなければ…先輩だって生きていたし、色んな人が生きていられた」

胡桃「でも…美紀や由紀との出会いは無かった事になる」

美紀「……で、でも学校は一緒だから」

胡桃「そうだな。由紀や美紀とは何らかの過程で出会ってたかも知れない。アタシとりーさんは知り合いだったし…圭もいれば5人でいられたかも知れない」

胡桃「それでも、八幡との出会いだけは…」

美紀「……っ」

胡桃「……」

美紀「で、でも!もしかしたら将来出会ってたかも知れないじゃないですか!何らかの形で!」

胡桃「運が良ければな」

胡桃「でも高校で出会うことは無かったろ。絶対」

美紀「……」

胡桃「パンデミックなんか起こらなきゃ良い。夢なら覚めてほしいって思う。時間が巻き戻せるなら戻したい」

胡桃「でもお前や八幡との出会いを無かった事にもしたくない」

美紀「……気持ちは分かりますが、そんな事を言ったらキリがないですよ」

美紀「らしくないですよ」

胡桃「……この間さ、不本意とはいえ八幡が、あたし達を突き放す為に言ったあの言葉が脳裏に残っててな」

――誰でも良かったんだろ?

胡桃「……」

美紀「まだ例の先輩の事、未練が残ってるんですか?」

胡桃「……先輩に対する想いはもう清算はついてる。悔やんだって先輩が生き返る訳じゃないし」

胡桃「でも…複雑だ。上手くいえないけど」

胡桃「未練は無いけど…何ていうかこう…」

胡桃「……」

胡桃「あっ!!で、でででも!べ、べべべ別に今は八幡の事が好きとか!そんな意味で言ってる訳じゃないからな!」

美紀「……今さら意地を張ったってもう遅いですよ?」

胡桃「ど、どどど、どういう意味だよ!」カァァァ

美紀「もうとっくに気付いてますよ。由紀先輩ですら。八幡先輩本人は知りませんが」

胡桃「~~~っ///」カァァァ

美紀「それで、もし八幡先輩が出て行く事になったら、どうするんですか?」

胡桃「……分からない。アタシはどうすれば良いのか」

【深夜・部室】

カチッ…カチッ…

八幡(机の上には、目覚まし時計が置かれている)

カチッ…カチッ…

由紀「……」

悠里「……」

美紀「……」

胡桃「……」

カチッ…カチッ…


八幡(時計の針は、あと1分で12時となる)

カチッ…カチッ…

八幡「……」

由紀・悠里・美紀・胡桃「……」

オハヨー、ネボケ、アサダゾー!

全員「……」

オハヨー、ネボケ、アサダゾー!
オハヨー、ネボケ、アサダゾー!

八幡(やかましく憎たらしい音声が、部室充に、そして脳内に残酷に響く)

胡桃「……」プルプル

美紀「ぅ…ぅぅ…」グスッ

由紀「……」グスッ

悠里「ぅぅ…」ボロボロ

八幡「……」ゴソソッ

八幡「一応、形だけでも」ススッ

悠里「あ…退部届け…」

八幡「俺がここの学校の部室にいたって事で、気が向いたら取って置いてくれ」

八幡「世話になった。色々協力してくれて感謝してる」

八幡「んじゃ、俺は地獄に戻るわ」

ガシッ

胡桃「ぅぅぅ…くっ…ぅぅ…」ボロボロ

八幡「頼む、離してくれ」

胡桃「く…ぅぅ…」ボロボロ

由紀「……」シュバッ

八幡「丈槍、おれの目の前に立って何をする気だ」

美紀「……」シュバッ

八幡「直樹までなんだよ。いくら戸塚に似ていても俺は出て行くぞ」

由紀「でぃーふぇんす!でぃーふぇんす!」ピョンピョン

美紀「ディーフェンス!ディーフェンス!」ピョンピョン

八幡「またそれかよ。出会った時からまるで成長してない」

美紀「先輩!せめて夜明けまで!夜明けまで待ちましょうよ!」

八幡「……」

ピピーッ!

悠里「タイムアウト!延長戦に続きます!」ピピーッ

八幡「……いつホイッスルなんて用意したんだよ」

胡桃「八幡…」ウルウル

八幡「……わかった。夜明けまでな」

カチッ…カチッ…

八幡「……」

由紀「……」

悠里「……」

美紀「……」

胡桃「……」

カチッ…カチッ…

八幡(全員、静かに窓の方を眺める)

八幡(まだ暗いが時間は刻一刻と進んでいく)

カチッ…カチッ…

八幡(部屋中が暗い空気に満ちている)

由紀「……」カラッ

悠里「どうしたの由紀ちゃん?窓を開けて…換気?」

由紀「私は諦めない。みんなに夢と希望を与える魔女だから!」ススッ

八幡「拡声器にスティック…おい、まさか」

八幡(奴らはだいぶ始末したし、バリケードも強化してあるから、問題は無いが…)

由紀「さらかどぅら~めちかぶら~びびでばびでぶー。歌え踊れ楽しく、びびでばびでぶー!」クルクル

胡桃「由紀…」

美紀「由紀先輩…」

カチッ…カチッ…

由紀「すべてこの世は~嫌なことな~ど、さらり捨てて朗らか~に」クルクル

八幡「……」ガタッ

由紀「びびでばびでぶー!」クルクル

八幡「……」ピョイッ

由紀「あっ…拡声器とスティックを返してー!」ピョンピョン

八幡「夢の時間は終わりだ。外を見てみろ」

由紀「ふぇ?あっ……」

パァァァァ…

胡桃「」プルプル

悠里「……」グスッ

美紀「……夢の時間は終わりました。由紀先輩」ツーッ

由紀「……っ」ウルウル

八幡「夢から覚めて非常なる現実。絶望の夜明けだ」

八幡「……」

八幡「お前らほど、俺を心配し引き止めた奴らはいない」

八幡「出来ることなら守ってやりたいが不可能だ。だから恵飛須沢はここに残れ」

胡桃「……っ」ボロボロ

悠里「分かったわ八幡君。そこまで言うなら…もう…」ボロボロ

美紀「八幡先輩…」ボロボロ

八幡「今度こそ、じゃあな」

八幡(耐えろ。我慢しろ。校外に出るまでは。今泣いたら躊躇してしまう)コツコツ

八幡「……」ググッ

コツ…コツ…

由紀「?」

コツ…コツ…

由紀「ねえ、待って」

八幡(絶対に振り返るな)テクテク

由紀「何か音がする」

八幡「」ビクッ

悠里「え…」グシッ

美紀「音…?」グシッ

タッタッタッタッ

胡桃「本当だ…足音だ…」グシッ

タッタッタッタッ

八幡「足…音…?」

「頑張って!もう少しだよ!」

「ぜぇ…ぜぇ…分かってるわ…自身の力の無さは…言い訳しないつもりよ…」

「もう少しで『光』が見えた辺りに付くよ」

「ぜぇ…ぜぇ…そうね。『歌』が聞こえたのもこの学校からだものね」

タッタッタッタッ

八幡「……っ!!!」

ドクンッ

八幡(心臓が大きく飛び跳ねた)

胡桃「誰かいるぞ…!?」

悠里「ま、まさか」

美紀「本当に…来た…」

由紀「おおーい!こっちだよーー!」

「いま、声が…それにあっちに人が…」

「うん、誰かいる……」

「あっ!!!」

ドクンッ

八幡(また心臓が飛び跳ねた)

コツコツ…コツコツ…

八幡(前方にいる誰かは、ゆっくりとした歩調でこちらに向かう)

タッタッタッタッ

八幡(やがて意を決したように走ってくる)

八幡(甲高い声、サイドのお団子ヘアー…そのシルエットには見覚えがあり)

「ヒッキーーーーー!!!」

八幡(その姿と形は、俺の視界にハッキリと現れる。彼女の片手にはチラシが握られている)

ダキッ

八幡「……っ!!」

八幡(彼女は俺の片腕に抱きつき、そのまま顔を埋める)

八幡「……」

結衣「やっと見つけた…ヒッキー…」ボロボロ

八幡(信じられない状況に動揺し、うまく言葉が出てこない。口をパクパクとさせる事しかできない)

「比企谷君…」

八幡「……っ」

ドクンッ

「……」コツコツ

八幡(またしても視界に、見覚えのあるシルエットが)

八幡(腰まで伸びているストレートロングヘアー。歩き方一つ見ても気品がある)

「……」コツコツ

「……」ピタッ
八幡(やがて、その揺れる黒髪と表情が、ハッキリと見えるところまで来て、彼女はピタリと止まる)

八幡(彼女の片手にもやはり、チラシが握られていた)

「……」ツーッ

八幡「……」

八幡(彼女は瞳に浮かべていた涙を静かに流すと、再び歩き始める)

「……久しぶりね」コツコツ

八幡「……」パクパク

八幡(動揺してるせいで、まだ声が上手く出てこない。変わりに鼓動はどんどん速くなる)

「しばらく見ないうちに随分と目が淀んでしまったのね。もしかして既に手遅れだったかしら?気の毒ね」

八幡「うっせぇ、コレは元からだ」

八幡(懐かしいやり取りに、やっと声がでた)

「比企谷君…」グスッ

八幡(黒髪の彼女も、俺のもう片方の腕に両手でギュッと掴み、頭部をそっと預ける)

雪乃「無事で良かったわ…」ボロボロ

八幡「……」ツーッ

八幡(彼女達の生存を改めて確認すると、目から水滴が垂れる)ボロボロ

雪乃・結衣「ぅぅ…ぅ…」ボロボロ

八幡「……」ボロボロ

八幡「丈槍」チラッ

由紀「うん」

八幡「確かに、夢と希望とやらを頂いた」


絶望の夜明けは、希望の夜明けになる

今日はここまで

いまから投下します

>>448(訂正)

八幡(チラシ付きの風船とアルノー鳩錦一族を解き放ち、そして屋上で歌い続ける時間は、あっと言う間に過ぎて行った)

【3日目の夕方】

由紀「歌え踊れ陽気に、びびでばびでぶー!」クルクル

アルノー鳩錦12世~14世「ポォォッ」バサバサッ

胡桃「これで風船ストックもゼロ。アルノー鳩錦一族も全羽解放した」

八幡「……これで完全にやれる事は全部やり尽くした」

美紀「後は願うばかりですね…」

悠里「さあ、夕食の準備をしましょう」

八幡「……ああ」

八幡「……」

悠里「胡桃、行くわよ」

胡桃「ああ、先に行っててくれ」

美紀「私もしばらく屋上にいますので、先に行っててください」

悠里「そう、それじゃ待ってるわね」

ガチャッ

胡桃「……」

美紀「圭も…来ないかな…」

胡桃「タイムリミットまで約6時間って所かな」

胡桃「圭はまだ望みはあるかもしれんが…八幡の知り合いはどうなるんだろ…」

美紀「……こうも音沙汰がないと不安ですよね」

胡桃「なあ美紀」

美紀「はい、なんでしょう?」

胡桃「パンデミックなんて無ければ良かったなんて考えた事あるか?」

美紀「それは皆考えてるんじゃないですか?」

>>450(訂正)

【深夜・部室】

カチッ…カチッ…

八幡(机の上には目覚まし時計が置かれている)

カチッ…カチッ…

由紀「……」

悠里「……」

美紀「……」

胡桃「……」

カチッ…カチッ…

八幡(時計の針は、あと1分で12時となる)

カチッ…カチッ…

八幡「……」

由紀・悠里・美紀・胡桃「……」

オハヨー、ネボケ、アサダゾー!

全員「……」

オハヨー、ネボケ、アサダゾー!
オハヨー、ネボケ、アサダゾー!

八幡(やかましく憎たらしい音声が、部室中に、そして脳内に残酷に響く)

胡桃「……」プルプル

美紀「ぅ…ぅぅ…」グスッ

由紀「……」グスッ

悠里「ぅぅ…」ボロボロ

>>457(訂正)

「比企谷君…」

八幡「……っ」

ドクンッ

「……」コツコツ

八幡(またしても視界に、見覚えのあるシルエットが)

八幡(腰まで伸びているストレートロングヘアー。歩き方一つ見ても気品がある)

「……」コツコツ

「……」ピタッ

八幡(やがて、その揺れる黒髪と表情が、ハッキリと見えるところまで来て、彼女はピタリと止まる)

八幡(彼女の片手にもやはり、チラシが握られていた)

「……」ツーッ

八幡「……」

八幡(彼女は瞳に浮かべていた涙を静かに流すと、再び歩き始める)

「久しぶりね」コツコツ

八幡「……」パクパク

八幡(動揺してるせいで、まだ声が上手く出てこない。変わりに鼓動はどんどん速くなる)

「しばらく見ないうちに随分と目が淀んでしまったのね。もしかして既に手遅れだったかしら?気の毒ね」

八幡「うっせぇ、コレは元からだ」

八幡(懐かしいやり取りに、やっと声がでた)

「比企谷君…」グスッ

八幡(黒髪の彼女も、俺のもう片方の腕に両手でギュッと掴み、頭部をそっと預ける)

雪乃「無事で良かったわ…」ボロボロ

八幡「……」ツーッ

八幡(彼女達の生存を改めて確認すると、目から水滴が垂れる)ボロボロ

雪乃・結衣「ぅぅ…ぅ…」ボロボロ

八幡「……」

八幡「丈槍」チラッ

由紀「うん」

八幡「確かに、夢と希望とやらを頂いた」


絶望の夜明けは、希望の夜明けに変わる

では>>457からの続きです

【部室】

八幡「……」ヌボーッ

ガララッ

雪乃「失礼するわ」

悠里「ふふふ。久しぶりのシャワーは気持ち良かったかしら?」

雪乃「驚いたわ。まさかシャワーが浴びれるなんて」

結衣「うんうん、さっぱりしたよ!」

胡桃「随分と長いシャワーだったな。まあ無理も無いか」

美紀「私もココに来たばかりの頃、シャワーが浴びれる事が分かった時は驚きました」

由紀「わぁぁ…キレイな黒髪!長くて素敵~!」サラサラ

雪乃「ちょ…あまり触らないで欲しいのだけれど…」

結衣「本当、キレイな髪だよね~」サラサラ

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さんまで…や、やめなさい…」

胡桃「りーさんくらい長そうだな」

悠里「胡桃だって髪下ろせば同じくらいの長さがあるんじゃない?」

美紀「私も伸ばそうかな…」

八幡「……」ヌボーッ

雪乃「で、そこの辛うじて理性が残ってるゾンビ谷君の調子はどうかしら?」

胡桃「理性あるゾンビって…はははは…」

胡桃(アイツが例の部長で良いんだよな?噂では聞いてたが、毒舌はマジだったんだな…)

由紀「二人と再会してから、八幡くんはずっとこんな調子だね」

八幡「……」ヌボーッ

胡桃「八幡、もうすぐ朝食の時間だぞ」ユサユサ

八幡「……ああ」

由紀「八幡くん、なんかお爺ちゃんみたいになってるよ」

悠里「積もる話もあるでしょう。そろそろ起きたら?」

八幡「……」ヌボーッ

雪乃「まったく……あの、ティーポットを借りても良いかしら?」

悠里「ええ…お茶をいれるの?」

雪乃「コレを飲めば少しは放心状態から抜け出せると思ってね」

~~~

全員「おおお…」

雪乃「……」

コポポポ…

美紀「様になってる…」

由紀「なんか、クールビューティーって感じ!」

胡桃「紅茶の香りが部室中に…」

八幡「」ビクッ

雪乃「どうぞ」コトッ

八幡「……」

八幡「……」ツーッ

雪乃「え!?」

全員「な、泣いてる…」

八幡「懐かしい…」ズズッ

八幡「はぁぁ…うめぇぇ…」

八幡「あ、そういえばこれ」ススッ

雪乃「リボン…」

八幡「台風の日に、偶然見つけてな」

雪乃「……奇遇ね、丁度台風の日にリボンを無くしていたわ」

八幡「やっぱお前のか?」

雪乃「絶対に私の物とは言い切れないけど…私が身に付けてるのとそっくりね」

雪乃「だから貰っておくわ。ありがとう」ススッ

八幡「おう」

雪乃「……」ギュギュッ

胡桃「そういうリボンの結び方もあるのか…アタシも髪下ろしてやってみようかな…」サワッ

悠里「そういえば私達、自己紹介がまだだったわね」

雪乃「コチラこそ…名乗らずに、進められるままとは言えシャワーをお借りして申し訳ないわ」

八幡(奉仕部と学園生活部は互いに自己紹介をし合っている…俺は、未だに気が抜けてしまって…脳が上手く回転してない)

~~~~~

結衣「あ、あのー」

全員「?」

結衣「さっきから気になってたんだけどさ…えっと、彩ちゃんだよね…?」

美紀「え?」

結衣「無事でよかった!でも、ちょっとだけ声変わった?」

美紀「え、えと…?」

雪乃「戸塚君。本当に無事で何よりだわ。ただ…その…」

美紀「あ…」

胡桃・悠里・由紀「ああ~…」

結衣「え、えっとさ!彩ちゃんのセーラー服姿、なかなか似合ってると思うよ?あ、あとガーターベルトも!うん、実にセクシーだね!」

雪乃「でも驚いたわ…いつも校内では学校指定のジャージを着ていたあなたが…そんな格好をするとは…」

雪乃「ま、まあ…しゅ、趣味は人それぞれだし?何よりも似合っているわ。こ、こんな状況だしストレスで特殊な趣味に走るのも無理ないと思うわ」

結衣「う、うん…うんうん!彩ちゃんとっても似合ってるよ!とっても素敵な趣味だと思うな~ヒッキーがやったらキモいけど」

胡桃・悠里・由紀「……??」

美紀「あのー」

結衣「ん?どうしたの」

美紀「申し遅れました。私は巡ヶ丘高校の2年、直樹美紀です」ペコッ

雪乃・結衣「」

美紀「その…戸塚さんの話は八幡先輩から散々聞かされてましたので…知ってはいます」

雪乃「ひ…人違いですって…?」

美紀「はい」

結衣「うっそ!?超ありえないしー!どう見ても彩ちゃんにしか見えないし!?」

胡桃「他のやつまで勘違いさせるとは…どんだけそっくりなんだよ」

悠里「……」

悠里(気がかりね…制服を着てる事がそんなに驚く事なのかしら。ジャージをいつも着てたといっても、二人の反応が妙だったわ)

由紀「ちょっとおトイレいってくるね」

悠里「行ってらっしゃい」

八幡「お前ら、よくたった二人でここまで来れたな」

雪乃「ええ、戦闘面では二人で協力したから」

雪乃「最初に先陣を切ったのは由比ヶ浜さんでね…」

八幡「意外だな」

結衣「えへへへ、火事場の馬鹿力って奴で乗り越えてきたよ!」

八幡「ほう。バカのお前がその言葉を知ってるとは」

結衣「バカ言うなし!旅を初めたばかりの頃は、ゆきのんが怯えてて危なかったから…アタシが守らなきゃってなって…」

雪乃「ぁ…ぅ…」カァァ

八幡「あ、そっか。雪ノ下は怖いのとか苦手そうだもんな」

結衣「しばらくはシャベルでゆきのんを守ってたけど…だんだんゆきのんも闘うようになれて」

結衣「今じゃアタシよりも強いよ!」

八幡「ふーん、所でさっきから気になってたんだが」

八幡「雪ノ下、なぜ腰と背中に日本刀を帯刀してるんだ」

雪乃「勿論、自衛の為よ」チャキン

胡桃「おおぉ!カッケェー!」

雪乃「私、体力に自信が無いから、シャベルだとゾンビを一発で始末できないし、体力が減っていく一方なの」

八幡「だから日本刀で闘ってるのか。普通は簡単には使いこなせないんだがな」

悠里「闘える人が二人も増えたわね」

ガララッ

由紀「ただいまー!」

美紀「由紀先輩も帰ってきたし、そろそろ朝食にしましょう」

【朝食の時間】

結衣「わぁぁ…スパゲッティだ…!!」

雪乃「ここは施設の機能だけでなく、食料の備蓄もしっかりしてるわね」

悠里「ええ。でも備蓄を増やすのに大きく貢献したのは胡桃と八幡君のおかげよ」

結衣「ヒッキーとくるみんが…?」

胡桃「ああ。八幡がこの学校を拠点にして、巡ヶ丘での探索を手伝っててな。そのついでに食料の確保もしてた」

胡桃「八幡はお前たちを死ぬほど心配してたぜ」

雪乃「そ、そう…彼が…」ドキッ

結衣「そ、そっか…えへ、えへへへへ///」

胡桃(ん?)ピクッ

由紀「台風の日もカッパ来てお外に出てたもんね」

美紀「八幡先輩はスケベで変な人ですが、とても尊敬してます」

結衣「そっか…ヒッキー、あたし達の為に…」グスッ

雪乃「彼らしい…優しさね…」ドキッ

胡桃「……」モヤモヤ

八幡「……」ズルズル

悠里「八幡君、音を立てながら食べるのはお行儀が良く無いわ」

胡桃「ははは…なんかもう、完全に気が抜けちまってるな…」

八幡「……」ズルズル

美紀「静かに食べましょう八幡先輩」

八幡「へいへい」

雪乃「そういえば比企谷君に渡す物が…」ガサッ

八幡「……?」

雪乃「どうぞ」ススッ

八幡「黒のカーディガン…?」ススッ

悠里「あら、似合うじゃない」

八幡「しっかり出来てるな。デザインも良い。服屋で拾ってきたのか?」

雪乃「いえ、川崎さんが編んだ物よ。比企谷君に渡すよう頼まれてて」

八幡「っ!?アイツ生きてたのか…」

雪乃「御両親を失ってしまったけれど…弟さんと妹さんの3人である場所に避難してるわ」

八幡「……そうか」

結衣「もう一つあるよ、はい!」ススッ

八幡「赤いマフラー…」

結衣「それはね、いろちゃんからのプレゼント」

八幡「一色も生きてたか…」

雪乃「葉山君たちと避難してるわ」

八幡「……そうか、あの野朗も生きてたか」

八幡「ん?何だよこのマフラー。名前があるんだが」

雪乃「ええ、白い文字でアナタの名前があるわね」

八幡「……なあ、気になるんだけどよ」

雪乃・結衣「?」

八幡「この『Hatiman』と書かれてる所だが…Haとtiの間に、×印と重ねてyaと書かれているんだが…これまさか…」

雪乃「ええ、元々は葉山君に渡す物だったみたい」

八幡「途中で気が変わって俺に渡す事にしたのか」

結衣「なんか、いろはちゃんらしいよね」

八幡「渡す相手を変え、作り直さず、しかもあえて適当な修正を意図的に残しておく…変わってないなアイツ」

胡桃「……」ムスッ

八幡「ん?なんだよ恵飛須沢」

胡桃「お前本当にボッチだったのかよ!!」

八幡「ああそうだよ。何を怒ってんだよ?」

胡桃「お、おお、怒ってねぇーよ!バーカ!///」カァァ

【食後】

八幡「……」ヌボーッ

雪乃「比企谷君、いい加減にゾンビごっこは終わりにしなさい」

八幡「……」ヌボーッ

胡桃「なんか久しぶりにまったりできる気分だな」

悠里「八幡君も大切な人と再会できたものね」

サブレ「きゃんきゃん!」

太郎丸「わんわん!」

胡桃「コイツらもさっそく仲良しになってるし」

結衣「ユッキー!太郎丸可愛いね!」ナデナデ

由紀「結衣ちゃん!サブレも可愛いね!」ナデナデ

美紀「結衣先輩と由紀先輩を並んでみてると、姉妹みたいに見えますね」

悠里「確かに、ちょっと似てるものね」

胡桃(胸は真逆だけどな…)

八幡「……」ヌボーッ

八幡(雪ノ下も由比ヶ浜も見付かった…本当に良かった…)

八幡(これでもう…心配事はなくなった…)

八幡(……………)

八幡(心配事が無くなった…?本当に…?)ビクッ

八幡「あ」

全員「?」

八幡「小町…戸塚…」

胡桃「あ…」

美紀「そうだ…私にそっくりの戸塚さんと、妹の小町さんが。まだ全員見付かってなかったんだった」

八幡「お前ら…戸塚と小町は見かけたか?」

雪乃「いえ…残念だけど、見てないわ」

八幡「……」プルプルプル

胡桃「やっぱり…行っちまうのか?」ウルウル

雪乃「比企谷君、もし探索するのなら私と由比ヶ浜さんも行くわ」

八幡「ダメだ」

結衣「ダメって…あたし達はずっとヒッキーの事探してたんだよ!」

八幡「でもダメだ」

雪乃「どうして…」

八幡「ここは安全だし、食料もある」

八幡「それに……」

八幡(材木座や平塚先生の二の舞にはさせない)

雪乃「それに…なにかしら?」

八幡「……お前達に話しておかないといけない事がある」

雪乃・結衣「……?」

八幡「スーッ……」

「待て比企谷」

八幡「!?」ビクッ

「焦るな。待つことも大事だ」

八幡「せ、先生!?」バッ

八幡「…………」

雪乃「比企谷君…?」

結衣「ヒッキー?どうしたの?」

八幡(窓のほうを見るが誰もいない…)

八幡「……気のせいか?」

結衣「ねえヒッキー、先生がどうしたの?」

八幡「……ああ、良く聞け。俺がこの学校に辿り着くまでの話を」

八幡「丈槍…そういやさっき佐倉先生が呼んでた」

由紀「え………うん、わかった」タタッ

雪乃「佐倉先生…?」

八幡「丈槍のことについても並行して説明する」

八幡「……っという訳だ」

雪乃「そ、そんな…」グスッ

結衣「ぅぅ…ぅ…」ボロボロ

八幡「すまん。だからお前らまで危険に晒す訳にはいかん」

八幡「だから、行くのは守りきれなかった俺だけで充分だ」

胡桃「ま、待てよ…」グイッ

悠里「もう充分よ八幡君、充分頑張ったから」

美紀「そうですよ!だれも先輩を責めませんよ!」

八幡「……それでも、数少ない友達と、大事な妹だからな」

胡桃「あ、おい…!」

八幡「……」テクテク

雪乃「行くわよ由比ヶ浜さん」

結衣「うん!おいでサブレ!」

八幡「ダメだ。もう失うのは沢山だ」

雪乃・結衣「っ!」

八幡「いくらお前らが外での修羅場を潜り抜けてきたとしても、あの平塚先生ですら生き残れなかった」

八幡「……」

――待て比企谷。焦るな。待つことも大事だ

八幡「……」ビクッ

八幡「……」

八幡「なあ、お前達」

雪乃・結衣「?」

八幡「すまん、前言撤回していいか?」

雪乃・結衣「え」

悠里・美紀・胡桃「え?」

八幡「暫く…待つことにする」

胡桃「ほ、本当か!?」

美紀「どうしたんですか急に!」

八幡「……待つことも大事だって。前に誰かに言われた気がしてな」

雪乃・結衣「…??」

胡桃「と、とにかく残ってくれるんだよな?」

八幡「ああ…特に期限は決まってない。気が済むまで」

【夕方・部室】

雪乃「そういえば丈槍さんが帰ってこないわね」

悠里「めぐねえと『補習』をしてるのかもしれないわ」

雪乃「そう…」

八幡「……」

八幡(あの声は何だったんだろうか)

八幡(丈槍ほどじゃないが、俺もたまに幻影を見ていた)

八幡(今思えば多分、俺もドコかで壊れていた部分があったのだろう)

八幡(だがあの感覚はいつもと違う。上手く表現できんが)

八幡(あれじゃ…まるで俺は…)

ガララッ

由紀「ぜぇぜぇ…」

胡桃「おお、やっと帰ってきたか…ってどうした。息切れ起こして」

由紀「八幡くん!お客さんだよ!」

八幡「え……」

由紀「早く廊下に出て!あとみーくんも早く!」

美紀「え、私?」

【廊下】

由紀「おおーい!早く早く!!」

八幡「……」

「お兄ちゃーん!!」

八幡「っ!!!」ビクッ

八幡(八重歯に飛び跳ねたアホ毛…そのシルエットは夕日に映っていた為、すぐに誰かわかった)

小町「お兄ちゃん…お兄ちゃん!!」ダキッ

八幡「小町…小町―!!」ダキッ

小町「ぅぅ…会いたかったよ…」ギュゥゥ

八幡「すまん…側にいてやれなくて…」ギュゥゥ

小町「お兄ちゃん無事でよかった…あ、今の小町的にポイント高い…」ボロボロ

八幡「泣きながらポイント貯めてんじゃねえバカヤロウ…」ナデナデ

八幡「しかし今日までよく無事だったな。誰かと来たのか?」

小町「うん、後ろにいる彼と彼女に守れてました!」

八幡「彼と彼女…?」

小町「おーいお二人さん!空気読まなくもいいから!早く早く」

ガララッ

八幡「隣の教室に隠れてたのか…」

「美紀!!」

美紀「え」

「今度こそ本物だよね?美紀!!」ダキッ

美紀「け、圭…」ツーッ

圭「ごめんね美紀…モールで置いてきぼりにしちゃって…」グスッ

美紀「圭…無事でよかった…!」ボロボロ

圭「うん…話は由紀先輩に聞かせてもらったよ…ココにいたんだね」ギュゥゥ

美紀「うん、うん」ギュゥゥ

胡桃「……」ツーッ

悠里「これだけ感動の再会ラッシュが起きるともらい泣きしてしまうわ」グスッ

由紀「さてさて、ラストのメインを飾るのはこの方です!」

由紀「私、最初見た時に間違えて、いつものノリで抱きついちゃったよ!みーくん!///」

美紀「は?」

圭「そうそう!///私も最初見た時、間違えて抱きついちゃって…///」

ガララッ

「……」

八幡「……」

美紀「え、私?」

悠里「あら美紀さん。ってあれ、こっちにも美紀さんが?」

美紀「なぜあそこに私が…?」

胡桃「お前らいつまでボケてんだよ!」

悠里・美紀「え?」

胡桃「あれが噂のアイツだよ…!」

「八幡―!!」タタッ

八幡「と、戸塚―!!」タタッ

全員「!!?」

彩加「八幡…会いたかったよ…」ギュゥゥ

八幡「戸塚…戸塚…」ギュゥゥ

美紀「あ、あれが戸塚さん…?本当に私にみたい」

美紀「な、なんか恥ずかしい…///」

八幡「無事で何よりだ戸塚」ボロボロ

彩加「八幡も元気そうで良かった」グスッ

小町「お久しぶりです雪乃さん!結衣さん!」

結衣「小町ちゃん無事だったんだね!」

雪乃「良かったわ…ほっ」

【部室】

小町「ふむ」ウデクミ

小町「圭くんはまだこれからとして…」

圭「?」

小町「……」ジーッ

八幡「どうした小町」

小町「ふむ」チラッ

雪乃・結衣「…?」

小町「ほう」チラッ

由紀「ふぇ?」

小町「ほうほう」チラッ

美紀「?」

小町「ほうほうほう!」チラッ

悠里「フフフ」ニコニコ

小町「ほうほうほうほう!!」チラッ

胡桃「んあ?」

小町「…………」プルプル

小町「んほおおぉぉぉぉぉ!!」ガタッ

全員「!?」

八幡「そんな荒ぶってどうした」

小町「お兄ちゃんお兄ちゃん!」

八幡「はいはい何ですか」

小町「これは選り取り見取りだね!」

八幡「ちょっと何言ってるか分からないのですが」

小町「またまた~!このこの!」ゴツゴツ

八幡「兄を肘で突くな」

小町「小町は嬉しいよ…あのボッチでどうしようもないゴミィちゃんが、ここまで出世するなんて…」グスッ

八幡「一体何をどう出世したんですかね、俺にはわからん」

彩加「それにしても…本当にそっくりだね僕と美紀ちゃん」

美紀「そ、そうですね。彩加先輩見てると鏡を見てるみたいです…」

八幡「二人が並ぶと双子にも見える」ニヘラ

悠里「そういえば八幡君、やっと念願の恋人さんと再会できて良かったわね」

八幡「は?」

胡桃(あ、そっか。リーさんたちは、八幡と彩加が付き合ってない事をまだしらないんだっけ)

結衣「こ、こここ、恋人!!?」ガタッ

雪乃「」

結衣「ちょ!ヒッキー!恋人ってどういう事!?」ユサユサ

八幡「おいまて、落ち着け由比ヶ浜。あと雪ノ下怖い、目が怖い」

雪乃「……」ハイライトオフ

結衣「落ち着いてられないし!」

雪乃「パンデミックの混乱に乗じて人の弱みに付け込み、相手の心を奪ったのね。アナタの考えそうな姑息な手ね。で、詳しく説明してもらえるかしら姑息谷君?」ハイライトオフ

八幡「怖い、目が怖い!あと怖ぇぇよ!頼むから目の光を消さないで!」

雪乃「目が死んでるのはアナタの方でしょゾンビ谷君」ハイライトオフ

結衣「ヒッキーー!!説明しろし!!」ユサユサ

八幡「落ち着け由比ヶ浜。雪ノ下も目に光を戻せ。俺は誰とも付き合ってない」

結衣「え、違うの?」

雪乃「そう…勘違いして悪かったわ。内気のアナタが簡単に恋人なんて出来るわけないものね」

八幡「ほっ…」

由紀「ふぇ?彩加ちゃんとは付き合ってないの?」

悠里「え、それじゃ…美紀さんを彩加さんと間違って、抱きしめてたのは一体…」

圭「え!美紀って八幡に抱きしめれられたの!?」

美紀「え、うん…初めて会ったときに…」

結衣「ミッキーを抱きしめた!?」ゴゴゴ

雪乃「……」ハイライトオフ

八幡「ひぃぃ!あ、あれは間違えたんでひゅ!」

圭「美紀ったらモテモテだね!」

美紀「間違えたって…それじゃ片想いだったんですか?意中の女性に付き合ってもいないのに抱きつくなんて八幡先輩はどうかしてます!」

雪乃「同意ね…ん?女性?」

結衣「全くだよ…え、女性?」

彩加「……」

雪乃・結衣「?」

美紀「どうしました?」

雪乃「えっと…大変失礼なことをお聞きするのだけれど」

雪乃「直樹さんは男性ではなくて女性…?」

美紀「当たり前です!何を言ってるんですか!」

結衣「ええ!?」

胡桃「なんでそんなに驚くんだよ!?美紀はどうみても女だろ!」

結衣「えっとね…その彩ちゃんは…」

八幡「ん?そういえばお前達にはまだ説明してなかったな」

八幡「戸塚は男だ」

由紀・美紀・胡桃・悠里「……」

由紀「ふぇ、え?え?」

胡桃「いや…いやいやいや!!ありえないだろ!ありえねぇーよ!」

悠里「こんな可愛らしい子が男子のハズないわ」

胡桃「な、なあ…彩加?お前は女だよな…?」

彩加「えっとその…よく間違われるけど」モジモジ

彩加「僕、男の子です」

由紀・胡桃・悠里「えぇぇぇぇ!!?」

美紀「」

圭「私も最初、聞かされた時はビックリしたよ!」

悠里「っていう事は、八幡君は…その、バラ系の人なのかしら?」

八幡「おいちょっと待て。おれはホモでもないし、バイでもない。戸塚を愛してるだけだ」

胡桃「どっちなんだよ!」

彩加「もー!また八幡はそうやって僕をからかう!」プンスカ

八幡「毎日お前を探してたんだぞ?お前に味噌汁を作ってほしくて」

彩加「もう!僕じゃなくて結衣ちゃんや雪ノ下さんに頼みなよ!」

八幡「え…あ、えと」ドキッ

雪乃「っ」ドキッ

結衣「ぅぅ…///」ドキドキ

八幡「ゆ、雪ノ下はともかく、由比ヶ浜の毒なんて飲んだら死んでしまう」

結衣「味噌汁の扱いすらしてくれない!?」

胡桃「……」ジーッ

八幡「ま、そういう訳だ。戸塚、味噌汁を作ってくれ」

彩加「それじゃ…八幡と僕で二人で作ろう///」

八幡「よーしわかった。作ろう。毎日作ろう。24時間作ろう。俺とお前なら雪ノ下や若狭の味噌汁すら軽く越えるだろう」

雪乃「はぁぁ…勝手に言ってなさい」

胡桃「な、なあ結衣」

結衣「なに、くるみん?」

胡桃「もしかして八幡の彩加に対する愛情って、アタシ達が想像してるのと違う…?」

結衣「うん。アレはもう病気っていうか…ノリみたいな本気っていうか…でも本気じゃないというか…」

胡桃「……」

悠里「てっきり本当に、相思相愛なのかと思ってたわ…それじゃ八幡くんは恋人はいないのね…ほっ」

悠里(なんでホッっとしてのかしら私…)

八幡「ああ。ただし俺と戸塚は相思相愛だけどな!ガチでな!」

胡桃「あーはいはい」

悠里「ふふふ」

美紀「……」カァァ

美紀(何だろう…なぜか恥ずかしい…)

由紀「みーくん?顔が赤いよ」

美紀「放っておいて下さい!」

圭「美紀ったらまるで自分の事だと思って見てたでしょう」

美紀「ち、違うってば!そんなんじゃない!」

由紀「よーーし!それじゃ遅くなったけど始めよっか!」

八幡「何を始める気だ」

由紀「文化祭だよ!」

八幡「あ…」

美紀「もう夕方になっちゃいましたよ?」

悠里「フフフ、良いんじゃない?今から始めても」

八幡「あんま寝てないんだよな…明日でもいいか?」

胡桃「善はいそげだ!全員体育館へ行くぞ!」

由紀・悠里・美紀「おおー!」

八幡「マジでやんのか…はぁぁ」

結衣「そうえいば、あたし達もこのチラシを見てこの学校を目指したんだよね」

雪乃「ええ、最初見た時は驚いたわ…あのチラシの似顔絵の中に比企谷君がいるんだもの」

彩加「コメントで『3日間待ってやる』ってあったから、見つけた時は急いでここまで来たよ」

圭「で、演劇ってなにやるの?」ワクワク

由紀「ふっふっふ、体育館に行ってからのお楽しみ!」

【体育館・文化祭】

悠里「それでは文化祭を始めます」

悠里「まず、文化祭実行委員長の丈槍さんからのご挨拶です」

雪乃・結衣・圭・彩加・小町「……」パチパチパチパチ

由紀「この度は巡ヶ丘高校の文化祭の参加、心から感謝してます。」ペコッ

由紀「私は学園生活部に所属し、演劇の出し物を行います」

由紀「どうか最後まで、楽しんでいってください」

由紀「スローガンは『覚めない夢、輝き続ける希望』です」

八幡(いつスローガンなんて決めたんだ)ヒソヒソ

胡桃(めぐねえと『相談』して決めたんだって)ヒソヒソ

八幡(めぐねえと…か)

由紀「それでは皆さん、この文化祭の成功を願い、私から幸せなれる魔法の言葉をお届けします」

由紀「びびでばびでぶー!」

~~~~~

美紀「お疲れ様です由紀先輩」

由紀「えへへへ、挨拶どうだった?」

八幡「ああ、アドリブで良くあそこまで言えたものだ」

八幡「100満点中、100点だ」

結衣「高!!」

小町「あの採点が厳しいお兄ちゃんが、ここまで評価するなんて珍しいですよ!」

八幡「どこぞのバカ委員長と比べれば上出来だろ」

雪乃「ふふふ、そうね」

【劇(シンデレラ)】

美紀(王子役)「おお、靴が入った!」

八幡(主演)(流石に透明な靴は発見出来なかったんだよな…ってキツ!このハイヒールきつ!)ググッ

雪乃「ぷっ…ぷぷ…比企谷君のドレス姿…最高だわ…」プルプル

結衣「くっ…あははは…!ヒッキーまじウケる!!」プルプル

圭「美紀!かっこいいよ!!」

美紀「やはりアナタこそ、私が捜し求めてた運命の人だったんだ!」

八幡(美しい。とつかわいい)ボタタ

悠里「あ、また鼻血が!はいティッシュ!」ダダッ

胡桃「本番くらい踏ん張れよ!ほらティッシュ!」ダダッ

八幡「す、すまん」

美紀「ここ重要な場面ですよ先輩!」

雪乃「まったく何をやってるんだか…」

小町「ゴミィちゃん…」

【劇(走れメロス)】

美紀(主演)「すまないセリヌ。俺は途中で疲れてしまい、キミを裏切りそうになった」

八幡(セリヌ役)「俺のほうこそすまない。実はキミを疑ってしまった」

八幡「せめてもの罪滅ぼしとして、俺を殴ってくれ」

美紀「わかった、それなら俺の事も殴れ」

美紀「いくぞセリヌ!」ボカッ

八幡「くっ」

八幡(痛くない。パンチの仕草が可愛い)

八幡「では俺も」ポンッ

美紀「くっ」

美紀(全然痛くない…まあ、気を使ってくれてるのでしょうけど)

八幡(演技でいかにも痛そうにしてる表情が可愛い。っていうかメロスの服はボロボロに破けてるせいか、かなり露出度が高い。メロスならぬエロス)

八幡「これでおあいこだ」ボタタ

悠里(国王役)「は、鼻血が出てるわ!はいティッシュ!」ダダッ

胡桃(セリヌの弟子役)「おい邪知暴虐の王!お前がティッシュをあげてどうするんだよ!ほれティッシュ!」ダダッ

由紀(妹役)「くるみちゃんの出番はもう終わりだよ!」

小町「あーあー…もうメチャクチャですねー…」

雪乃「重要な場面でいつも締まらないわね…」

圭「ぷっ…くく!あっははははは!」

【演劇終了後】

悠里「実は前に鉄板を見つけたの」

胡桃「んで、麺と野菜と肉、醤油を入れて…」ジュウゥゥ

八幡「なるほど、これで焼きそばが焼けるという訳か」

由紀「屋台の出来上がりだね!」

ワイワイ、ガヤガヤ

八幡「……」

八幡(まさか本当に文化祭が行われるとわな…)

圭「彩加!はいあ~ん」スッ

美紀「ちょっと圭!何やってるの!///」

彩加「じ、自分で食べれるよ!///」

八幡「戸塚、おれに食べさせてくれ」

ワイワイ、ガヤガヤ

八幡(……)

八幡「ああ…楽しいな…」

【次の日の昼間・寝室】

感動の再会、文化祭が終わって翌日

八幡「……」ヌボーッ

サブレ「きゃんきゃん!」

太郎丸「わんわん!」

八幡「仲良いなお前ら…」ナデナデ

八幡「……」ヌボーッ

八幡(俺のやるべき事は終わった)

八幡(これでしばらくはのんびりできる)

八幡(ただ、何もしない訳にはいかん)

八幡(この学校はあまりに色んな物が揃いすぎている…多分、あいつらも気付いてるハズだ)

八幡(この学校の謎を解き明かす事が、今回のパンデミックの謎を解明するカギにもなる…そんな気がしてならん)

八幡(なにより、一生避難生活をしてる訳にもいかん)

八幡(……材木座と平塚先生の墓参りにも行かねばならん。材木座はガソリンスタンド跡、先生は公園のデカい木の麓だったけな)

八幡(ま、今はともかく…寝よう。今だけは引きこもり大好き比企谷八幡に戻るべきだ)

八幡「さて、もう一眠り…」

八幡「……zzz」

ガララッ

胡桃「おい八幡!見まわりいくぞ!」

八幡「ふぁ?今朝行ったじゃねぇか…」

胡桃「あ…じゃ、じゃあ!もう一回!」

八幡「やだよ」ゴロッ

胡桃「んじゃ屋上にいって菜園の手伝い行こうぜ!」グイグイ

八幡「ちょ、おい…引っ張るな…」

ガララッ

悠里「八幡君いるかしら?」

雪乃「比企谷君、家庭菜園の手伝いをしなさい。大量に野菜が採れそうで女子だけじゃ大変なの」

ガララッ

結衣「ヒッキー!これからユッキーと体育館でサブレと太郎丸のお散歩するから付き合って!」

由紀「お散歩お散歩!」

ガララッ

圭「八幡!これから彩加の女装ショー始めるから手伝って!」

彩加「や、やめてよぉ!///」

美紀「ちょっと圭!彩加先輩に何やってるの!」

小町「ふっふっふ、お兄ちゃん大変だね~」

八幡「」

八幡「俺は聖徳太子じゃないんだ。一辺に言うな」

八幡(のんびり過ごそうかと思ったがそうはいかない様だ)

八幡「要件あるなら順番ずつ頼む」

外はパンデミックで、世は絶望に満ちている
それでも暫くはこの閉ざされた空間で、幸福を噛みしめようと思う

ここには、夢も希望もあるから

終わり

ここまで読んでくれて感謝してます
話としては一旦締めてますが、『オマケ』を書こうと思ってます

ただし、ほのぼのばかりの蛇足なので注意
詳細は次のレスでご確認ください

オマケ編(全5章)を書きます

1章以外は全てほのぼの系
悪く言えば蛇足気味の話になるので、それでも良ければ最後までお願いします(以下、タイトル)

①結衣「ゆきのん…そこにヒッキーはいないよ。誰もいない」(過去回想話)

②八幡「おはよう戸塚」美紀「直樹です!」

③胡桃「Shall We Dance?」

④雪乃「奉仕部に依頼?」悠里「ええ、貯水槽の掃除のお手伝いを」

⑤幽霊めぐみ「国語教師、佐倉慈です」幽霊平塚「国語教師、平塚静です」

1つネタバレを言うと『くるみちゃん感染~由紀覚醒と学校卒業』まではやりません
今日はここまで

誰かに言った覚えは無いけど、出来たので投下します

オマケ①(回想話)
タイトル:結衣「ゆきのん…そこにヒッキーはいないよ。誰もいない」

【数日後・部室】

胡桃「由紀は職員室へ行ったか?」

悠里「ええ、今頃めぐねえと一緒にいるわ」

雪乃「それじゃ始めましょうか」

八幡「zzz…」

胡桃「おい八幡おきろ!」ゴンッ

八幡「痛っ…」

美紀「しっかりして下さい!今日は今度の事について話し合うって、昨日決めたじゃないですか!」

八幡「ああ…そうだな…」ヌボーッ

美紀「まったくもう!」

雪乃「それで…私と由比ヶ浜さん、戸塚くんと小町さん、祠堂(しどう)さんはまだこの学校に来たばかりだから…」

雪乃「部長の若狭さんから改めて、現在のライフラインの説明を願うわ」

悠里「ええ。元々この学校には食料の備蓄が沢山あったの。それと屋上で菜園もやっているわ」

悠里「それに付け加え八幡君と胡桃が、食料と物資を確保してくれたおかげで随分余裕があるわ。おかげでバリケードの強化も出来たわ」

悠里「ただ先日から人数が倍以上に増えて、食料の減り方も倍以上になるわね」

美紀「水に関しては問題ないですが、やっぱり食料の問題は欠かせませんね」

胡桃「でも人が増えた分、やれる事の幅が広がるのも確かだ」

悠里「そうね。だから人数が増えた事により、何か出来ることが無いか、意見はあるかしら」

八幡「それなら前みたいに外出して物資と食料を確保すればいいだろ。毎日ではなく定期的によ」

胡桃「そうだな。大体、週に2~3回位のペースで行けば問題ないだろ」

彩加「でもそうなると、闘える人が限定で行ったほう良い思うな」

八幡「そうだな。あまり闘えない奴には無理強いは出来ん」

八幡「闘える奴は…俺と恵飛須沢、雪ノ下と由比ヶ浜、戸塚と小町と祠堂(しどう)で良いのか?」

圭「私は、小町と彩加先輩と行動する様になってから闘うようになったから、経験不足であんま強くないし…戦力外で考えた方が良いよ」

小町「小町も基本的に戸塚さんに守られてばかりでしたし、自分を守るのが精一杯です。同じく戦力外で考えてほしいと…」

八幡「だとすると、事実上の戦力は5人か」

胡桃「じゃ、じゃあ…前みたいにアタシと八幡で一緒に行くか?///」

結衣「あ、アタシも闘えるから!い、一緒にどうヒッキー?///」

八幡「え?お、おう…」ドキッ

胡桃(結衣の奴もなかなかグイグイ来るな…)モヤモヤ

雪乃「戦力は多い方が良いでしょう。だから5人で良いのでは?」

結衣「え?う、うん!そうだね!そうすればヒッキーの負担も減るモンね!」

胡桃「そ、そうだな…はは、ははは…多い方が頼もしいもんな…」

彩加「それじゃあ小町ちゃんと圭ちゃんには、お留守番で学校の防衛役を務めてもらっても良いかな?」

小町「それなら大丈夫です!」

圭「外よりはずっと安全だもんね」

八幡「いや念のためもう一人、学校に強いのを残した方がいい」

結衣「それじゃ外出組は4人だね!」

雪乃「それならさっそく、外出組の当番を決めましょう」

【翌日・デパート】

胡桃「きょ、今日は一緒だったな八幡…///」

結衣「こうやって一緒に行動するの久々だねヒッキー///」

八幡「ああ」

八幡(戸塚と一緒に行きたかった。一人強いの残した方が良いなんて言わなければ良かった)

雪乃「みんな、四人だからと気を抜かないで。もうすぐ食料品コーナーよ」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

八幡「来たな、結構な数だな」

胡桃「確かに。4人いて助かった」

雪乃「待って」

八幡「ん?」

雪乃「私だけで充分よ」

八幡「大した自身だな。でもあの数は流石に危ない」

雪乃「ご心配どうも。でも私は由比ヶ浜さんと女二人で乗り越えてきたの」

雪乃「戦力として不安に思われないよう、実力を示してあげるわ」チャキン

胡桃「おお…ついに抜刀した…」

雪乃「行くわよ」ダダッ

ズバッ、ザシュッ、シュバッ

胡桃「動きが早ぇ…!」

雪乃「ふっ…!」ダダッ

ズバッ、ザシュッ、シュバッ

八幡「」

八幡(雪ノ下は奴らの群れの中心で、華麗にゾンビの首を斬り落としていく)

ズバッ、ザシュッ、シュバッ

八幡(長い髪をなびかせながら、刀を扱うその所作は美しく、そして力強く、見るものを魅了する)

雪乃「制圧完了よ」チャキッ

結衣「さっすがゆきのん!」パチパチ

胡桃「なんか…凄すぎて言葉が出ないぜ…」

八幡「……」

雪乃「どうかしら?比企谷君」

八幡「……」

結衣「ヒッキー!いつまでボーっとしてるの!」

八幡「へぇ?あ、ああ…何というか…」

八幡「平塚先生と同じ位凄かったと思うぞ。体力があればな」

雪乃「ぜぇ…ぜぇ…そう、まあ褒め言葉として受け取っておくわ」

胡桃「まじでお前らの顧問は何者なんだよ…」

八幡「例えるならあれだ。雪ノ下は場合はかまいたち、平塚先生は竜巻って感じだったな」

雪乃「比企谷君はポルターガイストかしら?」

八幡「単に存在感が無いって言いたいだけだろ」

胡桃「……」

胡桃(八幡から聞かされていたが想像以上に凄いな…八幡が一目置くのも無理は無いか…)モヤモヤ

胡桃(雪乃の奴、キレイだしな…アタシはあんな華麗に戦闘できる自身がねぇよ)モヤモヤ

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

八幡「ちっ…今度は後ろからか」

胡桃「うし!今度はあたし達の出番だな!」

雪乃「お手並み拝見といきましょうか」

結衣「待って」

八幡・胡桃・雪乃「?」

結衣「今度はあたしが行く!」

胡桃「さっきほどじゃないが、結構な数だぞアレは」

八幡「見栄を張るな由比ヶ浜。今度は俺と恵飛須沢が先陣切るから後ろにいろ」

結衣「あーー!そうやって馬鹿にして!あたしだってずっとゆきのんと頑張ってきたんだよ!女二人で!」

雪乃「そうね。あの人数なら由比ヶ浜さんだけで充分よ」

八幡「マジで言ってのんかお前は」

雪乃「不安に思うなら彼女の戦う姿を見て判断して」

結衣「見てろヒッキー!くるみん!あたしの火事場の馬鹿力を!」

結衣「……」ススッ

胡桃「……?」

八幡(目を瞑り、シャベルを顔の目の前まで近づけ、何かを独り言を呟いてる…?)

結衣「……」ブツブツ

八幡「アイツなにやってんだ?」

雪乃「本人曰く、おまじないだそうよ」

八幡「……?」

結衣「みんなはあたしが守る…みんなはあたしが守る…みんなはあたしが守る…」ブツブツ

~過去回想・パンデミック初日の由比ヶ浜宅~

雪乃「……」ガタガタ

結衣「……」ガタガタ

雪乃「か、感謝してるわ…」

結衣「うん…あたしの家は無事は無事でよかった…」

結衣「ヒッキーは…どうしてるんだろ…」

雪乃「小町さんは今日、比企谷君の看病するから早く帰ると言ってたわね…二人とも無事だといいけど」

結衣「うん。あたし達も一緒に御見舞い行けば良かったかな」

雪乃「3日前に行ったじゃない」

結衣「そういえばそうだったね」

雪乃「しかしこんなの時に風邪を引くなんて、つくづくタイミングの悪い男ね」

結衣「まったくだよ!」

雪乃「フフフ」

結衣「エヘヘ」

雪乃「ありがとう、由比ヶ浜さん」

結衣「ううん。こちらこそ」

雪乃「比企谷君、無事だと良いわね」

結衣「うん」

雪乃「ご両親…帰ってこないわね…」

結衣「あ、そういえば、パパとママ。沖縄に旅行にいってるんだっけ…」

雪乃「……それは幸いと言うべきか、不幸と言うべきか。判断に悩むわ」

結衣「沖縄も無事とも言い切れないし、でも離島だから安全とも言えるし…もしかしたらもう千葉に帰ってきてるかもしれないし…」

結衣「無事だと良いなパパとママ」

結衣「ジッとしてても仕方ないし、今のうちいつでも外に出れる準備しよ!」

雪乃「そうね、ここもぜったい安全とは限らないものね」

結衣「必要な物を押し入れにあるから手伝って」

雪乃「分かったわ」

~~~~

雪乃「こんな感じかしら」

結衣「食料と水と薬箱、服と預金通帳もある。オッケーだね」

ドォォォン!!

結衣「きゃあああ!!!」

雪乃「なにか爆発した音が…隣からかしら…」

ゴゴゴゴゴ…

雪乃「っ!!大変、火が付いてるわ…」

ゴゴゴゴゴ…

結衣「うわやっば!!消火器、消火器…たしか玄関前に…」ダダッ

雪乃「みるみる燃え広がっていくわ…毛布じゃ間に合わない」バタバタ

結衣「は、早くしないと…」

ガチャッ

結衣「ひぃぃ!!」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

結衣「い、いやあああ!!」カチッ

シュゥゥゥ!!

雪乃「どうしたの!?」ダダッ

結衣「ぞ、ゾンビが沢山いて…消火器で吹き飛ばした…」

ゴゴゴゴゴ…

雪乃「火がすぐそこまで来てるわ…!」」

シュゥゥゥ!!

結衣「ウチを消しても、お隣も消さないとどんどん広がっていくばかりだよ…!」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

雪乃「っ!!マズイわ、消火器の粉で飛ばされてたゾンビたちが立ち上がってきたわ!!」

結衣「ど、どどど、どうしよう!?」

雪乃「……命が最優先よ、逃げましょう」

結衣「ごめん!!パパ、ママ!あたし家を守りきれ無かった…」ダダッ

~雪乃のマンション~

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

雪乃「」

結衣「う、うそ…あのマンションまで…」

雪乃「絶対的なセキュリティを誇っていたあの堅牢なマンションが…」

結衣「ど、どうしようゆきのん…」

雪乃「……こうなったら、避難所か私の実家ね」

ブロロロロ!キキィィィー!

陽乃「雪乃ちゃん!ガハマちゃん!」

雪乃「姉さん…!」

陽乃「早く乗って!」

雪乃「行きましょう!」

結衣「うん!」

~車中~

雪乃「無事だったのね。助かったわ」

結衣「ありがとうございます…」

陽乃「……」

雪乃「姉さん…」

陽乃「……」

陽乃「残念だけど、雪ノ下財閥はもう終わりだよ」

雪乃「え…」

陽乃「お父さんの会社…それと、ウチの実家が全焼しちゃった…」

結衣「!!?」

雪乃「う、うそ…」

陽乃「食糧、生活用品意外に、通帳はもってきたけどね…果たしてこんな世の中になって、銀行は役に立つのだろうかね…」

陽乃「流石にお姉ちゃんも参っちゃってるよ」

雪乃「姉さん、私達はこれからどこへ…」

陽乃「行く当てはあるよ。手遅れじゃなければ良いけどね」

陽乃「少なくともそこらの避難所よりも安全かも」

陽乃「付いたよ」

雪乃「ここって…葉山くんの実家じゃない…」

結衣「ええ!?でか!!」

葉山「無事だったんだね、良かった」

結衣「隼人くん…」

雪乃「そちらこそ無事で何より」

陽乃「ここは家周りの壁もしっかり出来てるし、ゾンビも簡単に侵入は出来ないよ」

葉山「避難する場所はここよりも、地下シェルターに行ったほうが良い」

結衣「地下シェルターもあるの!?」

~地下シェルター内部~

海老名・三浦「結衣!」

結衣「みんなも無事だったんだね!」

戸部「いや~隼人君と友達で本当良かったわー!」

大和・大岡「うんうん」

ガヤガヤ、ガヤガヤ

結衣「他にも色んな人がいるね…ってか、地下室広っ!」

葉山「収容人数に限界が来たら、男は悪いけど実家の方で非難してくれ」

戸部「おう、レディーには負担はかけさせらんないもんな!」

雪乃「……」

陽乃「ああ~疲れた~」

雪乃「姉さん」

陽乃「ん?」

雪乃「比企谷君は見た?」

陽乃「見かけたらココにいるよ」

雪乃「……それじゃ、父さんと母さんは」

陽乃「……」

陽乃「落ち着いて聞いてね雪乃ちゃん」

陽乃「ごめん。父さんも母さんもダメだったよ」

雪乃「う、うそ…でしょ…」ガクッ

陽乃「母さんとは家が全焼する寸前に脱出して、一緒に車で父さんの会社まで向かったんだけど」

陽乃「会社のビルが全焼してて、私が茫然としてたら」

陽乃「会社のビルの前に父さんが倒れてて」

陽乃「母さんが珍しく取り乱してね…嫌な予感がした私は散々引き止めたんだけど…」

雪乃「……」グスッ

陽乃「……避難の仕度してた時は、いつも通りの母さんだったんだよ?」

陽乃「賢く冷静に、今なにをすべきなのか…慌てず早急な行動を取って…燃え上がるビルを見ても動じず冷静でいて…」

陽乃「ボロボロになって倒れてた父さんを見た瞬間、今まで見たことも無い形相で取り乱して…その後は…」

雪乃「……」ボロボロ

陽乃「最後の最後で、母さんの女らしい姿を見たよ」

陽乃「変わり果てた父さんに散々嚙まれても、父さんから離れない姿がね…脳裏に焼き付いちゃって…」

陽乃「狂乱した母さんを無理やり車に連れ戻したけど…そのあと母さんは…」

雪乃「よく…姉さんは無事だったわね…」ボロボロ

陽乃「あんな好き勝手やってた人でも母親だからね。変わり果てる寸前までは車の中で看取ったよ。寸前までね」

~数日後~

結衣「このシェルターも随分人が増えたね」

ワイワイ、ガヤガヤ

雪乃「ええ、気を使ってくれて男性達は皆、お屋敷の方にいるけど」

ガチャッ

葉山「ただいま!」

モブ女子1「あ!おかえり葉山君!」

モブ女子2「食糧確保お疲れ!」

戸部「いやー!外にゾンビがわんさかいて参ったわー!」

三浦「お疲れ隼人…外はやっぱ危険?」

葉山「ああ。でもウチは安全だから、息苦しくなったら屋敷にもおいで」

三浦「うん」ウルウル

結衣「しっかしここ、なんでも揃ってるね。漫画もDVDあるし」

雪乃「浄水機能、太陽光パネル、パンデミックに備えた食糧もある…正直、充実し過ぎてるわ」

陽乃「隼人の所もやっぱ支援してたのかな?」

葉山「え?うーん…俺はよく知らないけど…ある企業からのお礼として、このシェルターが去年に作られてね」ビクッ

雪乃「企業からのお礼?」

陽乃「雪乃ちゃんはしらなかったか~私もね、パンデミック前に知ったんだけどさ」

陽乃「ランダルなんとかっていう企業に、雪ノ下財閥も支援してたんだって」

雪乃「ランダル…?」

陽乃「んで、ランダルなんとかからのお礼で、雪ノ下家にもシェルターとか作ってもらう予定だったんだけど…世の中がこんな事になっちゃって…」

雪乃「そうだったの…」

~1ヶ月後~

結衣「隼人くん…ヒッキーと会えた?」

隼人「いや…残念だけど…」

結衣「ヒッキー…来ないね…」

隼人「最近は、だんだん生存者も見付かりにくくなってきたよ…」

戸部「マジっパネェよ外。手遅れになっちゃった人ばっかりで?なんか俺病んじまうわー」

結衣「ヒッキー…」

雪乃「……」

結衣「ヒッキー…心配だね…」

雪乃「……」

結衣「ゆきのん?」

雪乃「え?ええ…」

結衣「……?」

モブ女子1「なんか雪ノ下さん疲れきってるね…」

モブ女子2「無理も無いよ…」

~数週間後~

雪乃「ふふふ」ニコニコ

結衣「どうしたのゆきのん、ご機嫌だけど…パンさんのDVDでも見たの?」

雪乃「今日も目が腐ってるわね」

結衣「はぁ?」

雪乃「感染者と間違えてしまったわ」

雪乃「……何を言ってるの。アナタの存在は既に色々と手遅れじゃない」

雪乃「自覚が無かったのかしら?良かったわね、私が忠告しなければ永遠に気がつかなかったわよ?」

結衣「ゆきのん…?」

雪乃「フフフ…フフ…」ニコニコ

~数日後~

雪乃「あら由比ヶ浜さん、良かったら紅茶でも飲む?」

結衣「え、うん…」

雪乃「どうぞ」

コポポポ

結衣「……」

雪乃「えと…比企谷君は殺虫剤の方が良いかしら?」

雪乃「あら、ゴメンなさい。てっきり虫と間違えてしまったわ」

雪乃「ああそういえば、殺虫剤なんか飲んだら行けなかったわね。これは失礼。アナタが辛うじて人間であった事を忘れてたわ」

雪乃「……フフフ、冗談よ。紅茶どうぞ」ニコニコ

ビチャチャチャチャ…

結衣「ねえ…ゆきのん」

雪乃「どうしたの?そんな深刻な顔して」

結衣「ゆきのん…そこにヒッキーはいないよ。誰もいない」

雪乃「……由比ヶ浜さん、いくら彼の存在感が薄いからって、それは失礼よ。せめてゾンビとして認識してあげないと可哀想じゃない」

結衣「ゆきのん…」ツーッ

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん…?」ビクッ

結衣「ちゃんと、見て。それで思い出して」

結衣「そこにヒッキーはいないんだよ…」ボロボロ

雪乃「何を言って」クルッ

雪乃「あ………」

結衣「……」グスッ

雪乃(床に紅茶がこぼれてる…それに…)

雪乃「比企谷君が…いない…」

~翌日~

雪乃「……」

結衣「あ、いろはちゃん何やってるの?」

いろは「えへ、マフラーを編んでまーす!」クイクイ

結衣「マフラーか…隼人君にあげるの?」

いろは「勿論です!」

川崎「……」クイクイ

結衣「沙希も何か編んでるの?」

川崎「えっ…うん」

結衣「沙希も隼人くんに?」

川崎「アイツには世話になってるけど違うよ」

結衣「え、じゃあだれだれ?」

川崎「……秘密」

雪乃「……」

いろは「あの結衣先輩…雪ノ下先輩どうしたんですか?」

いろは「今日はずっと隅っこで体育座りして、全然動かないじゃないですか」

結衣「あんまり大きな声じゃ言えないんだけど…」

結衣「最近、見えるはずの無いものが見えちゃうって言ってたから…何も見ないようしてるんだって…」

川崎「……幻が見えちゃって事?」

結衣「うん…」

雪乃「……」

結衣「ねぇ、ゆきのん」

雪乃「……なに?」

結衣「少し、外に出よ」

雪乃「……」

結衣「ね?」

川崎「まあずっと、うずくまってても健康に悪いし。行ってきた方がいいんじゃない?」

結衣「じゃあ沙希も行こっか」

川崎「え」

いろは「じゃあわたしもいきまーす!」

~庭~

いろは「いやー男子諸君のおかげでここは平和ですねー」

結衣「だねー」

川崎「あの壁の向こう側にはゾンビがいるんだよね…」ガクガク

雪乃「……」

結衣「ゆきのん、少しは落ち着いた…?」

雪乃「……少しは」

結衣「そっか…よかった」

雪乃「ねえ」

結衣「ん?」

雪乃「なんで、比企谷君が見えてしまうのかしらね」

結衣「そ、それは…」

雪乃「時々、思うの。あまりこういうの信じた事ないのだけれど」

雪乃「比企谷君、実はもう手遅れなんじゃないかって」

結衣・いろは・川崎・「え…」

雪乃「だから…見えるはずの無いものが見えて…」グスッ

雪乃「見え…て…」ボロボロ

結衣「そ、そんな事無いよ!ヒッキーはきっと生きてるよ!」

雪乃「……」ボロボロ

いろは「そう…信じたいですけどね…」

川崎「無責任に…決めつけることもできないでしょ…」

結衣「いや生きてる!きっと生きてるよ!」

雪乃「……」ボロボロ

結衣「あたし!決めた!」

雪乃「……?」

結衣「ヒッキーを探す!」

川崎「さ、探すって…」

結衣「もうこの地域は隼人君たちが探索し尽してるから、もっと遠くまで探す旅にでる!」

いろは「正気ですか!?」

結衣「正気だよ!」

結衣「みんなも!!一緒にいこ!」

雪乃「由比ヶ浜さん…」ボロボロ

いろは「ど、どうします?」オロオロ

川崎「あたしは…構わない」

川崎(でも…)

~翌日・シェルター内~

葉山「本気で言ってるのか!?」

雪乃「ええ」

三浦「ちょ、結衣。あんた正気なの!?」

結衣「ごめん…あたし、もう決めたの」

海老名「結衣…いくらなんでも自殺行為だよこれは」

結衣「それでも、あたしはもう一度ヒッキーに会いたいの」

三浦「あのね…生きてるあーしらより、生きてるか死んでるかもわからないヒキオを選ぶの!?」

結衣「じゃ、じゃあ…優美子も…」

三浦「隼人ならともかく、ヒキオのためにそこまで命かけらんないし…」

結衣「……」

結衣「ごめん、みんな」

結衣「あたしね、いつも人の顔色ばかりうかがって生きてきたけど」

結衣「今回決めた事だけは譲れないの。だってもう一度会いたいもん」

三浦「結衣…」

葉山「ダメだ」

結衣「……」

葉山「近場を探索するとでは訳が違うんだ。絶対にダメだ」

雪乃「……葉山君。今日までここに避難させてくれた事は感謝してるわ」

雪乃「でも、それでも私は由比ヶ浜さんと旅に出る決意をしたの」

雪乃「それとも、一緒についてくる?」

葉山「……それは出来ない」

雪乃「そうね、アナタは皆を守らなきゃいけない。それでいいのよ」

雪乃「私は私で、再会したい人がいるから」

陽乃「雪乃ちゃん?私が許すとでも思ってるの?」

雪乃「心配してくれてありがとう。でも、私はもう決めたの」

陽乃「妹の自殺行為を見逃すと思ってるの?」

雪乃「何とでも言いなさい。例えどんな妨害が来ようと怯まないから」

雪乃「それとも、一緒についてくる?」

陽乃「比企谷くんはお気に入りだけど無理」

陽乃「いくらお姉ちゃんが万能だからって、外に出て絶対無事でいられる保証はないんだよ」

陽乃「私はね、死ぬ訳にはいかないの。雪ノ下財閥を再建させるから」

陽乃「この預金通帳、パンデミックが終わっても通用するか分からないけど…何年掛かっても私はやるよ」

雪乃「……母さんの最期は、取り乱すほど父さんを心配して、死んだって言ってたわよね?」

雪乃「私にも今、似たような感情があるの」

雪乃「だから行くわ。なんと言われようと」

陽乃「雪乃ちゃん…!」

モブ女子1「比企谷って…ああ!思い出した!中学いっしょだった!」

モブ女子2「ああ、あのかおりに告った奴でしょ?暗くてキモかったよね~」

モブ女子1「ねぇー、ありえないよねー。他にも結構イタい行動しててさー」

結衣「」ピキッ

折本「あはは。そんな事もあったけ…でもアイツああ見えてさー…」

モブ女子1「え、なになに?アイツのこと庇ってるの?」

モブ女子2「そんな同情しなくてもいいのに」

モブ女子1「あんなのに命かける必要ないのにねー」

雪乃「ねえアナタ達」

モブ女子1・2「わっ!?ビックリした」ビクッ

雪乃「さっきまで言ってた事、よく聞こえなかったからもう一度、言ってくれるかしら」

モブ女子1・2「」

雪乃「早く言いなさい」

雪乃「聞こえなかったかしら?早く言いなさい」

モブ女子1「え、えっと…あんなのに命かける必要ないのにー…って」ビクビク

雪乃「あらおかしいわね。女子に振られたり、暗くて気持ち悪かったと言う声も聞こえたのだけれど?」

モブ女子1・2「」

雪乃「ねえ、どうなの?」

モブ女子1・2「は、はい」

雪乃「……」クルッ

モブ女子1・2(あれ?行っちゃった…)

雪乃「よく目に焼き付けておきなさい」テクテク

モブ女子1・2「」ビクッ

雪乃「これから私と由比ヶ浜さんは……女子に嫌われて、暗くて気持ち悪いと評判だった彼を、比企谷八幡を探しに行くわ。命をかけてね」

モブ女子1・2「」

雪乃「行きましょう、由比ヶ浜さん」

結衣「うん!」

三浦「結衣」

結衣「」ビクッ

三浦「……いつか必ず、また会いに来てよね」

結衣「う、うん!」

雪乃「姉さん、葉山君…お世話になりました」

葉山(雪乃ちゃん…)

陽乃「はぁぁ、もうあそこまで啖呵きられちゃったら…もうお姉ちゃんも止められないよ」

川崎「行くんだね」

雪乃「ええ、準備は出来た?」

川崎「……」

川崎「ごめん、あたしも行きたいけど…」チラッ

大志「姉ちゃんも京華も俺が守るから、別に一緒に旅に出ても良かったのに」

川崎「そういう問題じゃないでしょ。けーちゃんはまだ小さいし、負担はかけられないでしょ」

京華「どうしたのさーちゃん?」

大志「……」

雪乃「なるほど」

川崎「力に慣れなくて悪いね。変わりにコレをアイツに渡してよ」

雪乃「カーディガン…」

川崎「気をつけて」

雪乃「ええ」

いろは「あ、あの…」グスッ

結衣「いろはちゃんも?」

いろは「いえ、わたしも生きたいけどやっぱり怖くて…」ガクガク

雪乃「……いつもの演技、ではなさそうね」

いろは「ごめんなさい…勇気がでなくて…」ガクガク

いろは「これ、先輩に渡してもらえますか?」

結衣「マフラー…でもこれって…」

いろは「良いんです。葉山先輩の分は、また後で作ります」

結衣「うん、わかった。ちゃんと渡して置く」

雪乃「それでは、行ってきます」

ガチャンッ…コツコツ…

~とある町にて~

雪乃・結衣「ひぃぃ…」ビクッ

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

結衣「い、いや…怖い…」ガクガク

雪乃「た、闘わなきゃ…」プルプル

ォォォォ…ァァァァ…

結衣「か、囲まれちゃった…」ガクガク

雪乃「ぁ…ぁぁ…」ボロボロ

結衣「ゆきのん…」

結衣(ゆきのんが…泣いてる…)

結衣(このままだと…あたしもゆきのんも死んじゃう…ヒッキーにも会えずに…)

結衣(そんなのイヤ…!!)

結衣「……」ブツブツ

結衣「ゆきのんはあたしが守る…ゆきのんはあたしが守る…ゆきのんはあたしが守る…ゆきのんはあたしが守る…」

雪乃「……?」ガクガク

結衣「ゆきのんは!あたしが守る!!」

結衣「てやああぁぁぁぁぁ!!!」

ドス!ドガ!

雪乃「由比ヶ浜…さん…」ウルウル

ゴシャ!バキ!

結衣「あたしは負けない!」

ドス!ドガ!ゴシャ!バキ!

結衣「よし!道ができた!逃げるよゆきのん!」ガシッ

雪乃「え、ええ…」ダダッ

~1週間後~

結衣「ゆきのんも段々と闘えるようになってきたね!」

雪乃「ええ、おかげさまで闘う勇気を貰ったわ」

雪乃「でもやはり体力の消耗が激しくて…もっと効率よく敵と戦う方法があれば…」

結衣「ねえ、アレ見て。珍しいお店があるよ」

雪乃「あれは…刀剣屋…」

~店内~

結衣「わぁぁ…すごい!」キラキラ

雪乃「……」

雪乃「これだわ」

結衣「え?」

雪乃「もうシャベルはいらないわ」

雪乃(腰に一本、背中に一本ずつ、刀を帯刀して…)ススッ

雪乃「これからは刀で自衛するわ」チャキッ

結衣「おお!ゆきのんカッコいい!」

~数日後~

雪乃「来たわね」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

雪乃「行くわよ」チャキッ

結衣「うん!」

雪乃「ふっ…!」ザシュッ

結衣「……」

結衣「ゆきのんは私が守る…ゆきのんは私が守る…ゆきのんは私が守る…」ダダッ

結衣「私は!ゆきのんを守る!」ブンッ

ゴシャ!

結衣「私は…強い!!でやあああぁぁぁ!!」

(回想終了)

【現在・デパートにて】

結衣(大して運動神経が良い方でもなかった。それにゾンビは怖かった。でもゆきのんを守りたい気持ちと、ヒッキーに会いたい想いだけは誰にも負けなかった)

結衣「皆はあたしが守る…あたしは!強い!!」

結衣「でやあぁぁぁぁ!!!」ダダッ

ドス!ドガ!ゴシャ!バキ!

八幡「」

胡桃「おお…なかなかやるな!」

結衣「でやぁぁぁぁ!!!」

八幡(一見、破れかぶれの荒々しい戦法だが、ちゃんと弱点を付いてる)

結衣「皆はあたしが守る!あたしは!強い!!」

ドス!ドガ!ゴシャ!バキ!

八幡「つーかあれはもう、おまじないというより、暗示に近いな…」

結衣「負けるかぁぁ!!」

結衣「えへへ、どうだったヒッキー?」

八幡「想像以上にたくましくなっててビビった。聖杯戦争ならバーサーカーとして召喚できるレベルだ

結衣「えへへ。よくわかんないけど嬉しい」

胡桃「食糧も確保したし、そろそろ戻るか?」

八幡「ああ、そうだな。てか結局俺達は何もしなかったな」

胡桃「ああ、想像以上に凄い戦力が二人も来ちまったからな…」

雪乃「バリケードの補強の資材とかはどうするの?」

八幡「あ、そうだ…ホームセンターにもよるか」

雪乃「それじゃホームセンターへ向かいましょう」

~その頃・葉山宅の庭~

いろは「先輩達無事かな…」

いろは「わたしもやっぱり行けばよかったかな…」

戸部「ん?なにか飛んでくるぜ!」

葉山「本当だ…なんだ…?」

いろは「?」

葉山「これは…風船に広告?」

いろは「え!?これって…」

葉山「巡ヶ丘高校文化祭…?」


オマケ①終わり

今日はここまで。次回はおまけ②
次回以降はほのぼの路線一直線です

水を差す様で悪いが、雪ノ下建設って一企業に過ぎなかった筈じゃ…。
記憶違いだったらスマン。

>>612ー614
金持ちと言う意味もあるけど、流れ的に企業的な意味合いが強いので、ややこしいから後で訂正文投下しますね
全ての間違った点を修正する自信はないけど、出来る範囲で訂正はしようと思います

文章打ってる時は、勢いでやってしまう事が多いからつい誤字が多くなってしまう

残りオマケの2~5章は、1つ1つの話が1章ほどの投下量はないと思うけど、もし良ければ見ていって下さい


すげえマジレスして悪いけど刀背負って腰にもさしたらめちゃくちゃ重いぞ
持久力のない雪ノ下にはキツすぎやせんか

>>618
ラノベや二次創作では武器に重さってないから

>>618
最初はキツイと思いましたが…>>620の理論(ノリ)でそうしました

背中か腰、どっちに帯刀するのがゆきのんっぽいか悩んだ結果です
ただやっぱり疑問に思われる様なので後で一本に訂正します

因みに後で話の中に出てきますが
カバンに刃渡り25センチの小刀を予備で所持してます

【報告】
もしかしたら10日くらい投下できないかも
理由は…個人的な用事と、体調的な物が原因です

今日は休日なので執筆しようと思いましたが、薬の副作用で眠くて書けませんでした
1日寝てたから今はすっきりしてるけど、まだしばらく様子見です

詫び(?)といっちゃ何ですが、次レスに次回作候補だけ投下をしときます


※次回作候補
(全部、仮タイトルです)

①丈槍由紀「ふぇ、奉仕部?」
クラスで浮いてしまい寂しい青春を送っていた由紀。太郎丸と先生が唯一の心の支え
ある日、由紀は先生に相談をすると奉仕部を紹介される
(注意:結衣とは違うクラス。他のがっこうぐらしキャラは出てくる。八幡は出すか悩んでるけど多分登場しない)

②八幡「ボッチのおれがお嬢様学校に拉致されるのは間違っている」
ボッチサンプルとして拉致された八幡。笑顔で見送る小町。絶望顔の八幡
後にボッチ部の部員となる

※これ以外にもやりたいと思ってる作品はありますが、目先の候補は以上です

八幡「やはり俺たちのがっこうぐらしは間違っている」
八幡「やはり俺たちのがっこうぐらしは間違っている」 - SSまとめ速報
(http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1438969642/)

こっちどうすんんだ

>>623-624
あっちのスレで報告を書いたのでご覧下さい
一言だけ…本当に申し訳ない

報告

今日は仕事も休みで、自身も色々と落ち着いたので今から書き溜めします

病気は単純に熱と鼻炎で、鼻炎はいつもよりも酷かった。内科と耳鼻科両方行ってました
今は熱も引き、鼻の具合もだいぶ抑えられてます

投下します

オマケ②
タイトル:八幡「おはよう戸塚」美紀「直樹です!」

【朝・部室】

八幡「すまん直樹だったか」

美紀「もう!」

ガララッ

戸塚「おはよう八幡」

八幡「おう、おはよう直樹」

彩加「僕は戸塚だよ!」

八幡「おっと、すまん」

美紀「さっき間違えたばかりじゃないですか…本当はワザと間違えてるんじゃないんですか?」

八幡「そんな事は無い」ニヘラ

美紀・彩加「怪しい…」ジッ

ガララッ

由紀「あ、みーくん!おっはよー!」

圭「美紀!おはよー!」

美紀「圭おはよう。由紀先輩もおはようございます」

由紀「えへへ」ダキッ

圭「みーき!」ダキッ

彩加「!?」

美紀・八幡「」

由紀「えへへへ、みーくん!朝のスキンシップだよ!」ギュゥゥ

圭「えへへへ!」ギュゥゥ

彩加「や、やめてよう…は、恥ずかしいよう…」ドキドキ

由紀・圭「え?」

美紀「ちょっと二人とも!そっちは彩加先輩!」

由紀「はわわわわ///ご、ごみん彩加くん!///」バッ

八幡「」

美紀「まったく…着ている服で判断してください!」

美紀「ん?」

圭「さ、彩加先輩…だったんだ…///」ギュゥゥ

彩加「け、圭ちゃん…いい加減離れて…」ドキドキ

美紀「ちょっと圭!///いつまで彩加先輩を抱きしめてるの!///」カァァ

圭「えへへ、美紀ったら焼きもち焼いてる~!」パッ

美紀「そういうのじゃないから!とにかく止めて!」

圭「よしよし」ギュゥゥ

美紀「もう…私を抱きしめれば良い問題じゃないんだから…」

八幡「おい祠堂てめえ!!」

圭「ひっ!だ、だれ!?鬼!?」ビクッ

八幡「俺の戸塚をよくも汚してくれたな。あぁ?おい」

由紀「八幡くんが鬼みたいな顔になってる!?」

圭「ひぃぃ!ゆるしてぇ鬼幡先輩!」ビクッ

結衣「ヒッキーが珍しく怒ってる!?」

小町(うーん圭くんは、お兄ちゃんより戸塚さん寄りだな)

小町(命の恩人だし無理も無いか…)

八幡「そういえば他の連中はどこにいるんだ?」

胡桃「雪乃とりーさんは屋上で菜園作業してる。菜園プランターを増設したから二人とも気合入ってるぜ」

八幡「そうか。部長同士で仲良くやってるんだな」

胡桃「雪乃はお前が言ってたよりも、そこまで一匹オオカミって感じがしないんだが」

八幡「お前らとは気が合うのか知らんが…まあ初めて会ったころと比べればかなり柔かくなったな」

美紀「初めの頃はどんな感じだったんですか?」

結衣「ゆきのんはね!初めて会った時からカッコよくて可愛かったよ!」

彩加「そうだね、雪ノ下さんはキレイでカッコいい人だよね」

八幡「氷のような女だった。容赦ない毒舌は、アイツが所持してる日本刀の様に鋭かった」

胡桃「改めて聞きなおすと、人によって評価が分かれるな…」

八幡「少なくとも去年会ったばかりの頃のアイツなら、ここまで溶け込む事はなかったな」

結衣「あぁー…それは否定できないかも…」

八幡「恵飛須沢と直樹と祠堂あたりは何かしらの理由で、雪ノ下と衝突するハメになってたかもな」

圭「私も!?」

胡桃「ま、まじか…まあ美紀とりーさんも初めは衝突してたけどさ…」

美紀「去年会ってなくて良かったです…怒ると怖そうだし」

結衣「でもヒッキーもだいぶ変わったよね!」

八幡「ばっか、俺はあんまり変わってねぇよ」

小町「いやいや!結衣さんと雪乃さんのおかげで随分と変わったんですから!」

八幡「……寝言は寝て言え」プイッ

結衣「ユッキー!あたしたちも太郎丸とサブレの散歩しに行こうっか!」ダダッ

由紀「うん!おいでサブレ、太郎丸!」ダダッ

太郎丸「ワンワン!」

サブレ「キャンキャン!」

由紀・結衣「いってきまーす!」

ガララッ

八幡「おお。今度は犬好きペアか」

美紀「あの二人も凄く仲良いですよね」

胡桃「お、なんだ。焼いてるのか?」

美紀「そうじゃありません。変な事言わないで下さい」

【体育館】

由紀「えへへへ、よしよし」ナデナデ

サブレ「キャンキャン!」

太郎丸「ワンワン!」

結衣「走るの疲れちゃったから休憩するね」

由紀「あ、私も」

結衣「休憩中にアレを読もうっと。えっとカバンの中に入れたハズ…」ススッ

由紀「それってファッション雑誌?」

結衣「うん!コンビニで拾った…じゃなくて買ったんだ」

結衣(ユッキーの中では、まだ平和の世の中なんだよね…気をつけないと…)

由紀「ほぉー結衣ちゃんってオシャレなんだね~」

結衣「いやいや、そんなんでもないよ」

由紀「私、よく変な格好って言われるんだよね。ファッションセンスありそうな結衣ちゃんが羨ましいよ」

結衣「えーでもユッキーのその帽子とか似合ってて可愛い思うけどな…」

結衣「……」

結衣「あ、そうだ!ユッキーさ、化粧とかしてみる?」

由紀「ほえ?お化粧…うん!まだした事無いから教えて!」

結衣「よーし!ちょっと待っててね…」ゴソゴソ

由紀「……」

由紀「そうだ結衣ちゃん!せっかくだからさ…」ヒソヒソ

結衣「え?うん…え、マジで!?」

由紀「ほら、私と結衣ちゃんって姉妹みたいって皆も言ってたし…」

結衣「なんか面白そう…うん!良いよ!」

【部室】

雪乃・悠里「ただいま」

小町「おかえりなさい!」

胡桃「おう、おつかれ。プランターには何を植えたんだ?」

悠里「ナスとプチトマト、きゅうり、苺とかかしら」

胡桃「そっか、楽しみだな」

雪乃「あれ、由比ヶ浜さんと丈槍さんは?」

八幡「犬達と散歩してる」

雪乃「そう」

圭「そろそろ戻ってくるかな」

美紀「そうだね。だいぶ時間経ってるし」

ガララッ

由紀「やっはろー!」

全員「!!?」

由紀「見て見てひっきー!お化粧しちゃった!ねぇ似合ってる?」

胡桃「由紀が何かギャルっぽくなってる!?」

悠里「あらあら、おませさんね」

八幡「」

由紀「えへへ、ピースピース!」V

八幡「おい丈槍、なんで総武高校の制服着てるんだ。髪型も由比ヶ浜と一緒だがどうした。あとお前がヒッキー言うな。気持ち悪い」

由紀「あたしはゆっきーじゃないよ!丈槍結衣だよ!」

由紀「あ、間違えた!由比ヶ浜結衣だよ!」

八幡「……」

雪乃「……」

胡桃「まあ似合ってるけどさ…」

美紀「でも何か上着がブカブカしてませんか?」

由紀「えへへ…上着がちょっと大きいんだよね」

八幡「サイズが合わなすぎだろ」

ガララッ

結衣「みんなー!ただいまー!」

全員「」

結衣「えへへへ、遅れてごめんね結衣ちゃん!」

由紀「もう!遅いよゆっきー!」

雪乃「ゆ、由比ヶ浜さん…そのセーラー服…まさか…」

結衣「私は結衣ちゃんじゃないよ!由比ヶ浜由紀だよ!」

結衣「あ、間違えちゃった…丈槍由紀だよ!」ボヨン

八幡「」

八幡(どこのイメクラだよ。つーかサイズ短いにも程がある。胸部あたり何かパンパンだし、ヘソなんか丸見えだ)

結衣「ど、どう八幡くん…?///」モジモジ

八幡「そのヘンテコな帽子は丈槍から借りたのか?あと下の名前で呼ぶな背筋が凍る」

結衣「ヘンテコ言うなし!ヒッキーのばーか!」

由紀「結衣ちゃん、違う違う」ボソボソ

結衣「え?」

由紀「こういう時、私ならこう言うんだよ…」

由紀「にゃ、にゃにおー!」

結衣「っ!」

結衣「……」

結衣「にゃ、にゃにおー!」

八幡「」

全員「」

結衣・由紀「ど、どう?みんな…似合ってる?」

八幡「由比ヶ浜はガチのビッチにしか見えん。丈槍は色々と背伸びした中学生にしか見えん」

結衣「にゃ、にゃにおー!?」

由紀「ひっきー酷いし!マジありえない!きもい!」

美紀「二人ともいい加減、キャラ交換止めたらどうですか?」

悠里「せっかくだし、皆で総武高校と巡ヶ丘高校の制服を交換してみない?」

胡桃「そうだな、何か面白そうだし」

雪乃「え…本気で言ってるの?」

結衣「良いね良いね!よーしさっそく交換タイムだ!」

~~~~~~~

悠里「雪乃ちゃんと交換してみたけど…おかしいわね、き、キツイわ…」ギチギチ

雪乃「……」

悠里「身長同じ位なのに…もしかして私、太っちゃったのかしら?痩せなきゃ…」ギチギチ

胡桃「いや、もう充分痩せてるから大丈夫だぞりーさん」

悠里「そうかしら?」ギチギチ

雪乃「……」

雪乃「はぁぁ」ショボーン

全員「……」

由紀「なんか雪乃ちゃん上着がブカブカだね?」

雪乃「うっ」グサッ

八幡「何も言うな丈槍」

由紀「ほえ?」

悠里「雪乃ちゃんが羨ましいわ…スレンダーで素敵だし」

雪乃「」

八幡(若狭よ。悪気は無いだろうが相手への嫌味にしか聞こえんぞ)

悠里「ジャケットだけ脱ごうかしら…」ススッ

悠里「ま、まだキツイわ…」ギチギチ

プツンッ

悠里「キャッ!!」

八幡「痛っ!!」バシッ

全員(Yシャツのボタンが弾けた!?)

彩加「八幡大丈夫!?」

八幡「若狭恐るべし…」ガクッ

悠里「は、八幡君ごめんなさい!」オロオロ

悠里「雪乃ちゃんもごめんね、後でボタンは直しておくから」

雪乃「え、ええ…」

雪乃「」ズーン

胡桃「次は結衣とあたしが交換したぜ」

結衣「うーん、くるみんと同じ位の身長だと思ったのに…まだキツイな」ギチギチ

八幡「丈槍の時よりはマシだろ」

結衣「あたしも太ったのかな?りーさん一緒にダイエットする?」

悠里「ええ、良いわよ」

八幡「いや、お前らはダイエットする必要ないだろ」

結衣「でも…」

八幡「もう根本的に諦めるしかないんだよ」

結衣・悠里「?」

胡桃「悔しいけど緩く感じる…この面子の中では平均的だと思ってたのに…」

結衣「何が平均的なの?」

八幡「自分の胸に手を当てて考えろ」

胡桃「上手い」

美紀「でもセクハラですよ」

結衣・悠里「?」

雪乃(羨ましいわ…)

胡桃「……」ジーッ

雪乃「どうしたの?」

胡桃「おし、あたしも髪を下ろすぞ」バサッ

結衣「おお~!くるみんもやっぱ髪長いね~」

胡桃「んで、リボンを…サイドに結んで…」

八幡「雪ノ下と同じリボンの結び方をしたのか」

胡桃「ど、どうだ…?」ドキドキ

八幡「え?俺じゃなくて他の奴に聞けよ…」ドキッ

胡桃「いいから答えろよ」

八幡「……ま、まあ…似合ってるぞ」

胡桃「そ、そっか。えへへへ///」

雪乃「……」

雪乃「……」キュキュッ

圭「あ、今度は雪乃先輩がツインテールにしてる」

胡桃「えっ…」

雪乃「ど、どう?」

八幡「どうも何も。まあ懐かしいわな」

雪乃「そうね」

胡桃「なんだ。元々はツインテールなのか?」

雪乃「いえ、去年この男と買い物に行った時にね。気分転換に」

胡桃「え、か、かか、買い物?」ビクッ

結衣「あー思い出した!あたしの誕生日プレゼント買ってくれた時だっけ?」

雪乃「ええ、そうよ」

八幡「あん時はお前の姉にあったり、サブレが突撃してきたり大変だったな」

雪乃「ええ、そんな事もあったわね」クスクス

胡桃「……」

胡桃「あ、あのさ!」

八幡「ん?」

胡桃「いつかパンデミックが終わったらさ…その、買い物…付き合えよ…」モジモジ

八幡「え?お、おう」ドキッ

雪乃「…………………」

結衣(や、やっぱりくるみんってどう考えても…)ズキズキ

小町「やっぱり小町と由紀さんはサイズ的にピッタリですね!」

由紀「えへへ、小町ちゃんの総武高校の制服が丁度いい感じ!」

小町「どうお兄ちゃん?似合ってる??」フリフリ

八幡「おー小町、世界一似合ってるぞ」

美紀「私もサイズ的に合いそうなのは小町ちゃんしかいないかな」

圭「あーそうだ!」

美紀「?」

圭「ねー美紀!彩加先輩と服交換してみなよ!」

美紀「っ!?何言ってるの!出来るわけないでしょ!」

彩加「そうだよ!そんな恥ずかしい事出来るわけないよ!」

結衣「彩ちゃんの女装…見てみたい…お化粧姿とかも」

彩加「」

八幡(なんだろう。これ以上ここにいると俺にまでとばっちりが来そうだ。戸塚の女装を見れないのは残念だが。逃げるとしよう)

ガシッ

胡桃「……」ニヤリ

由紀「……」ニヤリ

八幡「おい、その不敵な笑みは何だ。腕を離せ。」

由紀「ふっふっふっ、そうはいかないよ!」

胡桃「んじゃこういうのはどうだ?何か勝負をして、負けたら女装をするのは?」

八幡「いや、勝手に話を進めるな」

雪乃「勝負でことを決する…悪くないわね」ニコッ

八幡「おいてめぇ」

彩加「勝負か…それなら!テニスで!」

八幡(よし!テニスならまだ女装回避できる)

胡桃「彩加はテニス経験者だろ?フェアじゃないな」

由紀「よーし!腕相撲をやろう!」

八幡(腕相撲か。まあ女子相手なら楽勝か。雪ノ下あたりには勝つのに苦労しそうだが…)

胡桃「よし、それじゃ対戦相手はりーさんだ!」

八幡「」

彩加「え、りーさんだけで良いの?」

胡桃「ああ」ニヤリ

由紀「うんうん、二人がりーさん相手に一回でも勝てば女装無しでいいよ」ニヤリ

八幡「」

彩加(女の子相手なら大丈夫だよね)

由紀「それでは1回戦、戸塚彩加くんと若狭悠里さんです!」

悠里「フフフ、お手柔らかに」ギュッ

彩加「うん」ギュッ

八幡「やめろ…勝てるわけが無い…」orz

結衣「ヒッキーなんでそんなに怯えてるの!?相手は可愛い女の子だよ?」

由紀「それではレディー…ゴー!」

ダンッ!

彩加「え?」

美紀「」

由紀・胡桃「ふっふっふっ…」ニヤリ

悠里「フフフ」ニコニコ

結衣「一瞬で彩ちゃんに勝った!?」

雪乃「す、すごい腕力ね…」

彩加「ま、まあ…今のは利き腕じゃないし…」ギュッ

悠里「……」ニコニコ

由紀「それじゃ続いて反対の腕で!レディー…ゴー!」

ダンッ!

彩加「」

悠里「フフフ」ニコニコ

美紀・八幡「」

由紀・胡桃「ふっふっふっ…へっへっへっへっ…」ニヤリ

結衣「りーさんって強いんだね!」

胡桃「ああ!由紀と綱引きした時なんか、片手で圧倒してた位だしな!」

雪乃「人は見かけによらないわね」

由紀「さあ続いては!八幡君が相手です!」

八幡「もうダメだ…おしまいだ…」グスッ

悠里「……」ギュッ

悠里「……」

悠里「うっ……///」ドキドキ

八幡「ん?」

由紀「さあ、行きます!レディーゴー!」

ググッ

八幡(ん?あれ、あんま強くない)

悠里「……」ドキドキ

悠里(は、八幡君と手を握ってる…な、なんか恥ずかしい…///)ドキドキ

悠里(彩加くんの時は大丈夫だったのに…)

八幡「ふん!」ググッ

悠里「あっ…」

胡桃「!?八幡が押してる…」

八幡(いける…いけるぞ)ググッ

悠里(~~~っ!///)カァァァ

圭「負けないでりーさん!彩加先輩と八幡先輩の女装が掛かってるんですよ!」

由紀「りーさんファイト!」

結衣「えーと、あーと…ヒッキー手を抜いて!」

雪乃「頑張って負けて比企谷くん!」

八幡「おいてめぇら」ググッ

悠里「そ、そうね…いつまでも…恥ずかしがってる訳にもいかないものね」ググッ

八幡「なっ」

悠里「てい!」

ダンッ!

八幡「グアッ!?」

由紀「りーさん一本!」

【その後】

八幡「すまない戸塚。俺のせいで」

彩加「ううん…仕方ないよ。あんなの反則だもん」

八幡「ああ」

八幡(けっきょく俺はもう片方も負けて、罰ゲームをさせられる)

八幡(俺は恵飛須沢の制服を強制的に着替えさせられ、戸塚は直樹の制服を強制的に着替えさせられた)

由紀「それでは撮影会開始です!」

パシャパシャ!パシャパシャ!

圭「おお!彩加先輩の巡ヶ丘高校の制服似合ってるよ!ガーターベルトもいい感じ!美紀にしか見えない!」

美紀「……な、なんか私まで恥ずかしくなってきた///」

パシャパシャ!パシャパシャ!

雪乃「ぷっ…くくく、とても似合ってるわ比企谷君」

結衣「ぷぷ…あっはははは!!」

悠里「フフフ、また思い出が増えたわね」

胡桃「……///」クンクン

胡桃(これが八幡の制服…これが男の匂いってやつなのか)ドキドキ

由紀「はーい!それじゃ次は男装組のくるみちゃんとみーくん!並んで並んで!」

胡桃「ほれ!並ぶぞ!」ササッ

美紀「なんでそんなに嬉しそう何ですか…」

こうして馬鹿馬鹿しいコスプレ大会は終わった

オマケ②おわり

今日はここまで
次回はオマケ③

過去レスの訂正文は後で投下します

先月に買ったゲームをやりまくってしまい、気がつけば3週間たってた
いまから書き溜めするので、今日か明日に投下します

投下します
因みにゲームはモンハンじゃなくて、龍が如く0やってました

オマケ③
タイトル:胡桃「Shall We Dance?」

【駅前にて】

胡桃「来たな…行くぞ!」

雪乃「ええ」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

八幡「あれ雪ノ下。今日は日本刀を使わないのか?」

雪乃「今日は刀が折れた時の事を想定して、懐のしまってる短刀で挑むわ」ススッ

八幡「そんな短い武器で大丈夫なのか?」

結衣「大丈夫だよ、ゆきのん凄いんだから!」

雪乃「包丁より刃渡りも長いし、それに扱いやすいのよ」

雪乃「ふっ!」シュッ

ザシュッ、ドンッ

胡桃「相変わらず動きが早いな…」

雪乃「ふっ…!」ダダッ

シュバッ、ドサッ

八幡(基本的な動きはヒット&アウェイか)

八幡(ゾンビの首を半分の深さほど斬りつけたあと、キックで敵の体を倒す。その倒れた衝撃で首がもげる)

八幡「なるほど、そういう戦闘方法もあったか」

雪乃「……」ザシュッ

八幡「……」ボーッ

八幡(やっぱすげぇな……思えば、ああいう凛とした姿や振る舞いに憧れを抱いたんだっけ)

胡桃「……」

胡桃「……はぁぁ」モヤモヤ

【学校・屋上にて】

胡桃「……」モヤモヤ

胡桃「なんか自信が無くなって来たな…」

小町「どうしたんですか?」ヒョコッ

胡桃「うわぁぁ!?…って何だ小町か。驚かすなよ」

小町「えへへ、なんか物憂げな表情でいたから気になって」

胡桃「ああ…別に何でもねぇよ」

小町「何が自信ないんですか?」

胡桃「だ、だから!別に何でもないって…」

小町「……お兄ちゃんの事ですね?」ニヤッ

胡桃「っ!!」ビクッ

小町「その反応、図星ですね」ニヤニヤ

胡桃「ぅぅ…///」

小町「お兄ちゃんの事が好きなのは知ってますよ?見てれば分かりますから」

胡桃「あ、えと…その…」カァァ

小町「確かに、この1年半くらいで急に女子との関わりが増えましたからね」

小町「お兄ちゃん自身も曲がりなりにも成長したし、小町としては嬉しいのですが」

小町「最終的にお兄ちゃんが誰を選ぶかなんて、小町にも分かりませんからね」ニヤニヤ

胡桃「」

小町「それで?一体なぜ自信を失くしてるんですか」

胡桃「なんかさ、足元に及ばないって言うか…アタシはガサツで男っぽいしさ…」

胡桃「雪乃はカッコいいしキレイだし…なんでも出来ちゃうしさ」

胡桃「結衣だって可愛いし……胸デカいし、それに明るくて優しいしさ」

小町「なるほどなるほど」

胡桃「それに…アタシの勘だけどさ、学園生活部の皆も八幡に少なからず気があるんじゃないかと思うんだ」

小町「ああ、何か分かります」

胡桃「や、やっぱりそう思うか?」

小町「ええ、想いの強さに個人差はあると思いますが…」

小町「りーさんは…小町の友達のお姉ちゃんみたいに、兄の前だと挙動不審になるし」

小町「みーくんはよく一緒に本読んでるし、戸塚さんにそっくりだし」

小町「由紀さんも、兄からよく勉強教わったり、太郎丸の散歩につき合わされてるようですし」

小町「前は誰からも相手されてなかった分、小町から言わせれば彼女達の想いは分かりやすいですよ」

胡桃「はぁぁ…やっぱりか」

小町「雪乃さんはハッキリしない所がありますが、危険を承知でウチの兄を探してたものですし…結衣さんにおいては言うまでもないですし」

胡桃「うわぁぁ~やっぱりライバル多すぎだ!!」ジタバタ

胡桃「…………」

小町「ほう」ニヤッ

胡桃「あ、いや、違う!こ、ここ、これは…」カァァ

小町「もう良いじゃないですか、だいたい今の話の流れで本音だだ漏れじゃないですか」

胡桃「~~~///」ジタバタ

小町「ただこれだけは言っておきます。頑張るなら背中は押してあげますが、誰の味方でもありません。兄を幸せにしてくれるならそれで良いと考えてますから」

小町「未来のお義姉さんは誰になるのか…小町は楽しみです!」

胡桃「……」

【廊下】

胡桃「……」テクテク

胡桃(新しい仲間が沢山増えて良かったと思ってるし、時々この関係のままでも良いと思うときもある)

胡桃「それでもアタシは…」

胡桃「……」

胡桃「お嫁さんになる。それがアタシの夢だから」

胡桃「いつか結婚して…それで…それで…」

胡桃「……」

胡桃「ん?あそこにあるのは…」チラッ

~~~~~

八幡「疲れた。流石に疲れた」フラフラ

八幡(サブレと太郎丸の散歩に付き合わされたり、祠堂と直樹と戸塚と俺の4人でテニスしたり、菜園スペースの拡大を手伝わされたり…)

八幡(この後の予定だが昨日、丈槍が俺と『めぐねえ』の3人で次のイベントを考えようと提案され、これから職員室へ向かう)

八幡(別に構わんがなぜ3人だけなんだ。正確には2人だが。まあどうせサプライズ的に知らせたいんだろうけど)

八幡「………」


八幡「ん?」チラッ

八幡(そこの教室で何かが見えた。たしかあの教室は文化祭の演劇で使った物が保管されてる場所だ)


胡桃「うわぁぁっ…すっげぇぇ…!!」キラキラ

胡桃「着てみたかったんだよな~ウェディングドレス~!」クルクル

胡桃「えへへへ///」

胡桃「ん?」チラッ


八幡「」

胡桃「」

【空き教室にて】

八幡「んで、どうしたんだその格好は」

胡桃「文化祭の演劇じゃさ…シンデレラ役になれなかったから、その…ドレスを着てみたかったというか…」

八幡「俺がシンデレラ役で悪かったな」

胡桃「全くだ!大体なんで男のお前がシンデレラなんだよ…」

八幡「文句があるならクジ引きを提案した丈槍に言え」

胡桃「でもこうやって着れてよかった…えへへ…」クルクル

八幡「……っ」ドキッ

胡桃「あのさ」

八幡「ん?」

胡桃「えと、似合ってる?」

八幡「あ、ああ」

胡桃「そっか。えへ、えへへ…///」

胡桃「そういえば美紀と踊った時はどうだった?」

八幡「恥ずかしくてよく覚えてない」

八幡(ただあの時だけ、奉仕部2人から冷たい視線を送られたのは覚えてる)

胡桃「そっか…ああいう役って初めてだったんだっけ?」

八幡「いつもは裏方みたいなのばっかりやってたからな。あと碌な思い出が無い」

胡桃「でたでた、また黒歴史自慢…」

八幡「そもそもイベント行事ほど、俺にとって苦痛な物は無かったからな」

八幡「小学生の時のキャンプファイヤーだって、相方は俺と手を繋ぐのがイヤで結局、エアオクラホマミキサーをやらされるハメになった」

胡桃「それ前に聞いたし…」

胡桃「……」

八幡「んじゃ、おれは部室に戻ってるわ。お前も早く着替えないと他のやつらに見付かるぞ」

胡桃「……」

胡桃「待ってくれ」

八幡「ん?」

胡桃「えと…その…」モジモジ

胡桃「小学校の頃の嫌な思い出なら、今ここでアタシが払拭させてやるよ」

八幡「……?」

胡桃「い、一緒に踊らないか?」

八幡「」

胡桃「だめ?」

八幡「断る」

胡桃「ちょ、待てって!!」ガシッ

八幡「何でそんな恥ずかしい事しなきゃならないんだよ。誰かに脅されてるの?罰ゲームなの?」

胡桃「んな訳ねぇだろ!」

八幡「とにかく俺はやらないからな」

胡桃「私と踊るの…イヤなのか?」ウルウル

八幡「え、ぁ…いや…そういう意味じゃなくて…」ドキッ

胡桃「美紀と踊っても良かったのにアタシとじゃ不満なのか?」

八幡「いや、だからあれは演技上の理由だから止む終えなくてだな」

八幡「お前だって俺となんかと踊って何が楽しいだよ、血迷いすぎだ」

胡桃「……」

胡桃「……」ポフッ

八幡「っ!!?」ドキッ

八幡(恵飛須沢が俺の胸元に、両手と頭部を預けてきた)

八幡「おい…何だよ…」ドキドキ

胡桃「お願い、アタシと踊って」

八幡「」

胡桃「しゃ…しゃ…」

胡桃「……Shall We Dance?」

八幡「えと…まずは自分の左手で相手の右手をにぎり、頭の高さまで持ち上げ、自分の右手を相手の腰に添える…」ガシッ

胡桃(あわわわわ///な、なんだこれ…///)ドキドキ

胡桃「あ、あとはどうすれば良いんだ?」

八幡「お前はスカートを左手で軽く掴む」

胡桃「こ、こうか?」クイッ

八幡「ああ、そうだ」

八幡・胡桃「……」ドキドキ

胡桃(あわ、あわわわわわわ///)ドキドキ

八幡「それじゃ、動くぞ」

胡桃「お、おう!」

八幡・胡桃「……」クルクル

八幡・胡桃「……///」ドキドキ

八幡(やばい、緊張のあまり汗がすげぇ出てる)

胡桃(えへ、えへへへ…///)

胡桃「……///」ポーッ

八幡「……」チラッ

八幡(頭の中真っ白だったが、ふと何気なく時計を見たら10分も経過してた)

八幡(そろそろお開きするか…)

胡桃「あ…痛っ」グキッ

胡桃(やっべ足首くじいた…!)グラッ

八幡「え」ガクッ

ドンッ

八幡(いきなり恵飛須沢が前に体重を乗せてきた。俺はよそ見してて、自分の体を支えてる余裕もない)

ドカッ

胡桃「うわああ!!」

八幡「痛っ!!」

胡桃「ご、ごめん!!大丈夫か!?」

八幡「ああ、俺は大丈夫だ。お前は?」

胡桃「お前が支えてくれたおかげで助かったよ」

八幡「なんだよいきなり、人の体を押し倒しやがって…」

胡桃「悪い、ワザとじゃないんだ…その、足首を挫いて」

八幡「そうか、大丈夫か?」

胡桃「大した事は無い」

八幡「そうか」

胡桃「ああ」

八幡「……」

胡桃「……」

八幡(俺は床に仰向けとなり、恵飛須沢は俺の体と重なり合っている)

八幡(なに体勢。思いっきりハレンチじゃないか。どこのリトさんだよ!)ドキドキ

胡桃「……」

八幡「なあ…恵飛須沢、退いてくれないと立ち上がれないんだが」

胡桃「……」

八幡「お、おい…」

胡桃「もう少し、このままでいさせて」

八幡「」

胡桃「その…ダンスで疲れたから休憩させて…」

胡桃「……///」ドキドキ

八幡「……」ドキドキ

八幡(恵飛須沢が俺の胸元で、顔を赤らめながら埋めている)

胡桃(温かい…)ドキドキ

八幡「……」

八幡「なあ、そろそろ」

胡桃「うん」

胡桃「……」

胡桃「ん?」チラッ

胡桃「」ビクッ

八幡「どうした?」

胡桃「」


八幡(さっきまで頬を紅潮させてた恵飛須沢の顔面が、みるみると真っ青になっていく)

八幡(その怯えたきった視線の先に何があるんだ)チラッ



結衣「………………」プルプルプル

雪乃「………………」ニコニコ


八幡「」

ガララッ

八幡「あ、いやこれは」

結衣「ヒッキー!!!これはどういう事!!?」

八幡「あの…あれだ、その、ちょっとした過ちというか」

雪乃「…………」ニコニコ

八幡(怖!笑顔なのに怖!あと無言の威圧やめて雪ノ下さん!)

結衣「何をどう誤ったらこんな事になるの!?説明しろし!!」

雪乃「…………」ニコニコ

八幡「ちゃんと説明するから落ち着け。あと雪ノ下はその笑顔止めろ。怖いから」

雪乃「…………」ニコニコ

八幡「お、おい」ビクッ

雪乃「…………」ニコニコ

胡桃「ゆ、結衣、それと雪乃…これは元々はアタシが誘った事なんだ。だからあまり責めないでやってくれ!」

結衣「誘った!!?」プルプル

胡桃「あ、いや、でもイヤらしい意味とかじゃなくてだな」

結衣「もう充分イヤらしいから!ヒッキーのバカ!」プルプル

八幡(なぜ俺ばかり責められるですかね…)

雪乃「あら比企谷君、他校の女の子を誘惑し手篭めにするとは良い度胸ね?それで、今は警察も機能してないし、どうしようかしら?なんなら私が直々に制裁を加えても良いのだけれど」ニコニコニコ

雪乃「……何か言い残した事はあるかしら?」ハイライトオフ

八幡「」

胡桃「その…私から説明するから、どうか許してくれ」

雪乃「……」ニコッ

胡桃(あ、笑顔に戻った…ホッ)

雪乃「恵飛須沢さん」ニコニコ

胡桃「は、はい!」ビクッ


雪乃「少し黙っていてもらえるかしら?」ハイライトオフ

胡桃「」

八幡(雪ノ下の目に光が無くなっている)ガクガク


――その後、騒ぎに駆けつけた他のメンバーが全員そろい奉仕部二人をなだめる

事情を説明すると、丈槍の提案でみんなで『舞踏会』を開く事になった
事情説明しても相変わらず、怒り心頭の由比ヶ浜、目に光の無い雪ノ下の2人と踊ると、ようやく彼女達の目の色が元に戻った

こうして2つの意味で緊張した1日は終わりを迎える


オマケ③おわり

今日はここまで

オマケ④
タイトル:雪乃「奉仕部に依頼?」悠里「ええ、貯水槽の掃除のお手伝いを」

【深夜・職員室】

ガサゴソ、ガサゴソ

八幡「……」

八幡「疲れた。そろそろ寝るかな…いや、もう少しだけ」

ガララッ

雪乃「あら、泥棒がいるわ」

八幡「ネコとかじゃなくて残念だったな」

雪乃「こんな深夜に職員室で何を?」

八幡「そういうお前らこそ、そろいも揃ってどうした?しかも武装準備して」

結衣「いや~なんかヒッキーが寝室からなかなか帰ってこないから、心配で…」

胡桃「ドコに行ったのかと思ったら、ここにいたのか」

八幡「あー心配かけて悪かったな」

八幡「ちょっと、職員室が気になってな」

小町「こんな所を漁ったって食糧なんて出てこないんじゃない?」

八幡「いや食糧以外で気になる事があって」

圭「えっと、どんな事が?」

八幡「え?そうだな、なんつーか」

八幡「ここって何でも揃いすぎてないか?」

彩加「うん…便利すぎる位だもんね」

雪乃「確かに1つの学校でこれだけの物を用意するのは不自然ではあるわね」

八幡「ああ。だから、もしかしら何か手がかりが見付かるかと思ってな」

八幡「このパンデミックの原因、そしてこれから俺達がすべき事のヒントがな」

雪乃「これから私達がすべきこと…」

結衣「やっぱり避難待ってるばかりじゃダメなの?」

胡桃「そうもいかないだろ…それにいつか、アタシたちは卒業するんだ」

圭「卒業…そうだね。いつまでもココで生活する訳にもいかないもんね」

八幡「学校外の、手に入れてない非常食だって無限にある訳じゃない。それにココの設備もいつまで持つかもわからんしな」

八幡「……そしてなによりも、その『卒業』がどんな形で訪れるかだ」

胡桃「救助が来て学校を卒業するのか、それともここでの生活に限界が来て卒業するのか…そのどれかだな」

ガララッ

悠里「あら?」

美紀「あ、皆さんいたんですね」

八幡「ん、いま来たのか…お前らはドコにいたんだ?」

美紀「部室です…あれ、由紀先輩は?」

胡桃「部室で寝てる。まあバリケードは強化されてるし奴らも駆除してあるから、心配ないだろ」

雪乃「私達は寝ていたのだけれど、比企谷君がいつまで経っても帰ってこないから、皆で巡廻してたの」

悠里「八幡君は職員室で何を?」

八幡「ああ、実は…」

~説明中~

悠里「なるほどね。どうやら私達と考えてた事が同じようね」

八幡「じゃあ、お前達も」

悠里「コレを見て」チャリン

八幡「それは…」

悠里「めぐねえの持っていたカギよ」

八幡「そのカギに合う物の中に、重要な情報を得られるかもしれない訳か」

ガサゴソ、ガサゴソ

八幡「ん?写真か…」

八幡(恵飛須沢と丈槍、そして真ん中に見知らぬ女性が)

美紀「八幡先輩、どうしました?」

八幡「写真を見つけた」

美紀「これは…まさか」

胡桃「ん?ああ、その写真の真ん中に載ってるのはめぐねえだ」

結衣「え、見せて見せて!」

雪乃「この人が、学園生活部の顧問だった人なのね」

八幡(これが…めぐねこと佐倉先生か)

八幡(な、何だ…この写真からも滲み出る慈愛のオーラは…)

八幡(城廻先輩と戸塚と丈槍を掛け合わせた様な…ほんわかした雰囲気。それに…)

八幡「……」ドキドキ

胡桃「……なに鼻の下伸ばしてんだよ」ムスッ

八幡「べ、べべ、別に伸ばしてなんかねぇよ」ドキッ

雪乃「まあ、確かにキレイな人ね」

結衣「うん、すっごい美人だね!」

八幡(……しかし、平塚先生といいこの佐倉先生といい、どうしてこう良い人に限って早く亡くなるんだ。もっとも平塚先生は俺を庇った事が原因なんだが…)

八幡(美人薄命を地で行く人達だな)

~~~~~

あの後に丈槍が来て、一緒に職員室の中で探し物をした。

終始はしゃいでいた丈槍だが重要な役割を果たし寝室へ戻る。つくづくアイツの天性の勘には驚かされる

だがあの書類に記載された情報に俺達は戦慄が走る
全員が激しく動揺した。無論俺もだ

そんなショックを引きずった心境の最中、またしても丈槍がイベントの提案をした

【翌日】

雪乃「奉仕部に依頼?」

悠里「ええ、貯水槽の掃除のお手伝いを」

雪乃「昨日あんな事があったばかりで、よくそんな…」

胡桃「アタシも初めはそう思ったんだけどさ、雪乃達が校内見まわり行ってる間に、色々と話し合ってさ」

胡桃「掃除を通して、アタシ達は少し気持ちの整理をしようって話になったんだ」

雪乃「気持ちの…整理を…」

結衣「良いんじゃない?やろう!ゆきのん!」

雪乃「……そうね。このままウジウジしてても何も変わらないし。依頼を引き受けるわ」

八幡「なあ、別に依頼を引き受けるのは構わんが」

結衣・雪乃「?」

八幡「わざわざ奉仕部に依頼って形で報告する意味あるのか?」

結衣「何を言ってるのヒッキー?今あたし達は総武高校の奉仕部じゃなくて、巡ヶ丘高校の奉仕部員なんだよ」

八幡(え、そうなの?てか巡ヶ丘高校に奉仕部あったの?いやあるはずない。だいたい学園生活部だってパンデミックが起きてから出来たモンだって言うし)

結衣「そして同時に!学園生活部と掛け持ちをしてるんだから!」

八幡「なら学園生活部の部員として命令すれば良いだろ」

悠里「……八幡君にとって、奉仕部は特別な存在なのでしょう?」

悠里「なら、奉仕部を形として残しても良いと思うの」

八幡「……」

雪乃「ふふふ、それにこの部室は奉仕部の部室でもあるし」

八幡「初耳なんだが」

雪乃「廊下にいってプレートを見てくればわかるわ」

ガララッ

八幡「……」

八幡「本当だ…なんか下のほうに小さく書かれてる。いつの間に付け足したのか」

【翌日・屋上】

八幡「……」

キャッキャッ、フフフ

八幡(魚をバケツに入れて、掃除を終えたと思ったら…いつの間に水遊びが始まっていた…)

八幡(以前、モールへ『遠足』に行った時に水着を入手したと聞いてたが、その後も恵飛須沢が密かに、新入部員の水着を入手していた)

八幡(その余計な心使いのおかげで俺も水遊びに参加させられるハメに。千葉村の時の様には成らなかった様だ)

キャッキャッ、フフフ

八幡(ずっとボッチだったせいか、どうもこういうのに慣れてなくて落ち着かない。照れくさいと言うか、単に恥ずかしいというか。しかも俺を除いて全員女)

八幡(だから俺は心を無にして、プールに浮かばせたエアーボートの上で、青空を見ながら昼寝をしてる訳だ)

八幡「……」

八幡(俺を除く、ここの面子は全員美少女の部類に入る)

八幡(以前、誰かさんに理性の化け物なんて言われたけど流石に緊張する)ドキドキ

八幡「……意識してはダメだ、寝よ」

彩加「八幡!寝てないで一緒に遊ぼうよ!」

バシャッ

八幡「そうだ戸塚がいた。とつかわいい。今水をかけてやるからな!」バシャバシャ

彩加「うわ!やったな!」バシャバシャ

八幡「ああ、なんてすばらしい光景なんだ。これが青春か」

胡桃「でや!」バシャ

八幡「うお!?」

胡桃「あたしも混ぜろよ!」

八幡「あ、えと……ぁ……ほ、ほれ」バシャッ

胡桃「えへへへ///」バシャッ

八幡(あれ、戸塚とふたりきりの水遊びだったのに、流れでやってしまった)

結衣「そーれっ!」バシャッ

八幡「ぐっ!」

結衣「ヒッキー!あたしも混ぜてよ!」

八幡「……えと、そら」バシャッ

結衣「きゃっ!」

胡桃「ほら!次いくぜ!」バシャッ

八幡「……」ドキドキ

八幡(な、なんかヤバイ。これは心臓に色々と悪い。退避しよう)

ビチャッ

八幡「っ!?なんだ…今度は誰だ」

雪乃「……」

八幡「なんで水鉄砲を持ってるんですかね」

雪乃「借りたの」ビシュッ

八幡「ちょっおま、やめ」

雪乃「……」ビシュッ

八幡「お、おい…このやろ!」バシャッ

雪乃「きゃっ…セクハラよ?」ニコッ

八幡(そんな良い笑顔でセクハラと言われても…)

由紀「とりゃああ!」

バシャアアッ

八幡「!?」

由紀「えへへへ!」

八幡「バケツでかけるとか豪勢すぎだっつーの!」

ビシャーッ

八幡「っ!?」

八幡(なんだこの威力は…!?)

美紀「フフフ、どうですか?」

八幡「プールサイドからホースでの水かけとか卑怯すぎんぞ」ゾクゾク

美紀「……その割には嬉しそうですね。なんで鼻の下伸ばしてるんですか」

八幡「さあな、それより直樹はドコにいるんだ?」

美紀「私が直樹です!彩加先輩なら先輩のすぐ隣にいます」

彩加「八幡!いくよそれ!」バシャッ

八幡「や、やったなーこいつ!」バシャッ

八幡(と、戸塚のためにもう少しだけ水かけを続けるか)

圭「それそれ!」バシャッ

小町「挟み撃ちだよお兄ちゃん!」バシャッ

由紀「助太刀いたす!」バシャッ

雪乃「フフフ…」ビシュッ

八幡「ぐぁ!?ちょ、おい、4人同時で攻めるのは止せ!」

結衣「あたし達もいくよ、くるみん!」バシャッ

胡桃「うりゃああ!!」バシャッ

八幡(何か俺ばかり集中砲火されてる気が…)

八幡「疲れた」

八幡(しばらくして水かけも終わり、各自が自由に行動し始める)

八幡(俺は再び一人、エアーボートの上で昼寝を再会した)

八幡「……」ヌボーッ

八幡(しかし急に静かになったな…さっきまで騒がしかったのに)

八幡「まっ、いいけど」

~プールサイドにて~

結衣「ね、ねえ、なにあれ?」

美紀「さ、さあ?」

由紀「はわわわ…」


胡桃「アンタ、かなりのガンマンと見てた。二つ名とかあるんじゃないのか?」

悠里「フフフ…さあ、どうかしらね?」

ビシュッビシュッ


圭「なんか面白そう!」

雪乃(私も混ざりたいわ)


ビシュッビシュッ

胡桃「何が誰かが持ち込んだ玩具だってんだ!大方自分で持ち込んだ私物って所だろ!」

悠里「ふふふ、ご名答。代わりに良い事を2つ教えてあげる。1つはあなた、景気良く2丁拳銃を連射してたけどその残弾、もう少ないハズよ?」

胡桃「!!」

悠里「もう1つ、私の通り名を教えてあげるわ。風船爆弾の魔術師よ」

悠里「それ!」フワッ

胡桃「くっ!水風船か…でもシャベルでガードすれば!」

悠里「割らずに跳ね返した!?」


八幡(……なんか急にプールサイドが騒がしくなって来たな。何やってんだアイツら)


胡桃「最後の勝負だ!」ダッ

悠里「望む所のよ!」ダッ


圭「おお!二人とも貯水槽に飛び込んだ!」

美紀「なんか凄い白熱してるし…」

小町「あれ?お兄ちゃんは…って、エアボートの上で寝てる」

八幡「……」ヌボーッ

八幡(しかし良い天気だ。寒い時期なハズなのに水遊びしても全然寒くないな)

八幡「ん?何かが飛んでくる…」

八幡「……は?」


悠里「この勝負、負けないわよ…ってあれ?」


八幡(青空を見上げていたら突如、若狭が水鉄砲を構えながらコチラにダイブしてきた)

八幡「え、ちょ、待っ…」

悠里「キャッ!!」

ボヨォン

八幡「っ!?」

八幡(若狭の豊満なバストが、俺の顔面に突撃してきやがった)

ザパァァン

全員「!!?」

~~~~

八幡「ぶはぁ!」

悠里「ぷはぁ…ごめなさい、大丈夫!?」

八幡「あ、ああ…俺は平気だ…それより…」

八幡「その、すまん」

悠里「え?」

八幡「いや、だから、さっき俺の顔面にお前の…」

悠里「…………」

悠里「~~~///!!!」

悠里「えと、不可抗力だし。仕方ないわ…」カァァァ

八幡「お、おう…」ドキドキ

八幡「……」チラッ

悠里(は、恥ずかしいわ…)カァァ

八幡(改めてみるけど、やはりデカい…こんな柔かい凶器が顔面にめり込んだのか…)ドキドキ

胡桃「……」

胡桃(ぶつかる位置、逆だったらな…)シュンッ

八幡「ぜぇぜぇ…凄い目にあった」

小町「もうお兄ちゃんったら何やってるの?」ニヤニヤ

八幡「……返す言葉も見付からない」

雪乃「全く呆れるわ…」

八幡「……」

八幡(雪ノ下の奴…千葉村の時と違ってビキニか。白く華奢な体が目立つな)

雪乃「……あ、あまり見られると恥ずかしいのだけれど」ドキッ

八幡「あ…いや、その」

結衣「もうヒッキーのスケベ!」ボヨン

八幡(っ!こいつ良く見ると、去年千葉村で着てた物より際どいの着てるな。下乳が…)ドキッ

美紀「やっぱり八幡先輩はスケベな人なんですね」ジトッ

由紀「良いな、私もりーさんにパフパフしたいなぁ」

圭「八幡先輩も気をつけなきゃダメだよ」

美紀「そうですよ、飛び込みでああ言う事態だってありうるんですから」

胡桃「……ま、まあアタシとりーさんが始めた事だからその辺に」

悠里「ごめんね八幡君」

彩加「でも二人とも怪我無くて良かったよ」

八幡「ちょ、お前ら…ち、近い…」

八幡(ヤバイ、ただでさえ若狭にバストアタックされたばかりなのに…)ドキドキ

八幡(こんなに一斉に囲まれたら…理性を保つのが精一杯だ…)ドキドキ

八幡「うっ…」スッ

美紀「…?急に前かがみになってどうしたんですか」

由紀「八幡君どうしたの、おなか痛いの?」

八幡「いや、そういう訳じゃ…」

胡桃「なんだよ、男なんだしシャキッとしろよ」

八幡「悪いが今は絶対シャキッとできん」

胡桃「?」

悠里「大丈夫?やっぱりさっきぶつかったから…」スッ

八幡(っ!!人の顔を覗き込むように見るな、視線がお前の胸が行ってしまうだろ)

八幡「ぐ…ぐぐ…!」ドバッ

悠里「きゃっ、鼻血が!ティッシュティッシュ!」

胡桃「鼻血出すの久々だな…でも今回はバストアタックが原因か…」

小町「そうですね。物理的にも精神的にも」ニヤニヤ

八幡「余計な事を言わんでいい」ドババッ

【深夜・部室】

彩加「今日は楽しかったね!」

八幡「ああ、久々に鼻血出したけどな」

八幡(おかげで少しふらつく)

悠里「今日の御飯は大和煮よ」

結衣・由紀「やったー!」ハイタッチ

美紀「えへへ、今日は楽しかったね太郎丸」ナデナデ

圭「あれ美紀。私と一回離れた後、太郎丸が懐かなかったんじゃ」

美紀「うん、でもさっき圭が目を離してる時に仲直りしたんだ」

圭「そっか!仲直りできたんだね…」ナデナデ

太郎丸「ワン!」

美紀「……今日はとても楽しかったです。本当に」

胡桃「そうだな。明日も明後日も、ずっとこんな風に楽しい毎日だったら良いよな!」

悠里「……明日は、地下へ行きましょうか」

胡桃「例の避難区域か」

雪乃「初めて行く場所だったかしら?良い物が見付かると良いわね」

結衣「未知なる場所…なんかワクワクするね」

八幡「……」

八幡(楽しい日々か)チラッ

八幡(外は相変わらず荒廃しててゾンビだらけ…とか言ったら、空気読めとか言われるんだろうな。まあ丈槍もいるし言わんが)

八幡(しかしいつまでも続くのだろうか。この楽しい日々は。楽しければ楽しいほど、言い知れぬ不安が積もっていく)

八幡(不謹慎な事だが正直に言うと、4人と再会してからの数日間、この学校での避難生活は、人生の中で最も楽しかった日々と言える)

八幡(まるで夢でも見ているかのように。そう、丈槍たちが俺にくれた夢、希望)

八幡(……しかし窓から見える光景を見つめる度に、残酷な現実に引き戻される。大切な人達が亡くなってるのも事実)

八幡(世の中はそう上手くは行かない。苦い思いする事のほうが多い)

八幡(いずれにせよ)

由紀「大和煮楽しみだな~」

八幡(俺は丈槍から夢や希望を貰った。地獄行きから救ってもらった)

八幡(だからこそいつか、彼女には恩を返したい。彼女を一生、現実逃避させる訳にはいかない)

八幡(かつて本物を手にすることを恐怖した事がある、失うのが怖いからだ。それでも俺は本物を欲した。そしていま俺はこの現状を失いたくない)

八幡(丈槍にとっての学園生活部は偽物ではない。俺から見ても本物だと思う。だが日常そのものに関しては虚構も含まれている。焦ってはならないが時間をかけてでも、いつかは現実を認識させるべきだ)

由紀「ねぇみんな、良い事思いついた!」

全員「?」

由紀「またさ、演劇やろうよ!」

八幡「断る」

由紀「ええ~!?」

胡桃「あ、あたしは賛成だけど…」モジモジ

雪乃「そうね、前回は私はお客様としてだったし…キャストとして出てみたいわ」

結衣「ゆきのんと同じく賛成~!」

彩加「良いね、面白そう!」

美紀「そもそも前回はキャストが不足すぎて、二役やる人もいましたからね」

悠里「そうね。かなりギリギリというか最低限の必要な役者しか揃えてないし。是非やりましょう」

圭「それじゃ決定だね!」

小町「小町も賛成でーす!お兄ちゃん以外、満場一致だよ?」

八幡「」

雪乃「……また、風船を飛ばすのでしょう?」

由紀「もちろん!風船に広告を貼り付けてお客さんを集めないと!」

悠里「そうね。『お客様』を呼び込まないとね」

八幡「……」

八幡(つーか一人も来なくて、客が来なかったらどうするんだよ)

キャッキャッ、ガヤガヤ

八幡(全員笑顔で、楽しそうに計画を話し合っている)

八幡「はぁぁ…仕方ねぇな。わーったよ。やりますよ」


とりあえず今は引き続き、この閉ざされた空間で夢と希望のありがたみを噛み締め、楽しく日々を送る事にしよう

いつか訪れるかもしれない、過酷な現実と向き合うその日が来るまで

由紀「楽しみだね!めぐねえ!」

胡桃「……なあ、りーさん」ヒソヒソ

悠里「どうしたの小声で?」ヒソヒソ

胡桃「時々、思うんだけどさ…めぐねえって、すぐそこにいるのかな?」

悠里「え?」

胡桃「あ…いや、別に…やっぱなんでもない…忘れてくれ」

悠里「……」

八幡「幽霊でもいるって言いたいのか?」

胡桃「え?……うん」

八幡「そんな事、俺達が考えても仕方ないだろ。死んだ事ないんだし、分かる訳無い」

胡桃「ああ…そうだな。でも」

胡桃「もう一度、めぐねえに会いたいっ…て思ってさ」

八幡「……そうか」

雪乃「……先生に、そう」

結衣「……」

八幡「……」

願っても仕方ない事だが…俺も、もう一度だけでもいいから平塚先生に会いたいと思う

今日はここまで
次回で、おまけラストです

幽霊めぐねえと幽霊平塚先生の出会いのお話になります
若干オカルトちっくな話だけど、一応ほのぼの内容で締める予定です

投下します
まずは訂正箇所から

>>521(訂正)

悠里「っていう事は、八幡君は…その、バラ系の人なのかしら?」

八幡「おいちょっと待て。おれはホモでもないし、バイでもない。戸塚を愛してるだけだ」

胡桃「どっちなんだよ!」

彩加「もー!また八幡はそうやって僕をからかう!」プンスカ

八幡「毎日お前を探してたんだぞ?お前に味噌汁を作ってほしくて」

彩加「もう!僕じゃなくて結衣ちゃんや雪ノ下さんに頼みなよ!」

八幡「え…あ、えと」ドキッ

雪乃「っ」ドキッ

結衣「ぅぅ…///」ドキドキ

八幡「ゆ、雪ノ下はともかく、由比ヶ浜の毒なんて飲んだら死んでしまう」

結衣「味噌汁の扱いすらしてくれない!?」

胡桃「……」ジーッ

八幡「ま、そういう訳だ。戸塚、味噌汁を作ってくれ」

彩加「それじゃ…八幡と僕で二人で作ろう///」

八幡「よーしわかった。作ろう。毎日作ろう。24時間作ろう。俺とお前なら雪ノ下や若狭の味噌汁すら軽く越えるだろう」

雪乃「はぁぁ…勝手に言ってなさい」

胡桃「な、なあ結衣」

結衣「なに、くるみん?」

胡桃「もしかして八幡の彩加に対する愛情って、アタシ達が想像してるのと違う…?」

結衣「うん。アレはもう病気っていうか…ノリみたいな本気っていうか…でも本気じゃないというか…」

胡桃「……」

悠里「てっきり本当に、相思相愛なのかと思ってたわ…それじゃ八幡くんに恋人はいないのね…ほっ」

悠里(なんで今、ホッとしたのかしら私…)ドキッ

八幡「ああ。ただし俺と戸塚は相思相愛だけどな!ガチでな!」

胡桃「あーはいはい」

悠里「ふふふ」

美紀「……」カァァ

美紀(何だろう…なぜか恥ずかしい…)

由紀「みーくん?顔が赤いよ」

美紀「放っておいて下さい!」

圭「美紀ったらまるで自分の事だと思って見てたでしょう」

美紀「ち、違うってば!そんなんじゃない!」

>>524(訂正)

【体育館・文化祭】

悠里「それでは文化祭を始めます」

悠里「まず、文化祭実行委員長の丈槍由紀さんからのご挨拶です」

雪乃・結衣・圭・彩加・小町「……」パチパチパチパチ

由紀「この度は巡ヶ丘高校の文化祭の参加、心から感謝申し上げます」ペコッ

由紀「私は学園生活部に所属し、演劇の出し物を行います」

由紀「どうか最後まで、楽しんでいってください」

由紀「スローガンは『覚めない夢、輝き続ける希望』です」

八幡(いつスローガンなんて決めたんだ)ヒソヒソ

胡桃(めぐねえと『相談』して決めたんだって)ヒソヒソ

八幡(めぐねえと…か)

由紀「それでは皆さん、この文化祭の成功を願い、私から幸せなれる魔法の言葉をお届けします」

由紀「びびでばびでぶー!」

~~~~~

美紀「お疲れ様です由紀先輩」

由紀「えへへへ、挨拶どうだった?」

八幡「ああ、アドリブで良くあそこまで言えたものだ」

八幡「100点満点中、100点だ」

結衣「高!!」

小町「あの採点が厳しいお兄ちゃんが、ここまで評価するなんて珍しいですよ!」

八幡「どこぞのバカ委員長と比べれば上出来だろ」

雪乃「ふふふ、そうね」

>>526(訂正)

【劇(シンデレラ)】

美紀(王子役)「おお、靴が入った!」

八幡(主演)(流石に透明な靴は発見出来なかったんだよな…ってキツ!このハイヒールきつ!)ググッ

雪乃「ぷっ…くくっ…比企谷君の女装…最高だわ…」

結衣「ぷっ…あははは…!ヒッキーまじウケる!!」

圭「美紀!かっこいいよ!!」

美紀「やはりアナタこそ、私が捜し求めてた運命の人だったんだ!」

八幡(美しい。とつかわいい)ボタタ

悠里「あ、また鼻血が!はいティッシュ!」ダダッ

胡桃「本番くらい踏ん張れよ!ほらティッシュ!」ダダッ

八幡「す、すまん」

美紀「ここ重要な場面ですよ先輩!」

雪乃「まったく何をやってるんだか…」

小町「ゴミィちゃん…」

【劇(走れメロス)】

美紀(主演)「すまないセリヌ。俺は途中で疲れてしまい、キミを裏切りそうになった」

八幡(セリヌ役)「俺のほうこそすまない。実はキミを疑ってしまった」

八幡「せめてもの罪滅ぼしとして、俺を殴ってくれ」

美紀「わかった、それなら俺の事も殴れ」

美紀「いくぞセリヌ!」ボカッ

八幡「くっ」

八幡(痛くない。パンチの仕草が可愛い)

八幡「では俺も」ポンッ

美紀「くっ」

美紀(全然痛くない…まあ、気を使ってくれてるのでしょうけど)

八幡(演技でいかにも痛そうにしてる表情が可愛い。っていうかメロスの服はボロボロに破けてるせいか、かなり露出度が高い。メロスならぬエロス)

八幡「これでおあいこだ」ボタタ

悠里(国王役)「は、鼻血が出てるわ!はいティッシュ!」ダダッ

胡桃(セリヌの弟子役)「おい邪知暴虐の王!お前がティッシュをあげてどうするんだよ!ほれティッシュ!」ダダッ

由紀(妹役)「くるみちゃんの出番はもう終わりだよ!」

小町「あーあー…もうメチャクチャですねー…」

雪乃「重要な場面でいつも締まらないわね…」

圭「ぷっ…くく、あっははははは!」

>>527(訂正)

【演劇終了後】

悠里「実は前に鉄板を見つけたの」

胡桃「んで、麺と野菜と肉、醤油を入れて…」ジュウゥゥ

八幡「なるほど、これで焼きそばが焼けるという訳か」

由紀「屋台の出来上がりだね!」

ワイワイ、ガヤガヤ

八幡「……」

八幡(まさか本当に文化祭が行われるとわな…)

圭「彩加先輩!はいあ~ん」スッ

美紀「ちょっと圭!何やってるの!///」

彩加「じ、自分で食べれるよ!///」

八幡「戸塚、おれに食べさせてくれ」

ワイワイ、ガヤガヤ

八幡(……)

八幡「ああ…楽しいな…」

>>530(訂正)

八幡「さて、もう一眠り…」

八幡「……zzz」

ガララッ

胡桃「おい八幡!見まわりいくぞ!」

八幡「ふぁ?今朝行ったじゃねぇか…」

胡桃「あ…じゃ、じゃあ!もう一回!」

八幡「やだよ」ゴロッ

胡桃「んじゃ屋上にいって菜園の手伝い行こうぜ!」グイグイ

八幡「ちょ、おい…引っ張るな…」


悠里「八幡君いるかしら?」

雪乃「比企谷君、屋上の菜園作業を手伝ってほしいのだけれど。大量に野菜が採れそうで女子だけじゃ大変なの」


結衣「ヒッキー!これからユッキーと体育館で、サブレと太郎丸のお散歩するから付き合って!」

由紀「お散歩お散歩!」

圭「八幡先輩!これから彩加先輩の女装ショー始めるから手伝って!」

彩加「や、やめてよぉ!///」

美紀「ちょっと圭!彩加先輩に何やってるの!」

小町「ふっふっふ、お兄ちゃん大変だね~」


八幡「」

八幡「俺は聖徳太子じゃないんだ。一辺に言うな」

八幡(のんびり過ごそうかと思ったがそうはいかない様だ)

八幡「要件あるなら順番ずつ頼む」

外はパンデミックで、世は絶望に満ちている
それでも暫くはこの閉ざされた空間で、幸福を噛みしめようと思う

ここには、夢も希望もあるから

終わり

>>579(訂正)

結衣「ジッとしてても仕方ないし、今のうちいつでも外に出れる準備しよ!」

雪乃「そうね、ここもぜったい安全とは限らないものね」

結衣「必要な物を押し入れにあるから手伝って」

雪乃「分かったわ」

~~~

雪乃「こんな感じかしら」

結衣「食料と水と薬箱、服と預金通帳もある。オッケーだね」

ドォォォン!!

結衣「きゃあああ!!!」

雪乃「なにか爆発した音が…隣からかしら…」

ゴゴゴゴゴ…

雪乃「っ!!大変、火が付いてるわ…」

結衣「うわやっば!!消火器、消火器…たしか玄関前に…」ダダッ

雪乃「みるみる燃え広がっていくわ…毛布じゃ間に合わない」バタバタ

結衣「は、早くしないと…」

ガチャッ

結衣「ひぃぃ!!」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

結衣「い、いやあああ!!」カチッ

シュゥゥゥ!!

雪乃「どうしたの!?」ダダッ

結衣「ぞ、ゾンビが沢山いて…消火器で吹き飛ばした…」

ゴゴゴゴゴ…

雪乃「火がすぐそこまで来てるわ…!」

シュゥゥゥ!!

結衣「ウチを消しても、お隣も消さないとどんどん広がっていくばかりだよ…!」

ゥゥゥ…ア“ア”ア“ア”…

雪乃「っ!!マズイわ、消火器の粉で飛ばされてたゾンビたちが立ち上がってきたわ!!」

結衣「ど、どどど、どうしよう!?」

雪乃「……命が最優先よ、逃げましょう」

結衣「ごめん!!パパ、ママ!あたし家を守りきれ無かった…」ダダッ

結衣「行くよサブレ!」

サブレ「キャンキャン!」

>>580(訂正)

~雪乃のマンション~

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…

雪乃「」

結衣「う、うそ…あのマンションまで…」

雪乃「絶対的なセキュリティを誇っていたあの堅牢なマンションが…」

結衣「ど、どうしようゆきのん…」

雪乃「……こうなったら行くべき所は、公的な避難所か私の実家ね」

ブロロロロ!キキィィィー!

陽乃「雪乃ちゃん!ガハマちゃん!」

雪乃「姉さん…!」

陽乃「早く乗って!」

雪乃「行きましょう!」

結衣「うん!」

~車中~

雪乃「無事だったのね。助かったわ」

結衣「ありがとうございます…」

陽乃「……」

雪乃「姉さん…」

陽乃「……」

陽乃「残念だけど、ウチの会社はもう終わりだよ」

雪乃「え…」

陽乃「お父さんの会社…それと、ウチの実家が全焼しちゃった…」

結衣「!!?」

雪乃「う、うそ…」

陽乃「食糧、生活用品意外に、通帳はもってきたけどね…果たしてこんな世の中になって、銀行は役に立つのだろうかね…」

陽乃「流石にお姉ちゃんも参っちゃってるよ」

雪乃「姉さん、私達はこれからどこへ…」

陽乃「行く当てはあるよ。手遅れじゃなければ良いけどね」

陽乃「少なくともそこらの避難所よりも安全かも」

>>583(訂正)

~数日後~

結衣「このシェルターも随分人が増えたね」

ワイワイ、ガヤガヤ

雪乃「ええ、気を使ってくれて男性達は皆、お屋敷の方にいるけど」

ガチャッ

葉山「ただいま!」

モブ女子1「あ!おかえり葉山君!」

モブ女子2「食糧確保お疲れ!」

戸部「いやー!外にゾンビがわんさかいて参ったわー!」

三浦「お疲れ隼人…外はやっぱ危険?」

葉山「ああ。でもウチは安全だから、息苦しくなったら屋敷にもおいで」

三浦「うん」ウルウル

結衣「しっかしここ、なんでも揃ってるね。漫画もDVDあるし」

雪乃「浄水機能、太陽光パネル、パンデミックに備えた食糧もある…正直、充実し過ぎてるわ」

陽乃「隼人の所もやっぱ支援してたのかな?」

葉山「え?うーん…俺はよく知らないけど…ある企業からのお礼として、このシェルターが去年に作られてね」ビクッ

雪乃「企業からのお礼?」

陽乃「雪乃ちゃんはしらなかったか~私もね、パンデミック起きる少し前に知ったんだけどさ」

陽乃「ランダルなんとかっていう企業に、雪ノ下建設も支援してたんだって」

雪乃「ランダル…?」

陽乃「それでランダルなんとかからのお礼で、雪ノ下家にもシェルターとか作ってもらう予定だったんだけど…世の中がこんな事になっちゃって…」

雪乃「そうだったの…」

>>590(訂正)

陽乃「雪乃ちゃん?私が許すとでも思ってるの?」

雪乃「心配してくれてありがとう。でも、私はもう決めたの」

陽乃「妹の自殺行為を見逃すと思ってるの?」

雪乃「何とでも言いなさい。例えどんな妨害が来ようと怯まないから」

雪乃「それとも、一緒についてくる?」

陽乃「比企谷くんはお気に入りだけど無理」

陽乃「いくらお姉ちゃんが万能だからって、外に出て絶対無事でいられる保証はないんだよ」

陽乃「私はね、死ぬ訳にはいかないの。雪ノ下建設を復活させるから」

陽乃「この預金通帳、パンデミックが終わっても通用するか分からないけど…何年掛かっても私はやるよ」

雪乃「……母さんの最期は、取り乱すほど父さんを心配して、死んだって言ってたわよね?」

雪乃「私にも今、似たような感情があるの」

雪乃「だから行くわ。なんと言われようと」

陽乃「雪乃ちゃん…!」

モブ女子1「比企谷って…ああ!思い出した!中学いっしょだった!」

モブ女子2「ああ、あのかおりに告った奴でしょ?暗くてキモかったよね~」

モブ女子1「ねぇー、ありえないよねー。他にも結構イタい行動しててさー」

結衣「」ピキッ

折本「あはは。そんな事もあったけ…でもアイツああ見えてさー…」

モブ女子1「え、なになに?アイツのこと庇ってるの?」

モブ女子2「そんな同情しなくてもいいのに」

モブ女子1「あんなのに命かける必要ないのにねー」

雪乃「ねえアナタ達」

モブ女子1・2「わっ!?ビックリした」ビクッ

雪乃「さっきまで言ってた事、よく聞こえなかったからもう一度、言ってくれるかしら」

モブ女子1・2「」

雪乃「早く言いなさい」

それでは最後のオマケを投下します

オマケ⑤(ラスト)
タイトル:幽霊めぐみ「国語教師、佐倉慈です」幽霊平塚「国語教師、平塚静です」

――雪乃と結衣が、巡ヶ丘高校に到着する数日前

【千葉県のとある大きな公園】

幽霊平塚「……」ムクッ

幽霊平塚「……」フラフラ

幽霊平塚「……」

幽霊平塚「私は一体何をしてたのだろうか…」

幽霊平塚「……」

幽霊平塚「ああ、そうか。私は死んだんだ」

~~~~

幽霊平塚(それから私は、特に何も考えずにフラフラとそこらを徘徊した)

幽霊平塚「……」

幽霊平塚「最期の記憶は断片的だ…」

幽霊平塚「比企谷の顔を見ていたら…いつの間にか意識が薄れ…気がつけば彼を襲っていた」

幽霊平塚「そして比企谷に介錯して貰った事は覚えてる」

幽霊平塚「……」

幽霊平塚「辛い事を押し付けてしまったな…」

「む、平塚女史ではないか!?」

幽霊平塚「キミは…」

幽霊材木座「久しぶりである!」

幽霊材木座「我の姿を視認できるという事は…」

幽霊平塚「……ああ、そういう事だ」

幽霊材木座「む、無念…」

幽霊平塚「ははは…まあ、比企谷を殺さずに済んだだけでもマシかもな」

幽霊材木座「あの屈強な女史ですら、生ける屍となってしまったのか…」

幽霊平塚「それで…これが死後の世界って奴なのか?やけに現実と変わらないが」

幽霊材木座「ううむ…専門外ゆえ、上手く言葉に出来ぬが」

幽霊材木座「我らは現世に留まった、浮遊霊とでも言っておこう」

幽霊平塚「浮遊…霊…」

幽霊材木座「これだけの大惨事が起きたというのに、意外にも幽霊の数が少ないと感じる」

幽霊平塚「確かに…もっとウジャウジャいてもいいハズ」

幽霊材木座「強烈な後悔や未練…それらを残した者のみが、『あの世』とやらにも行けず、現世に留まっているように思う」

幽霊平塚「パンデミックで亡くなっていった殆んどの人が、訳も分からぬ内に巻き込まれていったからな…未練だの後悔だの考えてる余裕もなかったという事か」

幽霊材木座「……」

幽霊平塚「……」

幽霊材木座「ラノベ作家になりたかった、声優さんと結婚したかった…」

幽霊平塚「私も結婚したかった…」

~~~~~

幽霊平塚「キミは何をしている?」

幽霊材木座「うむ、まあいつ『あの世』とやらに送り込まれるか分からぬ」

幽霊材木座「他にやることもなし…故に八幡の行方を追うことにした」

幽霊平塚「……そうか、なら私もそうしよう。彼が心配だ」

幽霊材木座「む、何かが落ちてくる?」

幽霊平塚「これは…風船か、それに何かが張り付いてる」パシッ

幽霊平塚「……巡ヶ丘高校文化祭だと!?」

幽霊材木座「こんな世紀末状態で、何ゆえそんな行事を」

幽霊材木座「ってこれは!?」

幽霊平塚「どうした?」

幽霊材木座「この粗末な似顔絵の中に、一人目つきの悪い男が…」

幽霊平塚「……!!これは比企谷じゃないか」

幽霊材木座「その証拠を決定付ける様に本人のコメントまで書かれているぞ」

『3日間待ってやる』by比企谷八幡

幽霊平塚「間違いない。比企谷は生きている!」

幽霊平塚「善は急げだ、行くぞ!」

幽霊材木座「うむ!」

【巡ヶ丘高校・校門前】

幽霊平塚「しかし幽霊になると便利な事もあるな。いくら走っても疲れない」

幽霊材木座「飯も要らぬからな…それはそれでイヤではあるが」

幽霊平塚「とにかく、ここに比企谷がいるんだな…」

「あら、お客さんですか?」

幽霊平塚「む?」

幽霊平塚(私達の姿が見えるという事は…)

幽霊慈「はじめまして」ペコッ

幽霊慈「国語教師、佐倉慈(さくらめぐみ)です」

幽霊平塚「はじめまして、同じく…」

幽霊平塚「国語教師、平塚静です」

幽霊慈「あら、平塚さんも教師を勤められているのですね」

幽霊平塚「ええ、総武高校で勤めてまして」

幽霊慈「総武高校…なるほど、アナタが八幡君の…」

幽霊平塚「っ!?やはり彼がこの学校に」

幽霊慈「ええ」

幽霊材木座「……」ボーッ

幽霊慈「…隣に居る彼は?」

幽霊平塚「おっとすまない、同じく総武高校の生徒だ。ほら挨拶だ」

幽霊慈「はじめまして」ニッコリ

幽霊材木座(か、かわいい)ドキドキ

幽霊慈「義輝くん?あの…大丈夫ですか、聞こえてますか?」

幽霊材木座「ふぁっ!?」

幽霊平塚「ほら、シャキッとしなさい」

幽霊材木座「む…わ、わわ、私、僕、我は剣豪将軍・よ、よしてる…だ」ドキドキ

幽霊慈「は?」キョトン

幽霊平塚「こら、ちゃんと挨拶せんか」

幽霊材木座「ごめんなさい。総武高校3年生の材木座義輝です」

幽霊慈「ふふふ、面白い子ね」

幽霊材木座「っ!」ドキッ

幽霊慈「まだ若いのに…もう亡くなってしまったのね。やりたい事も沢山あったでしょうに…可哀想に」ナデナデ

幽霊材木座「」プシューッ

幽霊平塚「中二病で礼儀知らずの上に小心者だが、いざとなればやる男だ。最期は比企谷や私の為に命を張って守った程だ」

幽霊慈「あら勇敢なのね。偉いわ」ナデナデ

幽霊材木座「あ、いや、その…ともかく八幡の所へ」カァァァ

幽霊平塚「そうか、比企谷はココを拠点に彼女達を探してたのか」

幽霊慈「ええ、それはもう雨の日も風の日も…来る日も来る日も…」

幽霊平塚・幽霊材木座「……」

幽霊慈「それに学園生活部にとっても彼の存在は大きなものとなっています」

幽霊平塚「他校の女子4人に囲まれて生活してると聞いて少し不安はあったが、杞憂だったな」

幽霊材木座「うむ、あの八幡を理解する女子といえばあの奉仕部と生徒会長くらいかと思ってたまであるしな」

幽霊慈「ふふふ、本当に彼が友達がいない嫌われ者だなんて信じられませんよ」

幽霊慈「さあ、まもなく屋上に着きます」

幽霊平塚「ここに比企谷が…」ガチャッ

【屋上】

由紀「魔法の呪文、不思議な言葉!びびでばびでぶー!」パッ

悠里・美紀・胡桃・八幡「ビビディバビディブー」パッ

アルノー鳩錦3世・4世「ポォォ~」バサバサッ

~~♪~~♪

幽霊平塚・幽霊材木座「」

幽霊慈「フフフ」

幽霊平塚「あの…彼と彼女達は一体何を」

幽霊慈「町で風船と広告を見つけたって言ってましたよね?」

幽霊慈「ああやって、知り合いに届くように風船と伝書鳩を解き放っていたんです」

幽霊平塚「それは分かるんだが、何故歌い踊っているんだ」

幽霊慈「フフフ、魔法の言葉を唱えているんですよ」

【部室】

ワイワイ、ガヤガヤ

幽霊平塚「どうやら比企谷は本当に彼女達と上手くやっているようだな」

幽霊平塚「佐倉先生、学園生活部を設立した事に感謝します」

幽霊慈「いえいえ私は何も…八幡君を支えてくれたのは彼女達ですから」

幽霊材木座「しかし後は、あの女子達がメッセージに気付き、この学校まで到達できるか否かであるな」

幽霊平塚「あと3日か…もうちょっと待ってもいい気がするが、比企谷も焦ってるんだな」

幽霊慈「私達は残念ですが、見守ることしかできませんね…」

幽霊平塚「ええ…」

~~~~

幽霊慈「平塚先生の最期はどうして…」

幽霊平塚「ああ、比企谷を庇って彼らに嚙まれて…」

幽霊慈「……そうですか」

幽霊平塚「佐倉先生は?」

幽霊慈「そうですね…とりあえず地下区域に行きませんか?」

幽霊平塚「地下?」

【地下通路】

バシャ…バシャ…

ゾンビ慈「ギギギ…ォォォ…」フラフラ

幽霊平塚「……」

幽霊材木座「……」

幽霊慈「私も平塚先生と似たような感じです。まだ3人だった頃の学園生活部を守るのが精一杯で」

幽霊慈「せめて彼女達だけは襲いたくないと想い、とっさの判断でココに逃げ込みました」

幽霊慈「残された理性を振り絞って日記を書いてたのですが…いま幽霊となって見てみると、何を書いてるのか分かりませんね」

幽霊平塚「そして理性も完全に侵食されて、魂が離脱したと」

幽霊慈「ゾンビになって分かりましたが、しばらくは生きてるんですよね…もっと早くあの注射の存在が分かれば…」

ゾンビ慈「ギギギ…グ…グググ…」フラフラ

幽霊慈「はぁぁ…何で私こんな姿になってしまったの~」グスッ

幽霊材木座「……」

幽霊材木座(……あんな姿になっても何故か可愛く見えてしまう)

幽霊慈「はぁぁ…学園生活部を守れたのは良かったけど、結婚したかったなぁ…」

幽霊平塚「え、結婚してなかったんですか?」

幽霊慈「ええ…残念な事に。平塚先生の様にキレイな人だったら私も今頃…」

幽霊平塚「私もです」

幽霊慈「え?」

幽霊平塚「私も独身です。っていうか、彼氏いません」

幽霊慈「え、ええええぇぇ!?そんな、平塚先生こんなにキレイでカッコいいのに…」

幽霊平塚「そういう佐倉先生こそ身も心もキレイなお方なのに…意外です」

幽霊慈「まったく、世の中の男性は見る目ない人ばかりです」

幽霊平塚「どうやら佐倉先生と私は結構、共通する物があるようですね」

幽霊慈「ええ。同じ国語教師で部活の顧問もやっていて…」

幽霊平塚「生きていたら良き友、教師仲間になれたでしょう」

幽霊慈「そうですね…私も、もっと早く平塚先生と出会いたかったです!」

幽霊平塚「全くだ。今度一緒に飲みに行きませんか?」

幽霊慈「良いですね!是非行きましょう!」

幽霊平塚・幽霊慈「……」

幽霊平塚・幽霊慈(もう私達死んでたんだっけ…)ズーン

【3日後の深夜】

幽霊平塚「今日までに来なかったら、比企谷は学校を出て行ってしまうのか…」

幽霊材木座「ぐぬぬ…もはや時間が無い」

幽霊慈「……あの子も帰ってこないかな」

幽霊平塚「あの子とは…?」

幽霊慈「ええ、実は平塚先生と義輝くんがこの学校に来る前まで、ある男の子がいました」

幽霊慈「この学校の卒業生、陸上部OBの先輩君です」

幽霊平塚「ああ…確か恵飛須沢の先輩だったという人か」

幽霊慈「彼は今、学校外にいる亡くなったかも知れない知り合いに会いに行くと言って、町へ向かいました」

幽霊慈「八幡君のひたむきに知り合いを探索する姿に感銘を受け、自分も知り合いに会いに行くと言って出て行きました」

幽霊慈「……恵飛須沢さんに辛い思いをさせてしまった事をずっと悔やんでいて、彼女を見守っていました」

【夜明け】

幽霊慈「良かった…ギリギリ、ここに辿り着いて…」グスッ

幽霊平塚「ほっ、雪ノ下も由比ヶ浜も生きていて良かった…」

幽霊材木座「……うーむ」

幽霊平塚「どうした、こんな時に浮かない顔をして」

幽霊材木座「いや、八幡の妹と戸塚氏を忘れているぞ」

幽霊慈・幽霊平塚「あ」

幽霊材木座「あやつめ…油断しておるな。まあいっそのこと今は忘れておいた方が良いのかも知れぬ」

幽霊材木座「いま二人の存在を思い出すと、また出て行くとか言い出しかねん」

幽霊平塚「……確かにな」

~~~~~

八幡「小町…戸塚…」

胡桃「あ…」

美紀「そうだ…私にそっくりの戸塚さんと、妹の小町さんが。まだ全員見付かってなかったんだった」

幽霊材木座「ついに思い出してしまったか」

幽霊慈「八幡くん…」

幽霊平塚「……」

雪乃「比企谷君、もし探索するのなら私と由比ヶ浜さんも行くわ」

八幡「ダメだ」

結衣「ダメって…あたし達はずっとヒッキーの事探してたんだよ!」

八幡「でもダメだ…」

雪乃「どうして…」

八幡「ここは安全だし、食料もある」

八幡「それに……」

八幡(材木座や平塚先生の二の舞にはさせない)

雪乃「それに…なにかしら?」

八幡「……お前達に話しておかないといけない事がある」

八幡「スーッ……」

幽霊平塚「待て比企谷!」

八幡「!?」ビクッ

幽霊平塚「焦るな。待つことも大事だ!」

八幡「せ、先生!?」バッ

幽霊平塚「え?」

幽霊材木座「まさか…八幡おぬし…」

幽霊慈「平塚先生の声が聞こえたのね…」

幽霊平塚「比企谷…私の声、聞こえるのか?」

八幡「……」

八幡「……気のせいか?」

幽霊平塚「……」

幽霊慈「ほんの一瞬だけ、だったみたいね」

幽霊材木座「それでも、今の一言はきっと八幡の考えを改めるに違いない」

~~~~~

幽霊平塚「良かった…比企谷妹も戸塚も無事に辿り着いた」

幽霊慈「さっきの一言は、大きかったですね」

幽霊平塚「しかしまさか私の声が、一瞬でも届くとは」

幽霊慈「……たまーに、あるんですよ」

幽霊平塚「え?」

幽霊慈「私の声もたまに、由紀ちゃんに通じる時があって…」

――回想――

由紀「そろそろお家に帰ろうっと」

幽霊慈「由紀ちゃんダメ!」

由紀「ふぇ?」

幽霊慈「学園生活部はお外に出てはいけない決まりでしょ?」

由紀「あ、そうだった!うっかりしてた!」

―――――

幽霊慈「前にもこんな事があって…」

幽霊平塚「なるほど、それは危なかったですね」

【数日後】

幽霊平塚「しかし比企谷め、彼女達と再会を果たしてからという物、パンデミック以前よりも楽しそうに日々を送っているな」

幽霊材木座「ぐぬぬぬ!おのれ八幡!女子に囲まれリア充になりおって!」

幽霊慈「ふふふ、本当に楽しそう…私も混ざりたいわ」

幽霊材木座「ん?部室に風船や鳩を持ち込んでいるぞ?」


由紀「それじゃ早速、広告を作ろう!」

悠里「今回は文化祭として出なく、演劇祭という形で開く事にしました」

八幡「ま、文化祭は前にやったしな。出し物は今回とあまり変わらんが」


幽霊平塚「そういえばまた演劇をやるって話だったな」

幽霊慈「フフフ、また新しい訪問者が訪れたりして」


由紀「それじゃクジ引きを行いまーす!」

胡桃「またクジ引きかよ!」

~~~~

結衣「え、ヒッキーまたシンデレラ役なの!?」

八幡「」

雪乃「つくづく運がいいのねアナタは。因みに私は継母役だからヨロシクね」ニッコリ

八幡「とてもピッタリな役柄だな」

結衣「あうぅぅ…アタシは義理の姉役だよ…」

由紀「また魔女役だ!」

八幡(おい、これもしかして前回とあまり変わらないんじゃ)

美紀「あれ…私は今回、王様の家来役です」

八幡「え」

彩加「八幡…ぼ、僕が王子様役だって」

八幡「おい丈槍、いますぐ俺と戸塚の役柄を交換してくれ」

由紀「ダーメ!」

八幡「くそ…戸塚のドレス姿みたかった…」

【数日後・葉山宅の庭】

いろは「大変です葉山先輩!」

葉山「どうしたんだい?」

いろは「また風船を見つけちゃいました!」

葉山「っ!!本当か!?」

いろは「ええ、しかも人が増えてて…」

葉山「これは…この似顔絵、間違いない」

葉山(雪乃ちゃんも結衣も生きていたのか…それに戸塚と比企谷の妹も)

いろは「こんどは演劇祭を開くらしいですよ」

葉山「一体彼女達は何を目的にこんな行事を…それで本番の日付けは?」

いろは「えっと…ってあれ!?今日です!」

【巡ヶ丘高校・体育館】

ポツーン

由紀「今日は皆さん、巡ヶ丘高校の演劇祭に来て頂き、心から感謝申し上げます!」

八幡「見事にガラガラだな」

胡桃「今回は訪問者は来なかったな」

雪乃「ええ、残念ね」

悠里「フフフ、でも不思議ね。由紀ちゃんの目にはまるで大勢の人が映っているかのように感じるわ」

美紀「まあ、由紀先輩ならそう見えるんでしょうね」

結衣「よーし、ここはユッキーの為に人肌脱ごう!」

八幡「もう完全に丈槍の自己満足のお付き合いだな……別にいいけどよ」


幽霊平塚「学園生活部全員の目には客が居ないように見えてるが」

ガヤガヤ

幽霊1「生き残りの人達がこんな学校で何を始めるんだ?」

幽霊2「演劇だってさ。観客は幽霊ばかりだけど」

ガヤガヤ

幽霊慈「ふふふ、いっぱい来たわね」

幽霊材木座「……ちょっとしたホラーであるぞこれ」

【劇(シンデレラ)】

彩加(王子役)「どうかこの僕と踊ってくれないか?」

八幡(主演)「喜んで!!」

【劇(走れメロス)】

彩加(メロス役)「セリヌ…ぜぇぜぇ、待たせたな!!」

八幡(セリヌ役)「とつ…メロスーーー!!」


結衣「ヒッキー明らかに前よりも気合を入れてるし!?」

雪乃「全くあの男は…」

美紀(ぅぅ…やっぱり何か恥ずかしい…///)

胡桃「またヒロインと相棒役を逃した…」グスッ

~~~

由紀「以上で、巡ヶ丘高校の演劇祭を終了します。ありがとうございました!」

シーン

由紀「えへへへへ」

八幡(丈槍は目の前に誰もいないとも知らずに、笑顔で精一杯手を振っている)

結衣「ねえ、なんか折角だしあたし達だけでも拍手しようよ」

悠里「そうね、こういうのは…雰囲気が大事だし」

胡桃「よし、拍手を送るぞ!」

パチパチパチパチ

幽霊1「思ってたよりも良い演技してたな」

幽霊2「ああ楽しかった」

パチパチパチパチ

幽霊平塚「彼女達には見えていないが、大勢の幽霊達が拍手を送っているな」パチパチ

幽霊慈「ええ」パチパチ

幽霊材木座「うむ、なにやら不思議な気分である」パチパチ

「ええ、とても良い演劇祭でした」

幽霊平塚「ん、キミは?」

「間に合ってよかった」

幽霊慈「あら先輩君。久しぶりね!」

幽霊平塚「キミが例の先輩か…」

幽霊先輩「どうも初めまして。二人とも」

幽霊材木座「う、うむ…」キョドッ

幽霊慈「知り合いには会えたのかしら?」

幽霊先輩「はい。家族にも友人にも会ってきました」

幽霊先輩「死んでしまった訳ですから、再会に喜べるかと言われたら、複雑でしたけどね」

幽霊慈「そうね…」

幽霊先輩「でも皆、少し話した後…何処かへ行きました」

幽霊先輩「もう、これで未練は無いと言い残して」

幽霊慈「?」

幽霊先輩「だから俺も最期にまた学校に立ち寄ろうと思いました」

幽霊慈「え…」

幽霊先輩「胡桃には随分、辛い想いをさせてしまいました。生きて守ってあげる事も出来なくて…それがずっと心残りでした」

幽霊先輩「でもあの様子だと胡桃も元気にやってるようだし、もう心配もいらないでしょう」

幽霊先輩「胡桃には彼女達と八幡がいる。だからもう心配入りません」

幽霊先輩「もう悔いはありません」

幽霊先輩「さよなら、先生達」


幽霊慈「ちょ、ちょっと…」

幽霊先輩「さよなら、胡桃」


幽霊慈「あ…先輩君…」

幽霊平塚・幽霊材木座「消えた…」


胡桃「え」クルッ

悠里「どうしたの胡桃?」

胡桃「……」

胡桃「先輩?」

八幡「……」

由紀「どうしたの八幡くん?窓から外を眺めて」

八幡「いや…今日は曇りだなーって思ってただけだ」

由紀「うん、あんまり天気は良く無いね。でも雨が降らなくて良かった!おかげで沢山のお客さん来たよ!」

八幡「ああ、今日は曇り程度だが…明日あたりは雨でも降りそうだな」

八幡(ゾンビも大勢くる。明日は身構えておかないとな)

幽霊平塚「他の幽霊たちも消え去ったな…未練が無くなったと言う事なのか?」

幽霊慈「でも私達は残ってしまいましたね」

幽霊材木座「うむ、どうやら我らは相当な想いで未練を残してしまっているようだな」

幽霊平塚「ははは、そのようだな」

幽霊慈「平塚先生、もう少しだけ私と共に、彼と彼女達を見守るのを付き合ってくれますか?」

幽霊平塚「勿論だ」

幽霊慈「義輝君も良いかな?」ナデナデ

幽霊材木座「うっ!!う、うむ…」ドキドキ

由紀「おおーい!みんな!集合写真とるよ!」

小町「セルフタイマー付きカメラをセットしてっと…タイマーをいじって…」

小町「はーい皆さーん!30秒前ですよ!」

圭「みんな集まって!」

胡桃「先輩……」キョロキョロ

胡桃「さっき…先輩の声が…」

胡桃「気のせいなのか?でもさっき確かに…」キョロキョロ

由紀「胡桃ちゃん早く並ぼう!八幡君の私が隣とっちゃうよ!」

胡桃「あ…ちょ、待てって!!」ダダッ

胡桃「……」

幽霊慈「私達も一緒に並びましょうか」

幽霊平塚「そうだな。まあ写ってないだろうけど」

幽霊材木座「心霊写真として残れば話は別ではあるがな」

~~~~

結衣「えへへ、なんかフリーペーパーの時に部室でとった写メ思い出すね」

八幡「って言うか、構図があの時とまんまだろ」

八幡(俺の真後ろに雪ノ下と由比ヶ浜がいる。俺は身長があるハズなのにパイプイスに座らせられている)

八幡「つーか俺、真ん中イヤだから退くわ」

雪乃「そうはさせないわ」ガシッ

結衣「そうだそうだ!」ガシッ

八幡「人の肩に手を置くな!」ドキッ

胡桃「そうだ八幡!動くな!」ガシッ

八幡「うおっ、恵飛須沢いつの間に隣のイスに座ってたのか」ドキッ

胡桃「えへへ///」

美紀「……私もいますけど?」

八幡「おお戸塚、お前も俺の隣にいたのか」

美紀「直樹です!」

八幡「すまん間違えた」

小町「全員並び終えましたね?」

圭「そろそろ5秒前かな」

由紀「3、2、1…はいチーズ!」

パシャッ

こうして俺達はまた1つ思い出を残した

いつまでこの平穏が続くか分からない、いつ夢から覚めてしまうかも分からない
それでもいつかパンデミックの終焉を迎えるその日まで…この日常を、彼女達の笑顔を守りたい

オマケ終わり

以上です
後半ダラダラと更新してた割には終わらせたくない思いが強いです

でも本当にこれで終わりです
思えば今まで書いてきたSSで一番書いてて楽しく感じました(反省点もあるけど)
また多くのコメントを頂き感謝してます

ここまで見ていただき感謝しています
では、またドコかで

HTML依頼する前に報告します

【続編ついて】
気が向いたらですが、やるかもしれません
ただ色々と考えた結果、SS速報からでなく、渋あたりでやろうと考えてます
(因みに渋ではまだ何も投稿してません)

もし書くとしたら以下の内容になります

・『あめのひ』から『卒業』までの話(正統な続編)
・IFストーリー(分岐ルート)
・くるみちゃんルートのラブコメもの

タイトルは分かりやすく以下の通りにすると思います
(例)
八幡「と、戸塚―!!」由紀「みーくんの彼氏!?」(続)
八幡「と、戸塚―!!」由紀「みーくんの彼氏!?」(分岐ルート)

一番やる可能性が高いのは分岐ルートです
(ほのぼの系には成らないルートもあるので注意)
もしあちらで見かけたらヨロシクです

あと可能性は低いけど>>229的な妄想は良くにするのでry

別作品は多分SS速報で書くと思います

ただ続編にしても、別作品にしても書くにしても少し遅れると思います
(やりたい事が他にあるのでそれらを片付けてから)

恐らく来年になってしまうと思うので、ご了承下さい
では

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年09月06日 (日) 13:47:21   ID: AA0bP8yT

いいですねぇ
続き頑張って

2 :  SS好きの774さん   2015年09月06日 (日) 22:16:53   ID: gXapIA5K

続き求む

3 :  SS好きの774さん   2015年09月17日 (木) 21:35:55   ID: 5W5VsA9U

面白いですね!
続きまってます

4 :  SS好きの774さん   2015年09月26日 (土) 01:11:41   ID: CkDn3ApQ

続き待ってるぜ

5 :  SS好きの774さん   2015年09月28日 (月) 03:19:01   ID: Z-09sqfu

知らないうちにだけどこの人の作品けっこう読んでたなぁ。
これからは酉も覚えとくようにしよう

6 :  SS好きの774さん   2015年10月01日 (木) 01:54:33   ID: 21vGeDTl

続きが気になる

7 :  SS好きの774さん   2015年10月02日 (金) 08:37:45   ID: oF3Tup_O

乙女なりーさんとか最強じゃねぇか

8 :  SS好きの774さん   2015年10月03日 (土) 00:12:10   ID: CHhakB0W

続き楽しみにしてます!

9 :  SS好きの774さん   2015年10月05日 (月) 17:03:38   ID: Mcm6X5jv

少し荒れてきてるね、不安だ

10 :  SS好きの774さん   2015年10月07日 (水) 22:11:45   ID: V9WXpy4c

これは面白い。必ず完結させて欲しいです

11 :  SS好きの774さん   2015年10月07日 (水) 23:58:02   ID: 4vbbuwoQ

続き待ってます

12 :  SS好きの774さん   2015年10月08日 (木) 04:13:13   ID: TiZSK1L_

原作並みに続き楽しみにしてる

13 :  SS好きの774さん   2015年10月14日 (水) 22:40:16   ID: heAKYDIu

良作

14 :  SS好きの774さん   2015年10月19日 (月) 23:53:13   ID: 20qMlVMy

面白いなんてもんじゃない

15 :  SS好きの774さん   2015年10月22日 (木) 21:54:43   ID: 3qvXKGM_

面白かった、ありがとう

16 :  SS好きの774さん   2015年10月22日 (木) 23:16:34   ID: QOAkt7Fj

面白かった、素敵なssありがとう

17 :  SS好きの774さん   2015年10月23日 (金) 04:23:46   ID: SSya3eJ3

この調子で番外編+ルート分岐も頼むわ

18 :  SS好きの774さん   2015年11月17日 (火) 00:10:28   ID: OaXiyByv

あくしてくださいお願いします

19 :  SS好きの774さん   2015年11月29日 (日) 17:22:39   ID: lUkN9z75

もっと続いてくれていいのよ?

20 :  SS好きの774さん   2015年12月03日 (木) 05:02:43   ID: NiPpopyO

1000まで行こう!(提案)

21 :  SS好きの774さん   2015年12月08日 (火) 23:16:29   ID: PeMPCme2

全然がっこうぐらしをしらない俺でも楽しめた、続きを待機中

22 :  SS好きの774さん   2015年12月12日 (土) 01:59:45   ID: hEffwIDY

は?別ルートは?
後、キャラごとのエンドも頼むわ

23 :  SS好きの774さん   2015年12月14日 (月) 21:36:14   ID: z92gdaIS

乙!最高のSSをありがとうございました!

24 :  SS好きの774さん   2015年12月19日 (土) 22:10:16   ID: s9F4itp3

続きが読みたい
お願いします。

25 :  SS好きの774さん   2015年12月26日 (土) 12:18:15   ID: FDD9PzAz

なかなか面白かった
くるみちゃん可愛い

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