モバP「だりやすかれんの10年後」 (26)



―――


李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「…………」


李衣菜「……えっと。久しぶり、だね」

加蓮「うん、久しぶり。2人とも元気そうで良かった」

李衣菜「いつ振りかな……こんなふうに顔突き合わせて話すの」

泰葉「そうね……。確か、私たちがそれぞれの道を歩きだしてからだから……もう10年くらい前?」

李衣菜「うわ、そんな経つ?」

加蓮「ふふ、みんなテレビに出てるから、ずっと会ってなかったなんて思えないよね」

泰葉「ええ、本当に。でも……また、こうして会えて嬉しいな」

李衣菜「うん。泰葉も、加蓮も……変わらないね」

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加蓮「そう? 昔より落ち着いたって自分では思うけど」

李衣菜「あはは、そりゃ流石にね」

泰葉「いつまでも女子高生のノリじゃいられないでしょう?」クスッ

加蓮「ふふっ、それもそうだね。……どう、色気も増したでしょ?」

泰葉「…………」

李衣菜「…………」

加蓮「……なんか言いなさいよ」

李衣菜「ふっ、ご、ごめんごめん……ふふ♪」

泰葉「ふふふ……♪」

加蓮「ったくもう。そういうところはほんと変わらないんだから」ムス…

李衣菜「まぁ、期待の女優さんに色気が無かったらお笑い種でしょ。……頑張ってるみたいじゃん」

加蓮「ん、あぁ……ありがと。まだまだ勉強中だけどね」

泰葉「連続ドラマ、成功して良かったじゃない。私、全話観ちゃった」

加蓮「ほんと? ふふ、あれはまさに苦労の連続だったなぁ」

李衣菜「あー……私あんまり観れなかったんだよね……。ごめん、加蓮」

加蓮「ううん、気にしないで。李衣菜、この1年は全国ツアーで大変だったもんね……。それ以外にも色んな歌番出たりしてたし」

泰葉「ふふっ……今年は李衣菜が1番忙しかったんじゃないかしら」

李衣菜「そ、そんなことないよ。それ言うんだったら泰葉だって舞台、主役だったんでしょ?」

加蓮「あ、そうだったそうだった。お花贈ったんだけど気づいてくれた?」

泰葉「うん、もちろん。ありがとう、2人とも……。まるで一緒にいてくれてるような気がして、とっても頼もしかった」

李衣菜「へへ……。喜んでくれたなら良かったよ。今度はちゃんと観に行くからさ」

加蓮「そっか、追加公演も決まったんだっけ。私も観に行くね」

泰葉「本当? 無理しないでね、加蓮は体力ないんだから……」

加蓮「いや、前と比べないでよ……。これでもジム通ってるんだからね?」

李衣菜「え。嘘だ」

泰葉「……それこそ無理よね?」

李衣菜「ねぇ?」

加蓮「……なるほど、2人が未だに私のことどう思ってるかよぉく分かりましたっ」

李衣菜「あっはは、冗談だよ」

泰葉「ドラマ撮影だってかなり体力使うものね。朝から夜まで撮影なんてザラでしょう?」

加蓮「ふんっ……まぁね。でも楽しいから。お芝居って」

泰葉「……うん。私も、舞台に立つのが楽しいよ」

李衣菜「私は……また2人とはちょっと違う道だけど。どんなステージでも、いつだって鼓動が高鳴るよ」

泰葉「ふふ……いつか共演出来たらいいね」

加蓮「うん、泰葉と私でダブル主演しちゃったりしてっ」

李衣菜「じゃ、私が主題歌を歌っちゃおうかな?」

加蓮「あ、おとなしめの曲でお願いね? 激しいギターソロとか要らないから」

李衣菜「わ、分かってるよっ。そこまで空気読めなくないから!」

泰葉「くすっ……いっそ李衣菜も出演してくれればいいのに」

李衣菜「んー、アイドル時代だったらそれも良かったけどさ。歌手に転向したのに出しゃばるのもね」

泰葉「そう? 全然いいと思うけど……」

加蓮「私、未だに李衣菜がロック歌手だって紹介されてるの違和感あるんだよね」

李衣菜「おおっと。聞き捨てならないぞー?」

加蓮「新譜の特典PV、あれほんとに李衣菜が弾いてるの? CGじゃなくて?」

李衣菜「……ここで大音量で掻き鳴らしてあげてもいいんだけど……?」ピクピク…

泰葉「り、李衣菜落ち着いて……!」

加蓮「んふふっ……そんな怒んないでよ。一応信じてるんだから」

李衣菜「一応って……」

泰葉「もう……加蓮? 李衣菜の努力は私たちがよく知ってるじゃない」

加蓮「ふふ、当然。かっこよかったよ、PV。まさにロック! って感じ?」

李衣菜「最初からそう言ってくれれば素直に喜んだんだけどなぁ……はぁ」

加蓮「ほんとほんと、本当にそう思ってるってば。ふふっ」

泰葉「ふふ……♪ なんだか昔に戻ったみたいね」

李衣菜「あはは……だね。話し足りないなぁ」

加蓮「…………」

李衣菜「……加蓮?」

加蓮「……昔、かぁ」

泰葉「どうしたの?」



加蓮「――Pさん」



李衣菜「っ!」

泰葉「……!」

加蓮「…………」

李衣菜「…………」

泰葉「…………」

加蓮「今も、きっとどこかで……たくさんの女の子の夢、叶えてるんだろうね」

李衣菜「…………うん。きっと――ううん、絶対そうだよ」

泰葉「……私たちの背中を押してくれたこと……今も覚えてる」

李衣菜「あんなの……忘れられないよ。私たちみんな、みっともないくらい泣きじゃくったんだから」

泰葉「スーツ、涙で汚しちゃっても……許してくれたね」

加蓮「いっぱいいっぱい……抱きしめてくれてさ」

李衣菜「最後まで、笑顔で……私たちを送り出してくれた」

泰葉「うん……」

加蓮「ずっと忘れないよ。ずーっと……ね」


李衣菜「……ねぇ?」

加蓮「ん、なに?」

李衣菜「……まだ、2人はさ。Pさんのこと――」



李衣菜「……好き?」

泰葉「……聞くの?」

李衣菜「い、いや……まぁね」

加蓮「そんなの……当たり前でしょ。愛してるに決まってる」

李衣菜「!」

泰葉「私だって……生涯好きな人は、Pさんただひとりよ」

李衣菜「お、おお……ろ、ロックだね2人とも」

泰葉「……李衣菜は?」

加蓮「李衣菜は?」ニヤニヤ

李衣菜「わ、私は……私も、大好きだよ。これだけは……この想いだけは絶対に変わらない」

加蓮「……、っふ……」

泰葉「……ふふ」

李衣菜「……ぷっ」


「「「ふふ、あはははっ♪」」」


李衣菜「み、未練ったらしいなぁもう! いい年してなに言ってんだか!」

加蓮「く、くっふふ……! しょ、生涯って……!」

泰葉「ま、真顔で愛してるとか、……んふっ、ふふふっ……!」

李衣菜「はーあ……笑った笑った。……で? 誰かいい人いないわけ、2人は?」

加蓮「いないいない、誰も彼も上っ面だけだもん。泰葉は?」

泰葉「うーん、私はまだお仕事に専念したいから……」

加蓮「わ、出た。そういうのに限っていつの間にか結婚してるパターン」

泰葉「はいはい。……李衣菜こそ、業界でいいなって人いたりしないの?」

李衣菜「えー? ダメダメ、骨のないロックじゃないのばっかりだよ」

加蓮「なんだ、結局3人して独り身? うわ、さみしー……もう四捨五入で30歳なのn」

李衣菜「歳の話は」

泰葉「やめましょう」

加蓮「はい」


李衣菜「……まぁ」

加蓮「うん」

李衣菜「色々言い訳したけどさ」

泰葉「うん」

李衣菜「……Pさんのこと、忘れられないだけだよね。私たち」

「「……うん」」

加蓮「はぁ……Pさぁん……」

泰葉「迎えに来てください……Pさーん……」

李衣菜「うわぁ悲しすぎる現実……。人のこと言えないけどさぁ……はぁぁぁ……」

加蓮「私たぶん、一生独身で過ごす……」

泰葉「私も……人生プラン、お一人様コースで……。ふふっ……」

李衣菜「なに、この……なに? 虚しすぎるよこの会話……」

泰葉「……あ。そうだ」

加蓮「なに、泰葉……?」

泰葉「加蓮、李衣菜。……一緒に暮らしましょう!」

加蓮「……!?」

李衣菜「プロポーズされた」

泰葉「だって昔はよく泊まりに来てくれたじゃない。その延長線だと思えば……!」

李衣菜「か、軽く言うね……」

加蓮「それだ!」

泰葉「でしょう!?」

李衣菜「え、本気?」

加蓮「よし。帰ったら台本読み込む前に荷造りするね」

泰葉「ううん、それより3人でも住める新しい住居を……」

加蓮「あ、そっかそうだよね。李衣菜これから暇? 一緒に住宅情報誌、漁りに行こっ」

李衣菜「と、とんとん拍子で話が進む……。分かったよ行くよ……ボイトレあとに回さないと……」

泰葉「私は……これから今日通しでリハだけどなんとか」

李衣菜「それは行かないとまずくない!?」

泰葉「く、そうよね……あとで必ず合流するから……!」

加蓮「うん、任せて! アイドル時代に稼いだお金、ついに使うときが……!」

李衣菜「や、泰葉ー、気をつけてね~?」

泰葉「じゃあ、またあとでっ」タタッ


李衣菜「……行っちゃった。っていうかほんとは忙しいんだよね、加蓮も泰葉も」

加蓮「あ、もしもしマネージャーですか? 私です……はい、ちょっと用事が出来たので少し遅れて――」

李衣菜「……い、いいのかなぁ。はぁ……私もバンドのみんなに連絡しないと――」


李衣菜(……でも)

李衣菜(また新しい日々が、始まりそう♪)



おわり











ません


ちひろ「……カットォ! おっけーです3人とも♪」

「「「あ、お疲れさまでしたー!」」」

P「 な ん だ こ れ ! ? 」

ちひろ「演出、脚本、監督! すべて私が手がけた『10年後の彼女たち』ですっ!」ムッフー

P「鼻息が荒い! ていうかちひろさんが考えたから色々設定が無茶なんですかね!?」

ちひろ「むむ、もっと勉強しなければ!」

P「そういうことじゃなくてですね――!」


李衣菜「Pさん、Pさん! 私たちの大人な演技、どうでしたか? 初めてにしてはロックだったでしょ!」

加蓮「あー楽しかった♪ 私、やっぱりこういうドラマとかにも出てみたいなぁ……!」

泰葉「恥ずかしいセリフもありましたけど、私なりに頑張ってみました。ふふ、Pさんも楽しんでくれました?」


P「…………あぁもう、最高でした!」

李衣菜「えっへへ♪」

泰葉「ふふふっ♪」

加蓮「ふふ、良かった♪」

P「でも、でもだぞ! ……俺は、お前たちを送り出すことなんてしないからな?」

李衣菜「へっ?」

P「……ず、ずっと俺の側で、その……輝き続けてほしいから。……頼むよ」

加蓮「…………」

泰葉「…………」

李衣菜「…………」

P「な、なんだよ」


加蓮「……もう♪」ピトッ

泰葉「そんなの……当然ですっ。ふふ♪」ギュ

P「あ、ちょっ! く、くっつくなっt」

李衣菜「うひょー♪」ムギュー

P「やめい!」

李衣菜「10年経ってもっ」

泰葉「その先も、ずっと――!」

加蓮「側にいてね!」


「「「Pさんっ♪」」」


P「ああ、分かってるよ! ……ったくもう」

ちひろ「私もついででいいですから、お側にいさせてくださいね?」

P「……変な台本書かないと約束したら、いいですよ?」

ちひろ「ふふっ、はーい♪」



おわり

というお話だったのさ
シェアハウスって憧れるよね、ってことでひとつ

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