モバマスSSです。
書き溜めあります。
小早川紗枝ちゃんのSSです。
PはモバPです。省略してます。
劇中の10年後の物語を書いてみました。
よろしくお願いします。
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のんびりとした昼下がり、小早川紗枝は事務所にあるエステルームでマッサージを受けていた。
なんでも、血の巡りを良くして、むくみを解消したり肌のハリを良くする効果があるらしい。
10年前、アイドルとしてデビューしたばかりのころは、そんなもんもここにはあるんやなあ、とのんびり眺めていた。
当時、アラサーとされる年齢のアイドルたちが愛用していて、うちも大人になったらわかるんやろか、と思いながら早10年。
結局のところ、エステルームとは無縁で紗枝はアイドル生活を過ごしていた。
使わない理由があったわけではないけれど、使いたいと思うこともなかった。
自分の手が伸びる範囲から、なんとなく外れたところにあったもの。それが紗枝にとってのエステルームだった。
そんなエステルームに、こんなにも頻繁に通うことになるなんて、10年前の紗枝は全く思わなかっただろうし、半年前の紗枝も思わなかっただろう。
「うち、お昼からこんなのんびりしててええんやろか……」
ぽつりと紗枝が口にすると、うふふ、と上品な笑い声が後ろから聞こえた。
「女の子にとって、一生に一度の大事な行事ですから。万全で臨みましょう。ね?」
ふみゅう、と声にならない声を出して、紗枝は額を枕につけて伏せる。
結婚式の日取りを川島瑞樹に連絡したとき、ちゃんと準備をしているか、と紗枝は問い詰められた。
もちろん順調だったので、大丈夫だと答えが、瑞樹の心配はそちらの準備ではなく、女性としての準備の方であった。
一生ものなんだから、万全の身体にしなさい! と鼻息が荒くなった瑞樹のことを、紗枝は今でも思い出す。
最初は冗談か何かと思っていたけれど、鬼気迫る様子に本気なんだとわかった紗枝は、素直に従うことにした。
エステっちゅうんはなんて気持ちいのええものなんやろう、と紗枝は通い始めてすぐに思った。
あんまりにもリラックスしすぎてしまい、顔がいつまでたっても締まりのない表情になってしまって、やはり本当は自分には向いていない場所なんだろう、とも思った。
起きてください、という声を耳元でささやかれ、紗枝はゆっくりと目をあける。
どうやらエステが終わったようだった。
「あかん、やーっぱり気が抜けすぎてまう……」
眠さが抜けきらないふにゃりとした声で紗枝が言う。
そういう場所ですから、とほほ笑むエステシャンに、おおきに、と頭を下げつつ紗枝は部屋から出る。
和服に着替えつつ、今夜のおかずは何にしよう、と考える。豆腐があったなあ、豆腐はんばーぐはどうやろか……
☆
20時を少し過ぎたころ、Pが帰ってきた。
玄関に出迎えに行き、鞄とスーツの上着を預かる。疲れたーとつぶやきつつ、Pはネクタイを緩める。
紗枝はこの仕草が大好きだ。プロデューサーから家の人に、自分のものになった気がして、なんとも言えない安心感が胸に広がる。
書斎に鞄を置き、クローゼットにスーツをかける。お風呂沸いてますえ、と紗枝が言うと、いつもありがとう、とPは浴室に向かった。
冷蔵庫で休ませていた種を取り出し、形を整えてフライパンに乗せる。
温めてから乗せるのではなく、乗せてから火をかけるのが紗枝なりのポイントだ。
うちもすっかり家庭の人やなあ、と人知れず紗枝はほほえむ。
高校卒業をきっかけに一人暮らしを始めた。実家、寮と料理をしなくても済む環境で生きてきた紗枝は、料理は当初からっきしだった。
一人で食べるのは味気ないし、そもそも自分の料理はおいしくなかった。
せやったら、人を招いて食べるようになればええ。
そう思ってから紗枝の行動は早かった。書店に行き、本を買って読んで、作って、読んで、作って……
3カ月もすると、自分でもおいしいと思える料理を作れるようになり、人を招くことができるようになった。
ちょっぴり体重も増えてしまったけれど。
あの時、ぎょーさん練習してよかったなあ、としみじみ紗枝は思う。
風呂から上がったPは寝間着のスエットに着替え、いい匂い、と言いながらリビングに入ってきた。
Pが着席するのと同時に、紗枝が出来上がった料理をテーブルに運ぶ。黄金のタイミング。
「お、ハンバーグ!」
子どもみたいな笑顔をしてPが言う。
「ふふ。自信作やで。ちょっと待っててなあ」
紗枝はそう言ってエプロンを外しながら冷蔵庫に向かう。そして冷凍庫の戸を引き、クーラーボックスに氷を入れる。
そして自分でつけた梅酒を水道の戸から取り出す。
その様子で察したPが、じゃあコップを出しとくよ、と紗枝に声をかける。
おおきに、とお礼を言って机に向かうが、どうにもにやけが止まらない。
「どうしたの、そんな嬉しそうに」
「これが幸せっちゅうもんなんやろなあ、思うたらうれしゅうて」
紗枝の言葉に、Pは頭にクエスチョンマークを浮かべた。
「梅酒の日はうちも一緒に飲みたい日。それがわかってPはん2人分のコップ用意してくれはったんやろ。
なんや、こう何も言わんでもお互いのことがわかるって幸せやなあ思て」
「あー……そうかもな」
お酒も入ってないのに、Pのほほが少し赤くなるのを紗枝は見逃さなかった。
「あ、Pはん。照れてはる」
指摘されてさらに顔を赤くしつつ、眉間にしわを寄せるのを見て、紗枝は面白くなって声を出して笑ってしまった。
こうやってからかってしまうのも、ほどほどにせなあかんなあ、なんて思いながら紗枝も着席した。
「これ……豆腐……」
「む、なんや、嫌なん?」
「肉々しいハンバーグも好きかな、と思って……」
バツの悪そうな顔をしてPが言う。わかりやすく紗枝はため息をつく。
「別にうちはそれでもええんどすえ。でもPはんが式までに10キロ痩せるー言いはったから……」
うっ、とこれもまたわかりやすくPは痛いところを突かれた、という顔をした。
瑞樹の助言を受けたのは紗枝だけでなく、Pもだった。女の子の晴れの舞台、一番カッコいい姿で行かないとダメよ、と。
アメリカンフットボールのクオーターバックで鍛え上げた身体が最大の自慢で、自分の身一つで担当アイドルを守るとPは決めていた。
そんな身体も30を超えたあたりから徐々に柔らかくなっていき、ついには割れていた腹筋も脂肪で隠れてしまった。
紗枝は優しそうになってうちはええと思いますえ、と言ってくれたが、正直Pは情けなさを感じていた。
「ごめん、気を取り直してがんばる」
「はい、よろし。ゆーっくりよう噛んで食べるんやで~」
あやすような言い方に、Pは10年前のことを少し思い出す。あれからいろいろとあった。
ちびり、と梅酒を飲む紗枝。付き合い初めて4年、入籍して半年……
結婚式まで、あと2か月。
「そういえば今日、早速幸子はんから出席の葉書が届きましたえ」
うれしおすなあ、と幸せそうな笑顔で紗枝が言う。
「そういうとこ、しっかりしてるんだよな、幸子って」
「せやんなあ。うちの事務所のあいどるは皆はんとーってもしっかりしてますえ」
うんうん、とPはうなずく。
「入籍まで、本当に一切外に情報漏れなかったよな。付き合ってるの知ってたのって」
Pが言い終わる前に紗枝が口を開く。
「周子はん、美穂はん、友紀はん、そして幸子はんの4人にはしっかり報告してましたえ」
「半分、あてにならないとこだけど……良くぞ黙っててくれたな」
うふふ、と紗枝が笑う。
「明日、周子はんに会う約束してましてな。今の言うてしまおうかなあ」
「なんか今日は何をやっても間が悪いな……」
「まあまあ。そういうことやから、明日はちょっと帰り遅なるやもしれまへん」
「うん、たまには息抜きしておいで」
おおきに、とぺこりと頭を紗枝は下げた。
☆
「紗枝ちゃーん! こっちこっち」
サングラスと帽子をかぶったすらっとした女性、塩見周子が紗枝の姿を確認して手をあげた。
上野駅の不忍口に15時集合、というざっくりとした約束を二人はしていた。
ざっくりこのあたりと言えば到着後電話でいくらでも合流できる。
ただ、上野駅はいくつも出口があって、それも出口によって全く表情を変えるものだから改札口だけは指定していた。
「忙しいのにすみまへんなあ、周子はん」
ぺこりと頭を下げる紗枝に、周子はふっふっふ、苦しゅうないとわざとらしく笑う。
「紗枝ちゃんはしばらくの間、お仕事お休みなんだっけ?」
周子の問いに紗枝はうなずく。
「とりあえず、式までと、その少し先までお休みいただいておりますえ。その先は……今は復帰したいと思っとります」
そっか、と周子はほほ笑む。長年の仕事仲間で親友の紗枝が引退しないことに、周子はホッとした。
「さて、じゃあ行こっか」
はい、と紗枝は答える。どこに、とは言わずともどこに行くか決まっている。上野駅でこの改札口ならここ、そんな店が二人にはある。
駅から少し歩いて、二人はあんみつのお店に入る。創業70年を超える東京の伝統的なお店だ。
いつものあんみつを注文して二人はホッと一息をつく。
「すっかり定番になりましたなあ」
そうだね、と周子は微笑む。
和菓子屋の娘で、和菓子ばかり食べてきた周子。和菓子は好きだけど、食べ飽きてしまった、というのが周子の小さな悩みの1つだった。
紗枝も紗枝で、古い家の出で、お菓子と言えば和菓子という環境で生活してきた。
二人が意気投合したのは実はそこで、一緒に洋菓子を食べに出掛けよう、というのが仲良くなったきっかけだった。
そして、和菓子もいいよね、となったのが5年ほど前。以降、東京の名店を回っては、あーでもない、こうでもないと語らうのが二人の楽しみになった。
「改めて、結婚式の友人代表すぴーち、よろしゅうお頼申します」
紗枝の言葉に、真面目な顔をして周子がうん、とうなずく。
「でもホントにあたしでいいの? もっと良い人いるんじゃない?」
不安げな表情の周子に、紗枝はかぶりを振った。
「うちのことを一番よう知ってくれてはるのは、周子はんどす。うちはぜぇったい周子はんがええ」
「なんか、面と向かってそんな風に言われると、ちょっとこっぱずかしいな……でもわかった。周子はんに任せなさい!」
照れたように笑い、そして照れを隠すように周子は胸を張っていった。
しっかり甘いのに甘すぎない。さっぱり感も絶妙なあんみつに二人は舌鼓を打つ。
「やっぱりここのあんこは本当に絶妙だね」
おいしいものを口にして、きれい、という感じの周子が、かわいい、と言いたくなる顔をして言った。
「ほんまどすなあ。豆っちゅうもんは甘ぁくする方がおいしい思うんやけど、どうして腐らせる人がいたんやろか……」
顔をしかめる紗枝を見て、周子は思わず吹き出してしまう。
「同棲し始めてすぐくらいだったよね、紗枝ちゃんがあたしのとこに家出してきたの」
ちょっと赤くなりながら、そんなこともありましたなあ、と紗枝が言う。
「だって、毎朝納豆食べるて、信じられへんやろ? うちは絶対いややあ」
「あはは。あの時は本当に破局危機だったよね。2日してPさんが迎えに来たんだよね」
眉間にしわを寄せながら紗枝がうなずく。
「何が許せへんって、あの人、うちと納豆で2日も悩んだことやあ」
耐えられない、とケラケラ周子は笑い始める。
「そうそう。それでうちの家でまた喧嘩始めたんだよね。あー、これはあたしいない方がいいわ、って思ってコンビニに逃げたんだよね」
「それで周子はんが買って来たのが」
二人は目を合わせて、言った。
「あずきバー」
見事にはもったところで、二人は笑い始める。
「豆は今後これで我慢するように! って周子はんが言いはったんよね」
「今考えるとホント意味わかんないよね」
「Pはんも、小豆と大豆は違うってぶつぶつ言うてはったなあ」
そうだったそうだった、と周子は笑いながらうなずく。
「でもみんな結局我慢しきれなくなって、笑っちゃって仲直りになったんだよね」
「笑顔でいれば、たいていどんなことも乗り切れるってことどすなあ」
間違いない、と満点笑顔で周子は言った。
あんみつを食べ終えて、お茶を二人はすする。
「そういえば、式はあたしたちがデビュー記念ラジオを収録した神社なんだね」
「……一番大事な思い出の場所、やからなあ」
10年も昔のことかあ、と周子は思い出すように少し上を見上げながら言った。そして、あ、と何かを思い出して、言った。
「昔さ、収録どんな感じだったか紗枝ちゃんに聞いたら、真っ赤になって逃げちゃったよね。結局、何があったん?」
いたずらっ子みたいな顔をして、周子は言う。紗枝はその表情、目線から逃れられないことを察した。
「あの神社、縁結びの神社やろ?」
うん、と周子がうなずく。
「うち、ちょっとずるをして、Pはんと結ばれるようにお願いしたんよ」
「あの神社、石から石の間を目をつむって歩けたら恋が叶うって言い伝えがあるんよ」
「あ、聞いたことあるかも」
「でもなあ、歩いてる間、相手を思って歩かんとかなわへんのよ」
ふーむ、と周子はそれはむずかしい、という顔をした。
「どうやったらPはんがうちのこと思いながら歩いてくれはるかなあ、って思うてなあ。
そうやあ、種を隠してうちが案内することにすれば、うちの声やうちのことに集中してくれはるんちゃうかな、って。
で、Pはんは見事に成功させはったんどす」
感心したように周子はうんうんとうなずいた。
「その時、Pさんは紗枝ちゃんのこと思ってたの?」
紗枝はかぶりをふった。
「それは……わかりまへん。でも、今こうして結婚することになれたんは、思ってくれてはったからかもしれまへんなあ」
「そうだよ、きっと。いや、間違いないね。しゅーこちゃんが保証する」
どん、と胸を張って周子が言った。ありがとうさんどす、と紗枝がぺこりとお辞儀をする。そして、うふふと笑う。
「でも神様は見てはったんやろなあ。そのあとにうちがちゃれんじしたらしっかり失敗してしまいましたわ」
うははは、と周子は笑う。
「ちゃんとオチをつけるあたり、何年こっちにいても紗枝はんは関西人どすなあ」
ほんまやなあ、と紗枝も笑う。
「うち、失敗して池に落ちそうになったんよ。それをPはんがかばってくれはってなあ。
そのとき、Pはんの身体が大きくて、安心感あって、えらい男らしくて……そこからは気持ちを我慢できんくなって……」
「で、今に至る」
「うふふ、そういうこと」
わざとらしくやれやれ、というアクションを周子は取った。
「あんみつより甘いものをここでいただけるなんてね、しゅーこちゃんびっくり。末永くお幸せに」
紗枝と周子はあんみつを食べたあと、ショッピングを楽しんでから別れた。
どんな服でも着こなす周子を、お人形のように着せ替えて楽しむのが二人のショッピングの常だ。
自分と異なるセンスを持つ紗枝が選ぶ服を着ることを周子はとても楽しんでいた。
次は式の少し前、打ち合わせで、と二人は別れた。
でもきっとお互いに会いたくなって、その前にどちらからともなく会おうというに違いなかった。
☆
最寄り駅につくと、良く知る大きな背中を紗枝は見つけた。
「Pはん」
「あれ、紗枝。今帰り?」
はい、と答えると、じゃあ一緒に帰ろう、とPはにっこりとほほ笑んだ。
外はもうすっかり暗くなっていた。
「お夕飯のおかず、何もないんやけど、お買い物付きおうてもらえます?」
もちろん、とPは答える。
「好きなもの、少し買ってもいい?」
まったく、この人は時折本当に子どもみたいなこと言いなはる、と紗枝は思わず吹き出す。
「しゃあないなあ。紗枝お母はんが買うてあげます」
そう言われて自分が子どもっぽいことを言ったことに気づき、Pは赤面する。
本当にからかいがいのあるお人やなあ、とクスクスと紗枝は笑う。
「好きなもんって何かなー思うとったら、なんや、イクラやったんか」
「ほら、紗枝が以前テレビで痛風は30代で来る、とか、魚卵が悪いって情報を仕入れてから食べてなかったから、さ」
ポンと紗枝は手を叩き、そういえばそうでしたなあ、と答える。
「たまには、ね?」
「せやなあ。たまにはええどすな。その代り、ビールはしばらくダメどすえ」
やった、から、ええ! となり、ぐむむと悩んで、やむなしという顔をPはした。
この人はなんでこんな短時間に表情をころころ変えられるんやろう、と面白くなって紗枝は笑いだす。
「な、なんだよ。こっちはそれなりに決意したってのに」
「いいえ~笑うたのは、そこやありまへん。なあPはん」
ん? とPが紗枝の顔をのぞく。
「うち、Pはんといたらずっと笑顔でいられる気がしますわあ。
今日なあ、周子はんと発見したんやけど、笑顔でいればたいていのことは乗り切れるんどすえ。
うちら、絶対ずぅっと仲良ういられます。絶対に、や」
思いがけない紗枝の言葉にPは赤面する。そして、力強くうなずいた。
暗い夜道を二人は手をつないで歩く。
いつか、この二人の間に小さな手が加わるかもしれない。
それも一人じゃないかもしれない。
どんな家庭になるんやろ、と紗枝は想像する。一姫二太郎、それがええかもしれんなあ……
でも、今はこの大きくて安心できるPの手を強く、強く握っていたい。そう思い、紗枝はPの手をギュっと握った。
風呂上がり、髪を乾かし、リビングに行くとPはソファに座って真剣にテレビを見ていた。
手元にはノートがある。気になる部分や思いついたことを書き記すものだ。
ほんに仕事が好きなお人やなあ、とあきれたような、尊敬したような、なんとも言えない気持ちがこみ上げる。
ゆっくりと、できるだけ気づかれないように、静かにPの後ろに紗枝は近づいた。
そして、後ろからPを抱きしめる。
Pがビクリ、と反応するが、紗枝はそのままギュッとPを抱きしめる。
「こうやって座ってくれてへんと、高さが合わんのが難点やなあ」
うふふ、と笑いながら紗枝が言う。
「どうした、急に?」
優しい声色でPが訪ねる。
「1つ、Pはんにお願いしたいことがあるんどす」
「結婚式、神前式やろ? だから、1つできない憧れがあってなあ」
うーん、なんだろう、とPはむずかしい顔をする。
「誓いの言葉、あれ一度好きな人と言ってみたいんどす」
「なるほど……ちょっと照れるけど、やってみようか」
こういう時、恥ずかしがりつつもすぐにやる、と言ってくれるPのことが紗枝は好きだった。
「ちょっと言葉調べてくるよ」
「じゃあ、言うよ」
「はい」
健やかなる時も
病める時も
貧しい時も
富める時も
死が二人を分かつまで
とも愛し
慈しみ
貞操を守ることをここに誓います
二人は目を閉じ、静かにキスをする。
唇を離し、目を開けると、紗枝の目にはうっすらと涙が光っていた。
「ありがとうさんどす、Pはん」
絞り出すような声でやっと紗枝は言った。そんな紗枝をPは強く抱きしめる。
二人以外誰も聞いていない誓いの言葉。
その代り、互いの心に深く誓われたのだった。
おしまい
紗枝ちゃんのCD、花簪
周子のCD、青の一番星
どちらも最高なのでみなさん買いましょうね。
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