翔太「ねーねー冬馬君」冬馬「なんだよ」 (148)
翔太「暇だよー。まだ呼ばれないの?」
冬馬「お前さっきからそれ何回目だ。いいからおとなしく待ってろって」
翔太「ドラマって待ち多いのが地味にめんどくさいんだよね~。でも寝ちゃったらセット崩れそうで怖いし」
冬馬「あっそ」ポチポチ
翔太「かといって台本ももう完璧に覚えちゃったしさー」
冬馬「ふーん」ポチポチポチ
翔太「……ちょっと、さっきからグラブってないでこっちの相手してよ。暇だって言ってるじゃん」
冬馬「うっせぇな、お前もなんかゲームでもやってりゃいいだろ」
翔太「飽きた。ねーなんか面白い話してよー。満点大笑いくらいの」
冬馬「無茶振りすんな、お前はキャバ嬢か」
翔太「キャバクラなんて行ったことないくせに……」
冬馬「う、うるせぇな!」
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翔太「だってなんかないの?」
冬馬「そういうお前はなんかないのかよ」
翔太「僕? えー……あ、怖い話ならあるよ」
冬馬「聞いてやろう」
翔太「えっとねー。この前夜中に一人で漫画読んでたらさあ。非通知で電話がかかってきたんだよ」
冬馬「ほう」
翔太「で、こんな時間に誰だろ~と思って出たらいきなり汚いダミ声で
『ハァハァ……ふひひっ、こんばんは~。ねえねえおじさん今すっごいエッチな気分なんだ~。お話しようよお姉さ~ん』とか言ってくるの」
冬馬「うっわ」
翔太「ね。うわ、典型的だなーってドン引きだったんだけどあんまりテンプレだからこっちも深夜テンションでなんか楽しくなってきちゃってさ。
気まぐれに精一杯裏声で『え~? もぉやだぁ~、おぢさんってもしかしてヘンタイの人なのぉ~???』とかキャッピキャピに答えてみたわけさ」
冬馬「お前は鬼か」
翔太「国民的弟アイドル御手洗翔太だよ?」
冬馬「うぜぇ。っつーかそれのどこが怖い話なんだよ。いや、ある意味既に怖いけどよ」
翔太「まあ聞いてよ。で、『おねーさん何歳? 声結構若いね~周りに可愛いって言われるでしょ? どんな感じ? 芸能人だと誰に似てる?』とか聞いてくるわけね」
冬馬「ふっww」
翔太「僕よっぽど『アイドルの御手洗翔太に似てるよ』って言ってやろうかと思ったよ。
まあでもそこは我慢してテキトーに答えてたんだ。
あ、ちなみにその時の僕の設定はハタチで黒髪ロングの女子大生Dカップ彼氏持ちなんだけど」
冬馬「クッソどうでもいいわ」
翔太「でぇ、なんだかんだでいろいろ話して結構盛り上がったところで
『おねーさん今どんなパンツ穿いてるの?』とかお決まりのこと聞いてくるからさ」
冬馬「うん」
翔太「『ん~……えへへ、実は穿いてない……///』ってちょっと恥じらうフリしながら答えたんだ。
そしたらめっちゃ食い付いてきて『え!? なにそれ!? ノーパン? まさかノーパンなの!?』ってすっごい興奮してるわけ」
冬馬「訓練され過ぎだろ……」
翔太「だからそこで『男物のボクサー穿いてる~☆』ってちょっと攻めてみたのね」
冬馬「……ぶふっww」
翔太「まあ普通に事実だしね。で、いい加減これで向こうも気が付くかな~と思ったんだけど一向に気付く気配ないんだよ」
冬馬「逆にすげぇなそいつ」
翔太「むしろ『え、どういうこと? 彼氏の? 彼氏の穿いてるってこと!? 色は? 色は何色!?』とか相変わらずハァハァ言いながら聞いてきてさ」
冬馬「極まってんな」
翔太「その頃には僕も既に飽きてきちゃってたからそろそろ終わりにしようと思って
『もぉ、おぢさんのえっちぃ~☆ 恥ずかしいよぉ~♪♪ んっとねぇ~……』」
翔太「『グレーだよ(超地声)』って返したんだ」
冬馬「ひっでぇwwwwww」ゲラゲラゲラ
翔太「そしたら次の瞬間『うっ! ふぅ……ありがとう、よかったよッ!!!!』って耳元で叫ばれた直後に切れたよ」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「………怖いな」
翔太「怖いでしょ?」
冬馬「すごくこわい」
翔太「正直泣いたよ僕。夜中の二時に。一人で。ベッドの上で」
冬馬「……一応聞くがそれはどっちなんだ? 最後までやたら声の低い女だと思い込んだままでそれなのか、それとも分かった上でのあれなのか」
翔太「いやもうやめて。分析しようとしないで。平気なフリしてるけど実は未だに引きずってるからねこっちは」
冬馬「まあ……でもぶっちゃけ因果応報なんじゃね?」
翔太「戒めとしてもう二度とイタ電には調子乗って出ないって決意したよ」
冬馬「世の中いろんな人間がいるな」
翔太「ひとつ大人になったよね」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「……あ、そこのペットのお茶取ってくれ」
翔太「どーぞ」
冬馬「忍びねえな」
翔太「かまわんよ」
冬馬「……」ゴクゴクゴク
翔太「……」
冬馬「――ぷはっ」
翔太「で、冬馬君はなんかないの?」
冬馬「えー……あーまあ面白い話ってわけでもねえけど。ウチの事務所にあいついるじゃん。伊瀬谷四季」
翔太「ハイジョーカーの?」
冬馬「ハイジョーカーの」
※伊勢谷四季
http://imepic.jp/20160103/028680
翔太「あのオリ○ジのチャラ男さんっぽい人ね。チャラピンクメガネ」
冬馬「そう、そいつな。そのチャラピンクメガネが事務所で顔合わせたりすると
『冬馬っちってマジメガウルトラカッケーっすよね! オレ、ガチにハイパーリスペクトしてるっす~!』みたいなノリで来るじゃん?」
翔太「ああもうウザいね。既にウザい」
冬馬「あいつグイッグイ来るよな」
翔太「グイッグイ来るね」
冬馬「そんで『でもオレらも絶対ジュピターには負けないっすよ!
いつか必ずハイジョのみんなとアイドルのテッペン取ってやるから覚悟しといて下さいね!』的なこと無駄に爽やかな顔で言ってくるだろ?」
翔太「あーもう暑苦しいなあ」
冬馬「だからそうなるとこっちも『へえ、いい度胸だな! いいぜ、正面から受けて立ってやるよ! 早く俺らのいるステージまで上がってこいよ?』とか余裕ぶっこいたドヤ顔で返すしかないだろ」
翔太「それは何目線だよっていうね。お前は何様なんだよっていう。
ちょっと芸歴が上で961プロの力で一瞬天下取ったからってもう天狗気取りか」
冬馬「ブーメラン刺さってんぞ。いや、つーか、そこはだからこっちも自覚してるから。
こっちもプライドあるから先輩風吹かせて気丈に振る舞ってるだけであって」
翔太「はいはい。ごめんね」
冬馬「で~……だからなんだ。そうそう、もうそれでだからあいつがいなくなった後こっちはもうアレだよ」
冬馬「脇汗がやばい」
翔太「ふっww」
冬馬「いやだってあいつらマジで今人気あんじゃん。ぶっちゃけ俺ら押されてね? っていう。内心冷や汗ダラダラ垂れてんだよ」
翔太「総選挙でも負けてるしね」
冬馬「そうだよ! 本気で笑ってる場合じゃねえんだよ!! 大体あいつら現役男子高校生5人バンドとかさあ。
そんなけいおん!の男版みたいなユニット卑怯だろ。そんなん受けないわけがないだろ」
翔太「冬馬君だって高校生じゃん。文句言うならいっそジュピター抜けてあっちに混ざったら~?」
冬馬「なに言ってんだよ、俺はお前と北斗と3人でトップに立ちたいんだよ。嫌だったらお前らとユニットなんか組んでねえよ」
翔太「……」
冬馬「……」
冬馬・翔太「「うぇへへへへwwww」」
翔太「……」
冬馬「……」
翔太「いや、正直このネタもう古いでしょ。どうするのこの空気」
冬馬「ノってきたお前も同罪だろ……ギルティだよ」
翔太「なんかさあ、最近僕たち方向性間違えてない? 大丈夫? 芸人側に振れてきてない?」
冬馬「いや、ほらお茶の間人気も大事だから……」
翔太「なんだか将来が不安になってきたよ僕」
冬馬「なんだよ、リーダーの俺のことが信じられないって言うのかよ?」
翔太「……」
冬馬「俺はお前と北斗と3人でトップアイドル……」
翔太「それはもういいよ!」
冬馬「はい」
翔太「っていうかあのチャラピンクメガネはさあ」
冬馬「お前チャラピンクメガネの語感気に入っただけだろ。なんであいつにはそんな手厳しいんだよ」
翔太「だってほら、キャラ被ってる相手は早めに潰しておかないと」
冬馬「いやいやいや、まったく被ってねえだろ。被ってるってどこらへんがだよ」
翔太「人懐っこくて可愛い弟キャラ系な感じが近いでしょ?」
冬馬「やべぇ、こいつぶん殴りてぇ。少なくとも流石にあっちは自分で自分のことを可愛いとは言わねえよ」
翔太「もふもふえんとかも完全に敵だと思ってるからねこっちは。
年下だからって容赦とかしないから。国民的弟アイドルは僕以外いらないんだよ」
冬馬「……お前ネットじゃ一部で畜生太って呼ばれてるって知ってるか?」
翔太「知ってるよ?」
冬馬「正直お前のその図太いメンタルと突き抜けたガツガツ感嫌いじゃない」
翔太「ドーモドーモ」
冬馬「っつか結局お前は伊勢谷のことが嫌いなのか?」
翔太「んーん、別に人間的には好きだよ。いい人だし会うとよくお菓子とかくれるし」
冬馬「あっさり餌付けされてんじゃねえよ」
ピロリン♪
翔太「……あ、姉さんからラインだ」ピッ
冬馬「何番目?」
翔太「二番目」ポチポチ
冬馬「あー、あの北斗ファンの」
翔太「北斗君信者のね。ただのクソオタだよ」
冬馬「いいなあ」
翔太「まー姉弟で上3人が女の僕が歳の離れた唯一の弟だからね。文字通り猫可愛がりだよ」
冬馬「姉3人とかエロゲかよマジで、ふざけんなよ」
翔太「それみんな言うけど実際そんないいものでもないよ。アレ完全にスイーツだからね。脳ミソゆるふわだから」
冬馬「具体的には?」
翔太「『今日は学校のお友達とお洒落なカフェでパンケーキ食べてきたんだよ♪♪♪
キャラメルマキアートとカプチーノも超美味しかったぁ~☆ 今度は翔ちゃんも一緒に行こうね(はぁと)』
とか死ぬほどどうでもいいパンダの立体ラテアートの写真付きで送ってくる」
冬馬「ぶっ飛ばすぞ、普通に羨ましいわ」
翔太「いやいやいや、冷静に考えてよ。義理とかじゃなくてリアル姉だよ? 今年でもう××歳だよ?
それが四六時中ベタベタしてくるとか普通に考えてウザいでしょ」
冬馬「ふーん? そんなもんか……?」
翔太「そもそも向こうはあからさまに北斗君目当てだしね。僕は所詮ダシだから」
冬馬「あー」
翔太「『北斗さまの写メちょうだい』とか『今日北斗さまとどんな話した?』とか毎日毎日うるさいんだよ~」
冬馬「確かにそれは面倒臭ぇな……」
翔太「あ、ところで今度姉さんの誕生日なんだけどプレゼント何がいいと思う?」
冬馬「結局お前もシスコンなんじゃねーか」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「つーかよ」
翔太「ん?」
冬馬「その北斗は一体なにしてんだよ! ちょっと電話してくるって出てってもう30分以上だぞ!!」
翔太「逆にエンジェルちゃん以外のなにがあるのさ」
冬馬「くっそ……あいつくっそ……なんで北斗のやつばっかりモテるんだよ……」
翔太「そういうとこがダメなんでしょ。なんだかんだ北斗君は誰に対しても紳士だしマメだもん」
冬馬「平成の火野○平かあいつは。いつか刺されるぞマジで」
翔太「うちの母さんが言ってたけど本物はそもそも女に恨ませずに上手に別れるから刺されてるようじゃまだまだ二流なんだって」
冬馬「お前の母ちゃんは何者なんだよ……」
翔太「……あ、そういえばさあ。話変わるけどこの前仕事でたまたま765プロの人たちと鉢合わせたことがあってね」
冬馬「おう」
翔太「そしたらやよいちゃんがやたらキラキラした嬉しそうな顔して急にこっち駆け寄ってくるんだよ」
冬馬「はいはい」
翔太「だからなんだろと思ってたら開口一番」
やよい『うっうー! 私、実は前々からずっと翔太くんって誰かに似てるかなーって思ってたんですけどやっと分かりました!
やさいのようせいの芽キャベツくんに似てるんです~!!』
翔太「とか言ってくるんだよ」
冬馬「……ぶはっwwwwww」
翔太「そしたら隣にいた伊織さんまで爆笑しながらこっち指差して『 完 全 に 一 致 』とか言ってくるしさ~。これ僕怒っていいよね?」
冬馬「くっ……ふははっ……www」プルプルプル…
翔太「いや、なんでそんなツボに入ってんの。そこまで面白くはないでしょ」
冬馬「い、いや、悪ぃ……ちょっと予想の斜め上過ぎてな……ふっ…ww」
翔太「だから流石にこっちも言い返してやろうと思って『えー、でもそういうやよいちゃんこそ頭に常に2つチョココロネ付けてるよね?』って言ったんだ」
冬馬「なんでちょっと張り合ってんだよwww」
翔太「そうしたら『はわっ! ほんとです~! わー、じゃあこれからお腹が空いたときには私は鏡を覗けばいいんですね!』って」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「……やべぇ、涙出てきた…」
翔太「でしょ? そうなるでしょ!? なんかもうこっちの罪悪感がハンパないんだよ。僕の完全敗北だよ。天然ってほんと怖い!」
冬馬「この世に純粋さに勝るものはねえんだな……」
翔太「他の765の人たちもみんな一斉に涙目になってやよいちゃんのこと抱き締めててもうなんか映画の感動のワンシーンみたいになってるしさあ」
冬馬「お前はマジで高槻のことを見習えよ。同い年なのにこの落差なんなんだよ」
翔太「ほんとだよ! 自分で言うのもなんだけどなんで僕はあんな純朴な人間に生まれてこなかったのか!!」
冬馬「逆wwギwwレwwwwww」
翔太「こんなんだから僕はネットの一部で『キャベツ太郎』なんてあだ名付けられるんだよ!!!!」
冬馬「あっはっはっはっ!!」ゲラゲラ
翔太「もうね。僕、思わず後で食べようと思って買っといたメロンパンとクリームパン全部やよいちゃんにあげちゃったからね」
冬馬「……あの食い意地汚ぇ翔太が他人に食いもんを譲るとは……高槻やよい、恐ろしい子」
翔太「悪意ゼロの人ってなんであんなにやりにくいのかな~」
冬馬「お前自身が悪意の塊みたいな存在だからだろ。陰と陽は交わらねえんだよ」
翔太「そこまでひどくないよ。何度も言うようだけど基本的に世間では僕は無邪気で天真爛漫な弟キャラで通ってるんだからね?」
冬馬「俺の麦茶めんつゆに差し替えてきたり、俺の財布にコンドーム仕込んできたり
俺の鞄の中身全部取り出して代わりにギッチキチに飴詰め込んできたりする奴がよく言うわ」
翔太「wwwwwwwww」
冬馬「マジであの時は気付かずに家帰って鞄開けたら瞬間大量の飴が床に飛び散ってリアルにファッ!? ってなったからな?」
翔太「くくっ……ww」
冬馬「コンドームん時も気付かずにコンビニ寄って勢いよく財布開けたら思いっきりレジ台に落っことすしよぉ!
がっつり店員に見られてめちゃくちゃ気まずかったんだぞ!?」
翔太「その瞬間見たかったなあ……」
冬馬「あと一番はアレだよ! お前北斗に頼んであいつの口から俺のこと翔太が誉めてたとか言わせんのやめろ!」
翔太「あー、あれね~」
冬馬「なにが『冬馬君ってリーダーシップがあってカリスマでかっこよくてすごいよね~。
僕、普段は恥ずかしくて言えないけど本当は冬馬君のことすっごく尊敬してる』だよ!」
翔太「ひぃwwwひーwwwww」
冬馬「北斗の奴に翔太が冬馬のことそう言ってたよとか言われてさあ。
『へっ、なんだかんだ言って翔太にも可愛いとこあるじゃねえか!』
って気ぃ良くしてハーゲンダッツ奢ってやったりした俺が馬鹿だったよ!
3回同じ手使われて3回目でやっと気付いたわ!!」
翔太「あっははは!」
冬馬「あははじゃねえよ。もうな、完全にやり口が詐欺師のそれじゃねーかっていう。
お前なんかより俺の方がよっぽど天真爛漫だよ!」
翔太「ごめんごめん。いや、あんまり冬馬君が騙されやすいのとリアクションが面白いからついね~」
冬馬「ったく……」
翔太「いや、でもさあ。そう言うけどそっちだって前に一緒にコンドーム水風船代わりにして遊んだ時は本気で楽しんでたじゃん。
『やっべ、これすげぇ手ぇぬるぬるする!』とか言ってはしゃいでたじゃん」
冬馬「……はい」
翔太「一方その頃北斗君はそれを正規の使い方して楽しんでいた」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「……よし、一旦この話はやめよう。一旦ゴム話からは離れよう。これ以上は危ない。生死に関わる」
翔太「僕も自分で言っててちょっとダメージ受けたよ……」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬「な、なあ。ひとつ聞くが……お前はまだ流石に童貞だよな……?」
翔太「……」
冬馬「……」
翔太「冬馬君」
冬馬「……」
翔太「姫始めの対義語ってなんだと思う?」
冬馬「は? えー、あー……童貞継続?」
翔太「つまりそういうことだ」
冬馬「翔太……!!」ガシッ
翔太「あーもうウザい。すごくウザい」
冬馬「やっぱり俺の味方はお前だけだよ……! 翔太は可愛いなあ!! 翔太は可愛いなあ!!」ワッシャワッシャ
翔太「ちょっともー、だからセット崩れるって言ってるじゃん! やめてよ!!」バシッ
冬馬「うんうん、はいはい」
翔太「大体こっちは冬馬君と同類とか不名誉極まりなさ過ぎて号泣するレベルだからね」
冬馬「なんだとコラ」
翔太「っていうかほんとに一緒にしないで。ほんと。言っても僕はまだ中学生だからね?」
冬馬「俺だってまだ十代の高校生だっつーの!」
翔太「でも北斗君は中1の時に家族旅行でイタリア行った時、機内でフライトアテンダントのお姉さんに連絡先書いたメモの切れ端こっそり渡されて
そのままベネチアのビーチホテルで脱童貞したって言ってたよ」
冬馬「北斗ぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!!」
ガチャッ
北斗「ただい……」
冬馬「おらぁ!!!!」ガッ!
北斗「……えっ?」
北斗「え、なんだ!? なんで俺いきなり胸倉掴まれて……えっ?」
冬馬「てめぇは俺を怒らせた……」ゴゴゴゴゴ…
北斗「ええ……俺なんかしたっけ……?」
翔太「やめなよ冬馬君! ここで北斗君を殴ったってどうにもならないよ!」ガシッ
冬馬「止めるな翔太! 俺はこいつだけは一発ぶん殴ってやらなきゃ気が済まねえんだよ……!!」
翔太「落ち着いてよ! だってこの後僕たち本番なんだよ? 顔腫れちゃったりしたらどうするのさ!」
北斗「……」
冬馬「うるせえ! 関係ねえよ!!」
翔太「冬馬君待って、一度冷静になって……!」
冬馬「いいからお前は黙ってろ!!」
翔太「黙ってなんかいられないよ! これは僕の問題でもあるんだから……」
北斗「……」
冬馬「だったらお前にも俺の気持ちが分かるはずだろ!?」
翔太「だからってそんな安易な暴力に頼ったって僕たちが傷つくだけでしょ!?」
冬馬「それでも……それでも俺は……ッ!!」
北斗「……」
冬馬「俺達は非童貞に利用されるために童貞やってんじゃねえんだよ……!!」
翔太「でも……!!」
北斗「あっ、なんとなく事情が見えてきた」
翔太「冬馬君の手を汚すようなことされても僕は嬉しくないよ……ねえ、お願いだからやめようよ」
冬馬「……翔太。チッ…!」バッ
翔太「冬馬君……」ホッ
北斗「………えっと、なんだかまだよく分からないけど。ひとまず助かったよ、翔太ありが……」
翔太「だからボディでいこう。ボディで」
冬馬「よっしゃオラァ!!!!!!」グッ!
北斗「えっ」
・
・
・
冬馬「…………」死~ん
翔太「で、殴りかかった冬馬君の方が逆に拳を痛めるっていうね」
北斗「腹筋鍛えててよかった」
冬馬「あーくそ、いってえ……マジでなんなんだよお前、はがねのよろいでも装備してんのか」ムクッ
翔太「あ、復活した」
北斗「なんかゴメン」
冬馬「はー。痛ってぇなチクショウ……」ヒリヒリ…
翔太「っていうかさー。ほんといつになったら呼ばれるんだろ。流石に長過ぎない?」
北斗「ああ、それがさっきどうも機材の調子がおかしくなっちゃったらしくて。スタッフさん達が慌ててたよ」
冬馬「マジかよ、俺らも手伝いに行った方がいいか?」
北斗「いや、専門的なことは素人の俺達には分からないし邪魔になるだけじゃないかな。
代わりに順番前後して先に他の役者さんのシーンから撮るかもって言ってたよ」
翔太「……今日僕何時に帰れるんだろ」
冬馬「長丁場は覚悟しとくしかねえな……」
北斗「ところで話戻すけど、結局具体的にどういう経緯でいきなり俺は理不尽に殴りかかられたんだ?」
翔太「かくかくしかじか」
冬馬「まるまるうまうま」
北斗「あー」
冬馬「もうさあ、お前マジでふざけんなよ。ふざけんなよマジ。マジでもう……ふざけんなよ」
翔太「語彙wwwwww」
北斗「ふふ、懐かしいね。彼女はとても素敵な女性だったよ。情熱的で知的で、かつユーモアもあって……今では綺麗な思い出だね」
冬馬「ぶち殺すぞ」
北斗「でも冬馬はともかくてっきり翔太はもう経験あるのかと思ってたよ」
冬馬「おい、どういう意味だ」
翔太「経験あったら夜中に変態のおじさん釣ったり、冬馬君なんかと水詰めたコンドーム投げ合ってはしゃぐようなしょっぱい青春送ってないよ」
冬馬「だからどういう意味だ。おい。おいコラ」
翔太「そもそもさ、北斗君は名前からしてずるいよね。伊集院北斗て。なにそのホストの源氏名みたいな」
北斗「そんなこと言われても」
翔太「だって僕なんて御手洗だよ? 便所だよ? 全国の御手洗さんに謝ってよ。
今まで僕が一体何度トイレショタとか言われてからかわれたことか」
冬馬「……あー」
翔太「特にこの仕事始めてからは嫉妬されちゃって『トイレくーん、焼きそばパン買ってきてよ~wwww』とかクラスのDQNにナメた態度取られるし」
北斗「……」
翔太「まあそいつの筆箱にカタツムリ山ほど仕込んでキッチリ復讐はしたけどね」
冬馬「お前ほんと強ぇな」
翔太「そのDQNとも今じゃすっかり仲良くなってこの前もオフの日に一緒にスマブラ大会やったよ」
北斗「カタツムリで結ばれる友情か……」
冬馬「羨ましいようなそうでもねえような」
翔太「いやでも僕はこういう性格だし男だからまだいいけど、女の子でこの名字はほんと辛いと思うよ」
北斗「そんなこともないさ。俺の知っている御手洗姓のエンジェルちゃんはみんな前向きで明るい素晴らしい女性達ばかりだよ」
翔太「………ちょっと待って。それまさかうちの姉さんのことじゃないよね?」
北斗「……」
翔太「……」
北斗「……」
北斗「チャオ☆」
翔太「おいコラ北斗コラ、てめえ表出ろコラ」ガタッ
冬馬「ぐふぅwwwwwwww」ブフォッ
翔太「なに笑ってんだよおおおおおおおお!!!!! え、ちょっ、待って。えっ? まさか……えっ?」
北斗「いやいやいや。落ち着いて翔太」
冬馬「そ、そうだぞ翔太。落ち着け。お前キャラ変わり過ぎ……ぶふっwwwww」プルプルプル…
翔太「冬馬君は黙ってて!! ……いやもう単刀直入に聞くけど! 手ぇ出したの!? ねえ!」
北斗「出してない出してない。大丈夫。信じて」
翔太「ホントに!?」
北斗「本当に。流石に俺も翔太の身内にまで手を出すほどボンクラじゃないよ」
翔太「……」
北斗「ただどうしても断りきれなくて一度だけ一緒に食事しただけ」
翔太「してんじゃん!! 思いっっっきりしてんじゃん!! もおおおおおおおお!!!!!」
冬馬「ぶはあっwwwwwwww」ゲラゲラゲラ
北斗「いやでも本当にそれだけだから」
冬馬「なるほど、つまりその締めのデザートとして御手洗団子に串を刺したわけか」
翔太「冬馬君はマジで黙ってろ!!」
冬馬「くっ、ふははっ……だっ、だってお前さっきは散々スイーツだの脳ミソゆるふわだの言ってたくせにほんとは姉ちゃん大好きじゃねえかwwww」ケラケラ
翔太「そ、それとこれとは話が別だもん!!」
北斗「や、本当にね? 弟には黙っててって言われてたんだけど、実は彼女は食事中もずっと翔太のことについて心配してたんだよ」
翔太「え……」
北斗「私が勝手に履歴書送ってアイドルにさせちゃったけど、最近は仕事忙しくて疲れてるみたいだし責任感じてるって」
翔太「……」
北斗「まだ遊びたい盛りなのになかなか休みも取れないし、本音では辛いのに家族の手前言い出せないだけなんじゃないかって。
だからそのことについてずっと俺に相談したかったみたいだよ」
翔太「……そんな……僕アイドルの仕事すっごく好きだし楽しいし、確かに大変ではあるけど全然辛いと思ったことはないよ。
むしろきっかけ作ってくれた姉さんには感謝してるし」
北斗「そうだね。だけどどうしても言葉にして言ってあげないと伝わらないこともあるから」
翔太「……」
北斗「気恥ずかしいかもしれないけど、さりげなくでいいから翔太の口からお姉さんに直接その正直な気持ちを伝えてあげたらいいんじゃないかな?」
翔太「………そっか。うん、じゃあそうしてみる……ありがとう北斗君。えへへ」
北斗「ふふっ!」
冬馬「……えっ、なにこの空気。なにこのちょっといい話風なまとめ。
御手洗団子とか言っちゃった俺だけが空気読めてない悪者みたいな」
翔太「いやもうほんと冬馬君は今後一切僕に話しかけないでくれます?」
冬馬「ちくしょう」
・
・
・
翔太「チッチッチッチッ、バリチッチ! 2!」
冬馬「……」ヒョコッ
北斗「……」ヒョコッ
翔太「あー、3かあ……惜しい」
冬馬「よしっ、俺の番だな! チッチッチッチッ、バリチッチ!! 4!!」
翔太「……」シーン…
北斗「……」シーン…
冬馬「あっ……ってクソ、ゼロかよ!」
北斗「はい、チッチッチッチッ、バリチッチ。3」
翔太「……」ヒョコッ
冬馬「……」ヒョコッ
北斗「……お、3だ。俺の勝ちだね」
翔太「うわー、また負けた~」
冬馬「チッ……お前電子ゲームやらないくせにこういうアナログ系のは強いよな」
北斗「ふふふ。悪いね」
翔太「……」
冬馬「……」
北斗「……」
翔太「…………いや、暇!! すっっっごい暇!! どうしよう、僕もう暇過ぎて死にそう!!!」
冬馬「だからうるせえよ」
北斗「でも他にやることもないしね」
翔太「誰かトランプとか持ってないの~?」
冬馬「ねえよボケ」
北斗「同じく」
翔太「えー」
北斗「ところで喉渇いたからちょっと自販機行ってくるけど二人は何かいる?」
冬馬「クリームソーダ」
翔太「あ、それなら僕が行くよ。北斗君は何にする?」スクッ
北斗「ありがとう翔太。じゃあ俺はホットコーヒー、ブラックで」
翔太「はいはーい」
ガチャッ タタタタッ…!
タッタッタッタッ… ガチャッ!
翔太「おまちどーさまー!」
冬馬「おう」
北斗「おかえり」
翔太「はい、北斗君コーヒー」コトッ
北斗「悪いね」
翔太「はい、冬馬君には青汁」コトッ
冬馬「これな。この期待をまったく裏切らない感じな。逆に安心するわ。っつーか青汁自販機で売ってんのかよ」
翔太「むしろ炭酸系ならがっつりシェイクして渡してたからね。今日の僕は比較的優しいよ。マイルドだろ~?」
冬馬「どっちかっつうとチャイルドだろ」
翔太「面白くないね」
冬馬「こいつ……」
北斗「ん。翔太はミルクセーキか」パカッ
翔太「うん。美味しいよね~これ」パカッ
冬馬「やっぱりお子様なんじゃねえか……」パカッ
翔太「……」ゴクゴクッ
北斗「……」ゴクゴクッ
冬馬「……」ゴクゴクッ
冬馬「……っはーーー!! 不味い! もう一杯! ってバカかッ!!」ダンッ!
翔太「wwwwwwwwwww」
北斗「wwwwwwwwwww」
冬馬「ほんといつか覚えてろよお前ら。マジで。マジで」
翔太「それにしても暇だね」
北斗「話題がループしたな」
翔太「――よしっ! 分かった! 女子会しよう!」
北斗「くふっwww」
冬馬「女子が一人もいねえ女子会っつーこの地獄な」
翔太「女子会といえばやっぱ恋バナだよね! 恋バナしよう恋バナ! っていうかエロバナ! エロ話がしたい!!」
冬馬「お前無邪気な弟アイドル気取りたいならもうちょいキャラ守れよ。
こんな下ネタに対してアグレッシブな国民的弟イヤだわ」
翔太「だって僕、健全な男子中学生だよ? 人生でもっともエロに興味のあるお年頃だよ?」
北斗「翔太、それは誤解だ。基本的に男は20過ぎても30過ぎても結局頭の中はそれしかない」
冬馬「日本一のフェミニストと呼ばれている男ですらこれだよ。日本終わったな」
北斗「というか改めてもう一度聞くけど。翔太は本当に誰かと付き合ったりしたことないの? 本当に?」
翔太「……えっ、なにそれ嫌味? なんでいきなりピンポイントに僕の胸抉ってきたの」
冬馬「なんでや如月関係ないやろ」
翔太「72も言ってないよ」
千早「……あっ! なんでかしら、今何故かとても不快な気持ちになったわ! なんでかしら!」
春香「えっ、急にどうしたの千早ちゃん」
冬馬「……で、なんだっけ?」
翔太「アレでしょ、要するに僕が彼女いない歴=年齢なのを北斗君は嘲笑ってるって話でしょ?」
北斗「違う違う、そうじゃなくて。だって翔太は明るくて社交的で機転も利くし、モテない方がおかしいだろ?」
翔太「……半分嬉しいけど半分ムカつく言い方だなあ。えー、でもぶっちゃけ僕って同年代の女の子たちからはあんまり人気ないからなあ」
冬馬「まあ確かにお前のファン層はほぼ20代以上の女ばっかだな」
翔太「それに所詮僕は芽キャベツだしね」
冬馬「んくっ……い、今その自虐ネタ持ち出すのは卑怯だろ……」フルフル…
北斗「???」
翔太「……あ、思い出した。別に全然エロとかの話ではないんだけどさ。
そういえば一応あったよ僕にも。ある意味ちょっとアダルトな感じのエピソードが」
冬馬「えっ……」
北斗「へえ?」
翔太「あーでもこの話すると微妙に長くなるんだよね。していい?」
北斗「俺は構わないよ。どうせ暇だしね」
冬馬「いいからはよ言え」
翔太「オッケー」
翔太「あのさ。今よりもっと小さかった頃に僕よく怪しい人に誘拐されかかってたって話を前にしたことあったでしょ?」
冬馬「……あったな。誘拐犯以上にそういう恐ろしい話をペロッとするお前が一番怖いわけだが」
北斗「よく今日までこうして無事だったよね」
翔太「あの頃の僕は周りの女の子たちより背ぇ低いくらいだったし、今よりもっと童顔で可愛かったからね~。まあ犯人の気持ちも分からなくはないけど」
冬馬「中身はこの通りクソほども可愛くねえけどな」
翔太「冬馬君は無視してさっさと本題入るね。その時の僕はまだ小学校の低学年くらいでさ。
その日もいつも通り学校帰りに家の近くの公園で友達何人かと遊んでたんだ」
冬馬「ほーん」
北斗「ふむ……」
翔太「その内に他の子たちはみんな習い事とかでだんだん抜けてって最終的には僕だけになっちゃったんだけど。
まだ外は明るいから僕はそのまま一人で遊んでたの」
冬馬「……やべえ、この導入の時点で既に危ねえ匂いがプンプンしやがる」
北斗「続けてどうぞ」
翔太「ブランコの立ち漕ぎでどこまで高く漕げるか記録挑戦し始めたらもう夢中になっちゃって。
で、しばらく経ってふと気付いたらいつの間にかちょっと離れたところに女の人が立っててじっとこっち見てるんだよ」
冬馬「うわっ……」
北斗「ホラー染みてきたな……」
翔太「30代半ばくらいかなあ。もう顔もほとんど覚えてないから分かんないけど綺麗な人だった気がする。思い出補正入ってるかもだけど」
冬馬「そういうのは思い出とは言わねえだろ……」
北斗「……それで?」
翔太「んーと、だからこっちもその女の人に気付いたところでお互い目が合うでしょ。
次の瞬間その人が僕の方にスタスタ歩いてくるんだよね。
で、こんにちはって優しい感じで挨拶されたからこっちも普通にこんにちはって」
翔太「そしたら『私はあなたのお母さんの知り合いなんだけど、お母さんは今少し用事が出来て出かけなくちゃいけなくなったの。
だからその間私が一緒にいてあげてって頼まれて来たのよ』とか言うわけね」
冬馬「……いや。いやいやいや。それ完全にヤバいやつだろ。完全にヤバいやつだろ」
翔太「だよね~。でもまあ僕もその頃はまだ幼くてバカだったから素直に信じちゃって。
しかも駅前にあるチェーン店でハンバーガー奢ってあげるとか言うからホイホイ付いてっちゃったんだ」
北斗「ほんとに危なっかしいな……」
翔太「ハッピーセット買ってもらって当時好きだったアニメのオモチャも貰えてね。
僕の方はもうウッキウキで脳天気にテーブル付いてハンバーガーにかぶりついたわけさ」
翔太「その女の人はなんか無口で影があるタイプっていうの? そんな感じの人で、僕が食べてるところをただ静かに眺めてたんだけど」
翔太「その内ポツポツこっちに向かって質問してきたんだ。
といっても学校は楽しいかとか友達と仲良くやってるかとか、今算数は何習ってるかとかそんなたわいもないことだったと思うけど」
冬馬「……」
北斗「……」
翔太「こっちももうあんま覚えてないけど多分九九の7の段が難しいとか答えたのかな?
ともかくそんなやり取りしてその人も無表情だから分かりにくかったけど、どことなく嬉しそうにうんうん頷きながら熱心に聞いてくれてね」
翔太「僕もそれが嬉しかったからペラペラしょうもないことばっか喋って。
だけど家族の話に触れて僕が一番下の姉さんの名前口にしたら途端にビクッて肩震わせてあからさまに動揺し始めたんだ」
翔太「……あ、ちなみに一番小さい姉さんだから小っちゃいお姉ちゃんで『ちぃちゃん』って当時は呼んでたんだけど」
翔太「とにかくさっきまで物静かで落ち着いてた人が急にめちゃくちゃ取り乱してドリンク倒したりして軽くパニックになっちゃってて」
翔太「僕はなにがなんだか分かんないからとりあえず『どうしたの?』って聞いたんだけど、向こうは心ここにあらずって感じでなにも答えてくれないし」
翔太「で、少し経ってちょっとだけ落ち着いたと思ったら今度はすっごい怯えた声で『あなたにはちぃちゃんって名前のお姉さんがいるの……?』って聞くんだよ」
北斗「……それは……」
翔太「うん。母さんの知り合いのはずなのに僕に姉がいること知らないって時点でもう完全にダウトなんだけどね。
でもその時の僕は全然気付かずに『うん、いるよ~?』って何の気なしに返したんだ」
冬馬「……」
翔太「そしたらもうなんか今にも消え入りそうな悲しそうな声で絞り出すみたいに『……あなたはお姉さんのことが好き……?』って尋ねてくるんだよ。
まあだから僕も普通に『うん、だいすきだよ!』って答えて」
翔太「でさ、そしたらさ。次の瞬間その人が突然、ほんとに唐突にいきなり号泣し始めたんだよ」
冬馬「え……」
翔太「しかもこう、声をあげて思いっきり泣くんじゃなくて自分でも分かんない内にいつの間にか涙が流れてたって感じで。
ひたすらボロボロ大粒の涙零しながら少し俯いて黙って震えてるわけ」
北斗「……」
冬馬「……」
翔太「僕もうびっくりしてオロオロしちゃってどうすればいいか全然分かんなくて、でもとにかく幼心に慰めなきゃ! って」
翔太「『どうしたの? どっかいたいの? だいじょうぶ? ねえ、泣かないでおばさん。おねがい、泣かないでよ~……』とかこっちもつられて半ベソになりながら必死に宥めようとしたんだ」
翔太「だけどいくら聞いても尋ねてもなんで泣いてるのか何も答えてくれなくて」
翔太「僕がなんか言う度に小さく頷くだけで相変わらず泣きっぱなしで、周りの他のお客さんとかも何人か気付いてチラチラこっち窺ってたけど雰囲気が異様過ぎたせいか声かけてこないし」
翔太「で、『ごめんねユウ……ごめんね……ごめんなさい……』って顔両手で覆って肩小刻みに揺らしながらまた長い時間泣いてるの」
冬馬「ユウ……?」
北斗「……誰かの名前、だよね。多分」
翔太「だろうね。途切れ途切れだから詳しくは分かんなかったけど『あの子も……本当なら今頃……』とか呟いてたし」
翔太「……僕ね。ほんとに全然状況分かんなかったけど分かんないなりにその女の人のことなんかすごく可哀想になっちゃって」
翔太「僕もたまにあるんだよね。友達と喧嘩して負けた時とか母さんや父さんに叱られた時とか、とにかく悲しくて悔しくてどうしようもない時」
翔太「そしてそういう時にはいつも姉さんの内の誰かが黙って隣に座っててくれたんだ。
別に何か慰めの言葉かけてくれたりするわけじゃないけど、ただ『翔太の気が済むまで泣きな』ってだけ言って後は黙って30分でも1時間でも側にじっと座っててくれるの」
翔太「それが一番嬉しいってこと僕知ってたから、きっとこの人も今はそうしなきゃいけない時なんだってよく分かんない確信があって、だから僕も後はただ黙ってその女の人が泣き止むまでずっとそうしてたんだけど」
翔太「その人が完全に泣き止んだ頃には既に日も暮れかけててね。
どれくらい時間経ったのか忘れちゃったけど、とにかくやっと顔上げてくれた時にはもうすっかり落ち着いてて。目は真っ赤だったけど」
翔太「まるで何事もなかったみたいにやっぱり唐突に『いきなり泣いたりしてごめんなさいね』って謝られたんだ。
本当に憑き物が落ちたみたいにスッキリした感じで平然としてたからこっちも拍子抜けしちゃったけど」
翔太「で、『もう遅いしあなたもそろそろお家に帰らないといけないわね。……家族が待っているものね』って言われて、それ以上僕も何も言えなかったからただ無言で頷いて店出て」
翔太「気まずい空気で黙ったまま二人でテクテク並んで歩いてさっきの公園まで戻ってきて、そこでさようならって別れたんだけど」
翔太「……その人自身の姿はもうおぼろげなのに、後ろのビルの谷間におっきな夕日がもう殆ど沈みかかって辺り一面真っ赤だったのだけはすごく覚えてる。
だからその人がその時どんな表情してたのかも逆光で何も見えなかったけど」
翔太「最後にその女の人がもう一度『あなたは家族が好き?』って聞いたんだ。
だから僕ももう一度『おかあさんもおとうさんもちぃちゃんたちもみーんなすきだよ』って答えてさ」
翔太「そしたらその人が『そう……』って言ったまま、またなんか考え込んでちょっと間が空いて」
翔太「『じゃあこれからいっぱい親孝行してあげないとね』『うん』『元気でね』『うん』『お母さんによろしくね』『うん』
『風邪とか引かないようにね』『うん』『車にも気をつけて』『うん』」
翔太「もう細かい部分は忘れちゃったけど、まー大体そんな感じのやり取りして。
といっても僕はただうんうん頷いてただけなんだけどね」
翔太「でもやっぱりなんかその人はまだすごく寂しそうだったから、僕も最後になんでもいいからとにかく何か言わなくちゃって思って」
翔太「『泣いちゃだめだよ。泣いたらしあわせがにげちゃうんだよ。だからおばさんも笑った方がいいよ。元気出して』とか、まあそんなありがちな台詞言ったのかな?」
冬馬「……」
北斗「……」
翔太「そしたら最後にその人が初めてちょっとだけ笑ってくれてそれから屈んで僕の頭撫でて『……ありがとう』って、よく分かんないけどお礼言われて」
翔太「で、普通に帰ったわけだけど、途中でチラチラ後ろ振り返ったらその人はずっとそこに立ったまま僕が見えなくなるまで見送ってくれてた」
翔太「家着いたら当然普通に母さんいるし『こんな時間までどこで道草食ってたのッ!』って本気でシバき倒されるし。
でも結局その女の人のことはなんとなく言い出せなくってそのまま」
翔太「未だに家族にも学校の友達にもこの話したことないし、誰かに喋ったのは二人が初めてだよ」
翔太「今となっては夢だったんじゃないかな~って思うレベルの出来事だし、あの時貰ったオモチャもいつの間にか失くしちゃったけど。
でも一応ちゃんと現実の話。これでこの話はおしまい」
冬馬「……」
北斗「……」
シーン…
翔太「あれ、なにこの空気」
冬馬「………いや、重いわ! 予想外に重過ぎてなんも言えねえ!! なんも言えねえ!!」
北斗「確かにね……」
翔太「えー?」
冬馬「……うーん。しかしなんか結構謎が残る話だな」
北斗「恐らくその女性にも『ちぃちゃん』という名前の娘さんとその弟の『ユウ君』という名前の息子さんがいてどちらかを亡くしてる、って感じかな。
あるいは甥っ子姪っ子辺りか。話の流れから察するに亡くなったのは男の子の方だと思うけど」
冬馬「で、その子が翔太にすげー似てたとかそんな感じか? っつーか、だとしたら何気にそれすごくね? どんな偶然だよ」
翔太「んー、でも少なくともその女の人自身は見た目も性格も全然僕とは違ってたと思うけど。
単純にその亡くなった子と僕の歳が近くて面影重ねちゃったってことなのかな~?」
冬馬「だからってそれだけでそんな誘拐紛いなことするか……?」
北斗「……ただの勘だけど誘拐とかそんなつもりじゃなく彼女は本当にただ純粋に翔太と話がしたくて咄嗟に嘘を吐いてしまっただけなんじゃないかな。
いくら幼くても流石にいきなりまったく知らない人から話しかけられたら翔太も警戒してただろうし」
翔太「まあそれはそうだね」
北斗「むしろ怖がらせないためのその女性なりの配慮だったのかも」
冬馬「いやいやいや、だからそれがヤバいんだろ……お前ほんと女には甘いな」
北斗「それにその子の影を重ねてたっていうのもあるだろうけど……翔太には元々結構そういうところあるからね。
単に容姿の話じゃなくてこう、全体的な雰囲気とか」
翔太「え、僕の弟オーラが?」
冬馬「いや、割とマジですげえわ。正直お前の弟力舐めてたわ。年上キラーっぷりハンパねえな」
北斗「というより……そういう翔太の誰かが悲しんでいる時にただ黙って側にいてあげるような優しい部分をその女性は直感で見抜いていたんじゃないかな?
だから彼女もつい声をかけずにいられなかったのかもしれないね」
冬馬「ええ……こいつ優しいか……? ただの悪魔だろ」
北斗「ちょっと冬馬は黙ってようか」
翔太「確かに僕ってわりかしそういう不思議なことよく起こるんだよね~。
前にも話したことあるけど困った時に神頼みしたら本当に叶ったりとか」
北斗「そうだね。俺もあんまりそういう霊感的なものは信じる方じゃないけど、でもやっぱり運命の巡り合わせみたいなものはあると思うよ」
冬馬「しっかし、北斗の推測が正しかったとしても……やり方下手過ぎっつーか人間関係不器用過ぎるだろその女」
翔太「その人も冬馬君にだけは言われたくないと思うけどね」
冬馬「おい」
北斗「まあまあ、結果的には何事もなくこうして翔太も無事なんだし」
冬馬「……まあ最初は危ねえ話かと思ったが終わってみれば総合的には割とガチで深イイ話だったな。日本終わってなかった」
翔太「あのさ。僕、未だに気になってるんだけど。あの人あの後どうなったのかな?
僕はまだそういう経験ないから分かんないけど、家族とか友達とかそういう身近な人を亡くすのってやっぱりすごく辛いよね?」
冬馬「……」
翔太「僕なんかには理解出来ないくらいあの人はいっぱい悲しんだんだろうし、あの後もきっとまだまだいっぱい悲しんでるよね。
多分そんなすぐには立ち直れないよね。
だからあの時もっと気の利いたこと言えてたらよかったな~とは今でもよく考えるんだけど」
北斗「……」
冬馬「……別にそんなこともねえだろ。なんだかんだ時間とか人とかいろんなもんが自然と解決してくれるもんだしな、そういうのは」
翔太「そうかな? ……うん、そっか。じゃあ今はもうあの人も立ち直って元気にしてるのかな? そうだといいなあ」
北斗「……そうだな。本当にそうだといいね」
千早「うわああああああああん!!!!!!」ボロボロボロッ
春香「ええええええ、今度はいきなりの号泣!? ほんとに一体どうしちゃったの千早ちゃん!?」
千早「びええええええええん!!!!」ポロポロポロッ
春香「………千早ちゃん」ギュッ…
千早「春香……」グスッ
春香「なんかよく分からないけど……大丈夫だよ千早ちゃん。泣かないで。私がいるよ。ね? ほら、だから笑って?」
千早「…………春香ぁっ!」ヒシッ
冬馬「……にしてもお前その歳にしてディープな人生送り過ぎだろ。ビビるわ」
北斗「前々から翔太には大人びた一面があるとは思ってたけどその理由の一端を垣間見た気がするね」
翔太「まあどんなに人生がディープだったところでディープどころか普通のキスすらまだしたことはないんだけどね」
冬馬「……」
翔太「……」
冬馬・翔太「「AHAHAHAHA!!」」
北斗(あっ、今の笑うところだったのか)
北斗「――ふむ。しかしそのエンジェルちゃんには俺も是非とも会ってみたいところだな。きっと本人は話に聞くよりもっと魅力的なんだろうね」
冬馬「おいおい、当時30半ばってことは今はもう40過ぎくらいだぞ……お前守備範囲広過ぎだろ」
翔太「それは僕も思う。この前なんてヴィオラ奏者の50代女性とまで噂になってたし。
流石にあれには僕も心の中でつっこんだよね。あれ? 北斗君ってペ○ジーニだったのかな? って」
北斗「恋に年齢は関係ないさ。志ある女性には皆いくつになっても内面から光り輝く美しさがあるものだからね……ふふ、胸が熱くなるな」
翔太「え、厚くなる? 薄くじゃなくて?」
冬馬「だから如月関係ないやろ」
千早「……あっ! なんでかしら、今またやっぱり何故かとても不快な気持ちになったわ! なんでかしら! なんでかしら!」
春香「もうなにがなにやら」
翔太「ていうかさ。話が大幅に逸れちゃったけど僕は別にこういう話がしたかったわけじゃないんだよ。だからエロ! エロの話がしたいの!」
冬馬「こいつ自分で振っといて……あんなクソ重てぇ話した後によくそんなシレッとしてられるな」
北斗「すごいよね、翔太のこの切り替えの早さ」
翔太「だからこそだよ~。口直しにもっと明るくて笑える話が聞きたいんだって!
まあ冬馬君にその手のエピソードは期待してないけど」
冬馬「あんだとコラ」
翔太「じゃあなんかあるの? 誇れるようなエロ体験自慢」
冬馬「…………」
翔太「…………」
冬馬「すいません無いです」
翔太「ほらね」
冬馬「ぐっ……!」
北斗「うーん。冬馬も本来ならモテるはずではあるんだけどなあ」
冬馬「っつーか、だからそもそも俺らはアイドルだろうが! こんなしょっちゅう女と噂になってる北斗の方が異常なんだっつの!」
翔太「北斗君は最初からそういうキャラで売ってるんだからしょーがないじゃん。事実それでファンの人たち喜んでるし」
冬馬「うぐっ…」
北斗「余裕がなくて気の利かない野暮な男はエンジェルちゃんに嫌われるからね。
スマートなレディの扱いを心得るためにはなんだかんだで実際に付き合ってみるのが一番だぞ?」
冬馬「ぐ、ぐぬぬ……だが俺はファンを裏切るわけには……」
翔太「冬馬君ってホントそういうとこクソ真面目だよね~」
北斗「そこが冬馬のいいところではあるんだけどな」
翔太「ならもうこの際エロはどうでもいいや。とにかくなんかないの? 初恋的なのとか」
冬馬「えー……じゃあ俺がウチの事務所の水嶋咲に割と本気で3日間くらいガチ恋してた話でもするか?」
翔太「んぐっwwwwwwww」ブフォッ
北斗「ゴフッwwwwwwww」ブフォッ
※水嶋咲(♂)
http://imepic.jp/20160114/510700
翔太「あはっ、あははははっ! い、いいねいいねー! その話すごい聞きたい!」
北斗「くっ……ふふふっ……」プルプルプル…
冬馬「あのな。お前ら笑ってるけどな。あの人はマジでヤベェぞ。マジで。まずだな、近くに寄るとすげーいい匂いがする」
翔太「……ああ、するね」
北斗「確かにそれはするな」
冬馬「そうなんだよ! なんか知らねえけどとにかくすっげぇ甘い匂いがするんだよ!
そしてなんといっても女子力が高い!! めっちゃ乙女!!」
翔太「まあ男なんだけどね」
冬馬「しかもそれでいて男心も分かるんだぜ!? フゥーッ!!」
北斗「まあ男だからね」
冬馬「この前な、仕事終わりにたまたま事務所に残ってた何人かの浮かれたメンツでメシ食って帰ろうぜってなった時だよ。
そのメンバーの中にあの人もいて近くのファミレス行ったわけだ。で、俺が味噌汁のおかわり取りに行こうとしたら」
冬馬「『あっ、じゃああたしがついでにとうまの分もパピッと一緒によそってきてあげるよ☆』ってな?」
冬馬「そのさり気ない気遣いと優しさな。そしてあの笑顔。プライスレス」
翔太「僕は今ちょっと引いてるけどね」
北斗「まあでも正直分からなくはない」
冬馬「そんで本当に取ってきてくれたあの人が言った『はい、とうまっ。おみおつけだよ!』って台詞!」
冬馬「味噌汁じゃないんだぜ? 『おみおつけ』だぜ!? 漢字で書くと御御御付け!!」
北斗「ああ、うん。はい」
翔太「興奮するポイントがマニアック過ぎて気持ち悪いけど正直分からなくはない」
冬馬「もうな、男だとかそんなん関係なかった。そんな瑣末なことどうでもよかった。むしろ天使に性別なんか存在しねえ」
北斗「完全に末期じゃないか……」
翔太「童貞拗らせ過ぎるとこんな風になっちゃうんだね……僕も気をつけよう」
冬馬「あれから3日間はもうひたすらチラッチラあの人の方ばっか横目で見てたからな。
あのな、あの胸の膨らみの中には何も希望は詰まってないことなんざこっちも重々分かってんだよ。
ダンスする時ジャンプしても揺れねえ、柔らかさも重量も弾力も何もねえ」
翔太「……」
北斗「……」
冬馬「分かってるがそれでも!! それでもつい見ちまう、何かを期待しちまうんだよ……ッ!!!!」ダンッ!
翔太・北斗「「それはすごく分かる」」
冬馬「あれだ、もう少女漫画のヒロイン並みにずっとときめいてたからな。
新しい扉のドアノブに手ぇかけてガッチャガチャに開けようとしてた」
翔太「うわあ…」
北斗「逆にそこまでの状態にあって4日目に一体何があって目が覚めたのかの方が気になるな」
冬馬「…………………………」
冬馬「あのな。その3日間の内に俺も童貞なりに勇気振り絞ってな。
結構こっちから話しかけたおかげで割と仲良くはなれたんだよ」
冬馬「だから4日目のレッスン後にはあの人がロシアンティー淹れるから休憩にして一息入れようよって優しく言ってくれたわけだ。
でもその時に肝心のイチゴジャムの瓶が開かなくってな……」
冬馬「『あたしが開けてみるから貸して~』って言われて、あの細腕じゃ無理だろとは思いつつもとりあえず手渡したんだよ」
咲『んっ! んっ! えいっ』グイッグイッ
咲『あれー、おっかしいなー。開かないね~』
冬馬『あー。じゃあやっぱり俺がもう一回やってみるっス』
咲『んーん、大丈夫! あたしに任せて! うーん……よしっ、じゃあちょっとパピプッと気合いを入れて!』グッ…!
咲『――ッシャオラァッ!! 開かんかいゴルァ!! っはあああああッッ!!!!』バキャッ!!
咲『……あっ、開いたよー☆ はい、とうま! どうぞっ☆』ニコッ
冬馬「……って」
翔太「あっ……」
北斗「あっ……」
冬馬「流石にあの野太い掛け声聞いた後じゃもうどんな可愛らしい笑顔でジャム手渡されても、お、おう……としか言えなかったわ……」
翔太「やばい、これは泣ける……」
北斗「冬馬、お前って奴はどこまで不憫なんだ……」
冬馬「あの人は悪くねえ、何も悪くねえんだよ。
ただどうしてもそこまでは受け止めきれなかった俺のキャパシティの小ささがすべて悪いんだ……」
翔太「冬馬君……それ以前に向こうにもちゃんと選ぶ権利はあるんだよ冬馬君……。
ちょっと優しくしてくれたってだけで勝手に勘違いして勝手に盛り上がって勝手に彼氏面してた辺りが最強に童貞力高くて最高だよ冬馬君……」
北斗「というかついさっきファンは裏切れないとか言ってたのは一体」
冬馬「あれは結局未遂だったからノーカンだ」キッパリ
翔太「まあでも咲さんならしょうがないよ。あれは例外中の例外。
……あー、だけど麗さん辺りもヤバいんだよね。僕初めてあの人見た時ほんとに女の子かと思ったもん」
北斗「ああ……」
※神楽麗(♂)
http://imepic.jp/20160116/385940
冬馬「確かにあいつもな……」
翔太「ねー。もーこんな男ばっかのむさ苦しいプロダクションで仕事してるとさー。ダメだね。心がひび割れるね。潤いが欲しい」
北斗「俺もテレビ見てて、あれ、可愛い子が映ってるなと思ったら麗だったことあるからね」
冬馬「恐ろしいな……にしても翔太お前、もふもふえんのことは敵視してるくせにあの二人はいいのかよ」
翔太「ショタと男の娘と中性美少年一緒にしないでよ。全然別ジャンルだからね。戦争起こるよ」
北斗「そういえばショタケットって客層ほとんど男らしいね」チラッ
翔太「……何が言いたいの?」
冬馬「なるほど、つまりショタコンとは翔太コンプレックスの略だったのか……」チラッ
翔太「ねえ、ちょっと」
北斗「御手洗翔太ランド、はっじまっるよー!」
冬馬「わぁい!」
翔太「おいやめろ」
冬馬「くくっ……。しっかし俺らの事務所どいつもこいつも尖り過ぎだろ。元医者とか元弁護士とか元柔道メダリストとか何なんだよ。
普通に元の職業に従事しとけよ。一体何を血迷ったんだよ、頭おかし過ぎるだろ」
北斗「冬馬お前……一番触れてはいけないことを」
翔太「っていうかアイドル自体がイロモノ職業みたいな言い方やめてよ。こっちにまで飛び火するじゃん」
冬馬「だっていくら理由(ワケ)あってアイドルがコンセプトだからってその肝心のワケがあり過ぎるだろ……。
S.E.Mの3人とかマジでなんなんだよ。三十路過ぎたオッサンが全身タイツの衣装着て歌って踊るとか……何の儀式だ。
雨乞いか? 五穀豊穣を願う祭りかなんかか?」
翔太「……んぐふぅっwwwwwwwww」ブーッ!!
北斗「ぶふぉおっwwwwwwwww」ブーッ!!
※硲道夫(元数学教師、32歳)
http://imepic.jp/20160116/469210
※山下次郎(元化学教師、30歳)
http://imepic.jp/20160116/469211
※舞田類(元英語教師、23歳)
http://imepic.jp/20160116/469212
翔太「ちょっ、冬馬君やめっ、儀式って……っ! ふひぇっ、ふふ、ふふふっ、あはははははっ!!!」ドンドンッ!
北斗「くっ…くくくっ……あはっ!」
冬馬「おまけに唯一いる20代はルー語みてえな喋り方するしよ」
翔太「『Hey、ミスターみたらい! 俺達と一緒にidolのjobをめいっぱいenjoyしようよ☆』ってね」
冬馬「おい北斗、あの人お前の大学時代の先輩なんだろ? なんとか言ってやれよ」
北斗「ふっ……いやもう……いいんだよマイケルはあれで。うん」
翔太「いやあ……ふふっ、でもごめん。僕、実はあの人たちすごい好き」
冬馬「奇遇だな。実は俺も嫌いじゃない。むしろかなり好きだ」
北斗「まあね。3人とも相当努力してるし、ライブでのパフォーマンスなんかもすごいしね。マイケルはお客さんの煽り上手いし」
翔太「しかもこの間なんて期末テスト前に僕が焦ってたらさー。道夫さんが試験に出そうなとこ全部まとめた要点ノート作ってくれたんだよ。
それがまためちゃくちゃ分かりやすいの。さすが元教師」
冬馬「最初はなんだこいつらとか思ってたのにな。あそこまで気持ちよく極端に突き抜けられるとな。
逆にこのままどこまでも斜め上にまっすぐ突き進んで欲しいみたいな謎の感情が知らず知らず湧いてくる」
翔太・北斗「「分かる」」
冬馬「もうなんかキャラ立ち過ぎてて嫉妬するわ。危機感覚えるレベル」
北斗「俺も自分のキャラは濃い方だと思ってたけどその自信を見事に打ち砕かれたよ」
翔太「違うよ北斗君。僕たちはキャラが薄いんじゃない。人としてマトモだと考えるんだ」
冬馬「ああ、だよな! ぶっちゃけ俺らなんて他の奴らに比べたら全然真っ当だよな! 正統派だよな!!」
翔太・北斗「「だよ~」」
冬馬「……」
翔太「……」
北斗「……」
冬馬(真っ当……だよな?)
翔太(真っ当……だよね?)
北斗(真っ当……かな?)
・
・
・
翔太「――さて。皆さん、とうとうこの時間がやって参りました」
冬馬「ああ……ついにか……」
北斗「ん?」
翔太「あのね。これまでの僕と冬馬君の話なんてね。所詮は前座だから。
付け合わせのおしんこみたいなもんだから。真打ちはここで登場するんだよ」
冬馬「とうとうメインディッシュが来ちまったな……」
北斗「……あれ?」
翔太・冬馬「「というわけで次、北斗(君)どうぞ」」
北斗「え? ……何が?」
冬馬「あ゛あ゛!?」
北斗「え?」
冬馬「今更カマトトぶってんじゃねえよ! 何がじゃねえよ、ナニがだよッ!!!」
翔太「どうせ北斗君はエグい話いくつも抱えてるんでしょ!? 放送禁止用語余裕でぶっちぎるアレなネタたくさん持ってるんでしょ!!」
北斗「二人は一体俺のことをなんだと思ってるんだ」
冬馬「エロ事師」
翔太「覇王愛人」
北斗「…………」
冬馬「『そのキレイな顔にブッかけてやる!』とか言ってんだろ? どうせ」
翔太「それで相手の女の子の頭がフットーしそうになっちゃうんでしょ? どうせ」
北斗「二人はいろいろと勘違いし過ぎだ……やれやれ、しかしそこはどうせなら愛の宣教師、または現代のカサノヴァとでも言って欲しいところだな」フッ…
冬馬「やべえ、この時点で既にかなりウゼェぞ」
翔太「でも期待は大いに出来そうだよ」
北斗「……なんてノリで言ってはみたけどね。実際俺も別にそんな大した経験なんてないから無駄にハードル上げられても困るかな。
まあでもせっかくだし何か聞きたいことがあるなら答えられる範囲で答えてみようか」
冬馬「ふーん。じゃあとりあえずひとつ聞くけど。3Pしたことあるか?」
北斗「ないよ」
翔太「え? ……じゃあ乱交は?」
北斗「中学生がなんて言葉使ってるんだ……ないよ」
冬馬「え? は? なら青姦は?」
北斗「ない」
翔太「カーセックス」
北斗「ない」
冬馬「スワッピング」
北斗「だからないって」
翔太「………………」
冬馬「………………」
冬馬「いや、嘘つけ!!」
翔太「あるね! 絶っっっ対にあるね!! ないわけないじゃん、北斗君だよ!?」
北斗「だからその俺に対する謎の信頼は一体なんなんだ……」
冬馬「……」
翔太「……」
北斗「……」
冬馬「え? いやいや……え? 悪い、ちょっと意味が分からねえ。え? だって……え?」
翔太「え? ないの? ほんとに? え? ごめん、意味が分からない」
北斗「……あのね。まず第一に俺はこれでも一応芸能人だからね?
野外なんてそんないつ人目に付くかもしれない場所で危ないことは流石に出来ないよ」
冬馬「なん……だと……?」
北斗「第二に顔射とか普通エンジェルちゃんの方は嫌がるからね。俺、女の子に酷いことはしたくないし」
翔太「北斗君が……あの北斗君がエロに対してすごく常識的なこと言ってる……!!」
北斗「第三に俺は恋人を作るならひとつの時期に一人だけってちゃんと決めてるからね。
真剣に1対1で向き合わなきゃプリンセスにも失礼だろ?」
冬馬「どの口が言いやがる……」
翔太「えー。……なーんだ、現実は結局そんなもんなの? つまんないの~」
冬馬「ケッ。ならもうお前はそうやってフェミニストぶって一生ポリネシアンセックスでもしてろ」チッ
北斗「ええ……なんで今俺は貶されてるんだ……?」
翔太「ねえ、じゃあさじゃあさー。その1対1で向き合ってる時にはどうなの? すごいプレイとかしないの?
酷いことしたくないってことは相手の合意さえあればいいんでしょ?」
北斗「いや別に。ノーマルだよ実際のところ。そんなAVの中の話じゃないんだから」
冬馬「ちぇっ、なんだよ。中にはすげえドMな女とかいて『首絞めながらしてよ~』みたいなのとかあったりすんのかと思ったわ」
北斗「………………………」
冬馬「…………それはあるのかよ!」
翔太「こっわ!! こっっっわ!!! うわ、今ゾワッてなった! リアルに鳥肌立ったよ僕!! 怖っ!」
冬馬「やっぱりしてんじゃねーか! おい! ふざっっっけんな!!」
翔太「他には!? 他には一体どんなことしてるの!?」
北斗「……まあ個人的な趣味で言うなら……こう、軽い縛り的な……」
翔太「はあっ!?」
冬馬「縛り!? おい、今縛りっつったぞコイツ!!」
翔太「格闘ゲームの縛りプレイが、なんちゃってー☆ みたいなオチじゃなくて!?」
冬馬「夜の格闘ゲームか!! 上上下下左右ビーチクか!!??」
北斗「あの、その日してるネクタイを使ってね。次のデートの時にも敢えて同じのを締めて行くんだ。
すると会った瞬間それに気付いたエンジェルちゃんがその夜のことを思い出して顔を真っ赤にして恥ずかしがるのが……もう……正直堪らないね」
冬馬「キャアアアアアアアアアアア!!!!!!!」
翔太「イヤアアアアアアアアアア!!!!! ただれてるぅううう!! 汚れてるううううううう!!!!」
冬馬「これか! これが巷で風の噂に聞く羞恥プレイってやつか!?
俺の中でいつか彼女が出来たらやってみたいことランキング堂々1位に長年君臨してるソフトSMか!!」
翔太「どうすんの、これから北斗君がネクタイ締めて仕事来るたび、この胸に沸き起こる殺意を抑え込まなきゃいけなくなったんだけど!?」
冬馬「アレか? “俺はお前を縛るけどお前に俺の心は縛れないぜ?”ってか!? バカヤロウッ!!」
翔太「もうやだこの世界! 僕こんな汚れた大人になんてなりたくない! 一生トイザらスキッズでいる!!」
北斗「あっはっはっ」
バタバタバタッ…! コンコンッ ガチャッ!
スタッフ「すみません、遅くなりました! ジュピターさん本番でー………って、うおっ!?」
冬馬「ぜえ……ぜえ……や、やっと来たか……」ボロッ…
翔太「はあ……はあ……な、長かったね……」ボロッ…
スタッフ「……あの」
北斗「ああ、分かりました。大丈夫、すぐに行きますよ」キラッ
スタッフ「え、いや……それよりもこの惨状は一体……」
北斗「いえいえ、なんでもないんです。ほら冬馬、翔太。行くぞ」
冬馬「はあはあ……げほっ。お、おう……」ヨロッ
翔太「ぜえはあ……う、うん……」ヨロッ
北斗「ははは。まったく、あの程度でだらしがないな二人とも」
冬馬「お前は後で殺す。必ず殺す。絶対に殺す。
っはー………よしっ、仕事は仕事だ! 切り替えていくぞ! おい翔太、へばってないで気合い入れろ! 本番だぞ!」
翔太「分かってるよ……はあ、まだ撮影前なのに既に体力使い果たした……」
冬馬「情けないこと言ってんじゃねえ。この程度で使い果たしてるようなスタミナならまたレッスン増やすぞ」
翔太「げっ…」
北斗「ドンマイ翔太」
翔太「北斗君は黙っててマジで。………ああもう! 分かったよ!
そうだよね、僕たちはジュピターだもんね! 頑張るよ! 頑張ればいいんでしょこんちくしょう!!」
冬馬「おう、その意気だ! 俺達ジュピターならどんな仕事だって楽勝、だぜ!」
翔太「おー!」
北斗「おー」
冬馬「ただし北斗、てめーはだめだ」
翔太「撮影終わったら本気で覚えといてね北斗君」
北斗「ははははは。怖いなあ二人とも」
スタッフ「………???」
・
・
・
――後日 315プロ事務所
冬馬「……で、だ。せっかくの貴重な休みに俺が安らかに惰眠を貪ってるとだな。
……来るんだよ。キャベツ色したチビの悪魔が」
北斗「ふふっ」
翔太「にっこり」
冬馬「もうな、一瞬で分かる。何故ならこいつは人ん家のインターフォンをベートーベンの運命のリズムで力強く連打してくるから」
翔太「中でまだ寝てたであろう冬馬君が『あ゛あ゛ああああ、うるせええええ!!!!』って半ギレになってる姿を想像するだけで楽しいから困る」
冬馬「そして俺が渋々毛布から抜け出して嫌々ドア開けたら一言」
翔太「……来ちゃった☆」
冬馬「彼女か!! お前は俺の彼女かっ!!」
北斗「あははははっ!」
冬馬「あのな。別に来るなとは言わねえ。だがせめてその前にアポを取れと。せめてメールの一本でも寄越してから来いと」
翔太「えー、でも前にちゃんと送ってから行った時も結局はキレてたじゃん」
冬馬「『私メリー。今あなたの家の前にいるの』ってな。……怖ぇーわ! そのためだけにわざわざサブアド取得してきやがって!!」
北斗「はー、すごいなあ。誰かにイタズラさせたら翔太の右に出る者はいないね」
翔太「いやあ、それほどでも」テレッ
冬馬「誉めてねえし、ただの嫌がらせだよ! あれだ、もはや俺ん家のことをネカフェかなんかだと思ってるからなこいつ」
翔太「だって冬馬君の家って居心地いいんだもん。一人暮らしだし食べたいもの頼めば大体何でも出てくるし。
気持ち悪いくらいフィギュア大量にあって引くけど」
冬馬「べ、別にそれはいいだろ……」
北斗「地震来たらヤバそうだよね」
冬馬「ああ、その点については大丈夫だ。地震対策は既に完璧にしてあるからな。
俺の嫁の命は災害なんかに奪わせねえ。俺がこの手で絶対に守りきってみせる」キリッ
北斗「あ、はい」
翔太「気持ち悪いよね~」
冬馬「うるせえよ。そんで勝手に人ん家の冷蔵庫開ける、DVD見る、CDかける、ゲームやる、菓子を食う。
おまけにいつの間にか風呂まで入ってやがるからなこいつは」
北斗「なるほど。それで最終的にはベッドにも入る、と」
冬馬「うん、まあ」
翔太「そうだね」
北斗「………えっ!?」
冬馬「そして俺は床で寝る」
北斗「んふっwwwww」
冬馬「もうな、意味が分からねえ。なんで勝手に押しかけてきただけのこいつがベッド占領して家主であるはずの俺が床に布団敷いて寝てるのか。意味が分かんねえ」
翔太「ぶー。別にいいじゃんそれくらい。心狭いな~冬馬君は」
冬馬「前に一度無理やり蹴落としてベッド奪い返した時には報復で次の日俺の額に油性ペンで『草』って書かれてたからな。そこはせめて肉って書けやっ!!」
北斗「あ、ツッコミどころはそこなのか」
翔太「だって冬馬君は草食だからね。
まあ好んで草を食べてるわけじゃなく、肉が食べたくても食べられないから仕方なく草を食んでるだけなわけだけど」
冬馬「やかましいわ!」
北斗「いやあ。でも翔太はやっぱり優しいね」
翔太「ん?」
冬馬「……おい、お前今の俺の話聞いてたか? 一体どこに優しい要素があったんだよ」
北斗「だって翔太は冬馬が親元離れての一人暮らしだから気を遣ってよく泊まりに行ってあげてるんだろ?」
翔太「え?」
北斗「え?」
翔太「……え?」
北斗「……え?」
翔太「……」
北斗「……」
北斗「あ、素だったのか……」
冬馬「ほらな!! だからこいつはこういう奴なんだって! 北斗は翔太のことを過大評価し過ぎだ!!」
北斗「うーん……まあでも結果的に賑やかになるのは確かだしいいんじゃないか?」
翔太「だよね~。さっすが北斗君は分かってるぅ~」
冬馬「だからそうやってこいつを甘やかすんじゃねえ。すぐ調子乗ってきやがるんだからよ」
翔太「ところで僕、今度は北斗君の家にも行ってみたいなー。そういえばまだ行ったことなかったよね?」
冬馬「おい、やべえぞ北斗。お前の家にまでドス黒い悪魔の手が伸び始めてるぞ」
北斗「別に何も問題はないよ。家の両親はもてなし好きだしね。妹もきっと二人が来たら喜ぶよ」
翔太「ああ、あの巨乳の」
冬馬「ああ、あのワガママボディの」
北斗「家の妹をそういう目で見るのなら流石の俺でもちょっとこの拳に秘められし闇の力を解放せざるを得ない」
ガチャッ!
315P「ただいま戻りました~」
冬馬「……お、プロデューサーか」
北斗「お疲れ様ですプロデューサー」
翔太「プロデューサーさんお疲れ~」
315P「みんなもお疲れ様。そうそう、この前撮ったドラマすごく評判いいんですよ。3人ともよく頑張りましたね」
北斗「本当ですか? それはよかった」
冬馬「ふんっ、俺達なら当然だろ!」
翔太「……いろいろ大変だったもんねえ。主に撮影前と後が」
315P「ふふふ。だから頑張ってるみんなに負けないように私も気合い入れてまた新しい仕事取ってきました! 今度のはちょっとすごいですよ!」
冬馬「おっ…」
北斗「流石俺達のプロデューサー。相変わらず敏腕ですね。こんな素晴らしい方と毎日仕事が出来てとても嬉しいです」
翔太「わーい、やったー! 次はどんな仕事だろ? やっぱアイドルらしく歌って踊れて楽しいのがいいよね~!」
冬馬「……で、肝心の内容は?」
315P「巨大人食い熊とガチンコ対決」
木星「えっ?」
315P「巨大人食い熊とガチンコ対決です」
木星「」
☆新生ジュピターのトップアイドルへの険しい道のりはまだまだ続く……
彼らの血の滲む努力がいつか実を結ぶ日が来ると信じて―――!
冬馬「俺達はまだ登り始めたばかりだからな……この果てしなく遠いアイドル坂をよ……!」
315P「あ、ちなみに無人島開拓とエベレスト登山の話も来てます」
冬馬「…………………………楽勝! だぜ!」
ご愛読ありがとうございました!
これからの315プロの活躍にご期待下さい!!
<完>
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