放課後
男「……………」カキカキ
男友「なぁ、男よ」
男「何だ、男友」カキカキ
男友「お前は何が楽しくて放課後に教室で宿題なんぞやってるんだ?」
男「現代文の教師は、その日の内に宿題を出すと効果的なんだ」カキカキ
男友「現代文の婆さんを口説くつもりか?」
男「好印象を与える為だ」カキカキ
男友「はぁ、頭固すぎないか…」
男「柔らか過ぎるよりはマシだ」カキカキ
男「お前こそ何で残ってるんだ?」
男友「そりゃお前…」チラッ
男「…………」チラッ
女「……………」ペラ
男友「深窓の令嬢を拝む為だろ」ニヘラ
男「お前らしい理由だな」カキカキ
男友「この教室に俺達3人だけなんだぜ?」
男友「これってチャンスだろ」
男「何のだ…」ハァ
男友「仲良くなるチャンスだよ、馬鹿」
男「なら、早く話しかけてこい」カキカキ
男友「いや、しかしよ…」
女「……………」ペラ
男友「話しかけづらいだろ」
男「なら、諦めろ」カキカキ
男友「お前はあの姿を見て何とも思わないのかよ」
男友「めちゃくちゃ可愛いじゃん」
男「何の苦労も知らないお嬢様に興味無いな」
男友「お前なぁ…」
男「時に男友、今日は妹と約束があるんじゃなかったのか?」
男友「おいおい、もうそんな時間かよ」ガタッ
男友「俺、もう行くな」タッタッ
男「…………騒がしい奴だ」
男「……………」カキカキ
女「……………」ペラ
男(しかし、わざわざ放課後に残ってまで読書とは…暇なのか?)
男(成績上位者で教師からも好かれてお嬢様)
男(漫画のキャラみたいだな…)
女「……………」パタン
男(帰るのか)カキカキ
女「……………」スタスタ
女「……………」ガラガラ
男「……ん?」チラッ
女「前の席、失礼しますね」ニコ
男「……………」
男(まさか、俺に言ってるのか?)
女「聞こえませんでしたか?それとも……」
女「世間知らずのお嬢様とはお話したくありませんか?」クスッ
男「…えっ?」
女「ふふ、すみません」
女「先ほどのお言葉が聞こえてしまって」ニコ
男「あ、あぁ…」ダラッ
男(地獄耳か?)
女「はい、地獄耳ですよ」
男「…………心の声まで聞こえるのか?」
女「少しだけなら」クスッ
男「……………」
女「男さんはいつもお勉強ばかりですね」チラッ
男「まぁ、勉強は大切だからな」カキカキ
女「何か目的でも?」
男「目的?」
女「勉強を頑張る目的です」
男「将来の為だ」カキカキ
女「安定した職の為ですか」
男「そうだ、今やっておけることがあるならやっておきたいからな」
女「堅実な方ですね」クスッ
男「それでお前は何で残ってるんだ?」
女「女です」
男「…知ってるが」
女「なら、ちゃんと呼んで下さい」ニコ
男「…………女は何で残ってるんだ」
女「ご覧の通り読書です」スッ
男「読書なら家でもできるだろ」
女「はい、正論ですね」
男「なぜ学校で読む」カキカキ
女「なぜだと思いますか?」
男「……………」カキカキ
女「……………」
男「家に帰りたくないのか」
女「正解です」クスッ
男「しかしこの時期は暗くなるのが早い」
男「今の内に帰った方がいい」パタン
女「終わったんですね」
男「あぁ、提出して帰る」ガタッ
女「では、私もお供します」ガタッ
男「…………なぜだ?」
女「別について行くだけです」
女「お気になさらずに」ニコ
男「……………はぁ」スタスタ
女「ふふふ」スタスタ
ガラガラ
─
──
───
───
──
─
ガラガラ
男「ふぅ………」
女「お疲れ様です」クスッ
男「お前、待ってたのか?」
女「えぇ、暗くなってしまったので一人で帰るのは怖くて」ニコ
男「怖がってるようには見えないが」
女「弱さは見せない、母からの教えです」
男「流石は名家の奥様だな」
女「皮肉ですか?」
男「さぁな……」スタスタ
男「……………」スタスタ
女「……………」スタスタ
男(気まずいな…)ハァ
男「家に帰りたくない理由だが…」
女「はい」
男「母親が関係してるのか?」
女「どうしてそう思うんですか?」
男「お前が───」
女「……………」ニコ
男「───女が母親の名前を出した時、顔が一瞬強ばってた」
女「……………」
女「…良く見てらっしゃいますね」ニコ
女「男さんの言う通り帰りたくない理由は母にあります」
男「母親にでも怒られたのか?」
女「ふふ、怒られるのはいつものことです」
男「…………ほぅ」
女「母は厳しい方なので」
女「男さんのお母様はどんな方ですか?」
男「どんなって…普通の母親だぞ?」
女「何を基準に普通なんですか?」
男「いや、一般的な…あぁ、すまん」
女「いえ、気にしてませんよ」
男「俺の母親は…まぁ、優しくて明るいな」
女「お綺麗な方なんでしょうね」クスッ
男「…高校の頃、学校で2番目に美人だったらしい」
女「お母様はどこの高校なんですか?」
男「あぁ、────」
女「……………えっ」
男「何だ、知ってるのか?」
女「えぇ、私達の高校が女子校だった頃の高校名ですね」
男「…女子校だったのか?」
女「ご存知なかったんですね…」
女「失礼ですが、お母様のお歳は?」
男「今年で38歳だ」
女「私の母と同い年ですね、しかも同じ女子校です」
男「ほぅ、偶然だな」
女「えぇ…ふふ、ふふふ」クスッ
男「気持ち悪いな」
女「ごめんなさい…ふふ、今日は何だか早く帰りたくなりました」
女「今日はここでお別れしますね」
女「では、また明日」ニコ
男「………変なお嬢様だ」スタスタ
───
──
─
男の家
男「ただいま」ガチャ
男母「お帰りなさい、男」ニコ
男「……………」
男母「どうしたの、男?」
男(やっぱり美人だな…)
男「何でもないよ、今日の夜ご飯が気になっただけ」
男母「今日はオムライスよ」スッ
男(なぜケチャップがハートマーク)
男母「今日も学校で宿題やってきたの?」
男「今日中に提出しなきゃ意味がないから」
男母「少し無茶し過ぎじゃない?」
男「それは母さんだろ…また、仕事増やしたんだろ?」
男母「それは…お父さんの分まで私が頑張らないとだから」
男「だから俺がアルバイトす──」
男母「それはダメよ」ジッ
男「……………」
男母「高校生活は一度しかないのよ」
男母「アルバイトも良いけど、貴方には高校生活を満喫してほしいの」
男「俺は別に……」
男母「ぐすっ…これは母さんの一生のお願いよ…」グスッ
男「いや、泣かれても」
男「はぁ、わかったよ高校生活を満喫するから」
男母「そう、ほんとに男は良い子ね」ケロ
男(小悪魔め…)
男母「さ、食べましょ?」ニコ
男「いただきます」
─
──
───
───
──
─
翌日
女「おはようございます、男さん」ニコ
男「あぁ…」
男友「……………」ポカン
男「どうした、いつも以上にアホ面になってるぞ」
男友「いや、さりげなく悪口言うな!それよりも、お前どういうことだ!」ガタッ
男「何が?」
男友「何で深窓の令嬢と仲良くなってんだよ!」
男「あぁ、昨日ちょっとな」
男友「ちょっとって何だ、ちょっとって!!」ユサユサ
男「あー、気持ち悪いー」
男友「畜生、お前って奴はー!」ユサユサ
女「……………」クスッ
男「……………」チラッ
ガラガラ
女教師「よーし、お前らこの前の小テスト返すぞー」
男(相変わらず挨拶無しか)
女教師「ったく、このクラスは優秀な奴が多いから平均点が高いねー」チラッ
男(なぜ、こっちを見る)
女教師「ほら、早く取りにこーい」
男「今日も疲れるな…」
───
──
─
昼休み 保健室
女教師「さぁて、男」ギシッ
男「何してるんですか、先生」
女教師「可愛い生徒を押し倒してるだけだが?」
男「本当に何してんだ、あんた!」
女教師「教師に対して随分な口だなぁ」ピト
男「あ、あんたも生徒に対する…」ドキッ
女教師「何だ動揺してるのか」ニヤ
男(何でこんなことに…)
男「そ、それで本当の目的は何だ」
女教師「何ですか?だろ、男」ツー
男「っ?!何ですか!」
女教師「男は確か保健委員だったよなぁ?」ニヤッ
男「……………そうですけど」
女教師「じゃあ、よろしく」ギシッ
男「…は?」
ギシッ ギシッ ギシッ
女教師「っああ!いいねぇ…んふ!」ビクッ
男「…………………」ググッ
ギシッ ギシッ ギシッ
女教師「んっ…んんっ!あっ…んふ」ビクッ
男(手加減無しで押してんだけどな…)グイグイ
女教師「男…テクニシャンだねぇ…マッサージ上手すぎない?」
男「何でマッサージしなきゃいけないんですか?」
女教師「保健委員だから」ニヤッ
男(本気で殴りたい!)
女教師「んんー、すっきりしたぁ!」ノビー
男「俺、昼飯食って無いんですけど…」
女教師「ほら、これやるよ」スッ
男「今、どっからおにぎり出した」
女教師「ここで食うの許してやるけど、早めに食べとけよー」
女教師「じゃ、午後の授業でな」ナデ
男「なっ?!」ドキッ
女教師「ふふっ…」スタスタ
男「……………はぁぁ」
男「………………」モグモグ
男「……保健室なんて来るの久しぶりだな」
男「……………」モグモグ
ガラガラ
男「んぐっ?!」
女「男さん?」
男「げほっ、げほっ!?」
女「保健室で飲食は禁止されてる筈ですよ」
男「いや、これにはだな…」
女「それに男さん保健委員でしたよね?」
男「あ、あぁ…」
女「………………」スタスタ
男(な、何だこの威圧感… )
女「いけない子ですね…」ギシッ
男「………………ん?」
男「お前、様子が…」
女「不思議な匂いがしますね」クンクン
男(近すぎるだろ)ドキッ
女「さっきまで先生とご一緒だったんですか?」
男「………………いや」
女「………………ふぅん」ニコ
男「………………」ゾクッ
女「男さん、放課後あいてますか?」
男「まぁ、暇だな」
女「では、放課後…図書室で」ヒソッ
男「………………」
─
──
───
───
──
─
放課後 図書室
男「一体、何してんだろうな俺」ハァ
ガラガラ
男「………………」キョロ
フワッ
女「………………」ペラ
男「………………」ドキッ
女「………………」チラッ
女「男さん、こちらへ」パタン
男「あぁ…」スタスタ
男「それで何の用だ」
女「男さんは、昔話はお好きですか」
男「嫌いだ」
女「そうですか、では聞いて下さい」
男「おい」
女「昔、ここが女子校だった頃のお話です」
男「………………」
女「女子校だった頃、毎年学園祭で劇を行っていたんです」
女「その歴史は長く多くの人が毎年見に来ていたそうです」
男「ほぅ…」
女「劇は恋愛劇で物語は毎年同じ…それでも多くの人が見に来た理由がわかりますか?」
男「演者が違うのか」
女「流石ですね…」
男「物語が同じでも演者が違ければ物語も変わってみえるからな」
女「ふふ、そうなんです」
女「ヒーロー役とヒロイン役は学園祭前に行われるミスコンの1位と2位が演じてたそうです」
男「華やかな劇だったんだろうな」
女「はい、私も一度は見てみたかったです」ニコ
男「それで、そんな昔話をなぜ俺に?」
女「実は、この劇で事件があったんです」
男「事件?」
女「はい、先ほどもお話したようにこの劇は演者以外は物語もセットも同じです」
女「ですが、一度だけエンディングが変わった時があったんです」
男「エンディングが変わった…?」
女「はい、少し興味ありませんか?」ニコ
男「…ここまで聞いたら今更だろ」
女「ふふ、そうですよね」
女「元々この劇は王子と庶民の娘が恋に落ちる物語なんです」
女「二人には多くの障害がありましたが、それを乗り越え」
女「最後は城を抜けた王子が娘と共に新たな地で幸せに暮らすという終わりなんです」
男「それで変わったエンディングっていうのは、どういうものなんだ?」
女「それは、わからないんです」
男「わからない?」
女「えぇ、エンディングが変わったというお話は演劇部の先輩から聞いたものだったのですが…具体的なエンディングは知らないそうなんです」
男「じゃあ、どんなエンディングか分からないままか…」
女「男さんはどうしてエンディングが変わったと思いますか?」
男「…エンディングを変えざるおえない事態が起きたからか」
女「確かに、それはありえますね」
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