川崎「ちっちゃくなっちゃった」 (38)
大志「じゃあね、姉ちゃん。いって来ます」
京華「さーちゃん。いってきまーす!」
川崎「ん、いってらっしゃい」
今日は総武高校創立記念日。
ということで学校は休み。いつもならこの二人の愛しい弟妹と一緒に玄関をくぐる所だが、今日は家の中から二人を見送っていた。
大志「……家に一人だからって比企谷さんのお兄さん呼んだりしちゃ駄目だよ」
川崎「!?よ、呼ばないよ!何言ってんの大志!」
大志「嘘だよ。別に呼んでもいいよ」
川崎「だ、だから呼ばないって!」
京華「?さーちゃん、はーちゃんと遊ぶの?」
川崎「遊ばない!」
そしてようやく二人が家を出る。
全く……大志のやつ。いつからあんなませた子に……。
そもそも、私があんな奴呼ぶはずがない。呼ぶはずがないのだ。
そう、今日だって私が呼んだ訳ではないのだから。
あちらからこっちに来るなら、ノーカン。のはずだ。
※八幡×川崎の俺ガイルSSです。
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昨日の事。
八幡「おい」
川崎「ん……」
八幡「おい、起きろ」
川崎「んぇ………」
八幡「起きろ、川崎」
川崎「ん、んぇ!?」
起きると目の前に比企谷がいた。
えっと、私はさっきまで何を……。
八幡「それで、や、その前にだな」
川崎「?…何?」
八幡「その、よだれ、拭け」
川崎「!…………///」
急いでよだれを拭う。うう、見られた。一番見られたくないやつに。
川崎「…で、何?」
務めて冷静に言う。動揺を見せたくない。
八幡「いや、寝てたからノート取ってなかっただろ?だから、何。その、あれだ。ノート、貸してやるよ」
川崎「……もうちょいスラっと言えないの」
八幡「言えたらぼっちやってねーよ。貸してやるっつってんのに何なの?そんなに俺を傷つけたいの?」
川崎「ごめんごめん。ありがたく借りるよ」
あぁも動揺されると逆に恥ずかしくなくなる。
八幡「あーしかし、あれだな。明日休みだから二日連続で貸す事になるな」
川崎「……じゃあ今ここで写すよ」
八幡「別にそういう意味で言ったんじゃねーよ。貴重な休みにわざわざ勉強もしねーし」
川崎「いや、でも……」
八幡「いいから」
川崎「あの、じゃあさ、その、取りに来なよ。明日、うちに」
八幡「…………はぁ?何で」
川崎「そ、そしたら明日に返せるし、あらためてお礼もしたいし……い、嫌?」
八幡「や、別に嫌って訳じゃねぇけど」
川崎「じゃ、じゃあいいでしょ。別に」
八幡「え、いやでも」
川崎「と、とにかく明日!12時!うち!じゃ!」
私は鞄と比企谷のノートを掴み取って早足で教室を出た。
そして今日。
このように私から誘った訳ではない。ないと言ったらない。
川崎「はぁ……」
時計を見ると今は午前八時。
なんだかいつもより時計の進みが遅い気がする。
…………………………はっ!
いつの間にかまたうとうとしてしまっていた。昨日といい。寝不足なのだろうか。ちゃんと睡眠は取っているはずなんだけどな。
何にしろ、今眠る訳にはいかない。
いか…ない。いか……ない。いか…………。
川崎「……………ん」
あれから、えっと……また寝ちゃったんだ……。
川崎「!今何時!?」
もしかしたら、比企谷がもう__!
時計を見ると、針は11時半を指していた。良かった。比企谷が来るまでに起きれたみたいだ。偉いぞ私。
いや、後30分しかない。顔を洗って用意をしないと。私は洗面所に急いだ。
川崎「…………?」
なんだか、いつもより家が広い気がする。それに、体が軽い。
川崎「とにかく、顔を……」
そして鏡に写ったのは。
川崎「……けーちゃん?」
いや、けーちゃんではない。
私の妹、川崎京華ではない。確かに、鏡に写った女の子は、京華と同じ位の背丈だし、似た顔つきではあるが、写った女の子は私の妹よりも目付きが若干悪く、さらに言えば、写った女の子には、京華にはない泣き黒子がある。
そして、その泣き黒子と目付きの悪い女の子には、見覚えがあった。
川崎「ちっちゃい頃の、私だ」
さすが姉妹。年を揃えればそっくりである。
川崎「じゃなくて!」
我が家の洗面所に、小さい女の子の悲鳴が響く。
川崎「な、なんでこんな」
まだ寝ぼけているのだろうか。
だがしかし、夢の感覚は全くない。
そこで、家のインターフォンが鳴る。
ピンポーン
………比企谷だ。
ピンポーンピンポーン
ど、どうしよう。と、とりあえずドアを開けなければ。
私は小さな体を目一杯使ってドアを開けた。
八幡「………」ピンポーンピンポーン
ガチャリ。
八幡「お、やっと開いた」
川崎「い、いらっしゃい」
八幡「って、けーちゃんか?」
どうやら、比企谷も私を京華と見間違えているらしい。姉である私でさえ一瞬見間違えたのだ。無理もない。
川崎「えっと、その」
八幡「けーちゃん、さーちゃんはどうした?」
川崎「さっ……///」
だ、駄目だ。平常心平常心平常心。比企谷はあくまで私ではなく京華に言ってるんだ。
川崎「え、えっと、あの」
どうしよう、正直に言うべきだろうか。……ちっちゃくなりましたって?信じてくれるだろうか。
八幡(……なんか様子がおかしいな)
八幡「けーちゃん。どうした?何かあったか?」
川崎「う、あの、えっと」
八幡「とりあえず落ち着……」アタマナデナデ
川崎「わぁぁぁぁぁぁぁ///!」
八幡「うぉっ!?す、すまん」
な、撫でた!?比企谷が!?私を!?
八幡(前はこれで喜んでくれたんだけどなぁ……。まぁ、子供の好みってコロコロ変わるしな……)
ひ、比企谷が撫でた!私を撫でた!
八幡(にしても、あぁも拒絶されると傷つくな……。しかも幼女に)
こ、こんなの、いつもなら絶対してくれない!
八幡「けーちゃん」
川崎「は、はい!」
八幡「その、ごめんな」
川崎「い、いや別に!」
八幡「そんで、さーちゃんは……」
川崎「………」
八幡「………?」
も、もう少しだけ……///
川崎「さ、さーちゃんはねー。お買い物ー」
八幡「…………そっか、買い物か」
八幡(俺は12時ピッタリに来たはず……。川崎が約束をすっぽかした……?まぁ、あいつだって完璧じゃないしな。ましてや俺相手だし)
川崎(違うの比企谷……。ごめん比企谷……)
八幡「……ん?そういやなんでけーちゃんは家にいるんだ?まだ幼稚園にいる時間じゃあ?俺は今日は創立記念日だから休みだけど……」
川崎「あ、あの、けーちゃんもなのー」
八幡「ふぅん……?まぁ、そんなこともある……か」
川崎(せ、セーフ……)
八幡「そんじゃ、けーちゃん。これ、さーちゃんが帰って来たら渡しといてくれるか?」
そう言うと比企谷は私にノートを渡した。
川崎「う、うん。わかったー」
八幡「そんじゃな。けーちゃん」
川崎「え」
八幡「ん?どうした、けーちゃん」
川崎「ん、んーん。バイバーイ」
川崎(そ、そっか。そうだよね。比企谷は別に、私と一緒にいる理由もないんだ…。本当はお昼ご飯作ってあげるつもりだったんだけどな……。この体じゃ無理だし……)
八幡「それじゃあ……いや、ちょっと待て。けーちゃん。もしかして今、家にけーちゃん一人か?」
川崎「え、うん。そうだけど……?」
八幡「……うーん、そっか…一人か……」
川崎(……も、もしかしてチャンス!?)
八幡(このご時世、幼女一人置いてさいならってのも……いやでも、お節介がすぎるか……?)
八幡「……うん、そうだな。川崎もすぐに……」
川崎「さ、さーちゃんがはーちゃんに遊んでもらえって!言ってた!」
八幡「…………」
川崎(や、やっぱり………)
八幡「…………そうか、じゃあ、遊ぶか、けーちゃん」
川崎「う、うん!」
川崎(っしゃ!)
そうして、比企谷は我が家の玄関を潜った。
八幡「いろいろおかしいとは思ったんだよな……川崎が俺を家に誘うとか、川崎ほどのシスコンが妹一人置いてどっか行くとか……元から俺に子守りさせるつもりだったのか……別に子供好きだし暇だから良いけど……」
川崎(……なんか私の株がどんどん下がってく……やめときゃ良かったかな……)
八幡「んで、何して遊ぶ?けーちゃん」ヤサシイエガオ
川崎(株とかどうでも良いわ………)
川崎「うーんじゃあねー……お、おままごと……///」
八幡「お、おままごとか……」
川崎「だ、駄目///?」
八幡「いや、駄目、じゃない。じゃあ配役はどうする?」
川崎「わ、私がお嫁さんで、はーちゃんがお婿さん///」
八幡「お、おう、了解……」
川崎(心臓大丈夫かな……///)
川崎「はーちゃん。お昼ご飯食べたー?」
八幡「ん?そういやまだだな」
川崎「じゃあけーちゃんが作ってあげるー!最初のおままごとはお昼ご飯!」
八幡「んー。おう。ありがたくいただくかな」
川崎「じゃあちょっと待っててねー」
私はキッチンに向かった。
八幡「おー…って、けーちゃんリアルで作るの?」
川崎「うん?そうだけど?」
八幡「いや、けーちゃんの年齢じゃまだ流石に……」
川崎「だ、大丈夫だよー?」
料理の仕方とかレシピも全部覚えてるし……。
八幡「いや、危ないぞ?火とか刃物とか使うし」
川崎「えー……」
八幡「んーじゃあ、このはーちゃんがお手伝いするか……」
川崎「やった!」
八幡(守りたい、この笑顔)
そして私達はエプロンを身に付けた。
川崎「えへへ、し、新婚さんみたいだね///」
八幡「お、おう……」
川崎(今ならなんでも言える……///)
八幡(あのシスコンに聞かれたらヤバイな……)
八幡「作るのは……カレーにするか。子供でも作れるし、何よりそれ以外は俺が作れない」
川崎「わかったー」
八幡「じゃあ、けーちゃんはこのじゃがいも切ってくれ」
八幡(もちろんプラスチックの包丁で)
川崎「んー」
川崎(毎日料理してるし、今更指切ったりとかはないんだけどな……)
八幡「猫の手だぞ、猫の手」
川崎(心配されるのは……いい///)
川崎「うん、えへへ///」
八幡「んじゃ、俺はその間にルー溶かして、プラスチックじゃ切れない野菜を…」
川崎「一個目切れたよー」
八幡「はやっ」
八幡「うわっ本当に終わってる……」
川崎「えへへ、料理好きだから」
八幡「六歳にしてこれか……姉妹共々いいお嫁さんになるな」
川崎「へ、へぇぇ!?」
八幡「ど、どうした!?」
川崎「さ、さーちゃんいいお嫁さんになれる?」
八幡(……あの無愛想ぶりだからな。子供心に心配なのかもしれん)
八幡「あ、あぁ、料理は勿論、裁縫やらいろいろできるし、なんだかんだ優しいしな」
川崎「はわわ///」
八幡「更にあのスタイルの良さ、顔立ちの良さ」
川崎「あわわ///」
八幡「あとはもうちょい愛想……ていうか素直?になれれば学校一じゃないか?」
川崎「ひゃー///」
八幡(本人には絶対言えんなこんなこと)
川崎(比企谷って私のことそんな風に…)
川崎「……」チラッ
川崎(学校一って、つまりあの奉仕部二人より上ってことだよね……///)
八幡「?」
川崎(これからはもっと素直になろう)スリスリ
八幡「け、けーちゃん?今危ないよ?」
川崎(さしあたっては自分の欲望に素直に)スリスリ
そしてカレーができた。
川崎「できたー!」
八幡「頑張ったな」ナデナデ
川崎(あっ、また///)
八幡(あっやべっ。さっき嫌がられたばっかだ)パッ
川崎「……なんでやめるの」
八幡「え、いや」
川崎「……もっかい」
八幡「お、おう」ナデナデ
川崎「……///」
八幡(なんか一瞬、川崎姉に似てたな。やっぱ姉妹ってことか?)
川崎「いただきます」
八幡「いただきます」
川崎(そしてもちろん)
川崎「はーちゃん。食べさせあいっこしよ///」
八幡「えっ」
川崎「ほら、お、おままごと」
八幡「お、おう」
川崎「じゃ、あーんして?」
八幡「あ、あーん」
川崎「はい///」
八幡「……」モグモグ
川崎「ど、どう?」
八幡「ん、普通にうまい」
川崎「良かったー」
八幡(本当にうめぇな……俺がこんなうまい物を作れる訳がない……だとすると)チラッ
川崎「?」
八幡(すげぇな……川崎家)
川崎「じゃあ、次けーちゃんに///」
八幡「……おう」
川崎「あーん///」
八幡「……」
八幡(目の腐った男と二人切りで、顔を赤らめ口を大きく開く幼女。か。後一歩で事案成立だな)
川崎「は、早く///」
八幡(事案成立だわ)
八幡「……」スッ
川崎「……」モキュモキュ
川崎「……♪」
八幡(なにこの可愛い生命体)
川崎「ごちそうさま」
八幡「ごちそうさま」
川崎「それじゃあねー次はねー」
八幡(飯作って食っただけなのにすげぇ疲れたな………)
川崎「次は…ねー…」
川崎(あれ……おかしいな。起きたばっかりなのに……)
八幡「……ん?」
川崎「つ…ぎは…」
川崎(まだ……これからなのに)
八幡「けーちゃん?」
川崎「比企……谷」ギュッ
八幡「おーい。けーちゃーん」
川崎「……」スースー
八幡「……寝たか……俺に抱きついたまま」
八幡「はぁ……これでいよいよ帰る訳にはいかねーな」ナデナデ
川崎「……」スースー
八幡(あぁ……なんか…俺も眠くなってきた)
八幡「川崎が帰って来るまで、一緒にお昼寝させてもらおうか……」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大志「ねーちゃーん。ただいまー」ガチャリ
京華「さーちゃーんただいまー」
川崎(原寸大)「……」スースー
大志「?ねーちゃー……!?」
京華「?さーちゃ」見ちゃ駄目だ京華!」
川崎「……ん、何……?」
腕の中に比企谷がいた。
私は全てを理解し、いや理解しきれなかった。
川崎「わぎゃぁあぁぁぁぁ!」
八幡「ん……どうしたさーちゃへばっ!」
ー終わりー
おまけ
海老名「できたー!押した人が小さくなるスイッチ!」
海老名「押してから作用するまで数日かかるし、効果が数時間しかないのが欠点だよ!」
海老名「これでさっそくはやショタはちを……」ダッ
川崎「いたっ」ドンポチッ
海老名「ごめんサキサキー!今急いでるからー!」
川崎「……何?今の」
ー本当に終わりー
終わりです。初ssでした。めぐり先輩が一番好きです。
あとHTMLの仕方が全くわかりません。教えてえろい人
腕を負傷しながらも申請できました。教えてくれた人ありがとう。
このSSまとめへのコメント
良き
良い
続きかいてもええんやで