男「君が、人工知能?」 少女「……」(40)


男「明後日の家賃がピンチ。」

男「っていうか、明日の飯代もピンチ。」

男「バイト入れて(貰え)無いし、親には断られたし。」

男「どうしよう……」


男「友ぉ。」ガシッ

友「やめろきもい。」

男「そんな事言うなよぉ。」スリスリ

友「あばばばば。」

男「いや、冗談抜きでやばいんだ。
  お前の父さんのコネで何か割の良い仕事ない?」

友「屑だな。真面目に働けよ。」

男「……ごめん。」

友「!?
  あっ、いや、まぁ、訊いてやるから!」

男「流石友、最高!」ガシッ

友「あばばばば。」


男「友の父さん科学者だからな。
  昔、研究のモルモット役をよく買って出たなぁ。」

男「最近は科学技術も進歩してきたし、割が良い。」

男「結構、危ない橋も渡らなきゃいけないけど。」

友「電話してんだよ!
  うるさい!」

男「……」

友「もしもし、パパ?」

男「」プッ

友「……私だけど、ちょっと相談が。」

男「」ガタガタガタガタ


友「三食付きで、拘束時間は一週間の二十四時間丸々。」

男「ふむ。」

友「一週間で、三十九万円。
  一時間で、約三千円ってとこだな。」

友「詳しくはやる事になったら教えるって。
  でも、仕事内容の割に、結構安いらしいよ。」

男「そうか?
  十分だけどな。」

友「うん、あ、そうそう、死ぬかもって。」

男「危ないニオイがプンプンするゼェー!」


研究所。

男「こんにちは。」

友父「やぁ、久しぶり。早速で悪いけど、説明に入るよ。あ、その前にこれ、サイン。」

男「えっと。一、終了後ノ口外ヲ禁ズ。
      ニ、傷害、死亡ヲ不慮ノ事故トシテ処分。
      三、死亡時ノ死体解剖ノ許可。
etc……

友父「これから、一週間、君に人工知能と過ごしてもらう。」

男「じ、人工知能。そ、それじゃあ、機械ですか?」

友父「いや、容姿は中学生程度。勿論、食欲、眠欲、性欲は存在するし、感情も存在する。」

男「……」ゴクッ

友父「なぜ唾を飲んだ……」


男「人造人間って事ですか?」

友父「いや、体も我々が一から制作しているし、間違ってはいないが、定義として、また少し異なる。」

男「あ、えと……お金の事なんですけど……」

友父「友から聞いたよ、家賃の分だけ先に、振り込んでおくんだったね。確か、十五万。」

男「はい、すいません……」

友父「大まかな説明は終わりだ。じゃあ、あそこにいる科学者に部屋、案内してもらって。」

男「はい。」ワクワク

科「君が、男君。」

男「あ、はい……」(美人だ……)

科「君、料理は出来る?」

男「え、あ、はい。一応ですけど。」

科「少女の身の回りの世話は、全て君に任せる。しっかりと頼む。」

男「少女?」

科「?
  あ、君と過ごす人工知能の型番だ。そう呼んでやってくれ。」

男「少女……、ですね。」

科「そうだ。」


通路。

科「君がこの部屋の中に入って、三分後に少女を起動する。準備は良いか?」カチャカチャ

男「はい。」

科「そうか。じゃあ、どうぞ。」ガチャン


個室。

男「広いけど……、殺風景にも程がある……」

男(っていうか、白い。壁紙や床は勿論、テーブルにイスも。テレビ……は、ないな。)

男(洋服ダンスも白。取り敢えず、着替えをしまうか。)

男()

男(なんで、冷蔵庫だけ黒いの……)

少女「……誰。」

男「ぅぉっ!」ビクッ

男(ベッドの上に女の子が座ってる……)

男「ぇ、あの、……男です。」ペコッ

少女「……少女です。」ペコッ

男「……」

少女「……」


男(何話せばいいの!?)

男「あの……」

少女「?」

男「君が、人工知能?」

少女「……」

男(あれ?)

少女「人工……知能?」ナニソレ

男「えっ」

少女「えっ」

男「八十九かける六十五は?」

少女「何言ってるの?」

男「えっ。五千七百八十五だよ……」

少女「えっ」


少女「変な人。」クスクス

男「……」(人間みたいだな、っていうか人間じゃね?)

少女「お、男さん」

男「ん?」

少女「そんなに見つめられると、何か変です。」ムズムズ

男「?
  まぁ、いいや。お腹すいてない?」

少女「ちょっと、すいてるかも知れません。正直、よくわかりませんけど……」

男「チャーハン作るよ!」

少女「チャーハン?」

男「チャーハン!」

少女「美味しいんですか?」

男「……」フフンッ

少女「美味しいんですね。」


チャーハン。

男「どうぞ。ちょっと焦げちゃったけどね。」

少女「いえいえ。いただきます。」

男「いただきます。」

少女「おぉ、美味しいです。」パクパク

男「なによりです。」パクパク

少女「男さんは料理お上手なんですね。」パクパク

男「少女……、さん? ちゃん? くん、痛い叩かないで。」パクパク

少女「少女、で良いですよ。」パクパク


男「少女は料理、できる?」

少女「わかりませんね。できるんでしょうか。」

男「あの、うまく言えないんだけど、さ。」

少女「?」

男「昔の事、っていうか俺に話しかける前の事、覚えてる?」


少女「勿論です。目が覚めたら、男さんがいました。」

男「いや、それより前は?」

少女「覚えてないですけど。」

男「そう……」

男(ふむ。つまり、少女は人工知能で、今回の起動が初めてなわけ、か。)

男(で、バグとかの暴走の危険性を知る為の、俺か。)

男(死体の解剖を許可させたって事は何か、そうだな……細菌兵器。いや、特殊な能力でも持ち合わせているかも。)

少女「男さん。暇ですよ。」

男「psvi○aがあるからやろーぜ。」ヨイショ

少女「はいっ!」ワクワク


男(んー。あの上着の内側に何か、あるな。いや、胸じゃなくて。)

男(寧ろ、胸はないから。)

男「痛い! ちょ! えっ、何、本体への攻撃はなし!」

少女「……」ムー

男「負けた……」

少女「男さん弱いですね!」キリッ

男「いやいや、少女がずるしただけだし!」


十分後。

少女「か、勝てない。」

男「戦略ゲーで、俺に勝つのは十年早い。」

少女「むー、座る位置が悪いんだもん!」スクッ

男「ハハッwwwワロs……」

少女「よいしょ。」スワリッ

男「いやいやいやいや、何で俺の膝の上に座るの!」


少女「これで負けません!」

男「いやいやいやいや。」(あ、良い匂い。)


十分後。

男「か、勝てない。」

少女「ふふっ」ニコニコ

男(何で勝てなくなったんだろ。……まさか、興奮して)ブンブン

少女「何で勝てなくなったんでしょうね?」ニコッ

男「くっ……」(上目づかいが可愛い……)ブンブン

ちょっと朝御飯と休憩してくる。
睡魔に負けて、仮眠しちゃったらごめん。


男「んー。結構、長い間ゲームやってたなぁ。」

少女「そうです、ふぁ……、眠いです。」

男「この部屋、白くてわかんないけど多分もう夜中だと思う。」

少女「……」ゴシゴシ

男「……寝ようか。」

少女「お風呂と歯磨きと着替えはどうするんですか。」

男「?
  もう眠いし、起きたらしようかなって。」

少女「私はいやですよ! 汗もかいてるんですし!」

男「汗かくんだ……」

少女「頭の洗い方も、シャンプーとリンスの違いも、歯磨きの仕方も、全部わかりません。」

男「あー、うん。よし。教えてあげるから入ってきな。」

少女「溺れたらどうするんですか?」

男「溺れるんだ……」

少女「さっきから何言ってるんですか! 早く入りますよ!」スクッ


風呂。

男「どうしてこうなった。」ゴシゴシ

少女「おぉ~」ニコニコ

男「流すぞ。目、閉じろ。」

少女「うんっ!」ギュッ

男(妹みたいだなぁ。……それにしても髪の触り心地から何まで。本当に人間じゃないのか?)

少女「男! 目が開けられないよ!」

男「顔拭わないと開けれないよ。」ヌグイッ (っていつの間にか呼び捨て……)

少女「男ー! 体!」

男「うん。わかってるって。」ゴシゴシ (にしても、胸小さいな……。肌はスベスベだけど。)

少女「あっ、男、くすぐったい!」

男「我慢しろー」ゴシゴシ

少女「あっ…」

少女「ひっ、おと…やっ…なんか…あんっ…」

男「」ゴシゴシ


個室。

男「ふぃー。温かかったな。」ホクホク

少女「……///」ホクホク

男「大丈夫? のぼせた?」

少女「大丈夫……」

男「さて、すっぽんぽんじゃ、風邪ひくからな。ほら、着替え。」

少女「うさぎさんだっ!」

男「うさぎさん好きなのね。」(そういえば知能ってどれ位なんだろう。見た目と合いも変わらず、中学生くらいなのかな。)

少女「歯磨きして!」ゴシゴシ

男「うん。」(眠そうだな。っていうか、歯磨き面倒……)


男「ペッして。」

少女「ぅにゅ……ぺっ。」ゴシゴシ

男「……おし、布団行っていいよ。」(なんで俺のほうにペッしたし……)

少女「ぉー」トテトテ

少女「…zzz」

男「……ふぅ。疲れたけど。まぁ、たまにはいいよな。こういうのも。」

少女「……」ムニャムニャ

男「……おやすみ。」

一日目終了。


男「あ、着替えなきゃ。」


監視室。

科「男。少女。共に深い眠りに入りました。」

友父「よし。日用品の補充。」

リョウカイ。タッタッタッ…

科「……いいんですか? 娘様のご友人なのでは?」

友父「私の友人ではない。まぁ、友人だったとしても同じだろうがね。」

科「……」

友父「君は此処に来てから、あー、数ヶ月だから。知らないだろうけれど。」

友父「彼は良いモルモットとして、育ってくれたんだ。」

友父「最初、娘に彼の為に仕事をやれと頼まれた時は冗談じゃないと思ったが。」

友父「まぁ、おかげで、私は最高の実験ができそうだよ。ふふ。」

科「……では、手筈通り?」

友父「あぁ。」


個室。

男「んぁ! 重い!」

少女「男、起きて! 早く! 今しかないの!」

男「どうしたの、慌てて。」

少女「今、停電してるの。停電っていうか、私の細工なんだけど。」

男「細工?」

少女「監視カメラ使えなくしたの。すぐ予備電源と暗視カメラに切り替わる。だから、一回しか言えないの。よく聞いて。」

少女「ここの科学者達は全員、男を殺す気よ。」

男「!?」

少女「男と私の実験結果を手に入れ次第。私の存在を、知る者がいて欲しくないらしい。」

男「君は何も覚えていないんじゃ……」

少女「忘れた振りをしてたの。でも、ゆっくりは話せないから。」

少女「私が暴走しないとわかった以上、今日にでも仕掛けてくると思う。」

パッ

男「ぅ。」(停電から復旧したのか……)


男(少女はもう、自分のベッドの上に戻ってる。早いなぁ。)

男(あの話が本当なら……、急いで……)

男(って、打つ手無いんだけどね。取り敢えず、怪しまれないようにしよう。)

男「少女。朝だぞ。」ユサユサ

少女「…さ……で……。」

男「ん?」

少女「むぅ……、なんでもない。お早う。」

男「お早うさん。」

男「朝日が無いと、朝って気分にならない。」

少女「そうなの?」グー

少女「あっ……。男。お腹すいた。……と思う。」エヘヘ

男「ベーコンエッグ作るよ!」


少女「男はお料理上手。」

男「……うん」(食材が追加されていた。いや、追加じゃないな。賞味期限が全部違うということは。)

少女「男は遊んでくれるし。」

男「……うん」(風呂場も掃除したけど、昨日のリンスとシャンプーの重さと違っていた。)

少女「男って年下の女の子って好み?///」

男「……うん」(部屋の中のものもほとんど新しくなっていたし、寝ている間に総替えしたか。)

少女「! ……わ、私のこと好き?」

男「……いや」(いや、待てよ。確か友の父さんは、脳波計を好んで使っていたな。っていうか、あれ便利だから。)

少女「……」ショボーン

男「……好き」(俺もあれで遊ぶの好きだったわー。懐かしい。)

少女「」パァ

男「……」(つまり、脳波計で熟睡したかを見計らい、この部屋に来ていたのか。襲撃は、寝てから、か。)

少女「おとこぉー♪」ガシッ

男「どうしたー?」ヨシヨシ


夜。

男(と、わかったとしても。寝た振りは通用しないし。細工なんて、俺には無理だし。)

男「よーし。寝るぞ。」

少女「……うん。……あ、あのさ。」イソイソ

男「ん?」

少女「怖くないの?」

男「少女、暗いの怖い? 俺は怖くないけど。」

少女「そ、そうじゃな――」

男「大丈夫。俺が守ってあげるから。」ギュッ

少女「!」

男「よしよし、ほら。寝な。」

少女「……うん」

二日目終了。


男「ちょ、ト、トイレ……」


科「深い眠りに入りました。」

友父「よし、行け。殺さず、生け捕りにしろ。」

科「少女の電源を落としました。」


個室。

兵a「確保ォ!」

男「んぁ。」

バキッ!

兵a「が……ぁっ!」ドサッ

男「頭部に回し蹴りなう。」

兵b「捕らえろ!」 兵d「殺すなよ!」

男「少女、借りるぜ。」

兵b「銃!? どこか――」 バァン! バァン! ――カランッカランッ

兵a「」 兵b「」 兵c「」

男「肩痛い……」


男「おい、少女。起きろ!」ユサユサユサユサ

男(くそっ……起きない……! 置いて行くわけにも……)

オイ、ゾウエンヲイソゲ! ジュウセイガシタゾォー! キャー!

男(少女は実験に必要のはず……処分されることはない……)ダッ

男「待っててくれ……必ず来るから。」


男「はぁはぁ……ここか……?」ガチャ

友父「捕らえろ。」 科「……」ガシッ

男「ぐっ……」グググ…

友父「無駄だ。君と同じく科学者も私のモルモット。君よりも若い頃から肉体改造に着手している。」

友父「何の為に、お前みたいな若造の肉体を改造したと思ってるんだ。」

友父「まぁ、今回の研究でよくわかったよ。兵を殺すことも厭わず。少女の体に微塵も興奮しない。」

友父「そして推理力。肉体面でも一撃で首を折るほどの蹴り。」

男「……」

友父「よく育った。私のモルモット。」

男「……」ギリッ


男「くっ……、何の為に俺を……」

友父「君じゃなくとも、まぁ、偶然君だったんだが、まぁ、入れ物だ。」

男「……入れ物?」

友父「人工知能の入れ物さ。科学者は入れ物には適さない、と言うより出来ない。感情を一切削ってないからな。」

男「くそっ……。」グググ……

友父「このご時世で金が無くてな。お前みたいなバカを使うのが、一番手っ取り早かったんだ。」


友父「よし。お喋りはここまでだ。人工知能を。」

科「……それでは」

男「離、せっ!」


科「……」

数時間後 研究所跡地――

男「んー!気分爽快!」

科「……感情を補う為に、人工知能を移植、定着させた。」

男「うん、ありがと。でも、よく研究所を潰すのに協力してくれたね。」

科「私の感情は消えてなかったからね。心苦しかったよ。」

科「けど昔のあの人はあんな風じゃ……」

男「いいよ、色々あるんだろ。協力してくれてありがとう。」

科「じゃ、また会おう。」

男「あぁ、あいつは?」

科「……」

男「……」

個室。

『君とは真逆だ……、感情の残骸だけが残った。』

少女「……」ボーッ

男「……」

少女「……」ボーッ

男「……誰か、待ってるの?」

少女「……」コクン

男「……ごめん」

少女「……」ボーッ

男「少女。少女……、少女! ごめん……、ごめん……!」

少女「……」ナデナデ

許してくれ――

終。

なんてこったい m9(^∀^)m9 言い訳させてくれ

徹夜明けにss書いたら、途中から(最初からか?)おぞましいモノができてしまったわ!
次は頑張りますごめんなさい……orz

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