れんげ「青色申告するのん!!」【のんのんびより】 (117)


・年末なので
・ざっくり知識
・のんのんびよりで一番可愛いキャラであるほたるんのママは登場しません
・このSSはフィクションであり実際の書籍・法令・制度とは関係ありません


前作の『スーパー将棋マンガ大戦』は長期休業中です。


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れんげ「だがしやーー!! だがしやーーー!!」

楓「おう」

夏海「ちーす」

小鞠「ちわー」

蛍「こんにちわー」

ひかげ「おいすー」

楓「おう。お前等たまには盛大に買ってけよー」


れんげ「だがしや!! だがしや!! 聞きたいことがあるん!!」

楓「何だよ……。めんどくさい事は自分の姉に聞けよな。ひかげに」


れんげ「ダメですん!! これは駄菓子屋でなければダメなん!!」

楓「な……何だよあらたまって?」


れんげ「駄菓子屋は青色申告してるん!?」


楓「……? スマン……なんて?」


れんげ「青色申告!! 青色申告なん。駄菓子屋はちゃんとやってるん?」


楓「……」

ひかげ「いや、そんな顔で見ないでよ。私じゃないし」

楓「お前以外に誰がいんだよ。どうせ東京で聞きかじった単語吹き込んだんだろうが」

れんげ「青色申告してるん!!? 駄菓子屋!!?」


ひかげ「いや~、それがさぁ。東京から帰ってきた時にかず姉に雑誌買ってきたのよ。土産にね」

楓「……いや待て。それ長くなんのか?」

ひかげ「それでさ~」


楓「聞けよ」


--…………


ひかげ「はいコレ~東京の雑誌」


つ[MONOQLO]


一穂「キミねぇ……こうゆうのは普通、こっちで買えないファッション誌とかじゃないかい? しかもすでに読み込まれてヨレヨレだし」

ひかげ「いや、姉ちゃんそんなん見ないじゃん」

一穂「まぁ、見ないねぇ……。おぉ、キッチン家電の特集もあるねぇ。……トラクターの特集もしてくれればいいのにねぇ……。お、小学生向け知育トイ特集? へぇ、こうゆうのもあるんだねぇ」


ひかげ「あぁ東京の量販店とか本屋とかでも結構スペース作ってたね~。なんか子供の頃から自然と勉強にふれ合って好奇心を身につけるといいらしいよ」

一穂「へぇ~。そう言えばれんちょんの玩具とか絵本もひかげのおさがりばかりだねぇ」

ひかげ「まぁ末っ子のサガだよねぇ」

一穂「よし。じゃあ明日れんちょんとデパートに行って勉強になりそうな本を買ってあげたまえ」


--…………


楓「……全くれんげの言動に繋がらんな」

ひかげ「それが先々週のことなんだけどね」

楓「遠いな」

ひかげ「それがさ~」



--…………


れんげ「ひか姉! この本がいいのん! 『えきさいちんぐ』なん!!」


 つ[東洋経済]


ひかげ「ん~いいんじゃない~……って!! お前コレどうみても大人が読む感じの雑誌だろ!!」

れんげ「うちビビっときたん。『えきさいちんぐ』なん」

ひかげ「つーか、大体漢字だらけで読めないだろ」

れんげ「前とあとの文脈のフィーリングとかでだいたい分かるん」


ひかげ「いやぁ漢字以外も難しい言葉も沢山出てくるよ? そもそもエキサイティングの意味分かってんの?」

れんげ「Exciting。うおーって感じであげあげな感じなんな」

ひかげ「くっ! だいたい合ってそうで何も言えん」


--…………


楓「…………で?」

ひかげ「それで翌週には……」


--…………


れんげ「確かにこの本はウチにはちょっと早かったのん」

一穂「そっか~」

ひかげ「一週間眺めてようやくそれかっ!」

一穂「じゃあ次は少し高学年向けの絵本に……」


れんげ「確かにこの本に書いてることはもっともなんな。でもそれはこの記事を書いた人の個人の意見なん!!」

れんげ「ウチが本当の意味で自分の意見を持ってこれを理解するには、他の人の理論でマクロ的な視点を得た気分になって自惚れる前に、お金のなんたるかを基本から勉強する必要があるん!!」


ひかげ「!?」

一穂「!?」


れんげ「まずは基礎的なお金のイロハを勉強する必要あったんな。ひか姉。ウチが間違ってましたん」

ひかげ「え!? あっ、はい」

れんげ「やっぱりフィーリングじゃ深い理解は得られないん。ちゃんと読みたいのでウチ辞書も欲しいん! やはり通好みの新明解4版がいいんな。心躍るん! 本当は広辞苑6版も欲しいけど、そっちは我慢するのでお願いしますん!」


--…………


楓「で……?」

ひかげ「こうなった」


れんげ「駄菓子屋! 駄菓子屋の駄菓子屋は青色申告なん? 白色申告なん?」

楓「いや、うちはやってねーけど」

れんげ「……!!? やってないとは!? 確定申告をですのん!?」


夏海「そもそも青色深刻ってなに? ねーちゃん知ってる」

小鞠「も、もちおん知ってるけど! 大人がよくやってるヤツでしょ! 深刻だよねーーー。ほんとねーーー」

夏海「あぁ知らないのね。ほたるんは?」

蛍「えっと、たしか……自営業の人がやる確定申告のことじゃないかと」


れんげ「そうなん!! 流石ほたるんなのん!! 給与収入が2000万円を超過する人、もしくは給与・退職所得以外が20万円を超過する人は必ず確定申告をしなければならないのですん!!」


夏海「へぇ~。じゃあ駄菓子屋は自営業で給料じゃないから、この店の売上が20万以上ならやらなきゃいけないんだ」

れんげ「なっつん、なっつん。少し違うのん。後者は『所得』なので『収入から経費を引いたもの』なのん」


夏海「…………?」

れんげ「つまり、売上から仕入や元々あった在庫、電気代や土地代を引いた額が20万円を超えた場合なんな」

夏海「おお~。なるほど……いや分かってたけどね」


蛍「あ、聞いたことある。課税所得って言うののこと?」

れんげ「そうなん。総合課税は最終的に不動産所得とかと併せて税金が計算されるん。駄菓子屋は事業所得なので万が一赤字になった場合は損益通算って言って他の所得と相殺もできるん」

ひかげ(やっべぇぇ! 何語かってぐらい分からないんですけど!! つーか蛍ちゃん分かるのかよ!! 都会人だからか!? やっぱ都会人は分かるのか!?)


れんげ「そして、確定申告は義務なん!! 必ずやらなければいけないん」


楓「つっても、ばあちゃんの頃からやってねぇしな~」

れんげ「駄菓子屋、それは…………それは…………脱税ですん!!」

小鞠「だつぜいっ!?」


夏海「それはウチも知ってる!! スーツの人が段ボール持って沢山押し入って来るヤツだ!! マフィアだ!!」

小鞠「マフィア!?」

ひかげ「いやマフィアではねーだろ」

れんげ「それはきっとすごく大きな脱税なん。でも普通の人も確定申告をしないと怠惰税って言うお金が余分にかかってしまうのん」


夏海「うぇ!? うちは大丈夫なん? ねーちゃん?」

小鞠「えっ!? だ、大丈夫だと思うけど」

蛍「うちのお父さんも大丈夫です」

ひかげ「う、うちは平気なのか? れんげ!!?」

れんげ「ねぇねぇは公務員なので天引きと年末調整で大丈夫なん。おかあさんとおとうさんは白色申告をしてますん」


ひかげ「白色申告!?」

蛍「そうゆうのもあるんだ」

夏海「なんか青色よりクリーンっぽい感じじゃない? ホワイト申告!」


れんげ「白色申告は青色申告じゃない確定申告のことなん。どっちかと言うと青色のほうがクリーンなん」

小鞠「へー」

楓「つーかさ、そもそも青色申告ってなんだよ?」

れんげ「……!!? だ、駄菓子屋……ま、まぢなん? 嘘……嘘なんな。駄菓子屋はビールも飲める大人なんな?」

楓「ぇ?」


れんげ「本当は……本当は……知ってるのんな?」

楓「……ぇ? ぃゃ………………」

ひかげ「…………こ、こっちみんなよ」


れんげ「青色申告が……財務諸表を添付して申請することで最大65万円の所得控除が得られて、もし赤字だった場合は繰延もしくは前年から繰戻還付が出来るもので、配偶者への給料を全額経費にできるものだって、本当は駄菓子屋は知ってるのんな!」

楓「……お、おぅ。まぁな」

れんげ「やっぱり! 流石なん!!」


ひかげ「めっちゃ答え言ってるし」

夏海「つーか65万円も得するの!? 超凄くない!? 億万長者じゃん!!」

小鞠「……いや億万長者ではないでしょ」

れんげ「なっつん。別に65万円得する訳ではないん。65万円が所得から控除されるん」


蛍「つまり……税金を計算するための目安の元になる数字が小さくなるっていうこと?」

れんげ「そうなん!! 流石ほたるんなん!! 将来はキャリアウーマンなんな!!」

蛍「そ、そうかな?」


れんげ「よーやくすると、まず確定申告は会社員や公務員、もしくは主婦や学生以外はだいたいの人が義務なん」

れんげ「そして、駄菓子屋の例で言うと、駄菓子屋は土地家屋ともに賃料はないので経費は電気代や仕入などのみですのん。きっと課税所得は360万円くらいなんな?」

楓(……いやそんな儲かってねーけど)


れんげ「もしも仮にこれを白色申告すると、所得税20%引く控除427,500円で、だいたい292,500円の所得税が掛かるん」

ひかげ「うぇ! そんなに引かれんの!?」

れんげ「源泉徴収って言ってお給料から所得税住民税を天引きされてる人もだいたいそんなんなのん」


れんげ「でも、もしも駄菓子屋が青色申告をしていた場合は65万円が所得から控除されるので、課税所得が330万円を下回り、一つ下の課税枠になりますん」


楓「っていうと?」

れんげ「課税所得が330万円以下の人は所得税が10%なん。控除が97,500円ですので、税金は197,500円くらいなん」

小鞠「10万円も得してる!」


ひかげ「つーかさらっと凄い暗算してるけど!」

れんげ「この前このみ姉にかけ算教わったのん」

ひかげ「いやいや、パーセントとか無理だろ!」


れんげ「100%が満タンなんな。それくらいウチ知ってるん。なら100個あると360万円なのから80個引けばいいん。バカにしないで欲しいん」


ひかげ「あっ、はい」

れんげ「続けますん。それで確定申告を怠った場合10%超の怠惰税が課せられてしまうん。だからやらないともっと差が開いて損するん」

楓「マジかよ……」


ひかげ「まてまてまて!! なんでウチはそれをやってないんだよ!!」

れんげ「青色申告は財務諸表を提出するのが条件なん。ウチは山林所得とかもたまにあって大変だし、おとうさんとおかあさんは畑で忙しいので仕方ないんな。ねぇねぇに書いて欲しいけど、ねぇねぇも寝るのに忙しいのん」

楓(いや、一穂先輩もそんなん書けないと思うけど)


れんげ「だから駄菓子屋は青色申告した方がいいのんな」

楓「いやそんなナントカ車掌なんて書けねーよ!」

れんげ「財務諸表なん。正確には貸借対照表と、損益計算書なのん」

蛍「あ、それ聞いたことあるかも。株式会社とかもやってるよね?」

れんげ「そうなん。株式会社は株主みたいな利害関係者に会社の財政状態を開示する義務があるのでさっきの2つに株主資本変動計算書を加えた3つがすごく重要なん」

夏海「なるほど~。分からん」

れんげ「そんなに難しくはないのん。貸借対照表は決算の日付の時点の負債とか資産とか純資産を、損益計算書はその期間中の損得を書いたものなのん」


楓「負債って、ウチは確かにボロいけど流石に借金とかはねーよ」


れんげ「負債っていうのは借入金だけじゃないん。例えば後払いで仕入た商品とかもう発生してるけど支払日が来てない電気代みたいなものもそうなん」

れんげ「損益は今年の期が始まった時点での在庫と今年仕入た物を足して、期末に残ってるものを引くん。これが売上原価なん」

れんげ「他にもパッケージや賞味期限の関係で売れないものやどこか無くなちゃった在庫を商品評価損、棚卸減耗損として処理したり、減価償却費を計上したりするん」

ひかげ「喧嘩焼却? いかにも駄菓子屋が得意そうだねぇww」

れんげ「減価償却なん。ひか姉、東京の学校では習わないんな?」

ひかげ「え!? いや……冗談だって知ってる知ってる」


楓(いやどこ行ってもそんなの学校じゃ習わねーと思うけど……)

れんげ「減価焼却は、たとえば駄菓子屋のバイクが配達の為の備品だったり、貸してあげてるスキーの道具で高級なのがあったりしたらそれは収入を得るために使用しているものなので経費になるん」

蛍「あ、そっか。経費は所得から引かれるから最終的に所得税が安くなるんだ」


夏海「あ~。ドラマとかで『領収書は上で……』ってヤツよく見るけどあれも会社や事務所の経費にする為なのか~」


れんげ「そうなん。でも金額の大きいものは一度に経費にしちゃいけないので、バイクとかなら走った分だけとか、建物とか機械は毎年決まった一定額だけとかで計上するん。前者は生産高比例法、後者は定額法って言うん。他にも法人税の時は定率法とかも使うのんな」

楓「まぁ聞いてるだけなら簡単そうではあるけどな」

れんげ「個人商店規模ならウチでも書けるん。正規の簿記の原則に従った財務諸表があれば、青色申告控除や赤字の繰り越しもできて便利なのでぜひやってほしいのんな! 脱税はダメ絶対なのん!!」

小鞠「お小遣い帳みたいに貰ったり使ったりしたらその分書く感じ?」

れんげ「そうなん。こまちゃんいい線いってるん! そうやって日々記帳した補助帳の集合が財務諸表なん」

蛍「へ~。なんだか面白いですね。先輩」


小鞠「私もお小遣い帳はちゃんと付けてるからね! きっとざいむしょひょーも出来ちゃうね!」


れんげ「でも簿記にはいくつかルールがあるんな」

夏海「ルール?」


れんげ「まず簿記はありとあらゆるものが左と右に分かれるん。左を借方。右を貸方と呼びますん」


ひかげ「いきなりメンドそうになってきたな」

れんげ「そんなこと無いん。簡単なん。資産や費用は増えたら左、減ったら右。負債や収益や純資産は減ったら左、増えたら右。たったこれだけなん」

夏海「え……ぜんぜん難しそうなんですけど」


れんげ「そんなこと無いん! 当たり前のことなん。例えば、駄菓子屋、ウチこのアメ欲しいん。」

楓「あん? おう。10円な」

れんげ「はいなん。これをウチの視点で簿記的に書くと……お菓子は便宜上消耗品にするん……」 カキカキ……


(消耗品)10  (現金)10


れんげ「たったこれだけなん! 現金という資産が減って、10円の価値のアメを手に入れたん!! 消耗品の分類も同じく資産なので増えたのは左なんな」


蛍「あ、凄い分かりやすいね」

れんげ「ちなみに、なっつんは今お小遣いもってるん?」

夏海「え? ウチ? あるよ~……えっと……76円!」


小鞠「びみょー……。私はちゃんと貯金してるから800円もあるもんねー」

れんげ「じゃあ、こまちゃん。試しになっつんに300円貸してあげて欲しいん」

小鞠「え!? 例えばの為にってことだよね……? じゃあ……はい」

夏海「マジ! やったーラッキー!! 駄菓子屋、ポテフ貰うね~」


れんげ「ポテフを35円として、今の一連の流れをなっつんの視点で書くと……こうなるん」 カキカキ……


(現金)300  (借入金)300
(消耗品)35  (現金)35


れんげ「借入金は負債なので数字が増えたら右(貸方)なん!」


ひかげ「あ~言われればわかるかもねぇ」


れんげ「駄菓子屋、なっつんを見てたらウチもおなか減ったん。今お金ないけどボーロ食べたいん!!」

楓「あん? しょうがねーなー。ほれ」

れんげ「やったのん!! これをウチの視点で書くとこうなるん」 モグモグ……


(消耗品)25  (未払金)25


れんげ「未払金も負債なん」

夏海「確かに雰囲気的にはお金借りてるようなもんだしね~」


れんげ「もしウチがお店でこれが仕入なら、消耗品じゃなくて『仕入』。未払金じゃなくて『買掛金』って言うん。あ、駄菓子屋!! ウチ実は10円だけ持ってたん。払うんな!!」

楓「分割かよ……」

れんげ「この流れを駄菓子屋の視点で書くん!」 カキカキ…… 


(売掛金)15  (売上)25
(現金)10



蛍「あ、れんちゃんと駄菓子屋さんのやりとりそのままだね」

れんげ「そうなん。売掛金はいずれ必ず回収できるので資産なん。売上は収益なので増えたら右なん」

れんげ「でも駄菓子屋。ウチ実はもうお金無いん。破産なん!」

楓「は!?」


れんげ「駄菓子屋はウチからのお金が回収できなくなってしまったん。駄菓子屋の視点ではこうなん」


(貸倒損失)15  (売掛金)15


夏海「踏み倒された的な?」


蛍「これって資産が無くなったのが右で、『費用』が発生したのが左っていうこと?」

れんげ「おお。ほたるん凄いのん! そうなん。もう回収できないお金なので資産でも負債でもなく費用として計上するん。でもそれでは申し訳ないので、ひか姉。ウチ若くして債務整理はイヤなん!」

ひかげ「いや、意味わからんし……はい駄菓子屋」

 つ[15円]

楓「あぁ」


(現金)15  (償却債権取立益)15


れんげ「これで、丸く収まったんな。チャンチャンなん」


小鞠「何となく分かったかも。結構面白いね」

れんげ「今みたいなのが何百個も何千個も積み重なったのが商業簿記なん。そしていくら積み重なっても合計の左と右は必ず一致するん。これを貸借一致の原則って言うのん。簿記の一番大事な基本なんな!」

夏海「なるほどね~」


れんげ「簿記3級くらいあればこのくらいできちゃうん。面白いのんな」

つづく
明日はもう少し身近なおはなし

かり・方、かし・方みたく、資産負債と利益損益の位置が分かりやすくなるやり方ってないん?

クロスしてるからわからんくなる

青より白がお得、面倒臭いけど

>>29

れんげ「それはないん。特に去年以降は青色の方が断然いいと思いますん」



>>28

楓「つってもその資産? だとか なんとかだとかの位置が分からねーとどうにもなんねーな」

れんげ「一度財務諸表やその下書きである清算表を書いてみればいいのん。普通の仕訳は全部決算のためにやるものなん。だからぜんぶ、貸借対照表と損益計算書の貸借に基づいてるんな」

蛍「あ、その財務諸表にはそれまでの科目の集合がぜんぶ書いてあるから……」

れんげ「そうなん。でふぉるとが貸借どっちにあるか分かるん。貸借対照表でぐぐれば見本になる画像が見れるはずなん」


小鞠「……ぐぐる??」

れんげ「ぱそこんで調べることなん!! このみ姉が教えてくれたん」

夏海「そうなの? ひか姉?」

ひかげ「え!!? あぁ、うん。 私も東京じゃパソコンとか使いまくってるからね~。ヤフーでね、よくググってるよ、うん」

蛍「……」


れんげ「でも貸借対照表と損益計算書は2つで一つ。損益計算書の純利益が貸借対照表の繰越利益剰余金に入るし、日々の会計も2つの間を行き来してるん。別々のものでは無いん。セットで見た方がいいんな」

楓「なるほどなぁ」


楓「まぁ何となくは分かったよ。メンドくさそうだけど、とりあえずやってみるわ」

小鞠「これってプライベートのお金の管理にも応用できそうだよね」

楓「まぁわざわざそんな数えるほど金がありゃ苦労しねーけどな」


夏海「そんなこと言って、ホントは儲かってるんでしょ駄菓子屋~!」

楓「ばーか。大人は大変なんだよ。保険料だの何だのってよ……あんなん毎月請求されたらたまんねーっての」


れんげ「駄菓子屋は国民年金の1号被保険者なんな」


ひかげ「へ?」

夏海「1号? ライダー?」

れんげ「国民年金の納付は国民の義務なん」

小鞠「年金ってあれでしょ。おばあちゃんとかが貰うやつ」

れんげ「国民年金は会社員や公務員の2号、被扶養者の3号、そしてそれ以外の1号に分類されるん」

れんげ「2号は労使折半で天引きされるけど、1号は毎月15,590円を自分で納付するん」


ひかげ「……結構高くね?」

れんげ「毎年上がってるん。最終的には16.900円になる予定なん。でもちゃんと支払っていないと将来の年金額に影響してしまうん。満額なら現在は年間780,100円貰えるんな」

ひかげ「え? 少なくね……?」

れんげ「もっと減ってしまうよりいいん。それに民間の保険を併用するのもいいんな。女性は男性よりも長生きなので保険料は高くなってしまいますが、その分将来設計が重要なん」


夏海「でももうちょっと欲しいよねー。700万円くらいはさー」

小鞠「10倍じゃん……」

れんげ「10倍は無理でも増やす方法はあるん。さっき言った15,590円に毎月400円おまけで払うん。そうすると400円多く払った月×200円分だけ多く年金を受け取れるん」


夏海「え? 400円払って200円多く貰えるって……れんちょん、いくらウチがバカだからってそれは騙されないよ~」

れんげ「………………?」

夏海「……ぇ?」


蛍「あ、そっか。払った月×200円分『年金が多く貰える』って言うことは……2年で元がとれますね!」

れんげ「そうなん。老齢基礎年金は通常65歳からの受給なので、たくさんたくさん得するん」


楓「いや、まぁそうゆうチマチマしたのは性に合わねぇな」

れんげ「じゃあ国民年金基金もあるん。これは毎月68,000円払うん」

楓「た……」

ひかげ「……高くね?」


れんげ「でも支払いが社会保険料控除になるん。そして受け取りも公的年金控除になるん」

蛍「あ、さっきと同じで税金分だけまるまる得しちゃうんだね」

れんげ「そうなん。ただし年金基金は一度入ると辞められないのん」

小鞠「何それ! 怖っ!」


れんげ「来るものは拒まず……去るものは逃がさずなん」

ひかげ「怖ぇぇよ」


れんげ「みんな結構ワガママなんな。じゃあ小規模企業共済っていうのもあるん。個人事業主とか少人数の会社専用なんな」

れんげ「これは掛金が1000円から選べて、こっちも全額が控除になるん。しかも、いつでも辞められるん」

蛍「へ~、なんだかそっちの方が良さそうですね」

れんげ「ほたるんも若いうちから将来設計しておいたほうがいいん」


蛍「うん。さっき言ってた『民間の保険』って言うのは? テレビのコマーシャルでやってる病気のとかのことなの?」

れんげ「そうなん。でもここではもっと生活に関わるものが重要なん」

夏海「日々のごはん代ってこと?」


れんげ「しんぷるに言えばそうなん。例えばウチたちのおとうさんにおすすめしたいんは、こども保険なん」

小鞠「いかにもお父さん向けって感じの名前だね」

れんげ「そうなん。こども保険は普通の保険同様に日々保険料を払うんな。でも掛け捨てじゃないので何事もなくてもお財布に優しいん。そしてこどもの進学に合わせてお祝い金が貰えますん」


夏海「え~。うちもそれに入ってればゲーム機とか買ってもらえたかもしれなかったのに~」

れんげ「そして万が一の不幸でおとうさんがお亡くなりになってしまった場合、それ以降は保険料を払う必要は無いん。それでもお祝い金や満期返戻金はちゃんと貰えるん」

蛍「あ、それお父さんが入ってるやつかも。前に家でカタログみたいなの見たことある」

楓「あぁ、そういやうちも保険屋が置いていったカタログみたいなのあったな……」 ゴソゴソ


小鞠「CMでやってるようなガンとか車だけだと思ってたけど色々あるんだね」

楓「お、あったぞ。ほらよ」

れんげ「保険屋さんは会社ごとに商品が違うのでじっくり比較するのが大事なん」


夏海「どれどれ。ホントだ……めっちゃ種類あるじゃん」

蛍「あれ? この所得保証保険と収入保証保険って随分離れたページにあるけど、同じものじゃないの?」

れんげ「おおっ! ほたるんはホント目の付け所がシャープなんな。シャープシューターなんな」

蛍「えっと、シャープシューターかは分からないけど」

れんげ「収入保証保険と所得保証保険は全然別のジャンルなん。これは結構間違えてしまう人の多いトラップなん」


楓「名前的には同じ見えるけどな」

れんげ「所得保証保険は例えば、駄菓子屋が怪我で入院してしまった場合、お仕事が出来なくなってしまうんな」

楓「おう」

れんげ「その時に年収の一定割合が貰える保険なん。労災とかが無くても安心なんな」

夏海「いやいや。駄菓子屋は楽してお金貰えてもウチらがお菓子食べれなくなっちゃうじゃん」

れんげ「はっ!! そうなんな!! 駄菓子屋! 入院なんてダメなん!!」

楓「しねーよ」


れんげ「よかったん。そして収入保証保険。これは全然違いますん。収入保証保険は死亡保険なん!!」

小鞠「それってドラマとかニュースでもたまに見る、『死んだら遺族にお金が入ります』ってやつ?」

れんげ「まぁそうなん。これは一家の大黒柱を失っても、残された家族に収入が保証されますっていう意味なん!!」


ひかげ「ほ~」

れんげ「ただ闇雲に家族サービスするだけでなく、先のことまで考えて家族を愛するお父さんの優しさに答えた保険なんな!!」

蛍「保険って沢山種類があるんだね。私もお父さんに聞いてみるよ」


楓「いや~、つってもまぁ今からそんな先のこと考えてもしょうがねぇしなぁ」

ひかげ「まぁそう言われればそうだよねぇ」

れんげ「駄菓子屋。駄菓子屋はバイクぶるんぶるんするんな?」

楓「……? あぁ、まぁな」

れんげ「バイクは自賠責っていう保険が義務で必ず加入してるん」

楓「おぉ。そんなことまでよく知ってんな」


れんげ「自賠責保険は対人保険で死亡事故なら3000万円、後遺傷害なら4000万円までの保険金なん。万が一の場合はそれでも足りないからこそバイクぶるんぶるんする人は全員義務化されてるん」


小鞠「け、けっこう凄い金額だね……」

れんげ「でもそれでも任意加入の自動車保険も実際にはほぼ必須なん」

楓「おう」

れんげ「人生も一緒なん! 義務の国民年金だけじゃなくて、色んな将来設計を考えるのが大事だと、ウチ思いますん!!」

楓「わ、わかったよ」


れんげ「分かってくれて嬉しいん。駄菓子屋には幸せになってほしいん」 フンス


夏海「しっかしお金って大変そーだなー。もっと楽に億万長者になれたらいいのに」

小鞠「いまの流れでそれを言うか……」


夏海「あ、そうだ! 姉ちゃんがんばって勉強して億万長者になってよ!! でそこそこ幸せに過労死してよ。そしたらそれを相続してウチも億万長者じゃん!!」

ひかげ「斬新すぎる!」

楓「お前はあきれるほど脳天気だな」


小鞠「っていうか、そこそこ幸せな過労死って……」

蛍「そんな!! 先輩死なないでくださいーーーー!! 私を残して……」 アウアウアウ

小鞠「ってほたるん!!? だ、だいじょうぶ、死なないよ……ね?」

れんげ「……甘いのんな。なっつん!! あまおう並の甘さなん!!」


夏海「!?」


小鞠「ホントだよ! 楽して儲けようなんて……」

れんげ「こまちゃん、違うん。そうじゃないん」

小鞠「え?」

れんげ「なっつんは…………なっつんは……」

夏海「ウチは……?」


れんげ「こまちゃんからは殆ど相続できません!!!」


ひかげ「な……」

蛍「な……」

夏海「なんだってーーーー!!?」


れんげ「まずなっつんは自分がこまちゃんの何親等か知ってるん?」

夏海「あ、それドラマで聞いたことあるかも。直径とか言うやつでしょ?」

れんげ「直系なんな」

夏海「まぁ姉妹だし、1親等じゃないの?」

れんげ「残念なん。法的には姉妹は親や子よりも遠いん!!」


夏海「な、なんだってーー!!?」


れんげ「例えば……ほたるん。ほたるんはこまちゃんと結婚してください」

蛍「え!!? そ、そんな急に言われても!!! あ、いえ、別にイヤじゃないんですよむしろ……。ただ心の準備が、あ、でも先輩が望めば私はいつでも」


れんげ「フリだけでいいん」

蛍「あっ、はい」


れんげ「じゃあ、ひか姉は2人の子供なん」

ひかげ「え、私が?」

れんげ「ちゃんとばぶって言うん!」

ひかげ「ばぶ」

楓「……?」


れんげ「はい。これがこまちゃんが築いた幸せな家庭なん」

小鞠「えー……」

ひかげ「こっち見てイヤがんなばぶ」

蛍「えへへへへ……」


れんげ「そして…………ここになっつんが入り込む余地は全くありません!!! 法的な意味で!!」


夏海「な、なんだってーーーー!!?」


れんげ「この例で言うと、配偶者であるほたるんが半分。そして子どもであるひか姉が半分。以上なん」

夏海「そんなぁ……」

れんげ「次にもしも、ひか姉が生まれていなかったらなん。あ、でもひか姉がこまちゃんのお腹にいる場合はすでに相続人と認められるん」

ひかげ「どうゆう例えだよ」


れんげ「ひか姉がまだいない場合は、ほたるんが3分の2。こまちゃんのおかあさんとおとうさんが2人で3分の1なん」

夏海「ウチは?」

れんげ「なっつんの分は無いん」


夏海「そんなぁ」

れんげ「でも法的にはなっつんの法定相続分っていうのは確かに存在するん。もしも他に相続人が居なければ補欠で回ってくるんな。8分の1だけ貰えるん」

夏海「少なっ」

れんげ「兄弟姉妹の法定相続分は元々4分の1なんな。こまちゃんには、にぃにぃも居るので2人で4分の1になりますん」

夏海「そんなぁ……姉ちゃんの裏切り者ーー」


れんげ「でも今のは法定相続分の話なん。こまちゃんは来年に15歳になれば遺言を残す権利が得られるのん。遺言によって財産を好きに分けられるん。慰留分は長くなっちゃうので省略するんな」

夏海「なぁんだー。じゃあ安心じゃん。ありがとう姉ちゃん!」

小鞠「まぁアンタには1円も残さないけどね」


夏海「な、なんだってーーー!!?」

つづく
明日は金儲けの定番、株のおはなし

基本的に経済は際限なく発展していくから、日経みたいな国を代表する株を全て買う権利の株?
を毎月買っていれば絶対損はしないって読んだことあるん


小鞠「だいたい真面目に働かないでお金が手に入るわけないじゃん」

夏海「あぁ~、世知辛い時代だなぁ」

楓「中学生の台詞とは思えんな」

れんげ「こまちゃん。それは違うん」

小鞠「え?」


れんげ「お仕事だけがお金を得る手段じゃないん」

蛍「え!?」


ひかげ「まじか! マジなのか、れんげ!! 我が妹はついに錬金術を編み出してしまったのか!!? これがルーチェにバレたらロクでもない事になるぞ!!」

楓「誰だよルーチェって」


れんげ「なにを言ってるん? 投資は資産運用の基本なん」

夏海「とーし? 確かに駄菓子屋はいい歳でヤンキーだけど……」

楓「ぶっ殺されたいらしいなお前」


れんげ「投資なん。ある特定のものの成長のためにに『投じる資産』なんな。そのある特定のものの成長によって直接的、あるいは間接的な利益を得ることができるんな」

夏海(やっべー。ぜんぜん分からないんですけどーっ!!)

れんげ「なっつんもよく投資してるんな!」

夏海「え゛……っ!?」

れんげ「よくタマネギとかスルメって言う資産を投じて、キリギリスとかザリガニとか釣ってるん」

夏海「あ、あぁ!! まぁね!!」


れんげ「でもウチが言ってるんは、もう少し回りくどいものなんな」

小鞠「っていうと?」


蛍「あ、わかった! 株っていうこと?」

れんげ「流石なん、ほたるん。ほたるんはホント出来る子なんな」

蛍「えへへ。ありがとう」

れんげ「そうなん。基本的に投資の代名詞と言えば株や債券なん」


小鞠「え~、でも株って怖いんでしょ? なんかドラマとかでもさ~、投資に失敗してお金無くなっちゃって犯罪に利用される人とか出てくるじゃん」

れんげ「それは色々と間違ってるん。そもそも投資って言うのは『お金を稼ぐ』手段では無いん! 『資産を運用』する手段ですん!!」

夏海「資産を」

小鞠「運用?」


れんげ「投資はみんなのいめーじほど、危険なものでは無いん。でも確かに最悪のケースとして元本がゼロになってしまうようなケースも少し想定はしておくべきなん」

ひかげ「やっぱり超危険じゃねーか!!」

れんげ「証券会社の破綻なら投資家1人あたり1000万円までが保護されるんな。でも投資した企業が倒産してしまうケースも、当然ゼロでは無いん。厳密にはそれでもゼロにはなりませんが、気構えとしてなんな。だから大前提として、余剰資産で運用することが大切なん!!」


蛍「余剰資産? 生活に支障がでないように余っているお金でっていうこと?」

れんげ「そうなん」

夏海「でもそれじゃ、ギャンブルとおんなじじゃない? ちょっと都心の方いくとでっかい駐車場のパチンコ屋とかあるけど、ああいうのっしょ?」

蛍「それって結構、典型的な郊外の象徴なような……」


れんげ「なっつん、全然違いますん。そのパチンコは当たれば儲かるゲームとかクジみたいなものなんな」

夏海「うん多分」

れんげ「投資は企業が成長すれば『価値が増す』ものなん! 全然違うん」

小鞠「う~ん。結構難しいね」

れんげ「株って言うのは会社の価値そのものなん」

ひかげ「そのもの?」


れんげ「株主は会社の経営に口出しする議決権があるし、株を一定数以上買い占めたら合併や吸収、解散。社長をクビにしたりだって出来るん」

れんげ「その権利が沢山沢山分割されて、沢山の人が持ってるんな」

蛍「へ~。おもしろいですね。先輩」


れんげ「なっつん。もし駄菓子屋の駄菓子屋と、枝垂カンパニーのどっちかが貰えるって言われたらどっちがいいん?」

夏海「枝垂カンパニーってあの有名な駄菓子メーカーの? もちろん枝垂カンパニーっしょ。社長になったら毎日駄菓子食べ放題じゃん。しかも儲かってるからゲームも買い放題だし」

れんげ「じゃあこの駄菓子屋が100円で、枝垂カンパニーが10000円だったら、どうなん?」


夏海「え~。だがしかし、それでも枝垂カンパニーでしょ。でっかいビルとか豪邸とかたくさん持ってそうだし」

れんげ「本当にそれでいいんな?」


夏海「え?」


れんげ「じゃあ駄菓子屋はこまちゃんが買っていいんよ。ウチ分かるん。駄菓子屋はこれから凄いビッグな女になるん。年商数億円のカリスマ駄菓子屋になるん」

楓「カリスマ駄菓子屋ってなんだよ」

夏海「え、なんか駄菓子屋のほうがいい気がしてきた……。まってまって!! それならウチも駄菓子屋買うって! 200円、いや300円出すから!」

小鞠「それさっき私が貸したお金だけど」

れんげ「なっつんは今駄菓子屋が今後ビッグになると思ったから、300円出してでも買おうとしたんな」

夏海「そりゃそうだよ!」

れんげ「これが投資ですん!!!」

夏海「……!!?」

れんげ「将来の成長へお金を預ける行為なん!!! 特にいま例に出したような投資をグロース投資って言うんな」


小鞠「なるほどー」

蛍「あれ、でもニュースとか見てると日本全体の景気とかも重要視されてるよね?」

れんげ「確かにそうなん。利子率や為替も株価に影響するん。でもそれだけを見てやってしまうんは危険なん」

ひかげ「っていうと?」


れんげ「株価はこんな感じの『チャート』って言うのでこれまでの値段の動きが見れるん。みんなあとでぐぐって適当に見てほしいんな」 カキカキ……


蛍「棒グラフと線グラフを合わせたような感じだね。あ、れんちゃん、ここの棒、黒く塗り忘れてるよ」

れんげ「ちっちっち、なん。ほたるん。そこはそれでいいんな」

蛍「え?」


れんげ「そうなん。ほたるんの言うとおり、チャートには四角がいっぱいですん。この棒が黒い場合は棒の上がその期間の最初の値段。下が終わりの値段なん」

ひかげ「おぉ! 絶賛値下がり中ってこと?」

れんげ「そうなん。落ち目なん。線が飛び出てる場合は途中でその線のはみ出た範囲で値動きがあったん」


楓「んじゃ、ここの長方形の棒だけなのは?」

れんげ「四角だけなのはその棒の中でしか動いてないって言うことなん。もし1日単位のチャートで白い棒だったら朝9時から午後3時まで値上がりっぱなしだったってことなんな」


夏海「おおぉ! 凄いじゃん! それ買ったら絶対得じゃん!!」

れんげ「なっつん。今日上がってたからって明日も上がるとは限らないん。ちなみにこれは別に極端な例じゃなくて、こうゆう値動きは割とよくある話なん」


夏海「でも、こんなにグイグイ上がってるなら大丈夫っしょ」

れんげ「これがダメな例なん」


夏海「え? ウチ駄目な子ですか?」

れんげ「ダメダメなん。しかも分かっていても引っかかってしまう初心者が多いんな」

ひかげ「まじでか」

れんげ「まず株価が上がった理由は最低限、知る必要があるんな」

小鞠「あ、言われてみればそりゃそうだよね」


れんげ「例えば例えばこのチャートは、仮にぱそこんの企業だとするんな。ウチ知ってるん。いま『ういんどうず10』って言うのが話題だって。だからぱそこん関係の会社も注目されてたん」

夏海「へーそうなの? ひか姉?」

ひかげ「え? あぁ、そ、そうだね~。まぁウインドウズ9もよかったけどね~」

蛍「……そんなのありましたっけ?」


れんげ「その場合、『ういんどうず10』がどうゆうものか。今後も注目され続けるものか、ちゃんと調べた方がいいん」

小鞠「株のことだけじゃなくて、そんなことまで? それじゃあ家具の会社なら家具のこと、ファッションの会社ならファッションのことも調べるの?」


れんげ「こまちゃん。自分の大事なお金を預ける会社のことなん。当たり前なん」

小鞠「あ、……言われてみればそうだよね!!」


ひかげ「でもさードラマとか漫画だと、テレビ沢山並べてさっきみたいなグラフばっかり眺めている人よく見るよ?」

蛍「テレビ……あ、モニターのことですね」

ひかげ「ああ言う人たちはれんげの理屈では損してるってコト?」

れんげ「ひか姉……たまには良いこと言うんな。そうゆう人たちは実はちゃんと得してる人、沢山いますん。そうゆうのをテクニカル分析って言うん」


ひかげ「ほらー。そっちの方がなんか『投資家』って感じでエリートっぽいじゃん! テクニカル!!」

れんげ「ああいう人たちはチャートや板を見るセンスが並外れてるん」

楓「板(いた)?」


れんげ「板って言うのは株の売買伝言板みたいなものなん。例えば現在398円の株があったとするんな」

れんげ「板には399円で売りたい人が何人、400円で売りたい人が何人……397円で買いたい人が何人、396円で買いたい人が何人……って延々書いてありますん。もちろん人気株は何千人、何万人単位なんな」

蛍「なんだか、オークションみたいだね」

れんげ「そうなん。その板から売り気配、買い気配が読みとれるん」


夏海「じゃあやっぱり、ひか姉の言うとおりその読み方を勉強すればいいってこと?」

れんげ「ただし、この板はほぼ操作されてますん!!」


夏海「操作!?」

れんげ「一応法的には禁止されてるん。でもぶっちゃけ株価って言うのは操作されてるんな」

小鞠「誰かが操ってるっていうこと?」

れんげ「実際そうなこともあれば、無意識に集団的な操作が成立してることもあるん」


れんげ「例えばさっきの398円の株の例なんな。大体どの値段も1000人くらいの売買希望する人がついてるん。でも400円だけ2万人売りがあったら、ほたるん。この株買いたいん?」

蛍「え? 買ってすぐ売れば……あ、でもこんなに売りたい人が居るんじゃすぐには自分が売れる番にならないし、それ以上値上がりしなくなっちゃう……。しかもみんながそう思うだろうし」


れんげ「そうなん。これは簡単な例なんな。株価に蓋をするって言うん。臭くなくても蓋されてしまうん」

ひかげ「え~。じゃあさっき言ったグラフとかだけのテクニカルな人は皆、そうゆうコトやってるってこと?」

れんげ「違うん。そうじゃないん。テクニカルだけで儲かってる人はそうゆうのの流れを見るセンスが凄いん。例えば将棋とかでも強い人は眺めただけで動きが何となく読めるん」


れんげ「将棋は練習すればある程度は強くなれるけど、やっぱり先とか板の呼吸を読む感覚っていうのは一部の人だけが持ってるセンスなんな」

夏海「普通の人には真似できないってこと?」


れんげ「迂闊に真似するのは危険っていうことなん。もちろんテクニカル分析は他の分析と組み合わせれば伝説の剣並に強力な武器なん」

れんげ「でもちゃんとレベルをあげてから他の装備と一緒に使った方がいい諸刃の剣なんな」

夏海「おお~なるほど~」


小鞠「でもそれだとやっぱり最初に言ってた、成長しそうな企業を探すしかないってこと?」

ひかげ「ぶっちゃけ、それが見つけられれば苦労しないよね~?」

れんげ「確かにそうなん。だから自分の得意なジャンルにはアンテナを張ったほうがいいんな。ひか姉の携帯はアンテナ立たないけど、頭の中でアンテナを張るのは出来るん」

小鞠「じゃあ私なら音楽とかファッションだね」

蛍「あっ、はい。そ、そうですね」


れんげ「でもそれじゃ受け身すぎて面白くないんな。ねぇねぇにはお金で遊んじゃ駄目って言われたん。でも株は余剰資金で行うマネーゲームの趣も確かにあるん」

楓「分析して金を動かす醍醐味みたいな感じか?」

れんげ「そうなん。だから、ファンダメンタル分析をするといいん」

ひかげ「ファンタ? メンタル味?」


れんげ「ファンダメンタルなん。最初に企業の成長へ投資するのがグロース投資って言ったんな」

夏海「言ってたね~」

れんげ「あと現在の企業の価値に対して株価が思ったより安い銘柄とかもあったりするん。これはバリュー投資って言うん」

小鞠「でもそうゆうのもやっぱり会社とか流行の分析がいるんでしょ?」


れんげ「もちろんやった方がいいん。でもこの2つは数字でも分析できるん!!」

蛍「数字で?」


れんげ「そうなん。さっきチャートとか板の話したんな。ああいうのが見れる、ぱそこんのページとか、もしくは会社のページのIRって言うのには必ずこうゆうのが書いてあるん」 カキカキ……


PBR:1.14倍
PER:29.52倍
ROE:27.24%


れんげ「これは昨日このみ姉に見せてもらったKADOKAWAっていう漫画とか小説とかの会社のデータなん」

夏海「あ、ウチ知ってる! 月刊コミックアライブ面白いよねー」


れんげ「そうなんな。まずPBRは株価資産倍率、会社の純資産に対する今の株の価値なん」

夏海「…………かぶかしさんばいりつ???」

小鞠「テンションの浮き沈み激しいなアンタ」


蛍「純資産って、財務諸表の時も言ってたね」

れんげ「そうなん。純資産は負債を含めない資産。会社が持ってる最後の砦のお金なん。だからもしも会社が解散することがあったら純資産は株主に持ち株分で分配されるん」

楓「あぁ、それに対する株の価値ってことか」


れんげ「そうなん。1倍以下の会社とかも結構あるんな」

蛍「え? それって全部の株価の合計が純資産より安いことになっちゃわない?」

れんげ「ほたるんはほんとキャリアウーマンなんな。できる女なん。その通りなん。1倍以下の場合は、株を全部買い占めて会社を解散した方が、差額ぶん得になってしまうん」

夏海「すげーじゃん!!」


れんげ「もちろん現実にはそこまで単純ではないんな。でも1倍以下ならそうゆうのもやろうと思えばできるし、会社が解散しても戻ってくるお金の方が多いん」

小鞠「狙い目ってことだね」


れんげ「そうなん。バリュー投資として割安株を探すのに役に立つんな」

れんげ「同じようなのに、PERもあるん。これは株価収益率なんな」

蛍「さっきのが純資産に関するものだから、今度は収益に関するものっていうこと?」

れんげ「そうなん。1株の株価あたりどれだけの純利益をあげているか、っていうことなんな。シンプルに『何年でその株価分の利益が生まれるか』って考えても、あんまり間違いじゃないん」


ひかげ「このカドカワの29倍ってのだと?」

れんげ「29年っていうことなんな。業界にもよるけどだいたい10~15倍を下回ればお得なん。でも出版関係の会社はカドカワとかアルファポリスくらいしか上場してないので、そうゆう比較対象が少ない業界ではあまりあてにしすぎない方がいいんな」

小鞠「ん~、さっきのPBRよりちょっと難しいね」


れんげ「確かにこれは目安程度に使ったほうがいいん。でもまだROEが残ってるん」

夏海「れ、れじぇんど おぶ えたーにあ」

小鞠「なんか色々混ざっちゃった!!?」


れんげ「ROEはリターン・オン・エクイティなん。自己資本利益率なんな」

ひかげ「1週間で英語まで!?」

れんげ「これはその会社がどれだけデキる会社かっていうことなん」

楓「急に抽象的になったな」


れんげ「これは株主が出したお金から、どれだけ利益を出したかっていうことなん。経営の腕の見せ所なんな」

蛍「効率よく利益を出せる会社なら安心して出資できるもんね」

楓「まぁ、将来儲かりそうってことでもあるしな」

れんげ「その通りなん。これが3割近いKADOKAWAは流石業界の牽引役なんな!!」

小鞠「なるほどね~」

夏海「さすがはカドカワじゃん!!」

>>52

れんげ「他にも平均法っていうのもあるん。毎月同じ額だけ同じ銘柄を買い続けるんな」

ひかげ「毎月100株ずつ買うとかってこと?」

れんげ「違うんな。株価は常に変わりますのでっ! でもそれでも同じ額だけ買うん! 例えば1月は400円で50株買うん。2月は500円だったから40株買うん。3月は株価が下がって200円だったけど焦らず100株買うん。毎月2万円分買うん」

夏海「結構メンタルが必要だなぁ」

れんげ「持ってる分の株価は平均化されていくので企業の経営が傾かない限りはそのうち得するんな」

蛍「でも面白い手法ですね」


夏海「でもウチも投資で儲ければゲーム買えるかも!!」

小鞠「いや、そもそも私ら未成年じゃん。投資なんてまだまだ先の話でしょ」

蛍「う~ん、確かにお小遣いもそんなに無いですし」

れんげ「そんなこと無いん!!」


蛍「え?」

れんげ「お金が遊びじゃないって知っているおとうさんおかあさんほど、子供に早いうちから投資を教えてたりするん」

れんげ「それにミニ株っていう普通の10分の1の額で売買できる投資もあるん」

小鞠「へ~、そうゆうのもあるんだ」


れんげ「指値が出来ないとか色々あるけど、お小遣いでやるには良さ気なんな」

楓「さしね?」

れんげ「いくら以上なら売ってもいい、いくら以下なら買ってもいい。って指図できるん。これが無いと成行って言う、その時点での値段にお任せで買ったり売ったりする感じになっちゃうん」


夏海「え? それちょっと怖くない? 売ろうとしたら株価変わっちゃうじゃん」

れんげ「さっきも言ったん。そんな分単位で株価を気にするような投資は、超一流の人以外は上手くいかないん。長い目で見て1割得するような運用を目指す気持ちの方が勉強になるん!!」

小鞠「なるほどね~」」

蛍「学校の勉強だけじゃ学べないことって沢山あるんですね」

夏海「だね~~」


れんげ「ちなみに、なっつんは算数の強いのが苦手なんな」

夏海「数学のこと? まぁね~」

れんげ「投資とかの計算だと本格的なのは二乗とかルートとか使うのん。なっつんはまずちゃんと勉強してくださいん!!!」

夏海「あっ、はい」

つづく
次回は、考え中……

>>75
これがピラミッドってやつなん?

週刊モーニングに載ってる「インベスターZ」て漫画だと
ファンダメンタルは駄目、テクニカルで
やれって言ってたな。

まぁ主人公も周りも天才児(入試トップ)だから成り立つ話だとは思うけど。

>>79

蛍「そういえばお父さんの本でピラミッド投資法っていうのを見たことあるけど」

れんげ「それも投資のワザの一つなん。あんまり有名なテクニックでもないし、平均法よりちょっと上級者向けなんな」

ひかげ「ピラミッドっていうと三角形的なアレ?」

れんげ「確かにそうなん。でもピラミッド法は決まった額を買うわけじゃないんな。目を付けた株を取り合えず買ってみて、上がったら売るん。下がったら、更買い増ししますん!」


夏海「上がって欲しいのに、下がったら買っちゃうの!!?」

れんげ「そうなん。精神力が必要なんな。そして更に下がったら、さらにいっぱい買うん」

小鞠「下がったら沢山買うの!?」

れんげ「その方が取得原価の平均は下がるんな」

楓「まぁ確かにそうだな……」

れんげ「そして上がったら満を持して売ればいいん。長い目で先を見る必要があるんな」


ひかげ「え……ってか、ちょっと怖くない? 途中までは損が膨らむわけでしょ?」

れんげ「今回は説明しなかったけど、世の中には株価が下がれば下がるほど得をする人も大勢いますん。途中どころか下がったら再浮上するのに何年もかかる場合もあるん」

れんげ「ちゃんと見極めてからの方がいいん。銘柄は適当でもテクニックで補えるなんてことは無いんな」


れんげ「でも先に損切りっていう、下がったらちょっとの損で潔く手放すワザも知っておいた方がいいん」

夏海「え? 値下がって売ったら損しちゃうだけじゃん」

れんげ「そうなん。確かにこれはむやみにやってもどんどん損するだけなん。でも手放さなければ際限なく下がってしまう可能性もあるん。損切りっていうワザを覚えることではじめて『損切りしない』っていうワザも使えるんな」


蛍「やっぱり下がった時の判断は難しいっていうことなんだね」

れんげ「だから損してもあせらない金額で嗜むのが大事なん。れでぃの嗜みなんな」

この時期に今年一番のSSを見つけてしまったのん

>>78
もっと株の話がいいです

今日は仕事納めだったので書けません
>>84
じゃあもう少し株のこと話してもらえるようにれんちょんにお願いしてみます


ひかげ「っていうかさ、さっき株価が下がれば下がるほど得する人もいるって言ってたけど、どうゆうコト?」

夏海「ライバル企業とかじゃないの? 相手の会社に潜入して、機密ファイルを盗んで破壊工作をしてやるぜ……みたいな」

楓「お前それただの犯罪だぞ」


蛍「う~ん……同じ業界のライバル企業の株を持ってる人とか?」

れんげ「違うんな。そうゆう相対的な視点はどっちかっていうと、為替なん。特に外貨なん」

れんげ「株価が下がって得をする人は、すでに株を売っていますん!!!」


小鞠「……?」

夏海「え? どゆこと?」


れんげ「ほたるん。株で利益が出る理由は分かるんな」

蛍「うん。会社が株主さんに利益を還元してくれるお金と、あとはもっと高値ででもその会社の株主になりたい、っていう人に株を売った時だよね?」

れんげ「そうなん。前者が配当収益、後者は譲渡収益……俗にキャピタルゲインって言うん」

楓「まぁその辺は何となくは分かってたな」


れんげ「ここでは譲渡でのお話なん。株価が下がった方が儲かる人っていうのは順番を逆転させた人なん」

夏海「順番を逆転?」

れんげ「普通は株を買って、値段が上がったら売るんな」

ひかげ「そりゃそうだ。下がって売ったら損じゃん」


れんげ「でも信用取引なら、先に『借りた株』を売れるん!!」

楓「は?」


れんげ「例えば、なっつん。なっつんはベビースター好きなんな」

夏海「うん美味いよねー」

れんげ「なっつんは今、ベビースターがどうしても食べたいん!」

夏海「え! う、うん」


れんげ「駄菓子屋。このベビースター、ウチに貸してほしいんな。担保にひか姉の体を預けますん」

ひかげ「えっ!?」

楓「おう」

れんげ「このベビースターは借りたからウチの好きにできるん! なっつん。このベビースターを50円で売ってあげるん! なっつんはこれが欲しいので買ってしまうん」

夏海「え、じゃあはい」


 つ[50円]


れんげ「はいなん。……そして、駄菓子屋。借りたベビースターは手放しちゃったん。でも代金30円払うんな」


 つ[30円]


楓「おぉ、なるほどな」


小鞠「すごい! 確かに順番が逆転してた!!」

蛍「買ってから売るんじゃなくて、……売ってから買うんですね」

れんげ「そうなん。高く売って安く買う……株価が下がった方が得なん。何度も言うけど株価の操作は違法なん。でも上手に株価に蓋をする人はいるんな。だから株価が下げたい人たちの思惑通りに動く場合もあるん」


ひかげ「じゃあ上がる予想を一生懸命予想するより、下がりそうな株探したほうがいいじゃん!!」 

夏海「姉ちゃん、ウチも株借りるから担保になってよ!! 失敗したら売られちゃうかも知れないけどいいよね?」

小鞠「よくない!!」


れんげ「もちろん実際には人間は担保にはなれないん。委託保証金は現金、もしくは他の上場株式なん。借りる額の30%相当以上が必要なん」

夏海「え、人間じゃ駄目なの。じゃあ駄菓子屋!!」

ひかげ「株を借りる補償金にする金を貸してくれ!!」

楓「お前等はあれか……。借金膨らませて破滅するタイプだな」


れんげ「……2人ともあまりにも、あまあまなん……。その甘さたるや、あまおう練乳ミックス並なん!!」

夏海「練乳!」

ひかげ「じ、実の姉にそこまで言うか!」


れんげ「株価は企業の価値を分割したものみたいなものって言ったんな」

蛍「うん。言ってたね」

れんげ「どんなに最悪の場合でも0円以下にはならないん。でもその会社の業績やコンテンツ次第ではあっという間に何倍にも上がることは結構あることなん」

れんげ「そして信用取引で借りたものは6ヶ月以内に適正額で決算しなければいけないん」


小鞠「あれ……っていうことは?」

れんげ「例えば300円の株を100株、普通に買うんな。もしこの判断が大失敗だったとしてもゼロ以下にはなりませんので、3万円以上は損しないん。まぁ普通は資本金があるのでゼロにすらならないんな」

楓「株は下限が決まってるってことか」


れんげ「でももし、300円で100株を『信用売り』してたら……あ、信用売りは空売りともいいますん」

夏海「下がればその分得なんでしょ?」

れんげ「そうなん。でも、もし何かもの凄い発表があって上がってしまったら……それは青天井なん。600円まで上がれば3万円の損。900円まで上がれば6万円の損なん」

夏海「た、確かに!」


れんげ「さっきも言ったん。株は1割の利益を目指せばいいん。2割なら大成功なん。それなのにマイナス10割、マイナス20割……それ以上なんて目も当てられないん。なっつんのお先真っ暗なん」

ひかげ「うわー……」

れんげ「でもこの空売りは『分析してマネーゲームを楽しむ』っていうのには大事なんな。慣れればやってみたいテクニックですん」

れんげ「あと信用取引はもちろん普通にお金を借りて株を買うこともできるん」

楓「それも3割の担保なのか?」

れんげ「そうなん。ちなみに株を委託保証金にする場合はその担保の株が値下がった場合追加の担保が必要なん」


夏海「う~ん。信用売りはウチには早いから、普通にそっちのがいいかも」

れんげ「確かに信用買いはシステム的には普通と同じなん。でも、なっつん。自分のお金で賄えないから、信用取引してるんな。自分の貯金の何倍ものお金、なっつんはホントに平常心で扱えるん?」


夏海「……うっ!! い、言われてみれば」

れんげ「そうなんな。株は普通にやれば面白いん。だから気づかないうちに無茶しないように自制心がいるん。ゲームみたいにコンティニューが無いんな」

小鞠「なるほどね~」


蛍「でも、れんちゃんの言ってたこと気をつけてれば私たちでも楽しめるってことだよね?」

れんげ「もちろんなん。凄いことしなくていいん。普通に楽しめばいいん」


ひかげ「具体的にはどうすればいいのさ」

れんげ「まずは証券会社とネット銀行に口座を作るところからなんな。ウチたちはおとうさんとおかあさんに書いてもらうん」

ひかげ「ってか、そっちのが説明的に先じゃない? 売り買いの説明より」

れんげ「ひか姉……すこー。……なんな」

ひかげ「……そ、そこはかとなく煽られてる感が……」


れんげ「例えばなん。この間みんなでほたるんの家のテレビゲームしたんな」

夏海「あぁ、やったねー」


れんげ「こまちゃんはボコボコにされるゲームやりたいって言ったん。けど、なっつんはぶおーんなゲームやりたがったんな」

夏海「ああスマブラよりマリオカートの気分だったしね~」

小鞠「あれ、私ボコボコにされる側確定なの……?」


れんげ「なっつんはアクセルがAボタンだからあのゲームしたかったん? ボタンの配置が魅力的でしたん?」

夏海「え? どゆこと……いや、どっちかって言うとゲームの内容かなぁ」


れんげ「コースを選んでる時のあの上とか下とか、決定ボタンの操作がたまらなかったん?」

夏海「い、いやぁ、そうゆう訳でも」


れんげ「プレイ中にアイテムとったり、こまちゃんに甲羅ぶつけたり、こまちゃんを崖から落としたりしたのが楽しかったん?」

夏海「うんそう!!」


れんげ「これと一緒なん!! ひか姉」

ひかげ「あ~。やり方よりもやってる最中の方が重要だと?」


れんげ「どっちも重要なん。でもやるかやらないかは口座開設が面倒とか、税金が難しそうとかで決めるものじゃ無いん。やってる最中の内容が『えきさいちんぐ』かどうかなん」

楓「まぁ確かにな」

れんげ「なのでウチ、みんなに『だいごみ』をぷれぜんしたん!」


ひかげ「ん~、まぁ分かったよ。でも実際口座とかメンドくさくない? しかもネット銀行とかなんか怖そうじゃん。まぁ私は、ネットとか使いこなしてるけどね! 毎日ヤフーとか見てるし」

れんげ「ちょっと面倒だけど郵送だけで全部済みますので、だいじょぶなん。あとネット銀行は別に怖くないん」

楓「でも普通のデカい店舗があるような銀行と比べたらアレだろ?」

れんげ「ネット銀行もちゃんと預金保護制度の対象なん。万が一銀行が破綻しても1000万円までとその利息がしっかり保証されてるん。もちろん証券会社もさっき言った通り投資者保護基金の対象なん」


蛍「あ、じゃあ万が一倒産しちゃっても預けてるお金は大丈夫なんだね」

れんげ「そうなん。でも預金者保護法の適用は受けられないので不正引き出しは気をつけるん! ういるすは怖いん!」


ひかげ「あー私も東京でネットしてたら『このパソコンはウイルス感染しています。いますぐ対策ソフトをダウンロードしてください』って出てさー。でも親切だよねー。無料でボタン一つででダウンロードしてくれるんだし」

蛍「あの……それがスパイウェアなんですけど……」


れんげ「ネット銀行と証券会社に口座を作ったら銀行経由で証券会社にお金を振り込むんな」

夏海「それで晴れて株が買えるってこと!?」

れんげ「そうなん。でもいきなり買う必要は無いと思いますん」


夏海「え?」

小鞠「あ。まぁ、なに買っていいのかも分からないもんね」

れんげ「なっつんはレベルが足りなくてもボスと戦っちゃうタイプなんな。こまちゃんは最初の村でたくさんスライムと戦うタイプなん」

小鞠「そこはかとなく私の方が負け組っぽいんだけど」


れんげ「最初は買わないで株価の動きを観察すればいいんな」

楓「そういやこのみがパソコンでそんなゲームやってたな。金は使わないで実際の株価に合わせてシミュレーションするやつ」


れんげ「そうゆうのは面白そうだけど慣れてる人向きなんな」

小鞠「そうなの? 慣れる為にお金関係なく株を買ったことにしてどうなるか体験するんじゃない?」

れんげ「買った気分になっちゃうと、きっとその銘柄しか見ないんな。ウチとしてはいっぱいいっぱい眺めて、ざっくりとした全体の値動きを知る方が重要だと思いますん」

楓「ほう」

れんげ「例えば円安とか円高とかあるんな」

小鞠「あ~ニュースでやってるねー」


れんげ「あれは外貨に対して円の価値がどうなってるかなん」

ひかげ「お、おう?」

れんげ「商品とか材料を海外から輸入している企業は多いんな。逆に日本特有のものとかを輸出する企業とかももちろんあるん」


楓「そうだろうな」

れんげ「もし円安になったら輸入系の企業は、先月と同じ10ドルの材料を買うのにもっと沢山お金が必要になってしまうん。数ヶ月後の業績が悪くなること必至なん。だから株価は先行して下がるん」


れんげ「輸出系の企業は円安になったら、先月と同じ10ドルのものを売ったら、先月より沢山日本円が貰えるん。利益がっぽがっぽなん。だから株価は先行して上がるん」

小鞠「お~。凄いね! それを知った上でニュース見てたらなんか大人っぽくない!?」

蛍(はい! 先輩は大人っぽくても可愛いです!)


れんげ「いっこに絞らないでざっくりとニュースを見ながらそうゆう企業を眺めるん」

夏海「なんかそれやってるだけでも投資家っぽくてカッコいいかも!!」

小鞠「こーひーも必要だね」

れんげ「あと相場指標とかも眺めるん」

夏海「相場師・ヒョウ?」


楓「誰だよ」

れんげ「相場指標は日経平均株価とかTOPIXのことなん」

蛍「あ、ニュースで毎朝やってるね」


れんげ「そうなん。日経平均は東証1部に上場されてる銘柄から代表的な225銘柄を選んだその平均なん。TOPIXは1部の銘柄すべての時価総額の流れを見るのに使うん。これも景気とか情勢と比べながら眺めると楽しいん」


小鞠「へ~。でも一部だけなの? 練習していけば全部が見れるようになるの?」


れんげ「え?」

小鞠「え?」

夏海「……?」

小鞠「え。あの……だから一部分だけじゃなくて全部見たいときは……」


蛍「あ、あの先輩。1部っていうのはそうじゃなくて……サッカーとかのリーグと一緒で1部の市場と2部の市場とがあるんじゃないかと」

れんげ「こまちゃん……お約束なんな!! いいと思いますん!!」


蛍「あ、でもそうゆう意味では1部は全体の一部ですから……けっして先輩は間違っては……」

小鞠「うぅ……後輩に慰められた…………」


夏海「なぁんだ姉ちゃんそんなことも知らないのかー」

小鞠「いやアンタだって絶対知らなかったでしょ」

夏海「そんなこと無いよー。あれでしょー。1部のほうが凄いんでしょー」


れんげ「おおー。なっつん。流石なんな」

小鞠「くっ! 雰囲気で分かるようなことを堂々と……」


れんげ「そうなん。1部の方が資本金や時価総額の条件が厳しいんな」

楓「んじゃ野球選手が1軍目指すような感じでどの会社も1部を目指してんのか」

れんげ「う~ん。それは経営方針にもよるんな」

ひかげ「また難しい単語が出てきたな」


れんげ「株を沢山発行すれば経営決定権も比例して外に出て行ってしまうし、買収のリスクも上がるん」

楓「なるほど。分からん」


夏海「でもそれって、こまちゃん経営したいってことでしょ」

小鞠「アンタ『こじんまりとした経営』って言いたいのか」


れんげ「ちょっと違うん。じゃあ株価とは離れるけど、ちょっと脱線してクイズするんな」


夏海「クイズ?」

れんげ「ひか姉。前に東京の電気屋さんは凄いって言ってたんな」

ひかげ「あぁ。まぁね~。こっちのデパートよりでっかい店も結構あるし、最上階はレストラン街だったりしてさー。商品の品ぞろえももんのすげーのよ!」

れんげ「そうなんな。じゃあその会社の株価もみんな凄いん?」


ひかげ「え? そりゃそーだろ。多分。あんだけ凄い店をいくつも持ってるんだし」

れんげ「なるほどなん。でも実際はちょっと違うん」

ひかげ「え!?」


れんげ「ビッ○カメラ、ヨド○シカメラ、ヤ○ダ電機、この3つは凄いお店をいくつも持ってる負けず劣らずのライバル同士なんな。ひか姉が持ってきたMONOQLOって言う雑誌にも出てましたん!!」

蛍「うん。そうだね」

れんげ「ほたるんは東京にいた時は行ったことあるん?」


蛍「うん。おもちゃとかゲームも沢山あるし、電子ピアノとかも本物が沢山置いてあって、実際の商品で焼いたパンとかを試食させてくれたりもするんだよ」


れんげ「おもちゃ……とても魅力的ですんな!!! じゃあみんな。この3つのうちどこが1部上場の株式会社か当ててほしいん」


夏海「え~……。あ、でもヤ○ダ電機は確かウチらの地方にも車でしばらく行けばあるんじゃ無かった?」

小鞠「うんたしか3時間くらいで行けるところにあるはず」

蛍(車で3時間ってだいぶ……)


夏海「じゃあそれだけ沢山の店があるヤ○ダ電機は1軍だね!」

楓「1部な」


蛍「ヨド○シカメラは確か大阪に日本最大のお店があったよね。あと配送サービスがアマ○ン並に凄いってたしか」

楓「あぁポイントカードのサービスを最初に考案した会社だな」

小鞠「え!? あの大人の女性は色んなお店のカードを束になるほど持ってるっていう、あのポイントカード!!? 超凄いじゃん」


ひかげ「ビッ○カメラはヤバいよ~。なんたってビッ○ロがあるからね~。ユニ○ロと合体しちゃってるからね~。いや~あれはなかなかだったね~」

夏海「え!? ひか姉、ユニ○ロで服買ったの!? スゲー!!」

ひかげ「チッチッチ……ユ○クロじゃなくてビ○クロだって」


蛍(……何でだろう……見てる私が恥ずかしい)


楓「っても、そうなると3社ともスゲー会社ってことだな」


れんげ「ちなみにウチは答えが1社だけとは言ってませんのでっ!」


小鞠「う~ん。じゃあ3つとも1部の会社!!」

夏海「いや~それじゃクイズにならないっしょ~。じゃあウチはヤ○ダ電機!」

楓「んじゃ私はヨド○シにしとくか」

ひかげ「え~じゃあ~ビッ○……」

蛍「答えはなんなの? れんちゃん」


れんげ「正解は……」

ひかげ「正解は……?」





れんげ「正解は……ビッ○カメラとヤ○ダ電機だけが1部上場企業なん」



夏海「あ~惜しい!」

小鞠「え! そうだっけ?」


ひかげ「へ~。ヨド○シは1軍にはなれなかったのか~。新宿とかだと近くにあって三つ巴大決戦って感じで面白いけどねぇ」


れんげ「甘いんなひか姉。全然違いますのん。あと1軍じゃなくて1部なん」

蛍「どうゆうこと? れんちゃん」


れんげ「東証1部は確かに株式会社のステイタスなん! 2部でも羨望されることもあるん。でも、ヨド○シはそもそも上場すらしていませんので!!!」

夏海「な、なんだってーーー!!!? ってつまりどうゆうこと?」


れんげ「つまり、1部でも2部でもジャスダックでもマザーズでもどの市場を眺めても『株式会社ヨド○シカメラ』の株は買えないんな。こうゆうのは電気屋さん以外でもたまにあるん」

小鞠「え、でも負けず劣らず有名な会社なんでしょ? なんでなの?」


れんげ「最初み言ったん。株式が流出するというのは経営決定権も一緒に流出するん」


楓「あ~。経営に口出しされたくないからってことか?」

れんげ「大体そうなん。このヨド○シカメラは親族と正社員だけで経営されてるん。レジとかの人も正社員なん」


ひかげ「保守的だねぇ」

れんげ「経営的には悪いことでは無いん。大きなミスや漏洩が発生するリスクも無いし、『株主に見せるための利益』を追う必要もなくなるから安定性は増しますん」


れんげ「これは特に出版業界にも言われることなんな。さっきカドカワの株を例にしたとき、カドカワとアルファポリスくらいしか上場している企業は無いってウチ言ったん」


蛍「そう言えば!」

楓「出版社なんて普通は儲かってそうだけどな」

夏海「ジャ○プの会社とかマガ○ンの会社とかサ○デーの会社は!!?」

小鞠「漫画ばっかりだな」


れんげ「そうなん。そのあたりはみんな上場してないん。出版社は経営や出版物に外部から口を出されてしまうのは致命的なことなん。だから迂闊に上場は出来ないんな」


ひかげ「うぁ~、そんなことまで考えてやるもんなの?」

れんげ「今のは結構脱線した話ではあったん。でもこうゆうのを知ってることで得意ジャンルが広がるん。情報収集しやすい得意ジャンルの方が売買しやすいん」


蛍「なるほど~。株って面白いね」

れんげ「そうなん。実際売買するよりいろいろ眺めた方がいいし、楽しいと思いますん」


夏海「おぉ~。じゃあウチらもまずニュースとか眺めるところかややってみようよ。姉ちゃん」

小鞠「うん。いままでは経済とかのニュースとかって見ても分からなかったけど、こうゆうの知ってれば興味持てそうだよね」

蛍「私もお父さんに色々質問してみます」


ひかげ「しっかし、れんげもよく1週間でここまで勉強したよね~」

れんげ「本を見ても分からないところはにぃにぃに聞きましたん。な」


卓「……」

夏海「あ! 兄ちゃんいたんだ!!?」

卓「……」



--…………1カ月後


夏海「れんちょーん!! 昨日かった株なんだけどさー、やっぱりオリンピック需要に上手くあたったみたいでさー、上がり始めたよー。で、次の銘柄なんだけどー」

れんげ「………………」

小鞠「あれ、どうしたの?」

れんげ「ウチは今思案してるん」

蛍「れんちゃん?」

れんげ「やっぱり宇宙は1次元的な広がりを持つヒモである可能性が高いん。ただM理論ではコンパクト化された6次元の制約を受けて、そこからの振動で量子を成形するというのも踏まえると必然的に2次元になってしまうんな」

夏海「え、なに言ってんの?」





れんげ「宇宙の形はウチが証明しなきゃいけないんな。なっつん! ウチ、株なんてやってる場合じゃないん!!」

夏海「な、なんだってーーー!!?」




て~て~ててて♪  て~ててて~♪♪


今回はここまで

おしまいですん

最後はリクエストいただいた株を長めにとってみました
読んでくれた人ありがとう

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年01月04日 (月) 23:40:59   ID: PFQKnBCT

俺には全然分からん

2 :  SS好きの774さん   2016年07月03日 (日) 01:29:25   ID: u0GodWXb

勉強になった
こういう類いのSS増えて星ゐ

3 :  SS好きの774さん   2016年07月22日 (金) 20:50:18   ID: lNtabXsN

こち亀でもやってた

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