リサ「私が見ている世界と彼女が見ている世界」 (27)

アイカツのSSです

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気が付くと私は病室に居た

ベッドの上では少女が横になっていて、その顔は同じ人間とは思えないほど蒼白い

ベッドの周りには医師と思われる人物やその少女の家族と思われる人たち、それと少女に泣きながら必死に呼び掛けるもう一人の少女が居た

『起きてよ! 起きてよ! 死んじゃうなんてやだよぉ!』

その声はとても聞き覚えのある声だった、って……!

リサ(ののっち!? 何でののっちがここに居るの?)

のの『リサっぺ! リサっぺ!』

リサ(えっ? あのベッドの上に居るのは私なの!?)

訳が分からなかった、何で突然私が死にかけているのか、何で私はここに居るのにベッドにも『私』が居るのか

……

それらの疑問は私の中ですぐに氷解した

リサ(夢…… か……)

試しに頬をつねってみたがまるで痛みを感じない、やはり夢なのだろう

夢と分かればこのあり得ない事態にも説明が付く、全部夢なのだ

リサ(『明晰夢』って言うんだっけ、こういうの)

私が現状を認識し妙に冷静になってる内にベッドの上の『私』の容態は更に悪くなったようで

のの『リサっぺ! 死んじゃやだよぉ!』

幼なじみの今まで聞いたことの無かった泣き叫ぶ声に私は耳を塞ぎ、目を閉じた

リサ(何よこの悪趣味な夢! ののっちが悲しんでいる所なんて見たくない!)

リサ(夢なら覚めて!)

私がそう祈ると願いは通じたのか、ののっちの声は聞こえなくなった

しかし、妙にふわふわとした感覚はそのままでどうやら夢が覚めた訳ではないようだ

リサ「ん……」

恐る恐る目を開けると先ほどと同じような病室に医師、家族、二人の少女が居た

ただ一つ違っていたのは……

リサ『ののっち! ののっち!』

ベッドに眠る少女がののっちであり、泣き叫ぶ少女が『私』であったことだ

リサ(嘘…… 今度はののっちが……)

今度は耳を塞ぐことも目を閉じることもせず私はベッドに駆け寄った

リサ「ののっち! ののっち!」

リサ「死んじゃ嫌だよ! 私たち生まれてからずっと一緒だったでしょ!?」

リサ「まだまだののっちとしたいこといっぱいあるの! それなのに……」

リサ「私を一人にしないでよぉっ!」

私の声と同時に近くの機械が音を鳴らした

その後を見る限り彼女は息を引き取ったようだ

私は先ほどのように目を閉じることも出来ず、彼女が命を失う様をずっと見ていた

リサ(そっか…… これは夢なんだ……)

どれほどの時が経ったか、涙も枯れ、虚無感に包まれていた私はこれが現実では無いことを思い出した

リサ(これが夢で良かった……)

リサ(もしののっちが居なくなったら…… そんなこと考えたことも無かった……)

子どもの頃からずっと一緒で、側に居て当たり前 そんな彼女が居なくなるなんてこと……

リサ(……)

でも、もし彼女との別れがこんな風に訪れたら……

リサ(私は…… きっと一人じゃ生きられない……)

そんなことを考えているといつの間にか私は病院では無い場所、よく見知った幼なじみの部屋に居た

ここが彼女の部屋であることを裏付けるようにこのののっちが部屋の隅で小さく座っている

彼女の体は痩せ細り、その表情は暗く重いものとなっていた

のの『リサっぺ…… 何で死んじゃったの……』

リサ(これはさっきの夢の続き、『私』が死んだ後…… ?)

どうやらこの夢はまだまだ覚めないらしい

のの『リサっぺが居ないと楽しく無いよ……』

のの『リサっぺが居たから何をしても楽しかった、リサっぺが居たから何があっても頑張れた』

リサ(ののっち……)

のの『リサっぺが居たから……』

のの『うぅ…… リサっぺ……』

のの『リサっぺが居てくれないと何したらいいかわかんないよー!』

リサ「ののっち!」

私は思わず彼女の側へ駆け寄り、その手を握、ることは出来なかった

リサ「ののっち! ののっち!」

私の手は彼女の手に触れられず、私の彼女を呼ぶ声は伝わらない

のの『リサっぺ……』

リサ「ののっち!」

リサ(こんなにもすぐ近くに居るのに、こんなにもお互いを思ってるはずなのに、何で!? 何で私の声はののっちに届かないの!)

リサ「ののっち!」

彼女の名を呼ぶのは何度目か、私の目の前から彼女の姿が消え、代わりに『私』が居た

『私』の見た目はののっちと同じように衰弱し、生気を感じないものとなっていた

リサ(これが残された『私』……)

リサ『……』

リサ『ののっち……』

リサ『そっちは大丈夫かな、ののっちは元気過ぎるから私が居ないと……』

リサ『それに…… 私だって……』

リサ(……)

リサ(ののっちが居ない人生なんて私にはダメなんだ)

リサ『ねぇ、私どうしたらいいの? 教えてよののっち……』

リサ『ののっちが引っ張ってくれないと私何も出来ないよ……』

リサ『ののっち…… どこに居るの?』

リサ『私が居ないとののっち困るでしょ? 独りで生きるなんて考えられないよね!?』

リサ(そう、ののっちには私が必要なのよ!)

リサ『だから私…… 私もののっちと同じように…… ののっちと一緒に…… !』

リサ(それしか無い! 私たちはお互いがお互いを必要としてるんだから!)

リサ『そうだよね…… こうすればののっちとまた会えるよね……』

リサ(やっぱり私たちはずっと一緒に居ないと…… そうだよ……)

リサ(ののっちもそう思ってるはずだから!)

気付くと私の周りの景色は変わっていた

リサ(今度は…… ライブ会場……?)

そこはテレビでしか見たことの無いような大きな、大きなライブ会場で

その真ん中、ステージに彼女は居た

のの『みんなー! わたしの声聞こえてるー?』

リサ(ののっち……?)

見間違えるなんてあり得ない、間違いなく私の幼なじみ 大地ののがそこに居た

少し大人になったようで背は伸び体つきも女性らしくなって居たが、問題はそんなところでは無い

リサ「何で…… 何でそんなに笑ってるの……?」

ののっちの表情は今まで見てきた物とは違う、心からの笑顔だった

リサ(ののっちには私が必要なんだよね!? なのに何でそうやって生きていられるの? 笑っていられるの!?)

のの『ライブを始める前に一つ、聞いて欲しいことがあるんだ』

ステージの上の彼女は私の動揺をよそに語り始めた

のの『わたしには大切は幼なじみが居てね、名前は白樺リサ……リサっぺって言うの』

のの『子どもの頃からずっと一緒で、ずっとずっと、永遠に一緒だと思っていた、けど……』

のの『今リサっぺは天国に居ます……』

違う…… そうじゃない……

リサ「ののっち! 私はここに居るよ! 私の姿が見えないの!? 私の声が聞こえないの!?」

のの『リサっぺが居なくなって、どうしたらいいか分からなくなったときもあった』

やはり私の声は『向こう側』の彼女には届かないようだった、それでも私は叫ばずにはいられなかった

のの『でもね、そんな時思ったの……リサっぺの分まで生きなくちゃ って』

のの『リサっぺはきっとまだまだやりたいこといっぱいあったと思う、だからリサっぺの分までわたしは生きる』

のの『きっとリサっぺもそうして欲しいんじゃないかって思うから……』

そう言うと彼女は上を見て『私』へ語りかける

のの『そうだよね、リサっぺ?』

違う…… そうじゃない……

リサ「私はそんなこと望んでない!」

リサ「私にはののっちが隣に居ないなんて…… そんなのダメだから……」

のの『よーし、わたしの声 天国に居るリサっぺまで届かせるよ!』

リサ「私はののっちとはずっと、ずっと一緒に居たい! だから…… だから…… !」


リサ「私が死んだら、ののっちにも死んで欲しかった!」

リサ「あっ! えと、違うの……」

私が叫んだ瞬間、ののっちは私の前から消えてしまった

まるで私の言ったことが本当になったように

『ののっちにも死んで欲しかった』

何でこんなこと言っちゃったんだろう……

私はずっと彼女と一緒だったから、一人で居るなんて考えられなかった

それなら私も死ねば一緒になれるって思って、きっと彼女も同じことを思っているはず、なのに……

リサ(ののっちには…… 私は必要無いの?)

リサ(私は、私にはののっちが必要だよ……)

リサ(ののっちが居なくなったら私は死んじゃうよ……)

気が付くとまた私の周りの景色は変わっていて、今度は誰かの部屋のようだ

カーテンが閉じられ、一切の明かりは消され、部屋の隅には一人の女性、いや『私』が座っていた

リサ(これがののっちの居なくなった未来の『私』……?)

『私』は髪が長く、四肢は細く、肌は病的に白くて……ってそうじゃなくて

リサ「何で、何で『私』が生きているの!?」

リサ「一人で生きるなんて私には無理でしょう? だから」

リサ『自殺する、ってそう思った?』

リサ「えっ!?」

『私』は気味の悪い笑顔を浮かべ、私に問い掛けてきた

リサ「そうよ! 死ねばののっちと一緒に居られるでしょ!?」

リサ『本当に、そんなこと、思っているの?』

リサ「え……?」

リサ『死んだら、それで終わりでしょ? 死後の世界とか、天国とか、あるわけ無いじゃない』

リサ「っ……」

リサ『そういうことを、本気で信じていられるほど、子どもじゃないの』

リサ「…… でも、ののっちが居ない生活なんてあり得ない! 楽しくない!」

リサ『そうね、だけど死ぬのは、恐いの』

リサ「恐いって…… そんな……」

リサ『ののっちが居なくなって、私の人生には、何も無くなった、でも死んだからって、ののっちに、会えるわけじゃない』

リサ『だから私は、自分の中に、残っている、ののっちを、ひたすら思い返しているの』

リサ『でも、それも終わりが、近づいてる』

リサ『段々、ののっちのことが、思い出せなくなってきた』

リサ『ののっちが、何が好きだったか、ののっちが、どうやって笑っていたか、ののっちは、私にどうして欲しいのか』

リサ「違う…… そんなの私じゃない!」

リサ『そうかな』

リサ「あなたは私じゃない! 私はののっちを忘れたりしない!」

リサ『いいえ、私は間違いなく、白樺リサよ』

リサ「違う! あなたは私じゃない!」

リサ『貴女も、ののっちを失えば、きっとこうなるわ、人は忘れるし、忘れられるから』

リサ『きっと、ののっちだって、私が死んだら、私のことを忘れていくわ』

リサ「うるさい! 黙って!」

リサ『どうしても、私のことが、信じられないなら、試してみればいい』

リサ『ののっちを、失えばいい』

リサ『ののっちを、殺してみればいい』

リサ「うるさい! 黙って!」

私が叫ぶと、また周りの景色が変わった

今度はスターライトの、私とののっちの部屋

のの「あー! リサっぺやっと起きたー!」

あれ、この感じ……

リサ「夢……覚めた……?」

のの「リサっぺ~ 早く準備しないと遅刻しちゃうよ~」

私の目の前には『いつもの』幼なじみの姿があった

リサ「えっと…… ののっち、私にビンタしてみて」

のの「え、どうしたの?」

リサ「いいから、やってみて」

彼女は私のお願いに少し困惑しつつも私に向けて手をあげる

のの「えーっと…… えいっ!」

リサ「いたっ!」

彼女のビンタは思ったより強烈であった……

のの「り、リサっぺ大丈夫!? 思いきりやりすぎた?」

リサ「ううん、大丈夫……」

じりじり痛む頬がここが現実であり、さっきまで見ていたものが夢であることを私に教えていた

リサ(なんだったんだろう…… さっきの夢……)

ベッドから起きた私はさっきの夢を思い返す

リサ(もしののっちが死んだら、私は……)

のの「リサっぺ? 体調悪いの? 今日は学校休もっか?」

リサ「あ、うん大丈夫 それとののっちは先に行ってて、このままじゃののっちまで遅刻しちゃうでしょ?」

のの「ほんとに大丈夫? 無理しなくてもいいんだよ?」

リサ「うん大丈夫だよ、それよりののっちこそ忘れ物とかしないようにね」

のの「うん…… じゃあわたし先に行くね」

リサ「あっ、ちょっと待って」

のの「え?」

立ち上がりドアへ向かう彼女を呼び止め、私は一つ問いかける

リサ「もし、もしさ…… 私が死んじゃったらののっちはどうする…… ?」

のの「え…… ?」

のの「なんでそんなこと言うの!」

リサ「ののっち…… ?」

のの「やっぱり今日のリサっぺおかしいよ!」

リサ「ご、ごめん……」

のの「もう……」

そう言うとののっちは私を抱き寄せて耳元で優しく囁いてくれた

のの「リサっぺ、わたし達ずっと一緒だよ? だからどっちかが死ぬなんてこと考えないようにしよう?」

そっか…… そうだよね……

リサ「うん…… ごめんねののっち……」

のの「落ち着いた?」

リサ「…… うん」

のの「じゃあ今日はリサっぺは休んでていいよ、わたしがリサっぺは休みだって伝えてくる」

リサ「ううん、私も行くよ『ずっと一緒』なんでしょ?」

のの「あ、そっか」

リサ「すぐに準備するから寮の前で待ってて」

のの「うん! 待ってるね!」

さっきまで私が見ていたのはただの夢、現実には何も関係無い

本当に私が死んだとして、彼女がどうするかなんて私にはわからない

でもあの夢は私に一つ教えてくれたことがある、私と彼女は違うということ

私と彼女は別の人間だから、同じことを考えて、同じように生き、同じように死ぬなんてあり得ない

ドアに手をかけ部屋を出ようとしている幼なじみの姿、その背中を私は昨日とは違う目で見ていた


おしまい

読んでくれた方ありがとうございます。意見感想要望などご自由にどうぞ

今日は6:30からテレビ東京系列にてテレビアニメ「アイカツ!」放送です。是非ご覧ください。

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