青年「その日、世界中で能力者による革命が起きた」(80)

西暦2xxx年。
人間に超能力を発現させる特殊アンプルが何者かによって散布された。

混沌の霧は瞬く間に世界中に広がり――

世界中で革命が起こった。暴力が支配する世界。

今までの管理社会が1日で崩壊するなんて……

僕も、世界の誰一人だって気付かなかっただろう…。

青年「…………」ダラ…

汗が止まらない。

監守「244番! 休むな!」ビシッ

監守の鞭が僕の近くの砂地をえぐる。

青年「……」ズズ…

…一体どれくらいの間、僕はこのコンテナ群を手押しで運んでいるのだろう。

とてつもなく重い。
コンテナではなく、鉄の塊かと思うほど。

見渡せば、同じ様な人間達が沢山いる。

ここは力の強い能力者達が統べる人間収容所だ。

力の弱い能力者や、そもそも能力が発現しなかった人間が奴隷として働かされている。

青年「……」ググッ

僕は、そのどちらでもない……

能力を失ってしまった人間だ。

コンテナ運びを夜まで続け、僕達奴隷はやっと解放された。

食事は日に一回。
使役され、汗を流した後の十数分で済ませる。

その後は就寝。
明朝起きだし、また奴隷として働く。

この収容所でのサイクルはそんな感じだ。

そして僕も寝床に戻った。

青年「……ふぅ」

やっと一息つける。

ボサボサな男「…監守の前で溜め息なんぞつきゃ、鞭打ちだぞ」

青年「……」

僕の心情を代弁した髪などがボサボサな男は、僕のルームメイトだ。

ボサボサな男「……」

青年(……相変わらず、寝つきが早いな)

僕も寝よう。そうして少しでも疲れをとりたい。

~~~

「お前は、そっちから逃げてくれ」

……明晰夢だ、何度も見る夢だから。

僕は仲間達から外れて逃げ出す。ばか正直に。

「捕らえろ!!」



「…ごめんなさい。仲間の命と引き換えなの」

二度目に裏切られたのは、レジスタンスの女性にだ。

僕はかつて、それなりの能力者で、"強い能力者"にあらがう"弱い能力者"に味方していた。



捕まった僕を連れて逃げてくれたあの少女…

「二手に別れましょう! あなたはそっちへ!」

彼女と再会する事は無かった。
落ち合う場所、そこで何日も待った。

彼女は無事逃げ切れたのだろうか。
会いたい、その気持ちが僕を生かしている。

「――少女っ!」

眩しい。

青年「……もう朝か」

世界で革命が起きてから数年。

僕は荒廃した砂漠にいる。

いつかあの少女と再会する日を夢見ている。

しかし仲間に裏切られたショックで能力を失ってしまった僕には、脱獄するすべはない。

彼女の事を考えながら何日を過ごしただろう……

好機は訪れた。

低級だが能力を持つ囚人達による一斉反逆。

その日は朝から騒がしかった。

青年「…………」

阿鼻叫喚だ。
全ての囚人が騒ぎに乗じて逃げ出す。

青年「僕も、逃げよう」

今しか脱獄の機会は無い。

「244番ん……!」

青年「……」

廊下の角で鉢合わせる。

監守「貴様ァ……脱獄するつもりか……」

青年「退けば殺さない」

監守「……無能力者がぁ!!」ガァンッ

青年「……!」

警棒で鉄パイプがひしゃげる。

この監守の能力は、確か物体の強度の増強…

今やあの木の棒は鉄より硬い物質だ。
何回も当てられれば死ぬ。

青年(対して僕は……)

武器になるような物など何も持っていない…

監守「そらそらそらぁ!」ブンブン

青年(強化系は、単純な強化だけでなく、何か不思議な力も宿す……)

監守が反動もなく壁を警棒で抉れているのはそのせいだ。

青年(……厄介な)

「ぎゃああああ!」

後ろで悲鳴が起こる。
続いて冷気が僕に伝わった。

青年(……確か、大気から氷を生成する監守がいたか)

時間も無くなった。
後ろにいる他の脱獄囚達が制圧されれば今度は僕の番。

監守「おらぁ!」ブン!

いつまでも目の前の相手をいなす事はできるが、ニ対一では勝機が無い。

青年(…それしかないか)

僕は氷を作る能力者が居るほうへ飛び出した。

青年「…!」

凍り付けの同胞を蹴飛ばす。
そして生じた氷の断片を掴んだ。

青年「っ!」

間髪いれずに氷を強化能力者の監守に投げつける。

監守「!? がああっ!」

氷は監守の目を穿った。

青年「せいっ!」

僕は監守の警棒を握る手を蹴りあげる。

監守の手が跳ね上がり、僕は警棒を奪った。

青年「…」ブンッ!

振るった警棒は監守の首を砕いた。
その場から全速力で逃げる、目指すは監獄の裏手だ…

青年(誰もいないのか……?)

やけにあっさりと、僕は監獄を抜け出した。その間も駆ける足は止めない。

脱獄は三度目だ、慣れたものだった。

身を隠す障害物も辺りには無かったので、僕は全力で監獄から遠ざかった。

~~~

数日後

とある盆地にある町の酒場に青年はいた。

店主「よぉ、兄さん。何飲む?」

青年「度数低めのをくれ」

店主「あいよっ」

少しして出てきた酒を、青年は一気にあおった。

青年「っ……はー…」コトン

店主「良いのみっぷりだ」

青年「……しばらく酒はご無沙汰だったもんでね。……次はもうちょっと強いやつ、頼めるかい」

あてがあるわけではなかった。

あの少女を探すと言っても、今やどこへいるのか分かりゃしない。

となればまず、欲を満たす事にした。
僕は刺激を欲した。
で、酒だ。

これぐらいしか娯楽は無い、それに関しては古代に戻ったと言えるだろう。

青年「……」グイッ

店主「どんどん飲みな!」

適当な宿を取り、休む事にした。

固い石のベッドでは無い、白いシーツがそこにあった。

青年「はぁぁ……」

少し眠ろう……。

~~~

「動くなよ?」

目だけ開けて確認すると、部屋の暗がりから手だけを僕にかざした女が睨み付けてきていた。

青年「…………」

黙って、抵抗の意志が無いことを伝える。

女「あんた、南の砂漠の方からきたんだって?」

青年「ああ」

女「あっちには帝国の収容所しかない……、あんた、収容所の人間か」

青年「…一応そうだったな」

女はかざした手も忘れて僕の胸ぐらをつかみあげた。

女「言えッ! あの収容所の情報を! 言わなきゃあんたは今すぐ消し炭さ!」

女の手から熱気が伝わる。

発火能力者か。

超抜眠いからお昼寝します…

青年「……言えるとしても、奴隷が働かされていた場所の構造だけだ。なんせ僕はそこの囚人だったんだからな」

女「囚人? 馬鹿言え!」

女「低級能力者や無能力者が脱獄できるもんか! レジスタンスによる囚人解放なんて、行われていない!」

女は手に力を込め、僕の首が絞まった。

青年「本当、だ。…囚人の中に、数人中級レベルの…能力者が紛れていたんだ……そいつらが反旗を翻したんだ」

青年「そして僕は……その騒ぎに乗じて脱獄した」

女「嘘をつくなっ! そんな作戦は行われていない!!」

青年「…………」

女の発言に合点がいく。

青年(……奴隷解放運動をしてる、レジスタンスの一味か。この女……)

強力な能力を持つ者達が造り上げた"帝国"という征服国家。

世界に一つしかない国に反逆しているのがレジスタンス。
こちらは各地に多数存在する。

青年(僕もレジスタンスに属していたことがあるから分かる……レジスタンスは作戦通りにしか動かない)

強い能力を相手にするには数の結束が不可欠だからだ。

女「答えろ! さもなくば…!」

今度こそ女の手に炎が灯った。

「おぉい! うるせぇぞぉ!!」

青年「…体格の良い宿の主人が乗り込んできますよ」

女「…チッ! 憶えてろっ!」バッ

青年(窓が開いていたのか……)ヤレヤレ

まだ夜中だった。

青年(寝よう)

明日にはこの町を出なければ。
脱獄犯の身、できるだけ遠くへ行っておきたい。

~~~

青年「砂漠に続いて、山か」

僕が少女と別れた地域に行くには山を越えるしか道が無かった。

青年「……行こう」

幸い歩く道はあった。
崖を登る必要は無い。



木々に囲まれた緩やかな斜面を登っていると、

青年「…」

素早い何かが僕を射ろうと横を駆け抜けた。

僕は素早く木の後ろに身を隠す。

青年「…」ジリ…

ヒュン!

青年「…」

青年(弓矢かと思ったけど、違う。……能力か?)

見えない死の果たし状は今も僕を狙っている。

青年「……埒があかないな」

僕は足下に落ちていた石ころを何かが飛んできた方向へ投げつけた。

矢のような物はそれに反応した。
しかし石には当たらなかった。

青年(自動迎撃系統……? 目には映らない…風か? …やり合った事の無いタイプだ)

とてつもなく不利だ……この状況。
打破するにはどうしたら……。

ドスッ

青年「!」

少し身をよじった所に不可視の矢が突き刺さる。
相手が位置を変え、回り込んできている…

青年(場所をかえざるをえない……)

案の定。
木の影から出た途端に矢の雨が僕を襲った。

青年(能力の発動に際限が無いのか!? デタラメな奴め!!)

上級能力者…以上だ。

簡単に定義すると、上級能力者とは一時代前の戦車と同じ位の戦力だ。

青年「……っ!」ゴロゴロ

なんとか無傷でやや大きめの岩影に転がり込めた。

青年「……」

青年(いつまでも逃げ回ってる訳にはいかない……)

青年(……敵の能力が見た通りなら、連射速度は一秒あたりにニ発。……分散は難しいか……?)

青年(近付ければ……。! そうだ……!)チラリ

僕は腰に吊った警棒に手を伸ばした。

青年「せー…」グッ…

青年「のっ!」バッ!

十数個の石ころを投げ飛ばす。同時に走りだし、服の収納袋に落とした石ころを掴む。

幾つもの矢が石ころだけを穿っていく。

青年(自動迎撃系の弱点は、近くの物から攻撃する事だ!)

そして矢が飛来した方向から敵の位置を推察する。

石を更に投てき。

青年(これだけ距離がつまれば!)

警棒を投げつける。
矢が警棒に殺到した。

僕は敵の姿を確認する。

飛び掛かり、組み伏せて、叩き殺そうと腕を振り上げ――

青年「!?!?」

金髪に碧眼…

青年(少女!? いや、長い耳にストレートの長髪だ、彼女ではない…)

一瞬の隙が敗北を招いた。

矢が僕を襲った。

青年「…………」パチ

焚き火の音がする。
暖かいく、五感がハッキリしている。

死んだわけではないようだ。

青年「……」キョロ

青年(洞穴の中……?)

外には木々が見える。

青年「どこだ、ここは……」
「私の住みかです」

僕は声がした方に意識を向けた。

金髪碧眼の女性がそこにいた。

青年(いや…)

僕は自分の感覚を否定する。
よく見れば、長身なだけで顔つきは幼い。まだ少女という年頃だろう。おそらくは僕より歳が2、3下か。

青年「住みかだって?」

返答質問してみる。

「えぇ、町より安心して暮らせますから」

青年「……僕は君の能力に射たれたはずじゃないのか」

「私は、敵意の無い者は傷つけられませんから」

青年(…弱点を明かしたのか?)

しかし、僕は彼女を殺そうと飛び掛かったはずだ。

「しかし、力の波動を受けてあなたは気絶したようです。しばらくは、安静に」

青年「…………」

日が落ちて、焚き火の光だけが視界を保つ光源だ。

それも厚い蚊帳のような物に覆われて、弱いが。

「どうぞ、お腹にたまるものではありませんが」

金髪の彼女が僕に差し出したのは木の器に入ったスープだった。

青年「ありがとう」

僕はそれを受け取り、量は少しだけ、長く口に含む。

「毒なんて入れてませんよ」

青年「…失礼」

僕は香草が浮かんだスープを掻っ込んだ。

思えば数日ろくに食べていない。
質素なスープが身に染みた。

青年「…………」

「おかわり……よろしければどうぞ」

遠慮無く食らった。

青年「どうして見ず知らずの男にここまでよくするんだ?」

食事が終わった後、一番気になっている事を訊ねてみた。

「目を覚ましたら去っていただいてもよろしかったのですが、酷く疲弊しているようでしたので」

僕は自分の頬をさすった。

金髪の彼女は首をふる。

「私達の種族は、人の健康状態が多少分かるのですよ」

青年「種族?」

「…このように、耳が長くなり、能力者として特化した体になってしまったので。もう人ではありませんよ」

青年「……能力発現の弊害か」

「……」コク

青年「君とは違う、他の種を見たことがあるよ……。これを引き起こした連中は、いったい何を考えていたんだろうな……」

翌日

青年「…それじゃあ、世話になったな」

「旅のアテはあるんですか?」

青年「まぁな。人を探してるんだ」

「……」

青年「元気で」

「はい」

山を登る。後ろで手を振る少女から教えて貰った道で、多少は山越えが楽になりそうだ。

山をおりれば、すぐ因縁の土地に着く。

いったん終了。

数日後…

青年「……戻ってきた」

町の様子はさほど変わっていなかった。
まずは、あそこに行って彼女の事を聞いて回ろう。

ひょっとしたら、僕より後に町にたどり着き、今はどこかで安寧に暮らしているかもしれない。

それが一番いい。僕の求めている答えだ。

町に入る。

顔は知られていない。突然捕まることはないだろう。

それにこの町は中立だったはずだ。帝国にもレジスタンスにも属さない…

まずは、酒場に行ってみる。これからいっぱい喋るんだから、喉を潤しておきたい。

青年「……この店で中級の酒をください」

旅人であるサインだ。
酒の代金に上乗せして貨幣を渡す。

マスター「…探しもんかい?」

僕は随分前に別れた少女の容姿を伝える。

マスター「……さぁねぇ。俺は聞いたことがないな。客に聞いてごらんよ」

青年「…………」スッ…

僕は酒場をまわった。

彼女の情報は無かった。

客「……そういや、聞いたことがあるぞ」

最後の最後で、一人の客がそう言った。

青年「それはいったい…?」

客「あぁ……なんだったかな」

僕は内心舌打ちを鳴らし、客の男に酒を追加させる。

こんなことをしてる時間だって惜しいのに!

客「へっへ。…それで話だったかな」

客「随分前……あんたがその子と別れたぐらいの時期に、帝国の男がこの酒場にきてな」

客「…随分ご機嫌な様子だったよ」

客「新しいオモチャを手に入れた様子でな」

僕は酒場を飛び出した。

青年「そんな……」

君はあの時帝国に捕まっていたというのか?

ならば今は監獄か。

僕はこの地域の監獄……かつて自身が収容されていた、彼女が助けだしてくれた場所へと急いだ。

青年「嘘だ…」

確かめなければ…

青年「きっと別人なんだ」

そうであって欲しい。

監獄は鬱蒼とした森の中にある。

守りにも向いているが、潜入されやすい欠点もある。

僕は何日も走って、ようやく監獄にたどり着いた。

あせってはいけない。本当に彼女がここに収容されているのだとしたら、能力者と一戦交えるかもしれない。

少しの休憩をとる。

青年「……行くぞ」

自分に言い聞かせ、僕は敵の巣穴に踊りこんだ。

~~~

青年(やはり、警備は隙だらけだな……)

能力者といっても、軍人などではない。

それぞれが奔放に辺りを巡回しているだけだ。

数人仕留めてもいいが、今は武器など必殺の一撃を加える手段がないので諦める。

青年(……どこにいるんだ)

僕は敵の監獄に潜入し、目を引く豪華な部屋に入り込んだ。

誰もいない。

青年(くそっ……やはり収容施設の方か。……?)

と、そこで。
ベッドの上にしばりつけられた黒人娘を見つけた。
この子も囚人だろうか…

娘は叫んだ。

「あなた! 来てくれたの?」

ゾクッ…

とてつもない悪寒が僕の背筋をなぜた。

僕にはこんな、丸顔の黒人娘の知り合いはいない…

勘はすでに悟っている。

青年「し、少女……?」

理性が否定する。
そんな馬鹿な。

彼女は卵形の顔をしていたし、薔薇色の肌だった。

それに二重で勝ち気なグリーンの瞳を持っているんだ!

髪だって輝く長い金髪だ。

しかしそれは、確かに僕のさがしていた少女だった。

顔と肌はボコボコに殴られ腫れて黒ずんでいて、片目は潰れている。
右膝は逆方向に曲がっており、歯も一本も残って無い。
髪も短く、ほとんどない。

「…ごめんね、青年。分からない? そうよね、私ここに連れて来られてから一度もお風呂に入ってないし、汚くて分からないわよね」

「あれからね、私ずっと何度もあいつらに抱かれたわ。でもね、その相手をあなただと思うことにしたの。

だってあなたなら殴られても何をされても嫌じゃない、耐えられるから。許してくれる?

私、鏡すら見てないのよ、前に一度、思い切り抵抗した時殴られて以来、目もよく見えなくて……

ねぇ、私醜くなった?」

青年「…いや、君は綺麗なままだよ」

僕は朦朧としたまま、少女を抱き寄せた。

青年「…………」

「捜し物は、見つかったかなぁ?」

青年「……」

扉にいるのは酒場にいた客だ。

「俺様の監獄へようこそ。先日奴隷が一匹死んだところだ、ちょうどいい」

青年「この子に……酷い事をしたな」

「アァ?」

青年「許さない」

僕は無造作に左腕を伸ばした。

「能力者の真似かぁ?」ゲラゲラ

キュ…

~~~

青年「行こう、少女。もうこんな場所にいる事はないよ」

少女「…」

青年「少女?」

少女「…」

青年「…………そんな……」

アイツダ! ニガスナ!

青年「……待ってて」ソッ…

青年「邪魔な連中を片付くてくるからさ」



青年「……少し、てこずったかな」ドクドク

青年「力が戻ったとはいえ……十人以上の能力者を相手にするのは、…無茶だったね……」

青年「……でも、これでまた、君を迎えにいけるね」フラフラ

青年「待ってて、今度は間に合わせるよ……。そしたら、君を……」バタッ

青年「…」

青年「…」

青年「…」

ボサボサな男「…ここか、騒ぎがあった監獄というのは」

ボサボサな男「施設が大破しておる。……いったいどんな能力者が暴れたのだ」

ボサボサな男「…ん?」

青年・少女

ボサボサな男「……」ザッ

女「リーダー! 収容されてた仲間は全員助けだしたよ! ってなんだぁ? その汚いの……」

女「って! こいつ!」

ボサボサな男「知り合いか?」

女「リーダーと同じ監獄に収容されてた囚人でさ。この前隣町で会ったんだ」

ボサボサな男「……」ス…

女「ちょっ! 汚いよリーダー!!」

ボサボサな男「墓を掘れ」

女「へっ?」

ボサボサな男「二度は言わんぞ」

女「は、はいっ!」スタタッ

ボサボサな男「……」

ボサボサな男「…同室のよしみだ」

ボサボサな男「捜し人は、見つかったようだな……」

ボサボサな男「……」

~~~

青年「……? ここは?」

僕は花畑に囲まれた小さな家の、庭先にいた。

青年「いったい…?」

少女「青年っ!」

青年「少女!! どうしたんだい、…傷は…」

少女「傷? 何言ってるの? それよりこっちにきて! 綺麗な薔薇を見つけたの!」

僕は少女に腕をひかれるまま、歩きだした。

青年「……すべてが夢のような、素敵な場所だ……」

少女は首をかしげる。

少女「それならもう、目を覚まさなくてもいいのよ? ずっと。私とここにいましょう?」

青年「ずっと?」

少女「ずっと!」

~~~

女「……こいつ、身体中ボロボロなのに、嬉しそうな顔してるよ」

ボサボサな男「夢でもみているのだろう」

女「…夢?」

ボサボサな男「あぁ。能力者は、死んだ時、一番望んだ夢の中で死ねるらしい」

女「誰が確かめたのさ、そんな事」

ボサボサな男「誰も。だが、…顔を見りゃ分かるさ」

おわり。

ssだしこんなもんだろ……と思ったんだけど。

暇なので続き書きます。

「…………」ジャコッ

敵の数は四人か。

対してこっちの残弾は四十発前後…

「いけるか……?」

いや、やるんだ。
でないと今日の飯は無い。

あらくれ「野郎、どこにいきやがった」

カウボーイハット「……」

モヒカン「……さっきはこっちの方へ行ったと思ったんだが」

スキンヘッド「むぅ…」

大の男四人は、ある廃墟ビルの中で消えた人をさがしていた。

消えた人とは、彼らからこの場所を奪いに来た使途である。

誰かがこの廃墟を欲しがっているらしい。

場所は少し離れて…

「……こっから行くか」

散弾銃を携えた少年が言った。
狙う先はあの四人組だ。

キュイーン!

彼の背中から一筋の光が延びる。

「無能力者もそれなりに戦う方法はあるんだよ」チャキッ

カウハット「!!」バッ

四人の中で一番に反応したのはカウボーイハットを被った男。

キューン…

カウハットの男が放った光の線……レーザーは少年を貫く筈だったが、少年の体にあたると何かに遮られるようにして弾かれた。

「…………」
(効いたか……なんせ飯代まで注ぎ込んだんだからな)

焦げた少年のマントの下からは、光る何かが覗いていた。

バンッ!

カウハットの男の頭が吹っ飛ぶ。

「……」ジャコッ

狙いを定める必要は無い。散弾の射程内だ。

「おやすみ――」

~~~

「三発で仕留められたか…」

少年は、ある大都市のスラムに暮らしている。

その都市は帝国よりの中立で、厄介事を民間に押し付ける機関なんかがある。

少年はそこから依頼を受けたわけだ。

内容はあの四人組のいたビルを手に入れろという簡潔なもの。

これで完遂だ。
あとは帰って飯食って寝るだけ。

「なんせ……すげぇ大金だもんなぁ…!」スキップスキップ



「はいよ、坊主」

坊主「おう!」

少年……坊主は、雇い主から金を受け取った。
坊主というのは本名ではないが、彼の通称だ。

坊主「これで肉食って銃の手入れして~」バタン

浮かれながら部屋をでていった坊主から視線を外して、雇い主は半ば呆れた。

「この依頼、無能力者がクリアできる依頼じゃないんだがなぁ……」

坊主「どんどん持ってこい!」ガツガツ

行きつけの料理店で空腹を満たす。

金は尽きない。

坊主「おっちゃん! この部品くれ!」

銃を整備する。古くなっていた機構をそっくり取りかえる。

坊主「はぁ…」ウットリ

その散弾銃は坊主が幼少の頃から助けられてきた愛銃だ。

これまで何度も危機を救ってくれた相棒だ、思い入れも深い。

坊主「ぐぁー! ごぉー!」

隣人「……」

満足したら、坊主は眠りについた。

しばらくは仕事をしなくても済む。
坊主は怠惰を貪るつもりだった。

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