ダージリン「そ、それは、それは名言格言を一切言ってはいけないということかしら?」
オレンジペコ「はい」
ダージリン「そんな。禁止されるほど言っていないはず」
アッサム「私の統計によると、ダージリン様が一日にお話になる時間は平均3,5時間。そのうちの約2.5時間が格言名言の含まれる会話でした」
ルクリリ「調べたアッサム様も大概ですよね」
オレンジペコ「そうでなくても、練習試合とか親善試合のたびに相手の隊長や副隊長がぽかんとしているじゃないですか」
ダージリン「あら。激励のつもりだったのだけれど」
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オレンジペコ「とにかく、たった今から、一般的なレベルにまで名言、格言、ことわざ、故事成語の類は一切禁止です」
ダージリン「そんな……自分に打ち勝つことは勝利のうちで最大のものであるともいうけれど」
アッサム「プラトン、アウトです」
ダージリン「コップを唇に持っていく間隔までには多くの失敗があるというけれど」
アッサム「イギリスの諺。2アウト」
ダージリン「え?」
オレンジペコ「3アウトで、ダージリン様のお紅茶の抽出時間が10秒ずつ短くなります」
ダージリン「そんな?!」
アッサム「とりあえず1時間堪えてみましょう。あと58分です」
ダージリン「まあ、1時間程度なら……人は自分が幸福であるだけでは満足しない。他人が不幸でなければ気がすまないのね……」
アッサム「ルナール。3アウト」
ダージリン「あ」
オレンジペコ「3分50秒です」
ダージリン「ま、まってオレンジペコ。その10秒がいかに大切な10秒であるか」
オレンジペコ「あと55分、頑張ってください」
ダージリン「……そんな」
55分後
アッサム「……全部で66アウト。220秒短縮」
オレンジペコ「……10秒っと」
ダージリン「……薄い」
オレンジペコ「ダージリン様、大丈夫ですか?」
ダージリン「紅茶……?の香りがする……?」
アッサム「思ったよりも効きすぎてますね」
オレンジペコ「流石に可哀想なのでは?」
アッサム「進歩とは反省の厳しさに正比例するというじゃない」
ダージリン「アッサム!?本田宗一郎ですわ?!あなたもアウトですわ!」
アッサム「あ、私は今回審判なので関係ないです。というか今日はもう終わってます」
ダージリン「卑怯ですわ……」
翌日
ルクリリ「で、今日もやってるということですか」
オレンジペコ「はい」
ダージリン「ひどいですわオレンジペコもアッサムも」ムーッ
オレンジペコ(むくれてるダージリン様もカワイイですね)
ルクリリ(何か良からぬことを考えてる気がしたけど気のせいね)
ダージリン「はぁ……どうにもならないことは、忘れることが幸福だ……あ」
アッサム「3アウト。どうしますかダージリン様、もうマイナス120秒ですわ。水ですらなくなってしまいます」
ダージリン「待って、今のはノーカウントですわ!」
アッサム「ダメです」
ルクリリ「可哀想に」
オレンジペコ「あの……根本的な解決にはならないのですが、喋るから困るのでは?」
ダージリン「え?」
オレンジペコ「雄弁は銀沈黙は金です」
ダージリン「そうか、その手がありましたわ!成功の一瞬間は、失敗の数」ムグッ
ルクリリ「いまのは」
アッサム「……セーフ」
ダージリン「やりましたわ」
チャーチルⅦの中
アッサム「しかし、戦車道の練習となるとそうはいかないのでは?」
ダージリン「……」スッスッ
オレンジペコ「……全車前進?」
ダージリン「」コクコク
アッサム「身振り手振りですか。そんな人が居たような居なかったような」
アッサム「でもこれだと私、ずっとダージリン様を見ていないといけないので、装填手が出来ません」
ダージリン「!」
アッサム「あと、これはこれで寂しいものですね」
ダージリン「はぁ……私はどうすれば。結局は全部で1204アウト。すでに紅茶じゃなくて真水が出される始末」
アッサム「1300超えたらコーヒー牛乳ですよ」
オレンジペコ「基準がよく分かりません」
ルクリリ「あの、ダージリン様。一つご提案が」
ダージリン「何?ルクリリ」
ルクリリ「思ったことを、格言に置き換えるのではなく、別の言葉に置き換えるのです」
ダージリン「具体的には?」
ルクリリ「ですから」ゴニョゴニョ
ダージリン「ええ……それしかなさそうね」
ペコ・アッサム「「?」」
翌日
アッサム「ダージリン様、なんだか静かですわね」
クランベリー「黙ってやり過ごすのでしょうか?」
『次のニュースです。先日行われた全国中学校戦車道大会の個人の部で優勝した、中学校1年生の乙狩さんのインタビューです』
『凄いですね。アレだけの劣勢から立て直すなんて』
『想像力を持って、正気を持って……でも勇敢さは持たなくてもいいんです。最善を尽くせば必ず事態は好転すると思ったので』
ダージリン「これで中学1年生ですの?マジっすか、マジパナイですわ」
アッサム「!」ブーーーーーーッ!
ルクリリ「熱っ!!!!!!熱いです!!!!」
オレンジペコ「ダッ、ダージリン様が壊れた!?」ガッシャァァァンッ
ダージリン「あら、皆どうしたの?マジウケるんですのよ」
ルクリリ「ふっふっふ。これぞ必殺ギャル語化MOD!!!」
アッサム「MODとか言うな」
ダージリン「昨日までの私とは違うってカンジ?マジ抜け目ない?」
ルクリリ「ダージリン様に格言名言縛りはもう通用しませんことよ!」
ダージリン「マジ余裕ですわ。造作も無いんですのよ」フフン
オレンジペコ「当初の目的から大分外れてる気がしないでもないですが」
ダージリン「マジこれなら負ける気がしないっす」
アッサム「くっ、ここまでなの」
オレンジペコ「アッサム様も」
??「なんですの……なんなんですの、これは!」
ダージリン「その声は」
ローズヒップ「ダージリン様!!!!どうしてそんな風になってしまわれたんですの!?」
ダージリン「あらローズヒップ、ちーっす」
ローズヒップ「ちーっすじゃないですの!!!!!!聖グロリアーナの生徒は、常に美しく優雅でなければならないと言ったのは、他ならないダージリン様ですわ!!!!」
ルクリリ「あっ」
オレンジペコ「忘れてたんですか」
ローズヒップ「ダージリン様のお言葉は私すっごくタメになってるんですの!これもダージリン様のように美しい方になるためですわ!」
ローズヒップ「誰ですの!?ダージリン様にこんな変なことをやらせたのは!クルセイダーの6ポンド砲で湘南の海にぶっ飛ばして差し上げますことよ!!!!!」
アッサム・ルクリリ「「……」」メソラシー
オレンジペコ「……確かに、名言を言わないダージリン様も、なんだか寂しいものですね」
ダージリン「オレンジペコ……」
アッサム「今回は、私が間違っていました。格言名言は会話の彩りですもの」
ダージリン「アッサム……」
ルクリリ「すいません、ダージリン様。私が出すぎた真似を」
ダージリン「いいの……いいのよ、ルクリリ。皆……ありがとう、私は何かを見失っていたようですわ。いつも優雅に、美しく、それが聖グロリアーナの戦車道隊長たる私の姿……」
アッサム「ダージリン様!私ダージリン様の格言が聞きたいですわ」
ルクリリ「美味しいスコーンがそろそろ焼き上がりますから、持ってきます!」
オレンジペコ「お紅茶入れますね。今日は美味しいアールグレイティーが手に入ったので」
ダージリン「If you are cold, tea will warm you.
If you are too heated, it will cool you.
If you are depressed, it will cheer you.
If you are excited, it will calm you.」
ローズヒップ「おほほほほ!やっぱりダージリン様はこうでないと、ですわ!」
終
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