モバP「アイドルと仮面の戦士達、の休息」 (71)

・最近のモバマス×平成ライダーのブームに便乗したSS
・割と時空がめちゃくちゃなのは乾巧って奴の仕業なので気にしない方向でお願いします
・先に言っておくと、戦闘シーンは一切ございません

SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1450069644

P「最近、アイドルのみんなが不思議な人と出会ったという話をよく聞くんです」

ちひろ「不思議な人、ですか?」

P「ええ。みんな違う人みたいなんですけど、話を聞いていたら個性的な人が多くて。不審者とかではないようなんですけど」

ちひろ「へえ……なんだか気になります。詳しく話してくれませんか?」

P「いいですよ。まずは――」

≪結城晴の場合≫


晴「あーあ、公園でひとりでボール蹴ってるのも飽きてきたなあ」ポンポン

晴「付き合ってくれそうなヤツは全員仕事だったりでいないし……」←リフティング中

晴「せめてあとひとり、誰かいればな……っと!」ポーン

晴「やばっ、上げすぎた!」

晴「とんでもない方向に――」


ポテン、コロコロ……

トンッ


男「……このボール、君の?」

晴「あ、はい。止めてくれてありがとうございます」

男「ひとりで蹴ってたのか」

晴「そうですけど」

男「へえ。じゃあさ」

トンッ

晴「うわっとと」

男「お、ナイストラップ」

男「よかったら、俺も混ぜてくれない?」

晴「え?」

男「これでも学生時代はサッカー漬けだったんだ。腕はそこそこある……いや、この場合は脚があるっていうのか?」

晴「いや、そういう問題じゃなくて……」

男「少しだけだから、な?」

晴「……しょうがないな。ほらっ」パス

男「サンキュー」

しばらくパス回しを続けて


男「いや、ホントにうまいな」

晴「へへ、まあな」

男「よし。俺も少しは本気を出そうかな……っと!」

晴「うわっ! ちょ、いきなりパスの勢い強めんなよ!」

男「ははは、ごめんごめん。でもあれくらいは止められるようにならないとな、サッカー少年」

晴「……少年?」

男「どうしたの」

晴「オレ、一応女だぜ」

男「………マジか?」

晴「マジだ」

男「………」

男「いやー、なんだ女の子だったのか。どうりで可愛らしい顔してると思った」

男「少年じゃなくてお嬢さんだったのか」ケラケラ

晴「か、かわいいって……下手なお世辞ならいらないぞ」

男「お世辞じゃないって。うん、顔立ち整ってるじゃん」

男「多分アイドルとかやってもおかしくないくらい」

晴「……あー、実はもうやってる」

男「………マジで!?」

晴「マジだ」

男「そっかそっか、本当にアイドルやってんのか。俺の見る目もなかなかのもんだな」ハハ

男「頑張ってるの? アイドルの仕事」

晴「まあな。たまに……というか、よく変な仕事を持って来られるけど」

晴「でも、楽しいからさ。トップアイドルってやつ、目指してもいいかなって思ってる」

男「……へえ、立派だな」

男「お嬢ちゃん。これからきっと、楽しいことだけじゃなくて、苦労すること、辛いことに出会う時が必ずやってくる」

男「その時も逃げ出さず、アイドルをやれるといいな」

晴「……急に真面目な話?」

男「大人からのアドバイスさ。俺は一度、夢から、辛いことから逃げて、しんどい思いをしたことがある」

男「アイドルって大変だと思うけどさ、諦めるなよ」

男「もし絶望しそうになったら、俺が君の希望になってやるから」ニコ

晴「………」

晴「アンタ……もしかして、怪しい勧誘の人だったりする?」

男「おっと、そうきたか。ははは……確かに、いきなりこんなこと言われても怪しいだけだよな」

男「そうだな……あ、そうだ。お嬢ちゃん、お腹減ってない?」

晴「え? まあ、すいてるっちゃすいてるかも」

男「そっか。それじゃ」

<コネクト、プリーズ>

男「ほいっと」ヒョイ

晴「!? な、何もないところから袋が出てきた!?」

晴「い、今のはいったい! ていうかなんだ今の変な声!?」

男「……魔法って言ったら、どうする?」

晴「ま、魔法だぁ? そんなのあるわけ……でも今の、手品にも見えなかったし……」

男「いいリアクションをありがとう。ほら、これやるよ」

男「プレーンシュガー。このドーナツが、ひとまず腹ごしらえという名の希望だ」

晴「……これ、食べられるのか?」

男「食べられるさ。現にほら、俺はこうしておいしく頬張ってるぞ」モグモグ

晴「………」ハムッ

晴「……うまい。うまいな、これ!」

男「だろ? あっちの屋台で売ってるんだ。よかったら贔屓にしてやってよ」

男「じゃ、俺はそろそろ行くから。頑張れよ、サッカーアイドル少女」

晴「あ、ああ! ありがとうな!」バイバーイ

男「この辺でサッカーやってたら、また会えるかもな」




男「あんな小さな子でも一生懸命働いてるんだな……俺もそろそろ、まともな職を見つけるか」

P「ということがあったそうです」

ちひろ「魔法って……にわかには信じがたいですね」

P「俺も手品か何かだとは思ってますよ。でも、晴にとってはかなりインパクトが強かったみたいで」

P「それ以来、法子と一緒に、その人に薦められたドーナツ屋に通ってるみたいです」



晴「Pにちひろさん! ドーナツ買ってきたから食べようぜ」

P「ね、こんな感じです」

ちひろ「なるほど。とりあえず、いただきましょうか」

だいたいこんな感じでほのぼの進行の予定です
書き溜め切れたのでひとまず中断

ちひろ「次はどの子の話をしてくれるんです?」

P「そうだな……次は茜です」

≪日野茜の場合≫


茜「えっほ! えっほ!」

茜「ああ、朝日がまぶしい! 燃えてきます!」

茜「ファイヤー!!」タッタッタッ


男「君は毎朝ここを走っているな」タッタッタッ

茜「はい?」クルッ

男「俺もたいてい同じ時間にここを走っている。すれ違う時も多いが、覚えているかな」

茜「えーと……ちょっと待ってください!」

茜「……ああっ! そういえば、毎朝あなたを見かけていたような気がします!!」

男「元気がいいな。朝から気持ちのいいことだ」

茜「はい!! 元気は私の一番のとりえなので!!!」

男「今日は一緒に走ってもいいかな」

茜「もちろんです! 朝日に向かって走りましょう!!」

男「……あまりペースを上げすぎないようにしなさい。身体に負担がかかる」

男「君は何かスポーツでもやっているのか。体力強化に余念がないようだが」

茜「ラグビーをやっています! でも今はそれ以上に、アイドル活動に耐えられるだけの身体を作りたいんです!!」

男「アイドル? 君はアイドルなのか」

茜「はい!! 日野茜です!!」

男「……聞いたことがないな」

茜「そうですか! 残念です!」

男「俺はそういった情報には詳しくない。今度、妻に聞いてみよう」

男「……つまり君は、アイドルという仕事に全力で取り組んでいるということだな」

茜「その通りです! プロデューサーと一緒に、目指すはトップアイドル!!」

男「なるほど。いい目をしている。最近の若者にはなかなか見られない、熱い闘志を持っているな」

茜「えへへ……照れます!!」

男「だが、鍛えるならより効率のいいやり方を追求すべきだ。君はしばらく、毎朝私の言う通りに走りなさい」

茜「は、はあ……それはつまり、コーチをしてくれるということですか!」

男「そういうことだ」

茜「よくわかりませんけど、ありがとうございます!!」

男「頑張りなさい、日野君」

翌朝


茜「ボンバーー!!!」ダダダダ

茜「記念すべきコーチの指導初日! 気合い入れて走ります!!」

男「待ちなさい! いきなり飛ばしすぎては脚を痛める危険がある!」

茜「燃えてきましたよー!!!」

男「止まりなさーーい!!」

男「コーチの言うことを、聞きなさーーーい!!」

茜「ファイヤーッ!!!」




ちひろ「えっと……じゃあその人、全速力の茜ちゃんにずーっとついて行ったってことですか」

P「しかもメガホン片手に叫びながらだそうです。すごい肺活量ですね」

P「結局、数日かけて茜に体力作りの独自の方法を伝授してくれたそうです」

ちひろ「ありがたいお話ですね。プロデューサーさんも、体力作りしてみます?」

P「俺は……まあ、ぼちぼち?」

茜「プロデューサー!! そういうことなら任せてください!」

P「茜!? いつからそこに」

茜「さあ、一緒に運動しましょう! まずは身体ならしに、コーチ直伝のエクササイズからです!!」

ちひろ「エクササイズ?」

茜「はい!」

茜「ミュージック、スタート!!」ラジカセポチー


茜「イクサ、サーイズ!!」

P「なんだそのネーミング」

P「ぜえぜえ」

ちひろ「イクササイズ、結構激しい運動でしたね」

P「ほんと、その通りで……」

P「えっと、次は誰の話をしようかな……」

ちひろ「大人組の方とかはどうですか?」

P「そうだな……じゃあ、俺が警察官の人に不審者と勘違いされそうになった時の話でも」

ちひろ「? それが不思議な男の人と関係あるんですか?」

P「それがあるんです。その場を助けてくれたのが早苗さんだったんですけど」

≪片桐早苗の場合≫


警官「小学校の校門前で何をしていたんだ」

P「いえ、ですからアイドルが出てくるのを待っていて」

警官「なーにー!? まさか、アイドルへのストーカーか!」

P「と、とんでもない! 私はプロデューサーで」

警官「最近不審者が街に多いんだ。不正な輩は見逃しておけない! とりあえずそこの交番まで」

早苗「はいはいストーップ!」ペチン

警官「いてっ」

P「さ、早苗さん」

早苗「おっす、P君。そしてお久しぶり、後輩君」

警官「いきなり何する……か、片桐さん!」

早苗「この人は本物のアイドルのプロデューサー。あたしもお世話になってる人よ」

警官「ほ、本当ですか!」

早苗「嘘ついてどうするのよ。私が警官やめてアイドルになったことは知ってるでしょ?」

P「一応、これが名刺になります」

警官「本物だ……こ、これは失礼しました!」

早苗「正義感が強いのはいいけど、熱くなりすぎてたまに周りが見えなくなるのは相変わらずね」

警官「気をつけてはいるんですけど……すみません」

早苗「P君も、あまり気を悪くしないであげてね。彼、根は悪いどころかめちゃくちゃいい子だから」

P「は、はあ……警官時代のお知り合いですか」

早苗「そ。同じ課で働いてたこともあるのよ」

警官「あ、そうそう。片桐さん、この前のCD買いました! いい曲でしたよね」

早苗「おー、本当かー? お世辞じゃなくて?」

警官「お、お世辞なんかじゃないですって。俺、あんまりアイドルの歌とか聞きませんけど、なんかいいなって思いました」

早苗「そっかそっかー。うん、ありがと!」

早苗「そっちはどう? 元気にやってる?」

警官「はい! 毎日警察官として平和を守ろうと努力しています!」

早苗「相変わらず気合十分ね、君は」

警官「絶対に負けたくない奴がいるんで、俺も情けない姿は見せられないんです」

早苗「それって、いつも言ってた『いけ好かない天才』のこと?」

警官「ええ。あいつ、今頃どこにいるのか……どうせ気ままに好き放題やってるんだろうなあ」

警官「とにかく、負けられない友達ですよ」

P「いけ好かないのに、友達なんですか?」

警官「ああ。ま、いろいろあったからな」

早苗「P君は薫ちゃんのお迎えに来たのよね」

P「はい。もうすぐ来ると思います」

早苗「そう。じゃああたしは、ひよりちゃんの手料理でも食べに行こうかしら」

警官「じいやさんのほうのお店も、よろしくお願いしますね」

早苗「あっちはちょーっと値が張るのがね……味はほんとに一流なんだけど」

早苗「あ、そうだ。P君、今度のライブが成功したら、ご褒美に連れて行ってくれる?」

P「えっ?」




ちひろ「それで、おごることになったんですか」

P「先日のライブは大成功でしたからね……でも、ホントに料理は絶品でした」

ちひろ「へえ。それじゃあ今度は私におごってくれます?」

P「勘弁してください」

ちひろ「ふふ、冗談ですよ♪」

ちひろ「それにしても、熱血警官さんの友達の『いけ好かない天才』って、どんな人なんでしょうね」

P「さあ。早苗さんも、その人には会ったことないらしいです」

P「彼の妹さんはかわいい子みたいですけど」

イヴ「おはようございますっ。Pさん、ちひろさん」

P「おはよう」

ちひろ「おはようございます、イヴちゃん」

P「……そうだ。確かイヴも、アイドルになる前に不思議な男の人に会ったって言ってたよな」

イヴ「あ、はい~。あれは私が、アフリカのほうでサンタとしての活動をしていた時――」

ちひろ「サンタってエリア持ち回り制なんですか?」

P「らしいですよ。毎年各サンタの勤務地が変わるって」

≪イヴ・サンタクロースの場合≫


イヴ「ふえぇ……ブリッツェン~! 脚をくじいちゃうなんて~」

ブリッツェン「すまぬ」

イヴ「どうしよう……これじゃプレゼントを子ども達に届けられないよぉ~」

ブリッツェン「すまぬ」

イヴ「ぐすん……」

旅人「どうしたの? こんなところで泣き崩れて」

イヴ「ふぇ?」

旅人「何か困っているなら、力を貸すけど」

イヴ「え、ええと……あなたは? というか、本当に手伝ってくれるんですか……?」

旅人「もちろん。旅人は助け合いでしょ」

イヴ「かくかくしかじかというわけで」

旅人「なるほど。つまり、限られた時間内に子ども達にクリスマスプレゼントを届けなくちゃいけないんだね」

イヴ「無理ですよね……」

旅人「ううん、そんなことないよ」

旅人「たとえトナカイが怪我をしてても、ちょっとのお金と明日のパンツさえあれば、なんとかなるって」

イヴ「ぱ、ぱんつ……?」

旅人「それと……今回はこのメダルかな。変身っ!」


<タカ! トラ! チーター!>


イヴ「………!??」

旅人「チーターの脚ならスピード出るし、やっぱこれだよね」

イヴ「あ、あの……ひょっとして、あなた様は神の使いでいらっしゃいますか?」

旅人「そ、そんな大層な者じゃないって! それよりほら、早くプレゼント運ばないと!」

イヴ「そうして、私と旅のお方は、なんとか夜のうちにプレゼントを配り終えることができたのでした。めでたしめでたし~♪」

ちひろ「……途中でおかしなことになってませんでしたか?」

P「さっきの魔法使いさん以上に摩訶不思議ですね。イヴの見た夢だと考えればすっきりするんですが」

イヴ「むー! 夢なんかじゃないですよぉ~。あの方は、私を救ってくれた人なんです!」

イヴ「ちょっとのお金と、明日のパンツさえあれば生きていける……あの人の言葉は、今も胸に刻み込まれているんです~♪」

P「そうか……」

P「でもイヴ。俺がお前を最初に見つけた時、お金もパンツも持ってなかったよな」

イヴ「………」



イヴ「さ、今日もお仕事頑張るぞぉ♪」

P「ごまかしたな」

ちひろ「ごまかしましたね」

ちひろ「イヴちゃん以上に謎の多い人物が出てくるとは……不思議な人は不思議な人と巡り合う運命にあるんでしょうか」

P「あ。そういう意味では、ヘレンさんからこんな話を聞きました」

P「イタリアにツアーで行った時の休憩時間のことなんですけど――」

≪ヘレンの場合≫


ヘレン「………」

男「………」

ヘレン「………」

男「………」


通行人「あいつら、ピサの斜塔をバックに何してるんだ……?」


男「……お前、名は」

ヘレン「私はヘレン。世界レベルのアイドルよ」

ヘレン「そういうあなたは?」

男「ふっ……」スッ

男「おばあちゃんが言っていた」

男「俺は天の道を往き、総てを司る男――」

ヘレン「祖母の借り物の言葉では、世界レベルに到達することはできないわ」

男「勘違いするな。確かに元はおばあちゃんの言葉だが、俺はそのことごとくを俺自身の手により進化させている」

男「故に……俺が最強であり、世界の中心だ」

ヘレン「……そう」

ヘレン「あなたもまた、世界レベルを持つ選ばれし者のようね」

男「……お前も、そのようだな」

ヘレン「………フッ」

男「フッ………」



通行人「なんか認め合うような爽やかな笑みしてるぜ」

通行人B「というか男の方はなぜ豆腐をボウルに入れているんだ」

ちひろ「すごいですね。ヘレンさんのノリに初見でついていけるなんて」

P「というか、話を聞く限りでは完全に同類ですよね」

ちひろ「世の中広いですねー」

P「まさに世界レベルですね」

P「次は……小梅と会った人の話でもしましょうか」

ちひろ「小梅ちゃんですか。怖そうな話にはなりませんよね?」

P「あはは」

ちひろ「な、ないですよね? ね?」

P「さあ、どうでしょう」

ちひろ「プロデューサーさんのいじわる……」

P「この前、小梅に取材が来たじゃないですか」

P「あの時の記者が、すごく不思議な人だったと、小梅が言っていました」

ちひろ「不思議って……まさか、記者さんが幽霊だったとかじゃないですよね」

P「あはは」

ちひろ「それさっきもやりました!」

P「安心してください。多分違います」

ちひろ「多分って……」

≪白坂小梅の場合≫


記者「えー、この度は、OREジャーナルの取材を受けていただいて、ありがとうございます!」

小梅「は、はい……」

記者「今回はですね。白坂さんの『霊感少女』としての噂の真偽を確かめたく、こちらにうかがわせてもらったんですけれども」

小梅「………」ジーーー

記者「……あの、なにか?」

小梅「……いる」

記者「いる……ま、まさか! 俺に背後霊とかついてるってこと!?」ビクウッ

記者「くっそー、どこだ。出てこいっ」

小梅「あ、あの……そうじゃ、なくて」ワタワタ

記者「はい?」

小梅「その……普通の、幽霊とは違う気がします……よく、わからないけど」

記者「普通の幽霊とは違う……それって、どういう」

小梅「私も、こういうのを見るのは初めてだから……でも、ひとつだけ」

小梅「その人は……あなたを、優しく見守ってくれています……」

記者「俺を、見守っている?」

小梅「……はい」コクコク

記者「………」

記者「どんな人か、教えてもらえますか?」

小梅「あ、はい……女の人で、髪は短くて……」

記者「へえ……」

記者「………」

記者「なんだろうな。変に鮮明なイメージが浮かぶ気がする」

記者「なーんか……懐かしいような、そうでもないような」

その後


記者「それでさ、その時編集長が――」

小梅「ふふっ……おもしろい……」

記者「だろ? それで……っと。やべ、もう時間だ」

記者「今日は本当、ありがとうございましたっ」

小梅「こ、こちらこそ……楽しかった、です」

記者「じゃあ、また会う機会があれば」

記者「ばいばーい」

小梅「ばいばい……」フリフリ


小梅「不思議な人だったね……」

小梅「………」

小梅「やっぱり、あなたもそう思う……?」





ちひろ「ちょっと待ってください。最後の小梅ちゃんは誰と話してるんですか」

P「………」

ちひろ「やっぱりホラーじゃないですか!」

P「しかし謎ですね。幽霊じゃないけど、その記者の人を見守っていた存在……うーむ」

ちひろ「つ、次の話行きましょう! はい、どうぞどうぞ」プルプル

P「かわいい」

P「そういえば、この前光が危ないところをヒーローに助けてもらったって話をしてました」

ちひろ「ヒーロー? 本物のですか?」

P「まさか」

P「風船が木のてっぺんに引っかかって泣いてる女の子がいたから、登って取ってあげようとしたらしいんですけど――」

≪南条光の場合≫


光「も、もうちょっとでとれる……!」

女の子「だ、だいじょうぶ……?」

光「平気さ、これくらい……っ!?」ズルッ

光「うわああっ!!」

女の子「おねえちゃん!」

光「(やばい、落ちる!)」


男「あぶないっ!」


ガシッ

光「んっ……あれ? 痛くない」

男「よかった、間に合って……大丈夫だった?」

光「あ、はい。大丈夫です……ありがとうございます、受け止めてくれて」

男「気にしなくていいよ……それより、あの風船を取ろうとしていたのかな」

女の子「うん……」

男「じゃあ、僕がとってあげる」

女の子「ありがとー、おねえちゃん、おにいちゃん!」タタタタッ


光「ありがとう。アタシのかわりに風船とってくれて」

男「大したことじゃないよ。僕のほうが背が高いしね」

光「でも、おかげであの子を泣かせずにすんだ。ヒーローだよ、お兄さんは」

男「ヒーロー……英雄?」

光「日本語に直すとそうだな」

男「……英雄っていうのは、もっと大きなことをしなくちゃなれないものじゃないのかな?」

光「そんなことないって! どんな小さなことでも、誰かを不幸から守ったり、幸せにしてあげられたら、それはヒーローさ!」

光「だからアタシも、ヒーロー目指して頑張ってるんだ!」

男「どんな小さなことでもヒーロー……なるほど。そういう考え方もあるんだね」

光「そう! だからお兄さんもヒーロー!」

男「はは……参ったな」

男「ねえ、君は――」


Prrrr

男「っと、電話……はい、もしもし」

男「……うん、うん。……香川教授が?」

男「わかった。すぐに戻るよ」

光「どうかしたのか?」

男「研究室に呼び出されたんだ。どうやら人手が必要らしくて」

男「じゃあね」

光「うん、じゃあ」





男「……ヒーローか」

男「もっと、気楽に生きていいのかもしれない……のかな」

男「あ、そうだ。明日は香川教授のご家族と食事だった……ちゃんとした服、用意しておかないと」

男「息子さん、僕のこと覚えてくれているかな……」

ちひろ「あんまり不思議な人って感じじゃないですね」

P「今までの人に比べると普通ですね。でも光は、なんだか雰囲気の違う人って言ってました」

ちひろ「直接見ないとわからないこともあるのかしら……」

≪涼宮星花の場合≫


P「そうですね。次は」

星花「みなさま、おはようございます」

P「星花か。おはよう」

ちひろ「おはようございます」

星花「ふふっ、今日も良い天気ですわね♪」ルンルン

P「今日はえらくご機嫌みたいだな。何かあったのか?」

星花「よくぞ聞いてくださいましたわっ!」

ちひろ「テンション高いですね」

星花「実は、わたくしには贔屓にさせていただいているバイオリン職人の方がいらっしゃいますの」

星花「バイオリンの調子がおかしくなった時などには、必ずその方のお店にうかがうのです」

P「バイオリン職人か。星花みたいなお嬢様が贔屓にするってことは、費用も腕も一流なんだろうな」

星花「それがですね……腕は間違いなく一流ですのに、あまり代金を多く要求しない方ですの」

星花「わたくしは申し訳なくなって、いつも5倍の金額を渡そうとするのですが……そうすると、あちらが両手を振って断ってしまうのですわ」

ちひろ「ご、5倍!」キラーン

P「そりゃ、いきなり予定の5倍の代金出されたらびっくりして受け取れないのもわかる」

P「それで、その人がどうしたんだ?」

星花「はっ、そうでしたわ」

星花「そのお方が、ついにバイオリンを完成させたのです♪」

ちひろ「バイオリンを?」

星花「ええ♪」

星花「あの方がずっと求めていらした『自分だけに作れるバイオリン』……わたくしも、悩んでいらしていた彼に、僭越ながら意見を述べさせていただいたことがありましたの」

星花「長い時間をかけて生まれたそれは、きっと素晴らしい名器に違いありませんわ」

星花「ああ、早くその名器が奏でる音楽を味わってみたい……♪」


ちひろ「私、星花ちゃんがライブの時以外でここまで興奮してるの、初めて見ました」

P「俺もです。よっぽど楽しみなんでしょうね」

P「さて、そろそろ最後にしましょうか」

ちひろ「トリを飾るのは……」

P「藍子です」

ちひろ「藍子ちゃんですか」

P「この前、森で撮影をしたじゃないですか。あの時、藍子が景色を写真に撮りたいって言い出して――」

≪高森藍子の場合≫


藍子「Pさん。休憩時間に、少しこのあたりの景色を撮ってもいいですか?」

P「そうだな……遠くまで行かなければ、別にかまわないぞ」

藍子「ありがとうございます。では、行ってきますね」




藍子「ここ、本当に緑が綺麗だな……」パシャッ

藍子「すー……うん。空気もおいしい」


がさがさっ


藍子「!」ビクッ

藍子「い、今……後ろの茂みが動いたような」


がさがさっ


藍子「(お、音が大きい……もしかして、大きな動物?)」

藍子「(ど、どうしよう。もし人に襲いかかるような動物だったら……)」

がさっ!
しゅばっ!


藍子「きゃああっ!?」

??「うおおっ!? なんだなんだ!?」

藍子「わ、私、食べてもおいしくないです……ほんとに、おいしくないのでっ」ビクビク

??「落ち着いて、落ち着いて。俺、猛獣じゃなくて人間」

藍子「……え?」

男「な? 人間の男だろ」

藍子「……ほ、本当。人、ですね」

男「どうやら、俺が急に出てきたから驚かせちまったみたいだな。ごめんごめん」

藍子「い、いえ! 私のほうこそ、勘違いしてしまって……」

男「――へえ。君アイドルで、ここに撮影に来てるんだ」

藍子「はい。でも、これだけ美しい自然に囲まれちゃうと、私の存在が目立たなくなっちゃうかもしれません」

男「そんなことはないだろ。君かわいいし」

藍子「かわいい、ですか」

男「なに? アイドルなら言われ慣れてるんじゃないの」

藍子「えっと、その……あ、ありがとうございます」


藍子「……ところで、あなたはなぜあんな茂みから?」

男「あー、そのこと? いや、俺今旅してる途中なんだけどさ、気分転換に散歩してたら迷っちゃって。気づいたら道がなくなってた」

藍子「それは、大変でしたね」

男「別にたいしたことないさ。俺、しぶといし」

藍子「でも……あっ」

男「ん?」

藍子「あそこの川のほとり……小鳥さん達が集まっています」

男「……みたいだな」

藍子「……距離も離れているし、カメラを使っても大丈夫だよね」

パシャッ

藍子「……うん。いい写真が撮れました」

男「写真を撮るのが好きなの?」

藍子「はい。いろんな風景を見ていると、いろんなことが感じられるんです。その瞬間を切り取りたくて」

藍子「こういう緑に囲まれた場所にいると、人も木も小鳥も、みんな同じ生き物なんだって……そんな感じがします」

男「みんな同じ生き物、か……」

男「そうだな。人間も、植物も、機械も……同じ、か」

藍子「……あの、どうかしましたか?」

男「え?」

藍子「すごく、辛そうな顔をしています」

男「ああ……少し、いなくなっちまった奴のことを思い出しててさ」

藍子「いなくなってしまった……?」

男「今さら、気づいても遅いんだよな……ほんと、馬鹿だよ俺は」

藍子「………」

藍子「……あの。多分、見当違いなことを言ってしまうと思うんですけど……遅すぎるなんてこと、きっとないと思います」

男「……え?」

藍子「私、小さい頃からなんでもゆっくりなペースでしか動けなくて……本当に、遅いことばかりでした」

藍子「でも、そんなゆっくりな私でも。今、頑張れているから」

藍子「だから、きっと大丈夫です」ニコッ

男「………」

藍子「……す、すみません。私ったら変なことを」


男「ふ……あはははっ!」

男「いやあ、まさか年下の女の子に励まされるとは。俺もよっぽどひどい顔してたんだな」

藍子「え?」

男「サンキュー。確かに、遅すぎるって諦めるには、まだ早いよな」

男「俺らしくもねえ。常に全力フルスロットルで行かなきゃ、姉ちゃんに心配されちまう」

藍子「……なんだか、元気出たみたいですね。ふふっ」

男「おかげさまでね」

男「……俺も、これから写真撮ってみようかな。いろんなところ回る予定だし」

藍子「いいですね! きっと、たくさんのことを感じられると思います」

男「だといいな……よし! じゃあ俺はもう行くよ」ダッ!

藍子「あ……もう行ってしまうんですか?」

男「ああ。なんだか身体がうずうずしてきた。じっとしてられねえ」

男「あ、そうだ。君の名前教えてくれる? アイドルならファンになるからさ」

藍子「ありがとうございますっ。私、高森藍子と言います」

男「藍子ちゃんね。あとで調べとくよ」

藍子「えっと……あの。あなたのお名前は」

男「俺? 俺は……」



男「追跡! 撲滅! いずれもマッハ!」

藍子「………」ポカン

男「なんてね」

男「名乗るほどのもんでもないからさ。そんじゃ、またな!」

藍子「あっ、ちょっと! ……行っちゃった」

藍子「なんだか、不思議な人だったなあ」

ちひろ「これ、不審者じゃないですか?」

P「いや……実際、危害は加えられてないので」

ちひろ「そういう問題なんでしょうか……」



P「しかし、ファンレターのチェックをしながら雑談してますけど……なかなか捌ききれないですね」

ちひろ「それだけみんなの人気があるってことですけど、終わりが見えませんね……あら?」

P「どうしました?」

ちひろ「見てください。この藍子ちゃん宛てのファンレター、とっても綺麗な風景の写真が入ってます」

P「おお、本当だ。山をバックに動物達が走っていて、まさに大自然って感じ」

P「差出人は……ミスターX? 匿名ですかね」

ちひろ「みたいですね。なんにせよ、藍子ちゃんに見せたら喜ぶでしょうねー」

P「ですね」

P「まあ、だいたいこんなところですかね」

ちひろ「世の中、たくさんの出会いがあるということですか」

P「中には信じられないようなものまで混じってるみたいですけどね」

ちひろ「もし危険な出会いがあったら、ちゃんとプロデューサーさんが守らなくちゃ、ですよ」

P「わかってます」


ガチャリ


卯月「島村卯月、ただいま撮影から戻りました!」

P「おかえり、卯月。どうだった?」

卯月「はい。ちょっと失敗もしちゃいましたけど、皆さんのおかげでなんとかうまくいきました」

卯月「それに……帰りに、うれしいことがあって」ニコニコ

ちひろ「うれしいこと?」

卯月「はい!」ニコニコ

卯月「私の目指しているものに、自信を持っていいんだって教えてもらいました」

P「誰に?」

卯月「帰り道で会った旅の人に、です」

卯月「島村卯月、これからも『青空のような笑顔』を引っ提げてがんばります!」b

P「……そのポーズは?」

卯月「これは、サムズアップです!」

P「いや、それは知ってるけれども」



ちひろ「一期一会。出会いはそれぞれ、大事にしていくべきなのかもしれませんね」


おしまい

ありす「タブレットを拾いました」
???『何か私に尋ね事かな?』

これにて一件コンプリート、メガロポリスは日本晴れです
話を広げて書く力がないので小ネタ集みたいになりました
お付き合いいただきありがとうございます


一応出てきたライダー達の答え合わせ

晴→操真晴人(仮面ライダーウィザード)
茜→名護啓介(仮面ライダーイクサ)
早苗さん→加賀美新(仮面ライダーガタック)
イヴ→火野映司(仮面ライダーオーズ)
ヘレン→天道総司(仮面ライダーカブト)
小梅→城戸真司(元仮面ライダー龍騎)
光→東條悟(元仮面ライダータイガ)
星花→紅渡(仮面ライダーキバ)
藍子→詩島剛(仮面ライダーマッハ)
卯月→五代雄介(元仮面ライダークウガ)


以下過去作宣伝
昨日書いたやつ:渋谷凛「長女」大石泉「次女」佐城雪美「三女」橘ありす「四……って逆です!」

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2016年03月05日 (土) 21:04:55   ID: MRrTlCXL

東條の下りとか最高だわ。これはもっと書いて欲しい。

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