提督「なぁ、金剛」榛名「はい……」 (62)
提督「今日は良い天気だな」
榛名「ええ。そうですね」
提督「後で比叡と榛名と霧島を呼んで、外で紅茶でも飲まないか。また、金剛のスコーンが食べたいなぁ」
榛名「駄目ですよ提督。今日は演習の日なんですから」
提督「おっと、そうだったな。すまない……」
榛名「全く、しっかりして下さいね」
提督「あはは…悪い悪い。でも、それだけ金剛の入れる紅茶が好きなんだよ」
榛名「もう、提督ったら。お上手ですね」
榛名「じゃあ、そろそろ休憩にしましょうか。お紅茶入れてきますね」
提督「お、待ってました! じゃあ、俺は茶菓子でも出すか」
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提督「うーん、やっぱり金剛の淹れてくれた紅茶は最高だな」ズズッ
榛名「紅茶には自信がありますから。誰にも負けませんよ」
提督「流石、英国直伝だな…。しかし、こうなるとスコーンがほしくなるなぁ」
榛名「昨日、比叡と霧島と榛名も同じ事を言ってましたよ」
提督「やっぱりそうだよなぁ。それだけ金剛のスコーンは美味いんだよ〜」
榛名「じゃあ、後で焼いてきてあげますね。夜、差し入れに持ってきます」
提督「お、さっすが金剛! これで、午後も頑張れるぞ!」
榛名「ふふ、頑張って下さい。じゃあ、私も演習に行ってきますね」
提督「おう、頑張って来てくれ。俺も夜のために書類の山を片付けとくよ」
榛名「………」ガチャッバタン
榛名「………」
霧島「あ………」
榛名「………」
霧島「金剛…お姉様。これから演習ですか」
榛名「ええ」
霧島「お姉様が旗艦で、今日は霧島も同じ艦隊です。一緒に行きましょう」
榛名「…ええ」
霧島「………」
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霧島「……」
電「……」
雷「……」
榛名「今回は電と雷も今回は火力重視の装備だから積極的に攻めてね」
榛名「特に、潜水艦は私と霧島では手が出せないからお願いします」
雷「分かったわ…」
電「了解なのです…金剛さん」
榛名「そんなに心配しなくても大丈夫。いざという時は庇うから」スッ
電「は、はい」ビクッ
霧島「時間です。行きましょう、金剛お姉様」
榛名「はい」
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榛名「ふっ!」ドカーンッ
霧島「こちらが押しているわ! 皆、旗艦に続いて!!」
電「なのです!」
雷「魚雷発射よ!」
ヒューン
霧島「!! 電、危ないわ!」
電「え?」
ドカーン
電「あうっ! ………あれ。痛く…ない」
榛名「だ、大丈夫?」
霧島「こ、金剛姉様!」
榛名「大丈夫よ…直撃だけど中破ですんだわ」
電「金剛さん…庇ってくれありがとうなのです……ごめんなさいなのです」
榛名「大丈夫よ。それに、ほら。私達の勝ちみたいね。電と雷がきちんと潜水艦を沈めてくれたおかげだわ」ナデナデ
電「えへへ……」
電「ありがとうなのです……榛名さん」
榛名「え……」ピクッ
雷「い、電!」
霧島「!!」
電「あ……」
榛名「………ねぇ」ガシッ
電「あぐっ?!」
霧島「お、おやめください! お姉様!」ガシッ
榛名「私は誰だっけ?」ミシミシッ
電「あぐっ……かはっ……」
雷「こ、金剛さんごめんなさい!ごめんなさい!許してあげて下さい!!」
霧島「姉様!!」
電「こ…ん…ご……う…さ…」
榛名「………」パッ
電「あぐっ……はぁっ! はぁっ!」
雷「電! しっかりして!」
榛名「…霧島。先に戻るわ」
霧島「……はい」
電「うぐっ……ごべんなざい…ごべんなざいなのでず……」
雷「電……うあ…うわああああ…」
霧島「…………大丈夫よ…悪くない。誰も……悪くないのよ」ギュッ
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榛名「……」カチャカチャ
比叡「……スコーン?」
榛名「ええ……提督が食べたいと言うので。金剛のスコーンは絶品だって楽しみにしているんです」
比叡「………」
榛名「……食べてみてください」
比叡「…うん」モグモグ
榛名「どうですか。ちゃんと出来てますか」
比叡「うん……とっても美味しい…お姉様のスコーンだ」
榛名「良かった…」
比叡「………」
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榛名「提督、失礼します」
提督「おー、来たか金剛。待っていたぞ!」
榛名「ちゃんと仕事を終わらせてからじゃないと駄目ですよ!」
提督「ふふ……あの山のような書類が見当たるかい?」
榛名「…流石ですね。じゃあ、食べましょうか」
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提督「んー紅茶にスコーン。最高……幸せだなぁ」
提督「金剛のせいで、今はビールより紅茶だよ」
榛名「その方が健康に良いじゃないですか」
提督「はは、一理あるな」
提督「でも、ただ紅茶とスコーンがあるだけじゃダメなんだ…」
榛名「え?」
提督「紅茶とスコーン……そして大事な金剛がそろって始めて幸せなんだ」
榛名「提督……」
提督「俺は、金剛とケッコンッコカリが出来て本当に嬉しいよ」
榛名「………」
提督「………」
提督「………金剛」
榛名「はい…」
提督「おいで」
榛名「はい……」
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榛名「あっ!…あうっ! あんっ!」
提督「はぁっはぁっ!気持ちいい…気持ちいいよ金剛っ!」
榛名「んああああっ! 激し、激し過ぎますっ! ああもう、らめっ!」
提督「あぐっ…イクッ! 中に出すぞ金剛!」
榛名「……っ。は、はい…金剛の中にた、たっぷり出して下さい!」
提督「う、うぁ…こ、金剛!い、イクっ!」ビュルルッ
榛名「うあっ…で、出てる。金剛の中に熱いのが沢山でてますっ…」
提督「はぁっはぁっ……愛してる。愛してるよ…金剛…」
榛名「っ………。私もです……提督…」
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榛名「じゃあお休みなさい提督」ガチャ
提督「ああ、明日は休みだからな。ゆっくり休んでくれ」
榛名「はい」
提督「おやすみ、金剛」チュッ
榛名「おやすみなさい…提督」チュッ
バタンッ
榛名「…………」テクテク
榛名「………」ガチャ
榛名「ただいま…です」
比叡「おかえり…………――榛名」
霧島「おかえり榛名…」
榛名「………」フラフラ
比叡「榛名……」ギュッ
霧島「……」ギュッ
榛名「…今日は三人で寝ても良いですか…」
比叡「もちろんよ…」
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榛名「….…」
比叡「……」
霧島「……」
榛名「霧島……今日は、ごめんなさい。電と雷にも怖い思いを……させちゃった…」
霧島「大丈夫よ…誰も悪くないわ。榛名も電も…誰も悪くないのよ」
榛名「うん…」
榛名「比叡姉さん……私、ちゃんと上手く出来てますか…」
比叡「ええ…榛名は頑張ってるわ。大丈夫よ…」
榛名「そう…ですか…」
榛名「榛名は…大丈夫ですか?」
比叡「大丈夫よ…榛名」
榛名「良かった……」
榛名「榛名は……大丈夫…」
榛名「だいじょ……ぶ」
榛名「……」zzz
霧島「寝たみたいですね……」
比叡「………榛名」ギュッ
霧島「……誰も悪くない…けれど、どうすれば良いのでしょうか…」
比叡「……分からないわ。本当に……分からない…」
榛名「……金剛……姉様…」zzz
金剛お姉様が沈んだ。司令とのケッコンッコカリ三日後の事。同じ艦隊だった榛名は自分のせいだと自らを責めた。
提督は壊れてしまった。榛名を金剛お姉様と呼び、そばに置くようになった。
提督は壊れてしまったけど、優秀なままだった。だから、上は現状維持を望んだ。
そうして、榛名は金剛お姉様になった。今日も榛名は紅茶を入れ、スコーンを焼き、司令の愛した金剛お姉様でいる。
何もかもが歪んでしまった。分からない…どうすれば良いのか分からない。
榛名には罪の意識があるのだろう。金剛お姉様と随伴艦を見捨て逃げ延びて来たと榛名は繰り返す。
決して艦隊のせいではない。敵に対し、装備も編成も間違ってはいなかった。練度も足りていた。だから……誰も悪くないと思う。ただ…運が悪かったのだ。言うなれば交通事故のようなもの。
提督には防ぎ用がなく、命からがら逃げてきた榛名にも罪はない。だが、轟沈という事実は二人を苦しめている。
ーー翌朝ーー
霧島「………」
比叡「………」
榛名「……じゃあ、提督の元へ行ってきます」
比叡「…榛名」
榛名「なんでしょうか?」
比叡「…もうやめよう」
榛名「え…」
比叡「こんなの駄目よ! いつまでも榛名が金剛お姉様の代わりで居続けるなんて間違ってるわ!」
榛名「………」
比叡「幾ら戦績が優秀でも、榛名一人が苦しみ続けるなんて間違ってるっ!」
榛名「比叡お姉様…別に……私は…」
比叡「嘘よっ!」
榛名「……っ」
比叡「私は榛名のお姉ちゃん…幾ら私でも榛名が苦しんでいる事なんて分かるわっ」ギュッ
榛名「お姉様…」
霧島「それに…金剛お姉様もこんな事望んでいないわ……。提督には目を覚ましてもらいましょう」
榛名「でも…大本営が。もし、提督が指揮をできなくなったら、お姉様達は……」
比叡「妹を犠牲にしてまで生きようとは思わないわ」
霧島「………」コクッ
榛名「………っ」
榛名「お姉様……ありがとう…ございます」
比叡「今まで榛名に背負わせてた私達には、感謝される資格はないわ…本当にごめんなさい」
霧島「今度は私達が苦しみを受け止めるわ」
榛名「お姉様…」
榛名「でも、どうやって提督を戻すのでしょうか? 正直な所……口頭や書類程度で治るとは思えないです…」
霧島「………それには考えがあるわ」
榛名「?」
霧島「お姉様の死体はサルベージされていないわよね」
榛名「はい。何しろあの時は満身創痍でしたから……。榛名だけが…逃げ延びて来て…私…私だけがっ……お姉様と皆を見捨てて…」
比叡「榛名…貴方は悪くないわ……誰も悪くないのよ…」ギュッ
霧島「榛名…」
榛名「ごめんなさい…大丈夫です…」
榛名「はい……死体も艤装も…沈んでしまったので…」
霧島「……金剛お姉様の死体をサルベージします」
榛名「え?!」
霧島「そして、それを提督に突きつけるのです」
榛名「!?」
比叡「死体…もしくは壊れた艤装を見れば、提督も認識するでしょう…金剛お姉様の死を」
榛名「で、でも…もう海流で流されてしまったかもしれません…」
霧島「お姉様が沈んだ海域は潮の流れがかなり緩やかなのよ。それに…死んだ私たちはかなり重い」
比叡「大体の目星は付いているわ。潜水艦の子達にも協力をしてくれる。……皆、榛名を心配しているのよ」
榛名「………でも、大本営はサルベージをしない方針で…これがしれてしまったら皆は…」
比叡「言ったでしょ。大本営がなんだろうと、榛名一人にもう苦しみは背負わせないって。皆、同じ気持ちなのよ」
榛名「皆……」
比叡「サルベージは遠征時に行うわ。引き上げには私が行く。霧島は秘密裏に母港で受け入れの準備をしてもらうわ」
霧島「榛名は待機を…」
榛名「………私も遠征隊について行きます。いや、行かせて下さいっ! 私も行かなきゃ駄目なんですっ…」
比叡「榛名……。お姉様の死体は…もう綺麗じゃないかもしれないのよ。辛い思いはもう…」
榛名「……私も心の何処かで金剛お姉様の死を受け入れられていないのかもしれません」
榛名「だから、これで私も向き合わなきゃだめなんです! 私も行かせて下さい!」
比叡「……分かったわ」
霧島「お、お姉様!」
比叡「戦艦があと一隻いた方が安全なのは事実よ。それに、榛名の覚悟は無下にできないわ」
比叡「榛名…強くなったわね」
榛名「……そんな。私はただ…」
ーーーー
ーー数日後
比叡「行ってくるわ。霧島、そっちは頼んだわよ」
榛名「行ってきます」
霧島「はい……。比叡お姉様、榛名…気を付けて…」
比叡「そんな心配そうな顔をしないで。ほら、主砲も新しい新型よ。たとえどんな深海棲艦がきたとしても負けないわ」
霧島「はい……」
霧島(胸がざわつく…)
霧島(……練度も問題はないわ。何も心配はないはず…)
霧島(でも金剛お姉様が沈んだ海域….…)
霧島(気を付けて……皆)
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比叡「この辺りね……」
榛名「索敵………敵影はありません」
比叡「よし、探索を開始するわ」
榛名「は、はい……」ブルッ
比叡「榛名…」
榛名「…大丈夫です。すいません…」
比叡「何かあったら直ぐに言うのよ」
榛名「はい…」
比叡「……よし。では、探索開始!」
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霧島「………」
霧島(…そろそろ。比叡お姉様から通信が入るころだわ)
霧島(………きた!)
《…………》ザザッ
霧島「…….? こちら霧島です!」
《………っ……あ……》ザザッ
霧島「……お姉様」
《……霧島…お姉様…》ザザッ
霧島「は、榛名?通信が乱れて…」
《皆……轟沈……帰投…私だけ…大破で……航行…不安て……》ザザッ
霧島「な…?!」
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ーーーー
「うっ……うっ……そんな」
「比叡さん……」
「うえぇぇえんっ!」
霧島「そんな……どうして…あり得ないわ……」
霧島「比叡お姉様…一体何が…」
「霧島さん! 榛名さんが目を覚ましました!」
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ーーーー
霧島「は、榛名っ!」
榛名「……ごめんなさい。私だけ…また」
霧島(酷い傷…)
榛名「また……私だけが……私だけっ……」プルプル
霧島「…っ。榛名……」ギュッ
榛名「ごめんなさい……ごめんなさい…」
霧島「……大丈夫、大丈夫よ…」
ーーーー
ーー
霧島「…何があったの」
榛名「……悪魔のようなでした」
霧島「悪魔…?」
榛名「…あっという間に皆、殲滅されてしまったんです。姿も何も……わからなかった」
霧島「………」
榛名「ただ、声が聞こえました……」
霧島「声…?」
榛名「黒いヘドロのような声………ただ、一言…シカタガナイ…と」
霧島「シカタガナイ…?」
提督「金剛っ!」バタンッ
榛名「あ……提督」
提督「大丈夫か、金剛?!」
榛名「はい…」
提督「ああ…俺の責任だ。比叡が…俺のせいで比叡が…」
榛名「……大丈夫です。提督は悪くないありません…」
霧島「………」
提督「すまない…霧島……こんご」
霧島「っ! こんなに時までっ!」ガッ
提督「うぐっ?!」
榛名「霧島! やめてっ!」
霧島「……っ」
提督「あぐっ……はぁっ…はぁっ」ドシャッ
榛名「誰も…悪くないんです…」
提督「すまないっ……すまないっ…」
榛名「大丈夫です…金剛がいますから……」ギュッ
提督「うぐっ……うああああ…」
霧島「………」
遠征隊は榛名を残して全滅。命からがら戻ってきた榛名も大破状態。敵の正体は分からない。
ただ、お姉様を沈め、榛名を大破させ、潜水艦の子達も沈めたとなると既存の深海棲艦では考えられない……。新型の深海棲艦と大本営は結論づけた。そして…あの辺りの海域は封鎖された。比叡お姉様を失い、サルベージは不可能になり…もう手の打ちようがなくなってしまった…。
修正で立て直します
このSSまとめへのコメント
この展開ってもしかして榛名…
い、いや、まさかね…