新田美波「オトナ、一歩手前の距離で」 (44)

ほぼほぼ3周年アイプロの台詞や設定を引用。おまけにキャラ崩壊もあるかもしれません。
ネタバレその他注意でお届けいたしますね。

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事務所の創立記念の船上パーティー。
客船を貸し切っての豪華クルーズだったが宴もたけなわ。
学生組以下はほとんど引き上げてしまい、そこでお開きになるはずだったのだが…

予想外というか予定調和というか。宴の興奮(というか酔い)醒めやらぬ大人組を乗せ、
船は再び航行を始めるのであった…。

P「ふう…ついつい飲まされ…いや、飲みすぎたな…酔いをさまさないと…」

美波「ふらふらしてますよ? 大丈夫ですか?」

P「ん…おお、美波か…パーティーの準備、お疲れ様だったな」

美波「あ…はい、お疲れ様ですっ。 えと、椅子とかなかったかな…あ、あそこ、座れそうですね」

P「おお…丁度いいとこにベンチがあるな…っとと…」

美波「肩、貸しましょうか? 船ですから結構揺れもありますし…」

P「いや、大丈夫だ…気持ちだけもらっとくよ。すぐそこだしな」

美波「すぐそこだから、ですよ。少しくらい、頼ってください。ほら、またふらついちゃってます」

P(言うが早いか、美波は俺の腕を肩に乗せ、ベンチの方へ歩き出した。)

P(俺はされるがままに座らされ、「お水もらってきますね」と駆け出す美波に礼を言う間も無く置いてかれてしまったのだった)

P「うう…情けない…が、いくらなんでもあの量はマズかったかな…」

P(大人組の面々に挨拶回りで順繰りに飲まされたもんなあ…断れない俺が悪いんだけど)

美波「お待たせしました、プロデューサーさん、お水ですっ」

P「すまないな…はあ…俺も弱いのに飲みすぎるから…」ごく…ごく…

美波「あ、プロデューサーさん、お水ゆっくりでいいですからね。」

P「ああ、スマンな…」

美波「……あ、そうだ…ちょっと手、出してもらってもいいですか?」

P「は? 手を出す!?」

美波「はいっ。よく効くマッサージがあって、それで…」

P「いや、イカンイカン、いくらなんでもこんな人目に付きそうな場所でそんな…って人目とか関係ねえや、とにかく」

美波「ちょっと失礼しますね。…んっ…」

ぐい、ぐい…

P「…あ、あれ?」

美波「このあたりのツボが、酔い覚ましに良いみたいなんです。最近、マッサージのお勉強もしてて…」

美波「少しはラクになるかなぁ…って思ったんですけど…プロデューサーさん?」

P「俺は今自分の不甲斐なさを痛感したよ…」

美波「ぷ、プロデューサーさん、顔真っ赤ですよ? おかしいな、マッサージ、効き目薄かったのかなあ…」

P「むしろ効果テキメンです本当にありがとうございました…」

美波「あ…本当に? それなら良かったですっ。 じゃあ、そのままラクにしていてくださいね…」ぐい…ぐい…

P(…あ、ヤバイ。コレ何か…眠気がヤバイ…)

ーーーーーーー

ーーーーーー

P「ふがっ…あ、あれ?」

美波「あ…起きました? おはようございますっ。」

P「おはよ…ってかあれ、俺は…つか頭がなんか柔らかい…って、え?」

美波「よく眠れましたか? 私、ひざまくらなんてしたの初めてですから…寝心地悪かったら、ごめんなさい。」

P「いや、最高の寝心地だったし疲れも酔いも吹っ飛んだ」

P「つか…嘘みたいに身体軽いんだけど、俺どんだけ寝てたんだ…」

美波「20分くらいだったかな? 寝顔、ちょっと可愛かったですよ?」

P「う…いや、本当にスマン、重ね重ね迷惑かけて…」

美波「これくらい迷惑のうちに入らないですよ。むしろ、私の方こそいつもご迷惑ばかりおかけしちゃってますから…だから、おあいこです」

P「そうか…? ……言うほど迷惑なんてかけられたっけ、俺…。……あ、あの時か?…いや、それともあの時の…」

美波「もう、そこは素直におあいこにしておいてくださいっ!」

P「あはは、それもそうだな…うん、ありがとな、美波。おかげでスッキリした」

美波「はい。私も、ちょっとスッキリしました。」

P「ん? なんで?」

美波「最近、忙しくってプロデューサーさんとの時間が取れませんでしたから…ちょっともやもやしてたんです」

美波「でも、眠ってるプロデューサーさんの顔を見てたら、何だか吹っ切れちゃいました。みなみ、まだまだがんばれますっ」

P「待て、吹っ切れたってなんだ、そんなに面白い寝顔だったのか俺は」

美波「あ、それは………ううん」

美波「…ヒミツです♪」

P「え、今の間は何、何なの」

美波「ふふ、女の子にはヒミツがたくさんあるんですよ?詮索したらめっ、です」

P「お、おう…」

P(なんだろう、よくわからんが勝てる気がしないぞ、なんなんだ一体)

ーーーーーーー

P「っかし…良かったのか? せっかく準備頑張ってたのに、大事な時間を俺なんかに使って」

P「俺が言うのもなんだけど、お前だって飲みたいだろうに…」

美波「もう、プロデューサーさん? 私、まだ未成年ですよ?」

P「あ、そういやそうだっけか…いや、何か手慣れてたからつい、な…」

美波「それは…その、染み付いてしまったといいますか…色々、ありましたし…」

P(何故そこで赤くなるんだ…?)




「酒を避けては通れない…ふふっ…」


美波「!?」びくっ

美波「………?」きょろきょろ…

P「…美波?」

美波「あ、いえ、大丈夫ですっ、きっと気のせいですから、気のせい…多分、おそらくは…」

P「……?」

ーーーーーーー

美波「そもそも、飲める方にはつまらない相手でしょうし…私は後片付けで残ってますけど、未成年はもうほとんど皆帰っちゃってますし」

P「まあ時間も時間だしなあ…っても、屋形船でもないんだからいい加減お開きにしたいとこだけどな…」

P(…主に何名かの酔っ払いのせいで、後数時間は帰れそうにないわけだが)

美波「……プロデューサーさん、私…」

P「ん?…どした、改まった顔して」

美波「私、わりとどこでも馴染んじゃうんです。人付き合いで苦労した事って、おおよそないかもしれません」

P「……そうだな、空気も読めるし気遣いもできるし…スゴイよな、本当に」

美波「…やっぱり、そう見えちゃうんでしょうか。」

P「……美波?」

美波「……私、ぜんぜんすごくなんてないんです。普通なんです。どんな相手とも馴染めるって、裏を返せば」

美波「………八方美人、ただそれだけなんです、私は」

P「……いや、それは…」

P(それは違う、と言ってやるには…美波はあまりにも辛そうで…)

P(少しだけ涙声で話す美波を見て、ひとまず俺は聞き役に徹する事にした。)

美波「……すみません、取り乱して…安心しちゃったのかな…抑えてたもの、溢れちゃったみたいで…」

P「……少しは落ち着いたか?」

美波「……はい。…だめですね、事務所のみんな、お姉さんって言ってくれますけど…」

美波「しっかりしなくちゃって思うたび、素の自分とは遠ざかってるような気がして…」

美波「これじゃダメ、これじゃダメって、いつも思うんですけど…」

P「美波…」

美波「……思えば、色んな年齢の人が集まってますよね、この場所は…」

美波「みんなそれぞれ…特に小さい子なんかは、これから進路を決めていく時期で…」

美波「…私は、何がやりたいのかな、って。ずっと迷ってたんです」

美波「資格の勉強とかも、要はそのためで…今は、アイドルっていう仕事をしていて、少しづつだけど人気も出始めたところで…」

美波「考える必要なんてないはずなのに、考えちゃうんです。私はどこへ向かうんだろう、どうしてここにいるんだろうって」

美波「別に、嫌になったとか、そういうわけじゃないんです。…むしろ、アイドルの活動は楽しくって、やりがいがあって、充実してます」

美波「でも…その後、まで考えた時に…なんだか、不安で…怖くて…」

P「……美波…」

美波「教えてください、プロデューサーさん……私は、これからどうすれば…」

P(ここまで思い詰めてたのか…それに気付けない俺のバカさ加減は後で悔やむとして…)

P(今、俺がかけてやるべき言葉は…)

美波「………ぐす、ひっく…」

P(………いや、いいやもう…下手に飾った言葉なんか…) なでなで…

美波「あ…プロデューサーさ…ん…?」

P「……美波は、やっぱ強いよ」

美波「え……?」

ーーーーー

P「たぶんな。答えなんてないんだよ。そもそもお前の言う、これからどうすればいいかって質問の答えは、俺には出してやれない」

P「薄情かもしれないけど、きっと誰だってそうさ。俺だって…事務所のみんなだってそう」

P「前なんて見えない、どっちが前かもわかんない、暗がりをさ。先陣切って、一生懸命一心不乱に走っていく」

P「それが強さかと言えば、そうなんだろう。事実、お前を俺は強いと思うし、すごいとも思う」

美波「……私…でも、だって…こんなにぼろぼろで…みんなの前に立つ資格なんて…」

P「……ぼろぼろでいいんだ。みっともなくたって構やしない。」

P「甘えたくなったら甘えていいんだ。受け止める。……本当に、正面に立って、一番前を走るやつってさ」

P「そうやって、誰より悩んで、誰より泣いて、涙を拭ってくれる相手もいない中で」

P「誰よりもぼろぼろになって頑張ってる人のことを言うんじゃないのか?」

美波「……!」

P「お前は立派だよ美波。立派過ぎて危ういくらいにな。…たまには頼ってくれ。俺にも手伝わせてくれよ」

P「役になんて立たないかもしれない、周りから見たらお前に比べてちっぽけなやつかもしれないけど…」

P「俺にだってさ。お前の涙くらい拭わせてくれよ…。…な?」

美波「プロデューサーさん…! う、わ、私……!」

P(泣きじゃくる美波を抱きとめ、その震える肩ごしに見た背中は…)

P(いつもの、女神を思わせるような…神々しく、大きなものではなく、等身大の、本当に小さな1人の女の子のもので…)

P「いいんだ。泣いていい。涙なら俺が拭ってやる。俺なんかじゃ情けなくて、役者不足かもしれないけど…」

P「一番前を走るお前の後ろ、必死に食らいついて走っていくから…だからさ…」

美波「う、うああああ……っ……!」

P(本当に、子供みたいに。どれだけの時間が過ぎたかもわからないほど…気がついたら俺も一緒になって、二人で涙を流して佇んでいた…)

ーーーーーー

ーーー

美波「……何ていうか…その…」くすん…

P「……泣いたなあ…ははっ……」

美波「も、もう、なんでプロデューサーさんまで泣いちゃうんですかっ…あ、見ないでください、顔、お化粧とかぐちゃぐちゃです、きっと…」

P「あ、ああ…そうだな…」

P(我ながらものっすごいクサイ台詞吐いたような気がするが…酔いのせいだな、うん。間違いない)

美波「あの…プロデューサーさん」

P「ん…なんだ、美波」

美波「その…さっき言ってた事なんですけど…私…」

P「え、あ、ああ、うん。大丈夫だ、安心しろ!内緒にする。絶対に漏らしたりしないから心配すんな」

美波「あ…いえ、そうじゃなくて…って言うか、それは別にどっちでもいいんです。私、別に隠すような事でもないのかなぁって…」

P「え?」

美波「つい、泣いてしまいましたけど…話してみると、すごくちっぽけで…何ていうか、吹っ切れた感じ…」

美波「って、さっきも言いましたね。今日は私、酔ってるのかな…」

美波「うん…場酔い、しちゃってるのかもしれませんね。…でも、話したらスッキリしました。」

P「そ、そうか、そりゃ良かった…うん、そうだよな、俺もまだ実は酒が残ってるんだ、そうに違いない」

P「だから、その、さっきの話な、もしアレだったら忘れてくれても……」



ーーちゅっ。

P「………え……?」


一瞬だった。頬に、何かあたたかな…それでいて、穏やかな、何かが触れた。

頬に手をやると、ほんのりと薄紅が指に付いていて。

美波「……これで、忘れないでいてくれますよね? …酔ってるから、ノーカウント、ですよね」くすっ

P「……………お前…」

美波「お化粧、直してきますね。いい加減に引き上げないといけませんし…プロデューサーさんもお片付け、手伝ってくださいね?」

そう言うと美波は走り去って…

美波「あ、それと…」

行かずに立ち止まって、そのままこちらを見ずに一言、

美波「本当に、嬉しかったんですからね? さっきの言葉。」



それだけ言って、今度こそ走り去っていった。

P「……いや、えっと…これ…」

頬に残る一瞬の、暖かな感触。

そして待ち受ける(年長組の)「お片付け」。

……泣けばいいのか、笑えばいいのか。

かくして。俺の黒歴史は薄紅色の記憶と共に、色褪せず残る事になるのだった。




P「…いやあ…………拭えねえよ、これは…」




ーーおしまい。

一見、何でもこなせるパーフェクトお嬢様な美波だけど、こういう一面、弱さを見せてくれるのもアリかなぁ、と。
ゲーム本編の美波は迷いながらもアイドル活動を通してやりたい事を見つけていってるので、これはその過程の二次創作、という事にしておいてください。

ではでは。

アイプロを元にした過去作

モバP「卯月と秋の日に」

モバP「ristorante(レストラン)・ザ・アイドル」

特に関係のない過去作

加蓮「12月…か」

加蓮「流れ星キセキ」

など。

では依頼出してきます。

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