加蓮「12月…か」 (13)

一人、夜の街を歩く。

吐く息の白さ、イルミネーション、デコレーション、クリスマスソング…

『恋人達の季節』…か。

行き交う人、皆ニコニコしてて幸せそうで。

……バッカみたい。 なんて。

そう思ってた時期もあったなあ…昔、小さい頃の話だけど。



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P「悪い、遅れた! 大丈夫か加蓮、寒くないか⁉︎ 俺のコート着るか⁉︎」

加蓮「んー、確かに寒いけどコートはいいかな。それ取ったらプロデューサーさんがかわいそうだし」

P「いやいや、待たせたのは俺の方なんだから……」

加蓮「いいの! …こうやって寒いって感じるの、悪くないって思うしさ」

P「……加蓮?」

加蓮「……病室ってさ、暑くも寒くもないんだよね」

P「あ……」

加蓮「何ていうか、こうして寒さを肌で感じて……生きてるよね、って感じ? …そんな深刻な顔しない。もう身体は大丈夫だってば」

加蓮「でも…昔は、クリスマス…嫌いだったなぁ…って」

P「…それも、やっぱ身体の事があって、なのか」

加蓮「うん。……クリスマスってさ…『希望の日』でしょ?」

加蓮「私には、希望なんてなくて…って言うか、同じ毎日の繰り返しで」

加蓮「…別に、だからって絶望してたわけでもないんだけどさ。ただ…」

加蓮「みんなで幸せな食卓を囲んで…プレゼント貰ったりしてさ、あったかい気持ちになれるような…」

加蓮「そんな日を、夢みてたのかなぁ…なんて。…実際には、ぼんやり冬の空を眺めてたくらいしか記憶に無いんだけどね」

P「…なら、叶えよう、それ。」

加蓮「え…?」

P「加蓮の夢を、さ。アイドルになるって夢は叶ったんだ。…もう一個叶えたって、バチは当たんないって思うけどな」

P「プレゼント交換とか、みんなでケーキとかも食べてさ、そんで…クリスマスソングなんか歌ったりしてな」

P「そんで…加蓮が笑ってられるような、そんなクリスマス。…どうかな?」

加蓮「………どうかな?って…でも…そんな都合よくみんな集まるわけ…」

P「ん、凛と奈緒と…奏、それに美嘉もOKか…お、藍子と菜々さんも大丈夫だって」ピポパ…

加蓮「ちょ⁉︎ もうみんなに話したの⁉︎」

P「善は急げって言うだろ? …それに、辛そうな加蓮見てんのは、俺も辛いから、さ」

加蓮「……もう…ばか…」

P「馬鹿で結構。さて、クリスマスまではまだ日があるしな…あったかいものでも食いに行くか…ほれ」

加蓮「あ…手…」

P「肌で温度を感じるって言うならさ。何も寒くなくたっていいだろ。」

加蓮「…途中で離さないでよ? 離したりしたら死んじゃうからね。」

P「物騒な事言うなっての…言われなくたって離すもんかよ。…ほら、じゃあ行くぞー」

加蓮「……ふふっ。……あ。」

ーーーねえ、あの頃のアタシ。不思議だよね。

何ていうかさ。本当、笑っちゃうくらいバカみたいなんだけどさ。

加蓮「……私、今……笑ってた」

P「ん?」

加蓮「…ふふ、あははっ!」


なんか悔しいから、プロデューサーさんにはヒミツってことで。…いいよね?

ーおしまいー

こっそりと、加蓮さんの幸せを祈って。依頼出して来ます。

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