カリオストロ「ほら、舐めてやるからひざまずけ」 (95)

カリオストロ「グラン、今日もデートに行くぞ」
カリオストロ「グラン、今日もデートに行くぞ」 - SSまとめ速報
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ルリア「グラン、ちょっといい?」

グラン「ルリア? どうしたの、改まって」

ルリア「その……一緒にお出かけしない?」

グラン「お出かけ? もしかしてデート?」

ルリア「デ、デ、デートじゃないよ! 本当にただのお出かけ……その、最近あまり一緒にいれなし……」ゴニョゴニョ

グラン「うーん……」

ルリア「ダメ……なの?」

グラン「ダメというか、この後は予定がね……」

ルリア「あ、もしかして用事があったの?」

グラン「あったというか、あるというか、できるというか……」

ルリア「……? それってどういう……」

カリオストロ「グラン~、デートに行こう☆」

グラン「あ、うん」

ルリア「え!?」

カリオストロ「今日はどうしよっか? もうこの辺りは飽きてきたしぃ」

グラン「ちょっと遠くに行ってみようか、この前カリオストロが気に入りそうなお店を見つけたんだ」

カリオストロ「わーい☆ 楽しみぃ、ちゃあんとエスコートしてね?」

グラン「うん、それじゃあ行こうか」

ルリア「ちょ、ちょっと待って!」

グラン「どうしたの、ルリア?」

ルリア「グランの用事って……もしかしてカリオストロさんとお出かけすることなの?」

グラン「うん」

ルリア「……それって、前から約束してたの?」

グラン「約束はしてないけど、でも最近はほとんど毎日カリオストロと街に出かけてるし、多分今日もかなって思って」

ルリア「……」

カリオストロ「グラン~、早く行こうよ☆」

グラン「分かったよ……それじゃあ、ルリア、また今度ね」

ルリア「……うん」

次の日

ルリア「あ、あの……カリオストロさん!」

カリオストロ「あん、なんだよ?」

ルリア「カ、カリオストロさんに……聞きたいことがあります!」

カリオストロ「オレ様は今忙しいんだが?」

ルリア「え、何かしてたんですか?」

カリオストロ「グランを探してたんだよ」

ルリア「……」

カリオストロ「アイツ、いつもふらふらしてんだよな、まったく手間かけさせやがって」

ルリア「……カリオストロさん! 私、どうしてもカリオストロさんに聞きたい事があるんです!」

カリオストロ「あん? ……仕方ねえな、手短に言えよ」

ルリア「あの……もしかしてなんですけど……カリオストロさんは、その……グランの事が……す、好きなんですか!?」

カリオストロ「はあ?」

ルリア「カリオストロさんのことを見てると……そうなんじゃないかなって思って……」

カリオストロ「……」

ルリア「……」ドキドキ

カリオストロ「……何を言うかと思ったら、そんな事かよ」

ルリア「ど、どうなんですか!?」

カリオストロ「そんなわけないだろうが、どこ見てんだ?」

ルリア「え!? あ、じゃ、じゃあ……カリオストロさんはグランの好きじゃないってこと……ですよね?」

カリオストロ「当たり前だろうが、なんでオレ様がグランの事を好きになるんだよ」

ルリア「な、なんだ、そうだったんですね! よかったです……私、てっきり……」

カリオストロ「オレ様がグランの事を好きなんじゃなくて、グランがオレ様の事を好きなんだ」

ルリア「……勘違いを……え?」

カリオストロ「まったく、オレ様が可愛すぎるのも問題だな」

ルリア「あ、あの、聞き間違えちゃったのかもしれないですけど……さっき、グランがカリオストロさんのことを好きって……」

カリオストロ「聞き間違えじゃねえよ、確かにオレ様はそう言ったぜ」

ルリア「……そ、そうなんですか? ほ、本当にグランはカリオストロさんの事が好きなんですか?」

カリオストロ「ああ、グランの事を見てればわかるだろう?」

ルリア「……」

カリオストロ「納得できないって顔してるな」

ルリア「い、いえ、そんなことは……」

カリオストロ「仕方ねえな、だったら証拠を見せてやるよ」

ルリア「は、はい、お願いします……あ、グランが……」


グラン「……」


カリオストロ「お、ちょうどいいところにいたな、そこで見てろ」

ルリア「はい……」

カリオストロ「グ~ラン☆」

グラン「うわ!? ……もうカリオストロ、いきなり抱きつかれたらびっくりするだろ」

カリオストロ「ああん? 嬉しいだろ、こんな可愛い子に抱きつかれてさあ?」

グラン「え、えーと……」

カリオストロ「やだあ、グランってば顔赤いよぉ?」

グラン「だ、だって、カリオストロが抱きつくからさ……」

グラン(胸が当たってるんだけど、カリオストロ気づいてないのかな……)

カリオストロ「ふふ~ん」チラッ

ルリア「……」

カリオストロ「……」ドヤッ

ルリア「……!」

カリオストロ「ほらほら、グラン君、カリオストロちゃんが暇しるよぉ? いいのかなぁ?」

グラン「わかってるってば、じゃあ今日は広場に行くのはどうかな? 噴水が綺麗なんだってさ」

カリオストロ「いいよ☆」

ルリア「……」


広場の噴水前

カリオストロ「グラン~、カリオストロね、歩いててちょっと疲れちゃったぁ」

グラン「じゃあ休憩しようか、噴水の石段に座って……」

カリオストロ「ついでに甘いものとか食べたいなぁって思うなぁ」

グラン「……何か、適当なものを買ってくるよ」

カリオストロ「わーい☆ グラン格好良い☆」

グラン「はは……」スタスタ

10分後

カリオストロ(グラン、遅いな……あんまりオレ様を待たせるなよな、噴水も見飽きたっての)

カリオストロ(……はあ、こんな噴水よりも水面に映るオレ様自身の方が百倍見てて飽きないぜ……あれ?)

カリオストロ(これ、枝毛じゃねえか……クソ! オレ様としたことが部屋から出る時に見落としてたか!?)

カリオストロ(オレ様は常に完璧な美少女なのに……まさか、グランの奴、これに気づいてないよな……? ああ、でもアイツ結構目ざといし……)

カリオストロ(そういえば今日はまだ頭撫でられてないぞ……まさかこの枝毛を気にして……)

ならず者「おや、お嬢ちゃん、そんなところで1人でなにしてるんだ?」

カリオストロ(今度作るホムンクルスは枝毛が出来ないやつにしないとな……)

ならず者「おい、無視すんじゃねえよ、ガキ!」

カリオストロ「……ああん? オレ様に言ってんのか?」

ならず者「オ、オレ様?」

カリオストロ「……」

ならず者「ま、まあいい……よく見りゃあ中々の上玉じゃねえか」

カリオストロ(なんだこいつ、ナンパか?)

ならず者「1人で来たのか? それとももしかして迷子か? よし、おじさんがみんなのもとに連れってやるよ」

カリオストロ(ああ、人さらいのたぐいか……ちょうどいい暇つぶしになるか)

カリオストロ「ええ? おじさんがカリオストロを連れて行ってくれるのぉ?」

ならず者「そうだよ、だからおいで」

カリオストロ「でもぉ、ここで待ってるように言われてるしぃ」

ならず者「……ああ、そうだ、実はおじさんはその人から君を連れてくるように言われてたんだ、だからおいで?」

カリオストロ「そうなの? でもちょっとおじさん怪しいかなぁって思うんだけどぉ、本当にそんなふうに言われたのぉ?」

ならず者「……ちっ、面倒くせえな」

カリオストロ「面倒くさいってどうしたの? おじさん?」

ならず者「いいから来いって言ってんだよ!」グイ

カリオストロ「いたっ……」

カリオストロ(ちっ、大した暇つぶしにもならなかったな……まあいい許可なくオレ様の身体に触った罰としてとしてウロボロスで丸のみにしてやるか)

グラン「……おい、何してるんだ!」

ならず者「あん?」

カリオストロ「あ、グラン……」

グラン「その子は俺の連れだ、手を離せ」バシ

カリオストロ「……!」

ならず者「いてっ……この野郎……」

カリオストロ「グラン、帰ってくるの遅いぞぉ?」

グラン「ゴメン、中々甘いものを売ってるお店が見つからなくてさ」

カリオストロ「うーん、許さない☆」

グラン「え!?」

カリオストロ「許してほしかったらカリオストロのワガママをいっぱい聞いてねぇ?」

グラン「はは、それっていつもどお……」

ドゴ!

グラン「いたっ」

カリオストロ「……!」

ならず者「無視してんじゃねえよ、クソガキどもが、ただですむと思うなよ」

グラン「この……」

ならず者「てめえは商品にならねえからボコボコにしてやるよ、そっちガキは売り飛ばすがな」

グラン「そんなこと……」

カリオストロ「……おい、何してくれてんだ?」

ならず者「あん?」

グラン「……カ、カリオストロ?」

カリオストロ「何してくれてんだって聞いてんだよ」ギロリ

ならず者「う……」

ならず者(な、なんだ、このガキ……さっきまでと雰囲気が……)

カリオストロ「オレ様に許可なく触った時点で丸のみ決定だったが、グランをぶん殴ったから気が変わった」

グラン「カリオストロ、こんなところでウロボロスを召喚するのはマズイって……」

カリオストロ「オレ様の錬金術で塵一つ残さずに消滅させてやるよ」

ならず者「な、なんだ、このデカい蛇は!? ひひぇ……」

カリオストロ「なあにビビってんだよ? 喜べよ、開闢の錬金術師様の錬金術が間近で見れるなんて幸せ者だぜ?」

ならず者「た、助けてくれ、頼む……」

カリオストロ「ダメだ、てめえは……」

グラン「カリオストロ!」

カリオストロ「あん? 邪魔すんなよ、グラン」

グラン「その辺にしておこう、この人は自警団に引き渡すからさ」

カリオストロ「そんなの関係ねえな、こいつは滅ぼすって決めたんだ」

グラン「……カリオストロ、そこをなんとか、ね?」

カリオストロ「……」

グラン「……ダメ?」

カリオストロ「……ちっ、仕方ねえな」

グラン「ありがとう……さあ、死にたくなかったら、あんたはこっちに来るんだ」

ならず者「わ、わかった……」



グラン「かなり有名なおたずね者だったみたいだね、まさか謝礼金が貰えるとは思わなかったよ」

カリオストロ「……」

グラン「……カリオストロ?」

カリオストロ「……」

グラン(マズイなあ、完全にへそを曲げっちゃってる……とりあえず、この謝礼金を使って何かプレゼントでも……)

グラン「いてっ」

カリオストロ「……どうした?」

グラン「な、何でもないよ」

カリオストロ「……グラン、ちょっとこっち向いてみろ」

グラン「う、うん……」

カリオストロ「顔が腫れてるじぇねえか……アイツに殴られたせいだな」

グラン「そうみたい……今さらちょっと痛くなってきたよ」

カリオストロ「……やっぱりアイツは今から滅ぼしてくるか」

グラン「わー! だ、大丈夫だってば! こんなのツバつければ治るからさ!」

カリオストロ「……」

グラン「そ、それよりも何か欲しい物はないかな? この謝礼金パーッと使っちゃおうよ」

カリオストロ「……」

グラン「カ、カリオストロ?」

カリオストロ「ツバつければ治るのか?」

グラン「え?」

カリオストロ「ちょっとひざまずけ」

グラン「……こう?」

カリオストロ「……」ペロ

グラン「うわ!? な、何するの!?」

カリオストロ「動くんじゃんねえよ、舐めにくいだろうが」

グラン「ゴ、ゴメン……」

グラン(……い、いや、待て、何だこの状況は!? 俺はどうしてカリオストロに舐められてるんだ!?)

グラン「あ、あの、カリオストロ? 何で俺の事を舐めてるの?」

カリオストロ「あん? 何でってお前が自分で言っただろうが」

グラン「俺何か言ったっけ……?」

カリオストロ「ツバつければ治るって言っただろうが」

グラン「……あっ、言ったね……確かに……」

グラン(確かに言ったけど、あれは大したケガじゃないって意味で言ったのであって別に舐めて欲しかったわけじゃ……)

カリオストロ「もうちょっと右向け、ちゃんと舐めてやるから」ペロ

グラン「……あ、うん……」

グラン(ううぅ……カリオストロは善意でやってくれてるみたいだから止めにくい……ああ、柔らかい舌が……しかも結構ぬくい……)

カリオストロ「……」ペロペロ

グラン「……カ、カリオストロ、だいぶ舐められたと思うし、もう大丈夫だよ……」

カリオストロ「本当か? まだ腫れたままだぞ?」

グラン「う、うん……そのうち腫れは引くよ」

カリオストロ「しかし不便なもんだな、傷を治すのに治療する必要があるなんてな」

グラン「え? それはカリオストロだって……あ、そっか、カリオストロはホムンクルスだっけ」

グラン(そういえば、前に背中から刺されても直ぐに傷を治してたな、カリオストロは……)

カリオストロ「そうだ、オレ様も人間だったころは治療することもあったかもしれないが、もう覚えてないな」

グラン(だからあの『ツバつければ治る』を真に受けたのか……)

カリオストロ「だが、そもそもグランがケガしなけりゃよかったんだ、あんな雑魚に殴られやがって」

グラン「いや、でも不意打ちだったからさ」

カリオストロ「はっ、不意打ちだろうが関係ねえよ、それで殺されちまったら文句も言えねえんだぞ」

グラン「はは、面目ない……あ、そうだ、カリオストロありがとうね」

カリオストロ「あん? 何の礼だ?」

グラン「俺が殴られた時に怒ってくれたでしょ、さすがに滅ぼすのはやりすぎだから止めたけど、嬉しかったよ」

カリオストロ「……はん、勘違いすんな、別にグランの為に怒ったわけじゃねえよ」

グラン「え?」

カリオストロ「オレ様はオレ様の物を傷つけられたから怒っただけだ、つまりオレ様は自分のために怒ったんだよ」

グラン「あ……なるほど……え? オレ様の物?」

カリオストロ「何だ?」

グラン「えーと……なんか、その言い方だと俺がカリオストロの所有物みたいだなって思ってさ」

カリオストロ「何言ってんだ、お前」

グラン「い、いや、そんな風に聞こえたからさ……」

カリオストロ「当たり前のこと言ってんじぇねえよ」

グラン「……え?」

カリオストロ「今までのお前の働きはオレ様の助手としては、まあまあ合格点だ」

グラン(そういえば『カリオストロが可愛くなるための研究の助手』に任命されてたんだっけ、すっかり忘れてたけど)

カリオストロ「だから、その働き応じてお前を昇格させてやったんだ」

グラン「昇格……?」

カリオストロ「ああ、オレ様の助手からオレ様の所有物に昇格だ」

グラン(……それは果たして昇格なのか?)

カリオストロ「嬉しいだろ? こんな美少女の物になれてさあ?」 

グラン「え、えーと……は、ははは……」


別の日

グラン「シェロからのモンスター退治の依頼の場所はこの辺りだね……」

ラカム「……おい、グラン」

グラン「なに、ラカム?」

ラカム「……ちょっと聞きたいんだが、なんでカリオストロがいるんだ?」


カリオストロ「……」


グラム「なんでって、いつもみたいに手が空いてる人に声をかけただけだよ?」

ラカム「いや、今までアイツが依頼に参加することなんかなかっただろ、どういう風の吹き回しなんだ?」

グラン「俺もビックリしたけど、なんか今日は参加してやってもいいってさ」

ラカム「……天才の気まぐれってやつか?」

グラム「うーん、そうかも」

ラカム「まあ、戦力が増えるのはいいことか……お、敵さんがお出ましみたいだぜ」

モンスター「グガアアア……」

グラン「よし、みんな、戦闘だ!」

ラカム「おうよ!」

カリオストロ「……」

グラン(カリオストロがこっちを見てる……? まあいいや、とにかく今は目の前の敵を倒さないと)

戦闘中

ラカム「ちっ、中々手ごわい奴らだぞ」

グラン「そうだね……うぐっ」バシッ

ラカム「大丈夫か、グラン、誰か回復を……」

カリオストロ「リインフォース」

グラン「ありがとう、カリオストロ」

カリオストロ「こんな雑魚にやられてんじゃねえぞ」

グラン「そ、そうだね!」

ラカム(あのカリオストロがチームプレイをしてる? 凄まじい「気まぐれ」だな……)

ラカム「こりゃあ明日は嵐かもな」

グラン「え?」

ラカム「何でもねえよ……うぉっ!?」ドゴッ

グラム「ラカム!」

ラカム「クソ、しくじったぜ……カリオストロ!」

カリオストロ「あん?」

ラカム「あん、じゃなくて回復してくれ」

カリオストロ「なんでだ?」

ラカム「な、なんでって、ケガしちまったからさっきのグランみたいに回復を……」

カリオストロ「回復はしばらくうてねえよ、自分のツバでもつけて治しとけ」

ラカム「なに!?」

グラン「ラカム、下がっててくれ!」

ラカム「お、おう、悪いな……」

モンスター「ガアアア!」

グラン「あ、ラカム! 危ない! ……うわっ!」バゴッ

ラカム「す、すまん、グラン、俺をかばって……」

グラン「このくらい平気だ! とにかくいったん下がって体勢を立て直……」

カリオストロ「アルス・マグナ!」

モンスター「グギャァァァ」

グラン「……モ、モンスターが吹き飛んだ、相変わらずすごいな、カリオストロの錬金術は……」

カリオストロ「そんな事はどうでもいい、傷は?」

グラン「え?」

カリオストロ「傷は治ったかって聞いてんだよ」

グラン「え……あ、傷が塞がってる!? なんで?」

カリオストロ「さっきのは傷を癒す効果もあるからな、これで大丈夫だな?」

グラン「うん……よし! あらかた片付いたし、あとは残党狩りだ、一気に攻めよう!」

ラカム「……おい、ちょっと待って、カリオストロ」

カリオストロ「なんだ? 早く残りのモンスターを倒せよ」

ラカム「いや、お前さっき回復はうてないとか言ってなかった?」

カリオストロ「言ったが、それがどうかしたか?」

ラカム「回復できるじゃねえか、なんで俺がケガした時にうたなかったんだ?」

カリオストロ「リインフォースは本当に連発できないし、アルス・マグナは奥の手だ、ほいほいうてねえよ」

ラカム「……」

ラカム(一応、筋は通ってるかもしれんが……なんか納得できねえな、まるでグランがケガした時にだけ回復してるように見えたが)

グラン「ラカム、カリオストロ、話は後にして、今は敵を倒そう!」

ラカム「おう、悪いな……」

カリオストロ「……」

戦闘終了

グラン「ふぅ、終わった……」

ラカム「結構、手こずったな」

グラン「そうだね……いててっ」

カリオストロ「……!」

ラカム「お互い満身創痍だな」

グラン「そうだね、飛空艇に戻ってカタリナたちに治してもら……」

カリオストロ「グラン、動くな」

グラン「え?」

カリオストロ「ひざまづけ」

グラン「……こう? ……あれ、前にもこんなことあったような……」

カリオストロ「顔は……綺麗だな」

グラン「あ、いや、ケガしたのは右手だから……」

カリオストロ「手か……仕方ねえなあ」ペロリ

グラン「ひゃっ」

カリオストロ「情けない声だしてんじゃねえよ」ペロペロ

グラン「だ、だって、くすぐったい……」

ラカム「……お前ら、何やってるんだ?」

グラン「あ、いや、これはその……」

カリオストロ「ツバつけて治してやってんだよ、まったく世話の焼ける奴だぜ」

ラカム「……」

グラン「ち、違うんだ、ラカム、これは色々と事情があって……」

ラカム「……いや、俺は何も言わないし聞かない……先に飛空艇に戻ってるから、まあ、ごゆっくりな……」

グラン「あ、待ってラカム!」

カリオストロ「こら、動くんじゃねえよ、舐めにくいだろうが」ペロペロ

グラン(……変な噂が広まらなければいいけど)

飛空艇

ルリア「グラン……ちょっといい? カリオストロさんの事なんだけど……」

グラン「え!? カ、カリオストロ!? もしかして今日の戦闘の時の話……?」

ルリア「戦闘ってさっきまでモンスター退治の以来の事? 何かあったの?」

グラン「あ、いや、知らないのならいいんだよ!」

グラン(よかった、ルリアはあのペロペロ事件を知らないみたいだ……)

ルリア「……グラン、何か隠してる?」

グラン「か、隠してなんかないよ、ははは……」

ルリア「……」ジー

グラン「……え、えーと、それで用事は何かな?」

ルリア「……カリオストロさんの事、どう思ってる?」

グラン「ど、どうっていうのは……?」

ルリア「その……好きとか嫌いとか」

グラン「……む、難しい質問だね……まあ、好きか嫌いかだったら、好きだよ」

グラン(嫌いな人から舐められたらさすがに抵抗するしね……)

ルリア「うー……どれくらい好き?」

グラン「どれくらい? えーと……」

グラム(カリオストロの事がどれくらい好きかなんて考えたことも無かったな……)

グラン「うーん……」

ルリア「……」ドキドキ

グラム(みんなと同じくらいかな……? あ、でもラカムやオイゲンからは舐められたくないし……そう考えると……)

グラム「ビィくらい、かな……」

グラン(さすが女性陣の名前を挙げるのははばかられるし……まあ、ビィにだったら舐められてもいいや)

ルリア「ビィさんくらい……」

ルリア(とても仲が良いってことかな……? でも、グランとビィさんはあくまで親友な感じだし……そういう好きじゃない気もする……でも……)

ルリア「……」ウーン

グラン「ねえ、ルリア、何でいきなりこんなこと聞くの?」

ルリア「え!? あ、いや……な、何でもないの! ただちょっと気になって!」

グラン「……本当にそれだけ?」

ルリア「ほ、本当! 別にグランがカリオストロさんの事を好きだとかそんな話を聞いたわけじゃないの!」

グラン「え? そんな話があるの?」

ルリア「あ……ち、違うの! あ、そうだ私カタリナに呼ばれてたんだった、じゃあね!」ダッ

グラン「ちょ、ちょっと待って、ルリア……行っちゃった」

グラン(俺がカリオストロを好きだなんて……多分、話の出所はラカムだよね、今日のペロペロ事件を見て変な勘違いをしたんだな)

グラン「……ひとまずラカムのところに行こう、色々な誤解を解かないと」



グラン「ラカム!」

ラカム「うぉ!? ……なんだ、グランか、びっくりさせるなよ」

グラン「ラカム、ルリアにカリオストロの事で変なこと言ったでしょ?」

ラカム「カリオストロ……? ああ、今日の戦闘の事か? 別に誰にも言ってねえし、言うつもりもねえよ」

グラン「え、言ってないの? ……じゃあ、誰がルリアにあんなことを?」

ラカム「ルリアが何か言ってたのか?」

グラン「俺がカリオストロの事を好きだって話を聞いたんだってさ……俺はてっきりラカムがあの事を見て変な噂を広めたのかと……」

ラカム「……何度も言うが俺は言ってねえよ、それにもし俺が話すのなら、逆になるしな」

グラン「逆?」

ラカム「ああ、俺なら『カリオストロがグランに惚れてる』って話になる」

グラン「……え、何で?」

ラカム「何でって、あんなこと普通恋人同士でもやらんぞ、カリオストロがお前に相当入れ込んでいる証拠だろ」

グラン「……まあ、あれが普通じゃない事は俺もわかってるよ」

ラカム「うん? ……もしかして、お前らまさかもう付き合ってるとかか? そういえばよく二人でいるしな……」

グラン「いや、それは違う……付き合ってはいないんだ」

ラカム「何か引っ掛かる言い方だな」

グラン「うん……」

ラカム「……なんだ、歯切れが悪いな、何か言いにくい事なのか?」

グラン(言いにくいというか、言ったら引かれそうなんだよなあ……)

ラカム「言いたくない事なら無理には聞かないが……」

グラン「言えるけど……引かないでね?」

ラカム「お、おう」

グラン「カリオストロ曰く、俺はカリオストロの所有物だとか……」

ラカム「……」

グラン「ほら、引いた!」

ラカム「引いたというか……いや、まあ引いたのも事実なんだが、それよりももっと重大なことがわかった」

グラン「重大なこと……?」

ラカム「まず間違いなくカリオストロはお前に惚れてるってことだ」

グラン「……」

ラカム「何で不思議そうな顔してるんだ?」

グラン「だって、ピンと来なくて」

ラカム「ピンと来てないお前が不思議なんだが……まあ、俺もあのカリオストロがお前に惚れてる理由は見当もつかん、だが、恐らく事実だ」

グラン「うーん、でもなあ……好きっていう感情は持たれてるかもしれないけど、惚れてるって感情なのかなあ……」

ラカム「いやいや、所有物ってまさに独占欲丸出しってことだろ? しかも手を舐め回すなんて惚れた相手でもないと出来ねえよ」

グラン「……俺としては、ペットか何かとして扱われてると思ってたんだけど……」

ラカム「まあ、それも外れじゃないと思うぞ、あそこまで傲慢なナルシストなら例え恋人でも自分と対等扱いしなさそうだしな」

グラン「……カリオストロが俺に惚れてる、か……」

ラカム「お、やっとその気になってきたか」

グラン「いや、どうしたものかと思ってさ」

ラカム「まあ、若いうちはせいぜい悩めよ、少年」

グラン「なんか、ラカム、オッサンみたいなこと言うんだね」

ラカム「な!? 俺はまだ29だぞ!」

グラン「ごめん、もうオッサンだったね」

ラカム「このガキ……」

グラン「はは……まあ、とにかくカリオストロについては考えてみるよ、どうなるかわからないけど」

ラカム「そうしとけ……ただ気をつけろよ、色恋沙汰ってのはどう転ぶかわからないからな」

グラン「……どういう意味?」

ラカム「後ろから刺されないようにしろってことだ……あ、カリオストロの場合は正面から堂々と蛇に食われるか」

グラン「ちょ、ちょっと止めてよ……」

ラカム「冗談だって、マジになんなよ」

グラン(カリオストロの場合は冗談にならないんだよなあ……)

次の日

カリオストロ「おい、グラン」

グラン「あ、カ、カリオストロ……な、何かな?」

カリオストロ「……? 何動揺してんだ、お前?」

グラン「な、何でもないよ」

カリオストロ「まあいい、ちょっと来い」

グラン「デ、デートかな?」

カリオストロ「あん? デートしたいのか? それだったら後でしてやるから、いいから来い」

グラン「……ちなみにどこに行くの?」

カリオストロ「オレ様の部屋だ」

グラン「……!」

グラン(これはまさか……告白されるのか……? どうしよう、まだどうするか決めてないのに)

カリオストロ「ほら、早く来い」

グラン「う、うん……」


カリオストロの部屋

グラン「……」ソワソワ

カリオストロ「さっきから落ち着かねえけど、本当にどうしたんだ、お前?」

グラン「な、何でもないって言ってるじゃないか、はは……」

カリオストロ「……」ジー

グラン「……」ヒヤアセ

カリオストロ「……ははん、わかったぞ、グラン、お前期待してんだろ?」

グラン「き、期待?」

カリオストロ「こんな美少女に部屋にお呼ばれして2人っきりだ、何か起こるんじゃないかと思ってんだろ?」ニヤリ

グラン「え、あ……よ、よくわかったね」

グラン(言ってる事はおおむね合ってるけど……多分、カリオストロが想像していることではないと思う……)

カリオストロ「だが、今回はそういうのじゃない、残念だったな」

グラン「えーと……それなら一体どういう?」

カリオストロ「ふふん、これを見せるためだ」

グラン「なにその大きな箱……棺桶?」

カリオストロ「ちょうどいい箱がなかったんで棺桶で代用したが、肝心なのは中身だ、見てみろ」

グラン「……」ゴトッ

グラン「!」

グラン「……」ガチャ

カリオストロ「おい、閉じんなよ」

グラン「……カリオストロ、中に女の子の死体が入ってたんだけど」

カリオストロ「バカ、死体じゃねえよ、もっとちゃんと見ろ」

グラン「えぇ……」ゴトッ

グラン(やっぱりどう見ても死体……いや、死体にしては血色が良いような……眠ってるだけ? でも胸が動いてないから呼吸してないんじゃ……)

カリオストロ「どうだ? 可愛いだろう?」

グラン「うん、可愛いけど……死体じゃないのなら、すごくよくできた人形?」

カリオストロ「まあ近いな、正解はホムンクルスだ」

グラン「ホムンクルス!? これが……」

グラン(すごいな、人間にしか見えない……今にも動き出しそうだ)

カリオストロ「どうだ、グラン?」

グラン「うん、すごいよ、さすがは開闢の錬金術師だね……でもなんで新しいホムンクルスを?」

カリオストロ「この身体に重大な欠点があることがわかってな、新しい身体に乗り換えようと思ったんだが……」

グラン「あ、じゃあこれが新しい身体?」

カリオストロ「違う、それは練習を兼ねて造った試作品だ」

グラン「へえ、試作品でこんな人間そっくりなものが造れるんだ……」

カリオストロ「人間そっくりというか……もしかしてグラン、気づいてないのか?」

グラン「え? 気づくって?」

カリオストロ「なんだ、マジで気づいてねえのかよ、お前ニブイな」

グラン「……それ良く言われるよ、それでどういうこと?」

カリオストロ「そのホムンクルスをよく見てみろ」

グラン「さっきからちゃんと見てるよ? ブロンドのボブカットに顎はほっそりしてて……」

カリオストロ「……わかった、ちょっとホムンクルスの眼を開けてみろ」

グラン「眼? ……茶色の眼だね」

カリオストロ「……」

グラン「……?」

カリオストロ「あー、もう、お前本当にニブイな、そこの鏡で自分の顔を見てみろ」

グラン「俺の顔? ……うん? あれ?」

グラン(このホムンクルス目の色、俺と一緒だ……そういえば顔の輪郭もどことなく似てるような……)

カリオストロ「やっと気づいたか」

グラン「まさか、このホムンクルス……」

カリオストロ「そうだ、グランをベースにして作った……まあ、ちょっとオレ様好みの美少女になるよう手を加えたけどな」

グラン「……この髪とか?」

カリオストロ「美少女の髪はブロンドって相場が決まってるよなあ?」

グラン(そういえば今のカリオストロの姿は自分の理想の美少女なんだっけ……)

カリオストロ「気に入ったか?」

グラン「えっと、俺がベースなのがちょっと気になるかな……」

カリオストロ「そうか? 乗り換えるなら自分が元になってた方がいいかと、思ってたが、余計なお世話だったか」

グラン「……ちょっと待って、今変なこと言わなかった」

カリオストロ「あん? 言っとくがオレ様だって誰かに世話を焼くことくらいあるぞ」

グラン「いや、確かにカリオストロが世話を焼くのは珍しいことだけど、そうじゃなくて……乗り換えるって言わなかった?」

カリオストロ「言ったな」

グラン「なんか、その時の言い方おかしくなかった? 俺がこのホムンクルスに乗り換える、とかそんなふうに聞こえたんだけど……」

カリオストロ「おかしくなんかねえよ、グランが身体を乗り換えるために造ったホムンクルスだからな」

グラン「……」

カリオストロ「なんだ、間抜け面して」

グラン「えーと……全く話が飲み込めないんだけど、なんで俺がホムンクルスに身体を乗り換えるの?」

カリオストロ「最近、グランを見てて思ったんだがな、どうにもお前はもろすぎる」

グラン「もろい?」

カリオストロ「ああ、顔をぶん殴られただけで腫れ上がるし、モンスターにちょっと小突かれただけでケガをする、そんなじゃあ、いつか死んじまうぞ」

グラン(いや、人はいつか死ぬし……あ、そっか、確かカリオストロは身体を定期的に乗り換えてるから不老不死なんだっけ……)

カリオストロ「オレ様と同じホムンクルスになれば、まず滅多なケガで死ぬことはない、どうだ?」

グラン「……さっきからやたらと俺に感想聞いてくると思ったけど、そういうことだったんだね」

カリオストロ「オレ様だって鬼じゃない、要望があるんなら聞いてやらないとな」

グラン「要望……それなら、そもそもの話で申し訳ないんだけど、ちょっと身体を乗り換えるのは止めときたいかなって思うだけど……」

カリオストロ「なんでだ? 遠慮する必要なんかないぞ」

グラン「遠慮というか、この身体のままでいたいし……それに、俺は別に女の子になりたいってわけでもないよ」

カリオストロ「……」

グラン「あ、カリオストロが俺の為にホムンクルスを造ってくれたことは凄く嬉しいよ! ただ、その……ちょっとこの身体に未練があるというか……」

カリオストロ「……ふん、まあいい、グランがまだ乗り換えたくないっていうのなら、仕方ねえな」

グラン「ご、ごめんね、せっかく造ってくれたのに」

カリオストロ「別にこんなもの、オレ様にかかれば片手間程度でできる、それに練習のつもりで造ったやつだしな」

グラン「そういえばカリオストロは新しい身体に乗り換えるんだよね? どういう身体にするの?」

カリオストロ「まあ、そこら辺はお披露目するまでの秘密だ、楽しみにしてろよ?」

グラン「う、うん……」


数日後


ビィ「へえ……それで最近カリオストロとデートしてないのか」

グラン「デートというか、そもそも部屋に籠って出てきてないみたいだしね」

ビィ「しかし、どんな姿になるんだろうな」

グラン「うーん……まあ、カリオストロの事だからまた美少女だと思うけど……」

ビィ「これでいきなりオッサンとかになってたら面白いよな」

グラン「さすがにそれは……」

カリオストロ「おい、グラン」

グラン「え? あ、カリオストロ」

ビィ「……ん?」

カリオストロ「待たせたな、オレ様と会えなくてさびしかっただろ?」

グラン「いや、そんなことは……」

カリオストロ「……」ギロリ

グラン「……あったよ、うん、すごくさびしかった」

カリオストロ「だよなあ? 人間、素直なのが一番だぜ」

ビィ「……おい、カリオストロ」

カリオストロ「なんだ、トカゲ」

ビィ「オイラはトカゲじゃねえ! ……相棒の話だと新しい身体に乗り換えるってことだけど……」

カリオストロ「なんだオレ様の話をしてたのか、やっぱりオレ様がいなくてさびしかったんだな、グラン?」

ビィ「それは置いといて……全然変わってねえじぇねえか、本当に新しい身体にしたのか?」

カリオストロ「はあ? ……まったく、これだからトカゲは……一回目ん玉新しいのと交換してこい」

ビィ「だ、だからオイラはトカゲじゃねえって言ってるだろ! 相棒だって同じに見えるよな?」

グラン「……」

カリオストロ「アホか、お前とオレ様のグランを一緒にするな、グランは一発でオレ様の重大な変化に気づいているぜ」

ビィ「な、なんだと……相棒もわかんねえよな!?」

グラン「……髪が」

ビィ「え?」

グラン「髪がサラサラになっている……気がする」

ビィ「そ、そんなのいつもと変わらな……」

カリオストロ「それでこそオレ様のグランだ、触って確かめてみろ」

ビィ「は?」

グラン「……うん、やっぱり指どおりが良くなってる」サラサラ

ビィ「……嘘だろ?」

グラン「本当だよ、まるでシルクを触ってるみたいだ」

ビィ「あ、いや、そうじゃなくてオイラが驚いたのは相棒の方なんだが……」

グラン「え、俺? 何で?」

ビィ「何でって……髪がサラサラになっただけって間違い探しにすらならないレベルだぞ、よくわかったな……」

グラン「うーん、上手く説明できないけどなんかいつもと違って髪が風になびいていた気がして」

ビィ「……」

カリオストロ「ほらな」ドヤッ

ビィ「……」

カリオストロ「さあグラン、今まで会えなかった分もまとめて遊びに行くぞ」

グラン「あ、うん、わかった」


ビィ「……行っちまった」

ビィ「つうか、カリオストロの奴、どさくさに紛れて『オレ様のグラン』とか言ってなかったか?」

ビィ「……まあ、下手な口出しはしないでおくか、丸呑みはごめんだぜ」



グラン「……」

カリオストロ「……」

グラン「……ねえ、カリオストロ」

カリオストロ「あん?」

グラン「……デートはさっき終わったよね?」

カリオストロ「ああ」

グラン「それならなんで、ここに?」

カリオストロ「……オレ様は考えたのさ」

グラン「……何を?」

カリオストロ「グランはいつ死ぬとも限らない、それこそほんの些細なケガでな」

グラン「ぶ、物騒なこと言わないでよ……」

カリオストロ「だからオレ様がお前を管理してやろうと思いついたわけだ」

グラン「か、管理……?」

カリオストロ「オレ様がそばにいればいざっていう時はリインフォースで回復できる、些細なケガは舐めて治せるしな」

グラン「……うん、その気持ちはありがたいんだけど……」

カリオストロ「そうだろう? よかったな、こんな美少女に管理されて」

グラン「でも、さすがに飛空艇の中でモンスターに襲われることはないと思うんだけど……」

カリオストロ「敵はモンスターに限らねえだろ、エルステの兵士共は飛空艇から飛び乗ってくるしな」

グラン「それはそうだね……でもこの部屋、俺の部屋で襲われることはないんじゃないかな」

カリオストロ「グランの部屋だって安全じゃねえよ、例えばアドウェルサクラスが襲ってきたら、飛空艇ごと攻撃されちまうかもしれないからな」

グラン「まあ、そうかもしれないけど……」

カリオストロ「やっとわかったか? まったくこれぐらい察しろよ、相変わらずニブいやつだな」

グラン「……でもね、やっぱり気になることがあるんだけど」

カリオストロ「なんだ? なにも変なことはないだろ?」

グラン「……俺の膝の上に座る必要はないんじゃないかな?」

カリオストロ「……」

グラン「カリオストロ?」

カリオストロ「これはな、あー……そう、椅子がないからだ」

グラン「それ明らかに今考えた言い訳だよね!?」

カリオストロ「この部屋に椅子が一脚しかないのが悪い」

グラン「俺の部屋なんだから椅子が一脚しかないのは当たり前なんだけど……何だったら、もう一脚持ってくるけど……」

カリオストロ「……」ドスッ

グラン「う!? 肘鉄はヒドイよ、カリオストロが原因でケガしちゃうかもしれないじゃないか」

カリオストロ「それこそオレ様が治してやるから問題ないな」

グラン「問題しかないような……」

カリオストロ「いちいち細かいことにうるせえんだよ、そんなに言うんならオレ様の所有物からオレ様専用の椅子に昇格させてやる」

グラン「そ、それは昇格なの……?」

カリオストロ「こんな美少女のお尻にしかれるなんてご褒美以外の何だ?」

グラン「……」

グラン(ちょっと否定できない部分があるだけに何も言えない……)

END


後日談

グラン(ふう、やっと一息ついた)

グラン(あれからカリオストロはずっとついてくるんだもんなあ、まいったよ)

グラン(しかも騎空団のみんなはあえて無視してる感じだったし……ラカムなんかニヤニヤしてたからな、あれ絶対面白がってる)

グラン(まあ、流石に浴室まではこないだろう、しばらくはここが憩いの空間になりそうだな)

グラン「……」ザバー

グラン「……こんなもんかな」

カリオストロ「まだ泡ついてるぞ」

グラン「あ、本当に?」

カリオストロ「洗ってやるよ」

グラン「ありがとう」

カリオストロ「これが終わったらオレ様の背中も洗えよな」

グラン「……」

カリオストロ「おい、無視すんな」

グラン「……いや、なんでカリオストロがここにいるのかなって思って」

カリオストロ「オレ様だって風呂くらい入るに決まってるだろ」

グラン「俺が聞きたかったのはそういことじゃなくて……うわっ」

カリオストロ「おい、なんで顔背けるんだよ」

グラン「ご、ごめん、カリオストロが裸だったから反射的につい……」

カリオストロ「……へえ」ニヤリ

グラン「な、何で笑うの?」

カリオストロ「ウブなグラン君にはちょっと刺激が強かったかな? 見たかったら見てもいいんだぞ? オレ様の最高のボディを」

グラン「ちょ、ちょっと待って……」

カリオストロ「ほらほら、何だったら触ってもいいぜ?」

グラン「いや、もうそれはかなりマズイ……」

バタン

ラカム「おい、グラン、後がつっかえてるのにいつまで入って……」

グラン「……あ」

カリオストロ「ん?」

ラカム「……え?」

グラン「ラ、ラカム、これは違うんだ……」

カリオストロ「おい、勝手に入ってくるんじゃねえよ」

ラカム「……あー、スマン、ごゆっくりな」

バタン

グラン「ご、誤解なんだよ、ラカムー!」

カリオストロ「さあ、グラン、今度はオレ様の背中流す番だ、体のすみずみまでしっかり綺麗にしろよ?」

END

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