二宮飛鳥「魂の服従」 (21)

※デレステの新規SRネタ

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P「よし、今日の仕事終わりっと……ん?」

飛鳥「………」ペラッ

P「飛鳥、まだ帰り支度してないのか? もう外は暗いぞ」

飛鳥「………」ペラッ

P「おーい、聞こえてるかー」

飛鳥「……ん?」

P「やっと気づいた。まだ帰らないのか」

飛鳥「あぁ、すまない。少し読書に熱中しすぎていたらしい」

P「どんな本を読んでいたんだ?」

飛鳥「小説」

P「もう少し詳しく」

飛鳥「架空の物語が綴られた娯楽作品」

P「誰が小説の定義を詳しく話せと言った」

飛鳥「冗談だよ」

飛鳥「しかしキミも無茶な質問だとは思わないかい。プロの作家が丹精こめて書き上げた数百ページ分の文字の羅列……その内容を、素人のボクに口で説明させようだなんて」

P「別に、そこまで完璧な説明は求めてないんだが……要は、その本の価値が下がると言いたいのか」

飛鳥「そうさ。キミにボクの言葉を通した表現が伝わった時点で、キミにとってのこの小説は形が歪められ、あるがままの新鮮さを失った何かに成り下がる」

飛鳥「だから、ボクの口から聞く前に、自分で読んでほしいところだね」

P「なるほどなあ。そこまで言うってことは、飛鳥的にはオススメの傑作なのか」

飛鳥「……さあ、それはどうだろうか」

P「え、違うのか?」

飛鳥「さっきも言ったけど、傑作かどうかはキミが読んで決めてくれ。ボクは人に何かを薦めるのは好きじゃないんだ」

P「どうして」

飛鳥「ボクは魂の服従なんか求めてない。従えたいとも従いたいとも思えないんだ」

P「自分の言うがままに読んでほしくはないってことか。しかし、それを言うためにわざわざ魂という単語を持ってくるか……」

飛鳥「やはり、ボクは痛いヤツだと思うかい」

P「ああ、そうだな」

P「でも、そういうところが愛おしい」

飛鳥「……P」



飛鳥「その発言は少し気持ち悪い」

P「いや、痛さには痛さで対抗しようかと」

飛鳥「痛さのベクトルが違うだろう」

P「悪かった」

飛鳥「ん……まあ、キミのボクに対する評価そのものは喜ばしいものだけどね」コホン

P「けど、俺は飛鳥にいろいろオススメとかしてもらいたいけどなあ」

飛鳥「どうして」

P「だって、より君のことを深く知る手がかりになるだろう。プロデューサーとして、飛鳥のことをもっともっと知っていきたいからな」

飛鳥「………」

P「飛鳥? どうしたんだ、いきなり真面目な顔して」

飛鳥「……なるほど。つまりキミは、ボクに魂の服従を申し出るということか」

P「え、いやそこまで大げさには」

飛鳥「だったら試してみるかい。ほんの少しの間だけ、互いが互いに服従するゲーム」

P「……それって、いわゆる『なんでも言うこと聞く』ってやつか?」

飛鳥「そうだね。では先攻はボクがもらおう」

P「待て待て、俺はやるなんて一言も言ってないぞ」

飛鳥「やらないのかい? ボクのターンを耐えれば、キミはボクになんでも命令することができるのに」

P「な、なんでも……?」

P「い、いやいや。やっぱりそういうのは」

飛鳥「……P。一瞬でも迷いを見せた時点で、キミの負けだ」ガシッ

P「えっ」

P「(両手で頬を挟まれた!?)」

P「な、何するつもりだ」

飛鳥「キス」

P「んなっ……!」

飛鳥「関心があるんだ。初めてを体験しておきたい……」

飛鳥「相手にするなら……キミがいい」

P「飛鳥………」ドキドキ

P「(飛鳥の整った顔立ちが、目と鼻の先に……!)」

飛鳥「さあ、覚悟はいいかい」スッ

P「………」

飛鳥「P………」




P「その辺にしとけ」チョップ

飛鳥「あうっ」

飛鳥「……脳天が痛いんだが」ジトー

P「君がからかうのが悪い」

P「あんなニヤニヤをこらえた顔でファーストキスを迫る女の子がいるもんか」

飛鳥「……あぁ、やはりキミにはお見通しか。ボクの悪戯心(フェイク)なんて」

P「飛鳥は割と思ってることが顔に出やすいってこと、自覚しといたほうがいいかもな」

飛鳥「忠告、痛み入るよ」フッ

P「しかし、俺以外の男にこんなことするんじゃないぞ?」

飛鳥「それはひょっとして、独占欲というヤツかい」

P「違う。相手が本気で勘違いしたらエラいことになるからだ」

飛鳥「……理解(わか)っているさ。こんなことはキミ以外にはしない」

飛鳥「キミだからこそ、こういうことをしたくなってしまうんだ」

P「俺だからこそ、ねえ」

飛鳥「……実際のところ、はっきりとしないんだ。ボクがキミに抱いている感情が、どういう類のモノなのか」

飛鳥「信頼、という一言で表すには、この感情は未知のモノが多すぎる……時に激しく、時に緩やかに、キミのことを想うと心が波打つ」

飛鳥「自分のことを理解されたい。相手のことを理解したい――そう心から思った、家族以外での初めての人間」

飛鳥「それが、P。キミなんだ」

P「飛鳥……」

P「そこまで思ってもらえるのは、俺もうれしい」

P「いつかその答えがわかったら、俺に伝えてくれ」

P「俺も、出せる答えは返すから」

飛鳥「……そうだね。いつになるかはボクも知らないけど、待っていてくれ」

飛鳥「Pは、線の内側にいる人だ」

P「線?」

飛鳥「心の中に引いてある、他人との境界線さ」

飛鳥「最近は、事務所のアイドルの一部もラインを飛び越えてきているけどね」

P「飛び越える、か。それは言い得て妙だな。みんな個性的で、ガンガン来る子が多いから」

飛鳥「まったくだよ。ボクが静かなひとときを過ごしたい時にも、容赦なく巻きこんでくるんだから」

P「……でもその顔を見る限り、まんざらでもなさそうだな」

飛鳥「そこが自分でもよく理解(わか)らないんだが……まあ、今はそれでいいのかもしれない」

飛鳥「強引な彼女達に、多少振り回されるのも悪くない……かな」

P「はは、そうか」

P「……さて、そろそろ帰るか」

飛鳥「このままキミと、夜が更けるまで過ごすというのは?」

P「却下。用もないのに事務所に泊まるもんじゃない」

飛鳥「……了解した」

P「ふうー、やっぱり外は冷えるなあ」ブルッ

飛鳥「あぁ、寒いね……」ジーー

P「どうしたんだ、上向いて。星でも眺めてるのか?」

飛鳥「………」

飛鳥「ボクは、自分の名前があまり好きではなかった」

P「どうしてだ? いい名前じゃないか、飛鳥って」

飛鳥「飛ぶ鳥と書いて飛鳥。けれどボクには、空を飛ぶための特別な翼なんてなかった。平々凡々な女の子だった……だから、好きじゃなかった」

P「そうか……でも、『じゃなかった』ということは」

飛鳥「そうだね。今は好きになれそうさ」

飛鳥「飛び立てないボクに、キミが翼を与えてくれたから」

P「……俺は翼をあげてなんかいない」

P「最初から、どでかい翼が飛鳥の中にあったんだ。俺はそれの使い方を教えただけ」

飛鳥「……ふふ、キミらしい回答だ」

飛鳥「いつだって、自分のアイドルの可能性を諦めない。キミはそういうヤツだったね」

飛鳥「綺麗な星空だ」

P「都会は街灯が多いから、星を見るには少し邪魔だけどな」

飛鳥「それでも、こうして眺めるだけなら十分さ」

飛鳥「……考えてみれば。あの小さな、街灯に負けてしまいそうな星達も、ボクらとは比べ物にならないほどの大きさを持っている」

飛鳥「宇宙から見れば、ボク達の存在はあまりにも小さい……そう思わないかい」

P「ふむ……」

P「確かにそうかもしれないけど、それは宇宙から見た場合の話だろう?」

P「俺から見れば、その辺に見える星よりも飛鳥の方が大きいし、綺麗に見える。そして俺にとっては、その事実の方がよっぽど重要だ」

飛鳥「綺麗……ふぅん」

P「なんかうれしそうだな」

飛鳥「別に」

P「結局は、見え方次第ってことだな」

飛鳥「……なるほど。セカイを見て聞いて感じるのは、いつだって自分自身」

飛鳥「ならば、なにより重要視すべきなのは主観だということか」

P「まあだいだいそんな感じだ。だから俺は、たくさんのファンから、飛鳥がトップアイドルに見えるようにしていくさ」

飛鳥「ふっ……見えるよう、ときたか。P、やはりキミは面白い」

P「そりゃあ、多少面白おかしい人間じゃないと、飛鳥とうまくやっていけないだろうし」

飛鳥「違いないね」

飛鳥「いいよ、付き合おう。ボクも、自分がどれだけのペルソナを生み出せるのか、興味があるから」

P「頑張っていこうな。俺も、飛鳥の全部を引き出せるよう努力するから」

飛鳥「期待しているよ」

P「しかし……寒い。手の感覚が麻痺しそうだ」

飛鳥「キミ、手袋持ってきていないのかい」

P「うっかり家に忘れてきた」

飛鳥「男のドジっ子属性ほど役に立たないものもないね」

P「ぐさっとくること言うのはやめてほしい」

飛鳥「だが事実さ……P、右手を出してくれ」

P「ん? はい」

飛鳥「………」ギュッ

P「おっ……」

飛鳥「こうして手を握っていれば、片手の寒さは和らぐだろう?」ニコ

P「……ああ。ありがとう」

飛鳥「ねえ、P」

P「ん?」

飛鳥「まだ、自分の気持ちの整理がついていないけど……でも、これだけは言える」

飛鳥「ボクは、キミにそばにいてほしい。キミはボクの定点観測者であり、共犯者だ」

P「……うん、そうか。共犯者か」

P「俺も同じだ。飛鳥がどこまで羽ばたいていけるか、この目でしっかり確かめたい」

飛鳥「どこまで羽ばたけるか、か」

飛鳥「キミとボクとの魂が響き合う先に、何が待っているのか。楽しみだよ、本当に」

P「………」

飛鳥「……P?」

P「いや……やっぱり、飛鳥の笑顔はいいなって」

飛鳥「……不意打ち気味に褒められても、ボクは照れたりしないよ」

P「そうか」

P「ところで、なんでそっぽ向いてるんだ?」

飛鳥「ボクがどこを向いて歩こうがボクの勝手だろう」

P「それはそうなんだけど……あ、そうだ。魂の服従ゲーム、俺のターンやってなかったな」

P「というわけで命令だ。こっちに顔を向けなさい」

飛鳥「こ、ここでそれを持ち出すのは卑怯じゃないかな」

P「残念ながら大人は卑怯な生き物なんだ。ほら、こっち向けって」ニヤニヤ

飛鳥「い・や・だ。だいたいボクの命令だって完遂されていないんだ、拒否権はある!」

P「あれは立場上受け入れられない命令だったからな。例外例外」

飛鳥「例外もなにも――」

P「でも――」

飛鳥「でももへちまも――」


そんな感じで仲良く一緒に帰りました


おしまい

終わりです。お付き合いいただきありがとうございます
久し振りの新規SRも相変わらずの痛さで安心しました。コミュはどうなっているのか今から気になります

飛鳥がデレステの上位報酬に来たので頑張ってMas+できるようにガンバリマス
飛鳥をルームでつまんでぐるぐるさせるのが楽しいので、梨沙としゅがはさんもはやくデレステにきてほしい、切実に

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