男「バイオハザード・・・・?」(55)
地球は人類の事が嫌いだった。
穴を掘り石油を組み上げ、戦争をして原爆を使う。
木々を切り倒し、ダムを作り我が物顔で好き勝手にやっている人間達を。
そこで、地球は色々な最近を送り込んだ。
黒死病やsars、hiv、インフルエンザ・・・・しかし人類はことごとく退けた。
遂に嫌気が差した地球は、人間を操る為の細菌・・・ウイルスをばら撒いた。
それが「人間が理性を失うウイルス」、ゾンビになるウイルスだった。
地球は、とある人物に目をつけた。
見た目も人生も普通のサラリーマン。
そのサラリーマンの日課は、毎朝ベランダでコーヒーを飲むこと。
晴れの日も、雨の日も、風の日も・・・
ある朝。地球は、上空からそのコーヒーカップめがけてオリジナルウイルスを投入した。
オリジナルウイルスは特別性のタイマー付き。
経口摂取後、1時間で効果を発揮する。
サラリーマンはコーヒーを一気に飲み干し、スーツに着替えて通勤ラッシュへ向かった・・・。
通勤ラッシュ。
車両内に隙間無く、まるでコンビニの棚に並べられるジュースのように人間が押し込まれる。
サラリーマンは慣れた手つきでイヤホンを耳に付け、
しばし1時間ほどの苦痛から気を紛らわせるため目を瞑った・・・。
気分が悪い・・・吐き気、頭痛、全身の倦怠感。
風邪だろうか・・・?
突然、こんな・・・・
サラリーマンは目の前に密着しているolのうなじを見つめつつ、
おかしなことを考えていた・・・
「おいしそうだ・・・・とても、おいしそうだ・・・・」
誰かが言う
「おいしいよ?食べちゃいなよ。」
おかしい、イヤホンをしているサラリーマンに、周りの声が聞こえる筈が無かった
だが・・・「食べていいんだよ?好きにしていいんだよ?」
声の主はサラリーマンを誘惑する・・・
サラリーマン「そうだ、食べていいんだ・・・・・」
思い切りolの首下に食らい付き、サラリーマンは雄たけびを上げた。
olの悲鳴とサラリーマンの雄たけびが車両内に響き渡る。
その場を混乱が支配する。
「な、なにをしているんだお前は!?」
「離れなさいよっ!!」
だがサラリーマンは無我夢中でolを食べ続ける・・・
引き離そうとする人間達はすぐにその人間離れした腕力でふっ飛ばされた。
そして、サラリーマンはolを食べつくしてしまった。
もうおなかは一杯だ。olは動かない。死んでしまったようだ・・・。
だがなぜだろう?
噛み付きたい衝動だけは抑えられない・・・・。
サラリーマンは、男女問わず噛み付いて回った・・・・。
そして噛み付かれたものは、同じように腹が膨れるまで人間を襲い、腹が膨れれば噛み付き続けた・・・。
大学 工学部棟
講義はダルい・・・
俺の家は貧乏だったせいで、大学に行く金が無かった。
だが、大学くらいは出ておきたくて、国立を受けようとしたが
俺の成績では難しく、かと言って1ランク下の私立では金が無く通えない。
だから志望校から2ランク下のこの大学に入り、成績優秀生として奨学金を貰おうと思った。
確かにこのまま行けば余裕だ。就職活動は既に終わった。
研究室では、3年生ということでそれなりに実験の手伝いやらをしている。
水流に関する研究室だが、水流というだけあってばかでかい・・・・3m四方ほどのタンク内に水を溜め込み実験を行う。
男「もう昼か・・・」
友1「そうだな、飯食いにいこうぜ。」
友2「今日の定食は、から揚げ定食だったよ?」
男「から揚げか、大好物だぜ」
友1「んじゃいこうぜ!」
友1と友2は研究室も、受ける授業も全て同じ。
1年からの友人だ。
そして・・・
女「遅い!」
幼馴染の女。こいつが色々とうるさい・・・・。
女は俺と幼馴染というだけで、学部も学科も違うというのに色々と突っ掛って来る。
男「待ち合わせした覚えは無い。」
友2「そ、それにね・・・・工学部の棟はちょっと遠いんだよ、ここから・・・あははは・・・」
女「ふんっ!さっさと行くわよ!今日はあんたの好物の・・・」
男「から揚げだろ。」
女「ど、どうして知って!?」
友2「えへへへ・・・・・(汗」
男「っというわけだ。ふふふふふ」
女「と、とにかく行くわよ!」
男「へいへい・・・」
友1「お前も大変だな・・・・」
男「つき合わせて悪いな、まぁじっくり『楽しもう』ぜ?な?親友?」
午後からは研究室に篭りっきりになる。
女「じゃあ、また迎えに行くから大人しくしてるのよ!いいわね!」
男「はーい、じゃあまたなー」
女「あんた本当に分かってんでしょうねぇ・・・・!」
男「そんなカリカリしなさんな、『お前の事、待ってるから』・・・・・」
女「はうっ!(照)」ビクッ
女「わ、わかればいいのよ・・・わかれば・・・・・」ぶつぶつ
男「んじゃな」てくてくてく・・・
友1「まるで夫婦だな?」つんつん
男「うるせー。」
研究室
先輩「はぁ・・・・こんな感じかしら?」
ガラッ
男「こんにちわー」
友1「こんちゃっす!」
友2「こんにちは」
先輩「あら早かったのね、先生は今日来てなくて・・・・たぶんお休みだと思うわよ?」
友2「えっ、そうなんですか・・・?」
男「じゃあ、先輩の手伝いって形ですかね?」
先輩「そうなるわね。よろしくね♪」
先生はもう定年を過ぎているが、とても有能な方で
大学側にお願いされてまだ勤めているという形だ
そして、有能すぎるが故、よく学会や他大学との教授とお付き合いに出かける
ほとんど研究室の人間には伝えないで、サッっと居なくなるタイプなので
動向を把握するのは、ほぼ無理だ。
どうせ今日もお付き合いだろう。
そしてこの研究室には先輩1人しか居ない。
っというのも他にも居たのだが、もう来ない。卒論を書き終えてしまったからだ。
さらに言うならば、この先輩のことを・・・・
友1「先輩!今日は何の手伝いをしましょうか!?力仕事なら任せてください!!」
友1が好きなのだ。
先輩「ごめんなさいね。もう力仕事は殆ど無いの。」
先輩「今作ってるのは卒論発表用のパワーポイントよ。みてくれる?是非意見が欲しいわ。」
先輩の課題は、乱流のコントロールについて。とてつもなく難しい。
大学の何万冊もある図書館へ行って、専門書を漁り、やっと10ページ分ほどの情報が得られる程度。
俺達はパワーポイントを見せられ、先輩が傍で説明をする。
先輩「シミュレーションと実機での実験結果から、乱流をコントロールする上で・・・・」
カチッ・・・・カチッ・・・・・・・
先輩の流れるような説明に俺達は聴き入るが・・・・一人聴いていない奴がいた。
先輩「どうかな?友1君、分かりにくいところなかった?」
友1「あっ、えっと・・・あ、ありませんでした!」
こいつ・・・・
今日はパワーポイントを見せてもらい、
卒論時に他学科の教授たちの前で発表するための練習?のようなことをした。
難しいな・・・先輩のを使いまわさせてもらおうか・・・・。
ちなみに、先輩も俺と同じく奨学金目的でランクを落として入ってきた口だ。
乱流の研究なんか、こんな大学でやる内容じゃない。
他の先輩達は簡単なもので済ませてしまい、2ヶ月も前に学校に来なくなったくらいだ。
だから今研究室に通っているのは、俺達3人と先輩1人、後は、先生くらいのものだ。
まぁ、あえて言うなら?
ガラッ
女「迎えに来たわよ!」
こいつもそうなのかもしれないが。
先輩「調度、今終わったところよ?さ、さ、男君、帰りなさい?」
男「は、はい・・・・」
女「何よ、嫌そうな顔して!」
まだ説明が途中だったんですけど、先輩・・・俺を見放して、そんな・・・・・
友1「じゃあなー」ふりふりふりふり!!
友2「ぼ、僕らはもう少し残るね・・・・あははは・・・・」ふりふり・・・
先輩「じゃあねー♪」ふりふり
女「失礼します」
男「あうぅ・・・・」
ガラッ
売り飛ばされた・・・・
夜の帰り道
女「やたらとパトカーが走ってるわね。」てくてく
男「そうだな、なんか事件でもあったんじゃないのか?」てくてく
女「えっ、じ、事件・・・・!?」
男「大丈夫だって、とりあえず今は一緒なんだし。」
男「それに、同じアパートに住んでるんだからさ。」
男「なんかあったら電話してこいよ?」
女「う、うん・・・助かるわ・・・・」
いつもの威勢はどこへやら・・・・いつもこんななら良いんだがなぁ・・・・
家に帰りtvを付ける
男「駅で連続通り魔事件・・・?」
男「複数犯、って・・・・こえぇなぁ・・・・組織立ってるのかよ。」
男「しかもすぐ近くじゃないか。」
あぁ、ちょっと胸騒ぎがしてきたな・・・・。
確か親父の形見の木刀があったよな・・・
ゴソゴソ・・・すっ・・・・・
男「ん~・・・・・重い!使い辛い!!」
男「携行性も考えて、大きめのカッターナイフでいいか。これなら鞄に入れてても平気だ」
翌朝
ピンポーン
男「ん?女が迎えに来るまではまだ15分程時間があるが・・・?」たったったったった
ガチャッ
男「わりぃ、もうちょっと待って・・・・あれ、お隣さん?」
お隣さん「おはようございます・・・・」
男「どうされたんですか、こんな朝に・・・・」
男「って、お隣さんってもう電車に乗ってなきゃいけない時間ですよね?」
ん・・・?なんか挙動がおかしい・・・・・?風邪でもひいたのだろうか?
お隣さん「お、男さん・・・はぁはぁ・・・・・が、我慢できません・・・・」
男「我慢・・・・?」
お隣さん「食べさせてくださいぃっ!!」
男「うわぁっ!?」
そう言うや否や、お隣さんが俺の両肩に掴みかかり、首めがけて噛み付く体勢に入った!!
男「何を!?」
俺は、額を左手で押し返しつつ、右手で突き上げるように顎に掌底を叩き込んだ。
その衝撃で軽い脳震盪を起こした。
今だ!俺は寝転がった状態から、お隣さんの胸板目掛けて渾身の蹴りを入れてふっ飛ばした。
すぐにドアを閉め、鍵を閉める。
今のは一体なんだったんだ!?
食べさせてください・・・・?
お隣さんの声が俺の頭の中で響き渡る・・・・。
そんなことはどうでもいい、言葉じゃない、行動で一目瞭然だ!
ドンッ!ドンッ!ドンッ!!
今も尚、ドアにタックルをかけてきているようだ。
俺は女に電話をする。
ぷるるるる・・・・ぷるるるる・・・・・
女「どうしたの?って、あんた壁でも殴ってんの?ドンドン煩いわね。」
男「良かった、無事か!良いか、絶対部屋から出るなよ!?いいな!!」
女「えっ、あ、うん・・・・もしかして、なんかヤバイ・・・?その、ドンドンッって音・・・・」
男「あぁ、結構ヤバイ。今から警察呼ぶから、迎えに行くまでそのままでいろ!」
女「わ、わかった・・・・」
ぷるるるる・・・ぷるるるる・・・・
警察「はい、もしもし。」
男「警察ですか!?よかった!!今、部屋に強盗っていうかヤバイ奴が入ろうとしてきてて・・・」
警察「落ち着いてください。お名前と住所を・・・」
男「はい、名前は男。住所は、神奈川県川崎市・・・・」
警察「わかりました。ではすぐ向かわせますので現状の説明をして下さい・・・・」
男「はい・・・・」
男「っというわけでして・・・・・」
警察「そうですか、では自衛に勤めて頂いて、到着までお待ち下さい・・・・」ぷちっ
男「えっ・・・・?きら・・・れた・・・・?」
自衛・・・・ねぇ・・・・・・・
さっきの腕力、明らかに女性の物じゃなかった。
木刀がいるか・・・・?
しかし、お隣さんがどうして急にあんな・・・・
お隣さん「ねぇ、男君・・・・開けて欲しいなぁ・・・・お姉さんもぉ我慢できないのぉ・・・・あれ?」
男「!?・・・・どこかのドアが開いた!?」
「朝からどうされたんですか?」てくてく
お隣さん「あらぁ、305号室の・・・・ふふふふふ・・・・・・」てくてく・・・
男「ま、まずい!」
糞!木刀を持って・・・・!! ガタッ!
ガチャッ
男「その人に近づいちゃいけ・・・・な・・・・・・・」
にやり
お隣さん「一芝居売った甲斐があったわぁぁああっ!!」だだだだだ
「ははははは、ひっかかってくれたんだねぇええ!」だだだだ
男「くっそおおっ!!グルだったのかっ!!」
俺は木刀を振りかざし、お隣さんの首の付け根に思い切り振り下ろす!
グギッ!
鈍い音を立てて、首の骨が折れる音が廊下に響き渡る・・・・
お隣さん「ゲグッ・・・・」ドサッ・・・・
こ、殺してしまったのか!?
しかし今は・・・!!
「はははははははっ!!」だだだだだだ!!
無我夢中、という奴だろうか。
何も考えずに俺に向かって一直線に向かってくる。
俺は腰溜めに持ち直した木刀の底の部分に手の平を乗せ、
一歩踏み出し、みぞおちに突きをお見舞いする!
走ってきた勢いと俺が踏み出したことで、体がくの字に折れ曲がる!
そこへ、すかさず木刀のもち手を逆にして、ハンマー代わりにし・・・頭を叩き割るっ!!
ゴュシャッ・・・・ぷしゅっ・・・・ぷしゅっ・・・・・・
・・・・死んだ、のか?
男「殺してしまった・・・・?」
でも、やらなきゃ・・・・食われてた!!
食われるなんて嫌だ・・・・絶対に!
この人たちに一体何があったのか知らないが、
俺は食われるとか、死ぬとか、絶対に嫌だ・・・!!
男「そ、そうだ!女!女は!?」
俺はカッターナイフと木刀を持ち、女の部屋へ向かう・・・。
たったったったった・・・
女の部屋は1つ下の階。2階だ。
「ねぇ、開けてよ。女ちゃん?」ドンドン
男「あれは・・・女に手出してんじゃねーぞ!うおおおおっ!」だだだだだ
「あぁ!他にも居たぁっ!」だだだだだ
ドスッ!ゴキッ!!
男「はぁはぁ・・・・このアパートはヤバイ!」
ドンドン
男「女!俺だ、開けてくれ!!」
女「お、男なの・・・・?」
すると女は、チェーンをかけたまま少しドアを開けて俺のことを確認した。
男「大丈夫か!?怪我は、無いか!?」
女「い、いつもの男・・・よね・・・・?」
男「当たり前だろう!ここはヤバイ、早く逃げるぞ!」
女「う、うん・・・ちょっと待って・・・・」
ごそごそ・・・・ガチャッ
女「いいわよ。行きましょう。」
男「よし、俺のバイクを使って大学まで逃げる!」
女「わかったわ。」
俺達は急いで駐輪場へ向い、vtrのエンジンに火を入れる。
男「ちょっとこれ持っててくれ」
俺は血が染み込み始めている木刀を渡す・・・
女「・・・・・本当に殺したのね。」
男「あぁ・・・・・3人殺した。だが、奴らも俺達を『喰う』つもりだった。」
女「喰う?私の事を食べるつもりだったの?あの人・・・・」
男「そうだ。そう言っていた。俺のお隣さんは・・・・」
女「お、お隣さんって・・・・・」
男「ほら、行くぞ。ヘルメットかぶれ。」
ブォオオオオン・・・・・・
道に出てすぐ、パトカーがやって来た。
女「け、警察だわ!助かった!」
男「俺が呼んだんだ。」
俺はパトカーの隣にバイクを付けて、話をしようとする。
警官「あなたが通報された、男さん、ですか?」
男「そうです。あのアパートは・・・・」
っと、話をしている途中で違和感に気付く・・・・おかしい。
なぜサイレンを鳴らさなかった?
赤色灯だけが回転している・・・・それにこの警官・・・・雰囲気がさっきの奴らと似ている!?
俺は女に恵ませで「しっかり掴まれ」と合図し・・・・・
警官との会話をエンジン音で掻き消しすように、クラッチを繋ぎ急加速を掛ける!!
グォオオオオンッ!!キュルルルルルルッ!!ブォオオオオオオン・・・・・・
バックミラーで後ろを確認すると・・・ホルスターから拳銃を抜いている!?
俺は道をs字に走り抜ける!!
パンッ!パンッ!
アスファルトに兆弾した弾の音!
後ろからサイレンを鳴らしながら急加速をかけて迫り来るパトカー・・・!
ウォオオオオオオオオオオン!!
80キロまで加速をかけた後、急減速を掛け・・・・
パトカー・・・クラウンサイズでは入れないような路地に俺達は飛び込む!
男「警察まで・・・グルなのか!?」
女「ねぇ!どうなってんのよ!これ!!」
男「知るかよ!警察も信用できねーってことだよ!!」
それに・・・町の様子が異様だ・・・・。
車が走っていない。
それに歩道を歩く人間は皆、挙動が奴らと似ている・・・
首を若干横に垂らし、へらへらと笑っている・・・・
まさか・・・・俺は警察に連絡した・・・・「助けてくれ」と。
そして警察は「まだ、まともな奴がいる。襲いに行こう」と判断した・・・?
ふざけるなよ!?頼りになる警察が、襲いに来るんじゃ誰も助からない!!
「ギャアアアアアアアッ!!」
大学までの道中、俺は何人も人が喰われている姿を目撃した。
喰われている人間の周りには、奴らが集まっている。嫌でも視界に入る。
そして、道中に死体もたくさんあった・・・。
人を喰う・・・・ゾンビ・・・・・・?
しかし違う。ゾンビなら、なぜ死体は蘇らない?
映画や漫画のゾンビは、死んだとしても蘇るはずなのに・・・・。
ブォオオオオン・・・ブォンブォン・・・・・・・
大学に着いた・・・バイクを隠し、研究室へ向かう。
女「どうするつもり・・・?」
男「仲間の無事を確かめる。」
俺は女から木刀を受け取り、雑木林に身を隠しながら研究室がある棟へ向かう。
男「お前、武器は・・・?って、それ本物か!?」
女が手にしていたのは催涙スプレーと・・・スタンガンだった。
女「護身用にって、お父さんが。」
まぁ、分からないでもない。女の子を一人暮らしさせる時点でこういうのを与えるのは普通、か。
入り口が迫る。正面、距離6m。奴らはいない・・・それどころか、人っ子一人いない。
不気味すぎる。
エレベーター最寄の入り口が、バイク置き場から近くて助かった。
男「一気に走りぬけるぞ。ボタンを押したら身を低くして警戒しろ。」
女「わかった。」
男「今だっ!!」ガサガサッ!
たったったったったっ!
ポチッ・・・・グィィィィィィィィィン・・・・・
俺は周囲の警戒を行う。エレベーターは2基。念のため入り口からは少し離れる。
6階・・・5階・・・4階・・・・エレベーターが止まった!?
女「と、止まったわよ!?誰か乗り込んでるんじゃない!?」
ありえる・・・・。奴らならやりかねない・・・・。
いちいちと回りくどいことをしてくれるっ!
ガタンッ・・・・グィィィィィィィィン・・・・・・・
エレベーターが動き始めた・・・・どうする・・・?
返り討ちにするか?
こっちにはスタンガンと催涙スプレーまである・・・!
俺は女に目配せで、身を隠して返り討ちにすることを伝える
女「わかった。じゃあ一気に行くわよ」
・・・2階・・・1階・・・・・チーンッ
すた・・・すた・・・・
やはり誰か乗っていた!俺達は飛び掛る!
男「うぉおおおおおおお!!」
友1「え!?」
男「あっ」
女「おっ?」
友1「な、何やってんだお前ら・・・?」
男「そりゃこっちのセリフだ。」
女「そうよ!脅かさないでよ!!」
友1「あ、あのさ・・・・どうして俺、責められてるのかな?」
友1「確かにどっちかっていうと、mの方だけどさ・・・・(照)」
それは冗談で言っているのか・・・・?
男「どこへ行くつもりだ?」
友1「銭湯だよ。昨日研究室に泊り込んだんだ。」
友1「先輩の卒論について協力してたら朝になっててな。ふぁぁぁぁ、眠い。」
女「大丈夫そうね・・・・」
男「そうみたいだな。おい、友1。今、外は危険だ・・・・」
友1「そうみたいだな。お前らのその格好みりゃ一目瞭然だ。」
確かに・・・服に付いた血は、バイクに乗っている間に乾いてしまってどす黒くなっている。
白いyシャツとのコントラストで余計に酷く見えただろう・・・・。
男「研究室に戻る。外はまずいんだ。俺達もつれていけ。」
友1「お、おう・・・わかった。」
カチャッ・・・・チーン・・・・ウィィィィィィン・・・・・・
友1「で、外で何が起きてるんだよ?」
男「人が人を喰ってる。いや、喰ってる側の奴らはもう人間じゃない。ゾンビみたいなもんだ」
友1「マジ・・・・?」
俺は友1に木刀を渡す・・・・
友1「・・・・・マジでやべぇな、こりゃ。血はともかく、『具』まで付いてるぞ・・・・」
チーン・・・ウイーン・・・・
周囲の警戒を行いつつ俺達は研究室へ向かう
男「うちの研究室以外、全て人がいないな」
友1「当たり前だろ、うちの大学で泊り込むようなのがいるわけない」
男「それもそうか・・・」
今のところは、安全っということか・・・
ガラッ
先輩「あら、今日は早いのね。午前の授業はどうしたの?」
男「そんなことより・・・・」
俺は事の経緯を友1と先輩に説明した。
女「早く、どこかへ逃げないと!」
先輩「・・・・・・・でも、卒論があって」
男「何を言ってるんですか!?卒論なんてどうでもいいじゃないですか!」
男「早くここから逃げないと!」
先輩「私が今までがんばってきたことが全部無駄だって言いたいの・・・・・?」
男「せ、先輩・・・・・・?」
先輩「これまで毎晩徹夜して、がんばって作って、もう少しで出来上がるのに」
先輩「それが全部無駄だって言いたいのね!?」
男「そんなこと言ってませんよ!」
男「このままじゃ卒業どころの騒ぎじゃ済まない・・・ん・・・・で・・・・何をしてるんですか?」
先輩「私は研究したいの!卒業したいの!じゃなきゃ家に迷惑がかかる!!」
先輩「さっき男君は、周りはゾンビだらけだって言ったよね?」
男「はい、そう言いました。ですから!」
先輩「じゃあ、私がゾンビになっちゃえば卒業できるんじゃないの?」
女「な、何を言ってるんですか!?」
女「研究のために、卒業のためにあいつらみたいになりたいんですか!?」
先輩「そうよ。そうすれば全部上手く行くわ・・・・うふふふふふふ・・・・・・」
先輩は完全に頭がイカレてしまった・・・
先輩「これが私の全てなの!これが世の中に出れば、とっても画期的な物として評価される!!」
先輩「それを私から奪わないで!」
友1「そうだ・・・・・これが先輩の全てなんだよ!」
友1「お前らにはわからねーよ!一緒に研究もしてねー癖に偉そうな事言ってよ!!」
友1「大丈夫ですよ先輩、俺が居ますから・・・・」
先輩「友1君・・・・ありがとう・・・・・・」
友1の目は、好きな女と一緒に死ぬ男の目だ。
哀れみと悲しみと諦めと、何かを守るという強い意思を感じさせる目だ。
女「そ、そんな!」
男「わかった・・・・」
女「ちょ、ちょっと男!!」
男「止めない、あんたたちは好きにすればいい。俺達は逃げる・・・・」
男「ところで、友2を知らないか?」
友1「いや、昨日分かれたっきりだ・・・」
男「そうか・・・短い間でしたけど、お世話になりました・・・・じゃあな、友1・・・・・」
先輩「・・・・・・・」
友1「あぁ・・・・・・」
ガラッ ピシャッ・・・
男「行くぞ、女。」すたすたすた・・・・
女「う、うん・・・・」すたすたすた・・・・
トゥルルルルルル・・・・
友2『男!何してるの!』
男「今どこだ?」
友2『何言ってんのさ、授業に決まってるじゃん!』
友2『出席カードは取っておいてあげたから、早くきなよ!』
『グシャッ・・・ギャァァア・・・・・ヤ、ヤメテ・・・・ギャァァァァ・・・・・・』
男「・・・・・・そうしたいところだが」
友2『待ってる・・・・から・・・・・・ね?』プチッ ツーツーツーツー・・・・
女「どうだった?」
男「・・・・・ダメだったよ。」
やけに構内が静かだと思っていれば、教室で待ち伏せしてやがるのか・・・
男「とりあえず、実家に帰るぞ!」
女「う、うん・・・」
俺達の実家は千葉だ。
今居る川崎から、浮島へ向い、アクララインを通って多少南下する。
ブォオンッ!
再びvtrに火を入れる。
実家までは1時間半。ぶっ飛ばせば1時間で着く。
ブォオオオオオオン・・・・・
さすがに産業道路ともなると、車が走っている・・・
ついでにパトカーも・・・・
俺はバイクのナンバーが警察に知られていることを恐れ
駐輪場の隣にあったバイクからナンバープレートを拝借しておいた。
そうでなければ警察も見逃してはくれまい。
・・・・・・・渋滞?
なんだ、様子がおかしい。
俺は速度を落とし、停車している車の間をすり抜け、先に向かう・・・・
乗用車の中には、平日だというのに家族連れが多く乗っている・・・
表情は皆、暗く絶望している。俺と同じことを考えているのだろう。
脱出
俺はバイクを進める・・・・
渋滞の原因が判明した。最悪だ。
警察による検問だった・・・・。
俺はバイクを乗り捨て、歩道橋から検問場所を見る・・・・
車から全員降りるように促されている・・・
この町から出さないつもりか!
いや・・・それだけならまだいい。
もし、奴らのようにしてから、各地へ向かうように仕向けているとすれば?
何を考えてやがる・・・・!
もし、無理にアクアラインのトンネルに入れば袋のネズミ・・・
こいつら、ゾンビの癖に意思がはっきりしてる分性質が悪いぜ・・・・
車に戻ってきた奴らは全員虚ろな目と、奴ら独特のニタニタとした笑い顔になっていた。
体に欠損箇所は・・・・見当たらない?
腹が満たされれば、無闇に噛み付くことで仲間を増やすのか・・・・?
そして腹が満たされる程に、大量に体を喰われた場合、蘇生せずにそのまま死亡する
大体そんなところか・・・
そして今並んでいるこの車の列・・・・
母親が娘を抱きかかえている家族・・・・
時間に追われてイライラしているトラックの運転手・・・・
全員が犠牲になる・・・・・
これが、バイオハザードって奴か。
俺はバイクに戻りながらそんなことを考えていた・・・。
女「どうだった?」
男「ダメだ。警察が検問と称して、全員をゾンビにしてやがる。」
女「ひ、ひどい・・・・」
男「人数は15~20人。悪いが俺達だけじゃ・・・・」
女「仕方・・・無い・・・・よ・・・・・」
男「とにかく、人の多いところはまずい。このまま北西に向かって、多摩辺りから東京に入る。」
男「そこから埼玉へ抜けて、千葉へ向かう。都心部は避けるべきだ。」
女「そうね・・・そうしましょう・・・・それよりも、その木刀。どうにかならないの?」
女「ゾンビからしたら人間だって分かるし、人間から見たら頭オカシイ人だって思われちゃうよ?」
男「うっ・・・・確かに・・・・・・・」
破壊力的には木刀が一番良かったんだが・・・・
男「やっぱり銃、なのか・・・?」
とは言え、本物が手に入るはずが無い・・・・。
おもちゃの改造品を手に入れるのが一番手っ取り早い、か。
mp7あたりでいいだろう・・・・。
ストックを伸ばせば遠距離も対応できる。
中に鉛を流し込んで各部のパーツを強化品にすればいい・・・。
後はコンバットナイフでもあれば・・・。
それにガソリンも補充しておきたい。
なんにしろ、金が必要だ。なけなしの貯金を全額引き出すか・・・。
男「って、血まみれの木刀を持ってるから怪しまれるだけで」
男「布とかを巻きつければ怪しまれないだろう!」
女「そうだっけぇ~♪」
男「お前・・・・持つのが邪魔臭いからそういうこと言ったのか・・・」
女「さぁ、どうでしょう♪」
本当にこの女は・・・・。
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