絢瀬絵里はにこがスキスキ (32)


 傷つきたくない
 でもそれ以上に 誰も だれも 傷つけたくない

   ~矢澤にこ~


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絵里「ねぇにこ」

にこ「ぬぁによっ、呼び出しなんかして」




絵里「私ね……あなたのこと、好きなの」




校舎裏で突然そんなこと言われたって、


にこ「に、にこにーはみんなのアイドルにこっ!」

絵里「いや……冗談抜きで」


ごめんなさい

こんな時、どういう顔をすればいいのかわからないにこ……


にこ「やだぁ、にこってばモテ期? にっこにこっこにー!」

絵里「ふざけないで」


とりあえず茶化してみたら叱られた。


絵里「とりあえず1日、じっくり考えてみてくれないかしら」

にこ「……」

絵里「じゃっ、また明日」パチッ


そう言って絵里は あの愛くるしいウインクだけを残して

あっけないほど潔く すたすたとその場を去っていった





にこ「にっこ、にっこ、ぬぃぃぃ……」


ひとりでふざけてみても、もはやツッコミが役不足なのだ。

役不足? その言葉を使うヤツはすべからく確信犯よ。


…………
……


――翌日 喫茶店


にこ「ん、待たせたみたいね」


待ち合わせ場所に10分前に着いたというのに

なんと絵里はすでに待ち構えていた


絵里「ん。いま来たとこ」

絵里「はいメニュー」ススッ


いやいやいや、あんたもすでに飲み終わってるでしょ

どんだけ前から待ってたのよ。にこのことを。

にこのなんかのことを……


にこ「にこはいちごオレ、にこっ☆」キャピ

絵里「ふふっ。かわい」クスクス

にこ「~~っ!///」


そのリアクションは予想外だった……


絵里「あ、すみません。いちごオレふたつ」

 カシコマリマシター!

絵里「私のおごりだから遠慮しないでね。ていうか呼び出したの私だし」パチッ


そのウインクが気に食わないのよっ! ハートマーク飛ばすのやめなさい!


にこ「デラックスパフェひとつ! 追加で!」

 カ、カシコマリマシター!


 → 絵里 の サイフ に 1860円 の ダメージ を あたえた!





にこ「……うぷ」

絵里「ふふっ、にこのカラダと胃袋のサイズじゃあデラックスパフェは難しかったわね」クスクス


なんなのよコイツ そんなふうに余裕かましてくれちゃって。


容姿端麗、成績優秀。誰もがうらやむ生徒会長様。

ソイツがにこのことが好きだって?

なんかこう、リアリティがないわね

いまにでも希あたりが『ドッキリ成功!』って書かれた看板を掲げて出てくるんじゃないかしら


絵里「ふたりで食べましょ?」

にこ「は?」

絵里「そのパフェ。もうにこってば限界って顔してるし」

にこ「……今はダイエット中なだけよ」


勝手にオーダーしといてそんな矛盾したことを言うにこに対して、絵里のやつは


絵里「そうね……にこのその美貌はたゆまぬ努力によって保たれているのね」


なんて。なんてキザったらしいやつ


にこ「……はい。残りよろしく」ススッ


と、にこは絵里に残飯処理を押し付ける。ぐいぐい。


にこ「……それとね、やっぱりにこに生徒会長様の恋人は役不足よ」

にこ「だからきのうの話なんだけど……」


絵里「待って。言わないで」

にこ「え?」

絵里「それとそのパフェ。スーパーアイドルにこにー様、どうかエリチカに食べさせて?」パチッ


…………。コイツまたハートマーク飛ばしてきやがった。


にこ「……あつかましくない?」

絵里「いいじゃない、それくらい」シュン


よく見ると。

よく見ると、絵里の指先は震えていた。


絵里「エリチカウォレットをすっからかんにして、そのうえエリチカハートまでボコボコにされたら踏んだり蹴ったりラジバンダリよ」


軽々しい言葉だけが上滑りしていく

ひょっとして一番最初ににこが茶化したから、絵里はにこに合わせてる?

このままじゃいけない。

これはいけない。



にこ「……あのね、絵里。真剣に答えさせてもらうけど」スッ


私なりの、精一杯真剣な目つきで、口をひらく


にこ「私、絵里とは……」

絵里「はい、あーん」グイッ

にこ「むぐっ!?」

絵里「もう、言わないでって言ったじゃない」

にこ「……」モキュモキュ



絵里「……はい」

にこ「え?」

絵里「交代。私に食べさせて、ね?」


まだ半分ほど残ってるパフェ

スプーン一杯すくい、黙って絵里の口元に運ぶ


にこ「……早く食べなさいよ」ツン

絵里「『あーん』は?」


あるぇ? 絵里ってこんなキャラだったっけ?


絵里「わたしの1680円……」メソメソ

にこ「わっ、わかったわよ! 『あ、あ~ん』」グイッ

絵里『あ~ん』ハムッ


なんでそんな嬉しそうな 子犬みたいな瞳をするのよ

これから私達がどうなるかくらい、アンタならわかってるでしょうに……


絵里「ふふ、おいしい」ペロッ

絵里「とっても……甘くて……」ジワッ


絵里「甘くて……あま……」ポロポロ


ぽたぽたと

絵里の瞳から大粒の雫があふれだす

ああ、やっぱりこいつはわかっててここに来たんだ

心の覚悟を決めるために 多分1時間くらい前からここで……


絵里「あっ、ごめ"んね"」グイッ

絵里「明日から…グスッ…ジュース代…ヒック…節約しなきゃと思ったら……涙がね」ゴシゴシ


……まだ言うか、こいつは。

まあいいか、「答え」が要らないというのなら こっちとしても気が楽だ

あー気楽気楽……


……はぁ。明日からどーしよ、ほんと。


絵里「ねぇにこ」

にこ「ぬぁによっ」

絵里「にこ。答えはいらないから……だからお願い」ジワッ





絵里「最後に……『思い出』を、少しだけ……ちょうだい」ポロポロ


――絵里の部屋

にこ(あの流れで断れるメンタルタフネスが欲しいわ……)ズキズキ

にこ(えっ? にここれからナニされるの!?)ドキドキ

にこ(どうせにこを犯すつもりでしょ!? エロ同人みたいに!!)ドキドキドキ


――キィィ


絵里「レモンティーでよかったかしら……」カチャリ


……絵里も、少し落ち着いたみたい

でもさっきいちごオレ飲んだのにさらに飲み物出してくるあたり、

やっぱり混乱してるのかもしれない

水分でおなかタポタポだっつーの


にこ「……いただくわ」カタ


でもノドがカラカラなんだもん、仕方ないじゃない!
き、緊張してないもん!


――ふわり

にこ「……あんた、部屋でアロマなんてやってるのねぇ」スンスン

にこ「いい香り。フローラルね」

絵里「ああ、それはイランイランの精油よ」

にこ「ふぅん……」チビチビ


ここはスパっと、単刀直入に


にこ「……で、アンタが欲しい『思い出』って何?」


キス、とか言われたらその瞬間逃げ出そうと思ってた

あ、いや、別に絵里とキスするのが逃げ出すほどイヤだってわけじゃなくてね?

貞操っていうか? アイドルのファーストキスだしぃ……


絵里「はい。ここにフリップボードがあります」


いや、なんであるのよ


絵里「3択よ。じゃかじゃん!」ドン


――――――

1 キス
2 パンツ
3 おしっこ

――――――


にこ「!?!?っ??!!?!?」

絵里「どれかちょうだい」

にこ「はぁぁっ!? どれも想定外よ!」


いや、正直キスは想定してたけど


絵里「私としてはやっぱり『思い出キス』が一番なんだけどね……」

絵里「……ほら、にこってそう頼むと『アイドルのファーストキスはお宝なの!』とか言いそうだし」

絵里「だから……3択にしてみたの」


にこ「そりゃあキスはあげられないけれどもっ!」バンッ!

にこ「なんで代替案がパンツかおしっこなのよ……///」プルプル



絵里「ねぇにこ……好きよ。私、にこのことが大好き」ウルウル

にこ「そんな瞳でスキスキ連呼しないで……///」プルプル




にこ「……この変態」ボソッ

絵里「~~っ///」ゾクゾクッ


にこ(どうしよう……誰か助けてにこぉ……)


1、キス……これはさっき考えたように、どうしても譲れない一線

次は2、パンツ……パンツかぁ


にこ「2を選んだ場合、いつ渡せばいいの?」

絵里「もちろんこの場で。脱ぎたてほやほやをくんかくんかするから、すぐにでも帰っていいいわ」

にこ(コイツなんかもう開き直ってるし……)


ノーパンで帰れってこと? ていうか今日履いてきたのお気に入りなんですけど。

え? 昨日の今日でなんでお気に入りパンツを履いてきたのかって?

そりゃあだって……万一の際に備えて……

……ってそうじゃなくて。となると、


にこ「消去法で3……か……」ガックシ

絵里「どうせ下水に流すのだもの。減るもんじゃないし。win-winね!」

にこ「にこはwin要素ゼロだけどね……」


にこ「え……で、具体的に『おしっこ』って?」

絵里「この紙コップ使っていいから、トイレでしーしーしてきて」スチャッ


にこ「で……どうすんの、ソレを」

絵里「アロマ加湿器に……」


にこ「変態! ド変態! 変態大人っ!!!」

絵里「もっと言っていいわ」ゾクゾクッ


うーむ……

本気なのか、茶化した演技なのか。

いまだによくわからない。どのくらいこの子が今、傷ついているのか……

……とりあえず、


にこ「トイレ借りるわね」コソコソ


義務を果たそう。せめてできることだけはやろう


……絵里宅 トイレ

コンコン

亜里沙『入ってます!』

にこ『え……』


正直、水分とりすぎでちょっと限界だったりして……




…………10分後


にこ「ちょっとぉ!? 何してんの!?」

亜里沙『ユキホに借りたマンガ読んでます!』

にこ「はぁぁ!?」

亜里沙『あと、バイト中です!』

にこ「え?」

亜里沙『トイレにこもってるだけで、なんと時給1000円!』

亜里沙『お姉ちゃんって太っ腹ー』

にこ「……」


おいこら。


にこ「絵里ぃっ!」バンッ!

絵里「あらにこ。遅かったわね」

にこ「あ・ん・た・が! あの子雇ったんでしょうが!」

絵里「な、なんのことかしらー」シラー


ん?


ていうかそもそも、にこがおしっこを選ぶってことをあらかじめ……

……頭いいんだか悪いんだか。

にこ「で、どうすればいいの///」モジモジ





絵里「お風呂場でおしっこしてくれればいいわ」

絵里「不正が無いよう……私の監視の下で……ね」


 さすがロシア、尿検査に敏感だ!

test


……浴室


絵里「――はい、この洗面器にシてね」コトッ

にこ「……ひぅ///」カァァ


考えてみれば、なんだこの状況

美しくてカッコいい生徒会長にコクられて

まぁ、事実上それをフって

目の前でぼろぼろ泣かれて

お詫び(?)として今はその生徒会長のおうちまで来てて。


脱衣所で靴下とパンツだけ脱いで

上着はそのまま、下はミニスカートだけで……


浴室の床に……和式トイレみたいな格好で洗面器の上にまたがってる



絵里「てっ……して……してっ!」ハァハァ

にこ「ぅ……くっ……///(あ、でもおしっこ限界……っ///)」


ジワッ…

にこ「ぅえ絵里っ? 見ないで見ないでよね目つぶっててよね!?///」チョロッ…

絵里「ええモチのロンよ!?」←ガン見


チョロロッ…


絵里(…………きたっ!///)ジーッ


ジョロッ――

プシャァアアアアアアッ!


絵里「すごい勢い! 噴水みたいね!」ハァハァ

にこ「実況するなぁあああああっ!///」カァァァッ!


絵里「いい子ね、よしよし」ギュッ♡

絵里「いっぱいしーしー出そうね~」ナデナデ♡


にこ(ちょっ!?///)プシャァアア……


チョロロロ……ッ


絵里「ふふっ、いっぱい出せたわね~」ナデナデ

絵里「えらいぞ~♡」ぎゅむっ


にこ「……う」

絵里「に?」



にこ「うぁああああああああん!」ボロボロ





絵里「ちょっと!? にこっ!? どうしたの急に泣き出して」オロオロ

にこ「うわぁああああああああああん!」ボロボロ


――――――

――――


あの日、にこは何か大事なものを失った

でも代わりに守れたものは……



――ガラッ


絵里「あらっ? 今日はにこだけ?」

にこ「……」ムッスー

絵里「にーこっ♡」ギュッ

にこ「ああもぉ、うっとぉしぃ」




絵里「ふふ、大好きよ、にこ」


……ちょっとおかしな、だけど大事な、友人関係。


おわり


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全部別世界線

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←依頼| 舵切りミスったわ!
 ̄|| ̄ ┗(^o^ )┓三
  ||    ┏┗  三

酉もミスったわ……

これだ

このSSまとめへのコメント

1 :  SS好きの774さん   2015年12月08日 (火) 10:05:44   ID: z0VvU7y1

うーん…?

2 :  SS好きの774さん   2016年01月07日 (木) 02:07:26   ID: f8W-mh8o

絵里だけ何故こんな仕打ちなのか…

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