ダージリン「2つ名があってもよろしいんじゃなくて?」 (23)

オレンジペコ「はい?」

ダージリン「2つ名よペコ」

オレンジペコ「聞こえてますよ」


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ダージリン「じゃあなぜ聞き返したのかしら?」

オレンジペコ「おっしゃってる意味がわからなかったからです」

ダージリン「はぁ......ペコもまだまだね」

オレンジペコ「はぁいぃ~?」

ダージリン「私たちはいわゆる強豪校と呼ばれていますわね?」

オレンジペコ「まぁ今年度も準決勝までは進みましたしそうなんでしょうけどご自分でそれをいいますか......」


ダージリン「そして私はその高校の戦車道の隊長にも関わらず2つ名がないのよ」

オレンジペコ「今更過ぎませんか?」

ダージリン「これは由々しき事態よ」

オレンジペコ「はぁ......」

ダージリン「プラウダには副隊長にさえ2つ名があるというのに」

オレンジペコ「『ブリザード』のノンナですね」


ダージリン「だったら私にも2つ名があってもよろしいのではなくって?」

オレンジペコ「ノンナさんは砲手として有名ですし去年の優勝校ですから......」

ダージリン「それは私が有名ではないと言いたいのかしら?」

オレンジペコ「そうは言っていません」

ダージリン「ではなぜ私には2つ名がないのかしら?」

オレンジペコ「なぜと言われましても......」


ダージリン「こんな格言を知っている? 人は3つの名前を持つ。両親がつけてくれた名前、友人が親愛をこめて呼ぶ名前。そして自分の生涯が終わるまでに獲得する名前」

オレンジペコ「ユダヤ人の格言ですね」

ダージリン「私はこれまでこの聖グロリアーナのために誠心誠意尽くしてきましたわ」

オレンジペコ「存じております」

ダージリン「なのに2つ名の一つもないのよ」

オレンジペコ「2つ名はひとつで十分なのでは?」


ダージリン「もう馬鹿らしくなってきましたわ」

オレンジペコ「2つ名がないだけでそこまで卑屈になりますか」

ダージリン「アッサムあなたも黙ってないでどうすれば私に2つ名ができるのか考えなさい」

アッサム「完全に気配を消してこの面倒な話し合いに巻き込まれないようにしていたのに」

オレンジペコ「アッサム様本音が出ちゃってますよ」



アッサム「そうですねぇ......ではご自身で名乗ってしまうというのはどうでしょうか?」

ダージリン「というと?」

アッサム「誰かが勝手に付けるのを待つよりもご自身で2つ名を名乗ったほうが手っ取り早いかと」

ダージリン「なるほど。流石アッサムですわね」

アッサム「ありがとうございます」



ダージリン「では2つ名を考えなければなりませんわね」

オレンジペコ「そうなりますね」

ダージリン「......しかしいざ考えるとなるとなかなか思い浮かびませんわ」

オレンジペコ「そもそも自分で名乗るようなものでもないですし......」

アッサム「僭越ではございますがこのアッサムに考えが」

オレンジペコ「さすがアッサム様!」

ダージリン「言ってみなさいアッサム」



アッサム「では......『浜の暴走格言少女』なんてどうでしょう?」

ダージリン「......」

オレンジペコ「......」

アッサム「オススメです」

ダージリン「却下」

アッサム「なっ!?」

オレンジペコ「某お笑い番組みたいな2つ名でしたね」

ダージリン「ボキャ〇ラかしら?」

オレンジペコ「エ〇タです......ダージリン様高校生ですよね?」



ダージリン「さて2つ名......どうしましょうか?」

オレンジペコ「あのお言葉ですけどダージリン様」

ダージリン「なにペコ?」

オレンジペコ「ダージリンという呼び名は卒業したお姉様方に頂いた名前ですよね?」

ダージリン「えぇ、オレンジペコもそうでしょ?」

オレンジペコ「それって立派な2つ名なのでは?」



アッサム「確かに」

ダージリン「しっ、しかしこの名前は愛称のようなもので」

アッサム「世界三大紅茶の一つと称されるダージリンの名前を頂いたときのことをお忘れですか?」

オレンジペコ「聖グロリアーナで戦車道をするものがどれだけダージリンという名前に憧れているのかはご存知なはずです」




ダージリン「確かにそうですわね。呼ばれ慣れてしまって初心を忘れていたようですわ」

オレンジペコ「わかって頂ければいいんです」

ダージリン「ではこれからは本名も名乗らなければいけませんわね」

アッサム「えっ?」

オレンジペコ「その必要はないのでは?」

ダージリン「ダメよペコ。ダージリンを2つ名と決めた以上ダージリンさんなどと呼ばれるわけにはいけませんから」



アッサム「確かに2つ名にさん付けは変ですからね」

オレンジペコ「まぁ止めはしませんが......」

ダージリン「ちなみにペコ私の本名ご存知かしら?」

オレンジペコ「えっ!? もっ、もちろん知っているに決まってるじゃないですか......」

ダージリン「ペコ目が泳ぎまくっていますわよ」



アッサム「......」

ダージリン「アッサム気配をまた消していますがまさかあなたまで知らないということはないでしょうね?」

アッサム「存じております」

ダージリン「ではこちらを向きなさい」

アッサム「それはできません」

ダージリン「では私の名前を言ってみなさい」

アッサム「ダージリンです」

ダージリン「本名を言ってみなさい」



オレンジペコ「......お言葉ですがダージリン様」

ダージリン「なに薄情なペコ?」

オレンジペコ「ダージリン様は私の名前ご存知ですか?」

ダージリン「......話のすり替えはよろしくなくてよペコ」

オレンジペコ「答えてください」

アッサム「そうです。そこまで言うのなら私たちの名前はいえるのでしょうね?」



ダージリン「......私はこのチームの隊長ですのよ全員の名前くらい言えて当然ですわ」

オレンジペコ「動揺してティーカップを持つ手が震えまくってますよ」

ダージリン「......やめましょう」

オレンジペコ「逃げましたね」

アッサム「まぁこのままだと不毛な争いになりそうですし」


ダージリン「このダージリンという名前こそが私をよくあらわしていますわ」

オレンジペコ「そうですね」

アッサム「なんだったのでしょうか今までの時間は」





ダージリン「......でも『高貴なる白薔薇』とかはいいんじゃないかしら?」

オレンジペコ「いい加減にしてください......」

終わり



劇場版面白すぎたので書きました。
読んでいただきありがとうございます。

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