魔王「何で勇者を捕まえられないんだ!」 (53)

魔王「早くしろ!このウェデイングドレスは動きにくい!」

側近「気が早すぎます、魔王様!ウェディングドレスの試着など!」

魔王「くっ……既におじ様方や妹、友人、先生。既に結婚式の招待状は送っているのだぞ」

側近「どうしてそんなことを……」

魔王「お前が“クックック、見事魔王様のお望み叶えて見せます”と言ったではないか!
    このままではおトイレに行けん!しゃがめない!」

側近「魔王様!お止めください!はしたない!」

魔王「お前の事……信じてたのに……!」

側近「くっ……申し訳、ございません。必ずや、勇者めを捕えてみせます」

魔王「うむ……。一刻も早くだ!まずい、このままではおしっ側近「やめて!」


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魔王「ふぅ……すっきりした。やっぱりきちっとした普段着だな。あんなぶわっとした衣装はダメだ」

側近(くっ、魔王様、どうして……わたしと共に高貴なれでぃの教育を受けて来たというのに!)

魔王(こどもの名前何がいいかなぁ……)

側近(ああ……お許しください魔王様の御父上。あなたの築き上げてきたものが崩されようとしています。
    愛しき娘が、よりにもよって先代魔王様の因縁のライバルのご子息に現を抜かしております)

魔王「なぁ側近」

側近「はい?」

魔王「やっぱり、あのドレスの胸部分がキツい気がする。また測りなおして仕立ててもらおう」ボイーン

側近(くそッ!頭に行くべき栄養があの塊へ落ちてしまったばっかりに!)ペターン

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――魔王の城 ある日

魔王「こちらの領地に押し入った人間?ゴーレムを呼び出して目を引かせろ。その間に猟狼を準備して後ろから放て。
    統率の取れた狼たちのだ。決して逃すな」

側近「魔王様の方策だ。しっかり果たせよ」

「ははっ」

タッタッタッ…

魔王「フフフフフ……。捕えた人間共は私と勇者の愛のスタチュー作りの素材の石切り場に送り込んでやる」

側近(くそ……勇者キチでなければ)

魔王「スタチュー……ちゅー……してみたいな」

側近(ちきしょうめ!わたしだってしてみたい!)

側近「……魔王様、どうして勇者と結婚なさろうとしておられるのですか?」

魔王「魔王の隣には最強の者。人間の最強たる勇者に嫁ぐのは当たり前のことだろう」フンス

側近「そこ人間ってのがおかしーんだよ!」

魔王「わっ」

側近「あ」

魔王「」ドキドキ

側近「こほん。よいですか、魔王様。勇者は貴方様の御父上と因縁のライバルの息子です。
    かつて、我等と人間の大戦争があり、その終盤になんやかんやで二人の一騎打ちになりました。
    それが戦争終結の引き金へと繋がって戦争終結への講和を結ぶに至ります。
    講和は人間側の王の城にて。先代魔王様は人間の王と定めた、幾つもの決まり事を受け入れました。
    我等は領地こそ多少多く得ましたが、この結果に納得のいった者は果たしているのでしょうか?
    何故、“力”に優れ、獰猛な魔物を従える術を持つ我ら魔族が人間と対等にならなければならないのか……。
    魔王様。幼き頃のあなたもご同伴なされたでしょう?その時の思い、お忘れですか?」

魔王「……ああ、覚えている。父上と共に行った人間の領地。首都、城。知り合いは父上と、その当時の側近、少しの兵たち。
    周りは知らない、敵の人間がたくさん。不安の日々……。憎しみ渦まく、敵国まっただなかでも優しく、凛々しかった父上の姿……。
    ―――そして私は、幼き頃の勇者と対面した。城の庭。見たこともない綺麗な花が一杯あった、あの場所で」

側近「……」

魔王「そのとき言われたんだ。……。その、……頭、綺麗な角だねって」テレテレ

側近「は?」

魔王「お花だってもらったんだ!押し花にしてとってある!今も大事な栞だ!」

側近「は!?」

魔王「父上に言った!勇者のお嫁さんになるって誓ったのだ!結婚式はあんな感じのお花畑の中でやりたいとも!」

側近「はぁぁ!!?」

魔王「父上は感動の涙を流しておられた!帰宅後自室に入ってそのまま出て来られないくらいに!」

側近「いやそれ娘がヤバい夢持っちゃったからだよ。あれ?そういえば、その時から好きだったの?
    好きって初めて聞いたのこの前“捕えろ”って命令された少し後だよ?小さい頃からの幼馴染なのに!」

魔王「その後病床に付き、息を引き取る前に……私に王の務めを果たせ、と何度も、何度も……グスッ」

側近(身体悪くなったの魔王様の所為じゃないよね……?)

魔王「私は父上との約束と共に、勇者の妻となるのだ!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――次の日


側近「あ゛ー二日酔いだわー。あんなの聞かされて素面のままで寝られるかっての。
    バストアップ体操も上手くいかんし……ちきしょう」

オハヨウゴザイマス、ソッキンドノ

側近「おはよう。……魔王の私室に着いたぞ。魔王様、朝食のお時間ですよ。おねむは止めてお支度ください」トントン

ガチャ

側近「いねぇ」

オハヨウゴザイマス

側近「そこのスライム!」ガシ

「ピギィ!?」

側近「魔王様はどこだぁ!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――呪術師の部屋


呪術師「儂のところへいたんじゃよ」

側近「ばあ様……。魔王様、パジャマのままではしたない。……水晶玉で何を見ておられるのです?」

魔王「ゆーしゃ」

側近「勇者!?」

呪術師「念波で映像を送ってくれる蝶を追尾させてるんだよ」

魔王「暇さえあればずっと見てた!」

側近「知らなかったそんなの……」

呪術師「見てみるかい?」

側近「どれどれ……一人で旅してるんですね」

魔王「犬位の大きさの機械っぽい虎を連れているんだよー」

側近「ホントだ。銀の金属の虎のような自動兵器……犬っぽい仕草をしてる。見た目虎でグロテスクな顔してるのに。
    人間め、ちょこざいな対魔物兵器を」

魔王「カッコいいな勇者ぁ」

側近「ふん!……しかしこの青年の恰好。剣と盾、鋼の鎧にマントと額当て。なんか今時のイメージと違って古臭いな」

魔王「ん?」

側近「あ、すいません」


呪術師「やはり勇者の実力は相当なものじゃぞ。ちょうどお前の繰り出しておった刺客が倒された所だったんじゃ」

側近「あ!勇者の後ろに、わたしのとっておきの人型ゴーレムが砕けてる!頑張って作ったのに!」

魔王「酷いよ側近!眼からビーム出すゴーレムなんて!その前のは右腕から弾丸!
    その前のはロケットパンチ!体格は共通して5m!勇者をどうするつもり!?」

側近「“捕えろ”と命令されれば、勇者に大人しく来てもらうようこれ位はしますよ……こてんぱんにして連れ帰るつもりなんです。
    しかし、しっかり固めた土塊の、矢をも通さぬ巨体……勇者はどんな手を使って……魔法ですか?」

魔王「剣でスパーン!後は“ことら”が切れ目からどんどんバラバラにしてたよ。ちなみに、
    “ことら”は勇者の連れてる機械虎の名前ね。勇者がそう呼んでた」

呪術師「勇者の名に恥じぬ戦い振りでしたぞ」

魔王「ほんと、かっこよくてドキドキしちゃった……」

側近「アンタらどっちの味方だ!クソッ、今度は剣で斬れない金属製のゴーレム作ってやる」


側近「……しかし、こっちから連れ去らないと、って思ったんですけれど勇者の方から段々我々の所まで近づいてきてますね」

呪術師「おぬしのゴーレムが“勇者を出せ”と脅しまわっていたから、自分が目的だと踏んで、魔王の元まで単身向かって来ておるみたいじゃ」

魔王「素敵……人間の為に自分から危険の最中に赴くなんて」

呪術師「勇者じゃ……!これはまさに勇者の資質……!」

側近「命じた魔王様が何言ってるんですか……あーソンナステキィナヒトナラ、スナオニケッコンシテクダサイトイッタホウガヨカッタンジャナイカナー」

魔王「えっ……だ……だって……勇者が私のこと、好きになるか、どうかなんて、わかんないじゃん……」

側近「えぇ……、そんなんで親類や友人に招待状送ってたんですかぁ」

魔王「あれは勢いでそれで、ま、まあ約束の日まで捕えてゆっくり……ら、らぶらぶしていけばいいかなって」

呪術師「魔王様乙女……!圧倒的、乙女……!」

側近「どっちにしろこれじゃ結婚式はお流れですね……ハァ、御詫び状出さなきゃ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――数日後、呪術師の部屋


側近「行けぇ!アイアンゴーレム!鉄の拳をお見舞いしてやれぇ!」

魔王「キャー!ゆーしゃー!がんばってーー!!」

側近「ぅおいッ!!?」

《スパーン!》

呪術師「切り裂いた……じゃと!?今までの土塊の硬度に、厚さ数十センチの金属を重ねておったんじゃぞ……?」

側近「嘘だろぉぉぉぉぉぉぉ!!」

魔王「~~~……!――――――ッ!(声にならない嬌声)」


―――数日後、呪術師の部屋


側近「今度は火を噴くぞ……!しかも100%金属!炎は調整間隔数千℃だぁ!」

呪術師「盾で炎を防いだ!」

側近「8千℃だぞ!?ええい、懐に飛び込んで足を切り裂こうと……!デカい腕でとっ捕まえて黒焦げにしてやる!」

《ボォォォォ》

側近「あっ、ゴーレムに耐熱処理してなかった。まぁいい!腕ごと黒焦げだ!」

呪術師「その通りになったが、熔けたのはゴーレムの腕だけじゃったな。上手く逃げおおせた」

側近「くそ、鎧も頑丈か!えっ何?盾に刃を擦り付けて……刃から炎出た!」

魔王「わぁ……剣に纏う翠色の炎……素敵」ウットリ

側近「うわぁー!ゴーレムが焼き斬られたぁぁぁぁ!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――数日後、呪術師の部屋


魔王「はぁ……ことらちゃん可愛いなぁ……。勇者の傍にぴったりついてる。忠トラだ。私もああいうの欲しいー」

側近「猟狼がいるでしょー。ちゃんと人間とっ捕まえて“すたちゅー”作らせてますよー。忠おおかみですよー。
    ……というかあれ可愛いですか?成獣の虎より小さい癖に顔めっちゃ厳ついですよ」

魔王「むぅ、かわいいよ~」

呪術師(側近、魔王様の言葉遣いが雑になっておるのう……まぁよいか)

側近「そういえば、いいんですかぁ魔王様?勇者って大抵王族の娘さんとか既に宛がわれてるはずですよー」

魔王「え……」

側近「魔王様も同じですけどー。お見合いとか断られてましたよねー」

魔王「け、結婚すると決めてたからな!……勇者は……」

側近(思えば勇者と特定できずとも、そこで誰か想い人がいると踏んでおくべきだった。何か種類増えた城の庭の花とか気づける要素あったな)

呪術師「例え婚約者などがおられようと、そのお可愛さにそのばでぃがあります。迫って乳房をくっつければイチコロです」

側近「セクハラですか、ばあ様。元気だなぁ」

魔王「直接、会う……」ゴクリ

側近「止めてください魔王様。ご自分の役割をお忘れず」




呪術師「ところで新しいウェディングドレスのサンプル画が届いたんじゃ。どうでしょうか?」

魔王「嫌だ!横から胸が見える!恥ずかしい!」

呪術師「そんな、ないすばでーの中を見せびらかさないでどう勇者を手に掛けますか!?
     あれを見なさい。側近は大したことないのに乳や腰とかをあんなに晒け出しておるのですぞ!」

側近「ぐわぁああぁぁッ!!」

魔王「うぅ……こんなの階段降りる時ですら見えなくて邪魔になるんだ!だからちゃんと鍛えて縛り付けておかないと」

側近「ぉ……ぉのれぇ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――ある日 魔王の城 廊下


側近「あ~最近玉座にすら現れなくなってきたよあの暗愚娘。
    しかし皆の前に立ち、話や実情を拝見せずとも的確な案をお出ししてくる……流石、
    なわけねぇだろ!わたしと同僚で修正したわ。結婚どころか満足に告白できねぇ癖にスタチュー二個目ってどういうことだ。
    そんなのに人間の捕虜使ってるんじゃない!

    でも、他に人間にさせることねぇな……手荒な事禁止条約面倒くせぇなぁ、と。とんとん。盗撮にお盛んなところ失礼しますね」

魔王「あ~~~~~~!!?ゆうしゃあああああああ!!!」

側近「呪術師の部屋から悲鳴……?やった……!勝ったんだ。グレート・ゴーレム……。
    体に纏うはおニューの鋼鉄、尖った角に放電機能……!ズババと稲妻で勇者を討ったんだ……!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 呪術師の部屋

ガチャ

側近「魔王様!どうですか!?グレートの偉大なる必殺力!あれ何車椅子に乗っておられるんです?なんか雰囲気も違う―――」

妹魔王「よう、側近。見事なゴーレム作成技術でしたわ」

側近「い、妹ぎみ……!?ご親族の家におられるはずでは……!?」

妹魔王「あそこでへたって文字通り頭を抱えているのがお姉様ですわ」

魔王「あ、そ、側近……。選択系回復魔法って、どうやるんだっけ……?」

側近「魔王様、出来ても遠すぎて届きません!」

妹魔王「んもう!詫び状が届いて、結婚式はとりあえず置いといて恋人気分でも味わう気になっているのかと思って何となく来てみれば、
     城に勇者はいないどころか刺客を出しては返り討ちにされ続ける始末!」

側近「何!?勇者を倒したのでは……!」

妹魔王「見なさい。人造魔物が電撃に撃たれて気絶こそせよ、勇者は襲う電撃を剣を投げ出して避雷針にして避け、
     纏う鎧の拳で打ち倒しましたわ。頑丈さはパワーですわ」

魔王「早く!ことらちゃん死んじゃう!」

妹魔王「大丈夫ですよ、お姉様。勇者と行動を共にするものがそう簡単にやられるわけありませんわ」なでなで

側近「ああ……おニューの身体に幾つもの拳痕が……おのれ、勇者め―――電撃の連射を可能にすれば、ちょこざいな策も封じれるか……?」


妹魔王「ホント、もう!あたくしがこうして遊びに来るころには、勇者様がいてとうの昔にヤッていると思っておりましたわ」

魔王「ば、ばか!そういうのはだな、手を繋いで、デートして、結婚式を挙げて、ゆっくりと愛を囁き合いながらで」

妹魔王「遅い!この純情娘め、何の為の乳房ですかこれは」グワシ

魔王「あっ……!」ビクン

側近「やめろや羨ましい!」

妹魔王「人間と魔族。争いを経て結ばれる忌憚話は数あれど、あたくしたち王族にそのような者が現れるとはまあびっくり。
     あたくしと共に知ったおじ様方親族は勿論ですが、先代魔王である亡き御父上、あたくしが産まれた辺りで
     亡くなられた朧な母上もあの世で驚きでしょう」

側近「はい」

妹魔王「ましてや戦争終結の引き金をひいた先代勇者の息子に。……しかし、あのゴーレムへ立ち向かう勇敢さ、
     先程の戦い後の魔物を装った道具とはいえ浴びせている労りの言葉、行為。―――ス・テ・キですわ」

側近「ア゛ア゛!?」

妹魔王「結婚して初夜は姉妹丼というのはどうなんでしょう、勇者は?」

魔王「どんぶり……?妹と続けて結婚するのって丼物を食べることが習わしなの?」

妹魔王「あたくし、お胸ではお姉様に劣りますがお腹は負けておりませんわ!」

側近「妹様、すいませんがそれは」

妹魔王「足が不自由で身体は弱いですけれど、寝転がったならばなんとk側近「黙ろう!すみません!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 側近の部屋


側近「ちくしょうめ!今度は姉妹が揃って、一部屋で姦しくなりやがって!……小さい頃から仲良くて私だけ一人になること多かったんだよな
    ……さ、寂しくなんてないんだからね!」ガリガリガリ

呪術師「一人でぶつくさ言いながら設計図書き込むとはスゴイが、数字は合ってるかね?」

側近「いたのかババ!この私が凡ミス犯すはずないんだ!まかせておけ!」

呪術師「すっかり前のツッパリ時代に戻っておるなぁ」

側近「……!?戻ってません!」

呪術師「ゼロからの出発でここまでのし上がった実力。真っ直ぐな忠誠心。充分魔王の信任を得るに相応しいと思っておるよ。邪魔したの」

側近「ばあ様……」











呪術師「何もしなくても、どうせあっちから近づいてるんだから、余計なちょっかい出さずに待ってればいい。と婆は思うが黙ってよ」

側近「声が出てるぞババ!嫌みったらしいなぁもう!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 呪術師の部屋


妹魔王「勇者は我々の領域までだいぶ近づいてきましたわね。お姉様、告白の練習です」

魔王「わ、わ、わたくちは!あなたしゃマのことうぇお押したお」

バタン

側近「魔王様!何か人間の捕虜どもがだらだらし過ぎて腐ってきたんで、やっぱりスタチュー2つ目開始しました!私のです!」

妹魔王「乳はちゃんと盛ったかしら?」

側近「そりゃー1サイズ位はってコラァ!」

魔王「そっきん、そっきん!ゆうしゃ来る!私まだ心の準備が!」

側近「落ち着いてください魔王様。どれどれ……この村に来てるとはまさか、強化したグレート・ゴーレムがやられたということですか!?」

妹魔王「次々と来る電撃を避けきれず、遂に浴びてしまうも鋼の鎧に流れるそれを
     剣に誘導して集め、電撃を帯びた剣圧を放ってゴーレムを砕いたのですわ。闇を裂く雷光ですわ」

側近「なにそれ」

呪術師「今回はすぐ村を出て行かずに村人と外での宴会にいるのう」

魔王「集落付近での戦いの後はすぐそうしてたけれど、無理やり連れて来られたみたい」

勇者《いいのか?金ならあるよ?》

《村を救った勇者様にお礼はしないとな!さあ、一杯飲んで食べてくれ!》

勇者《いただきます。ありがとう!ほとんど野宿で味気ないものばかりだったんだ!》

妹魔王「ご飯の時は一番目を輝かせますわね。可愛らしいですわ」

側近「盗撮して観てる限りは、野宿中本当に粗野なものしか食べてなかったですね。
    とりあえず茹でたり、焼いたり。毒がなさそうだったら、食べる。人間の癖に食に拘らないんですよ」

魔王「私、料理できない……」

呪術師「そもそも我等の食事が大丈夫なのかもわからんしの」


側近「あ、人間の娘だ」

魔王「!?」

《―――どうか、一夜だけでも……》

魔王「!!?」

呪術師「ここまで言い寄られてるのは初めてですなぁ」

側近「浮ついた所には寄らないですからね。というか村、町にあまりいないみたい。
    一日中見てないから実際は知らないですけれど、知る限りこの城を自力で目指せる最短ルートを通っていますから。
    山あり谷ありを字のままに行く」

呪術師「途中そういう所に潜伏するツッパリどもを見つけては叩きのめしてることはありましたなぁ」

側近「こちらで反体制の連中を罰する手間が省けたのは、まあ、よしとしてやりましょう」

妹魔王「ならば、あの村は人間の棲む最後の場所。ここから先は我々の息の掛かるところなので滞在期間も長いでしょうね」

呪術師「い、一夜の過ち……」

魔王「……!?」

妹魔王「一夜ならず二夜三夜。旅発つ青年が残す胎動……本で読みましたわ!」

魔王「―――――――――――――――――――」

勇者《お、俺は……ブツ》

妹魔王「あ」 側近「あ」

呪術師「監視の蝶が寿命を迎えてしまったようじゃ」

妹魔王「名も知らぬ蝶よ、役目を果たし切ったのは見事な大義。天晴ですわ」

呪術師「さて、また蝶を放ちますよ」

側近「あーあ。良いところだったのになぁ。ね魔王様」













側近「いねぇ」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


側近「外ぉぉぉぉ!ドラゴン発着場ぉぉぉ!!」ドドドド……!

魔王「うわぁっぁぁぁぁん!!勇者は魔王とけっごんしないとだめなゃんだがらぁ~!」ブワー

ギャォォォォォ……

側近「魔王様、やめて!乗っかってるの国ぶっ壊し用の赤ドラゴンです!ほれ、竜騎士!自前の竜で飛んで止めろ!」

ムリムリ! マニアイマセン!

呪術師「ちいっと、からかい過ぎたの。でもあれ位でなければ進展しませんわ」

妹魔王「着いた。ふぅ……車椅子は大変ですわ。側近。下手に軍勢を出して人間側に敵対の意思を見せたら、まずいですわよ」

側近「ぬぅぅ……!わかりました。ゴーレムを出します!―――勇者を……倒す!」

妹魔王「なんでですの」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――空


―――――――誰かを好きになるという事はひとの営みとして素晴らしい事だ。相手が何であろうとも。
―――――だが、その喜びも今の混乱の中では悲劇になるだけ。その気持ちは一人前になるまで隠しておきなさい。
――――いつか、その気持ちを正直に表せるときが来るから……。


魔王(私、もう一人前だよ。だから、もう正直になっていいんだよね……?)

グォォォォォ……

魔王「うん……。ありがとう、ドラゴンちゃん。元気だすね!さあ、もう少しで着くよ!」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――人間と魔族の棲む境 森


勇者「……!魔物の鳴き声……?ことら!」

フリフリ

勇者「近くに降りそうだな。行ってくる。村に危害を加えるようなら、倒さなきゃならない」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――人間と魔族の棲む境 森深く


魔王「ありがとう、ドラゴンちゃん!すぐ済ませてくるからこの深い森から動かないでね。結界も張るから、きっと人間には見つからない」

グオ。

魔王「とりあえずフードを被って、角と身体を覆えば大丈夫だね」

ザッザッザ

魔王「村はあっちだな」

ザッザッザ

「―――魔王様!?なぜここに!?」

魔王「あ!……騎士団長のトカゲ男リザード!?何故、お前が」

ザッザッザ

勇者「ああ!ダメじゃないか。こんな所歩いてちゃ」

魔王「ゆ!!!!?」

リザード「いや、だってここが一番病に効く植物が生えてるんだからよ……」

魔王「……ゆ?」

勇者「それは俺に任せろと言ったろう。……ちなみに、そこのおねえさんはどなた?」

リザード「おい。このお方はま魔王「道に迷いました!!」

魔王「お助け下さい!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――人間と魔族の棲む境 人間側最果ての村 少し外れてリザードと勇者居候先


勇者「ん。まだ毒が残ってるぞ。体が痺れる。これは俺が食べる」

リザード「は!?これ以上煮込んだら薬の意味なくなるぞ!?」

勇者「ング。ごちそう様。まだ人間の食生活に慣れてないな。もう少し灰汁を抜くんだ。手本である俺のを食べさせな」

リザード「お前のみため悪い!人間の料理じゃない!」

勇者「変な所ばかり覚える!」

魔王「……」チョコーン

男「う。ゴホッゴホ!ご……ごめん。苦労ばかりかけて」

リザード「寝ていろ。いや、折角だから飯を食べて暖かくして寝ろ。薬入りだ」

勇者「リザードがつくったんだぞ」

男「ふ、ははっ……。魔族らしい色のスープだね」

リザード「」ギロ

勇者(ごめん)

男「ん。味は丁度いいや。すごいな、リザード。でも、君も病は治りたてだろう?」

リザード「人間と比べるな。しかも俺は貴様達との戦争を生き抜いた魔王直属の騎士団長だぞ」

魔王(そう。父上の認めた勇ましさと凛々しさを持つ騎士。そして、戦後の人間や魔族、反体制の者への鎮圧の内に行方不明となった……。
    まさかこうして、人間のお守りをしているとは)

勇者(こっちに来て)チョイチョイ

魔王「ゆ!?」ドキーン

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――男宅 外


魔王(やばい。やばいよ。遂に生と対面だよ。二人きりだよ。やるなら今しかない……)ドキドキ

勇者「君は、魔族だね」

魔王「はい!」

勇者(あっさり?被りモノで種族を隠してるつもりじゃなかったのか……?) 魔王(何をやっているんだ私は)

勇者「えっと、頼む。……リザードのこと、黙っててくれないか?」

魔王「?……どうして?」

勇者「どうしてって、そりゃあ……戦後とはいえ、魔族が人間と一緒に暮らしていることを気にしないのか?」

魔王「当然。戦争は終わったんだよ?好きの気持ちに、正直に生きていい。……もし、悪く言う奴がいたら、私がぶっとばしてやるよ」

勇者「そうか。君はつよいんだな。……俺も君みたいにつよくありたい」

魔王「!!?……ほ、ほめられるとうれしいぞ!!すごくうれしい!!もっとして!!」

勇者「ははっ。それはよかった……俺も、頑張らなきゃな」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――次の日 男宅


魔王「勇者は村へ行ったし、今のうちに話を聞かせてもらおう」

リザード「はい。……勇者は、村の人間共に俺を倒して欲しいと頼まれてここへ来たのです。宴で色んな人たちから頼まれたらしいですよ」

魔王「(じゃあ言い寄っていた女はそれが狙いだったのか。よかった)だが、勇者は人間の頼みを聞かずにリザードをこのままにしていると。
    大丈夫かな……勇者」

リザード「勇者との初めての遭遇では、会って事情を知った途端に“人の友だちを斬ることはしない”と言われて、カッとなって勝負を挑みました。
      戦後とはいえ、魔族の敵である勇者に情けを掛けられることが、悔しかったのです」

魔王「ふふっ……プライドが高いのは私が小さい頃から変わらずだ。結果は?」

リザード「悔しいが、完敗です。剣も折られ、……弱っている“あいつ”に庇われるところまで含めて。
      父親である先代勇者から、実力は受け継がれたのだと思い知りました」

魔王「さすがは勇者だ。……あの男も強いな」

リザード「村から距離を置いたところで、一人生きる男です。胆力があったようだ。倒れた俺を見た時の表情は
      そりゃあこれでもかと目と口を開いていました。しかし、迷う事なくここまで運んで、看病してくれました」

魔王「今は安らかにすやすやと寝ているのだな」

リザード「薬の効きが良いようですね。よかった。……俺に身代わりして病を受けたんです。熱に魘され、喉が腫れ、身体は戦いの傷で自由が利かず。
      ―――あの時俺は独りで死ぬつもりでした。連れていた騎士達を失って、苦痛で流れる涙もその内枯れて、喉の痛みで声も上げられない。
      意識が虚ろになるのに、己の弱さと後悔の記憶だけははっきりと頭に浮かんでくる……。耐えられなかった」

魔王「……君の部下は、何人かは帰ってきたよ。今もお前の帰りを待っている」

リザード「そうでしたか。よかった……。私は、傷が癒えればすぐに帰るべきだったのに
      ……村の人間から疎外されても、回復してくれるまで看病して、身代わりになったかのように
      病に倒れた人間の彼へ大きな恩義を感じて、せめて全快するまで看病したいと思っています。

      忠義を尽くすべき魔王様の事よりも、あの人間の回復を考えているのです。……私は魔族の騎士失格です」

魔王「今も苦しむ友を救う役目を果たせ。それが高潔な魔族の騎士のあるべき姿だ。君の友人が元気になったら、共に帰ろう」

リザード「……!……ありがとう、ございます……!」

男「Zzz……(いい話だなぁ)」


ガォッ!ガォッ!

魔王「家の外でことらが鳴いてる」

リザード「おい、虎モドキ!病人が寝ているんだぞ、何をギィギィ騒ぐ!」

ガチャ

勇者「あ……、ただいま」

魔王「ゆうしゃ!……哀しい顔をしているな」

勇者「村の人たちに、リザードの事、大丈夫だって伝えに行ったんだけれど……ごめん。
    俺の力が足りなかったよ。信じてもらうことが、できなかった……」

リザード「お前、なんで」

勇者「気持ちに正直になったんだ。ただ友だちの看病をしているだけの友だちが悪く言われるのは、悲しいだろう?」

リザード「……勇者め……人間の勇者の癖に……!」

男「……リザードとおねえさんは、ここを離れた方がいいですね。自分はもう、だいじょうぶ」

リザード「お前、起きてたのか!?」

魔王「村の人間が私達を倒しに来るって思ってるなら、心配ない。自分たちでこわい魔族をなんとかすればいいのに、
    わざわざ勇者に様子まで見てもらわなきゃならない弱虫たちだぞ?」

勇者「難しい事だから人にものを頼むことだってあるさ。それに、これは勇者の使命だ」

ガオ!

リザード「今度は何だ……人間か?」

勇者「俺が戸を開ける。下がってて」ガチャ

少年「お父さんとお母さんを助けてっ!」

勇者「!……何があったの?」

少年「ゴーレムが二つやってきて、村を歩き回っているんだ!」

勇者「少年。案内してくれ」

魔王「お前の言う事を信じなかった村の人間だぞ。助けるのか?」

勇者「当然だ。……この子は小さいのに、しかも一人で皆の為にここへ来た。人間が弱虫、は訂正してよ。おねえさん」

魔王「ふ……好きにするがいい」キュンキュン

リザード(なぜ顔があかくなる……?)

勇者「行こう」

少年「うん!」




リザード「……側近のゴーレムが壊されるのは、いいんです?」

魔王「うん(ゴーレム暴れてるの、私の所為だし)」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 呪術師の部屋

《キャー ウワァァァァ!! コワイヨォォォ》

側近「クックックァ!!アイアンゴーレムとグレートのタッグ。村の人間共よ、ダブルゴーレムの雄姿に慄けぇ!勇者を呼べぇ!!」

呪術師「ゴーレムの方が速いのだから、確かに蝶を付けて行けばすぐじゃったな」

妹魔王「お姉様ったら、ちゃんと村に着けてるでしょうか?恋のバトルの行方が気になりますわ」

《待て!》

妹魔王「勇者ですわ!ことらもいますわ!カッコいい!傍のおとこの子は可愛い!」

側近「来たな、勇者め!……あ!逃げるな!」

呪術師「ちゃんとゴーレムを追わせるんじゃぞ。狙いは勇者“だけ”じゃ」

側近「わかってます!今度こそ叩き潰してやる……!」

《ゆーしゃー!》

側近「魔王様!?と後ろにいるのは……ヒ」

呪術師「おお!リザード騎士団長!無事じゃったか!」

側近「ひ……!?あの“鬼トカゲ”リザード……!」

妹魔王「どうされました?顔がこの世で一番おっかないものを見ているような顔ですわよ?
     ……しっかりなさい!今、勇者との決戦ですわ!ゴーレムを指揮するのはあなたですのよ!!」

側近「そうだ……!特等席でご覧ください、魔王様!わたしのダブルゴーレムが勇者に引導を渡して見せます!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――人間と魔族の棲む境 人間側最果ての村 外れ


勇者「やはり俺だけが狙いか。村から離れるまで付いてきてくれて助かったよ。ここなら、存分に戦える」

リザード「おい、外に出るな!危ないだろ!全く、勇者だけを襲うゴーレムとか魔王様とか、俺の居なかった間に魔族側はどうなってるんだ!?」

男「ハァ……!なんだっていい。勇者が俺たちの為に戦ってくれているんだ……!頑張れっ……勇者!!」


勇者「ことら!一緒に行くぞ!」

ガウッ!


魔王「ゆーしゃーー!!がんばれーー!!」

リザード「……勇者を応援するんですね」

魔王「リザードも好きな方を応援していいよ?」

リザード「好きな方って…………え、好き?」

男「勇者がゴーレムの吐いた火炎に呑まれた!」

リザード「よく見ろ。盾で受けているぞ」


勇者「ッ!」


魔王「綺麗……盾に当たってる炎が、翠の炎に変わってる」

リザード「命の炎です。ただの炎じゃありません。魔で出来た、全てを焼き尽くす。―――あの技も父親から受け継いだのか」

男「ゴーレムから放たれてる赤い炎が、全部勇者の翠色に変わっていく……ゴーレムの全身に燃え移った!」


オォォォォォ……!


魔王「いけー!そうだ!ことら!グレートは電撃させ出させなければ今翠の炎で焼かれたのとだいたい一緒だぞー!」


ガウッ!!

勇者「ことら!今までのお返しだ!」ブンッ


男「投げた剣をことらが口で掴んだ」

リザード「虎モドキ、剣に燃え移ってる命の炎が平気なのか」


ゴォォォォォン!!


魔王「すごーい!火の玉になって、グレート・ゴーレムを砕いちゃった!」


勇者「ふう、観客と応援が多いから張り切っちゃったよ。―――あ、あそこにいた。どうだ、少年!勇者は強いだろう!」

少年「うん!」

ザワザワ… スゴイ サスガハオレタチノユウシャダ

魔王「お!―――やあやあ、遠く眺めていた村の人間よ。どうだ、勇者の強さと人間への忠義の程は!
    私なら旦……ぜん!私の左腕として隣に立たせるが!……お前たちはそんな勇者の姿を私よりもずっと多く観てきたはずだな」

勇者「……?」

魔王「我等は当然!人間とは我等の利ともなる戦争の無い平和以上の信用などしない。
    だが、同じ人間、しかも勇者の生き様を見てきた貴様達は何故、勇者の言葉を信じようとしないのだ!」

ウ、ウルサイ! ナンナンダオマエハ!?

魔王「私は魔王。先の戦争にて、貴様達を恐怖で満たした先代の血を受け継ぐ者だ!」


勇者「魔王!?え、ほんとのまおう!?おっきくなったなぁ……!」

リザード「なんとなく気づいてると思ったが」

勇者「単純に年下のガールフレンドだと思ってたよ……」

リザード「バカ。親子程の差があるんだぞ」


魔王「人間の男よ。我が騎士団長を看病してくれたこと、心より感謝する」

男「あ……はい」

魔王「しかも未だ病人である。我等はこれで帰るが、同じ村の人間同士仲良くすることだ。
    村の人間共よ、もし、彼を傷つけることあれば……わかってるな?」

勇者「そこまでにしてもらおうか、魔王。ゴーレムを使って俺を捕まえようとした理由、ここで聞かせてもらう」

魔王「それは、だな……そう!ここではなく、我が城にて君に伝えよう!出でよ!!」バッ

男「何で筆を出したの?」

リザード「あれで描いたものが、使用者の望む効力を発揮する。見てろ」

魔王「カマン!ドラゴン―――!」

ビーム! モリニビームハナッタゾ!

ギャオオーーン!!

リザード「あれは国ぶっ壊し用の赤ドラゴン!あんな危ないのに乗ってきたのか!」

魔王「結界で窮屈にさせてごめんねー!」

勇者「ん?」

「」ギョロ

勇者「お!?」

魔王「あ!ドラゴンちゃんが遊んでだってー!」

キャーー!! ニゲローー!! ヒノアメガフルゾー! ユウシャガンバッテー!  ギャウ!ギャウ!  トリアエズハナレルゾコトラ!

男「ひでぇや」

リザード「人間どもは散り散りですが……お説教はどうされたんですか」

魔王「もういいさ。さっ、リザード。彼の為にも帰還の時だ。お別れの挨拶だよ」



オノレアカイカラナンダ! ギャオオン!! キッチャダメダヨユーシャ!イッショニノッテイクンダカラネ! ワカッタ!タテパンチ!


男「元から、村に馴染めなかったから一人でいたけれど、リザードと会って……やっぱり人と一緒に過ごすのは楽しいんだなって、思い知ったよ」

リザード「そうか。……次は人間同士で仲良くやりな」

男「そうだな。村の人からいっぱい話の種をもらって、今度は俺の方から遊びに行くよ。楽しみにしててくれ、魔族の友人」

リザード「ああ……人間の友よ。また会おう」

男「うん。また」


ギョエーッ! キャーユーシャツヨーイ!! マオウメ…ナンテオソロシイヤツダ… ガオ…

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 呪術師の部屋


妹魔王「ヒュー!お姉様の人間共への上から目線SEKKYOUは最高でしたわ!」

呪術師「国ぶっ壊しを剣もなし、翠の炎もなしで降すとは……勇者、恐ろしくもあり、魔王様にお相応しい実力」

妹魔王「ですがO・SEKKYOUモードのままいればよろしかったのに、いきなりはっちゃけだすのは勇者的にマイナスですわね」

呪術師「勇者に自分を狙う理由を聞かれた時恥ずかしがられたようで。適当に有耶無耶にしたみたいですな」

妹魔王「んもう!変な所でオ・ト・メ!なんだから!……あれ、側近?側近?いない?」

呪術師「ふむ。妹様、そろそろお休みにしましょう」

妹魔王「お休みなさい。ばあや」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――夜 魔王の城 廊下


側近「うう……魔王様、ひどい。グレートはおニューで、所々尖ってるんですよ……。ちゃんと違いはあるんですよぅ」

「何をしておられるのです、側近殿。魔王様不在の今、あなたがしっかりせねば」

側近「んん……。部下のお前達に言われるとは。すまなかったな、廊下で情けない姿を見せてしまって」

「そうです。かつての戦争の様に、我等の力による人間共の服従を目指したあの時の方針を取り戻すのです」

側近「え?」

「かつて、とてもお若くも、魔王様にお考えを改めて頂く為に反体制派を率いたあなたが。魔王様のご親友であるあなただからこそ!」

側近「……」

「魔王様は勇者に熱を上げ、婚姻の儀式まで行おうとする乱心」

「きっと日々の務めにお疲れでつい、魔が刺して……お若いばかりに……先代である御父上が不憫で、不憫でなりません!」

「今この時こそ、我等の出番です。本当の魔王様を取り戻す為、我等はあなたに旗頭となっていただきたい!そうすれば我等どこまででも!」



側近「―――――――ふむ、そうだな。これは好機だ」

「「「側近殿……!」」」

側近「直に魔王の城へ勇者が現れる。戦争終結の引き金を引いた憎き先代勇者の血と技を継いだ人間だ。
    奴を魔王様の目の前で仕留める。そうすれば、魔王様の熱も冷め、人間は頼りであり希望の存在を失って我等への敵意を露わにする。
    ……クックック……そうなればどうとでもなる」

「では……我等は同士の招集を」

側近「頼む。この大業、私が全てを仕切る!私のゴーレムが、勇者に引導を渡すのだ!」

「え、だいじょうぶですか……?幾度もゴーレムが出撃しては、帰ってきておられないのですが……?」

側近「私に先頭に立てっつった癖に失礼だな!……まあ、その通りだ。勇者へ繰り出した個体はな。
    だがそれらは後の世の為の量産前提の試作。私には“最後の切り札”がある」

「「「おお……!」」」

側近「魔王様と、私との約束。お前達は同志を集めてくればよい。では、眠いのでまた後日。仕事場で会おう」

「「「はは……っ!!」」」

側近「全ては魔王様の為に」

「「「全ては魔王様の為に」」」


呪術師「……」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


呪術師「ふあ……。おお……まだ起きてらしたか。しかもお一人で」

側近「あら、ばあ様。演技はよろしいです。我等のクーデター話、お聞きになられておりましたでしょう?」

呪術師「何のことかの?妹様を眠りに就かせ、ここを通りがかっただけじゃ」

側近「気配を消す術。あなたのそれには誰にも破ることなどできません……小さい頃から散々化かされた私の勘でなければ」

呪術師「のう」

側近「皆、魔王様に忠誠を誓っています。ですが、人間との戦後の協調路線に関しては別問題。
    魔王様が城を離れた時、チャンスと思って不満を持っている者が表に出てくることは分かっていました」

呪術師「かつての、先代魔王の逝去から始まった反体制活動の勃発のようにか」

側近「はい。当時、先代魔王様のカリスマにより講和後も保たれた統制は、先代魔王様がこの世を去ると共に揺らぎました。
    ほとんど、その通りの事が起こるのです」

呪術師「お前が」

側近「はい。……お止めになりますか?」

呪術師「信じられぬ。魔王の最愛の友である、お前が」

側近「何故、“力”に優れ、獰猛な魔物を従える術を持つ我ら魔族が人間と対等にならなければならないのか……。
    例えあの講和が、多くの血を流すことを防ぐ為の先代魔王、前世代の、そして憎き先代勇者の尽力の結果であっても……。

    かつて私はその思いを胸に、反体制の行動を起こしました。そして“鬼トカゲ”に敗れて……当時の仲間はどこにいるんだろうな……」

呪術師「お前だけが正直に罰を受け、囚役を果たし、その間の努力でここまでの地位と名誉を手に入れたのじゃ」

側近「そう。今の私があるのは、幼い頃から魔王様の親族達との交友があった故。そして、魔王様本人の情けのお蔭」

呪術師「違う」

側近「今、その恩に報いる時が来ました。全ては、魔王様の為に。―――お休みなさい」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――数日後 魔王の城 前


勇者「これが、俺を呼んだ理由か」

魔王「嘘」

『アー・アー―――戦闘前なので、城よりゴーレム付属のスピーカーでご容赦下さい。お帰りなさいませ、魔王様。そして―――』

『よく来たなぁ、勇者!』

リザード「なんだ?魔王の城の周りに、側近のゴーレムが沢山……全部勇者と戦うの為のものか!」

側近『量産型グレート・ゴーレム。グレートの性能をほぼそのままに、来るべき人間との戦いに備えて生み出された傑作だ』

勇者「……俺だけならともかく、再び人間に戦争を仕掛けるつもりなら、俺達がここで斬るぞ」

ガオォッ!

側近『望む所だ。魔王様!リザード!さあ、お城へ!勇者はグレートが倒します!』

『ゆけぇ!グレート達!勇者をぶちのめせ!』

勇者「ことら。撃たれる雷よりも速く、だ!立ち止まったら負けるぞ!」

ガオ!



リザード「魔王様、早く城へ」

魔王「うん」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 バルコニー 改め 作戦指令室


「側近殿……勇者もう3体倒してます……剣投げて電撃防いだと思ったら鞘で殴り倒してますよ……」

「あ!また1体、剣咥えた怖い顔の犬に斬られました」

側近「あれで虎だ。……ふん、数はまだいる。精々足掻いてみせるがいい」

妹魔王「これ、側近の部下。紅茶のおかわりをお願いします」

「はい。ただいま」

妹魔王「側近の同士以外の魔族や魔物はどうしたのです?」

側近「これは勇者を痛めつけるエンタメショー。魔族、魔物の方々には距離を取っていただき、
    ゆったり鑑賞していただくことをお願いしております。あ、コーヒーおかわり」

「はっ!」

呪術師「その割にはもう10体以上蹴散らされておるがな。儂も緑茶を。あっついのをな」

「はい!」

リザード「貴様らぁ!!魔王様の許しも得ず何をやっているぅぅ!!」

「び!?鬼トカゲ!?」

妹魔王「リザード!お帰りなさい!生きて帰ってきて良かったですわ!」

リザード「おう、妹様。ただいまです」

側近「やあ、リザード。ご無事で。魔王様の護衛、ご苦労だった」ガタガタ

「側近殿!足震えております!頑張って抑えて!」

魔王「側近……」

側近「お帰りなさい。……暗い顔をなさらないで見ていてください。私と勇者の“最後の戦い”を」

魔王「あなたは」

「うわああああああああ!!剣の炎で電撃が薙ぎ払われてる!壊されてるっ!」

リザード「フン。命の炎に勝てるのかい?あれは退魔の炎だぞ」

側近「見ていろ。かつての私とは違った、魔王様の右腕の技を。行くぞ!カイザー!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 前 戦場


勇者「何だ!?前に一際でかく尖ったゴーレムが出て来たぞ……!」

ガオッ!ガオッ!

勇者「そうだな、ことら。こいつは強力な相手だ。それでも、切りさいてやる!」

ガオッ!

勇者「行くぞぉ!!」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 作戦指令室


「勇者が……倒れた……!?」

「勇者の剣が!剣が、ゴーレムの身体を斬り通せませんでしたよ!?」

側近「グレート以上の堅さを誇るアルファの装甲。これがカイザーゴーレム」

魔王「あれって、側近が初めて見せてくれたゴーレムだ」

側近「そうです!私の最初にして最高の傑作。魔王様に褒められたからこのシリーズにこだわりました!
    これが敗れたら、私は敗北を認めるしかありません!そういうレベルです!」

「ハッハッハ!見て下さい!勇者は無謀にも殴り合いを挑んでいますよ!剣は……無様にカイザーゴーレムに突き刺さったままですね!」

「しかし、命の炎を防いだのはどういうことです?」

側近「単純な力勝ちだ。ただ勇者の力がカイザーに及ばないだけのこと」

リザード「しかし、あれが最初なら後に造ったゴーレムたちは何故あれに及ばないんだ」

側近「ゴーレムの零号……プロトタイプに当たるカイザーは、気合入れて労力と予算と資源を度外視して作りました。
    けれど、一品ものなので簡単に資材揃えられないし壊れたら超面倒くさいしで、これを原点に色々改良、模索してたんです」

魔王「……約束、だもんね」

側近「はい。私達で共に素晴らしい未来を掴もう。あのゴーレムは私達の約束です。だけど、私は――「勇者を掴んだ!」

「投げ飛ばした!」

「こっち来るぅぅぅぅぅ!!」


ガラガラガラ……

魔王「みんな、大丈夫!?」

呪術師「衝撃は来たが、ここと違う所に勇者を投げ飛ばしたようじゃの」

リザード「そもそも、なんでこっちに投げ飛ばしてくるんだ!」

側近「力が凄い分、やることも相応にデカいんですよ。起動したら、気まぐれで何が来るかわかりません」

「えっ!?何ですかそれ!?」

「カイザーゴーレムは側近殿がコントロールしてるんじゃないんですか!?」

側近「この制御出来ない程の力が最後の切り札だ。お前たちは私を旗頭にして勝利に賭けたのだから、これ位のことでブーたれても困る」

「そんなぁ」

魔王「みんな無事……妹は!?」

呪術師「あ……お花を摘みに行っておった」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 廊下


勇者「ぐ……!派手に吹き飛ばされたな。ここは、魔王の城か……」

《ゴォォォォォォ!!》

勇者「あいつ、周りのゴーレムたちを壊している……!?仲間じゃないのか!?―――ことら、上手く逃げるんだぞ」

「あわわわわ。お、お助けぇーーーー!!」

勇者「声だ!ッ痛……!?でも、立ち止まってはいられないな!」



妹魔王「あたくし、魔王の妹です。助けて下さってありがとうございます」

勇者「魔王の妹でしたか。あの壁は自俺が壊したわけではないですよ」

妹魔王「分かっておりますわ。もう一つ、ご迷惑を。あたくし、足が不自由でして、車椅子もぶっ飛んだのでお力を貸して頂きたいのです」

勇者「わかった。じゃあ抱え上げるね、失礼。……しかしあのゴーレム、強いけど酷いな」

妹魔王「心の無いモノが、ドデカい魔力の思うままに動けばあんなものですわ。純粋な力は暴力ですのよ」

勇者「そうか……流石は魔王の妹、冷静な指摘だ」

妹魔王「いえ、勇者に抱きかかえられて心臓がどっきどっきたいへんですわ。ごめんなさいお姉様。あたくし、たいへんです」

勇者「ちょ」


魔王「いた!勇者!?あーーーー!!?」

リザード「てめぇ勇者!妹様に何してる!」

勇者「だっこだ。お姫様抱っこ」

妹魔王「お姫様……いやん」

魔王「ずるい!」

妹魔王「ずるいと思うなら、お姉様も色々利用してやってみなさいな」

魔王「りよう?」

側近「ブレイクタイムだ、勇者。カイザーゴーレムが量産型グレートを相手にしている間、今のうちに
    この戦いにおける君の勝利条件を伝える。カイザーを倒してみろ」

勇者「それでいいのか」

側近「フッ。倒せるものならな……勇者よ。剣が通じなかった時点で、カイザーの力がどれ程か思い知っただろう?」

勇者「ああ。あれが外へ放たれたら、多くの人が悲しむ」

魔王「……ならば勇者、倒してみよ」

「魔王様……やっとやる気に!」

魔王「お前達の、私の許可なくやったことにはそれ相応の対応はするがな。―――側近、私の望みを託すぞ」

側近「クックック、見事魔王様のお望み、叶えて見せます」

魔王「フ、信じてるよ。―――勇者!我が右腕であり、最高の友に勝利した暁には、この世界の半分をやろう!出来るものならな!!」

勇者「世界なんていらないよ。だが、勝利は貰って皆の平和を守る!」


妹魔王「リザード。こうして最後におんぶしてもらったのはいつだったかしら?」

リザード「あなたが先代魔王の親族に引き取られたときが最後です。別れの時は泣き続けて大変だったんですから」

妹魔王「まあ。おじ様方には良くして頂いてるのに、あたくしったら」

「この水晶玉を見て下さい!勇者め、大見栄を切って戦場へ飛び降りたのに、剣も取り戻せず、カイザーにやられておりますよ!」

「ハッハッハ!確かにあのカイザーに勝てたならば、我等も負けを認めてやんよ!」

「そんなことよりもカイザーが勝った後、どうやってカイザーを止めるか考えねばな!」

妹魔王「あら。リザードと国ぶっ壊し用の赤ドラゴンを降した勇者が負ける、と考えるのは早計ではなくて?」

「妹様!あなたは何故人間の味方をするのです!?」

妹魔王「人間。ではなくて勇者です。あたくしはかわいく感じられるもの以外、人間なんて心身が弱っちぃくて嫌いですわ。
     でも、勇者は気に入っておりますの。抱っこの暖かさが忘れられませんの……この気持ちは止められませんわ!」

呪術師「戦争が終わったのなら、好きの気持ちに正直に生きる時代だと、先代魔王もそうおっしゃられていた。
     幼き魔王様の願いをお聞きした時には“戦争が終わった。平和の証だ。母さんにも聞いて欲しかった”と喜びの涙を流して祝われていたのじゃ」

側近「!……そうか。先代魔王様は、悲しみの中で息を引き取られた訳ではなかったのですね」

呪術師「ただ、心配だったのは大きくなるまで魔王様の願いが曇らないか。
     強く生きられるまで、その気持ちは誰にも言うな、と先代は魔王様と儂におっしゃられていたのじゃ」

側近「そうでしたか……。大好きだった御父上の頼みなら、魔王様は反故にできませんね」

呪術師「考えは変わったかの?側近」

側近「いえ、却って私のしていることに自身がつきました。私は……ただ、魔王様の為に戦うだけです」

魔王(勇者……私は……)

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 前 戦場


ガオン!

勇者「カイザーゴーレムから剣は取り戻せた!ありがとう、ことら!」

ガ、ガオ……

勇者「ああ。辛くても頑張ったな。ここから離れて休んでるんだ。最後まで、気持ちだけでも、戦う時は一緒だ」

ガオ。

勇者「頭を借りるよ」ガチャ

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――魔王の城 作戦指令室


「ことらの頭を取った!いや面を剥がした!?中身も怖ッ!」

リザード「虎モドキ。勇者の着ている鎧の兜と面を被っていたのか。そして、虎モドキの頭を被った今の勇者が、本来の纏う鎧の姿」

側近「フン!まさに文字通りの虎の威を借る人間!そんな仮面の虚仮威しが通用するかァ!!」

勇者『魔王!!その側近!!』ガウッ!

「うわ!声がこっちまで聞こえてる!唸り声が聞こえる!」

「戦場に映像と音声拾う為の蝶がいるから、肉声録音ダブルでうるさい!」

勇者『俺はこの旅と、この戦いに感謝している!この戦いに勝てば、先んじてこの世界への脅威を一つ潰せるからな!
    そして、魔王からは俺の気持ちに正直に生きる勇気を教えてくれた!』

魔王「ゆうしゃ……!」キュン

側近「スタンドマイク!『倒してもないのにもう勝利宣言か貴様ぁぁッ!!』」

勇者『勝ってみせる!人々の希望!受け継がれし勇者の名に懸けて!共に行くぞ、ことら!!』ガウッ!

リザード「全身に命の炎を纏っただと!」

妹魔王「いつもよりも、纏う翠色の炎が轟轟と音を立てて激しく燃えていますわ。まさか、頭が生身だから今まで手加減していたのですか?」

側近「フン!いくら炎を燃やしたとて、所詮一刺しが精一杯のお前がぁ!!行け、カイザー!加速して!粉砕する!その鉄拳を食らわせろ!!」

勇者『ガァァァァァァァ!!』




「勇者がカイザーの胸に剣を刺した!押し込んだぞ!」

「さっきと同じところだ!」

勇者『燃えろおおおおおおおッ!!』

「剣に炎が集まって、カイザーに流れ込んでいる!」

魔王「カイザーゴーレムが!」 

側近「私の夢が、翠色に燃えていく……」

「バカなぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ!!?」

「うわあああああああ!!我等の野望がぁぁあっぁぁあ!!」


側近(……さようなら……ありがとう、カイザー)


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――戦場 跡




勇者「ことら。頭、ありがとうな。返すよ」ガチャ

ガウ。

魔王「勇者。よくぞカイザーゴーレムを打ち砕いた。その実力。驚嘆したぞ」

勇者「それはどうも。では、約束通り勝ったんだ。負けを認めてもらおう」

魔王「そうだな、約束通りだ。世界の半分をやる」

勇者「世界の半分はいらないと言ったぞ。魔王は話のわかるひとだからこのまま。よく治めるんだ」

魔王「私をあげる」

勇者「……ん?」

魔王「私を娶れば、魔族の持ち分、世界の半分を手に入れたのも同然だ!」フンス!

勇者「ん!?」

魔王「さあ!私のものになれ、勇者!」

勇者「断る!」

魔王「なんで!?」

勇者「そういうのはな………………なんだろう。恥ずかしいから!じゃあ!」ダッ

魔王「ま、待って。まって!」



側近「……あれ?告白が失敗したぞ」

リザード「いやあ、あれはダメなんじゃないかな」

側近「どこがだ!?どこでだ!?今の所人生を魔王様と反逆と囚役とゴーレムづくりに費やしている私に言ってみろ!」

「側近殿!なぜ我等が縛られているのですか!?」

「もしかして我等捕まるのですか!?」

側近「当たり前だぁ!!魔王様に楯突き、あろうことか不在時にクーデター起こそうとする腰抜け共!
    反体制の連中の情報も掴ませてもらったぞ!この側近、一世一代の諜・報・大・作戦でなぁぁ!!」

リザード「覚悟しておけ」

「び!?」

側近「クックックァァ!!しかも魔王様に愛の告白をさせる為の勇気づくりと逃げ場なしの舞台作りとして、
    大いに貴様達を利用させてもらったぁ!!貴様達には罰、いやご褒美としてカイザーゴーレム弔いのスタチューを作ってもらう!
    1分の6スケールでなぁぁ!!」

「何で6倍なんですか!?」

側近「皇帝なるゴーレムにはお墓は豪勢にだろうがぁぁ!!」


ユウシャ!トマッテ!トマッテヨ! ギャォォン!! ウワ、ドラゴンモキタ!ハヤク!オレノアシハヤク!


側近「ああん、もう!何やってるんですか魔王様!こっちはカイザーゴーレムも量産型グレート・ゴーレムも私のプライドも犠牲にしたんだ!
    何が何でも魔王様と勇者はくっついてもらう!そして幸せになってもらう!かくなる上はこの身体を使ってでもぉ!」

呪術師「そんな貧相な身体でなんになる」

側近「うるせぇ!!」

妹魔王「勇者!勇者!おまけにあたくしもつきますわ!お得ですわよー!」ピョンピョン

リザード「背中で騒がないでください」



魔王「つかまえた!」

勇者「ぐぇ、離せぇ!はなして!くっつかないで!ことら!ことらー!」

魔王「ぎゅう!ふふふ……あれを見ろ」

ガウッ♪

勇者「しもふりにくだと!?……ちきしょう!いいなぁ!!」

魔王「ん……んふ、汗臭い」

勇者「そうだね!」

魔王「私の角はどうだ?」

勇者「綺麗だよ!」

魔王「そうか、ふふ。なぁ、押し花をくれたあのお花畑に連れて行ってくれ」

勇者「わかった!また今度ね!だから!」


魔王「いやだ。二度とはなさないぞ!」



終わり


見て下さった方々、ありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

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