まどか「恋心と秋の空」 (352)

まどマギの百合物です
4回くらいに分けて投下する予定です

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まどか「はー…秋だねー……」

さやか「へ?まだ9月始まったばっかりだよ?」

まどか「カレンダーの上ではそうなんだろうけど……」

さやか「うーん…つまり、どゆこと?」

まどか「……今年もまたこの時期が来たんだなって」

さやか「この時期?この時期って何かあった……」

さやか「……あー、はいはい。そういうことね」

まどか「気が滅入るとは言わないけど、大変だろうなって」

さやか「あたしは案外好きだな、ああいうバタバタした空気」

まどか「それは…わからなくもないかも」

さやか「でしょ?何かこう…ワクワクしてくるよね」

さやか「ねぇ、ほむらもそう思うでしょ?」

ほむら「……一体、何の話をしてるのかわからないのだけど」

さやか「え?……あー、そうか。ほむら、知らないんだっけ」

ほむら「話が見えないから何とも言えないけど、多分私の知らない話をしてるんでしょう」

まどか「学校行事の話だから、きっとほむらちゃんは知らないんじゃないかな」

ほむら「そうだったの……。何とかの秋みたいな話をしてるのかと……」

まどか「それって…スポーツの秋みたいな?」

ほむら「えぇ、そうね」

さやか「まどかとほむらにとっての秋って?」

ほむら「読書の秋かしら。元々本は好きだし」

まどか「わたしは…何だろう、実りの秋……?」

ほむら「そこは食欲の秋じゃないかしら?」

まどか「べ、別に食べることだけじゃなくて…秋はおいしいものがたくさんできるよねって」

まどか「……あ、あれ?」

ほむら「ふふっ。それじゃどっちにしても食べることになっちゃうわよ」

まどか「も、もう。そんなことないもん」

さやか「……一日一膳」

まどか「さやかちゃん!その話はしないって約束したでしょ!」

さやか「いやー、だってさ」

まどか「……喋っちゃうよ?さやかちゃんのラブレ」

さやか「よし。この話はやめよう」

ほむら「何を握られているのよ、あなた……」

さやか「それでさっきの話の続きだけど、この時期は学校行事で忙しくなるんだよ」

ほむら「あぁ、そんな話だったわね。何があるの?」

まどか「体育祭と文化祭があるんだけど……」

さやか「うちの学校、その2つが近いんだよ。確か、間が2、3週間くらいだったはず」

ほむら「確かに近いわね……」

さやか「さっきも言ったけど、あたしはその忙しい空気って好きだけどね」

まどか「わたし、文化祭は好きだけど体育祭はちょっと……」

さやか「まどかはあんまり運動は得意じゃないからねー」

まどか「さやかちゃんは得意だよね」

さやか「得意中の得意よ。短距離、長距離、障害物、何でもござれって感じ?」

ほむら「私も運動はあまり好きではないけど……」

さやか「高跳びの県記録出しちゃった以上、苦手は通じないよ?」

ほむら「そう言っても、不必要に魔力を使うわけにも……」

ほむら「……運悪く当日に事故に遭うというのはどうかしら」

さやか「どうも何もないよ」

まどか「だ、ダメだよそんなの」

ほむら「そ、そう……」

さやか「諦めてちゃんと出なさいよ。全種目1位目指すとかさ」

ほむら「仕方ないわね……」

まどか「……で、でも高跳びができるからって早く走れるわけじゃないし」

まどか「だから無理することなんてないんじゃないかな……」

ほむら「……ありがとう、まどか」

まどか「え、えへへ……」

さやか(うーん?まどかの奴、どういうつもりなんだろう。あんなこと相談してきたくせに)

さやか(自分からほむらのいいとこ見れるチャンスを潰すなんて……)

さやか(……わかんないなぁ)

ほむら「……ちょっと、さやか」

さやか「へっ?な、何?」

ほむら「どうしたのよ、急に黙り込んで」

さやか「あ、えと…な、何でも。ちょっとぼんやりしてただけだから」

まどか「とりあえずお昼食べようよ。時間なくなっちゃう」

ほむら「そうね。それじゃ……」

『失礼します!』

さやか「うん?何だろ?」

応援団「お昼休み中失礼します!紅組応援団です!」

応援団「このクラスに暁美ほむらさんという方がいると聞いたのですが、いらっしゃいますか?」

まどか「え、ほむらちゃん……?」

さやか「何か呼ばれてるよ?」

ほむら「暁美ほむらは私ですけど……」

応援団「あなたが…ふーむ……」

ほむら「あ、あの……?」

応援団「すいません、ちょっと立ってもらえますか?」

ほむら「は、はい」

応援団「……うん、やっぱり。あの、ひとつお願いがあるんですが」

応援団「ぜひ、暁美さんに応援団に入ってもらいたいんです」

ほむら「……え?わ、私が?」

さやか「おー、マジかー」

まどか「すごいなー、ほむらちゃん」

ほむら「私なんかより…こっちの美樹さやかさんの方が適任だと思いますけど」

応援団「んー…確かにこの方もいい感じではありますけど」

応援団「私たち、今回は暁美さんにお願いしたいんです」

ほむら「……2人はどうしたらいいと思う?」

さやか「やってみたらいいんじゃない?せっかくあんたを指名してくれてるんだし」

ほむら「まどかは…どうかしら?」

まどか「わ、わたしもやってみてもいいと思うんだけど……」

ほむら「けど……?」

まどか「……ううん、何でもない。わたしも応援するよ」

ほむら「ありがとう、まどか……」

応援団(……?)

ほむら「……わかりました。私でよければ引き受けます」

応援団「ありがとうございます、助かります!」

まどか「がんばってね、ほむらちゃん」

さやか「あたしらにできることなら協力するからね」

ほむら「助かるわ」

さやか「……あ、ねぇ応援団さん。今年の衣装って何になるの?」

応援団「それは体育祭当日まで秘密なんで、言えませんけど」

応援団「でも、暁美さんにとてもよく似合うと思うのでご心配なく!」

ほむら「……ねぇ、衣装って何?」

さやか「うちの応援団、毎年紅組と白組でそれぞれ同じ衣装着て応援するんだよ」

さやか「確か去年の紅組はチアガールの衣装だったよ。もちろん男子も着ててさ」

さやか「いやー、あれは笑っちゃったね」

ほむら「何よそれ…聞いてないわよ!騙したわね!?」

応援団「人聞き悪いですねぇ、騙してなんかいませんよ。ただ聞かれなかっただけで」

ほむら「もっと悪いわよ!」

応援団「とりあえず、これから少し打ち合わせがあるんで一緒に来てもらえませんか?」

応援団「衣装もそこで発表するんで」

ほむら「人の話聞かないわね……」

応援団「それに…きっとあの子も喜んでくれると思いますよ?」

ほむら「……まどかが出てくる理由はわからないけど、行けばいいんでしょう?」

応援団「あれ?暁美さん、あの子とは違うんですか?」

ほむら「違うって…一体何の話?」

応援団「……あっ、いえ。何でもないです」

ほむら「それで、どこに行けばいいの?」

応援団「あ、はい、案内します。……それでは、失礼しますね」

ほむら「行ってくるわ。いつ終わるかわからないし、お昼先に食べてて」

さやか「いってらっしゃーい。……いやー、びっくりしたね。まさか応援団の勧誘だとは」

まどか「ほむらちゃん、何だかしぶしぶって感じだったけど大丈夫かな」

さやか「大丈夫でしょ。ほんとにやりたくないなら断るだろうし」

まどか「でも……」

さやか「そんなに心配することないって。もう、まどかも何だかんだでほむらに甘いなぁ」

まどか「だってほむらちゃん、誰かに甘えるってこと知らないから。だからわたしが……」

さやか(早くくっつけばいいのに)

まどか「先に食べてていいって言ってたし、お昼、食べよっか」

さやか「ん、そうしよう」

さやか「……それで、まどかはさっき何であんなこと言ったのさ?」

まどか「あんなことって?」

さやか「ほら、高跳びができるから早く走れるわけじゃないって」

さやか「あのままちょちょいと言いくるめてやればほむらのいいとこ、見れたのに」

まどか「それは……」

さやか「あたしやマミさんに何度も相談してるし、今さら疑うわけじゃないけど……」

さやか「まどか、ほむらのことが好きなんでしょ?」

まどか「……うん」

さやか「あたしも…まぁ、好きな奴がいるから少しはわかるつもりなんだけど」

さやか「普通、好きな人のいいところって見たくなるもんじゃないの?」

まどか「そうなんだけど…えっと、あのね」

まどか「ほむらちゃんってほら、すごい素敵でしょ?」

さやか「まぁ、ぱっと見美少女ってことに間違いはないね」

まどか「だから…体育祭みたいな大勢が見てる場でかっこいいところ、見せられちゃうと」

さやか「ほむらを好きになる人が出ちゃうかもしれないからってこと?」

まどか「う、うん。だから、かっこいいところはわたしだけに見せてほしいっていうか……」

さやか「あぁ、はいはい。……確かにほむらのこと、好きな人がいてもおかしくはないと思うけど」

さやか「ほむらに誰かが告って付き合うとか絶対にないから大丈夫だって」

まどか「な、何で?」

さやか「だって、ねぇ。まどかとあたしたち含む他の人じゃ態度というか接し方がまるっきり違うんだもん」

さやか「あ、これ脈なしだなって思われてるって」

まどか「そんなことないよ。確かにほむらちゃん、わたしには色々と優しくしてくれるけど」

まどか「それは今までのことがあるせいで心配してくれてるだけだよ」

さやか「えー……」

まどか「さやかちゃん?」

さやか「何でもない、気にしないで……」

まどか「告白するしないは置いといて、文化祭は今から楽しみだなぁ」

さやか「あたしは体育祭が楽しみだよ」

まどか「体育祭と文化祭でほむらちゃんともっと仲良くなれるかな」

まどか「……うぇへへ」

さやか(あーもう。どう見たって両想いなんだから早く告白すればいいのに……)

さやか「それはいいけど、早くお昼食べようよ。マジで時間なくなるよ」

まどか「……あ、そ、そうだね」

まどか(でも…ほむらちゃんが応援団に入っちゃうと、あんまり一緒にいられなくなりそう……)

まどか(もしそうなっちゃったら…ちょっと寂しいな)

――数日後――

ほむら「はぁー……」

まどか「だいぶお疲れだね、ほむらちゃん」

ほむら「えぇ……。色々とやることが多くて…慣れないことしてるせいもあるけど」

ほむら「ただ、心が重くなるような疲れじゃないから。不思議と嫌な気分ではないから大丈夫よ」

まどか「でもちょっと意外だな。ほむらちゃんが応援団に入るなんて」

ほむら「私が自分で引き受けたことだから。それに、これもいい経験や思い出になると思って」

まどか「そっかぁ……。あ、このジュース、ほむらちゃんにと思って買ったんだけど…いる?」

ほむら「ありがとう。頂くわ」

さやか「ただいまー。さすがにこの時間に購買行っても何も残ってないね、コッペパンしかなかった」

まどか「もうすぐ昼休み終わるからね……。次、体育なのに今食べて大丈夫なの?」

さやか「平気平気。ほむらも食べる?コッペパン」

ほむら「いらないわよ……」

さやか「んじゃ、いただきまーす」

ほむら「全く。……まどか、ジュースありがとう。美味しかったわ」

まどか「う、うん。それ、わたしの好きなジュースで……」

応援団「失礼します!暁美さんはいますか!?」

ほむら「ここにいるわ。何かあった?」

応援団「いえ、さっき借りたシャーペンを返すの忘れてたので!」

ほむら「あぁ、そうだったわね。……確かに受け取ったわ」

応援団「借りた分のシャーペンの芯に利子をつけて5、6本入れておきました!」

ほむら「余計なことしなくてもいいわよ……」

応援団「そう言わず、私からの好意ですから!」

ほむら「好意…好意なのかしら、それ……」

まどか「……」

さやか「……まどか。まどかってば」

まどか「あっ、えっ…な、何?」

さやか「まどか、今すっごいぶすーっとした顔してたよ」

まどか「そ、そうだった……?」

さやか「ほむらが応援団行っちゃって、妬いてるの?」

まどか「そ、そんなこと…ないって、言えない…かなぁ……」

まどか「……ほむらちゃんがわたしたち以外の人と交友を持つのはいいことのはずなんだけど」

まどか「何だかほむらちゃんが手の届かない遠いところに行っちゃったような気がして……」

まどか「いつか、わたしより仲のいい友達ができて…わたしを置いていっちゃうんじゃないかって……」

さやか(あたしたちを含めずに自分だけと来たか……)

まどか「それにこれはわたしのわがままなんだけど……」

まどか「最近、ほむらちゃんと一緒にいられないせいか…何だかやけに寂しいの……」

まどか「だから、余計にほむらちゃんのことを考えちゃうのかな」

さやか「……それ、全部ほむらを捕まえちゃえば解決する問題じゃない」

まどか「そうかもしれないけど……」

さやか「今2人のとこ行って、ほむらちゃんはわたしのものだーって言ってきたら?」

まどか「そんなこと、できるわけないでしょ。何言ってるの」

まどか「今のほむらちゃんに好きだって伝えても困らせちゃうだけだよ」

まどか「もう。さやかちゃんだって好きな人いるはずなのに、何で……」

さやか(まどかに好きなんて言われたら、絶対に喜ぶと思うけど……)

さやか(……だけど、何であたしここまで言われてるんだろう)

ほむら「戻ったわ。……どうかした?」

さやか「んー。まぁ、何でもないかな」

さやか(ほむらがまどかの気持ちに気づけばいいんだろうけど……)

さやか(ほむらも鈍感だし、望み薄だね……)

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん」

さやか(お……?)

ほむら「何かしら?まどか」

まどか「……ううん、何でもない。次、体育だし着替えに行こう?」

ほむら「え、えぇ」

さやか(ダメかぁ。感情に任せて告っちゃえばいいのに、もどかしいなぁ)

さやか(同性だし、色々難しいものもあるのかもしれないけどさー……)

さやか(しかしほむらは何でまどかの好意に気づかないかなぁ。あれだけ想われてるのにさ)

まどか「さやかちゃん、まだ食べてるの?そろそろ行かないとだよ?」

さやか「んぐ。んぐぐ、んぐー」

ほむら「……待ってるから、早く食べなさい」

――放課後――

まどか「それじゃほむらちゃん、またねー」

ほむら「まどか、また明日。さやか、まどかを頼むわよ」

さやか「わかってるって」

まどか「もー。子供じゃないのにー」

ほむら「ふふっ。じゃあ、またね」

さやか「ほむらー、またねー」

まどか「……」

さやか「まどか、どした?」

まどか「……ううん、何でも」

さやか「何でもないって言うのならそんなしょげた顔しないと思うよ」

まどか「うっ……」

さやか「さっきの続きになるけど、ほむらがいなくて寂しいんでしょ?」

まどか「うん……」

さやか「1日くらい休みもらってほむらが来てくれたらいいんだけど……」

まどか「ダメだよ。わたしのわがままでそんなこと言えないから」

まどか「それに、ほむらちゃんにみっともないところ…見せたくないし……」

さやか(なーんて言ってるけど、結構我慢してるんだろうなぁ……)

さやか「……まどか。これからショッピングモールに遊びに行こうよ」

まどか「で、でも…ほむらちゃんもいないし……」

さやか「今のまどか、捨てられた小動物みたいで…ほっとけないよ」

さやか「それにさ、ほむらにまどかのことを頼まれたからね」

まどか「さやかちゃん……」

さやか「あたしとショッピングモールで騒いでれば、寂しいのも紛れるでしょ?」

まどか「……ありがと、さやかちゃん」

さやか「いいって。ほら、行くよ?」

さやか(確かほむらは体育祭当日まで昼と放課後埋まってるって言ってたっけ……)

さやか(体育祭まであと数日…まどか、大丈夫かなぁ……)

ほむら「失礼します……」

応援団「あ、暁美さん!さっきぶりです!」

ほむら「はいはい。そうね」

応援団「うぅ…最近、暁美さんからの扱いが雑です……」

ほむら「あなたみたいに騒がしい友人がいるせいで、あしらうのには慣れてるの」

応援団「それって、私が勧誘しに行ったときに一緒にいた子ですか?」

ほむら「えぇ、一緒にいた青髪の子。あなたに負けず劣らず騒がしい子よ」

応援団「そうなんですか……。あ、じゃあもう1人の大人しかった子はどんな子なんです?」

ほむら「あの子、まどかっていうんだけど…そうね、どう言ったらいいかしら……」

応援団「と、言うと?」

ほむら「いえ、まどかのことは…私にとってのまどかは、ひと言ではとても言い表せなくて」

ほむら「優しくて、思いやりがあって、家庭的で…でも、いざというときは頼りになって」

ほむら「とても素敵で魅力的な子なの」

応援団「へ、へぇー」

ほむら「私にとってまどかは、友達とか親友とか…そんな言葉じゃ足りないくらい……」

ほむら「何よりも大切で、特別な人…かしら。他の友達とは枠の違う友達みたいなものね」

ほむら「勿論、私が勝手にそう思っているだけで、まどかが私をどう思ってるかはわからないけど」

応援団「……」

ほむら「……ちょっと、聞いてたの?」

応援団「あっ…はい、聞いてますよ!」

ほむら「自分から話を振っておいて、無反応はやめなさいよ」

応援団(いやー…なんでしょう、これ。どうしたら……)

応援団(まどかさんへのその気持ちはどう考えても友情ではなく愛情だと思うんですが……)

応援団(まさか恋の対象への気持ちを友達へのものだと勘違いしているなんて……)

応援団(それに、勧誘のときに1度見た限りですが…まどかさんも、きっと……)

ほむら「……何?人の顔、じーっと見て」

応援団「いえ…暁美さんがこうも残念だったとは思わなくて」

ほむら「残念って…酷い言われようね……」

応援団「当然です。言われても文句言えません」

ほむら「もう、一体何なの?私が何をしたっていうのよ」

応援団「何をしたって言うより、何もしないから残念なんですよ」

ほむら「……ますますわけがわからないわ」

応援団(こんな鈍感でまどかさんは大丈夫なのか、私は心配です……)

応援団(もしものときは私も力を貸してあげた方がいいかもしれませんね……)

――数日後――

さやか「……いよいよ明日が本番だねぇ。体育祭」

ほむら「そうね。明日になってしまったわね」

さやか「あたしなんか、今からもうワクワクしちゃってさー」

さやか「ほむらも紅組応援団として、応援よろしく頼むよ?」

ほむら「わかってるわよ……」

さやか「……あれ、何か楽しみじゃないっぽい?」

ほむら「応援団に入った以上、精一杯やるつもりではいるんだけど……」

ほむら「その…衣装を着てやるというのがね……」

さやか「恥ずかしいと?」

ほむら「知らない生徒に見られたくらいなら別に何とも思わないし」

ほむら「あなたやマミに茶化されたならあとで黙らせればいいし……」

さやか「さらっと怖いこと言わないでよ」

ほむら「だけど…まどかに見られるのは、ちょっと……」

さやか「まどか?」

ほむら「えぇ。あんな姿の私を見て…笑われたりしないか少し不安で……」

さやか「大丈夫だって。どんな衣装かはわかんないけど」

さやか「まどかに限ってほむらを笑ったりなんて絶対にないからさ」

ほむら「ならいいのだけど……」

さやか「それよりもほら、最後の打ち合わせがあるんでしょ?行った行った」

ほむら「わ、わかったわ。じゃあ…また、明日」

さやか「じゃあねー……」

さやか「……相変わらず鈍いなー。まどかだけには変に思われたくないなんて」

さやか「普通ならそう考えちゃう時点でわかりそうなもんだけど……」

さやか「やっぱ同性のまどかが相手だからその考えに至らないのかなぁ」

さやか「……ま、今あたしがここであれこれ考えても仕方ないか」

さやか「さーて。ほむらも行っちゃったし、まどかに声かけて帰ろーっと」

まどか「はぁ……」

さやか「まどかー。帰ろー」

まどか「……あ、うん」

さやか「ここ最近は授業の合間にほむらと話してるときはすっごい嬉しそうな顔してるのに」

さやか「昼休みや放課後になると一気にしょぼーんとしちゃってるねぇ」

まどか「それは…だって……」

さやか「大好きなほむらと一緒にいられる時間がほとんどないんだし、わからなくはないけど」

さやか「でもほら、体育祭は明日なんだし。終わったらまた一緒にいられるって」

まどか「そう…だよね……」

さやか「……まだ何か心配なことでもあるの?」

まどか「心配事ってわけじゃないんだけど…体育祭でわたしたち、色々と種目に出るでしょ?」

さやか「うん」

まどか「精いっぱいがんばるわたしのこと、ほむらちゃんは見てくれるかな……?」

さやか「大丈夫だって。ほむらにはまどかのことしか見えてないだろうからさ」

まどか「もしそうだったのなら…嬉しい、かな」

まどか「ほむらちゃんがわたしを見て…少しでも特別な好意を持ってくれたらいいな……」

さやか「あはは……」

さやか(まどかもほむらも、これを機にお互いの好意に気づくといいけど……)

さやか(このままだと多分いつも通りだろうし…あたしも少しだけ力を貸してあげようかな)

さやか「そんじゃ、帰ろっか。明日に備えて今日はまっすぐ……」

まどか「それなんだけど…さやかちゃん、先に帰ってて」

さやか「え?まどかは?」

まどか「わたしは…ほむらちゃんが終わるまで、待ってるよ」

まどか「今日は何だかほむらちゃんと一緒に帰りたい気分だから……」

さやか「待つって言っても…いつ終わるかわかんないよ?」

まどか「うん。わたし…終わるまでここで待ってるから」

まどか「さやかちゃんまで付き合うことないと思うし…先に帰っちゃって」

さやか「ほむらからまどかを頼まれた身としては一緒に待つべきなんだろうけど……」

さやか「……ま、いいか。無理するんじゃないよ?」

まどか「わかってるよ。ありがとう、さやかちゃん」

さやか「何かあったら連絡しなさい。……じゃ、あたしは先に帰るね」

まどか「ばいばい、さやかちゃん」

さやか「またねー」

――――――

ほむら「ふぅ……。やっと終わったわ……」

応援団「お疲れさまです。すっかり暗くなってしまいましたねぇ」

ほむら「……いよいよ明日ね。体育祭」

応援団「そうですねぇ。何だかあっという間だったような気がします」

応援団「明日は我が紅組を思いっきり応援しましょう!」

ほむら「えぇ。……さ、遅くならないうちに帰るわよ」

応援団「あ、はい!」

ほむら「……さすがに校内も生徒はほとんどいなかったわね」

応援団「いつもならとっくに帰っちゃってるような時間ですから」

応援団「それに、明日に備えて早く帰った人も多いでしょうし」

ほむら「それもそうね。私たちも早く家に……」

応援団「……あれ?校門のところに誰かいますよ」

ほむら「こんな時間まで誰かを待っているのだと思うけど……」

ほむら「……でも、あれって…もしかして……」

まどか「……」

ほむら「まどか」

まどか「あっ…ほむらちゃん。お疲れさまっ」

ほむら「どうしたの、こんな時間まで」

まどか「うん、ほむらちゃんのことを待ってたんだ」

ほむら「私を?」

まどか「今日は…ほむらちゃんと一緒に帰りたかったから……」

応援団「暁美さん、この子は……」

ほむら「この間話したでしょう?この子がまどかよ」

応援団「なるほど。この子が……」

応援団(この子が暁美さんのことが好きな子、そしておそらくは暁美さんの想い人……)

まどか「あの、わたしに何か……」

ほむら「あんまりまどかをジロジロ見るんじゃないの」

応援団「おっと、失礼しました」

ほむら「ほら、いつまでも立ち話してないで帰りましょう」

まどか「あ…そ、そうだね……」

応援団(まどかさんが残念そうに私を見てますね。やっぱり、間違いないみたいです……)

応援団(……お邪魔虫の私は早く立ち去りましょう)

応援団「あー、私は家が向こうなんでここで別れますね」

まどか「……!」

ほむら「あら、そうなの?」

応援団「はい!それでは、私はこれで!」

ほむら「また明日。早く寝るのよ」

応援団「わかってます!明日、頑張りましょう!」

まどか「えっと、さようなら……」

応援団「まどかさんも、頑張ってください!……では!」

まどか(……あの人、わたしを見て親指立ててたけど…もしかして……)

ほむら「まどか、私たちも行きましょう」

まどか「う、うん」

まどか(……まさか、ね)

ほむら「何だか久しぶりね。まどかと一緒に帰るのは」

まどか「う、うん。最近、ほむらちゃんは応援団で忙しそうだったし……」

まどか「さやかちゃんやマミさんとは一緒だったけど、わたしは……」

まどか「……わたしは、やっぱり寂しかったな。ほむらちゃんがいなかったから」

ほむら「ふふっ。そう言ってもらえると嬉しいわ」

まどか「えへへ……」

まどか「……ねぇ、今の人って…応援団の人、だよね」

ほむら「えぇ。ほら、私を勧誘に来た子よ。応援団の活動は大体一緒で……」

まどか「……ほむらちゃんは、あの子と仲がいいの?」

ほむら「え?……まぁ、仲の良い方だとは思うわ」

まどか「……そっか」

ほむら「まどか……?」

まどか「……あの子のこと、好き?」

ほむら「好きか嫌いかと聞かれたら…好き、かしらね」

まどか「じゃあ…わたしのことは……?」

ほむら「まどかのこと?勿論好きよ」

まどか「……あの子とどっちが好き?」

ほむら「……そうね。あの子には悪いけど、私にとっての1番はまどかよ」

ほむら「私はまどかのこと、大好きだから」

まどか「……ありがと、ほむらちゃん。変なこと聞いて、ごめんね」

ほむら「でも、何でこんなことを?……もしかして」

まどか「あ、や、その……!」

ほむら「あの子と仲良さそうにしてたから、私を取られちゃうと嫉妬しちゃったのかしら?」

まどか「……そ、そう!そうなの!わたしよりも仲の良い友達ができたんじゃないかって」

ほむら「心配しなくてもまどかは私の最高の友達なんだから。大丈夫よ」

まどか「あ…うん、そうだね……」

まどか(やっぱり…ほむらちゃんにとってわたしは友達かぁ……)

ほむら「……まどか。ここまで来たし、そろそろ」

まどか「え…あ、もう来ちゃったんだね……」

ほむら「えぇ。……じゃあ、まどか。また明日」

まどか「……あ、あの、ほむらちゃん!」

ほむら「何?」

まどか「あ、明日!わたし、がんばるから…わたしのこと、見ててね!」

まどか「わたしもほむらちゃんの応援、ちゃんと見てるから!」

ほむら「わかったわ。私も精一杯やるから…まどかも頑張ってね」

まどか「う、うん!……そ、それと…ほむらちゃん、今1人暮らしでしょ……?」

ほむら「そうだけど、それがどうかした?」

まどか「明日のほむらちゃんのお昼…たぶん自分で用意すると思うんだけど」

まどか「それ…わたしに任せてもらえないかな……?」

ほむら「それって…まどかが私のお昼を用意してくれるということかしら?」

まどか「ダメかな……?」

ほむら「いえ、とても嬉しいんだけど…本当にいいの?」

まどか「もちろんだよ。わたしがほむらちゃんにしてあげたいと思ってるから」

ほむら「……じゃあ、明日のお昼はまどかにお願いするわ」

まどか「わ、わかった!……ご、ごめんね、引き止めちゃって」

ほむら「別に気にすることないわ。それじゃ、私はそろそろ……」

まどか「……ま、また、明日。ば、ばいばい!」

ほむら「またね…って、行ってしまったわね……」

ほむら「……私も早く家に帰らないと」

ほむら(……それにしても、まさかまどかが私のお昼を用意してくれるなんて)

ほむら(応援団の仕事のせいで寂しい思いをさせてしまったというのに……)

ほむら(やっぱりまどかは私にとって最高の友達ね……)

ほむら「……約束したものね。お互いのこと、ちゃんと見ててほしいって」

ほむら「まどかが見てくれるのだし、明日は精一杯頑張らないと……!」

今回はここまで
次回投下は25日夜を予定しています

タイトルについては全部書き上げるまで思いつかず
ほぼ語感だけでつけたものです。ごめんなさい

なお今回のは前回予告にあった
タイトル未定 秋のイベント詰め込んだものにタイトルつけたものになります

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――体育祭当日――

詢子「おーい、まどかー?そろそろ出ないと遅れるぞー?」

まどか「あ、あとちょっと!……これで完成、かな」

知久「特におかしいところもないし、大丈夫だと思うよ」

まどか「パパ、ありがとう。それじゃわたし、出るから…お弁当、お願いね」

知久「わかったよ。お昼は僕たちと一緒に食べるのかい?」

まどか「ま、まだ何とも。……よし、それじゃ行ってきます!」

詢子「頑張れよ、まどかー」

知久「……それじゃ、僕たちももう少ししたら学校に向かおう」

詢子「んじゃ、支度しようか。……よーしタツヤ、今日は姉ちゃんをしっかり応援しような」

タツヤ「あーい!」

知久「それにしても、まどかは一体誰のためにお弁当を作ったんだろう……」

詢子「そりゃほむらちゃんにだろうよ。他に思い当たる相手なんていないしね」

知久「暁美さんに……?でも、どうしてさやかちゃんたちの分はなくて暁美さんにだけなんだい?」

詢子「……パパって時々やけに鈍感になるね。まどかがすこーし鈍いのもパパ譲りかな」

タツヤ「にぶー」

知久「うーん……?」

まどか「さやかちゃーん!」

さやか「おはよー、まどか。遅いぞー」

まどか「ご、ごめんね。……あれ、ほむらちゃんは?」

さやか「応援団の準備で先に行くってさ。まどかにもそう伝えてほしいって」

まどか「そ、そっか。先に行っちゃったんだ……」

さやか「……っと、ぼんやりおしゃべりしてないで学校行くよ」

さやか「でも、何で今日に限って遅くなったのさ。寝坊?」

まどか「あ、あはは……。何でもないよ、何でも」

――――――

さやか「みんな、おはよー。さー、今日は体育祭!がんばるぞー!」

まどか「ほむらちゃんは…いないかな……」

仁美「おはようございます、まどかさん」

まどか「仁美ちゃん。おはよう」

仁美「さやかさんは今年も張り切ってますわね」

まどか「確か去年もだったよね」

仁美「私たちも怪我には気を付けて、精一杯頑張りましょう」

まどか「うん、がんばろう」

仁美「ところで、誰かお探しの方でも?」

まどか「あ…えっと、ほむらちゃん、知らないかな?」

仁美「ほむらさんなら荷物を置いてすぐ出て行かれましたけど……」

まどか「もう行っちゃったんだ……。ありがとう、仁美ちゃん」

仁美「確かほむらさんは応援団でしたわね。今年の衣装は何になるんでしょうか」

まどか「衣装…衣装、かぁ……」

さやか「まどかー、仁美ー。荷物置いたしグラウンド行くよー」

仁美「さやかさんが呼んでますし、私たちも行きましょう」

まどか「そう…だね。じゃあ、行こっか」

ほむら「……」

応援団「やっぱり暁美さんはバシッと決まっててかっこいいですねぇ」

ほむら「そうかしら……」

応援団「もちろんですよ!たぶん紅組応援団で1番似合ってると思います!」

ほむら「女子の比率が高いとは言っても、ちゃんと男子もいるんだけど……」

応援団「いえいえ、暁美さんの方がそんじょそこらの男子よりもずっとかっこいいですから!」

応援団「それにほら、周りの子もみーんな暁美さんを見て止まっちゃってますし」

ほむら「も、もう……」

応援団「ほんと、それだけかっこよければまどかさんも大喜びですよ」

ほむら「だといいのだけど……」

ほむら「……?待って、どうしてそこでまどかが……」

応援団「さぁ、そろそろ時間です!行きましょう!」

応援団「私たちの応援で紅組に勝利を!おーっ!」

ほむら「はぁ……。もういいわ」

ほむら(……まどかが私の姿を見てどう思うかはわからないけど)

ほむら(応援団として、紅組と…まどかを応援しないと……!)

――――――

まどか「そろそろ始まるね、最初の応援合戦」

仁美「今年の衣装は一体何になったのでしょうね」

さやか「開会式の間、気になって気になって仕方なかったよ」

まどか「わたしも、ずっと楽しみにしてたんだ」

さやか「まぁ、まどかの場合は衣装そのものよりもそれを着たほむら……」

まどか「さ、さやかちゃん!しーっ!」

さやか「……おっと。ごめんごめん」

仁美「あ、始まるみたいですわ」

さやか「去年の紅組はチアガールだったけど、今年の衣装は……」

仁美「まあ、これは……」

さやか「学ラン…学ランだこれ!ほとんど女子なのに!」

さやか「学ランに白手袋と赤いハチマキ…まさに応援団って感じの衣装だけど……」

さやか「ほむらのやつ、男子より似合ってない?あの子、女子でしょ?」

仁美「ほむらさんに向けてでしょうか、黄色い歓声が凄いですわね」

さやか「……白組の応援も始まったけど、全部ほむらに持ってかれた感がするね」

まどか(な、なに、何あれ!?何なのあの衣装!?)

まどか(あ、あんなにほむらちゃんがかっこいいなんて聞いてないよ!)

まどか(どんな衣装かって楽しみにはしてたけど、こんなにかっこいいなんて……!)

まどか(ほむらちゃんがかっこいいっていうのは嬉しいんだけど、でも……)

さやか「……まーどーかってば」

まどか「……あ、さやか、ちゃん。何?」

さやか「いつまでも見惚れてないで、ほむらのとこ行ってみよう」

まどか「え、でも応援……」

仁美「まどかさんが見惚れている間に終わりましたわよ」

まどか「そ、そうなんだ……」

さやか「あたしたち、ほむらのとこ行ってくるけど…仁美は?」

仁美「私は遠慮しますわ。おふたりだけで行ってきてください」

さやか「わかった。んじゃ、行くよ、まどか」

まどか「あ、ま、待ってよー」

ほむら「はぁ……」

ほむら(やたらと歓声が上がっていたわね。あの子は私を見たからだと言ってたけど……)

さやか「おーい、ほむらー!」

ほむら「ま、まどか。さやか」

さやか「おはよ。応援合戦、大人気だったじゃん」

ほむら「べ、別に望んだことじゃないというか、不本意というか……」

まどか「でも、今のほむらちゃん…すごくかっこいいよ」

まどか「……その、目が離せないくらいに見惚れちゃった」

ほむら「そ、そう?ありがとう、まどか」

マミ「おはよう、みんな」

さやか「あ、おはようございます。マミさんもほむらに?」

マミ「えぇ。暁美さんが応援団に入ったというのは噂で聞いてたけど……」

マミ「まさか学ランがこんなに似合うなんて思わなかったわ」

ほむら「応援団の人にも言われたんだけど…どう受け取ればいいのかしら」

さやか「素直に受け取ればいいんじゃない?少なくとも褒めてるわけだし」

マミ「そうよ。ねぇ、鹿目さん?」

まどか「え!?えっと…わ、わたしはどっちかと言うと見惚れちゃってて……」

ほむら「な、何だか恥ずかしいわね……」

まどか「ほむらちゃんは…凛々しくて、かっこいいから……」

まどか「他の人よりそういう衣装が…とっても似合ってると思うんだ……」

さやか「まぁ、事実すげー似合ってるよね。長髪なのに学ランってギャップがいいのか……」

マミ「私の周りでも暁美さん、大人気だったし…今も遠巻きにチラチラ見てる人、多いわよ」

ほむら「……でも、知らない大勢の歓声よりも、まどかのひと言の方が私は嬉しいわ」

まどか「そ、そんな、ほむらちゃんってば……」

さやか(ほんと、わかりやすいなぁ、まどかは。何でほむらはこれで気づかないんだろ)

マミ(一体いつになったら鹿目さんの好意に気づくのかしら……)

ほむら「……そろそろ競技開始よ。戻った方がいいんじゃない?」

マミ「え?あ、ほんとね。じゃあ、私たちは戻りましょう」

さやか「ですね。紅組優勝目指してがんばるぞー!」

マミ「暁美さんも応援よろしくね」

ほむら「えぇ。任せなさい」

さやか「んじゃ、あたしたちはこれで」

ほむら「あぁ、待って。まどか」

まどか「な、なぁに?」

ほむら「……今日のお昼、楽しみにしてるわね」

まどか「ふぇっ!?」

ほむら「行ってらっしゃい。まどかのこと、ちゃんと見てるから…頑張って」

まどか「……うん!わたし、がんばるから…わたしのこと、応援してね!」

まどか「じゃあ、行ってくるよ!」

さやか「ほむらと何話してたの?」

まどか「えへへ、秘密。でも、やる気出てきたよ!」

さやか「なにー?さやかちゃんに隠し事するなんて……」

マミ「あら、私も気になるわ。どんな話を……」

まどか「こればっかりはマミさんでも……」

ほむら「……いよいよ本番ね。私も精一杯応援しないと」

ほむら(でも、まどかは何で紅組ではなく自分のことを応援してと言ったのかしら……?)

ほむら(よくわからないけど…まどかが頑張れるように、全力でまどかを応援しましょう)

――観客席――

詢子「いやー、今年もいい場所確保できてよかった。協力ありがとね、杏子ちゃん」

杏子「い、いえ。別にアタシは……」

詢子「……お、そろそろ始まるな。パパ、カメラの用意は?」

知久「いつでも大丈夫だよ」

詢子「そんじゃ、パパはいつも通りに撮影お願い。杏子ちゃんは…タツヤの面倒見てもらえないかな」

杏子「わ、わかりました」

知久「ママは何をするんだい?」

詢子「アタシ?アタシはこっちのカメラで撮影するから…ちょっと出てくるよ」

詢子(今日、思いっきり頑張るであろうまどかへのご褒美をね……)

まどか「うぅ…もうすぐ出番だよー……」

さやか「今日最初の種目だからって緊張することないよ。リラックス」

さやか「まどかの家族も来てるだろうし、ほむらだって応援してくれてるんだからさ」

まどか「それはわかってるんだけど……」

さやか「……あ、ほら。まどか、順番だよ。がんばって」

まどか「う、うん……」

まどか(あーもう、ダメだ……。ほむらちゃんに見られてるってすっごい意識しちゃってる……)

まどか(とにかく…ほむらちゃんもがんばってるんだから。わたしもがんばらないと……!)

まどか「はぁ…はぁ…っ……!けほっ……」

まどか(全然…ダメ、だった……。そりゃ、1位取れるなんて思ってない、けどっ……)

まどか(上位にさえ、入れなかった……。ほむらちゃん、見てるのに、わたし……!)

さやか「お疲れー、まどか。よくがんばったね」

まどか「でもっ…5位、だった……。がんばるって、言ったのに…これじゃあ……」

さやか「まどかは一生懸命やったんだから。胸張りなさいって」

さやか「それにほむらだって、まどかががんばったの、ちゃんとわかってるはずだよ」

まどか「……そう、かなっ……?」

まどか(ほむら、ちゃん……。わたし、がんばった…よね……!)

さやか「さーて。まどかもやっと落ち着いたし、次の出番までゆっくり観戦してよっか」

まどか「わたしが落ち着いてる間に種目がひとつ終わっちゃってるね……」

さやか「がんばったよーってほむらのとこ行ってくる?」

まどか「そ、そんなの言いに行かなくてもわかってくれてるはずだもん」

さやか「まどかがいいならそれでいっか。えっと、次の種目は……」

まどか「3年生のメートル走じゃないかな?」

さやか「あ、マミさん走るみたいだよ」

まどか「え?どこ?」

さやか「ほら、あの黄色いドリル」

まどか「ほんとだ。……ねぇ、マミさんって走ると……」

さやか「まどかの言いたいことはわかるけど…っと、スタートしたね」

まどか「……すごいね」

さやか「ばるんばるんだね……。どうしたらあんなになるんだろう……」

まどか「さやかちゃんもある方でしょ……」

さやか「ご、ごめん。……くぉら中沢!マミさんを変な目で見てんな!」

――――――

ほむら「……ふぅ。今ので午前の部終了ね」

応援団「お疲れさまです、暁美さん。お昼、どうします?」

ほむら「あぁ、私は……」

まどか「ほむらちゃーん!」

ほむら「まどかと食べるから、これで。午後も頑張りましょう」

応援団「ごゆっくりー!」

応援団「……あ。暁美さん、学ランのまま出て行っちゃいました」

ほむら「お昼、どこで食べるの?」

まどか「パパたちと一緒に食べようと思ってたんだけど……」

ほむら「だけど?」

まどか「あ…えっと、ママが持ってきたシートが4人だと結構ギリギリな大きさで」

まどか「そこにママが手伝いで捕まえたらしい杏子ちゃんがいて……」

ほむら「私たちが座る余裕は無い、というわけね」

まどか「う、うん。お弁当は持ってきたから、どこか別の場所で食べようよ」

ほむら「そう。それなら……」

杏子(おーい、ほむらー。まどかと合流できたかー?)

ほむら(杏子、あなた何してるの?まどかのご両親と一緒なんて)

杏子(色々あってな。それより、アタシがここにいたおかげでまどかと2人になれるんだからさ)

杏子(これを機に思いっきり仲良くなっとくんだぞ。じゃーな)

ほむら(ちょ、杏子…もう、何なのよ。思いっきり仲良くなっておけって)

まどか「ほむらちゃん?どうかしたの?」

ほむら「……いえ、何でもないわ。それよりもお昼だけど、いい場所を知ってるの」

ほむら「この辺りだとどうにも私が注目を集めてしまうから…そこに行かない?」

まどか「わ、わかった。案内、よろしくね」

――――――

ほむら「……着いたわ。ここよ」

まどか「学校の敷地内にこんなところ、あったんだ……」

ほむら「ここなら他の人は滅多に来ないから。ゆっくりできるわ」

まどか「じゃあ…お昼にしよっか。これ…ほむらちゃんのお弁当……」

ほむら「ありがとう。それじゃ、いただきます」

まどか「ほむらちゃんのためにと思って作ったんだけど…どうかな……?」

ほむら「……美味しいわ。これ、まどかが作ってくれたのよね?」

まどか「パパに少し手伝ってもらっちゃったけど、一応わたしが……」

ほむら「そう……。まどかが私のお昼を用意してくれるなんて…とても嬉しいわ」

まどか「えへへ……」

ほむら「……でも、何だか少し気恥ずかしいわね。友達にここまでしてもらうのは」

まどか「……」

ほむら「まどか……?お昼、食べないの?」

まどか「……あっ。ごめんね、ちょっとぼんやりしてた」

ほむら「疲れていると思うけど、ちゃんと食べた方がいいわよ」

まどか「うん……。いただきます……」

まどか(やっぱり…友達、かぁ。友達だったら…お弁当、作ってあげたりしないんだけどなぁ……)

ほむら「……」

ほむら(何だかまどかがしょんぼりしてしまったわ。どうしたのかしら……)

ほむら(……多分午前の種目の結果がよくなかったからよね。励ましてあげないと)

ほむら「……午前の部、お疲れさま。結果は振るわなかったみたいだけど」

ほむら「でも、まどかの精一杯頑張る姿…ちゃんと見てたから。よく頑張ったわね、まどか」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「午後の部も、しっかり頑張りましょう」

まどか(ほむらちゃんが見てくれてたのは嬉しいけど、落ち込んだ理由はそれじゃないんだよぅ……)

まどか(いつになったら、わたしのこと…意識してくれるのかな……)

まどか(……ううん。このくらいで諦めるもんか。絶対、捕まえてあげるんだから)

まどか「……わたしもほむらちゃんの応援、見てたよ。すごくかっこよかった」

まどか「かっこいいほむらちゃんが応援してくれてたから…わたし、がんばれたんだよ」

まどか「午後の部はもっとがんばるから…ちゃんと見ててね」

ほむら「わかってるわ。まどかも私の応援、見ててくれる?」

まどか「もちろん。他の誰よりもほむらちゃんのこと、見てるんだから」

ほむら「ふふっ、ありがとう。……それにしても、まどかの作ったお弁当、本当に美味しいわね」

まどか「そ、そんなに?」

ほむら「えぇ。……ほら、あーん」

まどか「ふぇっ!?」

ほむら「ほら、早く口開けて」

まどか「……あ、あーん」

ほむら「はい。……まどか自身が作ったお弁当、美味しいでしょ?」

まどか(かっこいい恰好のほむらちゃんが使ったお箸でわたしにあーんって……)

まどか(わたし、今何食べてるんだろ……?味なんて何にもわかんない……)

ほむら「……美味しくなかった?私がそう思ってるだけ?」

まどか「じ、自分で作ったから、自分じゃよくわかんないの。それだけなの」

ほむら「そう……?まどかのお弁当はお父様が作ったのよね?」

まどか「そ、そうだよ」

ほむら「少し分けてくれないかしら?」

まどか「いいけど……」

まどか(ほむらちゃんがしてくれたんだから…わたしもしてあげるべきだよね……)

まどか「……あ、ああああ、あー、ん」

ほむら「ま、まどか?箸がぶるぶるしてるわよ」

まどか「だ、大丈夫。だいじょぶだから……」

ほむら「無理にしてくれなくてもいいのよ。お弁当から直接貰えればそれで」

ほむら「……そうね、この玉子焼きを貰ってもいいかしら?」

まどか「う、うん……」

ほむら「じゃあ、ひとつ頂くわね」

まどか(あぁもう、せっかくのチャンスだったのに……)

まどか(少しでもこういうことしておかないと、ほむらちゃんに伝わらないのに……)

ほむら「……ごちそうさま。とても美味しかったわ」

まどか「そう言ってもらえてわたしも嬉しいよ。……ねぇ、ほむらちゃん」

まどか「わたしからお弁当もらって…どう思った……?」

ほむら「どうって…友達にここまでしてもらうのは少し恥ずかしいけれど……」

ほむら「まどかの気持ちは凄く嬉しいわ。ありがとう、まどか」

まどか「……ん、そっか。ごめんね、変なこと聞いて」

ほむら「さて。私、午後からの準備があるからそろそろ失礼するわね」

まどか「あ…うん。午後もがんばってね」

ほむら「まどかも頑張って。……じゃ、またあとで」

まどか「……はぁー」

まどか(お弁当もダメだったかぁ。なかなかうまくいかないなぁ……)

まどか(ほむらちゃんはわたしのことは友達として見てるだろうから……)

まどか(わたしのほむらちゃんへの気持ちが愛情だなんて、思ってもないことなんだ……)

まどか(どうしたらほむらちゃんは…ほんの少しでもわたしを意識してくれるんだろう……)

まどか(……そう思わせるだけの魅力がわたしにないのかな)

まどか「……わたしもお弁当食べて戻らないと」

――観客席――

詢子「さーて。そろそろ午後の部開始だね」

知久「ママは午後も別の場所から撮るのかい?」

詢子「そのつもりだよ。パパも引き続き撮影よろしく」

知久「気を付けて。……佐倉さんもごめんね、午後も付き合わせてしまって」

杏子「いえ、アタシも案外楽しいんで大丈夫っす。お昼もいただいちゃったし」

知久「ありがとう。じゃあ、またタツヤの相手をお願いしてもいいかな」

杏子「わかりました。……さー、午後も姉ちゃんを応援するぞー」

タツヤ「おー」

まどか「えっと、次の競技は…二人三脚だね」

さやか「ごめん、まどか。ちょっと用事があるから出てくるよ」

まどか「用事って…もう始まるよ?」

さやか「順番までには絶対戻ってくるから!じゃ、そゆことで!」

まどか「あ……!もう、さやかちゃんってば……」

まどか(……さやかちゃんの用事って何だろ。ちょっと気になるけど)

まどか(わたしまでここを動くわけにいかないし、大人しく待ってよう)

さやか「おーい、ほむらー」

ほむら「あら、さやか?もう種目始まるんじゃないの?」

さやか「そうなんだけど…ほむらにひとつお願いがあるんだ」

ほむら「お願い?私に?」

さやか「うん。実はさー、足をぐねっちゃったんだよ。で、次二人三脚なんだ」

さやか「相方、まどかなんだけど…迷惑かけたくないしさ」

さやか「あたしの代わりにまどかと出てくれないかな?」

ほむら「無理よ。私にだって応援団の仕事が……」

応援団「いえ、こちらは構いませんから行ってあげてください!」

ほむら「え、でも……」

応援団「いいから!暁美さんは行くべきなんです!」

ほむら「な、何よもう。そこまで言うなら行くけど……」

応援団「暁美さん、頑張ってくださーい!」

さやか「ふぅ。えっと、協力ありがとう。でも、何でまた?」

応援団「暁美さんとまどかさんを近づけるのが狙いでしょう?足ぐねったなんて嘘までついて」

さやか「そうそう。……もしかして、ほむらとまどかのこと…気づいてたり?」

応援団「はい。お互い好意に気づいてないみたいなので、私もお手伝いをと思いまして」

応援団「……そうだ。暁美さんが出て行ってしまったので戻るまでの代打、お願いできますか?」

さやか「お、任せなさい。さやかちゃんが1発盛り上げちゃうよー!」

まどか(さやかちゃん、まだかな……。もうわたしたちの番になるよ……)

ほむら「ま、まどか」

まどか「もう。遅いよさやかちゃ…ん……?」

まどか「……えっ?な、何でほむらちゃんが?」

ほむら「さやか、足をぐねったみたいで…代わりに出てほしいと頼みに来たのよ」

まどか「そ、そうなんだ……」

まどか(きっとさやかちゃんがわたしのためにしてくれたんだよね……。ありがとう、さやかちゃん)

ほむら「……ちゃんと縛れたかしら。まどか、痛かったりしない?」

まどか「う、うん。大丈夫、だよ」

ほむら「でも…顔が少し赤くなってるわ。具合でも悪いの?」

まどか「ちがっ…こ、これは違うの。何でもないから平気だよ……」

まどか(あぁもう…ほむらちゃんが近すぎて、いつも通りできないよ……)

『位置について。よーい……』

まどか(ほむらちゃんとこんなに…密着しちゃうほど近くて……)

まどか(走る前から…ものすごくドキドキしちゃってる……)

まどか(できるなら、このままほむらちゃんに抱きつきたい……)

ほむら「まどか、行くわよ!」

まどか「……えっ!?も、もうスタート!?ごめん、ぼんやりしてた!」

ほむら「大丈夫よ、このくらい。……ほら、せーの」

まどか「っと…こんな感じ、かな。大丈夫みたいだね」

ほむら「えぇ。私、授業だと二人三脚はしなかったから…少し不安だったの」

まどか「……わたし、嬉しいんだ。ほむらちゃんと一緒に種目に出れたのが」

まどか「応援団があるから種目に出られないんだろうけど…やっぱり一緒に出たかったから」

ほむら「私も…何だか楽しいわ。まどかと一緒だからかしら」

まどか「でもほむらちゃん、また学ランで出てきちゃったんだね」

ほむら「……そうね。ごめんなさい、まどかまで目立たせてしまって」

まどか「んー…別にいい、かな。少しくらい目立ったってバチは当たらないよ」

ほむら「何だかよくわからないけど、まどかがいいのなら……」

まどか「えへへ、だって……」

まどか(周りの人から恋人っぽく見られたら…少しは意識してもらえ……)

『ゴール!』

まどか「……へっ?あれっ?」

『応援団からの助っ人暁美さん、2位でゴール!鹿目さんと話しながらという阿吽の呼吸を見せてくれました!』

まどか「……わたしたち、ずっと喋りながら走ってたの?」

ほむら「みたいね……。私も気が付いたらゴールテープを切ってたわ」

まどか「1回も躓かなかったってことは…それだけ息が合ってるってことなのかな」

ほむら「だと思うわ。普通だったら真面目にやっても躓くことが多いんだから」

まどか「そっか。そっかぁ……」

まどか(ほむらちゃんと息が合ってるなんて…何だか照れちゃうなぁ……)

ほむら「……ふぅ。無事に走り終えたし、戻りましょう」

まどか「あ、うん…っ……!」

ほむら「まどかっ!?」

まどか(……あれ?わたし、転んだはずじゃ……)

ほむら「まどか、大丈夫?」

まどか(わたしのすぐ目の前にほむらちゃんの顔。と、いうことは……)

まどか(ほむらちゃんに…抱き寄せられてる……!?)

まどか「……あ、あああ、あの!ごめん、ほむらちゃん!」

ほむら「足、縛ってあるんだから。気を付けないと」

まどか「う、うん!そう、そうだったね!」

まどか(……どうしよ。ものすっごいバクバクして、頭、回んなくて……)

まどか(でも…ほむらちゃんの体、あったかくて…柔らかくて……)

ほむら「あの、まどか?そろそろ離れてもらえると……」

まどか「……っ!わ、わたしっ……!」

ほむら「足、解いたからもう大丈夫よ。さ、戻りましょう」

さやか「おーい。2人ともー」

ほむら「さやか?あなた、私の代わりに応援団してたみたいだけど…ぐねってたんじゃ?」

さやか「あー、あれね。気のせいだったみたい。ごめんね?」

ほむら「……普段なら文句のひとつも言わせてもらうところだけど、やめておくわ」

ほむら「私、先に戻るわね。お疲れさま、まどか」

まどか「お、お疲れさま」

さやか「……さて。どうだった?あたしがまどかのために作ったこのチャンスは」

まどか「……いまいちかな。ほむらちゃんとくっついてドギマギしてるのはわたしだけで」

まどか「ほむらちゃんは何ともないみたいだったし……」

さやか「うーむ、ダメかー」

まどか「……あのね、今日のお昼…ほむらちゃんと一緒だったんだ」

まどか「わたし、ほむらちゃんにお弁当を作ってきて…おいしいって言ってくれたんだけど」

まどか「やっぱりわたしのことは友達としか見てくれなくて……」

さやか「鈍感もここまで来ると呆れるというか、何というか……」

さやか「普通、ただの友達相手にそこまでするわけないってのに」

まどか「種目も一緒に出たこれ以外はいまいちで…やっぱりダメなのかな……」

さやか「ふむ。あたしたちの最後の種目って確か……」

まどか「借り物競争だったと思うけど…その前に学年リレーが入ってたような」

さやか「……うん。少し博打になっちゃうけど、あたしにひとつ考えがあるよ」

まどか「考え?」

さやか「あのね……」

――――――

ほむら「……これが最後の種目ね。借り物競争だったかしら」

応援団「です。暁美さんは今日の体育祭、どうでした?」

ほむら「そうね……。なかなか楽しかったわ」

応援団「私もです!特に暁美さんとまどかさんの二人三脚が……」

ほむら「そ、それはもういいの」

応援団「借り物競争でもあれ以上を期待してますよー!」

ほむら「期待って…さすがにもう何もないでしょう」

応援団(まだ何かがあるような、そんな気がします……)

まどか「……」

さやか「いよいよだね……。まどか、1番最後だったっけ」

まどか「うん……」

さやか「うまく引けるかはわかんないけど…がんばりなよ」

まどか「ありがと、さやかちゃん」

さやか「……それじゃ、あたしそろそろ出番だから…行くね」

まどか「さやかちゃんもがんばって」

『さぁ、最後の種目、最後の走者となりました。皆さん、精一杯応援しましょう!』

まどか「……」

まどか(さやかちゃんが思いついた考え。それは……)

まどか(ほむらちゃんを連れ出せる指示を引いたら、ほむらちゃんを連れてくること……)

まどか(もちろん、どれに何の指示が書いてあるかはわたしにはわからないけれど)

まどか(うまく引けたなら、わたしは……)

『位置について。よーい……』

まどか(ほむらちゃんと一緒に……!)

パァン

まどか「……っ!」

まどか(指示、どれが当たり……?右端…ううん、その隣……!)

まどか(お願い、何でも…長髪でも、同学年でも…女の人でもいいから……)

まどか(ほむらちゃんを連れていける指示を……!)

まどか「わたしの指示は……」

『大好きな人』

まどか「大好きな…うん、これならっ!」

まどか(待ってて、ほむらちゃんっ……!)

ほむら「まどかは大丈夫かしら……」

応援団「……おや?まどかさん、こっちに来ますよ」

まどか「ほむらちゃんっ!一緒に来てっ!」

ほむら「え?えぇ、いいけれど…何の指示だったの?」

まどか「……だ、大好きな人!だから、ほむらちゃんじゃないと困るの!」

まどか「ほむらちゃんじゃないと…ゴールできないから!」

ほむら「大好きな人で、私じゃないと困るって…どういう……」

応援団「ごちゃごちゃ考えてる場合じゃないですって!早く行ってください!」

応援団「他の人、戻ってきてますよ!ほら、早く!」

まどか「ほむらちゃん!」

ほむら「わ、わかったわ!行きましょう!」

応援団「暁美さん!まどかさんがここまでやったんです、負けないでくださいよ!」

応援団「もし負けたら甲斐性なしって噂流してあげますからね!」

ほむら「甲斐性なしって…そんなの冗談じゃないわ!まどか、急ぐわよ!」

応援団「……ふふっ。大注目されちゃってますね、2人とも」

応援団「これで少しでも2人が近づけばいいんですが……」

まどか「はっ…はぁっ……!」

ほむら「頑張って!もう少しよ!」

まどか「うんっ…はぁっ…あっ……!」

ほむら「まどかっ!」

まどか「えへへ…ごめんね。また転んじゃった……」

まどか「……ダメだなぁ、わたし。どんくさくて、足引っ張ってばっかりで」

まどか「ほむらちゃんを…こんなみっともないところに付き合わせちゃって……」

ほむら「まどかが謝ることはないわ。それに、まだ勝負はついてないもの」

まどか「でも……」

ほむら「……まどか、ちょっと失礼するわね」

まどか「えっ……!?待って、ほむっ……!」

ほむら「しっかり掴まってて!行くわよ!」

『なんと!暁美さん、鹿目さんをお姫様抱っこ!そのままゴールへ一直線!』

まどか「ほむらちゃ…っ……!これ、わたっ……!」

ほむら「もう少しだけ我慢して!あとちょっと……!」

『ゴール!1着は鹿目さん!暁美さんにお姫様抱っこされたままゴールしました!』

ほむら「はぁ…はぁ…っ……」

まどか「……えっと、ほむらちゃん?」

ほむら「これで…まどか、1位…取れたわね……!」

まどか「ほむら…ちゃん……」

ほむら「……おめでとう、まどか」

まどか「……も、もうっ!ほむらちゃんの…おかげなんだから!」

まどか「ありがとう!ほむらちゃん、大好きだよっ!」

ほむら「ふふっ…私も大好きよ、まどか」

『えー、何とも素敵な幕切れとなりました見滝原中学体育祭ですが、これにて全種目終了です』

『この後閉会式を執り行います。生徒の皆さんはクラスごとに整列してください』

まどか「……じゃあ、行こう。ほむらちゃん」

ほむら「えぇ。行きましょうか」

――――――

さやか「はーっ!終わったーっ!」

杏子「お疲れさん。よかったな、紅組優勝でさ」

マミ「みんな頑張ったもの。優勝はその結果よ」

さやか「ですよね!」

杏子「ま、その直前の出来事のせいでどっちが優勝かなんてどうでもよくなっちまったけどな」

マミ「ふふっ。確かにね」

さやか「これでほむらも、少しはまどかのことを意識したりするんじゃないかな」

杏子「……ま、当のまどかは今それどころじゃなさそうだけど」

詢子「このー、やるじゃん。大勢の前で告白するなんてさ」

タツヤ「やるー」

まどか「やめっ……!あ、あれ違うの!違うからっ!」

詢子「違うって、どう違うんだい?」

まどか「ほ、ほむらちゃんは…友達!友達だから!大好きってのも友達として……!」

詢子「へぇー。友達ねぇー。わざわざ弁当まで作っておいて友達かー」

まどか「もー!やめてよー!」

知久「ママ、まどかもこう言ってるんだし、その辺で……」

杏子「……思いっきりいじられてるな、まどか」

さやか「ママさんの性格考えると仕方ないけどね。あれだけやらかしたんだし」

マミ「もうちらほら噂が立ってたわよ。あの2人、付き合ってるんじゃないかって」

杏子「で、そのほむらはどこだ?」

さやか「応援団の最後の集まりがあるとか言ってたよ。多分反省会じゃないかな」

杏子「そうか。いじられてるな、絶対」

さやか「ただ、ほむらのことだから友達ってことで落ち着ける気がする……」

詢子「……さて。まどか、今日はお疲れ。よく頑張ったな」

まどか「……うん。精いっぱいがんばったよ」

詢子「そんな頑張ったまどかにご褒美だ。ほい、これ」

まどか「……何?このカメラ」

詢子「ほむらちゃんだけを撮ったカメラ。見るのは部屋戻ってからにしなよ」

まどか「……っ!ママっ!」

詢子「さやかちゃんたちもお疲れ。気を付けて帰るんだよ」

さやか「はーい!」

杏子「……今日1日一緒にいたけど、すげーな、あの人」

さやか「ねー。あの人だけには勝てないと思うんだ、あたし」

マミ「鹿目さんのご家族の話はこのくらいにして…これからうちに来ない?」

マミ「紅組が優勝したことだし、ケーキを焼こうと思って」

さやか「行く行く!行きます!」

杏子「んじゃ、アタシも行かせてもらうよ」

マミ「決まりね。じゃあ、早速行きましょう!」

今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます

次回投下は26日夜を予定しています

4分割って言ったけど残りを2分割だと収まり悪い気がする

次から本文

――数日後――

さやか「おっはよー」

仁美「おはようございます、さやかさん。まどかさん」

まどか「おはよう、仁美ちゃん」

さやか「体育祭から休みが明けて…文化祭に向けての準備が始まるね」

仁美「今年は何をするか、今から楽しみですわね」

まどか「だねー。……あれ、ほむらちゃんは?」

仁美「向こうで質問攻めに遭ってますわ。うふふ、衝撃的でしたものね」

さやか「あれはちょっとマネできないよね」

仁美「……それで、あれから暁美さんとはどうなりました?」

さやか「あ、あたしも気になるなぁ。結構噂になってるしさ」

まどか「どうって…あんまり変わってない、かな」

さやか「え、あんな劇的なことまでしておいて?」

まどか「ほむらちゃんは…わたしに特別な好意を持ってあんなことをしてくれたわけじゃないと思うし」

まどか「大好きって言葉も友達からの感謝の言葉って感じに受け取ったみたいで……」

まどか「少しは近づけたかなと思ったけど…まだ、仲の良い友達のままみたい」

さやか(ほむらの無意識の好意がまどかの恋心を煽ってるのに、当の本人はそれに気づかず……)

さやか(あいつ、まどかにだけ無自覚のタラシになってないかな……)

ほむら「はぁ……。やっと解放されたわ……」

まどか「ほむらちゃん、おはよう」

さやか「おはよ。話題の人物は朝から大変だね」

ほむら「話題の人物って……」

仁美「あれだけのことをしたのですから。話題になるのは仕方ないですわ」

ほむら「確かに体育祭で色々あったけれど…どうして私だけで、まどかにはないのかしら……」

さやか「んー…やっぱ、みんなまどかよりほむらから話を聞きたいんだよ」

さやか「体育祭で一気にファンを増やしちゃったからね、ほむらは」

ほむら「私としては不本意もいいところなのだけど……」

仁美「質問をされてきた方は、ほむらさんに何を聞かれていたんですの?」

ほむら「それが…もう1度学ランを着てほしいとか、お姫様抱っこしてほしいとか……」

ほむら「だけど、1番多かったのが…その、まどかと付き合ってるのかって質問だったのよ」

まどか「わ、わたしと?」

ほむら「えぇ。別に私たちはそんな関係じゃなくて、仲の良い友達ってだけなのに……」

ほむら「それに、付き合うって…私たち、女同士よ?」

仁美「ここ最近は珍しくもないですし、2人に愛があれば問題ではないと思いますわ」

さやか「見てる分には両想いにしか見えなかったからねー。お姫様抱っこからの大好きー、でしょ」

ほむら「噂の原因は私の行動なんだろうけど、まどかを巻き込んでしまうなんて……」

まどか「わ、わたしは全然構わないというか、問題ないというか……」

まどか「むしろ、ほむらちゃんとそういう風に見られて…少し嬉しい、かな……」

ほむら「う、嬉しい?」

まどか「……ほ、ほら。ほむらちゃんって女の子に人気あるし、あの学ランすごくかっこよかったから」

まどか「そんなほむらちゃんとそういう風に噂されるのが…何だか嬉しいなって……」

ほむら「そ、そう。もしそういう噂で何か嫌な思いをしたらすぐに言うのよ?」

まどか「うんっ。ありがとう」

さやか(まぁ…まどかにとっては同性同士で気持ち悪いとかの陰口でない限りは……)

仁美(嫌な思いどころか、願ったり叶ったりだったりするんですのよね……)

さやか(周りからの噂もあるし、これで少しでもまどかとのことを考えるようになるといいけど)

ほむら「……確か今日は文化祭の出し物を決めるんだったわね」

さやか「何にしようかなぁ。……そうだ、演劇とかどうよ」

ほむら「今の状況で演劇は何だか凄く嫌な予感がするわ……」

さやか「でも、なんだかんだでみんなも見たいんじゃない?2人が主役の演劇」

仁美「おふたりの関係を見るに、主役に推す方が大勢いても不思議ではないですわね」

まどか「わ、わたしたち、まだ付き合ってないんだけどな」

仁美(うふふ。だからこそ、というものもあるんですのよ)

ほむら「……そんなにやらせたいのなら出し物は演劇がいいと提案したらいいわ」

さやか「お、いいの?なら遠慮なく提案しちゃうよ」

仁美「私も力を貸しますわ、さやかさん」

さやか「ありがと、仁美。よーし、何が何でも2人に主役をやらせるぞー!」

中沢「……えーと、それでは今年の出し物は演劇に決定しました」

さやか「イエスっ!みんな、ありがと!」

まどか「ほ、ほんとに演劇になっちゃった……」

中沢「続いて配役だけど、主役の2人は……」

さやか「はいはい!まどかとほむらがいいと思いまーす!」

中沢「鹿目さんと暁美さん…他に推薦や立候補はいませんか?」

ほむら(……わかってはいたけど、これは出来レースという奴じゃないかしら)

中沢「……他にいないみたいなので、主役はこの2人に決定、と」

女子生徒A「主役が鹿目さんと暁美さんかぁ。どうなるんだろう」

女子生徒B「よかったね、暁美さん。相手が大好きな鹿目さんで」

ほむら「そんなに私たちが主役をやるのが嬉しいのかしら、うちのクラスは……」

ほむら「……待って、その大好きってどういう意味で言ってるの」

女子生徒C「鹿目さんも、がんばってね」

まどか「う、うん。あはは……」

中沢「えー、それじゃ残りの配役を……」

――放課後 マミの家――

マミ「……それで鹿目さんと暁美さんが主役の演劇に決まったのね」

さやか「はい!仁美の脚本ができあがり次第、練習開始です!」

マミ「ふふっ。頑張ってね、2人とも」

まどか「は、はい。がんばります」

ほむら「……こうなるんじゃないかって気はしてたから、諦めたわ」

杏子「学校のそこらで噂になってんなら、クラス内だったら尚更だろ」

まどか「……ほむらちゃんはわたしと主役をやるの、嫌?」

ほむら「い、いえ。まどかと何かをやるのが嫌というわけじゃないの」

ほむら「ただ…大勢の前で演劇の主役をやるというのが恥ずかしくて……」

杏子「なーに言ってんだ。応援団やっておいて」

ほむら「あれは…私以外にも応援団の人がいたからで……」

ほむら「だけど、今回は…主役って1番目立つ役柄だし……」

ほむら「何より、これ以上余計な噂が広まるのは……」

まどか「わたしも恥ずかしくないと言ったら嘘になっちゃうけど……」

まどか「でも、それ以上に嬉しいんだ。ほむらちゃんと一緒に主役になれて」

ほむら「まどか……」

まどか「噂のこともあるけど…でも、せっかくみんながわたしたちを選んでくれたんだもん」

まどか「わたしと一緒に、主役やってみようよ」

ほむら「……まどかがそう言うなら頑張ってみるわ」

まどか「うん。がんばろうね」

さやか「ちなみにマミさんのクラスは何をすることになったんですか?」

マミ「お化け屋敷よ。当日、時間があったら遊びに来てね」

さやか「あたし、絶対行きますから!」

ほむら「余裕があったら寄らせてもらうわ」

マミ「楽しみに待ってるわね」

杏子「アタシも特に予定ないし、文化祭…行ってみようかな」

杏子「2人の演劇もそうだけど、色々と飲食店が出るみたいだしね」

さやか「やっぱあんたはそっち目当てかー」

杏子「べ、別にいいだろ。うるせぇな」

マミ「じゃあ、文化祭のチラシを貰ってきたらコピーしておくわね」

杏子「お、おう。ありがとな」

さやか「今年の文化祭、楽しくなりそうだねぇ」

まどか「うん。楽しみだね、ほむらちゃん」

ほむら「え?えぇ、そうね」

ほむら(まどかとの噂は気になるけど…どうしようもないわよね……)

ほむら(……あまり気にしすぎるのもよくないし、噂は噂くらいに思っておきましょう)

――翌日――

仁美「……というわけで、台本なんですが少々難航してまして」

仁美「もう少し時間をください。週末までには必ず書き上げますので……」

まどか「う、うん。無理しないでね」

仁美「はい……。では、私はこれで……」

まどか「……大丈夫かな。少し隈ができてたし」

ほむら「徹夜で書いてるみたいね。焦ることないのに……」

まどか「さやかちゃんも気づいてるみたいだったし…大丈夫だよね」

ほむら「……なら、今日はもう帰りましょう。主役は後から忙しくなると手伝わせてもらえないし」

まどか「うん。……あ、ごめん。わたし、ちょっと用があるんだ」

ほむら「用?」

まどか「文化祭に手芸部としての制作展示があるんだけど、それでちょっと」

ほむら「なら、ここで待ってるわ」

まどか「先に帰っちゃっていいよ。すぐ終わるかどうかわかんないし」

ほむら「いいの、私が勝手に待ってるだけだから。それに」

ほむら「この間はまどかが私を待っていてくれたんだもの。そのお返しよ」

まどか「も、もう……。じゃあ、ちょっと行ってくるね」

ほむら(……まどかが戻るまで本でも読んで待っていましょう)

ほむら(えーと、昨日はどこまで読んで……)

女子生徒「あ、あの。暁美ほむらさん、ですよね?」

ほむら「え?え、えぇ。そうだけど、私に何か?」

女子生徒「その…た、体育祭の応援団、とても素敵で…かっこよかったです!」

ほむら「あ、ありがとう」

女子生徒「……そ、それだけです!鹿目さんとお幸せに!」

ほむら「あ、待っ……」

ほむら(……体育祭からしばらく経つのに、まどかとの噂は一向に減らないわね)

ほむら(むしろどんどん広まって…学校中の噂になってるような気がする……)

ほむら(やっぱり、まどかと付き合ってる、またはそれに近い関係だと思われてるのかしら)

ほむら(確かにまどかとは特別仲が良いと思ってるし、接し方も他の人と違うと自分でもわかってるけど)

ほむら(でも、だからと言ってそれを恋人だなんだと噂されるのは……)

ほむら(まどかだって、別に私のことはそういう意味で好きというわけじゃないと思うし……)

ほむら(……あちこちで噂されてるせいか、まどかのことばかり考えてしまうわね)

ほむら(勝手な噂話のせいでまどかが傷つかないといいけど……)

まどか「ほーむらちゃん。ただいま」

ほむら「……っ。お、おかえりなさい」

まどか「どうかしたの?」

ほむら「い、いえ。少し考え事してたせいで、びっくりしただけよ」

まどか「そっか。用事も済んだし、帰ろう?」

ほむら「そ、そうね」

まどか「……そう言えば、部室に行く途中に知らない子に話しかけられたの」

ほむら「それって……」

まどか「うん、例の噂話のこと。ほむらちゃんを大事にしてあげてねって」

まどか「まだ付き合ってないって言ったら、きゃーきゃー言いながら走って行っちゃって」

ほむら「……『まだ』と言ったのがまずかったのよ。その言い方だと、まるで……」

まどか「あ……!そ、そっか。この言い方だといつか付き合うみたいなことになっちゃうよね……」

ほむら「えぇ。次からは私たちは友達だと言ってもらえると助かるわ」

まどか「わかったよ。……でも、わたしはほむらちゃんのこと……」

ほむら「まどか?」

まどか「……えへへ、ごめんね。何でもないよ」

ほむら「そう。……それにしても、放課後はどのクラスも文化祭に向けての準備が始まってるわね」

まどか「わたしたちは仁美ちゃんの台本待ちだからね」

ほむら「台本ができたら私たちも忙しくなるわ。それまではのんびりさせてもらいましょう」

まどか「……わたしね、演劇の主役をほむらちゃんと一緒にすることになって…嬉しいんだ」

まどか「主役どころか劇をするなんて初めてだけど、ほむらちゃんとなら大丈夫って気がするよ」

ほむら「……私もまどかとなら何も心配いらないって気分になるわ」

ほむら「まどか。主役、頑張りましょう」

まどか「うん。一緒にがんばろうね」

――数日後――

ほむら「……それじゃ、今日のところはここまでにしましょう」

さやか「ほーい。みんなー、今日はおしまーい。お疲れー」

まどか「ふぅ……」

ほむら「まどか。お疲れさま」

まどか「ほむらちゃん…うん、お疲れさま」

ほむら「何だか浮かない顔をしているけど、大丈夫?」

まどか「……わたしが主役っていうのにまだ慣れてなくて、おどおどしちゃって」

まどか「ほむらちゃんは練習初日から堂々と演じてたよね」

ほむら「……まどかだから言うけど、これでも結構いっぱいいっぱいなのよ」

ほむら「役が役だから、そう見えるように取り繕ってるだけで……」

まどか「やっぱりほむらちゃんでもそうなんだ……」

ほむら「えぇ。……さて、帰りましょうか」

まどか「う、うん」

女子生徒「2人とも、待って」

ほむら「どうしたの?」

女子生徒「練習なんだけど、来週から台本なしの練習を始めたいの」

女子生徒「文化祭が来週の土曜日だし、そろそろ時間なくなってきちゃうから……」

ほむら「そう……。私は構わないわ」

まどか「わたしは…まだちょっと不安かな……。台本がないと後半の方が怪しいかも」

女子生徒「じゃあ悪いけど、この土日でできるだけ覚えてきてもらえないかな?」

まどか「わ、わかった。がんばる」

女子生徒「よろしくね。……今週は連休で半分休みだったし、時間足りるかなぁ」

女子生徒「他の役の人はまだいいんだけど、主役の2人は出番が多いし……」

女子生徒「体育祭から間がないってわかってんのに、何でこんなボリューミーな話書くの、仁美は」

ほむら「あなた、確か進行よね。大変そうね……」

女子生徒「文句のひとつも言いたくなるけど…ま、主役が鹿目さんと暁美さんだったら許せちゃうかな」

まどか「……あ、あの、それってどういう」

女子生徒「どうって、そりゃあ…ね。みんな楽しみにしてるから、がんばって!」

女子生徒「じゃ、私はこれで。またねー」

まどか「……行っちゃった」

ほむら「とりあえず、帰りましょうか」

まどか「……はー。今日も疲れたなー」

ほむら「確かに疲れたわね。日に日に練習量も増えてきてるし……」

ほむら「でも、私は何だか楽しいって思えるのよね。充実感があるからだと思うけれど」

まどか「わたしも。ほむらちゃんと主役をやれて…ドキドキしてる」

ほむら「ふふっ。まさかの大役で緊張してるのかしら?」

まどか「そ…そう、かも……」

ほむら「……まどか?」

まどか「……ううん、何でもないの。それよりも、仁美ちゃんの書いたお話、すごいよね」

ほむら「えぇ。本人は色んな作品のいいとこどりなんて言ってたけど」

ほむら「それを纏めてひとつの話にするだけでも大変なはずなのに……」

まどか「準備期間が短いせいで、泣く泣く削ったシーンがいくつもあるって言ってたっけ」

ほむら「カットがなかったらどれだけの作品になってたのかしらね……」

まどか「仁美ちゃんが言うには今の台本の2倍くらいだって」

ほむら「超大作じゃない……」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃんはもう台本全部覚えたの?」

ほむら「大丈夫だと思うわ。まどかは…後半が怪しいのよね」

まどか「うん……。それで、ほむらちゃんにお願いがあるんだけど……」

ほむら「練習に付き合ってほしいってことかしら?」

まどか「それはそうなんだけど…えっと、明日明後日お休みでしょ?」

まどか「ほむらちゃんさえよければ…わたしの家で泊まり込みの練習に付き合ってほしいなって……」

ほむら「泊まり込みで……」

まどか「……ど、どうかな」

ほむら「私は構わないわ。1人暮らしだから、許可を取る相手もいないし」

まどか「ほ、ほんとにいいの?」

ほむら「勿論よ。私だけができても、まどかができてなければ意味がないもの」

ほむら「どこまでできるかわからないけど、練習に付き合うわ」

まどか「……ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「じゃ、私は1度家に帰って支度してくるわね」

まどか「う、うん!またあとでね!」

まどか「えへへ……」

まどか(ほむらちゃんと2人きり…しかも泊まり込み……)

まどか(体育祭終わってからはあんまり時間取れなかったし、嬉しいな……)

まどか(練習のためってことだけど、ほむらちゃんとの初めてのお泊りなんだよね……)

まどか(……噂話でわたしとほむらちゃんをそういう風に見てる人、多いみたいだけど)

まどか(それでもほむらちゃんは噂だとか冗談だってまともに取り合ってないんだろうな……)

まどか(これだけ噂になってるんだから、少しくらいその気になってくれてもいいのに)

まどか(……噂話に頼ってちゃダメだよね。ほむらちゃんは、わたしが……!)

まどか「……早く帰ってほむらちゃんを迎える準備しなくちゃ」

――――――

まどか「……それじゃ、夕飯も食べたしそろそろ練習始めよっか」

ほむら「えぇ。……それで、どこから始めましょうか」

ほむら「まどかは後半が怪しいと言っていたから、その辺りからかしら」

まどか「んと…とりあえず最初からやってみようよ。自分では覚えてるつもりだけど、確認したいし」

ほむら「そう、わかったわ。……それじゃ、よろしくね。まどか」

まどか「わたしの方こそ。よろしく、ほむらちゃん」

ほむら「わかっているつもりだ、自分の立場くらい。それでも、私は……」

まどか(はぁー…かっこいいなぁー……)

まどか(今回の演劇、わたしがお姫様でほむらちゃんが…騎士ってことだけど……)

まどか(ほむらちゃんの演じてる姿、とっても素敵でかっこいいよぉ……)

まどか(仁美ちゃんが合わせたのかもしれないけど…この役、ほむらちゃんが1番似合うんじゃないかなぁ……)

まどか(こんなかっこいいほむらちゃんの相手…わたし、なんだよね)

まどか(……あー、ダメだ。何だかにやけちゃう……)

ほむら「……まどかってば」

まどか「……へっ?な、何?」

ほむら「前半を一通りやってみたけど、特に不備はなかったわよ」

まどか「そ、そっか。よかった」

ほむら「私はどうだったかしら?間違えてた部分とかあった?」

まどか「ううん。すごくかっこよか……」

ほむら「えっ?」

まどか「な、何でもない。ほむらちゃんも大丈夫だったよ」

ほむら「そう?それじゃ後半部分を……」

詢子「その前に少し休憩にしたらどうだい?」

まどか「ま、ママ!?帰ってたの!?」

詢子「さっき帰ってきたとこだよ。気づかないくらい集中してたみたいだね」

ほむら「こんばんは。お邪魔しています」

詢子「いらっしゃい。……お風呂湧いたから、続きは入ってからするといいよ」

まどか「ん…そうしよっか。ほむらちゃんもそれでいい?」

ほむら「えぇ。この辺りで1度休憩しましょう」

詢子「練習、頑張るのはいいけど無理はしちゃ駄目だからね」

まどか「うん。ありがとう、ママ」

詢子「それと…ほむらちゃん」

ほむら「は、はい」

詢子「ほむらちゃんにならまどかのこと、任せられるから…よろしく頼むよ」

ほむら「え……?わ、わかりました」

まどか「へ、変なこと言わなくていいからっ!」

詢子「悪い悪い。……んじゃ、アタシはこれで」

バタン

まどか「も、もう。ママってば何言って……」

ほむら「それじゃあ、お風呂にしましょうか」

まどか「ほむらちゃん、よければお先にどうぞ」

ほむら「いいの?私が先で」

まどか「うん。わたしに付き合ってもらってるんだし」

まどか「そうじゃなかったとしても、お客様を後回しになんてできないよ」

ほむら「なら、遠慮なく。……それとも、一緒に入る?」

まどか「……うえっ!?ななな、何、言って……!」

ほむら「ふふっ。冗談よ、冗談」

まどか「あっ…そ、そうなんだ。いきなりだからびっくりしちゃったよ」

ほむら「驚かせちゃったみたいでごめんなさい。……じゃ、お風呂入ってくるわね」

まどか「う、うん。ゆっくりしてきてね」

ほむら「ありがとう。そうさせてもらうわ」

まどか「いってらっしゃーい……」

まどか「……はぁー。もう、ほむらちゃんってば…今のわたしには冗談にならないよ」

まどか(でも…何だかちょっと悪いことしちゃったかな……)

まどか(ただ純粋に、友達のわたしとと一緒に入りたかっただけかもしれないし)

まどか(ほむらちゃんにはそういう意図はないんだろうけど…わたしはダメだよ……)

まどか(今のわたしが一緒に入っちゃったら…絶対いつも通りでなんていられないから……)

まどか(だって、ほむらちゃんはわたしの大好きな人で…そんな人と一緒にお風呂なんて……)

まどか(……い、色々見えちゃうし、見られちゃうから、その、えっと)

まどか「こ、これ以上考えるのはダメだよね。大人しく待っていよう」

――――――

まどか「違う、嬉しいの。……えっと」

ほむら「そこは…『嬉しいの。あなたが来てくれたことが、何よりも』ね」

まどか「そうだった……。ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「……そろそろ休んだ方がいいんじゃないかしら。もう日付変わってるわよ」

ほむら「まどかも集中力が尽きてしまったみたいだし、今日はおしまいにしましょう」

まどか「……うん、わかった。実はちょっと眠くて…ぼーっとしてきちゃってるし」

ほむら「そうだったの……?大丈夫?」

まどか「うん。今日はもう寝ちゃおっか」

ほむら「ところで、私はどこで寝たらいいの?」

まどか「それなんだけど…あ、あのね、わ…わた……」

まどか「……ご、ごめんね!今布団持ってくるから!」

まどか(無理無理無理!あわよくば、とか考えたりしたけど……!)

まどか(そんなの絶対眠れないし…覚えた台詞全部飛んじゃうよ!)

ほむら「手伝いましょうか?」

まどか「べっ…別に、大丈夫だよ!待ってて!」

ほむら「そう……?」

まどか「う、うん。むしろわたしの練習に付き合わせちゃってるわけで……」

ほむら「気にしないで。言ったでしょう?私ができても、まどかができなければ意味がないって」

ほむら「まどかが困っているのなら、私は力を貸すわ」

まどか「あ…ありがと、ほむらちゃん……」

ほむら「お礼なんていいのよ。……と、友達として当然のことだもの」

まどか「……そうだとしても、ありがとう」

ほむら「……さぁ、今日はもう休みましょう。私の布団、お願いするわね」

まどか「あ、そうだった。ちょっと待っててね」

ほむら(……今、どうして友達と言うとき…一瞬言葉に詰まったのかしら)

ほむら(まどかとは友達であることに間違いはないけど…ただの、普通の友達じゃないから…とか?)

ほむら(……噂を気にしすぎてるのかしらね、私は。そんなことないはずなのに、噂話がそんな気にさせてしまう)

ほむら(まどかだって、私のことは友達と思っているのだから。あくまで噂は噂……)

ほむら(……この辺にしておきましょう。これ以上は考えても意味はないもの)

――数日後――

まどか「……ありがとう。わたし、本当に…嬉しいよ」

さやか「……はーいカット。いいじゃん、2人とも」

ほむら「ふぅ……。そうだった……?」

さやか「うん。まどかも後半つっかえずに言えるようになってるよ」

まどか「えへへ…今までの練習の成果かな」

さやか「そう言えば、ほむらと泊まり込みで練習したんだって?」

まどか「うん。おかげで後半ももう大丈夫だよ」

まどか「付き合ってくれてありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「私は何もしてないわ。まどかが頑張ったからこそよ」

さやか「演劇の練習はもちろん大事だけど、ほむらとは何もなかったの?」

ほむら「何かって……」

まどか「さやかちゃん!ダメ!しーっ!」

さやか(じれったいなぁ、もう。声張り上げて好きだーって言えばいいのに)

さやか(……まぁそんなこと言ったらあたしにそっくりそのまま返ってくるから言わないけど)

女子生徒「2人ともー!衣装来たよー!」

さやか「衣装って、主役2人の?」

女子生徒「そう!姫と騎士の衣装!係の子が気合い入れすぎて完成がギリギリになっちゃったけどね」

女子生徒「それじゃ、フィッティングお願い!ダメな部分あったらすぐ直さないとだから!」

さやか「はーい!ほら、ちゃっちゃと着替えるよ」

ほむら「何であなたが仕切ってるのよ……」

女子生徒「主役の2人フィッティングするから、手の空いてる女子は手伝って!」

さやか「男子は早く教室から出ていきなさい!セクハラで訴えるよ!」

まどか(衣装かぁ……。どんなのかはわかんないけど、きっと素敵な……)

まどか「……わたしも着替えなくちゃ」

――――――

ほむら「……ど、どうかしら?」

女子生徒「これは……」

ほむら「ちょっと、どうなの?変なの?」

さやか「教室中から黄色い歓声上がってんのに変なわけないでしょ」

女子生徒「予想以上に似合ってるね。……あ、ちょっとそこ!撮るんじゃないの!」

ほむら「……?まどかはまだなの?」

さやか「んーと、まどかなら……」

まどか「お、お待たせ。ほむらちゃん」

ほむら「まどっ……!」

まどか「えへへ……、ど、どうかな?」

ほむら「……とても素敵よ。いつものまどかじゃないみたい」

まどか「あ、ありがとう。ほむらちゃんも…すっごくかっこいいよ」

ほむら「そう……。ありがとう」

女子生徒「動きづらいところとか、きついゆるい部分はない?」

ほむら「……大丈夫。問題ないわ」

まどか「わたしも大丈夫だよ」

女子生徒「ならよかった。今から修正となるとやること増える分、余計に慌ただしくなるから……」

ほむら「もう十分慌ただしいと思うけれど」

さやか「……それにしても、2人並ぶとすごいなー。さすが主役」

女子生徒「ほんとだよ。さすがお似合いの2人だね」

ほむら「も、もう。変なこと言わないで……」

女子生徒「照れなくたっていいのにー」

ほむら「照れてなんか……」

まどか「ね、ねぇ。何だか廊下、騒がしくない?」

さやか「え?……げ、やば。人が集まってきてるよ」

女子生徒「みんなで暁美さんの姿にきゃーきゃー言ってたせいかな……」

さやか「あぁもう、撮るんじゃないって!撮るならこのさやかちゃんを撮りなさい!」

まどか「あはは……。すごいね、ほむらちゃん。体育祭のときみたい」

ほむら「今回に関しては私だけじゃなくてまどかも含まれているんじゃないかしら」

まどか「え、わたしも……?」

ほむら「えぇ。ほら、あんな噂が立ってる私とまどかが主役で、こんな衣装を着てるとなると……」

まどか「いつも以上に目立って、人を集めちゃうってこと……?」

ほむら「そういうこと。あんまり言いたくないけど、私たちの噂…学校中に広まってるみたいで……」

まどか「……だけど、やっぱりほむらちゃんを見てる人、多いんじゃないかな。こんなにかっこいいんだし」

まどか「体育祭のときだって歓声もらってたじゃない」

ほむら「それはそうだけど……」

まどか「ほむらちゃん目当てで演劇を見に来る人、多いだろうし…大勢の前で失敗しないように…がんばろうねっ」

ほむら「……えぇ。精一杯頑張りましょう」

さやか「くぉら!今あたしが邪魔って言ったの誰よ!?主役は撮るなって言ってんでしょうが!」

さやか「あーもう!各自教室に帰りなさい!散れ、散れー!」

まどか(やっぱり、ほむらちゃんって人気あるんだな……。今さら思い知らされたというか……)

さやか「はー、やっと追い返せた。クラスのみんなも写メ撮ってんじゃないの」

女子生徒「ごめんね、2人とも。まさかこうなるなんて思わなくて」

ほむら「なってしまったものは仕方ないわ。……ただ、この衣装は本番まで遠慮したいところね」

まどか「う、うん。わたしも…そうしたいかな」

女子生徒「元からそのつもりだし、大丈夫。じゃ、制服に着替えて練習の続きを始めよう」

女子生徒「本番はもう明日なんだから。さぁ、気合い入れていくよー!」

さやか「はーい。着替えるから男子は教室から出なさいねー」

まどか(衣装着て練習しないだけよかったけど…今の騒ぎで写メ、結構出回っちゃったよね……)

まどか(新しい噂が立つのはいいんだけど、ほむらちゃんのこと…好きになる人も出ちゃいそう……)

まどか(さやかちゃんは告白されても付き合ったりなんてしないって言ってたけど…不安だな……)

――――――

まどか「これからは…ずっと、一緒だよ……」

女子生徒「……うん、完璧!台詞も動きもOKだよ!」

ほむら「ふぅ……。それなら、よかったわ」

まどか「やったね、ほむらちゃん!」

さやか「明日の直前練習でヘマしないでよ?」

ほむら「しないわよ。……それにしても、本番は明日なのよね」

まどか「もう…明日なんだね……」

女子生徒「でも、ごめんね。本当は泊まらなくてもいいようにしたかったんだけど」

女子生徒「舞台練習も他のクラスとの兼ね合いでほとんど時間とれなかったし……」

さやか「いいって、気にしなくても。まだ明日の直前練習があるんだしさ」

さやか「それに文化祭の準備で学校に泊まるの、ワクワクしてるくらいだから」

ほむら「何テンション上がっちゃってるの、この子……」

さやか「仕方ないじゃん。滅多にないことなんだしさ」

まどか「夜の学校もそうだけど、文化祭の準備もしてるんだもんね」

さやか「そういうこと!せっかくの学校お泊りなんだから…今夜は騒いじゃう?」

ほむら「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ。もういい時間なんだから」

さやか「つれないなー、ほむらは」

ほむら「確か運動部のシャワーが借りられるのよね?」

女子生徒「うん。片づけは私たちがしておくから、先に行ってきてよ」

ほむら「ありがとう。まどか、行きましょう」

まどか「あ、う、うん」

女子生徒「さやかは行っちゃダメだよ。主役でもないんだから一緒に片づけ」

さやか「へーい……」

女子生徒「……ねぇ、ひとつ聞きたいんだけど…鹿目さんの後半からの演技、変じゃなかった?」

さやか「んー?そうだった?台詞も動きも完璧だったと思うけど」

女子生徒「そう……?なら、いいんだけど……」

さやか「なにー?本番が明日に迫って不安にでもなっちゃった?進行だからって気張らなくても大丈夫だって」

女子生徒「うっさい、小道具係。進行は進行で大変なのよ」

女子生徒(何か不自然というか物足りないというか…私の気のせいかな……?)

さやか「……さて。借りてきた布団敷いたし、あとはもう寝るだけだね」

まどか「教室に布団が敷いてあるとなんだか変な感じ……」

ほむら「あんなこと言ってた割には大人しく寝ることにしたのね」

さやか「テンション上がって騒ぎたいのはほんとだけど、ほむらとまどかに迷惑かけたくないからさ」

さやか「あたしが騒いだせいで明日の演劇が失敗したとかになったら嫌だもん」

ほむら「そう。それは助かるわ」

さやか「いいって。……それともほむらはあたしやまどかと夜更かししたいのかい?」

まどか「ちょ、さやかちゃん……」

ほむら「……ふふっ。そうね、その気持ちがないと言えば嘘になってしまうけど」

ほむら「やっぱり、明日に備えて休ませてもらうわ」

まどか「今日できることはもうやりきったみたいだし…寝ちゃおっか」

ほむら「そうね。……私たちはもう休むわ。さやかはどうするの?」

さやか「ん…何だかまだ寝つけそうにないや。別のどこかで眠れない子たちと話してくるよ」

ほむら「わかったわ。あまり遅くまで起きてちゃ駄目よ」

まどか「おやすみ、さやかちゃん」

さやか「おやすみー」

――――――

まどか「ん……」

まどか(目、覚めちゃった……。今、何時だろ…えっと、携帯……)

まどか(0時過ぎ…もう日付変わってたんだ。10月3日、文化祭当日……)

まどか(……あれ?今日ってわたしの誕生日だ。演劇練習で忙しくて忘れちゃってたのかな)

まどか(演劇終わったら、みんなにお祝いしてもらえたりするのかな…えへへ……)

まどか(……さやかちゃんはまだ誰かと話してるのかな。お布団空っぽだし)

バタン

まどか(あれ……?今のって、ほむらちゃん?どこに行くんだろう)

まどか(ちょっとついて行ってみようかな……)

まどか「確かこっちだったと思うけど…見失っちゃった……」

まどか「どこに行っちゃったんだろう。ここに来るまでどこにも見当たらなかったし」

まどか「こっち側でほむらちゃんの行きそうな場所は屋上くらいしかないけど……」

まどか「まさかこんな時間に屋上になんているわけない……」

まどか「……誰かいる?あそこに座ってるのって……」

ほむら「……」

まどか「ほむらちゃん」

ほむら「……あら、まどか。どうしたの、こんな時間にこんなところで」

まどか「何だか目が覚めちゃって、ちょうどほむらちゃんが出ていくのが見えて……」

まどか「ほむらちゃんはどうして屋上に?」

ほむら「少し…寝つけなくて。明日…もう今日だったわね。文化祭のことを思うと……」

ほむら「演劇への緊張のような、文化祭への興奮のような…不思議な感覚になってしまって」

まどか「何となくだけど、わかる気がする。わたしも楽しみだもん。文化祭も、演劇も」

ほむら「……本当は…気分が落ち着くまで月を眺めていようと思って屋上に来たの」

ほむら「だけど、まどかが私を追いかけてきてくれて…話し相手になってくれたおかげで随分気が紛れたわ」

まどか「……不安なの?今日の本番」

ほむら「不安じゃないと言ったら嘘になるわ。上手くやれるか、何かヘマをしないか」

ほむら「あんな噂が立ってる以上…失敗できないのよ」

まどか「あの噂って…わたしと、その…つ、付き合ってるんじゃないかってだけだと思うけど……?」

ほむら「真偽はどうあれ、まどかと付き合ってるらしい私が情けないところを晒してしまったら」

ほむら「付き合ってると噂されてるまどかにも迷惑がかかってしまうかもしれないもの」

まどか「そんな、わたしは別に……」

ほむら「……それに、噂云々は抜きにしてもまどかとの主役だもの」

ほむら「せっかくまどかと2人で主役をやってるんだから…成功させたいに決まってるわ」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……まどか。演劇、絶対に成功させましょう」

まどか「もちろんだよ。わたしとほむらちゃん…2人で大成功させようね」

ほむら「えぇ。……それにしても、今日は月がよく見えるわ」

まどか「ほんとだ……。すごく…綺麗……」

ほむら「……何だか素敵ね。輝く月の下で、まどかと2人なんて」

まどか「……うん。まさか、ほむらちゃんとこうしていられるなんて思わなかったよ」

まどか「ほむらちゃんを追いかけてきて…よかった……」

ほむら「私を追いかけてきてくれてありがとう、まどか」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃん。実はわたし、今日…誕生日なんだ」

ほむら「そう、なの……?ごめんなさい、知らなかったわ……」

まどか「別に謝ることないよ。今までこういうことを話す機会がなかっただけだと思うし」

ほむら「どう言えばいいかわからないけど…誕生日おめでとう、まどか」

まどか「ありがとう、ほむらちゃん」

ほむら「でも、プレゼントなんて何も用意してないのよ。盾の中に何かあるかもしれないけど……」

まどか「気にしないで、ほむらちゃんからのお祝いの言葉だけで十分嬉しいから」

まどか「……それに、わたしがほしいのはプレゼントじゃなくて、ほむらちゃん……」

ほむら「まどか?」

まどか「……あ、ううん。何でもないよ」

まどか(さすがに…言えないよね。ほむらちゃんが欲しい、なんて……)

ほむら「ならいいのだけど。……さて、そろそろ休みましょう」

まどか「あ…うん。気づかないうちにだいぶ話し込んじゃってたみたいだね」

ほむら「……眠って、起きたら…文化祭、なのよね……」

まどか「演劇が気になるのはわかるけど、せっかくの文化祭なんだから」

まどか「他のクラスもいろんなことやるんだし、一緒に楽しもうよ」

ほむら「……そうね。私、文化祭はこれが初めてだから…よろしくお願いするわ」

まどか「うん、任せてよ」

ほむら「……それじゃ、教室に戻りましょうか」

まどか「先生に見つからないように気を付けないとだね」

ほむら「ふふっ。そうね」

まどか(……前回の体育祭は…あまり思うようにいかなかったけど)

まどか(今回の文化祭で…絶対、ほむらちゃんにわたしを見てもらうんだから……!)

今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます

次回投下は27日夜を予定していますがもしかすると駄目かも
その場合は再度予定を書き込みます

連絡も遅くなりました。今日の投下は無理でした。ごめんなさい
次回投下は28日夜を予定しています

残り2等分だとやっぱり収まりが悪いので3等分になるかも
今回分は見直しが甘いのであとで修正する可能性があります

次から本文

――文化祭当日――

さやか「あー…今日は文化祭当日。演劇がんばろー」

ほむら「昨日のテンションはどこ行ったのよ」

さやか「えーと…昨日、あたしみたいにワクワクして眠れない子たちと話してたんだよ」

さやか「思った以上に話が弾んで深夜まで喋ってたの、先生に見つかって説教食らっちゃってさ……」

さやか「それに加えて寝不足で…ちょっとテンション下がっちゃって」

ほむら「自業自得じゃない……」

まどか(わたしたちもあんまり言えたものじゃないんだけどね……)

さやか「……ま、せっかくの文化祭なんだし…目いっぱい楽しまないともったいないよね」

まどか「それはそうだけど……」

さやか「よっし。んじゃあたしは早速文化祭に繰り出してくるよ」

ほむら「よかったら一緒にどう?」

まどか(ちょっ、ほむらちゃん!?)

さやか「んー…いや、あたしは仁美と進行の子誘って行ってくる。まどかとほむらは2人で楽しみなよ」

ほむら「そう…わかったわ」

さやか(まったくこの子は…何でここであたしを誘うんだか……)

さやか「じゃ、あたしはこれで。……あぁ、まどか」

まどか「な、何?」

さやか「今日は1日、チャンスなんだからがんばりなさいよ。ぐっどらっく!」

まどか「さ、さやかちゃんっ!」

さやか「じゃーねー。またあとでー」

まどか「……もう。さやかちゃんってば」

ほむら「じゃあ、私たちも行きましょうか」

まどか「あ…うん、そうだね……」

ほむら「……まどか?」

まどか「何で…さやかちゃん、誘ったの……?」

ほむら「え?それは…私たちの友達だからだけど……」

まどか「……わたしは、ほむらちゃんと2人だけがいいの。2人だけで回りたいの」

ほむら「そ、そうだったの。ごめんなさい、まどかの気持ちも知らずに……」

まどか「あ…いや、わたしこそごめんね。わたしが勝手に思ってたことだから」

まどか「ほむらちゃんに伝えてないことなんだもん。わかるはずなかったのに……」

ほむら「だとしても、察せなくてごめんなさい」

まどか「そんなこと…言わなかったわたしも悪いんだから、謝らないで」

まどか「ほ、ほら。早く遊びに行こうよ」

ほむら「寝る前にも言ったけど、私は文化祭が初めてだから…よろしくお願いするわね」

まどか「うん、わかった。……じゃあ、行こっか」

まどか(伝えてないことなんだから、わかるはずない…かぁ。わたしから言わないとダメだと思うけど……)

まどか(……だとしても、わたしのことを意識してくれてからじゃないとダメだよね)

――――――

まどか「はい、これほむらちゃんの分」

ほむら「ありがとう。……でもまさか最初に向かったのが飲食店のクラスとは思わなかったわ」

まどか「えへへ…朝、あんまり食べてないからお腹すいちゃって」

ほむら「確かに昨日学校に泊まった生徒の為に購買が早くから開いてたけど、大したもの無かったわね」

まどか「どこに行くにしても、まずお腹いっぱいにしてからの方がいいかなって」

ほむら「ふふっ、そうね。……じゃ、早速食べましょうか」

まどか「うん。いただきまーす」

ほむら「……まぁ、こんなものよね。特別美味しいわけでもないし、不味いわけでもない」

まどか「あんまり手間のかかるものは出せないし、仕方ないよ」

ほむら「それでも結構繁盛してるのよね」

まどか「文化祭だからね。みんなこの非日常の雰囲気を楽しみたくて買ってるんじゃないかな」

ほむら「そう……。ここは屋台風になってるけど、確か喫茶店風のところもあったわね」

まどか「……チラシによると2-3かな。『魔法喫茶Magia』だって」

ほむら「そっちにもあとで行ってみましょうか」

まどか「楽しみだなぁ」

ほむら「今年は演劇になったけど、こういうのも楽しそうね」

まどか「こっちの方がよかった?」

ほむら「そうじゃないけど、実際に文化祭に触れてみて…やってみたいとは思ってるわ」

まどか「じゃあさ、来年の文化祭は喫茶店をやってみようよ」

ほむら「それも面白そうね。私とまどかなら大繁盛させることもできるんじゃないかしら」

まどか「もしそうなったらすっごく楽しそうだけど…ちょっと恥ずかしいかな」

ほむら「まどか目当てで大勢の人が来てくれるかもしれないわよ?」

まどか「も、もう。……それより、食べ終わったならいつまでも喋ってないでどこか行こうよ」

ほむら「それもそうね。……じゃあ、行きましょうか」

まどか「……どこか行こうと出てきたけど、どこに行こう?」

ほむら「チラシもあれこれ書かれててよくわからないわね……」

まどか「んー……?あれ、この張り紙…何だろう」

ほむら「えぇと…『見滝原文化祭ニュース』って書いてあるわ」

ほむら「新聞部、写真同好会、放送委員会の合同制作で、1時間ごとに最新のニュースを張り出すみたい」

まどか「へー……。まだ始まってそれほど経ってないと思うけど、何が書いてあるの?」

ほむら「注目の出し物らしいわ。吹奏楽部の演奏と…3年のお化け屋敷はマミのクラスみたいね」

まどか「……あ、これ…わたしたちの演劇だよ。噂の2人の演技に注目だって」

ほむら「余計なことを……。注目されてることはわかっていたけど……」

まどか「あはは……。きっとお客さん、いっぱい来るんだろうね」

ほむら「嬉しいのやら恥ずかしいのやらわからないわね……」

まどか(やっぱり…噂もあるし、注目されちゃってるんだね。わたしたち……)

まどか(でも、その大多数はきっとほむらちゃんを見に来るんだろうね……)

まどか(主役の…すごくかっこいいほむらちゃんのことを……)

まどか(……今は噂のおかげで何とかなってはいるけど、いつかは……)

ほむら「……まどか。どうしたの、ぼんやりして」

まどか「えっ?……あ、ううん、何でもないよ」

ほむら「そう。それより、どこに行ったものか……」

マミ「い、いた!暁美さん!」

まどか「あ、マミさん。おはようございます」

マミ「おはよう、2人とも。……じゃなくて、どうして携帯出てくれないのよ!探しちゃったじゃない!」

ほむら「……確かに着信があるわね。ごめんなさい、気づかなかったわ」

マミ「見つかったからそれはもういいの。実はちょっと緊急事態で…手を貸してもらえないかしら?」

ほむら「緊急事態?」

マミ「そうなの、緊急…あぁもう、向こうで説明するわ!とにかく、来て!」

ほむら「ちょ、ちょっと!私はまどかと…引っ張らないで!」

マミ「鹿目さん、本当にごめんなさい!少しの間、暁美さん借りるわ!」

ほむら「待ちなさい、私は協力するなんて一言も……!」

まどか「……行っちゃった。何だったんだろう」

まどか「ほむらちゃん、マミさんに連れて行かれちゃったし…どうしようかな……」

杏子「お、まどか。よーす」

まどか「杏子ちゃん。来てくれたんだ」

杏子「せっかくだしな。まどかは1人で突っ立ってどうしたんだ?」

まどか「あ、うん。たった今までほむらちゃんと一緒だったんだけど……」

まどか「マミさんが緊急事態だとかで、つれて行っちゃったの」

杏子「緊急事態、ねぇ。何だか知らんけど、まどかの邪魔するなんてあいつらしくないな」

まどか「あ、あはは……。それにしても、どこに行っちゃったんだろう」

杏子「マミのクラスじゃないのか?他に行くところもないだろうしさ」

まどか「そっか…じゃあ、行ってみるよ。杏子ちゃんは?」

杏子「アタシもついてくかな。案内よろしく頼むよ」

――――――

マミ「……これで準備よし。よく似合ってるわよ、暁美さん」

ほむら「……あなたも似合ってるわよ」

マミ「そう?ありがとう。じゃあ、さっき言った通りにお願いね」

ほむら「わかったわよ……」

ほむら(全く。無理やり連れて来られたと思ったら何でこんなこと……)

ほむら(聞けばマミの不手際が原因なんじゃない。それを私に手伝わせるなんて……)

ほむら(せっかくまどかと2人で回ろうと思っていたのに……)

ほむら「……気が乗らないけど、こうなってしまった以上は手伝うしかないわね」

まどか「……あ、ここだよ。マミさんのクラス」

杏子「ここかー。お化け屋敷…なんて読むんだこれ?」

受付「お化け屋敷『disperazione』へようこそ。それ、イタリア語で『絶望』って意味なんだ」

杏子「……これ考えたの絶対マミだな」

受付「あれ、巴さんの知り合い?」

まどか「は、はい。あの、マミさんと…髪の長い子が一緒だと思うんですけど、知りませんか?」

受付「知ってるも何も…2人とも、この中にいるよー?」

杏子「この中ってことは……」

受付「そ。巴さんと、助っ人さんは中でお化けの役なの。用があるなら入ってく?」

まどか「それは、その…き、杏子ちゃんは……」

杏子「アタシ?アタシは別に2人に用があるわけじゃないしな……」

まどか「うう……。じゃあ…入ります……」

受付「ありがとー。それでは、絶望の世界へいってらっしゃーい」

杏子「がんばれよー」

まどか「う、うん……」

まどか(わ、真っ暗……。ライトは手渡されたけど、これじゃ心もとないよぉ……)

まどか(それに、わたし…お化け屋敷とかって苦手なのに……。どうしよう……)

まどか(大丈夫かなぁ……。大声で叫んだりしたら、みっともないところみせちゃうし……)

まどか(マミさんだけだったら気にしたりしないけど…ほむらちゃんもいるんだから……)

まどか(ほむらちゃんには、絶対そんなところ見られたくないな……)

まどか「……と、とにかく早くほむらちゃんかマミさんを見つけないと」

まどか「ま、マミさーん。ほむらちゃーん。ど、どこー?」

まどか(何だかやたらと雰囲気があるよ……。空気もひんやりしてる気がするし……)

まどか「ほ、ほむらちゃーん。お願いだから…出てきてよー……」

『まどか……』

まどか「……?今、ほむらちゃんの声が…えっと、ライト……」

まどか「ほむらちゃん、そこにいる……」

お化け「えっと…まどか……?」

まどか「いっ…いやああぁぁぁっ!だ、だだだだ、だれっ!?」

ほむら「ちょ、まどか、私よ。こんな恰好してるけど……」

まどか「やめっ……!おば…ゆ、ゆううれ、さだ……」

まどか「こ、こっち…こっちこないでええっ!」

ほむら「まどか、走ったりしたら危ない……」

ドン

まどか「あうっ……!な、何……?」

お化け「ねぇ、くっつけてくれないかしら……?私の…あら、鹿目さん?」

まどか「……く、く、くびびびびびっ…首いいぃぃっ!」

まどか「わ、わた、ともだ…探しにきただけでっ……!」

まどか「もう…やめてぇ…っ……!」

マミ「……あー、やりすぎちゃったかしら……」

ほむら「ここまで本気で怖がるとは私も思わなかったわ……」

マミ「でもどうしましょうか…今私たちがこの場を離れるわけには……」

ほむら「手の空いてる人に準備用の教室に連れていってもらったらどうかしら」

マミ「……そうしましょう。誰か、ちょっと来てー!」

――――――

ほむら「……ごめんなさい、まどか。必要以上に怖がらせてしまったみたいで」

マミ「私も…鹿目さん、ごめんなさい」

まどか「……すっごく怖かったんだからね」

杏子「お化け屋敷が怖いのは当たり前だろ」

まどか「そ、それは…き、杏子ちゃんが一緒に来てくれなかったのが悪いんだよ」

杏子「アタシのせいじゃないと思うんだけど……」

まどか「……マミさんはどうしてほむらちゃんを?」

マミ「あ、あのね…実は暁美さんの役の幽霊、ほんとはマネキンの予定だったの」

マミ「ちゃんと完成してたんだけど…今日の朝、私が倒して…壊しちゃったのよ……」

マミ「次の当番からの役の人は確保できたんだけど、1番最初の時間だけはどうしても都合がつかなくて……」

杏子「それでほむらに幽霊の役をやらせたのか……」

マミ「そうなの……。壊しちゃった責任もあるし、代役を探してこないといけなかったから……」

ほむら「だからと言って、半強制的に連れていくのはどうかしら……」

マミ「う、ごめんなさい……」

まどか「さっきは暗いからって思ってたんだけど…明るい教室で、ほむらちゃんだってわかったはずなのに」

まどか「それでもまだ少し怖いというか、慣れないというか……」

杏子「何だろうな、背筋に来る感じが……」

ほむら「それは喜んでいいのかしら……」

マミ「髪を乱して、顔に少しだけメイクしただけでこの完成度。暁美さんを選んで正解だったわね」

まどか「ちなみにマミさんは何だったんですか?」

マミ「私?私は首なし幽霊よ、デュラハンとかそんな感じの。クラスの子に似合うからと言われたのだけど……」

まどか「……と、とっても怖かったです」

杏子(妙に似合ってるとは言えないな……)

マミ「そう言えば、鹿目さんはどうして私たちのお化け屋敷に?」

まどか「……あ、そうだ。連れていかれちゃったほむらちゃんを探しに来たんですけど」

マミ「そう……。私としてもせっかくの2人のところを邪魔してすごく申し訳なく思ってるんだけど」

マミ「幽霊の役と聞いて、暁美さん以外の人は思いつかなかったのよ……」

マミ「次の交代時間までまだ少しあるし、どうしたら……」

マミ「……いえ、ここまででいいかしらね。暁美さん、手伝ってくれてありがとう」

ほむら「本当にもういいの?」

マミ「えぇ。これ以上鹿目さんから暁美さんを取り上げると悪魔にでも憑かれそうだもの」

ほむら「……何を言ってるの?」

マミ「それに、少し前までいたはずの幽霊が急にいなくなって、また現れたりした方が幽霊っぽくて面白いじゃない」

マミ「ま、もしそれがダメだったら佐倉さんにお願いするから大丈夫よ」

杏子「は?ちょっと待て、何でアタシに……」

マミ「2人は午後から演劇があるんでしょう?今のうちに遊んでくるといいわ」

まどか「マミさん…ありがとうございます」

マミ「暁美さんは着替えて、メイクを落としていかないと。鹿目さんの恋人が幽霊になったなんて噂が立つわよ」

ほむら「……そうだったわね。支度するから、少し待ってもらえるかしら?」

まどか「う、うん。なるべく早くしてね」

ほむら「……これでよし。まどか、どこかおかしいところはないかしら?」

まどか「だ、大丈夫。いつもの素敵なほむらちゃんだよ」

ほむら「ふふっ、ありがとう。それじゃマミ、私たちはこれで」

マミ「えぇ。私も佐倉さんを幽霊にしたら持ち場に戻らないと」

杏子「人の話聞けよ!アタシはやるなんて一言も……」

まどか「……ほ、ほむらちゃん。行こうよ」

ほむら「そうね。行きましょうか」

マミ「……さぁ、佐倉さん。万一に備えて幽霊になっておきましょうか」

杏子「アタシを置いていくなーっ!」

ほむら「……さて。どこに行こうかしら?」

まどか「杏子ちゃんにはちょっと悪いことしちゃったね」

ほむら「いいのよ。あの子にも文化祭の楽しさを知ってもらえると思うし」

まどか「だったらいいんだけど……」

ほむら「それより、まどかは行ってみたいところはない?」

まどか「わたしはほむらちゃんと一緒なら、どこにでも」

ほむら「も、もう。そんなこと言って……」

ほむら「それじゃあ…1階から見ていきましょうか」

――――――

ほむら「……」

ほむら(……何で私はこんなところにいるのかしら)

ほむら(まどかと一緒に1階を見て回って、2階へ上がる前に体育館を覗いてみたら……)

ほむら(体育館に入った瞬間に目をつけられ、あれよあれよと参加させられてしまったわ……)

ほむら(チラシの『ロミジュリ』って何のことかと思ってたけど……)

ほむら(まさかロミオとジュリエットの略で、役が似合うかのコンテストだったなんて……)

司会「続きまして、エントリーナンバー8番!暁美ほむらさんです!」

ほむら(あぁもう。こんなところにいるせいでまた注目されてしまってるわ……)

ほむら(内容聞いた時点で何となく予想はしてたけど、私…ロミオ役なのよね。私以外男子なのに)

ほむら(大人しく普通の演劇にしておけばいいのに何でこんなわけのわからない出し物を……)

司会「あのー、暁美さん?何かロミジュリっぽい台詞をお願いします」

ほむら(そんなこと言われても…ああロミオ、はジュリエットの台詞よね。ロミオの台詞……)

ほむら「……あなたに会えたのだから。もう死んだって構わないわ」

司会「あ、ありがとうございました!わ、私もこんなこと言われてみたいものです!」

司会「……ず、ズルいって…私は司会ですから!さぁ、続いてエントリーナンバー9……」

まどか「はー……」

まどか(やっぱりかっこいいなぁ、ほむらちゃん。ただそれっぽいことを言っただけなのに)

まどか(周りから割れんばかりの黄色い歓声が……)

まどか(これだけ歓声を浴びるのも…噂の人で、かっこよくて…人気者だから、なんだよね……)

まどか(……どうして、かな。ほむらちゃんが周りの人にちやほやされたり、きゃーきゃー騒がれていたりすると)

まどか(すごく嫌な気持ちになっちゃう……)

まどか(わたしが好きになっちゃうんだもん。他の子が気になったとしても不思議じゃないけど……)

まどか(……ねぇ、ほむらちゃん。わたしの、ほむらちゃんへの気持ちは……)

まどか(他のみんなの声援と変わらないものなの……?)

司会「……以上をもちまして、ロミジュリ第1幕は終了です!参加していただきありがとうございました!」

ほむら「やっと解放されたわ……」

まどか「お、お疲れさま。すごい人気だったよ」

ほむら「別に…私が出たくて出たわけじゃないから。それに何だかまだ視線を感じる気がするわ……」

まどか「……わたし、ほむらちゃんが声をかけられたときに出ないで一緒にいてと言えなかったんだ」

まどか「わたしがそう言えてれば、ほむらちゃんも出ずにすんだかもしれないのに…ごめんね……」

ほむら「……きっとそう言っても出ていたと思うわ。私を出場させるって空気になってしまってたから」

まどか「そっか……」

ほむら「それに、まどかだけが謝ることはないのよ。私が出ないとはっきり断ればよかったんだから」

ほむら「ごめんなさい、まどか。私のせいで無駄な時間を使ってしまって……」

ほむら「……もう最終リハーサルの集合時間まであまりないわね」

まどか「じ、じゃあ早く別のところ行こう。ギリギリまで回ろうよ」

ほむら「えぇ。1階は見たし、2階に行ってみましょうか」

まどか「あんまり時間ないし、ちょっと急ごう!」

まどか(時間、残ってないけど…最悪、アレだけは見ておこうかな)

ほむら「……それじゃ、私たちはこれで」

女子生徒「演劇、がんばってください!……きゃー!暁美さんと話しちゃったー!」

ほむら「これで何人目だったかしら……」

まどか「わ、わかんない。たぶん10人以上だと思うけど……」

まどか(何だろう、3階に上がってから急に話しかけられるようになったみたい……)

まどか(視線を感じる程度に見られてはいたみたいだけど、話しかけてくる人はあまりいなかったのに)

まどか(今は結構な人数がほむらちゃんと一言二言会話して、浮かれて帰っていく……)

まどか(おかげで時間がどんどん過ぎて行っちゃうよ……)

>>243修正


ほむら「……それじゃ、私たちはこれで」

女子生徒「演劇、がんばってください!……きゃー!暁美さんと話しちゃったー!」

ほむら「これで何人目だったかしら……」

まどか「わ、わかんない。たぶん10人以上だと思うけど……」

まどか(何だろう、3階に上がってから急に話しかけられるようになったみたい……)

まどか(視線を感じる程度に見られてはいたみたいだけど、話しかけてくる人はあまりいなかったのに)

まどか(今は結構な人数がほむらちゃんと一言二言会話して、浮かれて帰っていく……)

まどか(おかげで時間がどんどん過ぎていっちゃうよ……)

ほむら「参ったわね、こうも話しかけられてばかりだと」

ほむら「断るのも悪い気がするし、まさか無視するわけにも……」

まどか「さっきまではそんなでもなかったのに、どうしていきなり……」

まどか「……あ。これ…多分、これのせいだ。文化祭ニュース11時号」

『ロミジュリに暁美ほむらさんが女子生徒ながらロミオ役で出場!体育館は大盛り上がり!』

『彼女が主役の演劇はこのあと午後3時開演!お楽しみに!』

ほむら「やたらと話しかけられた理由はこれだったのね。写真まで掲載されて……」

まどか「……ほむらちゃんを勝手に撮って使うのはどうなんだろう」

ほむら「文化祭だし、そこまで気にはしてないからいいのだけど……」

まどか(この新聞、校内のあちこちに張り出されてるはずだよね……)

まどか(あの場にいた人だけじゃなく、他の子もこのほむらちゃんの写真を……)

まどか(……何でこんなにほむらちゃんの人気が広まっていくんだろう)

まどか(せっかくほむらちゃんと2人なのに、どうして邪魔ばかり入るんだろう)

まどか(ほむらちゃんと一緒にいるのに…こんな嫌な気持ちになるなんて……)

ほむら「……まどか、大丈夫?何だか複雑な顔してるけど、どうしたの?」

まどか「ううん…何でもない。ごめんね」

ほむら「ならいいんだけど。それより、そろそろ時間よ」

まどか「あ…ま、待って。最後にもうひとつだけ……」

Prrrrrrrr

ほむら「……?あぁ、私の携帯ね。さやかから……」

ほむら「もしもし、何?……えぇ、わかったわ。ありがとう」

まどか「ほむらちゃん……?」

ほむら「……残念だけど時間切れみたい。直前練習始めるから戻ってきて、と」

ほむら「遅れるわけにもいかないし、教室に行きましょう」

まどか(結局、見れなかったな……。話しかけてくる人が多くて時間取られたせいだよ……)

まどか(わたしの…アレ、一緒に見れたら少しはこっちを見てもらえると思ったのになぁ……)

まどか「……じゃあ、教室に帰ろっか」

今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます

次回投下は29日夜を予定しています

本日投下はあれこれ予定があって遅くなってしまいました
日付変わって0:30頃投下の予定になります。ごめんなさい

遅くなってごめんなさい。29日分の投下です

次から本文

――――――

ほむら「戻ったわ」

さやか「お、おかえりー。どうだった?初めての文化祭は」

ほむら「なかなか楽しかったわ」

さやか「そっか、それならよかった。まどかは?」

まどか「……」

さやか「……まどか?」

まどか「あ…うん、楽しかったよ」

さやか「ふーん……。じゃ、直前練習始めるからほむらは準備よろしく」

ほむら「えぇ、わかったわ」

まどか「じゃあわたしも……」

さやか「ちょい待ち。まどか、何かあったでしょ。どしたの?」

まどか「……やっぱりさやかちゃんにはわかっちゃうか」

さやか「何年あんたの幼なじみやってると思ってんのさ」

まどか「……ありがとう、さやかちゃん」

まどか「で、何があったのよ?準備しながらでいいから、話してくれない?」

まどか「あのね……」

さやか「……なるほどねぇ。ことあるごとに邪魔が入って全然見て回れなかったと」

まどか「うん……。もちろん、ほむらちゃんが悪いわけじゃないんだけど……」

さやか「そうなんだろうけど……」

まどか「わたしは…ほむらちゃんと一緒に文化祭を見て回って、わたしを意識してもらいたかったのに」

まどか「周り…ほむらちゃんの人気がそれを許してくれなくて……」

まどか「意識してもらうどころか、わたしのことなんて全然見てくれてないんじゃないかと思うし……」

まどか「ほむらちゃんと他の誰かが話してるのが…何だか面白くなくて……」

まどか「わたし…どうしたらいいんだろう……」

さやか「まどかとしては、自分を見てもらいたい。他の子にちょっかい出されたくない。そう思ってるんでしょ?」

まどか「そう…なのかもしれない……」

さやか「1番手っ取り早いのは、ほむらに告ってまどかのものにしちゃうことなんだけど……」

まどか「だ、だけどほむらちゃんは、わたしのこと……」

さやか(この期に及んでこの子は……。相手が同性だから仕方ないんだろうけど……)

まどか「わたしのこと、そんな風に思ってないほむらちゃんに告白したって……」

さやか「……まどかが心配してるようなことにはならないだろうから、大丈夫だって」

さやか「多分ほむらはまどかの気持ちが恋だとはまだ気づいてないんだろうけど」

さやか「でも、1番大好きなまどかから好意を向けられてることは絶対嬉しいって思ってるはずだよ」

まどか「……だったらいいんだけど」

さやか「演劇終わったあとも多少時間あるし、後夜祭だってあるじゃない。まだこれからだって」

まどか「……うん」

さやか「ただ…厳しいこと言わせてもらうと、今回の演劇でまたほむらの人気上がるだろうし……」

さやか「意識させてから、ってのはいいんだけど、もうあんまりのんびりしてられないと思うよ」

さやか「今はまだ、あんたたちが付き合ってるんじゃって噂バリアーが効いてるけど」

さやか「このままじゃ、誰かにほむらを取られちゃうよ?」

まどか「……それは、わかってるよ」

さやか「がんばりなさいよ、応援してるから」

ほむら「準備できたわよ。そっちは?」

まどか「えーと…うん、大丈夫だよ」

さやか「まどかのこと、よろしく頼むよ?」

ほむら「わかってるわ。私に任せなさい」

さやか(その気がないのにサラっとこういうこと言うんだもんなぁ)

ほむら「まどか?どうかした?」

まどか「……ん、何でもない。ちゃんとわたしのこと、見ててよね」

ほむら「え、えぇ。わかったわ……?」

まどか「……それじゃ、練習、始めよっか」

まどか「……違う、嬉しいの。あなたが来てくれたことが、何よりも」

まどか「1度はあなたを拒絶してしまって…でも、だからこそわかったの。わたしは、あなたがっ……!」

さやか「……はい、一旦そこまで。ほむらの方は何の問題もないんだけど」

さやか「まどか、台詞も動きも何か変だよ?昨日までちゃんとできてたのにどうしちゃったのさ」

まどか「う……」

女子生徒「台詞と動きが怪しいのもあるけど…どうも鹿目さんだけ気持ちが乗ってない気がするの」

女子生徒「台本の通りに台詞を言って、動いてはいるけど…ただそれだけって感じで」

ほむら「そう言っても、私たちは演劇部でも何でもないんだからそこまで気にしなくても……」

まどか「……えへへ、ごめんね。何だかわたし、まだうまくこの役を飲み込めてないのかも」

まどか「……少しだけ時間、ちょうだい。気持ち切り替えて、理解してくるから」

女子生徒「あんまり時間ないけど…30分くらいなら何とか。それまでに何とかできる?」

まどか「何とかするよ。……じゃあ、ちょっとだけ出てくるね」

バタン

さやか「……大丈夫かなぁ、まどか」

女子生徒「ごめん、私が余計なこと言ったばっかりに……」

さやか「でも、あのまま本番を迎えても…多分微妙な出来になってたと思うし……」

ほむら「……まどかならきっと大丈夫。今はまどかを信じて待ちましょう」

――――――

まどか「……はぁ」

まどか(気持ちが乗ってない、かぁ。痛いところ突かれちゃったな……)

まどか(確かに…前半のシーンは何も問題なく演じられる。でも……)

まどか(ほむらちゃんと気持ちのやり取りをする後半のシーンがうまく演じられない……)

まどか(昨日までは何とかなってたけど、今日は……)

まどか「あんまり時間ないし…無理やりにでも気持ち、切り替えないと……」

まどか「……喫茶店にでも行ってみようかな」

まどか「ここ…だね。魔法喫茶Magia……」

まどか(時間さえあれば…ほむらちゃんと一緒に来るつもりだったのに……)

まどか(どうしてわたしはひとりで来ちゃったのかな……)

『あれ?まどかさん?』

まどか「えっ……?」

応援団「あ、やっぱりまどかさんでしたか。魔法喫茶Magiaへようこそ!」

まどか「えっと…確か、ほむらちゃんと一緒だった応援団の……」

応援団「こんにちは。今日は暁美さんとは一緒じゃないんですか?」

まどか「……ちょっと色々あって、演劇の練習抜け出してきちゃったんです」

応援団「何かあったんですか……?私でよければお話、聞きますよ。ちょうど当番終わりましたし」

まどか「いいんですか……?」

応援団「もちろんです。あ、私は癖になってるだけなんで窮屈なら敬語じゃなくても構いませんよ!」

まどか「……本番直前の全体練習をしてたんだけど、わたしの演技に気持ちが乗ってないって言われちゃって」

応援団「気持ちが乗ってない、ですか……」

まどか「台詞も動きも…全部、台本に書いてあるからその通りにやってるだけだって……」

まどか「主役、わたしとほむらちゃんなんだけど…ほむらちゃんは問題なくて、わたしだけうまくできなくて……」

まどか「うまくできないのは…演劇後半、ほむらちゃんに告白したりするシーンなんだ……」

応援団「何か理由に心当たりはないんですか?」

まどか「……たぶん、何となくだけど…ある。もやもやしてうまく言えないんだけど」

まどか「わたしはきっと、騎士役のほむらちゃんに告白するのが嫌なのかもしれない……」

応援団「騎士役の暁美さんに……?」

まどか「わたし…ほむらちゃんのことが好きなの。付き合ってるって噂が出るよりも、ずっと前から」

まどか「ほむらちゃんに告白して、噂じゃない…本当の恋人になりたいって思ってるの……」

応援団「体育祭の頃からそんな気はしてましたけど……」

まどか「やっぱりバレちゃってたんだね。……今までは告白の練習くらいに考えてたから、平気だったんだ」

まどか「だけど、今日…ほむらちゃんの人気ぶりを見て、考えちゃったの」

まどか「わたしの好きって気持ちも…ほむらちゃんにとっては大勢の歓声のひとつにすぎないんじゃないかって」

応援団「そんなことは……」

まどか「……わかってはいるの。このままじゃいつか、噂もなくなって……」

まどか「わたし以外の誰かに…ほむらちゃんを取られちゃうんじゃないかって……」

応援団「だ、大丈夫ですって。暁美さんにはまどかさんしか考えられませんから」

応援団(暁美さんの無意識の本音を聞いてはいるんですが…私がそれを言うわけにもいかないですよね……)

まどか「……わたしの気持ちも…噂も演劇も、どれかひとつくらい気に留めてくれてもいいのに」

まどか「ほむらちゃんはわたしのこと、そんな風には見てくれなくて……」

まどか「演劇の台詞だって…顔色ひとつ変えずに告白のシーンを演じてるし……」

まどか「わたし…したくないの。ほむらちゃん目当てで演劇を見に来る子の前で」

まどか「わたしじゃないわたしが、ほむらちゃんじゃないほむらちゃんに告白するのが……」

応援団「まどかさん……」

まどか「……きっと、噂や今回の主役のことだって…わたしはそこにいないんだよ」

まどか「ほむらちゃんが付き合ってるかもしれないから、ほむらちゃんが主役だから噂や話題になる」

まどか「あくまでも…そういうことじゃないかな……」

まどか「告白することも…できなくて。ほむらちゃんにとってのわたしは友達なんだと思うから」

まどか「でも、もし演劇を見に来た誰かがほむらちゃんに恋をしてしまったら…わたしに勝ち目なんてなくて……」

まどか「わたしは…どうしたらいいのかな。どうしたいのかな……」

応援団「……私、誰かに恋をしたことがないので…まどかさんの気持ちを全部わかってあげることはできませんが」

応援団「まどかさんは、暁美さんに告白をして…噂ではなく、本当に付き合いたいと思っているはずですよね?」

まどか「……うん」

応援団「確かに暁美さんは人気者です。演劇が終われば、今以上の人気になるでしょう」

応援団「最悪、暁美さんのことが好きな子が出てきても不思議じゃありません」

応援団「だとしても、です。今回の演劇のヒーローは暁美さん。ヒロインはまどかさんなんですよ?」

応援団「他の誰かじゃ絶対に立てない暁美さんの隣に、あなたは立てるんですから」

まどか「それはそうだけど……」

応援団「むしろこれはチャンスですよ。暁美さんは自分のものだと暁美さん目当てで来た子に叩き込んで」

応援団「まどかさんを見てくれない暁美さんのこと、こっちに向かせるんです」

まどか「そんな、ほむらちゃんはわたしのことなんて……」

応援団「見てくれないのなら、強引にでも向かせるんです。こっちを向いてくれたらいいな程度じゃ伝わらないんです」

応援団「暁美さんは極めて鈍感で、残念です。気持ちを小出しにしたって何も気づいちゃくれません」

応援団「ならもう、全力で気持ちを…告白するなり、キスするなりしないと、暁美さんはいつまでも友達のままですよ!」

まどか「だ、ダメだよ。そんなのって……」

応援団「恋なんてのは多少強引に行かなきゃ負けちゃいますよ。押して、押して、押して…想いが届くまで押した人が勝つんです」

応援団「押してダメなら引いてみろなんて言葉がありますが…引いて進展する恋なんてありませんし……」

応援団「何より、一歩でも引いてしまったら…きっとそこでまどかさんの初恋が終わってしまう気がして……」

まどか「……ふふっ。誰かに恋をしたことがないって言う割には恋愛に詳しいんだね」

応援団「お恥ずかしながら、半分以上は友人や漫画ドラマの受け売りでして」

まどか「……ありがとう。話、聞いてくれて。何となくだけど、どうしたらいいのか…わかった気がする」

応援団「力になれたのなら何よりです。……あ、まどかさん、ハーブティーって飲めますか?」

まどか「え?うん、飲めると思うけど……」

応援団「喫茶店のメニューに今のまどかさんにぴったりのものがあるんです」

応援団「ちょっとだけ待っててください、淹れてきますんで!」

まどか「あ、でも…行っちゃった」

まどか(わたしにぴったりのハーブティーって何だろう……?)

応援団「お待たせしました!こちらになります!」

まどか「これが……?何だかすごい色してるね……」

応援団「はい。見ての通り青紫っぽい色なんですが、ここにレモンを入れると……」

まどか「わ…綺麗なピンク色になった……!」

応援団「これ、マローブルーっていう青や紫っぽい色からピンク色になる面白いハーブティーなんですよ」

まどか「紫とピンクって…もしかして……」

応援団「……暁美さんがいつまでも紫でいるのなら、まどかさんがピンクにしてあげればいいんです」

応援団「まどかさんの…告白というレモンを、暁美さんに入れてあげてください」

まどか「……うん。ありがとう」

応援団「演劇も、恋愛も…がんばってください。応援してますよ」

まどか「こんな素敵な応援してもらっちゃったんだもん。わたし、がんばるよ」

~♪~♪~♪

まどか「あれ…メールだ。さやかちゃんから……?」

まどか「……ど、どうしよ、練習抜け出してたの忘れて…もう体育館集合だって……!」

応援団「だ、大丈夫ですよ!台詞覚えられてないとかじゃないんですから!」

まどか「わ、わたしも行かなくちゃ。……お茶、ごちそうさま!」

応援団「私も演劇、見に行きますから!楽しみにしてますよ!」

まどか「う、うん!……とにかく、早く行かないと……!」

――――――

まどか「ご、ごめん!遅くなっちゃった!」

さやか「遅い!どこほっつき歩いてたのよ!?」

まどか「え、えっと…き、喫茶店でハーブティー飲んでたらリラックスしすぎて……」

さやか「何やってんのよ……」

ほむら「まぁ、開始前の準備には間に合ったのだし大丈夫じゃないかしら」

まどか「ほ、ほむらちゃんもごめんね」

ほむら「いえ。それより、直前練習は通しでできなかったから…ある意味ぶっつけになってしまったわね」

ほむら「少し不安だけど…私とまどかならきっと大丈夫。最後まで頑張りましょう」

仁美「まどかさん、ほむらさん。そろそろ衣装をお願いしますわ」

まどか「わかったよ。……ほむらちゃん、支度しよっか」

ほむら「えぇ。仁美、まどかの手伝いをお願い」

仁美「わかりましたわ」

さやか「はーい、着替えるから男子は早く出ていきなさーい!」

まどか「これでよし、と……」

ほむら「私の方も準備できたわ」

まどか「1度見てはいるけど…やっぱりほむらちゃん、素敵だよ」

ほむら「まどかだって。とても綺麗で…可愛いわ」

まどか「そ、そうかな……。ほむらちゃんに褒めてもらえるのは…嬉しいな」

さやか「演劇始まる前からイチャイチャしてないで、ちょっとこっち来て」

ほむら「別にイチャついてなんか……」

さやか「えー、いよいよ本番です。今日までの練習の成果を出し切ろう!」

さやか「それと、今日は主役のまどかの誕生日です。まどかー、おめでとー!」

まどか「……へっ!?え、えっと」

さやか「まどかへの最高のプレゼントになるように、一致団結してがんばろう!いくぞー!」

『おーっ!』

まどか「も、もう。さやかちゃんってば……」

まどか(……これから本番なんだよね。お客さんの前に出て……)

まどか(だ、大丈夫かな。直前練習、あんまりできなかったし……)

ほむら「……大丈夫?少し顔が曇ってるわ」

まどか「え、そ、そう?ちょっと緊張しちゃってるからかな……」

ほむら「そう。……緊張するなと言う方が無理、よね」

まどか「う、うん。ほむらちゃんは平気そうだけど」

ほむら「そう見えると思うけど…これでもだいぶ緊張してるのよ」

ほむら「まどかとの主役の演劇だもの。しくじるわけにはいかないから」

まどか「……わ、わたしもだよ。ほむらちゃんとの演劇だし、それに……」

ほむら「それに?」

まどか「な、何でもない。一緒にがんばろうね」

ほむら「えぇ。……さぁ、行きましょう」

――観客席――

詢子「協力ありがとうね、2人とも。いい席取れたよ」

杏子「いえ、アタシたちもいい場所探してたんで」

マミ「ご一緒させてもらって、ありがとうございます」

詢子「いいっていいって。……しかし、すごい人気だねぇ。満員御礼じゃないか」

杏子「ほむらの奴、結構噂になってるみたいで」

詢子「へぇ。ま、体育祭でやったこと考えたら色々と噂になっても仕方ないか」

知久「あはは……」

『大変お待たせしました。これより、演劇の上演を開始します』

詢子「お、そろそろ始まるみたいだね」

知久「ママ。カメラ、ひとつお願いするよ」

詢子「任せなって。あ、2人は気にせず楽しむんだよ」

マミ「は、はい」

詢子(……これだけ在校生から人気なんだ。演劇そのものよりも出演者)

詢子(きっと、大勢がほむらちゃん目当てに来てるんだろうね……)

詢子(まどかは…大丈夫か?ほむらちゃんの人気に怖気づかないといいけど……)

知久「ママ?どうかした?」

詢子「ん、何でもない。……頑張れ、まどか」

『昔々、ある国にとても可愛らしいお姫様がおりました。国じゅうの皆に愛される、心優しいお姫様でした』

『貴族たちもお姫様を振り向かせようとたくさんの贈り物が届けられますが、決して首を縦には振りません』

『お姫様は恋をしておりました。凛々しい騎士長に心を奪われていたのです』

『騎士長も、お姫様のことを愛していました。しかし、王様にはなかなか言い出すことができません』

『本当のことを言えない姫は、騎士長を毎晩遅くにバルコニーから迎え入れては気持ちを確かめ合っていました』

ほむら「こんばんは、姫」

まどか「いらっしゃい。今夜も来てくれてありがとう」

ほむら「姫が呼んでくれるのなら、私はどこにだって駆けつけるつもりです」

まどか「あなたはわたしの欲しい言葉ばかりくれるんだから、ずるいよ」

ほむら「ふふっ。姫のお顔を見れば、何が欲しいのかはすぐにわかってしまいます」

まどか「そういうことばかり言って。でも、あなたのそういうところ…好きだよ」

ほむら「私も、姫をお慕いしていますよ」

まどか「うん……」

ほむら「姫?」

まどか「わたしたち、本当にお父様に認めてもらえるのかな……?」

ほむら「それは私には……」

まどか「……ごめんなさい、わがままを言ってしまって。こうしてあなたが来てくれるだけで幸せだというのに」

ほむら「いえ……」

まどか「……そうだ、今日は舞踏会だったのは知ってるよね。わたしも大勢の人と踊ったんだけど」

まどか「最後に、あなたと一曲…お願いしてもいいかな?」

ほむら「はい、勿論。では、いきますよ」

『今は結ばれることは叶わずとも、いつか必ず添い遂げる』

『そんな未来を夢見ながら、2人だけの舞踏会は夜更けまで続きました』

大臣役『今日も姫様は縁談を受けていただけなかったようで……』

王様役『ううむ、わからん。富も名声もある彼らを何故拒むのか……』

大臣役『誰か意中の方でもいらっしゃるのでしょうか……』

まどか「……」

ほむら「ここまでは順調ね……。まだ折り返してもいないけど……」

まどか(練習でもやったけど…わたし、ほむらちゃんと踊ったんだよね……)

まどか(別に本格的でも何でもないけれど、大勢の見てる前で……)

まどか「……うぇへへ」

ほむら「……どうしたの?まどか。妙にニヤニヤして」

まどか「うぇひっ!?ほ、ほむらちゃん!?」

ほむら「ほ、本当にどうしたの?様子がおかしいけど」

まどか「ななな、何でもないよ。き、気にしないで」

ほむら「ならいいけど…何かあったらすぐに言うのよ?」

まどか「う、うん。ありがとう」

ほむら「……そろそろ次のシーンね。さやか、小道具はどこに……」

まどか(お客さんの前でほんのちょっと踊っただけでここまで舞い上がっちゃうなんて……)

まどか(この先…後半にも色々あるけど舞台の上でニヤニヤしないようにしないと……)

ほむら「さ、私たちの出番よ。行きましょう、まどか」

まどか「……え?あ、うん!」

『……騎士長はお姫様の部屋へやってきましたが、いつもと様子が違いました』

『笑顔で迎え入れてくれるはずのお姫様が、涙を流して泣いていたのです』

『そして、この日を最後に2人の淡く儚い幸せの日々は終わりを迎えるのでした』

ほむら「姫……?どうして泣いているのです?」

まどか「今日…お父様に言われたの……。わたしを、とある貴族の方に嫁がせると」

まどか「わたしがずっと縁談を断り続けているからって、お父様が相手の方を……」

まどか「あなたのことが好きだと言ったのに…それも断るための嘘なんだと取り合ってももらえなくて……!」

ほむら「……今から取り消すことはできないのですか?」

まどか「もう…ダメだって……。相手の方も承諾しちゃったから……」

ほむら「……申し訳ありません。姫とのこと…もっと早く王様に話すべきでした」

ほむら「姫が貴族たちからの話を断り続けていれば大丈夫だと…そう思ってしまって……」

まどか「だからって……!わたしの話も聞かずにこんなのってないよ…お父様のバカ……!」

ほむら「……王様も私たちを認めないわけじゃないはずです。あくまでも姫のことを思って」

まどか「取り消しも、話を聞いてさえもらえないのなら……」

まどか「……ねぇ、お願い。わたしをここから攫って…逃げてほしいの」

まどか「わたしは…あなた以外のところになんて行きたくない!」

ほむら「そんなこと…あなたは一国の姫なのですから……」

まどか「その前に…ひとりの女の子だよ!姫なんかよりも、あなたといたいだけなの!」

まどか「わたしのこと、好きじゃなかったの!?」

ほむら「……好きですよ。今でも」

まどか「だったら……!誰にも渡さないくらい、言ってほしいのに……!」

ほむら「それは……」

まどか「……そっか。わたしのことなんて…好きでもなかったんだね」

ほむら「ち、違います。私は」

まどか「……帰って。帰って!」

まどか「好きでもないのなら…もう2度と来ないで!」

ほむら「お、落ち着いてください。そんな大声を出したら……」

召使役『姫様!どうされました!?』

まどか「これ以上…わたしを苦しめないで……!」

ほむら「……わかりました。今日はこれで失礼します」

『騎士長はそう言い残すと、バルコニーからひらりと部屋を後にします』

『その日を最後に、姫が騎士長を部屋に迎え入れることはありませんでした』

マミ「……すごいわね、2人とも。迫真の演技で」

杏子「あぁ。思わず見入ってたよ……」

詢子「いやしかし、あのまどかが恋するお姫様の役をこうも上手く演じるなんてねぇ」

知久「練習、たくさんしてたみたいだからね」

詢子「相手がほむらちゃんだからってのもあるんじゃないかな?」

知久「えっと…それはどういう……?」

詢子「あー、いや。何でも。ほら、しっかり撮影しないとね」

知久「う、うん……」

さやか「2人とも、ここまでお疲れさん。いい感じだよ」

さやか「お客さんも食い入るように見てるし、やっぱ2人が主役で正解だったんじゃない?」

まどか「そ、そうかな」

ほむら「私もまどかも、できる限りのことをやったまでよ」

さやか「謙遜しなくたっていいのに。このこのー」

ほむら「別に謙遜してるわけでは……」

さやか「ま、もうしばらくは2人の出番ないから、それまで休んでおきなよ」

まどか「ありがとう。そうさせてもらうね」

さやか「しっかし、さっきのシーンすごかったじゃん。特にまどか」

さやか「なんていうか…心を打たれるというか、そんな感じがしたもん」

まどか「そ、そうだった?わたし、必死になってたから……」

ほむら「直前練習を抜け出して気分転換したのがよかったんじゃないかしら」

ほむら「ただ…少しだけ心配したのよ。まどかなりに役を飲み込めたんだと思うけれど」

ほむら「それだけとは思えないほど悲しく、切ない顔をしていたもの」

まどか「……えへへ、ほむらちゃんにそう思わせられたのならうまく演じられたってことだよね」

ほむら「この調子で後半も頑張りましょう」

ほむら(……さっきのまどかは本当に悲しそうだった。けど、これは演劇だと頭では理解してる)

ほむら(理解してるはずなのに…何で私まであんなに悲しくなってしまったのかしら……?)

ほむら(……私もまどかも必要以上に役に入れ込んでしまったみたいね)

さやか「ただねぇ…ほら、前半は元々何とかなってはいたじゃん?」

さやか「後半は練習でもあまりうまく行ってなかったけど、大丈夫なの?」

まどか「……わかんない」

さやか「わかんないって…今から一応台詞合わせしておいた方がいいんじゃ……」

ほむら「その必要はないわ。まどかは…絶対に上手くやってくれるはずだもの」

さやか「……確かに台詞覚えられてないとかじゃなかったけどさー」

ほむら「私はまどかを信じてるわ。だから大丈夫よ」

まどか「ほむらちゃんの期待を裏切るわけにはいかないし、がんばるよ」

女子生徒「2人とも、そろそろ出番だから準備よろしくー!」

まどか「はーい。……じゃあ、準備しよっか」

ほむら「えぇ。さやか、次のシーンの小道具を……」

さやか「あぁ、はいはい。えーっと、次のは……」

まどか(いよいよ後半……。そのラストで、騎士に…ほむらちゃんに告白する……)

まどか(応援団の子に相談して…ほむらちゃんはわたしのものだと見せつけて)

まどか(多少強引にでもわたしの方を向かせるってそう決めて…頭ではわかってるはずなのに)

まどか(やっぱり、まだどこかで騎士役のほむらちゃんに告白したくないって思っちゃってる……)

まどか(……だとしても、ちゃんとやらないとだよね。じゃないと演劇、台無しになっちゃうし)

ほむら「まどか、準備できた?」

まどか「うぇひっ!?あ、えっと、うん。できてる、よ」

ほむら「……何かまた様子がおかしいけど、大丈夫?」

まどか「だ、大丈夫。ほんとに何でもないから」

ほむら「そう?」

まどか(ほむらちゃんには…言えないよね。相手がほむらちゃんだから告白シーンが、なんて……)

女子生徒「シーン切り替わるよ!2人とも、よろしく!」

ほむら「えぇ。行きましょう、まどか」

まどか(ラストシーンまでに気持ちの整理つけて…しっかりしなきゃ……)

詢子「……お、2人出てきた。ここからまた主役2人のシーンみたいだね」

知久「もうそろそろ後半って感じじゃないかな」

詢子「マミちゃんたちはこの演劇、内容は知ってる?」

マミ「いえ、知らないですね。ただ、見た感じ恋愛ものみたいですし……」

杏子「中学の演劇なんだし、最後はハッピーエンドになるんだと思いますけど」

詢子「いやー、担任が和子だからさ。こういう話は…ほら、ね?」

マミ「あはは……」

詢子(しかしあの子、この満員御礼の大舞台の上で…演劇、嘘だとしても……)

詢子(ほむらちゃん相手に告白なんてできるのか……?)

今回はここまで
読んで下さってる方、ありがとうございます

次回投下は30日夜を予定しています

たぶん今回で完結までいけるかも

次から本文

――――――

司祭役「……この者を妻とし、生涯添い遂げることを誓いますか?」

貴族役「はい。誓います」

司祭役「よろしい。では続いて……」

まどか(どうしよう、もう結婚式のシーンまで来ちゃったよ……)

まどか(このあと騎士…ほむらちゃんと告白のシーンがあるのに、気持ちは何も変わらないし……)

まどか(何でわたしはここまで告白することを拒んでるの……?)

まどか(ほむらちゃんを振り向かせるためにも、全力で告白しないとなのに)

まどか(わたしは何が気に食わないんだろう……)

まどか(わたしじゃないわたしが、ほむらちゃんじゃないほむらちゃんに告白するのを見せたくない……)

まどか(でも、そうだとしてもちゃんとやらないと…振り向かせることもできないし……)

まどか(何より、演劇そのものがダメになっちゃう……)

まどか(ほむらちゃんと主役に選ばれて、たくさん練習して…絶対、成功させようって約束したはずなのに……)

まどか(頭ではわかってる……。でも、どうしても心がそれをわかってくれない……)

司祭役「……この者を夫とし、生涯添い遂げることを誓いますか?」

まどか(わたしは…どうしたいの……?何がしたいの……?)

貴族役「鹿目さん……?」ヒソヒソ

まどか「……あ、えと…はい。誓いま……」

ほむら「その結婚式、待ちなさい……!」

まどか「えっ……」

ほむら「はあっ…はあっ……!間に、合った……!」

まどか「騎士…っ……」

司祭役「な、何だね君は……」

貴族役「あの方は……」

ほむら「姫っ……!私は、こんな結婚…認めない……!」

ほむら「姫の隣は…私の場所なのだから……!」

貴族役「……姫様の本当の想い人は…あの方なんでしょう?」

まどか「そ、その……」

貴族役「いいのです、わかっていましたから。姫様の心は既に誰かのものなのだと」

貴族役「それに、私では姫様の相手には相応しくないですから」

ほむら「……さぁ、その場所…退きなさい」

貴族役「姫様のこと…よろしく頼みます」

ほむら「……わかってる。任せなさい」

貴族役(暁美さん、少し女の子の喋り方が出てたけど…大丈夫だよね)

まどか「騎士長…わたし…っ……!」

ほむら「いいんです、姫。何も言わなくても。今はただ…抱き締めさせて……」

まどか「ひゃっ……」

まどか(わわわ、わた…ほむらちゃんに、抱き締められっ……!)

まどか(りぇ…練習のときは恥ずかしいからってやらなかったせいで、慣れてなくて……)

まどか(胸、うるさいくらいバクバク言ってる……)

まどか(ほむらちゃんの体…柔らかくて、あったかくて…ほむらちゃんの匂いがして……)

まどか(何も考えられないくらいに、頭…ふわふわしちゃう……)

>>304訂正


まどか「騎士長…わたし…っ……!」

ほむら「いいんです、姫。何も言わなくても。今はただ…抱きしめさせて……」

まどか「ひゃっ……」

まどか(わわわ、わた…ほむらちゃんに、抱きしめられっ……!)

まどか(りぇ…練習のときは恥ずかしいからってやらなかったせいで、慣れてなくて……)

まどか(胸、うるさいくらいバクバク言ってる……)

まどか(ほむらちゃんの体…柔らかくて、あったかくて…ほむらちゃんの匂いがして……)

まどか(何も考えられないくらいに、頭…ふわふわしちゃう……)

まどか(わたし…何やってるんだろ……。大事な本番中に、ほむらちゃんのことばっかり考えて……)

まどか(頭、真っ白になって…覚えた台詞、全部飛んじゃうなんて……)

まどか(それに、告白も…どうしてしたくないって思っちゃってるの……?)

まどか(全部わたし自身の気持ちのはずなのに…わかんない。何も…わからない……)

まどか(演劇、成功させなくちゃいけなかったのに…こんな大事なところで失敗するなんて)

まどか(……やっぱり、わたしなんかがほむらちゃんに釣り合うわけ…なかったんだ……)

まどか(演劇は…もう続けられないよね。いくらほむらちゃんでも、今回ばかりは……)

まどか(ほむらちゃん、ごめんね……。わたし、ダメだった……)

ほむら「……まどか。台詞、飛んじゃったのね?」

まどか「ほむらちゃ…っ……」

ほむら「あまり大きな声を出しちゃ駄目。客席に聞こえてしまうわ」

まどか「……ごめん。残り、全部…飛んじゃって……」

まどか「それにっ……!わたし、告白の言葉…言えなくなっちゃって……!」

まどか「もう…無理だよぉ……」

ほむら「……まだ諦めるには早いわ。まどかの台詞が全部飛んでしまったのなら」

ほむら「ここから最後まで、全部アドリブでやってしまえばいいの」

まどか「そんな…できっこないよ……!」

ほむら「いいえ、できるわ。何故なら、主役が私とまどからだから」

ほむら「言ったでしょう?まどかと一緒なら、何も心配はいらないって」

まどか「でも…わたし、アドリブなんて……」

ほむら「私がまどかに合わせるから。まどか、告白の言葉…お願いできる……?」

ほむら「言えなくなってしまったみたいだけど、まどかなら絶対言えるはずよ」

まどか(何で…何でほむらちゃんはこんなに優しいの……?わたしを助けてくれるの……?)

まどか(前回も今回も、諦めそうになったわたしに手を差し伸べてくれるのっ……!)

ほむら「それに私…まどかに告白の言葉、言ってもらいたい。まどかからの告白を」

まどか(……ずるいなぁ。ほむらちゃんはわたしが友達だから、簡単にそんなことが言えて)

まどか(わたしは…ほむらちゃんのことが好きで、告白のシーンに悩んでるのに……)

まどか(それに、台本のときでさえダメだったのにアドリブなんて……)

ほむら「……これ以上の時間稼ぎは無理ね。まどか、心の準備はできてる?」

まどか「そ、そんな準備なんて……」

ほむら「あまり深く考えなくても大丈夫。まどかがこの…告白のシーンをどうしたいのか」

ほむら「あなた自身が思ったこと、言いたいことを言えばいいのよ」

まどか「このシーンで、どうしたいか……」

まどか(わたしはほむらちゃんと……。でも、ダメだったし……)

ほむら「……演劇、私の台詞から再開するわよ。3、2、1……」

まどか「えっ、ちょっ……」

ほむら「……ごめんなさい。いきなり抱き締めてしまって」

まどか「え、と…い、いいの。その、わたしも…う、嬉しかったから」

ほむら「私…1度はあなたの手を離してしまった。あなたの願いを聞き入れられなかった」

ほむら「王様が決めた縁談だからと…あなたを諦めてしまった……!」

まどか「……」

ほむら「頭では…決まってしまった以上、どうしようもないことだと考えていたんです」

ほむら「だけど私の心は…あなたにどこにも行ってほしくないと、壊れるくらいに叫んでいました」

ほむら「そして、今日になってようやく気づいたんです。それは間違いだったんだと……!」

ほむら「もう、自分の本当の気持ちを隠したりしない。私の本当の気持ち…あなたに聞いてほしい」

まどか「本当の…気持ち……?」

ほむら「はい。嘘も誤魔化しもない、私が…心の底から思っている気持ち……」

まどか「……聞かせて、くれる?わたしのこと、どう思ってるのか……」

ほむら「私…私は、姫、あなたのことを……」

ほむら「この世界で誰よりも、あなたのことを…愛してます」

まどか「……っ!」

ほむら「……姫?」

まどか「なっ、何でもない!何でもないからっ!」

まどか(大好きなほむらちゃんにあんなこと言われて…平然としてられるわけないよ……!)

ほむら「姫は…私のこと、どう思っていますか……?」

まどか「そんなのっ…決まってるよ……!」

ほむら「……決まってる、とは?」

まどか「だ、だから…言わなくてもわかってるでしょ……?」

ほむら「私は、あなたから直接聞きたいのです。誰の憶測でもない、あなたの気持ちを」

まどか「う……」

まどか(だ、だから言えないんだってば!何でかわかんないけど……!)

まどか(どどど、どうしよう。こう言えば察してくれると思ったのに……)

ほむら「……聞かせて。あなたの本当の気持ちを」

まどか「わ、わたしは…あなたのこと……」

まどか「あなたのことっ……!だ、大好きだよ!」

ほむら「……!」

まどか(あ、あれ……?言える……。すごく恥ずかしいけど、でも……)

まどか(ほむらちゃんに告白の言葉、言いたくないなんて気持ちは…ない……)

ほむら「そう……。あなたも、私のこと…っ……!」

まどか「好きだよ!大好きだよっ!ずっと、ずっとあなたのこと…想ってたよ!」

まどか「わたしっ……!すごく嬉しいの!あなたが来てくれたことが、何よりも!」

ほむら「……ありがとう。私のこと、待っていてくれて」

まどか「身分だとか、相応しくないだとか…たとえ周りの人から何を言われたとしても……」

まどか「わたしのこの気持ちが許されない恋だとしても……!わたしは、あなたのことが……!」

まどか「大好きなのっ!」

さやか「……何とかなってる、かな」

仁美「急に台本にない台詞を言いだしたときは何かと思いましたが……」

さやか「多分、まどかが台詞を忘れちゃったんだろうね。今もアドリブでやってるんだと思うけど……」

仁美「それでよくあれだけ合わせられますわね……」

さやか「まぁ…まどかとほむらだからね。2人のことだから、何も言わなくてもお互いわかってるんじゃない?」

仁美「お互いがお互いに恋をしてるということ以外は、ですわ」

さやか「まぁね。……しかし、まどかのアドリブ、姫の告白というよりまどかの告白って感じがするなぁ……」

仁美「そう言われるとどことなくそんな感じが……」

さやか(まどかの告白は…ちょっと気になるけど、自分の気持ちをアドリブということで言ってるだけだよね……)

さやか(何にせよ、もうすぐ最後の見せ場。頼むよ、2人とも……!)

まどか(言っちゃった……!言っちゃった、大好きって……!)

まどか(もも、もちろんこれはあくまで演劇で…台本通りじゃなくなったけど、わたし、ほむらちゃんに……!)

まどか(でも…何で急に言えたんだろう……?)

ほむら「……ありがとう。私のこと、そこまで想ってくれていて」

ほむら「あなたの口から、あなた自身の気持ちを言ってもらえたことが…何よりも嬉しい」

まどか「あ……」

まどか(……そっか。そういうこと、だったんだ。わたしが、ほむらちゃんに告白できた理由)

まどか(わたしはアドリブの…自分で考えた告白の言葉だったから、言えたんだ……)

まどか(台本に書いてある言葉は…わたしの本当に伝えたいことじゃなかったから……)

まどか(わたしが考えたわけじゃない、本心じゃない告白だから…あんなに心が拒んでたんだ……)

まどか(……でも、言えたってことは…今のがわたしの本心、わたしがほむらちゃんに伝えたいこと、なんだよね)

まどか(こんな状況…演劇の本番真っ最中に言ったって、ほむらちゃんに伝わるわけないってわかってるけど)

まどか(きっと伝わらないんだとしても…好きな人相手に本心でもない、適当な告白なんてしたくない……)

まどか(……ほむらちゃん。わたし、ほむらちゃんのこと……)

王様役「そういうこと、だったのか……。貴族たちの縁談を断り続けていたのは、騎士長のことを……」

まどか「え、えっと…そう、です」

まどか(そうだった、結婚式のシーンだからほむらちゃん以外にも役の子がいるんだよね……)

まどか(他のみんなは台本通りだろうし…うまく返さないとだよね……)

ほむら「……王様。私は、姫のこと…この世の誰よりも愛しています」

ほむら「今更こんなことを言うのはおかしいかもしれませんが…姫とのこと、認めて頂けませんでしょうか……?」

王様役「……姫が決めた相手なら、私は反対せんよ。何より、姫を想ってここまで追いかけて来たのだから」

王様役「姫のこと…よろしく頼むよ」

ほむら「……はい!」

まどか「お父様…ありがとう、ございます……!」

まどか(これが最後の見せ場……。わたしと、ほむらちゃんの……)

まどか(ここも…恥ずかしいからって練習だと軽く顔を寄せておしまいだったんだよね……)

まどか(最後の全体練習でやる予定だったけど結局できなかったし……)

まどか(……大丈夫。アドリブだけでここまでやれたんだから)

まどか(最後のキスシーンだって…ぶっつけでもできるはず……!)

司祭役「……それでは姫様、騎士長。誓いの証を」

まどか「は、はい」

ほむら「……」

まどか「ほむ…ど、どうしたの……?」

ほむら「……いえ、何でもありません。姫、もっと私の側に……」

まどか「う、うんっ……!?」

ほむら「姫……」

まどか(ど、どうしよう。またほむらちゃんに抱きしめられちゃった……)

まどか(でも…チャンスだよね。あとほんの少し動けば本当にキスができちゃうんだから……)

まどか(……これは演劇で、あくまでキスのフリで…何より、ほむらちゃんにとってのわたしは仲の良い友達)

まどか(わかってるけど…わたしはそれじゃ嫌。わたし、ほむらちゃんが好きで…恋人になりたいから)

まどか(わたしの気持ち、全部まとめてぶつけてあげる。わたしの方を向かせてみせる)

まどか(今まで何をしても気づいてくれなかったほむらちゃんに気づいてもらいたい。だから……)

まどか「……ごめん。ほむらちゃん」

ほむら「えっ、まど…っ……!」

さやか「まっ…まどかのバカ、マジでやっちゃってるよ!フリのはずだよ!?」

仁美「あらあらあら」

さやか「あらあら言ってる場合じゃないって!どうすんのコレ!?」

仁美「どうするも…やってしまった以上は仕方ないですし、ある意味大成功だと思いますけど……」

さやか「どこがよ!?観客席から歓声とも悲鳴とも取れない絶叫が響いてるじゃん!」

仁美「まぁまぁ、さやかさん。落ち着いてください」

さやか「落ち着けるわけないでしょ!あぁもう、こうなった以上幕引くしか……」

仁美「いえ、まだ幕を引くには早いですわ。もう少しだけ見守りましょう」

さやか「……もし2人がしくじったらどうするつもりなのさ。あたしら全員で土下座?」

仁美「うふふ、そのときは…そのときに考えることにしましょう」

まどか「……っは、ぁ」

ほむら「ぁ…ぇ、と…まどか、今……」

まどか「うん。ほむらちゃんに、キスしたの。フリじゃなく、本当に」

ほむら「な、何で……?こんな内容だったからつられてしまったとか…フリのつもりが事故で……?」

ほむら「私は…その、気にしたりしないけど、こういうことは本当に好きな人に……」

まどか「……ほむらちゃんって、本当に鈍感で残念なんだね。ここまでしてもまだ気づかないんだもん」

ほむら「えっ……?」

まどか「わたし…わたしね、ほむらちゃんのこと…好き、なんだ。友達としてじゃなく、恋愛対象として」

ほむら「……う、嘘?まどかが、私のこと……」

まどか「嘘なんかじゃないよ。わたし、ずっと、ずっと…体育祭よりも前からほむらちゃんのこと、好きだったの」

ほむら「じゃあ…体育祭での出来事も全部……」

まどか「お弁当を作ってあげたのも、二人三脚を代わってもらったのも、借り物競争も…全部、ほむらちゃんに意識して……」

まどか「わたしのことを友達以上として見てもらいたかったから。今日もそのつもりだったんだけど……」

まどか「どこに行ってもほむらちゃんは人気者で、いつか誰かに取られちゃうんじゃないかって…怖かったんだから……」

ほむら「まどか……」

まどか「でも、これで気づいてくれたよね。わたしが、どれだけほむらちゃんを想ってるか……」

ほむら「……えぇ。まどかが私に好意を抱いて…恋をしているってこと、伝わったわ」

まどか「やっと…伝わったんだね。わたしの、ほむらちゃんが好きって気持ち……」

ほむら「……ありがとう、まどか。私なんかを好きになってくれて」

まどか「なんか、じゃないもん。強くて、優しくて、かっこよくて…誰よりも素敵なほむらちゃんだから、恋をしたんだよ」

ほむら「私のこと、そんな風に見ていたのね……」

まどか「……好きな人なんだもん。何もかもが好意的に見えちゃうに決まってるじゃない」

ほむら「そう……」

まどか「……ねぇ、ほむらちゃんは…わたしのこと、どう思ってるの?」

ほむら「私は…まどかのことは友達だと考えてた。でも、他の友達とまどかは…違ったの」

ほむら「まどかだけは友達や親友なんて言葉じゃ…物足りない、言い表せなくて……」

ほむら「何よりも、誰よりも大切で、特別な存在。友達の上の友達だと…勝手にそう考えてたわ」

まどか「そう、なんだ……」

ほむら「だけど、いつからか…まどかとのことが変に気になるようになってしまったの」

ほむら「その理由がずっとわからなくて…私が、必要以上に噂を気にしすぎてるだけだと思ってた」

ほむら「でも、そうじゃなかったの……。噂を気にしてるだけなら、あんな気持ちに……」

ほむら「まどかに告白されて…嬉しいと思ったりなんてしないはずだから……」

まどか「わたしの…告白で……?」

ほむら「……告白を聞いた瞬間、胸の奥が締め付けられて、熱くなって…ときめいてしまったとでも言うのかしら」

ほむら「友達だったはずなのに…今はまどかのことが可愛くて、愛しくて…離れたくないと思ってしまって……」

まどか「それって……」

ほむら「……私もまどかのこと、きっとそういう意味で…好きになってしまったんだと思う」

まどか「で、でも…わたしが言うのもおかしいけど、告白しただけでそんな……」

ほむら「まどかの告白は…多分、きっかけだったの。私の本当の気持ちに気づくきっかけに」

ほむら「私は…きっと、体育祭の頃にはもう…まどかを恋の相手として好きになっていたのよ」

ほむら「今、告白されて好きだとわかって…以前から持っていたまどかへの友情だと思っていた気持ちが」

ほむら「全て…愛情からの気持ちだって気づいたの……」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……私、恋なんてしたことなくて…それに、まどかが私に恋してるなんて思いもしなかったから」

ほむら「まどかの気持ちにも、自分の気持ちにさえ気が付かなかった……」

まどか「いいの。わたしも…あれこれ悩んで、迷って…背中を押されて、やっとこうして告白できたんだから」

まどか「わたしたちはもう、両想いなんだから。細かいことは…気にしないで」

ほむら「……本当に、私でいいの?ずっと好きだってことに気づかないような鈍感で、残念な私で」

まどか「もちろんだよ。だって、わたしは…ほむらちゃんのこと、大好きだから」

まどか「……ほむらちゃん。わたしと恋人として…お付き合い、してください!」

ほむら「……えぇ。これからはずっと…まどかの隣で、恋人として…あなただけを見てるから」

まどか「うん……。ありがとう、わたしの気持ち…受け取ってくれて……」

ほむら「当然じゃない。まどかの、私だけを想う気持ち…受け取れないわけ、ないでしょう」

ほむら「それに、こんな大舞台の上で大注目されている中、告白されたんだから」

ほむら「もしここで断ったりしたら…本当に甲斐性無しになってしまうもの」

『おめでとー!2人ともー!』

『いつまでも仲良くねー!』

まどか「……すごい歓声だね」

ほむら「えぇ…そうね……」

まどか「わたしたち、演劇の最中に告白…しちゃったんだ」

まどか「自分勝手なことして…全部、台無しにしたんじゃないかって心配してたんだけど……」

ほむら「この大歓声を聞く限り、大成功したみたいね」

ほむら「もっとも、演劇としてよりも私たちの告白の成功に対する喝采じゃないかしら」

まどか「こんな大勢のお客さんの前でなんて…全部見られちゃったね」

ほむら「ふふっ、いいじゃない。演劇の最中に本当の告白をするなんて、なかなかできることじゃないわ」

『え、えー…こうして愛し合う2人はついに想いを通わせ、晴れて結ばれたのです』

『多くの人から祝福された少女の顔には、最高の笑顔が浮かんでいました……』

まどか「あれ…今のナレーション、さやかちゃん……」

ほむら「私たちが好き放題やってるのを見て、フォローを入れてくれたみたいね」

まどか「何かもう演劇じゃなくなっちゃってるけど…ほむらちゃんと一緒に舞台に立てて、よかった」

ほむら「……私も。結果としては私たちのことを見せつけただけになった気もするけど」

ほむら「まどかのこと、好きだって気づいて…こうして、恋人になれたんだから……」

ほむら「……もう、私はまどかだけのものだから。私のこと…離さないでね」

まどか「うんっ……!ほむらちゃんの手も、心も…何もかも全部、絶対に離さないから!」

まどか「ほむらちゃん!大好きだよーっ!」

――――――

まどか「……はー」

ほむら「ふぅ、やっと落ち着けるわね……。後夜祭始まってるんだから、そっち行きなさいよ……」

まどか「あはは……」

ほむら「……まぁ、それだけのことをしてしまったと思うし…仕方ないかしら」

まどか「幕が下りたあとも、観客席から歓声と拍手がしてたもんね」

ほむら「さやかには好き放題やりすぎだと文句を言われたわ……」

まどか「でも…仁美ちゃんやクラスのみんながわたしたちのことを祝福してくれたことは…嬉しいね」

ほむら「……そうね。私とまどかが付き合うことを祝ってくれたことは…私も嬉しく思うわ」

まどか「……すごかったね。演劇が終わったあと」

ほむら「えぇ……。まどかと一緒だと、どこに行っても人だかりができちゃったのよね……」

まどか「ここ…屋上に来るのも一苦労だったもんね……」

ほむら「さやかたちが協力してくれなかったらどうなってたか……」

ほむら「何だか演劇以上に疲れちゃったわ……」

まどか「……ほむらちゃん、疲れちゃったのなら…少し横になる?」

ほむら「じゃあ…そうさせてもらうわ。膝枕、してくれるってことよね?」

まどか「う、うん。……じゃあ、どうぞ」

ほむら「……まどかの膝、柔らかくて気持ちいいわ」

まどか「も、もう、ほむらちゃんってば……」

ほむら「……私たち、本当に告白して、付き合って…恋人になったのよね」

まどか「うん……。もし友達のままだったら、膝枕なんてしなかったんじゃないかな」

ほむら「ふふっ。友達から恋人になって…まどかは何をしてくれるようになったのかしら」

まどか「ほむらちゃんが望むことなら、何だって」

ほむら「それは嬉しいけど、学校ではあまりこういうことはできそうにないわね」

ほむら「私たちの仲、学校中に知れ渡ってしまったもの」

まどか「文化祭ニュースにも一面で載ってたよね。演劇で公開告白って」

まどか「わたしたち2人を応援するファンクラブとかできちゃってたりして」

ほむら「こ、怖いこと言わないで、まどか……」

まどか「うぇひひ、ごめんね」

ほむら「……文化祭前夜もこうして、まどかと2人で屋上に来ていたわね」

まどか「昨日と違うのは…恋人になれた、ってことかな……」

ほむら「……もうすぐ終わってしまうわね。文化祭」

まどか「こういうお祭りごとが終わっていくのは何だか寂しくなっちゃうな」

ほむら「そう言えば…まどか、見て回っていたとき私をどこかに連れて行こうとしてなかった?」

まどか「あれは…手芸部の展示を見に行こうと思ってたの。わたしの作品、ほむらちゃんに見てもらいたかったから」

ほむら「私に見てもらいたかったなんて、一体何を作ったのかしら?」

まどか「えと…ほむらちゃんのぬいぐるみを作ったの。大好きなあの子って題で」

まどか「一緒にぬいぐるみを見て、わたしのこと…意識してほしかったの」

ほむら「そう……。ごめんなさい、私が周りの人に時間を使いすぎたせいで、見に行けなくて」

まどか「ううん、いいの。だって…今、こうして恋人になれたんだから」

まどか「それにしても、まさかわたしの誕生日にこんな素敵なことになるなんて…思わなかったな」

ほむら「……あ、まどかの誕生日プレゼント…用意できなかったわ。今日は1日中忙しくて……」

まどか「気にしないでよ。わたしはほむらちゃんと付き合えたことが誕生日プレゼントだと思ってるから」

ほむら「でも、それをプレゼントにするなんて……」

まどか「……ほむらちゃんがどうしてもって言うなら…わたし、欲しいものがあるんだけど」

ほむら「欲しいもの?何かしら?」

まどか「あのね…た、誕生日のプレゼントに、ほむらちゃんの…き、キッ……!」

まどか「……キス、してくれないかなっ……!?」

ほむら「それは…構わないけど、さっき自分から堂々として、キスって言ってたじゃない」

まどか「ううう、さっきのは…その場のノリというか、勢いというか……」

まどか「と、とにかく!わ、わたし、ほむらちゃんの…キスがほしいのっ!」

ほむら「……わかったわ。体、起こすわね」

まどか「う、うん……」

ほむら「……まどか、ありがとう。私の、まどかを想う気持ちに気づかせてくれて」

ほむら「友達としてじゃなく、恋の相手として好きになれて…とても、とても嬉しくて、幸せよ」

まどか「ほむらちゃっ……!」

ほむら「んっ……」

まどか「……っはぁっ……!」

ほむら「誕生日、おめでとう。まどか」

まどか「……ありがとう、ほむらちゃん。キス、してくれて…とっても嬉しい」

ほむら「キスって、されるのとするのじゃ…全然違うのね。まどかの唇、とても甘かった……」

まどか「わたしも…ほむらちゃんにしてもらって、すごく気持ちよかった」

まどか「これでわたしたち、結ばれたのかな。付き合って、キスをしたんだから」

ほむら「えぇ。きっと、ね」

まどか「……大好きだよ。ほむらちゃん」

ほむら「まどか…大好き……」

まどか「……よーし。ほむらちゃん、そろそろ帰ろうよ」

ほむら「後夜祭はいいの?」

まどか「うん。自由参加だし、どの道わたしたちは出られそうにないし」

ほむら「私たちが参加するとまた大騒ぎになってしまうものね」

まどか「それに、パパたちがわたしの誕生日会の準備をして待っててくれてるからね」

まどか「ほむらちゃんも、誕生日会に出てほしいんだけど…ダメかな……?」

ほむら「まどかの誕生日会だもの。喜んで参加させてもらうわ」

まどか「えへ、ありがと。ほむらちゃんが一緒の誕生日会なんて嬉しいなぁ」

ほむら「それじゃ、教室に荷物を取りに行って帰りましょう」

まどか「うん。……でも、教室まで無事に辿り着けるかな」

ほむら「ふふっ。心配しなくても、まどかのことは私が守るから」

まどか「ほむらちゃん……」

ほむら「……まどか。私の、私だけのまどか。もう2度と、あなたを離したりしない」

ほむら「愛してる、まどか……」

まどか「……わたしも、大好きだよ。ほむらちゃんのこと…愛、してるから」

まどか「これからは…ずっと、一緒だよ」


Fin

これで完結です
最後まで読んでいただき、ありがとうございました

見直してみたらレス抜け見つけちゃった
完結したのに締まらない終わり方だなぁ…

>>305>>306の間に次レスを入れて読んでください

ほむら「……まどか。台詞台詞」ヒソヒソ

まどか「……え、あっ……?」

まどか(あ、あれ……?次の台詞、なんだっけ……?)

まどか(……嘘、やだやだやだ…台詞、飛んじゃっ……!)

まどか(早く思い出さないと……!えっと、えーっと…何だっけ)

まどか(……どうしよう。頭、真っ白で…何も思い出せない……)

ほむら「まどか?大丈夫……?」ヒソヒソ

訂正ここまで


読んで下さった方、感想頂けた方、本当にありがとうございました
今年はクリスマス年越しに間に合わないおそれがあるのでもしかしたらないかも

・次回予告

まどか「デレデレさせたい」

まどか「あの子がほしい」(仮)

タイトル未定 たぶん本編もの

タイトル未定 クリスマスか年越しのもの(予定)


この辺でひとつ地文のあるもの書いとかないと書き方忘れそう

またどこかで見かけたらよろしくお願いします

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