明け方、夕暮れ、人里の中で。 (6)

「妹紅は人と関わるのが怖いのを治したいとは思わないのですか?」

半人半獣の女、上白沢慧音は、朝食を食べ終えて着替えをしながら問う。

「へぇ、それはおかしな話だこと。」

それを他人事のように返す不老不死の女、藤原妹紅は、方膝を立てて部屋の隅に座っていた。

「…どうしてそう、話を逸らすんでしょうか。」

そう呟いた慧音の顔は、なんだかいつもの優しそうな顔をしているのか、

怒っているのかがよくわからない表情をしていた。

…そう。この妹紅という女は、自分に都合の悪いことは一切聞かないので、

特に堅苦しく、説教をよくしている慧音のことを、あまり良く思っていない。

「私はいつでも本気で言っているのですが。」

慧音は怒った口調で言うと、妹紅はイライラし始めたのか、

煩い。私はそういう慧音の堅苦しいところが気に食わないのよ。」

と、いつもの本音を出してしまった。

「それに、知らない人間に合うのは御免よ。」

「私が普通じゃないことを知ったら、生き物は私から逃げていくものよ。」

ハァ、とため息をつき、自分の目をよく見て話す慧音から目線を無理矢理逸らした。

「…私はそのことが記憶から消えない限り、普通に暮らしている人間には会いたくないわ。」

「で、でも…!このまま妹紅が幻想郷の人にすら挨拶できないとなると、

   かなり嫌われてしまうのでは?」

慧音は心配そうに尋ねる。

「…もうとっくに嫌われているわよ。能天気な慧音にはわからないでしょうけど。」

慧音は、ようやく自分が馬鹿にされてるのだと気づいた。

…それでも、彼女を助けたいという一心で心を落ち着かせた。

「わかったのなら、早く人里で寺子屋やってきなさいよ。」

「…はい。」

慧音は、どうしたら妹紅が心を開いてくれるようになるのか…と、いつも考えている。

勿論、今日も。

そして、いつものように少し言葉を交わし、玄関のドアを開ける。

「行ってきます。昼ご飯は竹の皮の中に入ってますよ。」

「……うん。」

慧音がいなくなった時の妹紅は、なんだか寂しそうな顔をしていた。

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慧音がいないときの妹紅は、寂しさを紛らわすために、いつも竹林に来ていた。

その名も、『迷いの竹林』という。

「さぁて、何をしようかね。」

そう一人で呟いて竹林に入り込む少女の姿は、猫背で、ポッケのような所に手を突っ込んでいるという、

とても良い姿勢とは思えない姿であった。

…妹紅は、髪の毛についた土や石、虫等を、

今着ている古いシャツのようなもので拭き取りながら歩いた。

結っても地面につくほどとても長い髪の毛だったので、

1時間ほど歩いていると、毛先から約4尺ぐらいは、すぐ泥の色になってしまう。

保守してくださると嬉しいです。

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