魔王「姫をさらって世界征服を始める」側近「では理由を考えましょう」 (22)

魔王「理由?」

側近「はい、なぜ魔王様が姫をさらって、世界征服を企てるのか、の理由です」

魔王「そんなもの、ワシが魔王だから、ではいかんのか?」

側近「今時そんなクソみたいな理由で納得してくれるゲームプレイヤーはいませんよ」

魔王「クソみたいって……」

側近「とにかく、昨今のゲームプレイヤーは敵の行動原理もしっかりしてないと」

側近「ゲームに満足してくれません。金を返せとクレームを入れてきます」

側近「ですから、魔王様の行動にもそれ相応の理由が必要なのです」

魔王「やれやれ、面倒な世の中になったものだ」

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魔王「ならば、ワシは支配欲が強い」

魔王「だから、可愛い女を自分のものにしたいし、世界も征服したい、というのは?」

側近「うーん、ちょっと普通すぎますね」

魔王「普通じゃダメなの?」

側近「苦労してやっとたどり着いたラスボスが、単なる支配欲の権化じゃ」

側近「ふざけんな金返せ、とプレイヤーが怒ってしまいますよ」

魔王「それはまずい。じゃあ、別の理由を考えなければ……」

魔王「だったら、ワシが姫を好きだからっていうのは?」

側近「姫をさらう理由としては妥当ですが、世界征服の理由はどうするんです?」

魔王「えぇと……そのついでに……」

側近「ダメですよ、そんなの」

側近「たかが色恋沙汰で世界規模の戦争を起こすな、とプレイヤーが呆れてしまいます」

側近「呆れたプレイヤーは金返せ、とわめくに違いありません」

魔王「うーむ」

魔王「それじゃ、人間は薄汚い生き物だから滅ぼす、というのは?」

魔王「姫は唯一キレイな人間だから生き残らせるためにさらう、みたいな感じで」

側近「あー、そういう系ですか」

魔王「系、とかいうなよ」

側近「そういう魔王様の考え方も正しいんじゃないかと思える理由だと」

側近「わりと正論いってる魔王様を勇者が暴力で叩き潰す、という構図になってしまい」

側近「後味が悪くなっちゃうんですよね」

側近「結果、ふざけんな金返せ、になっちゃうんです」

魔王「これもダメか……」

魔王「じゃあ、姫とワシは前世で恋人同士ということにして」

魔王「だから姫を取り戻す、姫をワシの手から奪った人間は滅ぼす、ってのは?」

側近「前世を絡めてきましたか……」

魔王「前世レベルの因縁なら、たかが色恋沙汰ともいえまい?」

側近「たしかにそうですね」

側近「しかしそれだと、最終的な勝利者である勇者がNTRする格好になっちゃいますね」

魔王「なによ、NTRって」

側近「恋人を寝取られる、あるいは寝取るって意味です」

側近「この場合、前世で姫と恋人同士だった魔王様が寝取られる側です」

側近「盛り上がることもありますが、基本的には嫌われる展開です」

側近「返金を求められたくなければ、やめておいた方がいいでしょう」

魔王「ならいっそ、ワシが勇者を好きっていうのは?」

魔王「勇者が好きだから、気を引くために姫をさらう、みたいな」

側近「一部の人間がアッー!とかいって喜ぶかもしれませんが」

側近「はっきりいってマニアックすぎます」

側近「それに剣と魔法の大冒険がホモオチじゃ、いくらなんでもあんまりでしょう」

側近「スタッフロールを見終えた多くのプレイヤーは、金返せと激怒するでしょうね」

魔王「それなら、誰かにワシを倒して欲しかったのだ……ってのは?」

側近「最悪ですね。一番やっちゃいけないパターンです」

側近「中ボスぐらいならまだしも、ラスボスがやったら興ざめってレベルじゃないです」

側近「今までの戦いはなんだったんだ、ふざけんな金返せってなってしまいます」

側近「それに我々部下としても、魔王様の自殺のお手伝いのために戦うってのはちょっと」

魔王「やっぱり、これはまずいか」

魔王「ならば、こういう設定はどうだ?」

魔王「ワシと姫の父である王は、実は兄弟なのだ。ちなみにワシが兄な」

魔王「ようするにワシは実は人間なのだが、異形だったので魔界に捨てられたのだ」

魔王「そして魔界で強くなったワシは自分こそが王であると正当性を主張するために」

魔王「姫を拉致して、自分に王位を返せと訴えかける」

魔王「だが、弟である王も今さらワシに王位などやれるわけがない」

魔王「よって“勇者”という刺客を差し向ける……。どうよ?」

側近「ややこしいですね」

側近「そういう政治だの王位だのなんだのが絡むシナリオって」

側近「途中までは権謀術数渦巻く感じでドロドロした盛り上がりを見せるんですけど」

側近「結局、消化不良で終わっちゃうパターンが多いんですよ」

側近「あるいは、終盤でものすごい勢いで人が死んで人物相関図が整理されたりします」

側近「行きつく先は、なんだこれ金返せ、です」

魔王「ワシ渾身のシナリオもダメか……」

魔王「じゃあもうさ、いっそ理由なんかないってのは?」

魔王「ワシは究極の悪! やりたいからやっただけよ! ってなノリで」

側近「一昔前なら、そういうのも持てはやされたんでしょうけどね」

側近「そういう純粋悪系も、今やすっかり使い古されちゃいましたからねぇ」

側近「今さらやっても、プレイヤーにはまたかよ、金返せっていわれるのがオチでしょうね」

魔王「お前の中のプレイヤー、金返して欲しすぎだろ……」

魔王「くそっ、まさかこんなところでつまずくとは思わなかった!」

魔王「ワシが姫をさらい、世界征服を企む理由、理由、理由……」

側近「一番肝心なところです! 頑張りましょう!」

側近「普通でなく、色恋でもなく、正論でもなく、前世も絡まず、ホモでもなく」

側近「自殺願望でもなく、ややこしくもなく、純粋でもない理由を考えましょう!」

魔王「んなこといわれたってなぁ……。あぁ~~~~~もう!」





……

……

……

……

……

……





魔王「フハハハッ、愚かな勇者よ! ワシに倒されるためにわざわざやって来たか!」

勇者「魔王ッ! なぜお前は姫様をさらい、世界征服を目論んだ!?」

魔王「むしゃくしゃしてやった。今は反省している」







END

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