男「ラノベみたいな青春したい」 (6)

第一章
男「せっかく高校生なわけだから、四、五人でなんてことのない部を創設して、校舎の隅の空き教室で、学校に潜むささやかな謎を解いてみたり、生徒たちのお悩み相談を請け負ったりして、何もない時には他愛もない話をして日暮れごろに自転車を押しながら談笑して帰る、そんな高校生活を送りたいなあ」

友「同感だ」

男「しかし、弊害が一つあるな」

友「それも致命的な弊害がな。この高校……」

男「男子校……だな」

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友「まあ、もちろんそれを承知で入学したわけだが」

男「これからの人生を健やかに過ごすために高校時代は勉強に捧げる、なんて考えていた二年前の俺を奈落の底に落としてやりたい」

友「結局運動音痴で芸術の才能も皆無な俺たちは帰宅部に無事入部し、すでに一年が経過したわけだ」

男「そうしてごくたまにこうやって放課後も教室に残ってだらだら愚痴を述べるだけになってしまった」

友「どうしてこのままで良いだろうか」

男「そろそろ何か行動を始める頃合いだろうな」

友「だけど用心しなければ中学時代の惨状の二の足を踏むことになる」

男「あれはつらかったな」

友「あれは俺含め周りが悪かったと反省しているよ。お前が密かに片思いしている女の子に、その気持ちを周囲の人間が知らせてしまい、さらに告白の雰囲気まででっち上げた上でお前がやむを得ず告白、そして撃沈だ」

男「やめろ、涙が止まらない」

友「すまない」

男「とりあえずだ、さしあたり俺たちは何か行動を起こさねばならないだろう。退屈な日常にはもううんざりだ」

友「それもそうだな……今教室に入ってきたのは同じクラスの眼鏡君か」

男「やあ眼鏡君」

眼鏡「こんにちは」

男「もう帰りかい?」

眼鏡「そのつもりです」

男「なら少し俺たちと話をしようではないか」

眼鏡「良いですよ」

男「眼鏡君もラノベのようなキラキラ青春を謳歌したいとは思わないかね?」

眼鏡「心底そう思うところではあります。だけど現実として難しい、なぜなら外的な要因がありませんからね」

友「外的な要因とは?」

眼鏡「あくまで僕の意見ですけどね、ライトノベルの主人公って往々にしていつも最初は受け身なんですよね。青春謳歌の環境には、周囲に流されてだとか周囲の圧に屈してだとかで入り込むんです、つまり、自らの意志ではなく言ってみれば運命なのです」

友「フムン…それに照らし合わせてみると、自ら立ち上がろうとしてもなかなかラノベ通りの青春は難しいということか」

男「だとしてもだ、やはり俺たちは主人公になりたいのであり、そういった運命が訪れないのならばやはり主体性を持って立ち上がるしかないだろう。俺たちで新たな青春環境を創っていこうではないか」

眼鏡「僕も参加したいです」

友「よし」

男「とりあえす今日はもう帰ろう、ナイターゲームが始まってしまう」

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