「ティパの村?」(15)

女「ねえ、ねえ! しっかりして!!」

男「起きろ! 一体なにがあったんだ!?」

「ん……」

女「良かった……」

男「大丈夫か? 君はどうしてこんなところで倒れてたんだ?」

「倒れ……? 私は……、えっと? あれ、私は……」

女「?」

「私は、だれ?」

男「……こっちにはその娘のことを知ってる人居なかったよ」

女「こっちも……」

「……すみません」

女「気にしないでよ。あ、でも名前ないの不便かなあ」

「ティパ」

女「ティパって、私たちの村の名前?」

「うん。二人に助けられたからティパがいい」

男「でも、流石に村と同じ名前は……」

女「じゃあ、ル・ティパ!」

「ル?」

男「それ、女の名前の」

女「そ、頭文字。姉妹みたいで良いでしょ」

「……うん!」

男「ル・ティパ、こっちにケアル頼む!」

「任せて!」

女「息ピッタリだねえ、お二人さん」

「二人だっていつも息合ってるじゃない」

男女「「ないない」」

男女「「……」」

「ほら」

女「おとこぉ、さっきからなにやってるのさあ?」

「岩に向かってブリザドしたり……暑さにやられちゃった?」

男「いや、さっき村で変わった伝承を聞いたから試してみようかなって」

女「伝承?」

男「まあ、物は試しって奴だよ」

「ふーん?」

女「おー、なにか出たね」

「なんだろ?」

男「ホットスポットみたいだし、クリスタルケージ乗せてみる、しかないだろ」

女「ええー、そんな行き当りばったりな」

男「いつだってそうだっただろ」

「あはは、それが男の良いところだよね」

女「何書いてるの?」

男「日記」

「毎日書いてたっけ?」

男「たまーに、面白いことがあったときだけ」

女「なにそれ、日記じゃないじゃない」

男「あ、笑ったな」

「そりゃあ、それを『日記』だなんて言われたら笑っちゃうよ」

キャラバンA「そういえば向こうで見たことのない属性の瘴気ストリームを見たよ」

男「見たことないですか。詳しい場所、教えてもらえませんか?」

キャラバンB「ああ、いいよ」

女「男、まさかそんなところに行く気ー?」

男「気になるだろ?」

「危ないところだったら引き返すからね?」

男「分かってる分かってる」

女「……瘴気が濃いね」

「だね……」

男「もしかすると、瘴気の元がここにあるのかも」

「まさか、先に進むの?」

女「止めとこうよー」

男「危なくなったら引き返すけど、まだ危なくないって」

「ハァ、はあッ、……フ、ハァ…………」

「逃げ、な……きゃ…………」

村民「まさか……そんなことが……」

「…………ごめんなさい」

村民「……君の謝ることではない。ありがとう、雫を、荷を、……体を届けてくれて」

「……ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…………」

キャラバン「あれー、その格好、セルキーだよね?」

「…………」

キャラバン「もしもーし」

「え、……あ、私?」

キャラバン「どうしたん? こんなところでクリスタルだけ持って」

「……私には行く場所がないから」

キャラバン「ふーん、そっか。まあ、事情は知らんが、行き場のないセルキーなら俺たちの村に来ればいい」

「私、セルキーじゃ……」

『姉妹みたいで良いでしょ』

「ううん、いやうん。私は、セルキーだよ」

(この村の伝承さえなければ)

(そうすれば、誰もあの場所に行くことはない)

(誰にも、あの伝承は伝えさせない)

(そのためなら、この村の人全てを欺いたっていい)

(私には、それくらいの贖罪しかできないから……)

終わり
初代FFCCの舞台の五十年前の話の妄想
もっと肉付けできる文才が欲しいけど、これくらいが丁度FFCCらしくある気もする

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