――おしゃれなカフェ――
<カランコロン
<いらっしゃいませ~
北条加蓮「こんにちは。うん、待ち合わせ……おっ」
<加蓮ちゃ~ん!
加蓮「…………」テヲフル
加蓮「あははっ、いつものです」テクテク
加蓮「…………ん?」チラ
加蓮「店内に、暖炉……??」
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――まえがき――
レンアイカフェテラスシリーズ第14話です。
以下の作品の続編です。こちらを読んでいただけると、さらに楽しんでいただける……筈です。
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「カフェテラスで」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「膝の上で」
~中略~
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「いつもの席で」
・高森藍子「加蓮ちゃんと」北条加蓮「涼しいカフェテラスで」
・北条加蓮「藍子と」高森藍子「10月下旬のカフェで」
高森藍子「それ、中にストーブを入れているみたいですよ」
加蓮「ストーブ? え、だってあれどう見ても暖炉じゃん」
藍子「レンガはインテリアショップで買った物で、それを積み上げてから、その中にストーブを入れているみたいなんです。そうしたら、本物の暖炉に見えるんじゃないかって」
藍子「建物に暖炉を設置するのは難しいから……って、言ってましたっ」
加蓮「へぇ……。確かにぱっと見たら暖炉にしか見えないよ」
藍子「でしょ?」
加蓮「ってかそれ聞いたんだ」
藍子「はいっ。加蓮ちゃんが来るまでに聞いてみようって思って。そうしたら店員さん、すごく楽しそうに教えてくれましたっ」
藍子「それと私、見た時につい写真を撮っちゃって♪ いいお土産話ができました!」
加蓮「えー。今は私と喋ろうよ。ほらほら」ツンツン
藍子「ふふっ♪ 分かりました。あっ、その前にほら。注文していた物、ほら、店員さんが持ってきてくれてますよ」
加蓮「お。ありがとねー店員さん。暖炉は面白いと思うよ~」
加蓮「えっと……うどん?」
藍子「ほら、最近、急に寒くなってきましたから。食べると体の中から温まりますよ♪」
加蓮「うどんかー。……ニアミス?」
藍子「残念。正解は?」
加蓮「ラーメン。思いっきり身体に悪そうなヤツ」
藍子「ラーメンは……ここのカフェじゃ、扱っていないみたいですね」パラパラ
加蓮「あれ、そうだっけ?」
藍子「はい、メニュー。残念なことに」
加蓮「んー」パラパラ
加蓮「ホントだー。しょーがない、今日はうどんで我慢してあげよっか」イタダキマス
藍子「はい、我慢しちゃってくださいっ」
加蓮「ずずー……。…………味がしない……」
藍子「あ、あれっ? あの、ちょっとだけいいですか?」アーン
加蓮「ん」
藍子「ずずーっ……うーん……? おうどんってこれくらいじゃありませんか?」
加蓮「マジ? そっかー……アレだ。私もっと濃い味の方が好きかも」
藍子「覚えておきますね」
加蓮「余計にラーメン食べたくなっちゃったよ。もー、なんでこのカフェはラーメンないのー」ズルズル
加蓮「って、普通カフェにラーメンなんて置いてないっか」ゴクゴク
藍子「置いているところは置いているようですよ?」
加蓮「マジ? カフェにラーメン……カフェにラーメン? え、カフェに?」
加蓮「ラーメンってこう……もっとジャンクっぽいお店で食べる物じゃない? いやハンバーガーショップにラーメンはないけど」
藍子「あ、ハンバーガーを扱ってるカフェも見たことありますっ」
加蓮「それもあるの!?」
藍子「はい。前にお散歩して見つけたカフェに行った時、メニューに書いてあって」
藍子「その時に、加蓮ちゃんのことを思い出して。試しに注文してみたら、すっごく美味しかったです♪」
藍子「でも、前に加蓮ちゃんと行ったお店のハンバーガーとはぜんぜん味が違ってて」
藍子「同じハンバーガーなのに……ふふっ、ちょっと不思議でしたっ」
加蓮「へぇ……。何それ、すっごい気になる! ハンバーガーのカフェもだけど、違う味のハンバーガーってすっごい気になる!」
藍子「今度、一緒に行ってみますか? あっ……でも、ちょっと遠い場所のカフェだし、はっきりとした場所は覚えてないから……」
藍子「加蓮ちゃんを歩かせる訳にはいきませんね」
加蓮「ちぇー。ね、もし同じようにカフェのハンバーガー見つけたらさっ、お土産で買ってきてよ!」
藍子「分かりましたっ♪」
加蓮「ハンバーガー……ラーメン……むぅ。お腹をぶっ壊すようなの食べたいー。うどん味しないー」ズルズル
藍子「でも食べちゃうんですね……」アハハ
加蓮「藍子藍子。いくら私でも出された物を嫌だからって突っぱねたりしないよ。まして藍子が注文してくれたものだもん」
加蓮「ありがたくいただかなきゃ」アリガタヤー
藍子「無理しなくても」
藍子「味の強い物……チャーハンならあるみたいですね」パラパラ
加蓮「うーん、今はいいや。うどんって結構お腹いっぱいになるし。またお腹が空いたら食べよっかな」
藍子「その時には私も一口だけっ」
加蓮「しょうがないなー」
加蓮「チャーハンって言えばさ、チャーハンとラーメン一緒に食べる人いるよね。私は、そこまでは食べれないかなー」
藍子「私もちょっと。茜ちゃんがよく大盛りのチャーハンを食べてますけれど、いつもすごいなって思っちゃったり」
加蓮「あー。なんかすっごい想像できるー」
藍子「それに加蓮ちゃんも、茜ちゃんがいっぱい食べてるところを見たじゃないですか♪」
加蓮「バーベキューの時ね。まさかフライドポテトを作り始めるとは思わなかったよ」
※シリーズ第9話にて加蓮は茜・未央からバーベキューに誘われました。
藍子「あれも、茜ちゃんのアイディアなんですよ。結局、焦げちゃいましたけれど……」アハハ
加蓮「うん。フライドポテトって揚げるものだよね。なんで焼いたんだろうねあの2人。これ新料理です! って、いやそれ焼き芋だよね」
藍子「でも加蓮ちゃんだって、これはこれで美味しいって食べてたじゃないですか」
加蓮「だって美味しかったし」
加蓮「…………」ズルズル
藍子「…………」ニコニコ
加蓮「…………暑ぅ」
加蓮「あ、別に体調がおかしいとかじゃないからね!?」
藍子「まだ何も言ってない……」
加蓮「……つ、つい。ほらモバP(以下「P」)さんとかが……その……」ヌギヌギ
藍子「それなら仕方ないですねっ」
藍子「……あっ、もしかして今のは、加蓮ちゃんなりのフリだったり?」
加蓮「…………藍子……そのテンポで返してくる人にボケて何になるのよ……」
藍子「ご、ごめんなさい」
加蓮「だいたい私ってそーいうキャラじゃないし」
加蓮「こういうのは奈緒の専売特許だもん。天然だけど」
藍子「そうなんですか?」
加蓮「そーそー」
加蓮「Pさんなんだけどさ。ホント過保護でしょうがなくて。この前もさー、ちょっとため息ついただけなのに根掘り葉掘り」
加蓮「つい鬱陶しいって言っちゃったら今度はどん底みたいに凹むからさ、励ますの大変だったよ」アツー
藍子「加蓮ちゃん、時々キツイ言い方しちゃいますから……私だって、鬱陶しいって言われたら凹んじゃいますよ」
加蓮「凹む……」
藍子「はい。凹んじゃいます」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「ど――」
藍子「…………」
加蓮「……が、頑張って言うの我慢したので褒めてください」
藍子「えい」チョップ
加蓮「うぎゃ」
加蓮「私まだ何も言ってないー」
藍子「じゃあ……なんとなく、チョップがしたくなったからしちゃいましたっ」
加蓮「…………」ジトー
藍子「えへへ」
加蓮「…………」ハァ
加蓮「出っ張ってる場所がない藍子に凹む場所なんてどこにあるの?」
藍子「なんで言うんですか!? 今のはじゃあ次の話題ってことでPさんのお話でも始めるところじゃありませんでした!?」
加蓮「え? 私がなんとなくやりたいからやっただけだよ?」
藍子「ダメです!」
加蓮「藍子はやったのに? ズルだー」
藍子「加蓮ちゃんチョップしても楽しそうにしてるじゃないですか!」
加蓮「むぅ」
加蓮「しょうがない、じゃあPさんのお話でもしよっか」
藍子「むーっ…………」ギュ
加蓮「…………胸を隠すように腕を寄せてると、もっとからかわれるよ?」
藍子「そんなことするの加蓮ちゃんだけです……」
加蓮「そっかー」
加蓮「…………なんかまだ暑いかも」
藍子「おうどんを食べると、温かくなりますから。……でも、温かくなりすぎちゃったみたいですね」
加蓮「モッズコートはやり過ぎたよ。最近、急に寒くなったからって慌てて買いに行っちゃったんだ」
藍子「本当に寒くなりましたよね。事務所に帰った時にPさんが渡してくれるココアが、毎日の楽しみになっちゃいました♪」
加蓮「え、何それずるい! 私そんなのしてもらってないよ!?」
藍子「じゃあ今度、加蓮ちゃんにもってお願いしておきますねっ」
加蓮「それはそれでなんかヤダっ」
藍子「えー?」
加蓮「私から言うし。……でも、私からお願いするのもなんか悔しいなー……こう、どうにかPさんの方から自然に、っていう方法とか思いつかない?」
藍子「加蓮ちゃんなら、直接お願いした方がPさんも喜ぶと思いますよ」
藍子「もっと甘えてほしい、頼ってほしい、ってよく言っていますから」
加蓮「まーた私の話か。もっと自分のことを話してあげなさいよ」
藍子「つい♪ それにPさん、よく加蓮ちゃんのこと聞いてきますから……事務所で2人でいる時なんて、ちょっとお話したらすぐ加蓮ちゃんの名前が出てきちゃったり」
藍子「Pさんが名前を出さない時は、私が言っちゃうんですけどねっ」
加蓮「…………ほんっと、過保護だね。アンタもPさんも」
藍子「口元、緩んでますよ?」
加蓮「藍子。そういうのは気付いても言わない」
藍子「はーいっ♪」
加蓮「……隠してるつもりなんだけどなぁ。よく分かったね」
藍子「私だって、加蓮ちゃんのことはずっと見てきましたから。……今、加蓮ちゃんが悔しい思いをしたのも、なんとなく分かりましたっ」
加蓮「迂闊なことできないね、これ。今度から藍子と会う時はお面でもつけてみよっか」
藍子「嫌ですよそんなの。加蓮ちゃんの顔を見るの、面白いのに」
加蓮「……何が?」
藍子「何がでしょう? ふふっ、私にも分かんないです」
加蓮「むぅ。最近、なんっか藍子が手強い」
藍子「そうですか?」
加蓮「前はこうもっと、わたわたしてたっていうか、こう、これで大丈夫かあれで大丈夫かって悩んでてそれに私がアドバイスするって関係だった気がするー」
藍子「今だっていっぱい悩んでいますよ。でも、加蓮ちゃん相手にはぐいっと行くんだって決めてますから!」
加蓮「ぐいっと?」
藍子「はいっ。これでも、パッションアイドルですっ」
加蓮「そっかー。そろそろキュートグループに移籍する気はない?」
藍子「ありませんーっ。その、Pさんからもたまにからかわれますけど!」
加蓮「こっちはからかわれちゃうんだ。じゃあ裏をかいてクールグループにいらっしゃい。凛や奈緒と一緒にお出迎えしてあげる」
藍子「ええっ。そうしたら、ポジティブパッションがパッションじゃなくなっちゃうっ」
加蓮「その時には私がパッショングループになって代わりに入ってあげる」
藍子「加蓮ちゃんが!?」
加蓮「あれ? これじゃ私が藍子のこと出迎えられないじゃん」
加蓮「じゃあ藍子を引きずり込んで馴染ませたところでパッショングループに裏切りをかける。うん、これでいいや」
藍子「どこもよくない……」
加蓮「だってさ、茜に未央でしょ? バーベキュー行ってよーく分かったよ。あれツッコミ役ないとどこまでも暴走するって」
藍子「い、一応、私、ポジティブパッションのまとめ役……」ソロォ
加蓮「ん?」
藍子「……なんでもないです」
加蓮「あははっ」
藍子「加蓮ちゃん、パッショングループできるんですか?」
加蓮「え? パッションってアレでしょ、とりあえず……」
藍子「とりあえず?」
加蓮「……なんか走ってればパッションっぽくなる」
藍子「加蓮ちゃんが一番やっちゃいけないことだ……」アハハ
加蓮「よし。パッションは諦めよう」
藍子「そうですよ。加蓮ちゃんなんて誰よりもクールグループらしいクールグループじゃないですかっ」
加蓮「えー、1割くらいキュート成分入ってない?」
藍子「入ってはいると思いますけれど……でも少なくとも、パッションっぽさはゼロですよね?」
加蓮「こう見えても実は藍子に次ぐ隠れパッションっていう新事実」
藍子「うーん…………」
加蓮「だめかー」
加蓮「ポジパって言えばさ、未央なんかツッコミになれそうなんだけどねー。アレ絶対、ボケるのを楽しむタイプだよね」
加蓮「アレかな、ニュージェネだったら凛がツッコミに回るから自分はボケを楽しもうとか、そういうことなのかな」
藍子「あはは……前に凛ちゃん、すごく疲れた顔をしていたっけ」
藍子「加蓮ちゃん、凛ちゃんを手伝ってあげてくださいよ」
加蓮「え? 私、凛を疲れさせるポジションだけど?」
藍子「えー」
加蓮「藍子を疲れさせるポジションでもある」
藍子「そっちはいいですけれど……加蓮ちゃんこそ、ツッコミに回れるタイプですよね?」
加蓮「さーね。藍子がボケたらツッコミ入れるけど、うーん……あんまりこう、ツッコミとかボケとかって決めない方が好きかな、私」
藍子「なるほど」
加蓮「自由バンザイ」バンザーイ
藍子「じゃあ、私もそんな感じでっ」
加蓮「いやアンタは天然ボケ一択でしょ」
藍子「誰が天然ですか~っ」
加蓮「未央さ、ちょい前に温泉でLIVEやってたよね」
藍子「あ、私、見に行きましたっ」
加蓮「行ったんだ」
藍子「本当にすごいLIVEで……未央ちゃんのLIVEはいつもすごいんですけれど、あの時は特にすごかったです!」
加蓮「ちくしょ、私はその頃トラプリでLIVEだよー」
藍子「え? でもあの時、凛ちゃんもいましたよ……?」
加蓮「え?」
加蓮「……あー、それでか。こっちのLIVEが終わったらなんかものすごく急いでどっか行ってたけど、あれ未央んとこに行ってたんだ」
加蓮「いや私も誘えよ!?」
藍子「き、きっとあまりに急いでいてそこまでは気が回らなかったとか、ほら、加蓮ちゃんには無理をさせられなかったとか……ねっ?」
加蓮「ちくしょー。これはやっぱり私もトラプリを裏切ってポジパに入るしかないな」
藍子「じゃあ、私がトライアドプリムスに入るんですか?」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「ない」
藍子「ですね」アハハ
加蓮「未央のLIVE、見に行きたかったなぁ」
藍子「ふふっ。それ、未央ちゃんに言ってあげてください。きっとすごく喜びますから♪」
加蓮「私から言うのもなんか悔しいな。こう、相手に言わせる方法――」
藍子「未央ちゃん相手にもそうなるんですか……」
加蓮「プライド的な? よし、DVDが出たら買お。未央を連れてって未央の前で3枚購入しちゃろ。そんで照れさせて顔を真っ赤にさせてやる」
加蓮「…………ああ駄目だ未央が相手だと反撃される未来しか見えない」
藍子「加蓮ちゃん、未央ちゃんには弱いですよね」
加蓮「未央にっていうかあのタイプはね。マイペースに持ってけないんだ。そしたらどーも振り回されがちで……それはそれで楽しいんだけどね」
加蓮「そーいう意味で、パッショングループの子ってちょっと苦手かも」
藍子「…………」(自分をくいくいっと指差す)
加蓮「あれ? 藍子ってキュートグループじゃなかったっけ?」
藍子「だから私はパッショングループですーっ」
加蓮「あはははっ。温泉かー。バーベキューの次は温泉とかどうって誘おうと思ったら先越されちゃったな」
藍子「私の方からお話しておきましょうか? 加蓮ちゃんが行きたがってる、って」
加蓮「自分から言うのがどうのこうの」
藍子「もーっ、意地っ張り」
加蓮「あとさ、温泉みたいにゆっくりする場所とかちょっと苦手なんだよね……」
加蓮「ゆっくりお湯に遣ってると、落ち着かないっていうか、もっと動きたくなるっていうか」
加蓮「ほら、今だってこうやってカフェでのんびりしてるけどさ。藍子と一緒じゃないとできないよこんなの。私1人じゃ5分が限界」
藍子「そういえば前に、似たことを言っていたような……?」
加蓮「誕生日の時にもらった入浴剤、順調に使ってってるよ。面白いねあれ。いろんな香りとか色とかあって、なんか別の場所に来たって気分になれる」
藍子「それはよかったです♪」
加蓮「でも使って入ってびっくりしても5分で出ちゃうんだけどね」
藍子「あはは…………」
加蓮「入浴剤を使うことは楽しいけど、入浴剤を使ったお風呂にずっと浸かってるのは難しいんだ。……あ、でもね」
加蓮「明日はどの入浴剤を使おっかな、とか」
加蓮「明日は時間があるから、藍子を誘ってみようかな、とか」
加蓮「明日のことを信じるのが、最近、ちょっと楽しくなってきちゃった」
藍子「加蓮ちゃん……?」
加蓮「ふふっ……なーんでもないっ。さーて、明日はどうやって藍子をからかおっかなっ」
藍子「も、もうちょっと別のことで楽しみましょう! ほらほらっ、明日はどんな幸せがあるかな、とかっ」
加蓮「藍子をからかうという幸せ」
藍子「もっと別のーっ!」
加蓮「とにかく、ぼけーって過ごすのはなかなか慣れないや。明日はちゃんと来るって分かってても、今日を無駄にしちゃ駄目だなんて思っちゃって」
加蓮「お風呂も入ったらすぐ上がっちゃうし。ご飯は急いで食べ過ぎてお母さんから呆れられるし」
加蓮「藍子とならこうしてのんびり過ごすのも楽しいんだけどね。ねえ、前に言ってた一緒に暮らそうって冗談、まだ有効?」
藍子「冗談なんかじゃないですよ。加蓮ちゃんが言うなら、いつだって」
加蓮「ふふっ、そっか。……でもなー、うーん……今はやっぱりいいよ。ごめんね藍子」
藍子「謝ることじゃないですよ。またいつでも言ってください。1日だけでもお付き合いしますからっ」
加蓮「ありがとー」
藍子「それに加蓮ちゃんの、今日を無駄にしちゃ駄目って考え方。私は嫌いじゃありませんよ?」
藍子「私はのんびりするのが好きだから、あんまり合わないかもしれませんけれど……」
藍子「きっとそうやって努力し続けて、今の加蓮ちゃんがいるんだなって思うと」
藍子「……あっ、でもやっぱり、加蓮ちゃんはもうちょっとのんびりしてもいいと思うんですっ。自分に厳しすぎます!」
藍子「ううん、難しいなぁ……どっちがいいのかな……」ウーン
加蓮「変なの。私の話なのに、藍子が1人で悩んじゃってる」
藍子「えへっ♪」
加蓮「変なのー」
加蓮「あ、そうそう。ってことで温泉はちょっとパスで。こう……もっとのんびりする時間を楽しめるようになってからでさ」
藍子「はい。じゃあ、その時を楽しみに――」
藍子「…………」
藍子「…………あれ?」
加蓮「ん? どしたの?」
藍子「加蓮ちゃん加蓮ちゃん。1人でカフェでのんびりするのが苦手で、でも私と一緒なら大丈夫なんですよね?」
加蓮「え? うん、そーだけど」
藍子「他のゆっくりする時間も、私となら楽しんでくれてるんですよね?」
加蓮「そうだけど……それがどうかした?」
藍子「それなら温泉だって、私と一緒なら大丈夫なんじゃ……?」
加蓮「……………………あ」
藍子「…………」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「…………実は人の前で肌を見せちゃいけない宗教に入っているんです」
藍子「はあ」
加蓮「…………」
藍子「…………あの、私、加蓮ちゃんと何度もお風呂に入っているんですけれど」
加蓮「あ」
藍子「…………」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「…………」
加蓮「帰る」(立ち上がる)
藍子「待ってください待ってください! ほ、ほらっ、失敗って誰にだってありますから! 加蓮ちゃんがドジなんて珍しいけど可愛いなんて思ってませんから!」ガシ
藍子「ね? もうちょっと、私と一緒にゆるふわしていきましょうっ」グイグイ
加蓮「…………」(座らさせられる)
藍子「…………」
加蓮「…………」ツップセ
藍子「あ、あはは……」ナデナデ
>>30 6行目 少しだけ訂正させてください……。
誤:「加蓮ちゃんがドジなんて珍しいけど可愛いなんて思ってませんから!」
正:「加蓮ちゃんがドジなんて珍しいけど可愛いっ、なんて思ってませんから!」
加蓮「うがー!」ガバッ
藍子「きゃっ」ヒッコメ
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「…………」ツップセ
藍子「…………」ナデナデ
――10分後――
藍子「店員さん、ありがとうございますっ。はい、加蓮ちゃん。落ち着かない時は、ハーブティーを飲んでゆっくりしましょうっ」スッ
加蓮「ありがと…………」カオヲアゲル
加蓮「……顔、赤くなってない?」
藍子「少し赤いかも……でも、ほら。お店の中、暖かいですから」
藍子「私の顔も、きっとちょっと赤くなってると思います。ふふっ、加蓮ちゃんと一緒ですね♪」
加蓮「…………はー」
加蓮「いただきます」
藍子「はい。いただきましょう」
加蓮「…………」ゴクゴク
藍子「…………」ゴクゴク
加蓮「…………温泉」
藍子「?」
加蓮「行こ」
藍子「はいっ。じゃあ、未央ちゃんと茜ちゃんにスケジュールの確認を――」
加蓮「ううん」
藍子「……?」
加蓮「2人で」
藍子「私と、ですか?」
加蓮「他に誰がいるのよ」
藍子「…………はいっ♪」
加蓮「一緒にお風呂に入ろ。広いお風呂に」
藍子「はい。入っちゃいましょう」
加蓮「藍子がつるぺたなのからかうんだ」
藍子「それはだめっ」
加蓮「お風呂上がりにはコーヒー牛乳を飲むんだ」
藍子「私も、あれちょっぴりやってみたかったんです」
加蓮「一緒に美味しいご飯を食べるんだ」
藍子「地元名産とかあるのかな……食べたことない物を食べてみたいですねっ」
加蓮「……約束」
藍子「約束?」
加蓮「うん。約束」
藍子「じゃあ、指切りします?」
加蓮「やだ」
藍子「はぁい」
加蓮「…………」
藍子「…………」
加蓮「…………」ズズ
藍子「…………」ズズ
加蓮「――よしっ! 復活! やらかして凹むなんてもう10年前に通った道だっ」
藍子「……前にも同じこと言っていませんでした? 落ち込むのは昔の自分だー、って感じに」
加蓮「…………」ツップセ
藍子「ああっごめんなさい! ついっ……か、加蓮ちゃんはいつも前を向いてるところがステキですっ。だからほら、顔を上げましょう!」
藍子「そうだっ、にらめっこしましょう! ほら、前に私に負けたリベンジとか!」
加蓮「…………」
加蓮「…………くくっ……それ、私を負かした人が言うセリフ?」
藍子「!」
藍子「そうですねっ。でも加蓮ちゃんが落ち込んじゃってるから、代わりに私が言うんです」
加蓮「そっかー」
加蓮「…………よいしょ」カオヲアゲル
加蓮「おはようございます、藍子」
藍子「……おはようございます、加蓮ちゃん?」
加蓮「はーっ。どーでもいいことなのになんか変に凹んじゃった。駄目だなぁ私…………」
藍子「…………」ムッ
加蓮「……? ……ああ、うん……悪い癖が出ちゃったか」
藍子「加蓮ちゃん。考えを、変えてみましょう」
加蓮「んー?」
藍子「どうでもいいことに落ち込めるのは、きっと毎日が楽しいからですよ」
藍子「毎日が楽しくなくて、なんにも思うことがなかったら、落ち込むことだってできませんっ」
藍子「だから、ほら。今日も落ち込めるくらい楽しめた、ってことにしちゃいましょう♪」
加蓮「…………ん、そうだね……ふふっ。藍子らしい、素敵な考えだ」
藍子「あはっ、ありがとうございます」
加蓮「でもさ――」
加蓮「……ううんっ、なんでもない」
藍子「え~、何ですかそれ? 気になっちゃいますよ」
加蓮「ううん。ここで嫌味を言うから私は駄目なんだ――ああ、違う違う。私を貶すんじゃなくてさ」
加蓮「パッと頭に『でも藍子はこの前、オーディションで落ちたことにくよくよしてたじゃん』って思いついたけど……」
加蓮「そーいうこと言ってばっかじゃ駄目だな、って。だから今、頑張って我慢しました」
藍子「……あはっ♪」
加蓮「んー」
加蓮「褒めてー」
藍子「加蓮ちゃんはさすがですねっ」
加蓮「…………」
加蓮「……やっぱアレだ。自分からやってって言ってやってもらってもあんまり嬉しくない……」ショボン
藍子「あはは……言わせる方が好きなんですね。加蓮ちゃんは」
加蓮「そーゆーことでーす。どうやって言わせるか考えるのとかけっこう好きだよ」
藍子「私、加蓮ちゃんが言って欲しいことを言えていますか?」
加蓮「うーん…………」
加蓮「もし、全部が全部その通りだったら……えっと、藍子が言って欲しいことを言うだけの人だったら」
加蓮「ここまで好きにはなれてなかったと思うな、私」
藍子「もー、加蓮ちゃんは相変わらず複雑ですね」
加蓮「知ってることでしょ?」
藍子「知ってますけどー」ズズ
藍子「……そういえば、久しぶりです」
加蓮「何が?」
藍子「加蓮ちゃんが私のこと、好きだって言ってくれたこと」
加蓮「……もーその話題さ、ここんところで何回目? 飽きない?」
藍子「そういうこと言わないように頑張って我慢するってお話なんじゃ……」
加蓮「真面目な加蓮ちゃんは1日1回限定です。残念でしたー」
藍子「もう」
藍子「お話して楽しいことは、何回だってやりたいです。飽きることなんてないですよ?」
加蓮「そっか」
藍子「加蓮ちゃんの"相手に言わせる"じゃあありませんけれど、やっぱり……自然に好きって言ってもらえるのは、すごく嬉しいです」
藍子「ううんっ。でも、ちょっと不自然に言ってもらうのも嬉しいのかな……?」
藍子「うーん…………」
加蓮「…………ねえ、今Pさんのこと考えたでしょ」
藍子「えわっ!? かか、考えていませんっ考えていませんっ」
加蓮「あっはは! ね、どうやったらPさんに好きって言ってもらえるか考えてみない?」
藍子「加蓮ちゃんっここ外ですよ外! そんなこと言ったらその、アイドルっ、スキャンダルとかっ、そのっ」
加蓮「? ここカフェじゃん。店員は今そこら辺にいないし」
藍子「で、でも……、……もうっ」
藍子「でも、その話題は恥ずかしいから……ねっ?」
加蓮「Pさんのことだしやっぱそれっぽいムードに持って行かないと駄目だよねー。さらっと言うとか無理無理。問題はどうやって持っていくかなんだけど――」
藍子「聞いてーっ!?」
藍子「私、ちょっとお手洗いに行ってきますね」スクッ
加蓮「んー」
<テクテク...
加蓮「ん~~~」グイ
加蓮「っはあ」
加蓮「…………」ホオヅエ
加蓮「…………」ソトヲミル
加蓮「好き、かー…………」ボソッ
加蓮「好き、なんだねぇ、私……Pさんのことも、藍子のことも……」
加蓮「…………」
加蓮「…………なんだか」
加蓮「それが、すっごく…………」
藍子「戻りましたっ」
加蓮「お帰り。ね、今日はどうしよっか。街をぶらつく? それとも、もうちょっとのんびりしとく?」
藍子「今日は……少し、お散歩したい気分かも? あ、でも加蓮ちゃんがゆっくりしたいなら――」
加蓮「じゃあ外に出よっか。コートもあるし、寒くても大丈夫大丈夫!」
藍子「……はいっ。あ、そうだ。私、加蓮ちゃんと行ってみたいお店があったんです。もし、予定がないのなら」
加蓮「藍子。ぐいっと来るんじゃなかったの? そこは『一緒に行こう!』って思いっきり言うくらいでいいよ」
藍子「ふふっ、そうでした。加蓮ちゃん。いいお店があるので、一緒に行きましょう!」
加蓮「うんうん。行こ行こ」スクッ
藍子「はい!」スクッ
<今日の加蓮ちゃん、なんだかいつもより可愛いっ♪
<えー何それ。いつもの私は可愛くないの?
<いつもですけれど、今日は特に!
<そっかー
おしまい。読んでくださり、ありがとうございました。
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